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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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御堂が自らを受け入れる箇所にそっと触れた時には其処はヒクヒクと
軽く痙攣を繰り返して、まるで誘うようにこちらの指に吸い付いて来ていた。
 前で達したばかりだろうか。
 早くも其処は綻び始めて、柔らかくこちらの指を飲み込み始めていく。

「うっ…くっ…」

 すぐに二本目の指を飲み込ませていくと、やはり其れはきつかったのか
少し苦しそうに克哉が呻き声を漏らしていく。
 だが、恋人のそんな表情さえも見逃さないように…熱っぽい眼差しで御堂は
彼の顔を凝視し続けていった。
 強い眼差しに、それだけで視線でも犯されているような気分になって…
ジリジリ、と神経が焼き切れていくような想いがした。

「…も、う…今日の、御堂さん…意地悪、過ぎ…です…」

 ただでさえ高熱が出て体調不良になっている時に、強い羞恥を覚えていくように
苛められ続けて…いい加減克哉の反抗も弱々しい口調になっていく。
 悔しさと、みじめな気持ちがいっぱいで…気持ち的にはモヤモヤして、いっそ…
このまま拒んでやろうか…という考えすら湧いてくる。

「…お願いですから、もう…あぁ!」

 止めて、下さいと…懇願しようとした瞬間、指を深く突き入れられて…前立腺の
部位を指の腹で探られて、刺激されていく。
 気持ちの上では反発しているのに、恋人に身体をこんな風に追い詰められたら…
拒みきる事すら出来なくなってしまう。
 生理的な涙と、悔しさの混じった雫が…克哉の目元からうっすらと零れて、頬を
濡らし始めていった。

「ヤ、だ…御堂、さん…こんなの、イヤ…だ…!」

 確かに自分の好きになった人は、いつも抱く時は意地悪で…こちらの都合すら
考えずに意地悪な行為や発言を、セックスの時に仕掛けて追い上げていく。
 いつもはそれは快楽のスパイスになっているので…この段階まで来たら、克哉
だってはっきりと…イヤ、という言葉を口にしない。
 百歩譲っても、拗ねた視線と顔を浮かべたりはするが…押しのけるような動作までは
しないだろう。
 だが…風邪で弱っているせいだろうか。
 『いつもと同じ』ように扱われる事に対して、どうしても反発したくなった。

「克哉…?」

 それが、睦言による「イヤ」や「ヤ…」という言葉ではなく、はっきりとこの行為を
拒絶するイヤである事に…御堂も気づき始めていく。
 怪訝そうな顔をして…中を探る指が一旦止まっていくと…オズオズと、その腕を
掴んで静止させていった。

 ―はぁ…はあ、はあ…はあ…。

 高熱によるものと、先程まで容赦ない快楽を与えられ続けていたせいで…
克哉の呼吸は随分と荒いものになっていた。
 それでも、キっと蒼い双眸に強い光を宿していきながら…彼は自分の意思を
はっきりと告げていく。

「み、どう…さん…」

 其れは初めて器具で追い詰めるだけではなく、身体を重ねた夜…克哉の
瞳に宿っていた反抗的な瞳、そのものだった。
 はっきりとその双眸で、こちらにその意思を伝えて来ていたので・・・御堂は
暫し、息を呑んでいった
 お互いの間に落ちる沈黙、ふいに重くなる空気。
 その息が詰まるような緊張が当分、続いた後に…克哉は、ゆっくりと…
口を開いていった。

 御堂の事は愛しているし、SEXの時は嗜虐的な一面がある人である
事は承知の上で好きになっているし、今も付き合っている。
 けれど…今の自分は、病人なのだ。
 いつもと同じようには与えられる快楽に没頭出来ないし…ただ、良いように
扱われるのが少し悔しかったのだ。
 その想いが克哉の中で、一方的に快楽を与えられて弄られ続けている事で
反発心を生んでいた。

「…貴方が意地悪な一面を持っている事を承知で…オレは、貴方を好きに
なりました…。だから、それで貴方を否定したくないんですが…今日のオレは
病人、なんですよ…。少しぐらい、その…配慮、して下さっても…良い、んじゃ…
ないんですか…?」

 内部に相手の指を感じたまま、出来るだけ今は其れを意識しないように
気をつけながら…慎重に、一言一句を口にしていく。

「う…む…そう、だな。確かに…君が恥ずかしがる様が…あまりに、殊勝で
可愛らしすぎて、確かに私は…その事実を、途中から失念して
しまっていたな…」

 相手に改めて言われて、実に肩身が狭そうな表情を浮かべていく。
 それで少しだけ克哉は…溜飲が下がるような思いを感じた。
 さっきまで余裕たっぷりだったり、意地悪な顔ばかりしか見れなかったので
少しだけ満足していく。

「はい…オレは、今日は…病人です…だか、ら…」

 それ以上の言葉を面向かっていうのは少し恥ずかしくて。
 顔を見られたく心理から、相手の耳元に唇を寄せて…かなり控えめな
声音で、自分が今日…ずっと内心感じ続けていた事を口にしていく。

『――――――』

 それを聞いた御堂は瞠目し、言葉を失っていく。
 その様子を見届けて…克哉は心底、楽しそうに…彼に向かって、妖艶と
呼べる雰囲気の笑みを浮かべていったのだった―
 
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 克哉の目許、こめかみ、頬の稜線や生え際に優しくキスを落としていきながら
ゆっくりとYシャツのボタンを外し始めていく。
 強引な手つきであるが…一つ一つの仕草には、病人の相手を気遣うような
優しさが滲んでいた。

「ん、はっ…」

 唇が首筋にまで降りてきて、ゆっくりと其処に吸い付き始めると克哉の唇から
悩ましい声が零れ始めていった。
 まだ触れたばかりだというのに…熱っぽい声を早くも聞かされて…御堂は
自分の下肢が熱く昂ぶっていくような感覚を覚えていた。

(すでに今日は…熱があるからな…。やはり、気遣った方が良いだろう…)

 本来なら、病人に欲情して抱こうとするなど…身体に負担を掛けてしまう
行為なのだからNGなのだろう。
 けれど…今日の克哉は凶悪的なまでに可愛らしく思えて仕方なくて…欲望は
とても抑えられそうにない。
 このまま、彼をどこまでも感じさせて啼かせたい。
 そんな凶暴な欲求が胸の中に湧いてきて止まらなくなっていく。

「もう尖っているな…いつもに比べて、随分と此処も赤く熟れているんじゃないのか…?」

 胸の突起に指と唇を這わせていくと、左右にそれぞれ異なる刺激を与えながら
愛撫を施していく。
 つつしまやかな尖りはすぐに硬くしこり始めて、独特の弾力を伴い始める。

「んぁ…や、御堂、さん…音…」

 わざとピチャピチャ…と水音が立つように其処を舐め上げてやると、克哉が僅かに
其処から御堂の唇を引き剥がそうと弱い抵抗をしていく。
 だが…そんな僅かな拒絶ぐらいで、今夜は止めてなどやるつもりはない。
 舌先で押し潰すようにしていきながら、同時に手で愛撫している左の突起の先端にも
軽く爪を立てて、両方同時に刺激していってやる。

