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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

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―彼が転がり込んで来てから、私の本来のペースが乱されっぱなしだ

 心の底からそう実感しながら、御堂は慣れない光景に深く溜息を
吐いていた。
 MGN内にある、御堂の執務室。
 一部署の部長職に就いてから与えられた、御堂の肩書きと地位の
結晶というべき場所に今朝は本来ならあり得ない存在が立っていた。
 彼が転がり込んで来た夜から丁度一週間。
 まさか…この短期間でこのような展開が待っているとは御堂も
予想していなかった。

(まさか…あれだけ難度の高い課題を課したのに、それを彼が
クリアしてしまうとはな…)

 今朝から、克哉は試用期間という形で御堂の補佐として
仕事を始めていた。
 何故、このような流れになったのか…其れは彼が転がり込んで四日目の朝に
こう切り出されたからだった。

―良ければ御堂さんの傍で働かせて下さい…!

 真っすぐな瞳で、彼はそう訴えかけて来た。
 最初は一笑に伏そうとしていた。
 だが克哉の目はあまりに真摯で…それだけの力があった。
 実際、御堂が抜擢すれば確かに誰かを雇って自分の傍で働かすぐらいの
権限は持っている。
 だが、目の前の存在がそれだけの実力と価値を備えているのか…御堂は
懐疑的だった。
 結局その提案について、受ける受けないの話が中心になってしまい…
御堂が尋ねようとした内容は聞けずじまいに終わり。
 帰宅後、現在の御堂の仕事についていく為に必要と思われる膨大な量の
資料を彼に渡し、二日間で死ぬ気で覚えてみろと課題を出した。
 そして駄目だったら、そんな提案を一蹴するつもりだったのに…克哉は
その膨大な資料の全てに目を通し、御堂が尋ねた内容を全て要点を掴んだ
上で答えていったのだ。
 ここまで頭に入っているのならば、確かに試してみる価値はある。
 そう思わせるぐらいに克哉の回答は見事なものであり…御堂の心を
動かしていったのだ。
 そして午前中いっぱい彼を使って見た感想は、『初日としては悪くないレベル』だった。

(電話応対の仕方も様になっているし…現場と何度も行き来させても文句一つ
言わない。それに藤田君ともそれなりに上手くやっていけそうな感じだしな…。
確かにタダ飯を食わせて家でボーとさせているよりかは、傍に置いている間は
こき使う方が私にとってもプラスになるな…)

 そういって、懸命に御堂は合理的に考えようとしていた。
 彼が仕事上有能であるなら、意味もなく同居させているよりも…部屋に
置く事に意味を見いだせる。
 御堂の仕事の良きサポーターになってくれるならば、それはある種の投資という
形に出来るからだ。
 正直、部屋を清掃する為のヘルパーを雇って定期的に掃除してしまっているし…
確かに手料理は新鮮で有り難かったが、それだけの為に彼を養うのに違和感を
覚えていたのも確かだった。
 有能で自分の役に立ってくれるならば、彼に纏わる謎も少しは目を瞑ろうという
気持ちになってくる。
 だが…仕事に没頭している間は忘れていられるが、やはり幾つか判らない事実が…
ふとした瞬間に浮かびあがり、御堂の心を捉えていく。

―何故、再会した夜に…自分が拒絶しようとした瞬間に彼の身体は透けてしまったのか

 恐らくそれが、御堂が思っている最大の疑問でもあった。
 しかし今の彼は、キチンと目の前に存在して…バリバリと仕事をこなしている。
 その姿を見ていると…あの夜の現象がまるで夢だったようにさえ思える。
 それに一体誰が、自分の部屋に押し入って彼を犯したのか…二つも大きな
疑問を抱えてしまっているので御堂の心中はお世辞にも穏やかではなかった。
 
「御堂さん…浮かない顔をされていますが、どうしましたか…?」

 暫く思想に耽っている間、手を止めてしまったらしい。
 気付くと心配そうに克哉がこちらを見つめていた。
 心からこちらを案じていると伝わる眼差しだからこそ…御堂はその瞳を前に
言葉を奪われてしまう。
 眼鏡を掛けて、傲慢だった頃の彼はむしろ御堂は嫌悪していた。
 だが再会してから別人…否、最初に顔を合わせた時のように弱々しく穏やかな
雰囲気に戻っている彼に対しての評価が、御堂の中で少しずつ変化していた。

「いや…少し、考え事をしていただけだ。心配掛けてすまない…佐伯君」

「いえ、こちらこそ…そちらの考えを中断させてしまってすみませんでした…」

 そうして、何の含みのない顔で克哉は恭しく頭を下げてくる。
 人間、素直な態度をされるとどうしても高圧的だったり、攻撃的な態度を
取れなくなってしまうものである。
 そうして書類と、机の上のファイルに再び目を通そうとしたが…ふと時間を
確認すればとっくの昔に正午は超えていて…一時近くまでなっていた。
 流石に軽食の類でも何でも良いから、何かを胃に入れなければ夕方までは
厳しくなる頃だ。

「…佐伯君、良ければこの付近にある私の行きつけの店で…サンドイッチを
買ってきてくれないか? 場所は藤田君が良く知っているから…彼を
探して聞いてくれ」

「は、はい…! 喜んで…!」

 御堂がそうやって頼んでいくと、克哉は嬉しそうに答えていく。
 まるで自分の為に何か出来るならそれが幸せとばかりの…輝くような
表情だった。

(どうして君は…雑用を与えるだけでそんなに嬉しそうにするんだ…・?)

 この一週間、御堂は何度もこの顔を見てきた。
 だからこそ、厳しい言葉も突っぱねるような態度も取れないまま…ズルズルと
彼を傍に置いてしまっている。
 自分の役に立つのが、傍にいるのが幸せだと…そう態度で伝えているからこそ、
彼を追い出せずに…しまいにはこんな風に試しに補佐として使ってみる展開に
なっているのに。
 これが他の人間だったら下心があって自分の部屋に置いて欲しいと言って来たの
かと疑うのに…克哉のあまりに澄んだ瞳は、そんな疑う心を晴らしていってしまう。
 だからこそ、御堂は心境の激しい変化に…自分でもついていけないまま、
彼を受け入れてしまっていた。

「ああ、とりあえずMGNからの簡単な地図は渡しておく。これを見て
判らなかったら藤田君を探して改めて聞いてくれ。頼んだぞ…」

「はい、判りました…!」

 そうして御堂は、店までの略図が書かれたハンコを押すタイプの
ポイントカードを相手に手渡していく。
 それを受け取った克哉は大事そうにそれを自分の財布にしまっていくと
すぐに仕事に一区切りをつけて、部屋を飛び出していった。

「それでは行ってきます!」

 そうして勢い良く執務室から飛び出していく克哉の背中を見送って
いきながら…御堂はしみじみと呟いていった。

「…私も、随分と甘いな…」

 だが、自分自身でもその心境の変化に戸惑っている部分はあったが…
今は悪い気分ではなかったのもまた確かだった―


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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