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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                            10
                                                        11  12  13  14  15

 ―謎の男の後に続いて、御堂が辿りついた場所は…繁華街の外れ。
 薄暗く、人が滅多に訪れそうにない…どこかうらぶれた界隈だった。
 物陰から何かが飛び出して来そうな雰囲気がする。
 街灯も何個か途切れたり、壊れたりしているものが存在しているせいか
明かりが差していない部分も多く…それが一層、空気を重いものにしていた。

(随分と治安が悪そうな場所だな…本当にこんな場所に足を踏み入れて
大丈夫なのだろうか…?)

 常にエリートとして、人生の表街道を歩き続けてきた御堂にとっては
このような怪しい場所に今まで用がない限りは訪れた経験がない。
 それでも知りたいことがある以上、こちらの立場は決して強い
ものではない。
 黙って、黒衣の男の後をついて行く他なかった。

「御堂様…こちらですよ。この角を曲がった処にある突き当たりの
青い階段をゆっくりと下っていって下さいませ…」

「青い、階段…?」

 御堂が確認する為に反芻していくと、間もなく男の姿が風のように
スウっと消えていく。
 慌てて周囲に四線を張り巡らせていくと…コツコツ、という靴音が
確かに男が言っていた階段の方から聞こえていった。
 まるで奈落か、地獄にでも繋がっていそうな長い階段だった。

(…本当に、ここに足を踏み入れて私は大丈夫なのか…?)

 男を見失いたくなければ、追いかけるしかない。
 けれど…御堂は一回、息を大きく呑んでその場に佇んでしまった。
 頭の中で何度も警鐘が鳴り響いていく。
 だがここで臆して尻尾を巻いて立ち去るのも悔しかった。
 
「…ええい、私らしくもない。いつまでも立ち止まったままでいて
何になるというのだ…!」

 暫く葛藤している間に、そんな自分に苛立ちを覚えて早足で
その階段を下り始めていく。
 瞬間、頭の中にノイズのように奇妙な光景が一瞬だけ
浮かび上がっては消えていく。

・血まみれの自分の手

・涙を流す青い双眸

・妖しく笑う金髪の男

・完全に満ちた月

・そして…


 最後に見た、映像だけは信じがたいものを感じて
それ以上の認識を止めていく。
 まただ、佐伯克哉やあの男に接すれば接するだけ
何か虚飾が剥がれていくような気がする。

―御堂様。そろそろショウが始ります。入られるようなら
お早めにお願い致します…

 御堂が階段の途中で固まっていると、奥の方から微かに
男の声が聞こえていった。
 頭が酷く痛んでズキズキする。
 何かが、垣間見えては消えていく。
 それは一瞬の儚い白昼夢のようであり…幻ともいえる断片。

「あぁ、今から向かおう…」

 そうして御堂はついに階段を下りきって…赤い天幕が覆う
店内へと足を踏み入れていった。

「ようこそクラブRへ。貴方様のご来店を心から歓迎致します」

 そして黒衣の男は、恭しくこちらに頭を下げていく。
 そして…ゆっくりと踵を返して御堂を案内していった。

「それではこちらについて来て下さいませ…」

「あぁ…」

 ずっとこの男のペースで動かされるのは酷く癪であったが…ここで
妙に反抗的になっても仕方ない。
 とりあえず従ってその後へと続いていった。
 クラブR店内には妖しい東洋の香のようなもので満ち足りていて
ただ息をして立っているだけで頭の芯が痺れてしまいそうだ。
 ベルベッドのように鮮やかな赤で満たされた空間。
 倒錯的であり、同時に酷く官能的でもあった。
 そうして後に続いていくと…カーテンの向こうが大きく
開けている空間へと辿りついていった。
 どうやら舞台の袖のようだった。

「さあ…これが今宵のショーにおいて…貴方様に用意された
特等席ですよ…」

「なっ…! 何だと…! こんな処に私を立たせて、一体
どうするつもりなんだ…!」

 この位置は特等席と言いながら、思いっきり出演者側の
場所だった。
 ただの観客ならば舞台の外の座席を宛がわれるだろう。
 ようするに…ここに立て、ということはショーの出演者側になれと
いうのとほぼ同義語だった。

「お静かに…これから、実に貴方にとって濃密で愉しい一時を
提供致します…。ですから、貴方は黙って…観客である私たちを
愉しませるべく…今宵の哀れな生贄を、貴方の欲望のままに踏み躙り…
犯して下さい。そうなされば…貴方の知りたくて仕方ないことの一つを
対価として…お支払いしましょう…」

「な、んだと…? そんな異様なものに私を参加させると言うのか!
 ふざけるな! これ以上貴様の戯言に付き合うつもりはない! 
帰らせてもらう!」

 御堂は半端ではなく激昂した。
 こんな得体の知れない男になど、やはりついてくるべきではなかったのだ。
 肩を怒らせて、御堂はそのまま立ち去ろうとした。

「…少々お待ちを。貴方が気が進まないようでしたらそのまま
帰られても結構です。ですが…舞台の上に立つ…今宵の哀れな子羊の
顔だけでも拝んでみては如何ですか…? 案外、貴方の知っている
顔が立っているかも知れませんよ…?」

「…私の知人に、このような怪しい店に好んで立ち去るような輩はいない」

「えぇ、貴方のように清廉潔白な方ならば当店には好んで入ってくるような
事はないでしょう。けれど…今夜、貴方はこうしてこの場にいる。
趣味でなくても、何か理由があれば…ここにイレギュラーとして足を踏み入れる
ぐらいの事はありえると思いませんか…?」

 そうして男は愉快そうに笑っていく。
 この存在の甘言になど乗ってしまったら、引き返せなくなりそうな気がした。
 しかし…物凄い嫌な予感がする。
 好奇心と、反発心が再び御堂の中でぶつかりあっていった。

(きっと見てしまったら引き返せないような気がする…)

 そう思うのに、このまま目を逸らして立ち去ってしまったら取り返しの
つかないことになりそうな気がした。
 複雑な感情が渦巻いて、どうすれば良いのか判らなくなる。

「…貴方がお相手にならない場合は、子羊は何人もの男に好き放題に
弄りものにされる運命が待っております…」

 そして、もし知り合いの誰かであったならば…決して聞き捨てすることが
出来ない一言が、男の口から放たれていく。
 それが抗う限界だった。

「くそっ!」

 この男の思い通りになってしまっていることが悔しかった。
 けれどついに…重いカーテンを、禁断の扉にも等しいそれを
明け放って、舞台の上を覗いてしまった。

「嘘、だ…」

 その光景を見て…御堂は現実を一瞬、認識したくなくなった。
 けれどそれは認めたくなくても…事実だった。

「どうして、お前が…」

 御堂は力なく呟いていく。
 …その存在は虚ろな瞳をしながら、裸で…十字架に鎖で括りつけられて
眩いばかりのライトに照らし出されていた。

―それはまるで、一枚の絵画のように美しく…そして、残酷さも
滲ませた…ゾっとするような。光景だった。
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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