鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※これは二本目に書いた王レベ話になります。
書いたのは2001年の頃だった事は辛うじて記憶に
あります。
最初に書いた五本は何となく覚えていますが、それ以後は
順番とかは細かく覚えていません(汗)
ただハマりたてで、勢いで書いてしまった…そういう
懐かしい思い出が伴う作品でございます。
セレストが初体験だったら、という今思い返すとちょっと
酷い設定の話だなって我ながら思いますけど(笑)
地上から僅かに指し込んでいる光が、揺れる水面に反射していた。
ここは古き時代の遺跡の跡地。
六百年もの昔に堕天使ウルネリスを封印した英雄、
ルーシャスが使役した聖幻獣が眠る場所。
辺りには、八翼の一人フォンテーヌとの激戦の跡が色濃く残されている。
そしてカナンの命で聖幻獣が再び眠りについたその場は、凛とした清浄な空気
が支配していた。
そこでセレストとカナンは、互いを決して離さぬように抱きあっていた。
先程カナンに自分はお前にとってどうゆう存在だという問いに対して、
セレストは正直に己の想いを相手に告げた。
それだけで終われば、主従の心温まるやりとりで済んでいるのだが今もなお、
二人は相手の身体を離そうとはしなかった。
心臓の音が、体温がいやでも伝わるくらいに密着していた。
今までそんな事をカナン相手に意識した事など…伝説の滝で一回あったが、
それ以外はまったくなかったのでこの時セレストは混乱していた。
「見てろよ…すぐに弟のようになんかでなくなってやるからな…」
気のせいか、すぐ側にあるカナンの顔まで真っ赤になっている気がする。
どうしよう、何故かもの凄く可愛く見える。
いや、前からカナンが自分の前で素直に感情を出す様は可愛らしいと口には
出さなかったが常々思っていた事だ。
しかし…この反応は、自分が今感じている衝動は…。
(どうして俺は、カナン様にキスしたいなどと…)
その薄い形の整った唇に触れたら、どんな感触がするのだろうか…。
そんな事を考えている自分が恐ろしくなった。
カナンは仮にも主君だ。
そして自分はそんな彼を守ることを何より優先せねばならぬ従者の身だ。
そんな恐れ多い事をする訳にはいかないのに、自分の理性とは関係無く
言葉は紡がれていく。
どんどんヤバい雰囲気になっていく。
「いえ…弟のようなというのも例えで…なんというか、本当に大切で…」
どうやって今カナンに感じている気持ちを表現すれば良いのか判らなかった。
自分の頬もまた赤く染まっていくのを感じる。
「本当に…大事な方で…ずっと近くにいて…御側で…」
けれど、これは本当の気持ちで…。
幼い頃、まだ本当にカナンが当時の自分の腰くらいの背丈しかなかった時から、
ずっと自分にとってカナンはかけがえの無い人だ。
そんなセレストの言葉に、カナンはどんどん真っ赤になっていく。
どう見ても照れてる事は一目瞭然だった。
「近くって、どれくらい近くだ」
その問いに、セレストの方がぎょっとなった。
「近くって、これくらい近くか?」
「き、聞かないで下さい。何だかヤバいです」
「それを言うなら、僕の方だってヤバい」
その言葉を吐いた後、カナンは顔を赤らめながら溜め息をついた。
「まいったな…人肌のせいか…離れたい気がしない…」
ただでさえ密着してたのに、更に顔が寄せられる。
綺麗な造りの顔に、滑らかな肌。伏せられた睫毛は意外な程に長かった。
「だから…」
時間が止まるような、張り詰めた空気が訪れる。
何が起こるかは予想はついていた。そして今なら、まだ引き返せるとも思っていた。
だが触れ合ってる部分のカナンの体温がたまらなく愛しくて…。