「あ―っ!」

 克哉の唇から、鋭い悲鳴に似た声が漏れていく。
 ビクンと痙攣するようにその身体を仰け反らせて、強烈な感覚を耐えていく。

「…相変わらず、君は敏感だな…」

 愉しげに笑いながら、右手をゆっくりと…彼の下肢の方へと移動させていく。
 スーツのズボンのフロント部分をゆっくりと引き下げていき…其処に手を差し入れて
いくと…早くも布地の下で息づき始めていた彼の性器にぶつかっていった。

「…っ!」

「…もう、ここもカチコチだな…。ちょっと胸を弄っただけでこんなに硬くするなんて…
君も期待、していたのかな…」

「…そ、んな…事、は…」

「ほう…? じゃあ…これは、何だと…言うんだ…? こんなに私の手の中で…
熱くなっている此処は…」

「あっ…あっ…!」

 そうやって施される愛撫の手つきこそは、熱がある彼を気遣って優しいもので
あったけれど…代わりに言葉で酷く羞恥を煽られて、いく。
 御堂の動作と向けられる言葉の酷いミスマッチぶりに…逆に普段よりも、精神的に
追い上げられていく。
 握り込まれた性器は、恋人の手の中でドクンドクン、とまるで其処だけ別の生き物に
なってしまったかのように激しく脈動し…克哉の興奮ぶりを相手に伝えていく。
 たっぷりと早くも先走りを滲ませ始めて、相手の手を汚していく様は…自分でも
卑猥に思えて…逆にそこから目を離せなくなっていった。

「やっ…み、どう…さん…」

「克哉…良く、見ていると良い…。私の手の中で…どれだけ君がいやらしく
暴れていくかを…な…?」

 ふいに耳朶を甘く噛まれていきながら…ペニスを性急に扱かれ始めていく。
 御堂が手を蠢かせる度にネチャヌチャ、と粘質の音を響かせていきながら…自分の
ペニスが一層硬く、大きく膨れ上がっていく。
 余った皮を容赦なく扱かれて、根元の部分もきつく指先で締め付けられて…
どうしようもなく快楽が高められていく。

「や…だ…オレ、の…凄く、いやら、しくて…!」

「目を閉じるな…ちゃんと…最後まで、見ているんだ…克哉…」

「は、あ…み、どう…さ、ん…」

 御堂から命じられるように、見る事を促されて…うっすらと生理的な涙を
滲ませた熱っぽい瞳で…何かに魅入られたかのように、自分の淫らな場所に
目を向けていく。
 
(やだ…オレの、御堂さんの手の中で…あんな、に…)

 別段、普段ならば自分の性器がこんなに膨れ上がっていようと…はち切れん
ばかりになっていようと…すでに見慣れた場所だ。
 自慰をしたからと言って、こんなに恥ずかしくなる事はない。
 だが…他者の手によってここまで硬くなり…それを見届けるように強要される
事によって…克哉の中に強烈な疼きが生まれ始めていく。

「み、どう…さ、ん…お願い、です…も、う…」

 涙を一筋、頬に伝らせていきながら…苦しげに呼吸を乱しながら、恋人に
向かって懇願していく。
 だが…このような状況では、そんな切なげな表情すらも…男の欲情を
一層強く煽るだけだ。
 止めてなど、やれない。
 むしろ…一際強い刺激を与えて、克哉を悦楽の中に追い込もうとするように…
激しく手を動かし、絶頂に導こうとしていく。

「ダメだ…もう、止めてなど…やれない。もっと…君の感じる姿を…見たいんだ…」

「あっ…んんっ…!」

 御堂の食い入るような眼差しに、背筋から甘い衝動が同時に競り上がってくる。
 彼の荒い呼吸、熱っぽい欲望を讃えた眼差し…そして大きく、熱くなっている掌。
 全てが…彼が、自分を求めてくれている証だった。
 それを感じて…克哉はブルリと背を震わせて…。

「み、どう…さんっ―!」

 余裕など一欠けらもない、切羽詰った声音で…恋人の名を呼び上げながら…
その手の中に吐精していった。
 ドロリ、とした粘っこい精液が…相手の手の中に放たれる様を目の当たりにして
克哉は居たたまれない気持ちになりながら…肩で息を突いていった。

「随分と濃いな…。先週から、ずっと…ご無沙汰だったのかな…?」

「そ、んなの…答えられる、訳…ない、でしょう…! 今日の…御堂、さんは…
その、意地悪…過ぎ、ます…」

 さっきまであれだけ優しかった姿を見ていた分だけ…セックスの時の意地悪さが
いつもよりも際立って強く感じられる。
 顔を真っ赤にして…プイと相手から顔を背けて、枕に顔を半分埋めて表情を
隠していったが…耳まで朱に染まっている処を見れば…こちらが恥ずかしがって
いる事など御堂にはすぐに悟られてしまうだろう。
 いっそ布団でも被って、顔を全て相手の前からシャットアウトしたい気分になったが
御堂は恐らく…許してはくれない、だろう…。

「…すまない、な…。君が今日は…可愛らしすぎるからな…。つい苛めたくなって…
仕方なくなってしまう…」

「また、オレを…可愛い、とか言って…あっ…」

 そうしている間に、頬に濡れていない方の手を宛がわれていくと…強引に顔を
御堂の方に向かされて、唇を重ねられていく。
 啄ばむような優しい口付けに…さっきまでモヤモヤしていた、恥ずかしさや
悔しさがあっという間に溶かされていってしまう。

「御堂…さ、ん…ズルイ…」

 こんなに優しくキスされたら…これ以上、拗ねている事すら出来なくなってしまう。
 チュウ…と唇を吸われて、舌を這わされたら…背骨の奥から快楽が競り上がって
きて…再び腰が疼き始めていく。

「ん、んぁ…やっ…ぁ…」

 チロチロと舌を口腔に差し入れられながら、もどかしいくらい優しい愛撫を
暖かな舌先で施されていく。
 やんわりとこちらの舌を舐め上げていく感覚が、心地よいと感じると同時に
物足りなくて…もっと強い刺激を求めて、こちらからも舌を擦り付けていく。

「克哉…」

 声の振動が唇に伝わってくるくらい、間近で…自分の名前を呼ばれたら
それだけで…嬉しくて、切ない気持ちが湧き上がってくる。

「み、どう…さん…」

 こちらもまた、応えるように相手の名を口にしていくと同時に…御堂はいつの間にか
こちらのズボンに手を掛けていって…ゆっくりと下着ごと、足から抜いていき…
克哉の奥まった場所に指を触れさせていったのだった―

「そのまま口に入れたら、多分火傷するだろうな…」

 スプーンで一口分のミルク粥を掬いながら、御堂はそんな事を呟いて…
フーフーと息を吹きかけていく。

(うわ…)

 別段、それ自体は大した事でないのかも知れないが…大好きな人の吐息が
これから自分が口にする物に吹きかけられていくと思うとやはり気恥ずかしい。

「ほら、克哉…口を、開いてくれるか…?」

「は、はい…お願い、します…」

 そうして、オズオズと御堂の方に向かってア~ン、と口を開いて顔を向けていくと…
ゆっくりと仄かに暖かい粥が口の中に運ばれていく。
 さっき食べて美味しい、と感じた味が…こういう行為によってまた違う味のように感じられる。

