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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7      10

 ―今思えば、去年の冬に再会して以来…ずっと克哉の胸の中には
重い罪悪感が宿り続けていた

 一度は成就を諦めた気持ちだった。
 本来なら叶うことなどありえない筈の恋だった。
 想いを自覚したことをキッカケに御堂から離れて、あの人を
解放することを選択した。
 滑稽な話だった。
 何が何でも御堂を手に入れようとしていたその執念の源となる気持ちを
克哉自身が自覚していなかったのだから。
 御堂を自分の処まで引き摺り下ろす為に、拉致監禁陵辱、脅迫まがいな
事をしでかしたのだと己自身も思い込んでいた。
 どうして、気持ちに気づかなかったのか。
 それは…自分にはそんな甘ったるい、生ぬるい感情など似合わないと
本心から目を逸らし続けていた。
 その行為が、御堂にあの屈辱の日々を送らせることとなった
最大の要因にもなった。
 だが、奇跡的に想いは叶い…御堂が自分の傍にいてくれるように
なってから克哉はずっと慢性的にこの疑問を抱き続けていたのだ。

―あんたは本当に、俺の事を愛してくれているのか? 腹の底から
許してくれているのか…?

 恐らく同じ事を自分が誰かにされたら、克哉は許すことなど出来ない。
 そう考えたからこそ、愚かしいことと判っていても克哉はその気持ちに
囚われ続けていた。
 本当に憎いと思っているのなら、そもそも一緒に働いたりセックスを
する道理がない。
 愛しい人を抱く度に、そう己に言い聞かせ続けていた。

 ―だが、克哉のその想いに反して…罪悪感や後悔の念は決して
胸の中から消えることなく…彼の心を苦しめ続けていた。

 まるで自分の中で澱になっていた気持ちを浮かび上がらせる為に…
もう一人の克哉はこちらを責めて来た。
 その時に、御堂が力強く言ってくれたからこそ…再会してから
初めて、克哉は…気持ちが軽くなったように思った。
 御堂がかつて住んでいた部屋とまったく同じ内装をした…薄暗い
部屋の中で、二人は対峙していく。

―あれは俺の罪を照らす鏡のようなものですよ

 もう一人の克哉に対して、そう返答して以来…重い沈黙が
訪れていた。
 息が詰まるぐらいに双方見つめあい、瞳で語り合っていく。
 その時間をどれくらい過ごしていただろうか。
 ついに克哉の方が焦れてしまい…深い溜息を突いていきながら
先に口を開いていった。

「…孝典。あんたは本当に…俺をもう憎んでいないのか…?」

 その言葉は、ずっと彼の中に潜んでいた疑問だった。
 御堂が全力でこちらの信頼に応えてくれていたからこそ、
尋ねたら失礼だと思って言えずにいた問いかけだった。

「当然だ。今でも憎んでいたり恨んでいる男の元に…新しい会社で
得た役職を捨ててまで来ると思うのか? 君が疑問に思うのも無理も
ない事だが…私が君の申し出を承諾した。その事に全ての答えが
存在していると思わないのか…?」

「……ああ、そうだな。本当に…あんたの言う通りだ」

 そうだ、思い出した。
 御堂は無理やり屈服させようとして…どうにかなるような生易しい
人では決してなかった。
 むしろ月単位にまで及ぶ監禁の日々でさえも、心が壊れる寸前まで
こちらに抗う意思を見せ続けた男だった。

「…私は無理やりいう事を聞かそうとしても、どうにかなる人間じゃないと
いう事は君自身が一番良く判っているだろう? どうして今更…そんな
疑問を抱くんだ?」

「…それは、あんたを愛しいと思えば思うだけ…かつて自分がやった
馬鹿げた行動に呆れたからですよ。正しい手段をあんたの気持ちを
手に入れたからこそ…あんな愚かなことをやった自分を許せないでいた。
それこそ、そんな単純な答えしか出てこないさ…」

 自嘲気味に克哉が答えると、御堂はグっとこちらの方に距離を
詰めていった。
 自分と同じぐらいの立派な体格をした…端正な男の顔が目の前に
存在して反射的にこちらから抱きしめていく。
 息が詰まるぐらいに強く抱きしめる。
 それを許すように御堂からも強い力を込めて抱きついてきた。

「…君にもまともな神経が宿っていたんだな。あれだけ可愛くなくて不遜な
態度を取っている男が人並みに罪悪感を覚えていたなんて…まったく
予想もしていなかった…」

「…おいおい、随分な謂われようだな…」

「うむ、キツイ事を言っている自覚があるが…再会してから会社を立ち上げる
までの君の電光石火のような行動の奥に、そんな殊勝な感情が存在していた
とは私も読み取れていなかった。…だから、君も言えないままになっていた
のかもな…」

「ああ、そうかもな…」

 そういって御堂はあやすように克哉の背中を撫ぜて、唇にキスを落としてきた。
 その柔らかい温もりを与えられて、克哉の中の罪悪感や後悔の念が…
氷解していくのを感じ取っていく。
 思いがけず目の前の御堂の双眸が優しい色合いを帯びていく。
 その紫紺の瞳に目を奪われていきながら…克哉は相手が紡ぐ心地の良い
言葉にそっと耳を傾けていった。

『だが、私は君の傍にいる。そしてこうして…触れ合いながら共に同じ
目標を持って日々を送っている。行動の中に私の本心があるだろう。
…憎んでいるなら、その気持ちの方が強いようなら…そもそも君に告白
めいたことも、あの日…待ち伏せをしたりもしなかっただろうに…」

「ああ、そうだな。確かに…あの日、再会したことが…あんたが気持ちを
伝えたことが…何よりの、証だったな…」

 忙しい日々を送っていたから…忘れかけていた。
 今の自分達の関係が新たに始まったあの冬の日の出来事を。
 そう、御堂が待っていてくれたから。
 こちらに気持ちをぶつけてくれたからこそ…克哉は一度は諦めた
恋心を得ることが出来たのだ。
 克哉からはどうしてこの人に告白することが出来ただろう。
 御堂からのリアクションがあったからこそ…克哉はこの人の手を
取ることが出来たのだ。
 そう、答えは…あの日に全て存在していたのだ。

―御堂が告白して想いを告げてくれた。それこそが…全ての答えで
あった事をようやく克哉は気づいていった

「そうだ、君は…本当に手のかかる男だな。こんな男の傍をうっかり
離れようものならどうなるか判らないからな。簡単には離れないぞ…」

「おいおい、それじゃあ俺が本当に手の掛かるどうしようもない
人間みたいなじゃないか…」

「そうじゃなかったのか? 私はそういう風に君を見ていたがな…」

「…あんたも、相当に人が悪い。そんな口を俺に叩いたらどうなるか…
実際に思い知らせてあげましょうか…?」

 そういって軽口を叩きあいながら、二人は静かに唇を寄せて…
口付けあっていく。
 その感触に克哉はうっとりとなりかけていった。
 こうして抱き合い、キスをしているだけで…どこまでこの人はこちらに
幸福感を与えてくれているのだろう。
 そう実感した瞬間、克哉は違和感を覚えていった。

(…どうして、ポケットが熱いんだ…?)

 唐突に上着のポケット部分がまるでホッカイロでも入れているかのように
暖かくなり始めているのに気づいて、そっとキスを解いて手で探って
鍵を取り出していく。

「…っ! これは…」

 克哉が驚いた顔をして取り出した鍵を確認していくと…魔法の鍵は
淡く輝きながら、脈動しているかのように…一定の間隔を持ちながら
光を点滅させて熱を持っていたのだった―


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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