自分の中の衝動がまるで激しい奔流のように勢いを増していく。
カナンの吐息がどんどん近づいて来る。
そして自分は…迷った末に瞳を閉じて、その行為を受け入れていた。
「んっ…」
初めて触れたカナンの唇は乾いていて、けれどほんのりと自分に温もりを伝えていた。
「そうゆう場合、離れたくないとおっしゃられる方が正しいです。文法的に…」
「うるさい」
唇を離し、カナンの肩の付近にセレストは顔を埋めていた。
「私達。白鳳さんに毒されましたかね…?」
「知らん」
「それとも伝説の滝がまずかったんでしょうかね…」
「外部に要因を見つけるのは止めろ」
そこで、こちらの心を射貫くように、自分の瞳をその青い瞳が覗き込んでくる。
「僕達二人の…気持ちの問題だろうが…」
その言葉に、セレストは自分の心に嘘をつく事を止めた。
先程のキスで、カナンもまた同じ気持ちである事はすでに察していた。
そして自分もまた、この先を望んでいた。
今時分は堪らなく、カナンに触れたいと思っていた。
だから勇気を振り絞って、目の前の愛しい金髪の少年にこう答えた。
そうですね…と。
書いたのは2001年の頃だった事は辛うじて記憶に
あります。
最初に書いた五本は何となく覚えていますが、それ以後は
順番とかは細かく覚えていません(汗)
ただハマりたてで、勢いで書いてしまった…そういう
懐かしい思い出が伴う作品でございます。
セレストが初体験だったら、という今思い返すとちょっと
酷い設定の話だなって我ながら思いますけど(笑)
地上から僅かに指し込んでいる光が、揺れる水面に反射していた。
ここは古き時代の遺跡の跡地。
六百年もの昔に堕天使ウルネリスを封印した英雄、
ルーシャスが使役した聖幻獣が眠る場所。
辺りには、八翼の一人フォンテーヌとの激戦の跡が色濃く残されている。
そしてカナンの命で聖幻獣が再び眠りについたその場は、凛とした清浄な空気
が支配していた。
そこでセレストとカナンは、互いを決して離さぬように抱きあっていた。
先程カナンに自分はお前にとってどうゆう存在だという問いに対して、
セレストは正直に己の想いを相手に告げた。
それだけで終われば、主従の心温まるやりとりで済んでいるのだが今もなお、
二人は相手の身体を離そうとはしなかった。
心臓の音が、体温がいやでも伝わるくらいに密着していた。
今までそんな事をカナン相手に意識した事など…伝説の滝で一回あったが、
それ以外はまったくなかったのでこの時セレストは混乱していた。
「見てろよ…すぐに弟のようになんかでなくなってやるからな…」
気のせいか、すぐ側にあるカナンの顔まで真っ赤になっている気がする。
どうしよう、何故かもの凄く可愛く見える。
いや、前からカナンが自分の前で素直に感情を出す様は可愛らしいと口には
出さなかったが常々思っていた事だ。
しかし…この反応は、自分が今感じている衝動は…。
(どうして俺は、カナン様にキスしたいなどと…)
その薄い形の整った唇に触れたら、どんな感触がするのだろうか…。
そんな事を考えている自分が恐ろしくなった。
カナンは仮にも主君だ。
そして自分はそんな彼を守ることを何より優先せねばならぬ従者の身だ。
そんな恐れ多い事をする訳にはいかないのに、自分の理性とは関係無く
言葉は紡がれていく。
どんどんヤバい雰囲気になっていく。
「いえ…弟のようなというのも例えで…なんというか、本当に大切で…」
どうやって今カナンに感じている気持ちを表現すれば良いのか判らなかった。
自分の頬もまた赤く染まっていくのを感じる。
「本当に…大事な方で…ずっと近くにいて…御側で…」
けれど、これは本当の気持ちで…。
幼い頃、まだ本当にカナンが当時の自分の腰くらいの背丈しかなかった時から、