 ドキドキドキドキ…。

 いつになったら、自分の忙しない鼓動は落ち着いてくれるのだろう。
 御堂のマンションに来てからというもの、ずっと落ち着かないままだった。

「旨いか…?」

「はい…とて、も…」

 顔が火照ってしまっていて、まともに御堂の顔を見つめ返す事も出来ない。
 そんな克哉の様子が可愛かったのだろう…。
 御堂は、顔を俯かせたままの自分の恋人の姿を見て…酷く微笑ましいような
もっと苛めてみたいような、相反する感情を抱いていた。

(本当に…君はこういう処が、可愛いな…)

 しみじみとそう思いながら、もう一口…克哉の口元に運ぼうと、スプーンで
彼の唇を軽くノックしていく。

「ほら…これでは、足りないだろう。もう一度…開けられる、な…?」

「…御堂、さん…もう…」

 これ以上は恥ずかしくて、仕方がなかった。
 だから…首を振って、もう…止めて下さい、と告げて自分の手で食べたいと
思ったが…それを簡単に、御堂も許すつもりはなかった。

「…私は、君に食べさせてあげたい。ダメか…?」

「うっ…は、はい…判りました。貴方が…そう、言うなら…」

 御堂がダメ押しをすると、克哉もようやく観念して…瞳を閉じながら、御堂の方に
口を差し出していく。
 まるでヒナに餌を丁寧に食べさせてあげているような気分になった。
 一さじ、一さじ…愛情を込めながら、可愛い恋人の口に…自分が作った粥を
運ぶ時間は…御堂にとっては楽しい一時だったが、その間…克哉の顔は常に
上気したままだった。

「ほら…これで終わりだ…。良くここまで食べれたな…」

 労いながら、最後の一口分をスプーンに乗せて克哉の口に宛がってやる。
 もうこの時点で…茹でダコのように克哉は、耳まで赤くして…羞恥に耐えていた。
 だが…この時間もやっと終わると思って…ふわっと柔らかく克哉が微笑みを
浮かべた瞬間…御堂は胸が射抜かれるような衝撃を味わった。

(克哉…その顔、可愛すぎるぞ…!)

 現在の御堂の心中を一言で表現するなら、背景にカミナリが走っているような…
そんな気分だ。
 ふいに、意地悪したい気持ちが勝っていく。
 最後の一さじを…安堵したような表情で頬張っていく克哉の姿を見て…スプーンの先を
引き抜く際…相手の唇と舌先をくすぐるような動きをしていった。

「ふっ…?」

 克哉がびっくりしたような声を漏らすと同時に、スプーンをひっくり返して…
アーチになっている部分で舌全体を覆うような動作に変えていく。
 突然、冷たい金属に口腔を弄られて…相手の目が見開いていく。
 だがその躊躇した瞬間を…御堂は見逃さなかった。
 いつも深くキスする時に、舌先で弄ってやると謙虚に反応する上顎や舌先の
部分を…スプーンの先で刺激していくと、すぐに…克哉の目はトロンとした艶めいた
色合いに変化していった。

 ピチャ…クチャ…

 時折、其処から漏れる水音が…まるで深い口付けを交わしている時のような
淫らなものに変わっていく。
 一分ぐらい…そうしていただろうか。
 ようやく解放して、スプーンを引き抜いていった頃には…銀糸が口端から伝い、
克哉の瞳は、潤み始めていた。

「こ、んなの…不意打ち、です…ずる、いですよ…御堂、さん…!」

 冷たい金属に、ふいに性感を刺激されて…自分の口の中が酷く淫らになっていた。
 似ているけど、否なる感覚。
 あんなに硬くて冷たいものじゃなくて…同じ部位を、暖かくて柔らかい舌先や唇で
刺激されたいという…いやらしい欲求が湧き上がって、どうしようもなくなった。

「…悪いな。君が素直に…私の口から、食べている様子を見て…つい、
可愛くて…そうしたくなった…」

「また、オレを…可愛い、って…言う、んです…ね、んんっ!」

 スプーンをお盆の上に置いていくと同時に、一旦それごとサイドテーブルの上に
どけていって…すぐに身を乗り出して、克哉の唇を塞いでいく。
 本当は風邪を引いている人間に、こんな振る舞いをするのは…自分も移る可能性が
あるし…相手の体力を無駄に消耗させるだけだというのは判っている。
 だが、もう止まらなかった。

 たっぷりと…相手の唇を貪るように舌を蠢かしていって。
 その柔らかく熱い舌先を捉えて、たっぷりと吸い上げていくと…すぐに相手の身体から
力が抜けて…こちらに凭れ掛かっていく。

「はっ…あっ…み、どう…さ、ん…」

 たっぷりと二分は相手の口腔を犯していくと…唇を離した際、克哉は実に
悩ましげな眼差しを浮かべてこちらを見つめ返してきた。

「…今日、君を私の部屋に連れてきたのは失敗だったかもな…。このままでは、
とても君を安静になど…させてやれそうに、ない…」

 苦笑めいた笑みを浮かべながら…御堂が優しく克哉の髪を梳いていく。
 その口調もまた…自嘲めいたものが滲んでいたが、彼の方もまた…克哉が欲しくて
仕方ない心境になってしまっている。
 すると…克哉もまた、顔を真っ赤にしながら…ぎゅっと恋人の背に腕を回して…
小さく、呟いていく。

「…いえ、その…良いんです…。貴方に、その…気遣って貰ったり…優しく、
してもらって…オレ、も…凄く、嬉しかった…です、から…」

 御堂の耳元で、小声で…掠れた声でそんな可愛い事を伝えてくる。
 ギュっと彼の袖を掴んでいくと…勇気を振り絞って、自分の気持ちを告げていった。

「…だから、御堂…さん。貴方の好きに…して、下さい…。オレは…今は、
貴方の…もの、なんですから…」

「…っ!」

 それは、御堂にとっては殺し文句以外の何物でもない一言。
 聞いた瞬間に…辛うじて残っていた理性がコナゴナに砕け散っていく。
 愛しい人間から、こんないじらしい一言を聞かされて…男として冷静でいられる
訳がないのだ。

「克哉…!」

 其処で、御堂もまた余裕のない表情を浮かべていく。
 強い力で…相手の身体を抱きすくめていきながら…御堂は、克哉を…
自分のベッドの上に組み敷いていったのだった―

 

 スっと御堂の唇が額から離れていくと…克哉は拗ねたような表情を
浮かべていた。
 その様子を、男は悪戯っぽい笑みを浮かべながら楽しげに眺めていく。
 正直言って、少し悔しかった。

「…御堂さん、絶対に…オレをからかって遊んでいますよね…」

「いや…そんな事はないぞ? 今の君がとても可愛いな…と思ったから、つい
そうしたいと思っただけだが…」

「…オレは可愛くなんて、ないですから…あんまり何度もそう連呼しないで
下さい…」

「私はお世辞や、心ない事は言わないぞ。それより…そこまでお腹が空いているなら
早くこれを食べると良い。やはり暖かい内に食べた方が旨いからな…」

 そういって御堂がサイドテーブルに置いたおかゆをもう一度近くに運んで来ると
克哉は身体を起こしていく。
 自分の太股辺りにおかゆの皿が載ったお盆を乗せられて、その美味しそうな
匂いに唾を飲み込んでいく。

(気分的には食欲がないって感じだけど…身体は最低限の栄養は求めている
感じだな…)