ずっと自分にとってカナンはかけがえの無い人だ。
そんなセレストの言葉に、カナンはどんどん真っ赤になっていく。
どう見ても照れてる事は一目瞭然だった。
「近くって、どれくらい近くだ」
その問いに、セレストの方がぎょっとなった。
「近くって、これくらい近くか?」
「き、聞かないで下さい。何だかヤバいです」
「それを言うなら、僕の方だってヤバい」
その言葉を吐いた後、カナンは顔を赤らめながら溜め息をついた。
「まいったな…人肌のせいか…離れたい気がしない…」
ただでさえ密着してたのに、更に顔が寄せられる。
綺麗な造りの顔に、滑らかな肌。伏せられた睫毛は意外な程に長かった。
「だから…」
時間が止まるような、張り詰めた空気が訪れる。
何が起こるかは予想はついていた。そして今なら、まだ引き返せるとも思っていた。
だが触れ合ってる部分のカナンの体温がたまらなく愛しくて…。
自分の中の衝動がまるで激しい奔流のように勢いを増していく。
カナンの吐息がどんどん近づいて来る。
そして自分は…迷った末に瞳を閉じて、その行為を受け入れていた。
「んっ…」
初めて触れたカナンの唇は乾いていて、けれどほんのりと自分に温もりを伝えていた。
「そうゆう場合、離れたくないとおっしゃられる方が正しいです。文法的に…」
「うるさい」
唇を離し、カナンの肩の付近にセレストは顔を埋めていた。
「私達。白鳳さんに毒されましたかね…?」
「知らん」
「それとも伝説の滝がまずかったんでしょうかね…」
「外部に要因を見つけるのは止めろ」
そこで、こちらの心を射貫くように、自分の瞳をその青い瞳が覗き込んでくる。
「僕達二人の…気持ちの問題だろうが…」
その言葉に、セレストは自分の心に嘘をつく事を止めた。
先程のキスで、カナンもまた同じ気持ちである事はすでに察していた。
そして自分もまた、この先を望んでいた。
今時分は堪らなく、カナンに触れたいと思っていた。
だから勇気を振り絞って、目の前の愛しい金髪の少年にこう答えた。
そうですね…と。
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自分の方の用事は終わったから、会いたいと虎徹に伝えたら…虎徹は
「なら、一緒に夕食でも食べようぜバニーちゃん」と答えてくれた。
それで夕方までに自分の部屋をざっと片づけて、夕食に食べる品を
買ってきてくれた虎徹を出迎えていった。
それで他愛ない会話をしながら、夕食を食べてくる。
最近虎徹はこういう風に一緒に食べると、煮物とかおひたしなど
オリエンタルタウンで良く食べられている総菜の類を良く買ってきていた。
虎徹は見事なぐらい、買い出しを任せようとも自分たちで食事をするに
しても…チャーハンばかりにしようとするので、放っておくとこちらの分の
主食まで同じものにされるのだが、今日は敢えて意を唱えずに
おとなしく同じものを食べる事にした。
和食の類は、こうやって虎徹と食事を共にする以前は馴染みのない
ものだったが、何度か食べてみるとなかなか味わい深いものだと
納得出来たし、そんなに悪くないと思うようになってきたからだ。
ただ…やはりチャーハンばかりが続くと、そこまで愛好していない
バーナビーには少し飽きてくるので、それだけはたまには配慮して
ほしいと思うが…。
夕食を食べ終わると、虎徹はバーナビーの部屋の床ニゴロンと横になっていく。
このくつろぎっぷりも、今では不快ではない。
むしろ…こういう気を許しているような態度を取ってくれた方が安心出来る
ようになっているんだから、我ながら随分変わったものだと思う。
「はい、虎徹さん…コーヒーで良いですか?」
「おう、バニーちゃん…どうもありがとう。いや、何かここ数日…もしかして俺、
避けられているって感じちゃったから…そっちから誘って貰えて良かったぜ。
俺、何をしたか…見当つかなかったから、余計にさ」
「えっ…そ、そんな事は…」
「え~…じゃあ、何で最初は俺の誘いを断ったんだ?」
「…そ、それは言ったじゃないですか。用事があるからって…」
「へえ、一人で当てもなく散歩するのがバニーちゃんにとって用事だったんだ?」
「っ…!」
今日の午前中の、自分の行動をピンポイントで言い当てられてとっさに
言葉に詰まっていく。
どうして虎徹がその事を知っているのか…その疑問が湧くよりも先に、
用事があるという嘘が相手にすでにバレてしまっている事に動揺を
隠す事が出来なかった。
「…どうして、それを…?」
「そりゃ簡単さ。今日、お前の行動をちょっとつけていたからな。ここ数日、
何か俺の事を避けているような…壁があるような気がしたからな。
原因を探ろうとちょっとな…」
「…いつからこのオジサンは、人の後ろをコソコソ付け回すような事を
するようになったんですか…?」
「…バニーちゃん、俺の事をオジサンっていうの…ちょっとヒドいよ。
久しぶりにその単語聞いて、俺…ちょっと傷ついたわ」
「ふざけないで、真面目に答えて下さい。一体いつから…」
「バニーがこの部屋を出てから、俺に電話してくるまでかな…。尾行している
間に、いきなり俺に掛けてくるもんだからかなりひやっとしたよ。まあ…
バイブモードにしておいたから、バニーは俺のことに気づいてなかった
みたいだけどな…」
思ってもみなかった事を打ち明けられて、一瞬混乱しそうになった。
だが…思い返してみれば、確かにリバーサイドを歩いていた時に複数の視線が
こちらに向けられていたのは確かだった。
あの中に…虎徹の視線が混ざっていたのだろう。
その事に気付かなかった自分のうかつさに、少し腹が立っていった。
「そん、な…ずっと、本当に僕のことを陰から見ていたって事なんですか。
そんなの…ストーカーみたいじゃないですか…」
「…ああ、そうだな。ストーカーみたいだって突っ込まれて今日の行動は
文句言えないな。悪いな、お前に避けられている理由をどうしても探りたかったんだ。
何か心当たりがあったり、お前を怒らせた原因が判っているなら…其処まで
しなかったけど、今回ばかりは何も思い至るものがなかったから…つい、な…」
「…貴方は本当に卑怯ですね…。そんな顔を、言われてしまったら…これ以上、
こっちは何も言えなくなる…」
「そっか…なあ、教えてくれよ。俺は…何をして、お前を怒らせたのか…。
自分の相棒にさ、何が原因で避けられているのか判らない状態が何日も
続いているのって…やっぱり精神的にきついからさ。素直に言ってくれよ…
頼むから…」
「虎徹さんの寝言を聞いて…ずっとモヤモヤしていたんですよ。『友恵』って…
奥さんの名前を口にしていたから…」
「っ…マジ、かよ。それ…もしかして、お前の部屋のベッドで寝ていた時に…
俺、やっちまったのかよ…」
その瞬間、虎徹の顔に罪悪感が色濃く滲んでいった。
前夜に抱き合ったその翌朝に…バーナビーの部屋に泊っていながら、
相手の隣でかつての妻の名を呼ぶなど…不愉快になられて当然の事だった。
ようやく…避けられていた理由を理解し、虎徹はバツの悪い表情を浮かべていく。
「ええ、確かに言いました。そして…こう続けました。『友恵…お前の臨終に、
立ち会えなくて…御免な』と…。一つ、聞かせて下さい。貴方は…時々、
そうやって…奥さんが亡くなった日の夢を見ているんですか…?」
「………………」
バーナビーは静かで、淡々とした口調で問いかけてくる。
けれどその瞳は真剣そのもので…茶化したり、ふざけたりして返したら…