 色合い的に、純粋なお粥ではなく牛乳を入れてざっと煮込んだミルク粥と
いった雰囲気だった。
 中にはニンジン、ほうれん草、玉ねぎなどの野菜が細かくして入っており…
真ん中には粉末パセリが少量乗っけられていて…色彩も良い。
 味付けもスライスチーズを一枚細かく千切って混ぜ、塩、コンソメスープの素、
それと少々の砂糖と塩コショウ、粉チーズも混ぜ込まれていた。
 
「…凄く美味しそう。さっきまであまり食欲なかったですけど…これなら、充分
食べれそうです…」

「あぁ…そうでなくては困るな。一応…インターネットで検索してレシピを調べて
初めて作ってみたものだ。君の口に合うと良いんだが…」

「えっ…これ、初めて作ったんですか?」

「…今までは自宅に招き入れて、風邪の看病までしたいと思える相手は…
いなかったからな。もう良いだろう…冷めてしまうぞ」

 ぶっきらぼうに言い放つその姿は、一見すると冷たく見えるが…その照れたような
表情と一言に、ジンワリと克哉は嬉しくなっていった。

(確かに以前の御堂さんだったら…そんな事はしなさそうだもんな…)

 自分がMGNに移籍してからの、日々の御堂の変化に…克哉自身もまた
驚かされる事が多かった。
 関係を持ち始めた頃はあんなに冷たくて残酷な男はいないと思っていた。
 だが…今日の御堂は、自分が熱があると知ったら必死になったり…ミルク粥を
作ってくれたり、とても優しくて。
 膝にその重みを乗っけているだけでも…幸せな気分がジワジワと心の中に
広がっていくかのようだった。

「はい…それじゃあ、頂きますね…」

 一言、断りながら…火傷しないようにフーフーと何度か息を吹きかけてから…
慎重にスプーンで掬って…口元に運んでいく。
 今の克哉は高熱は出ているが、そんなに鼻が詰まっていたり扁桃腺まで腫れて
いる訳ではない。
 一口食べただけで…美味しい風味が鼻腔を抜けていって、心地よい塩加減の
粥がスルスル~と喉に入っていく。
 傍らに置いてあった椅子に腰掛けていきながら御堂が問いかけていった。

「…どうだ?」

「あ、はい…凄く美味しいです…。とても初めて作ったものとは思えないくらいに…」

「当然だな。…厳密にレシピを守るように心がけたのだから…。これで美味しく
仕上がらなかったら味付けの分量の方が間違っている事に他ならないな…」

「…貴方らしい言葉ですね…。けど、嬉しいです。オレを気遣って…こんなに
美味しいものを作ってくれるなんて…以前から考えたら、夢みたいです…」

「うっ…」

 その一言を発した瞬間に、今度は御堂の方が言葉に詰まっていく。
 すぐにコホン、と咳払いを一つして…顔を背けていった。
 克哉の素直な賞賛の言葉が嬉しいと同時に気恥ずかしくてくすぐったいのだろう。
 今度は御堂の方が…頬を軽く染めていった。
 その様子を見て…克哉がミルク粥を食べながら微笑ましげに見つめて…
クスクスと笑っていった。

 ゆっくり…ゆっくりと…御堂の愛情が篭った料理をしっかりと味わっていくように
時間を掛けて克哉は食べ進めていく。
 御堂もまた、チラチラと彼を眺めていきながら…その様子を見守っていく。
 訪れる、穏やかで優しい時間。
 その暖かな空気に包まれながら…ゆったりとした気分になっていく。
 克哉が半分程、自力で食べ終えた頃…御堂がこちらを向き直り…今度は
強気の表情を浮かべて言い放っていく。

「克哉…残りは、私が食べさせてあげよう。…君は病人なんだからな。一旦…
ベッドに横たわって休むと良い…」

「…えぇ?」

 突然の御堂の申し出に、克哉は素っ頓狂な声を上げていく。
 それで一度乱れたペースを取り戻したのだろう。
 克哉が動揺している隙に、グイと男は身を乗り出していって…楽しげな
笑みを浮かべながら克哉の瞳を覗き込んでいく。
 今日の彼は…熱があるせいで、すぐに慌てたり驚いたりして…いつもよりも
感情表現が豊富で。
 見ていて可愛くて仕方ないので…つい、かまいたくなって仕方なくなる。

「・・・遠慮、することはない。私達は…もう、恋人同士なんだ。それくらいは…
愛しいと思う相手にしたいと思うのは…当然の、感情だろう…」

「えっ…は、はい…。でも…」

「私が君にそうしたい…と思っているんだ。それくらいは…是非、させて
貰えないか…?」

 フッと真摯な眼差しになりながら…そう告げていくと、克哉もそれ以上…
突っぱねる事が出来なくなってしまう。
 御堂の提案は恥ずかしかったが…同時にどこかで、嬉しくもあって。
 同時にまた…胸の鼓動がバクバクと忙しなくなっていくのを感じていた。
 
(あぁ…御堂さんの部屋で、この人の匂いに包まれていたせいで…やっぱり
いつもよりも意識しちゃっているよな…)

 そんな自分に溜息を突きながら…それでも、どうにか口端に笑みを浮かべて…
コクン、と頷いていった。

「…はい、どうぞ。少し照れ臭いですけど…御堂さんの好きなようになさって…
下さい…」

 そうして、手に持っていたスプーンを…御堂の方に柄の部分が来るように
そっとお盆の上に置いていき。
 相手がそれを手に取る仕草を…ジっと見つめていった―

 

  御堂の手元から、ホカホカと暖かな湯気と美味しそうな匂いが漂っていて
さっきまでは食欲も殆ど感じていなかったのに…いきなり、グウとお腹が鳴って
反応を示していった。

 グキュルル…。

「うわっ…!」

 彼がこちらに声を掛ける前に、自分のお腹の音が盛大に鳴ってくれたもの
だから…克哉は顔を真っ赤にして、起こそうとした身体を…慌てて布団を
被って、伏せていく形で恋人から顔を逸らしていった。

(うわっ…恥ずかしい! 確かに今日…忙しくて昼食も野菜ジュースと
カロリーメイト一箱ぐらいしか食べていなかったけど…! よりにもよって
御堂さんの前でこんな大きな音で鳴らなくなって…!)

 身体の生理反応なのだから仕方ないと判っていても、克哉にとって御堂は
未だに一緒にいるとドキドキやソワソワしたり、落ち着かなかったり…ときめきを
現在進行形で感じている相手なのだ。
 そんな人の前で…はっきりと聴こえるぐらいに大きな音なんて…特に相手の
匂いを感じて、意識をしていた直後の話だから…居たたまれないくらいに
恥ずかしくてしょうがなかった。

「…克哉?」

 だが、御堂の方は状況についていけてないようだった?
 どうしたんだ…? という感情を交えながら、躊躇いがちにこちらに声を掛けてくる。

「…うっ…その…」

「どうした? お腹が空いているんじゃないのか? あんなに盛大な音を立てて
いたのなら…早く食べた方が良い。少しは食べないと体力が戻らないからな…」

「わ、判っていますけど…」

 未だに羞恥で顔が火照り、カッカと頬が赤いままだ。
 この状態で御堂に顔を見られるのは…余計にどうして良いのか判らなくなるので
布団をズッポリと被っていきながら…顔を隠していく。

「…克哉、せっかくおかゆを作ってきたのに…君は食べないつもりか?」

「い、いえっ! そんな事はないです! 御堂さんが作ったものならば…オレ、是非
頂きたいですが…今は、ちょっと…!」

「…先程から君は、変な態度ばかり取っているが…大丈夫か? もしかして…それ程
高熱が出ているのか…? 克哉…?」

(うわ…その、確かに体温は上がっているけど…それ、は…!)