怒られてしまいそうなぐらい真摯なものだった。
そんな目をされたら、誰だって嘘をついたり誤魔化したり出来なくなる…
そう観念した虎徹は暫くの沈黙の後、素直に答えていった。
「…ああ、その通りだよ。俺は時々…ワイフが死んだ日の事を繰り返し夢に
見ちまう。あいつはヒーローの出動要請があった時、行けと言った。
その言葉に背中押されて出動したらな…戻ったら、あいつは亡くなっていた。
最後までヒーローらしくあってくれ…というのがあいつの想いであり、
願いである事は判っているけどな。それでも…あいつの最後をちゃんと
見届けてやりたかった…という後悔が、今でも俺の中にあるよ…」
「…正直に答えてくれましたね。なら…許します」
「えっ…?」
思ってもみなかったバーナビーの言葉に、虎徹は目を瞠っていく。
だが…青年は、穏やかに微笑みながら答えていった。
「…もし、貴方が…僕が隣にいるのに、奥さんと幸せに過ごしていた時の
思い出なんて夢に見ていたのなら…遠慮なく殴りますし、文句を言わせて
貰います。けど…奥さんは貴方の家族でもあった。なら…『家族の死』の
場面を繰り返し夢に見てしまうのいうのなら…それは自分ではどうしようも
ない事だから、仕方ない事ですから…。復讐を遂げる前、僕は何度も
何度も、両親が殺された場面を繰り返し悪夢として見続けた。…そんな
僕が、どうして…奥さんが亡くなった日の事を見てうなされている貴方を…
責める事なんて…出来ないですから…」
そう…かつての両親と、幼い頃の自分を思わせる家族連れと遭遇して…
自分が亡くなった両親を今でも愛しているのだと気付いた瞬間、嫉妬を
超えて…バーナビーはその事実に思い至る事が出来たのだ。
妻を懐かしんで寝言で呼んだのならば…少し許せないけれど。
自分だって何度も何度も、己の無力感を実感させられた…あの最後の光景を、
何度も見せつけられていた。
ならどうして…嫉妬に狂って、この人を責める事など出来るのだろうか…!
「…家族を失うのは、辛い事ですから。愛しているからこそ…何度も後悔して、
それを夢に見てしまうのは…僕も同じだから。だからその夢が…奥さんの
臨終に立ち会えなかった後悔から生まれたものなら…許します。
…僕の方こそ、小さな嫉妬で…貴方を振り回してしまってごめんなさい…」
そういって、小さく謝って頭を下げていくと同時に…強い力で引き寄せられた。
それが思いがけず強くて、とっさに息を詰めてしまう。
「バニィィ…! おじさん、すげぇ感動しちゃったよ! お前が…そんな事
言ってくれるなんて思ってもみなかったから…!」
「わっ…虎徹さん! ちょっと痛いですってば…力、緩めて…!」
「うっ…ワリィな。…けど俺の失態を、暖かい気持ちでバニーちゃんが
許してくれたの、こうオジサン…ジーンときちまったからさ…。本当に
大人になったなぁ…って」
「…ちょっと待って下さい。何かその発言…非常に子供扱いされている
ような気分になって不快なんですけど…」
虎徹の発言に、バーナビーの額に青筋が浮かんでいく。
けれどそんな青年の柔らかな金髪を、虎徹は少し乱暴に撫ぜていった。
「いや、バニーが優しい子で本当に良かったなって…そういう話よ。
愛しくてさ、俺…お前を今…メチャクチャ抱き締めて、触れたくて…堪んないヨ…」
「あっ…」
気付くと、虎徹の顔が目の前にあった。
息を詰めていると同時に、唇がそっと重ねられていく。
あっという間に掠めるように唇を奪われていくと…目の前に、悪戯っ子の
ような相手の笑顔が存在していて…つい、毒気を奪われてしまう。
「バニーちゃん…ありがとう」
「いいえ、貴方に礼を言われる程の事じゃありませんよ…全く」
そう悪態を突きながら、バーナビーは虎徹の腕の中に素直に収まって…
軽く頬を赤く染めていった。
「…暖かい」
「ん、バニーを抱き締めている俺も暖かいよ。…んじゃ、そろそろベッドに行く?」
「そうですね。その方がお互いに冷えないで済むでしょうから。お姫様だっこ
でもしていきましょうか?」
「…いや、一応…俺にも男としてのプライドあるからさ。頼むからこういう時に
そういう発言するの止めてくれよ。ほら…行くぞ、バニー…」
「はいはい、仕方ないからオジサンについてってあげますよ」
「…また、俺の事…オジサンっていう…本当につれないなぁ…バニーちゃんは…」
「ふふ、僕がこういう態度なのは…いつもの事でしょう?」
「はは、確かに違いないな…それでこそ、バニーだけどな…」
そうぶっきらぼうに言いながら、虎徹がこちらの肩をグイっと引き寄せて
抱いていくと…柄にもなくドキドキした。
たったそれだけの事に、確かに自分は幸福感を覚えていた。
(いつか…貴方の奥さんよりも、貴方にとって大切な存在になれたら…良いですね…)
きっと今でも、虎徹は家族を…特に失くした妻を愛しているのだろう。
二人きりでいても、決して外されない左手薬指の指輪が…その想いを現している。
それに今でも、チリチリと小さな嫉妬を覚える瞬間は…特別な関係になって
しまった為に何度でもあるけれど。
いつか…虎徹にとって、一番の存在に…もしくはそれに近い処になりたい。
―そんな小さな願いを胸に秘めていきながら、素直に相手の腕に引かれて…
寝室の方に向かっていく。相手と共にこうして過ごせる事に…確かに幸福感を
覚えていきながら…今は意地を捨てて、身を委ねていく事にしたのだった―
「なら、一緒に夕食でも食べようぜバニーちゃん」と答えてくれた。
それで夕方までに自分の部屋をざっと片づけて、夕食に食べる品を
買ってきてくれた虎徹を出迎えていった。
それで他愛ない会話をしながら、夕食を食べてくる。
最近虎徹はこういう風に一緒に食べると、煮物とかおひたしなど
オリエンタルタウンで良く食べられている総菜の類を良く買ってきていた。
虎徹は見事なぐらい、買い出しを任せようとも自分たちで食事をするに
しても…チャーハンばかりにしようとするので、放っておくとこちらの分の
主食まで同じものにされるのだが、今日は敢えて意を唱えずに
おとなしく同じものを食べる事にした。
和食の類は、こうやって虎徹と食事を共にする以前は馴染みのない
ものだったが、何度か食べてみるとなかなか味わい深いものだと
納得出来たし、そんなに悪くないと思うようになってきたからだ。
ただ…やはりチャーハンばかりが続くと、そこまで愛好していない
バーナビーには少し飽きてくるので、それだけはたまには配慮して
ほしいと思うが…。
夕食を食べ終わると、虎徹はバーナビーの部屋の床ニゴロンと横になっていく。
このくつろぎっぷりも、今では不快ではない。
むしろ…こういう気を許しているような態度を取ってくれた方が安心出来る
ようになっているんだから、我ながら随分変わったものだと思う。
「はい、虎徹さん…コーヒーで良いですか?」
「おう、バニーちゃん…どうもありがとう。いや、何かここ数日…もしかして俺、
避けられているって感じちゃったから…そっちから誘って貰えて良かったぜ。
俺、何をしたか…見当つかなかったから、余計にさ」
「えっ…そ、そんな事は…」
「え~…じゃあ、何で最初は俺の誘いを断ったんだ?」
「…そ、それは言ったじゃないですか。用事があるからって…」
「へえ、一人で当てもなく散歩するのがバニーちゃんにとって用事だったんだ?」
「っ…!」
今日の午前中の、自分の行動をピンポイントで言い当てられてとっさに
言葉に詰まっていく。