 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!

 御堂が自分を心配してくれるのは嬉しいし悪くない気分だったけれど…今はどうしても
顔を見られたくない一心で、相手から背を向け続けていく。
 暫くは相手も待ってくれていたが…その状態で2分も待たされたら、いい加減彼の方も
焦れたらしい。
 サイドテーブルの上におかゆが入った皿を乗せていくと、思いっきり布団を捲り上げて
ベッドの上に乗り上げていく。

「克哉…一体、どうし…」

「…わっ!」

 どうしたんだ? と続けようとした彼の言葉は…克哉の耳元を見ただけで一瞬、止まって
いく。耳全体が真紅に染まって頑なにこちらを振り返ろうとしない態度に…克哉は高熱が
出て妙な態度を取っている訳じゃなく…恥ずかしくて、そんな感じなってしまっているのだと
いうのを…御堂は瞬時に理解していった。

「…もしかして、さっきから私の顔を見ようとしていなかったのは…照れていたから、
なのか…?」

「そ、その通り…です…だから、あの…」

 そうやってトロンとした眼差しを浮かべながら、顔を真っ赤に染めて言いよどんでいく
姿は…不謹慎に思われるだろうが、御堂にとっては可愛らしくて仕方ない。

「…私は、気にしていないぞ? むしろ…大きな腹の音がしたという事は…それだけ
身体が影響を要求している良い傾向だからな…だから、こっちをそろそろ向いたら…
どうなんだ…?」

「は、はい…」

 熱っぽくて、身体全体がダルいせいだろうか…。
 頭も良く回ってくれないし、指を一本動かすだけでもかなり億劫だった。
 それでも…御堂に顔を向けるように促されて…それを突っぱねる事もためらいが
あったので…オズオズと相手の方を向き直っていくと。

 チュッ…。

 ふいに穏やかな手つきで髪を掻き上げられて…額に、優しくキスを落とされて…余計に
克哉は顔全体を朱に染め上げる結果になっていった―



 ピピッ!

 特徴的な電子音が響き渡ると同時に、脇から体温計を取り出して…佐伯克哉は
思いっきり溜息を突いていった。

―38度か。結構高い熱だな…。

 彼は一人、熱を出して…御堂のベッドの上でゴロンと転がっていった。
 ふとした瞬間に相手の残り香が鼻に突いて…それだけで落ち着かなくなって
しまっていた。

―どうしよう。このままじゃ…とても、オレ…落ち着いて身体なんて休められない…!

 御堂と恋人同士になってMGNに移籍してから三ヶ月。
 以前に関係を持ったばかりの頃と違って、優しい表情や態度を見せてくれるように
なってくれたのは克哉としても非常に嬉しかった。
 だが…同時に、そうされる事に慣れずに…戸惑いを感じる事も多く。

 就業時間間際に、ふと…ガクっと身体のバランスが崩れた事で、今日一日…高い
熱を持って無理して仕事をしていたのがバレて、即効で彼の車に乗せられてこの
マンションに運び込まれて、ベッドに押し込まれたのだ。
 御堂はこちらの上着を脱がせてネクタイを解き、ベルトを緩めていくと…さっさと
台所に向かい…克哉用のおかゆを作り始めていた。
 安静にして身体を休めているんだっ! と命令口調で強く言われていたが…その
慌てたような振る舞いを思い出して、克哉はつい…クスクスと笑って行く。

(あの人の…あんなに慌てた顔が見れるなんてな…)

 以前の酷い仕打ちばかりされた頃に比べれば嘘みたいだった。
 だから、高熱が出て身体的には辛かったけれど…嬉しくて、頬が緩んで
しまっていく。
 自分がこんな事を口にすれば、あの人はきっと…怒るか、照れたような顔を
浮かべてソッポを向いていくだろうけれど…。
 
「まさかこんな日が来るとはな…」

 そう言いながらもう一回身体を転がして…その喜びを噛み締めていく。
 御堂は果たして…どんな顔をしながら、おかゆを持ってきてくれたり…傍に
いてくれるのだろうか?
 今まで…正式に交際してから、体調を崩した経験などなかったから…ちょっと
興味があった。
 普段の彼と違った一面をまた…知る事が出来るのだろうか?
 そう考えるだけで胸が弾んでいく自分を、少々…不謹慎だなと苦笑したくなった。

(…不謹慎かな。心配掛けて迷惑掛けさせてしまったのに…それを嬉しいと思う
なんて…)

 静寂を讃えた室内に、時計の秒針が動く音だけが響いていく。
 御堂の気配、空気を感じられる室内。 
 それを全身で感じ取りながら…彼は瞼を閉じて、身体を休めていこうとする…が
心臓の鼓動だけは依然、荒いままだった。

(…鎮まれ、心臓…。ドクドクと大きくなっているだけで…余計に意識、を…
してしまうから…!)
 
 しかし克哉の意思に反して、部屋の外から微かな足音が耳に届くだけで…
一層鼓動は荒く落ち着かなくなっていく。
 そして足音が部屋の前で止まっていくと…ゆっくりと寝室の扉が開かれて
向こうから御堂の姿が現れていく。

「克哉…おかゆが出来た。食欲が少しでもあるのなら…ちょっとでも胃に
入れておいた方が良い…食べれるか?」

 そう問いかけながら、御堂は…おかゆの入った皿を載せたお盆を手に持って…
部屋の中へと入っていった―
 

  暫く浴槽の中で行為の余韻に浸った後、二人で身体を拭い合って…そうして
清潔なパジャマに身を包んで、シーツの上に横たわった。
 流石にバスルームのように高温多湿な場所で…二回も求め合ったのが
効いたようだ。
 ベッドの上に横たわる頃には…二人とも心地よい疲労感を覚えながら
ぐったりと四肢を投げ出していた。

「…佐伯、身体の方は…大丈夫か?」

「あ…はい。一応…大丈夫、です…御堂さん…」

 呼び方が『佐伯』に戻っていたので、克哉もまたそれに合わせて彼の事を
御堂さんと呼び返していく。
 …付き合ってみて判ったのだが…御堂は案外、照れ屋で…心を通わせてから
すでに三ヶ月が経過しているというのに未だに素面のままではこちらを「克哉」と
呼べないらしい。
 彼が下の名を呼んでくれるのは、セックスの時とワインに酔っている時だけだ。
 最初はそれがもどかしかったが…今はそんな不器用な部分も愛しいと感じている
のだから、こちらも重症かも知れなかった。

(…まだ、オレも孝典さんも…鼓動が、荒いな…)

 湯上りの為か、肌はしっとりと汗ばみ…お互いに吸い付くようだった。
 重なり合う胸からは、相手の鼓動が感じられる。
 まだどこか忙しないリズムは、自分達が交歓しあった証だ。
 そう考えると照れくさいし、恥ずかしい…が同時に喜びもあった。

「佐伯…」

 静かに髪が掻き上げられて…頬が撫ぜられる。
 穏やかで優しい手つきに…凄く心地よさを感じた。
 最初に無理やり身体の関係を持たされた頃は…彼とこんな時間が持てるように
なるなど…想像もしていなかった。だからこそ余計に…幸福感を覚えた。

「…なんですか? 御堂さん…」

 静かに彼の方に眼を向けて…互いの視線が重なり合う。
 ふいに互いの間に流れる甘い空気が、濃密なものに変わる。
 無言で唇を寄せ合う。
 それはごく自然に重なり合った。

「ぅ…んっ…っ!!」

 最初は軽く唇を吸われるだけだったが、ふいに御堂から唇を噛まれて咄嗟に
身体を大きく震わせた。
 ジワリ、と血が滲んでいくのを感じる。
 それを御堂の熱い舌先で…そっと舐め取られていった。

「…思った通りだ。君の血は…凄く、甘いな…」

 他の人間の血なら、ただ生臭くて…とても飲めたものじゃないが大切に
思う人の血潮なら話は別だ。
 
「…美味しい、ですか…?」

「あぁ…」

 そう、短く返されて…丹念に唇を舐め取られていった。
 甘い痺れが、背筋に何度も走りながらも…克哉はその感覚に耐えていく。
 血が止まるまで、その行為は繰り返されて…その頃にやっと御堂は顔を
離して…低く囁きを落としていった。

「…克哉。君も…私のを…試してみるか…?」

「…良いんですか? …貴方を、傷つけても…」

「…たまには、君の方からも私に痕を刻むと良い。私ばかりが…君の身体に
刻んでいるのだからな…」

 御堂の身体に傷をつけると思うと、何か悪い気がして…今までどれだけ
彼から痕を刻み込まれても克哉の方から返す事は殆どなかった。
 しかし…彼からそう言われて、望まれたのなら…別だ。
 覚悟を決めて…もう一度唇を寄せて、強く歯を立てて唇を噛んでいった。
 ゆっくりと…御堂の血がこちらの口腔に滲んでくる。
 それを味わうように…克哉もまた、舌を這わせていく。

(不思議だ…本当に、甘く感じる…)

 ふと、血とワインは根っこに同じ味が潜んでいるように思えた。
 葡萄には沢山の鉄分が含まれているせいだろう。
 だから古来の人々は…ワインを人の血に例えたのだろうと…妙に納得しながら
御堂の唇から顔を離していった。

「…すみません。痛くなかったですか…?」

「…私が望んだ事だ。謝らなくても…良い…」

 こちらが御堂の頬に手を添えて、ゆっくりと触れていくと…もう一方の手を
捕らえられて指を絡まされていく。
 指と指の間の付け根を愛撫される、それだけの刺激でも感じてしまうくらい…
この人が好きなのだなと妙に実感出来た。 
 ぎゅっと手を握り合い、気持ちを確認しあっていく。

 そのまま御堂の…パジャマから覗いている首筋から、鎖骨に掛けて久しぶりに
こちらからも痕を刻み込んでいくと…酷く興奮した。
 彼の肌に所有の証を刻む度に、喜びを感じる。
 いつも沢山の痕をこちらに刻む御堂の気持ちが少しだけ判った気がした。
 そのまま手を降下させて…御堂の胸の中心に手と顔を寄せた。

(暖かい…孝典さんの…胸の中は…)

 そのまま、コテンとその上に頭を乗せて瞳を伏せていけば…その音が
コトンコトンと伝わってくる。
 それは…優しい子守唄のように今の克哉には感じられて、心地よい
安らぎを覚えていった。
 御堂がそんな克哉の髪をどこまでも静かに梳いていた。
 優しい時間の訪れに…そのまま、安息の方に意識が招かれていった。

「…今夜は疲れただろう。君も…そろそろ、休むと良い…」

「…はい。言葉に甘えさせてもらいます…孝典、さん…おやすみ、なさい…」

 本当は今の御堂に、こちらを克哉と呼ぶのは気恥ずかしくて駄目だろうと
半ば判っていたが…それでも、下の名前で呼びたくて敢えてそうしてみた。
 少しの間だけ、御堂が逡巡していく。
 照れくさそうに頬を染めて…少し考え込んでいた。
 暫しの間が生まれて…やっと御堂が身体を動かすと、そっと生え際を掻き上げられて
額に優しく口付けられていた。

「…おやすみ、克哉…」

 必死の想いで、照れくささを殺して…御堂が克哉にそう告げた。
 最初は驚いたけれど…すぐにじんわりと喜びがこみ上げてきて、克哉は
心底嬉しそうに微笑んでいく。

「はい…貴方も、どうか良い夢を…」

 そうして…二人の意識はまどろみの中に落ちていく。
 燃えるように真紅な、情熱的な時間は静かに幕を下ろして―
月光が静かに降り注ぐ部屋の中で…二人は寄り添い、安息に浸る。
 
 共に在れる幸福が胸を満たしていきながら…
 二人は夢の中へと静かに引き込まれる。
 どうかいつまでもこうして一緒にいられるようにと
二人の静かな祈りが…夜の闇の中に静かに溶けていった―

 お互いに達して、力が抜けた身体を清めると…身を寄せ合いながら浴槽に
浸かっていった。
 充満する芳醇な香りは、どこか…以前に御堂が克哉の誕生日に
用意してくれた克哉のヴァンテージ(生まれ年)のワインと似ていて。

 御堂が手ずからデキャンタしてくれたそれは…最初は、少し異臭がして
まずかったのに…室温で少し置いておいたら、まるで別物のように
力強い美味しさと芳醇な香りを漂わせていて、美味しかった。
 幸せな記憶と、今こうして…大事な人と一緒にいる時間が重なり
克哉はかなり幸福な気持ちになっていた。

(…気持ちいい…)

 瞳を細めながら、赤い湯に浸かって…御堂の身体に何度も頬ずりしていた。
 欲望を一旦沈めた後だから…こうして、密着して穏やかな時間が流れていく。
 御堂が入れた薄められ、人の手で弄られたワインが、暖かいお湯の中で…
ゆっくりと香りだけでも本来の芳醇さを取り戻していた。
 それが作り物だったワイン風の入浴剤の匂いに奥行きを与えて…芳しさを
生み出していた。
 
「…身体は、大丈夫か…?」

「…はい、平気です。こうして少し休んでいれば…」

「そうか…」

 そうして、唇が重なり合う。
 何度も熱い吐息を交換し合い、ぎゅっと強い力で相手を抱きしめあう。
 御堂の熱い舌がこちらの口腔を蹂躙していきながら、克哉の胸の突起を弄り
…もう一度、身体の芯に熱を灯していく。
 その度にチャプチャプと浴槽の湯が揺れ…赤い波紋状の光が、二人の身体や
バスルームの壁にゆっくりと掛かって…輝いていた。

「…君は、赤が良く似合う…」

「…そ、んな事は…あっ……!」

 克哉の白い肌が、赤い水の中にぼんやりと浮かび上がり…何とも艶かしい
様子になっていた。
 そのまま…真正面から抱き合う形になって…もう一度…克哉の蕾に
己の欲望を宛がっていく。
 すでに一度受け入れて綻んでいる其処は…あっさりと御堂を飲み込んで
最奥まで誘導していた。

「…御堂、さん…また、熱くなって…オレの中で…ドクドク、言ってる…」

「あぁ…それは君がとてもいやらしい…からな…。こちらも煽られて、どうしようも
なく君の中で…大きくなっているんだ。…判るか…?」

「…っ! 意地が、悪い…ですよ…ひゃあ!!」

 深い処を容赦なく抉られて…湯の中で克哉が跳ねていく。
 その感覚に耐えようと、必死になって御堂の身体に縋りついた。
 背中に爪を立てるぐらいに強く、その逞しくジムで鍛えられた背中にしがみついて
与えられる感覚に耐えていく。
 けれどそんな甘い攻めさえも…今は幸せで仕方なかった。
 
「あっ…!た、かのり…さん…好き、です…! 本当に…オレ…!」

「…私、もだ…。だが、こういう時に言うのは…反則、だな…」

 互いの胸板がぶつかりあい、胸の突起が擦れ合う。
 克哉の欲望もまた…彼の腹部に何度も擦り上げられて、どうしようもなく
はち切れて脈動している。
 先端からいやらしく蜜が零れて、浴槽の中に滲んでいる。
 激しいキスに、情熱的な交歓を…真紅の液体の中で続けてお互いに
限界近くまで情欲を高めていった。

「はっ…ぁ…!!」

 克哉が身を捩らせて浴槽の縁に手をついていくと…ふいに御堂は
ワインボトルの形をした入浴剤に手を伸ばしていく。
 その液体を…ふいに克哉の胸元に足らすと…それはまるで鮮やかな赤い血の
ように腹部の方へと伝い…赤い水の中に溶けていった。

「…あぁ、思った通りだ…。君には…鮮血も、良く似合いそうだ…。
君の肌にとても…鮮やかな紅は映えるな…」

 そうして、更に深い処まで己を穿ち込んでいく。

「ひぃ…あっ!!」

 克哉の肩口に顔を埋めて、何度も何度も強く吸い付いて…己の所有している
証である赤い痕を散らしていく。
 そう、この肌に赤は良く似合う。
 この赤は…己が所有している証であり…自分の痕跡が彼に刻まれている証だ。
 週末の度に繰り返し刻み込み、今では薄くなる事があっても決して消える事はない。

「…た、かのり…さ、ん…た、か…のり…さっ…!」

 克哉はうわ言のように御堂の下の名を呼び続けて…こちらに抱きついてくる。
 その様が可愛くてしょうがなくて…御堂は何度も何度も、その唇を啄ばんで
甘く吸い上げてやる。
 その度に克哉自身が湯の中で大きく跳ねて、揺れる様が…御堂の
嗜虐心を大きく満足させていた。

(綺麗だ…)

 赤いワイン色の液体の中で、快楽に身を委ねて…踊るように身をくねらせている
克哉の身体は…酔いしれたくなるくらいに妖艶で綺麗で。
 赤い湯から生まれる波紋は…まるで舞台を照らすスポットライトのように、
彼の身体をいやらしく浮かび上がらせていた。

「克哉…もう、一度…君、の中で…っ」

「はい、何度…でも、オレに…貴方を、下さい…!!」

「っ…!」

 そんな殺し文句を言われながら、御堂もまた極まって…限界近くまで
克哉の中で膨張していく。
 それはあまりに情熱的で、狂わしいまでの時間。
 獣のようにお互いの身体を貪りあい、求め合っている。
 
「ん…ぁ…! はぁぁぁぁ!!!」

 ついに感極まって、必死に眉を潜めながら克哉が御堂の腕の中で
高く啼いていく。
 その絶頂に達した顔を眺めながら…彼もまた、熱い精液を克哉の
中に勢い良く注ぎ込んでいく。
 
 ドクンドクンドクンドクン…。

 お互いの荒い息遣いと、早く忙しない鼓動が浴槽内に響き渡る。
 じんわりと広がるのは心地よい疲労感と、ワインに酔いしれた時のような
程よい酩酊感だった。

「…克哉。君自身が…私にとっての、最上のワインなのかも知れないな…?」

 ワインは、聖書の中では…キリスト自身の血に例えられる記述がある。
 身体だけではない。
 彼の中に流れる血潮すらも、今は愛おしい。
 もし先程…彼の肌を伝った朱が…入浴剤などではなく、本物の彼の血で
あったなら…それも恋の熱に浮かされた今なら…自分にとっては
極上の美酒になる。そんな幻想が…ふと、御堂の脳裏に過ぎる。

「…えぇ、それで…貴方を酔わせる事が出来るなら…オレは幾らでも
貴方にとっての美酒に…なります、よ…たかのり、さん…」

 瞳を細めながら、とびっきりの幸せそうな笑みを浮かべて…腕の中の
克哉が微笑みかける。
 御堂もまた、嬉しげに口元に笑みを刻んでいた。
 それは幸福な恋人達の間にしか流れない、甘い空気だった。
 

 どこまでも芳醇な香りに包み込まれながら―
 二人は暫し、浴槽の中でぴったりと身を寄せ合わせていた―

 バスルームに入ればすぐに、シャワーのコックが回された。
 最初は冷たい水が掛かって、寒かったけれど…水が温まっていくのと同時に
こちらの体温も上がって、すぐに身体が火照っていくのが判った。

「あっ…た、かのり…さん…」

 御堂の唇が、項から首筋…鎖骨の周辺へとゆったりと辿っていく。
 その度に強く吸い付かれて、赤い痕が色濃く刻み込まれていった。
 週末の度に彼につけられる痕跡は、薄くなる度に上書きされて…この三ヶ月
克哉の身体から消える事がなかった。

「…君の肌、もう熱くなっているな…? そんなに私に触れられることに期待をして
いたのかな…?」

「…っ! そんなの、見て…判りません、か…?」

 濡れた胸肌を、しなやかな指先で辿られて克哉の身体がピクリ、と跳ねていく。
 ただ御堂に抱きすくめられて、体温を感じながら首筋に吸い付かれているだけで
胸の突起は赤く充血して…硬くしこり始めていた。

「…くくっ、判らないから…聞いている…」

「…嘘つき、ですね…たか、のり…さんは…本当に、こういう時は…意地悪、だし…」

 克哉が拗ねた表情を浮かべているのが、気配で判ったのだろう。
 髪の毛に優しく口付けていくと…そのまま、クシャと静かに撫ぜていく。

「…悪いな。私にとって…君は本当に、可愛いからな…。だから凄く虐めたくなってしまう…
怒った顔も…拗ねた顔も、私は…好きだからな…」

「…っ! ずるい、です…そんな、事を…言われ、たら…」

 これ以上、拗ねている事も反論する事も出来なくなる。
 そう続けようとしたが、ふいに臀部に御堂の熱くなったモノを押し付けられて…喉から
言葉がまともに紡げなくなる。
 両手で容赦なく克哉の胸の突起を弄り上げながら…熱く脈動しているペニスを蕾に
幾度も擦り付けてくる。
 すでに彼に貫かれる快感を覚えこんでいる肉体は、それだけで反応していやらしく
収縮を繰り返していく。

「はぁ…ぁ…や、だ…もう、貴方が…ほ、しっ…」

「私、もだ…早く、今夜は…君を…奥まで、感じ取りたい…」

「…っ、は、い…オレ、も…あぁ!!」

 いきなり腰を深く折り曲げて、両肘を壁に押し付ける格好にさせられたと思ったら
深々と最奥まで串刺しにされていった。
 御堂の熱い塊が、自分の中を満たしていくのが感じられる。
 それだけで心も満ちて、どうしようもない快楽を覚えていった。

「ひゃ…あぁ!! やっ…た、かのり…さんっ! それは…早すぎ、て…だ、め…!
おかしく、なる…ひぃ!!」

 パンパン! とバスルーム中に肉を打つ音が響き渡るぐらいに激しく抽送を
繰り返されたらもう駄目だった。
 彼のモノに馴染んだ身体は、性急な行為でも彼をしっかりと受け止めて…包み込むように
内部が収縮し続けているのが判った。
 御堂のペニスが前立腺の部位を探り当てて、入念に其処を擦り上げていけば…あまりの
悦楽に克哉の身体は大きく震えて、早くも一度目の絶頂を迎えようとしていた。

「…君が、欲しいんだ…手加減、など…今は、出来る訳が、ない…くっ…!」

 帰宅して背後から抱きすくめた時。
 一緒に夕食を食べて、その後にワインとチーズを楽しんだ時。
 脱衣所で恥ずかしそうに着脱している姿を見た時から…ずっと、克哉を抱きたくて
仕方なかったのだ。
 じっくりと味わう余裕などない。まずは心行くまで貪って…一緒に高みに登りつめたい。
 その欲に突き動かされて、夢中で脆弱な場所を突き上げて…犯していく。

「やぁ…あぁぁ!! も、ダメ…です! イ、ク…!!」

 必死に頭を振りながら、バスルームのタイルに爪を軽く立てながら…克哉が御堂の
腕の中で悶えて、快楽の涙を零していく。
 彼の唇が耳朶を弄り、胸の突起を時折…強く抓られたり、爪を立てられたりしながら
最奥の脆弱な場所を攻め上げられて…どうしてその快楽から逃れられるというのだろう。
 頭が、真っ白になる。
 息が詰まって、肺が酸素を求めて激しく喘いでいく。

「…あぁ、イクと良い…私、も…もぅ…!」

 御堂もまた息を詰めて、走り抜けていく強烈な悦楽に耐えていく。
 克哉の最奥で…ドックンと荒く脈動して、限界が近い事を訴えた。

「あっ…あぁっ!!!」

「克哉っ!!」

 ほぼ同時に、二人の唇から余裕のない叫びが漏れて…ほぼ同時に達していく。
 克哉の中に熱い精液を勢い良く注ぎ込み、二人とも荒い呼吸を繰り返す。
 

『はぁ…はぁ…』

 とりあえず…お互いの欲望を一度は満たして、荒い呼吸を続けていく。
 暫くして呼吸が整い、克哉は胸いっぱいに…深呼吸をした。

(えっ…?)

 その時、克哉は驚いた。
 先程までは噎せ返るような強い香りがバスルーム中に充満して、鼻がツンとする
ぐらいだったのに行為の最中にその匂いが変化して…芳しいものへと変質していた。
 それは余りに芳醇で力強く、同時に…克哉にとって大事な記憶を呼び覚ましていく。

「…御堂、さん…これ…? 何で…凄い、良い…匂いに…?」

 不思議そうな顔をして彼を振り返ると…御堂は満足そうに微笑んでいた。
 彼の方は驚いておらず…むしろ、予測済みであったかのように…余裕たっぷりの顔を
浮かべていた。

「…本当に、上質のワインなら…どれだけ薄められて、手を加えられて変質してしまっても
条件さえ揃えば…息を吹き返して、その存在感を放つ。そういう事だ…克哉…」

 そう満足そうに微笑む御堂を見て…克哉の脳裏に、一つの彼との思い出が蘇っていく。
 それでようやく…何故、何よりもワインを愛している彼が…浴槽の中にそれを入れるなんて
暴挙に出たのか…やっと克哉は納得がいったのだった―。



 
 衣類を脱いでいる最中、克哉は思考を逡巡させていた。
 御堂はあぁ言ってくれたけど、独断過ぎたかな…と思う部分はあった。

(けど…何となくこの入浴剤を試してみた時…ワインの香りがパアっと広がって
それで…御堂さんを思い出して、凄い幸せな気持ちになったんだよな…)

 それまでウォッカ、ジン、ウイスキーなどの蒸留酒系の強い酒ばかりを好んで
飲んでいた克哉が、ワインをメインに飲み始めたのは御堂の影響だ。
 白ワインやロゼなどの甘い物とかは正直苦手だったが、塩味の効いたチーズなどと
組み合わせれば甘酸っぱい程度の物なら美味しいと思うようになったし、
その変化もまた付き合い始めてから齎されたものだ。

 克哉にとっては、ワインやチーズを食べれば…すぐに御堂を思い出す。
 その香りも然りだ…あの時は彼に包まれているように感じて、何となく彼と
一緒にこの匂いに包まれたいな…と思ってしまった。
 それで夕食の準備をする前に、こっそりと新しいお湯を張って入浴剤を
投入したのだが…。

「…ちょっと、考えなし…だったかも…」

 御堂と一緒に入る、という事は…その、何もない訳がない。
 ちょっと期待している部分もあったが…実際に入る段階になると心臓はバクバクだ。
 一枚、一枚…衣類を脱ぎ捨てて、裸身になっていく。
 御堂もまた…同じように服を脱いで、見事に引き締まった均整の取れた肉体を
晒していた。

(…やっぱり御堂さん、格好良いな…流石スポーツジムで身体を鍛えて
いるだけある…)

 ネクタイを外し、スーツやYシャツを脱ぎ捨てると…その引き締まった二の腕や
胸元につい目を奪われてしまう。

「…どうした? 克哉…私の方ばかり、ジロジロ見て…」

 面白そうな顔をしながら、御堂が問いかけてくる。

「えっ…その…ちょっと気になったんですけど…さっき、ワインを一本…お湯に
勢い良く入れてしまっていたけど…良かったんですか? 御堂さん…凄く
ワインに愛着ある筈…なのに…」

「…私も、まともな生産者が作ったワインなら、どれだけ安いワインだろうと
あんな真似はしない。…ただあれは、儲け主義に走った業者が、色んな
余分な物を一杯混ぜて作った…ワインの残骸だ。あれと同じ物をもう一本貰っていたから
そちらを試したが…匂い以外原型を止めていない代物だ。だが捨てるのもどうかと
思ったので…こういう形で活用させて貰った。それだけだ」

「…そうです、か…」

 その言葉を聞いて、つい言葉に詰まった。
 やはり御堂は…人工的に作ったワインの香りなど気に入ってないのかも知れない。
 そんな考えが頭を過ぎったが…こちらの思考を読み取ったかのように…ふっと瞳を
細めて克哉を見つめてくる。

「…難しい話はこれくらいで良いだろう…。考えすぎるのは君の悪い癖だ。
それよりも…今は、私と一緒に風呂に入ってくれるんだろう…?」

 お互い、服を脱ぎ終えると…そのまま、背後から御堂に抱きすくめられていく。
 直接、相手の肌を感じるとやはり…鼓動が早まっていく。
 臀部に触れている御堂の性器が、すでに硬くなり始めているのを感じて、カァーと
身体が熱くなっていくのを感じた。

(もう…孝典さんの、硬く…なってる…)

 そのまま噛みつくように、苦しい体制で口付けられる。

「んっ…ぁ…」

 息苦しいくらいに激しく、口の中を熱い舌で掻き回されて…きつく抱きすくめられていく。
 その度に臀部に宛がわれた御堂のそれが…熱く硬くなっていくのを感じ取り、更に
克哉の身体も昂ぶり始めていた。
 夢中で口付けを繰り返しながら、そのまま性急に…二人は、バスルームの方へと
身体を誘導させていった―。
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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