どうして虎徹がその事を知っているのか…その疑問が湧くよりも先に、
用事があるという嘘が相手にすでにバレてしまっている事に動揺を
隠す事が出来なかった。
「…どうして、それを…?」
「そりゃ簡単さ。今日、お前の行動をちょっとつけていたからな。ここ数日、
何か俺の事を避けているような…壁があるような気がしたからな。
原因を探ろうとちょっとな…」
「…いつからこのオジサンは、人の後ろをコソコソ付け回すような事を
するようになったんですか…?」
「…バニーちゃん、俺の事をオジサンっていうの…ちょっとヒドいよ。
久しぶりにその単語聞いて、俺…ちょっと傷ついたわ」
「ふざけないで、真面目に答えて下さい。一体いつから…」
「バニーがこの部屋を出てから、俺に電話してくるまでかな…。尾行している
間に、いきなり俺に掛けてくるもんだからかなりひやっとしたよ。まあ…
バイブモードにしておいたから、バニーは俺のことに気づいてなかった
みたいだけどな…」
思ってもみなかった事を打ち明けられて、一瞬混乱しそうになった。
だが…思い返してみれば、確かにリバーサイドを歩いていた時に複数の視線が
こちらに向けられていたのは確かだった。
あの中に…虎徹の視線が混ざっていたのだろう。
その事に気付かなかった自分のうかつさに、少し腹が立っていった。
「そん、な…ずっと、本当に僕のことを陰から見ていたって事なんですか。
そんなの…ストーカーみたいじゃないですか…」
「…ああ、そうだな。ストーカーみたいだって突っ込まれて今日の行動は
文句言えないな。悪いな、お前に避けられている理由をどうしても探りたかったんだ。
何か心当たりがあったり、お前を怒らせた原因が判っているなら…其処まで
しなかったけど、今回ばかりは何も思い至るものがなかったから…つい、な…」
「…貴方は本当に卑怯ですね…。そんな顔を、言われてしまったら…これ以上、
こっちは何も言えなくなる…」
「そっか…なあ、教えてくれよ。俺は…何をして、お前を怒らせたのか…。
自分の相棒にさ、何が原因で避けられているのか判らない状態が何日も
続いているのって…やっぱり精神的にきついからさ。素直に言ってくれよ…
頼むから…」
「虎徹さんの寝言を聞いて…ずっとモヤモヤしていたんですよ。『友恵』って…
奥さんの名前を口にしていたから…」
「っ…マジ、かよ。それ…もしかして、お前の部屋のベッドで寝ていた時に…
俺、やっちまったのかよ…」
その瞬間、虎徹の顔に罪悪感が色濃く滲んでいった。
前夜に抱き合ったその翌朝に…バーナビーの部屋に泊っていながら、
相手の隣でかつての妻の名を呼ぶなど…不愉快になられて当然の事だった。
ようやく…避けられていた理由を理解し、虎徹はバツの悪い表情を浮かべていく。
「ええ、確かに言いました。そして…こう続けました。『友恵…お前の臨終に、
立ち会えなくて…御免な』と…。一つ、聞かせて下さい。貴方は…時々、
そうやって…奥さんが亡くなった日の夢を見ているんですか…?」
「………………」
バーナビーは静かで、淡々とした口調で問いかけてくる。
けれどその瞳は真剣そのもので…茶化したり、ふざけたりして返したら…
怒られてしまいそうなぐらい真摯なものだった。
そんな目をされたら、誰だって嘘をついたり誤魔化したり出来なくなる…
そう観念した虎徹は暫くの沈黙の後、素直に答えていった。
「…ああ、その通りだよ。俺は時々…ワイフが死んだ日の事を繰り返し夢に
見ちまう。あいつはヒーローの出動要請があった時、行けと言った。
その言葉に背中押されて出動したらな…戻ったら、あいつは亡くなっていた。
最後までヒーローらしくあってくれ…というのがあいつの想いであり、
願いである事は判っているけどな。それでも…あいつの最後をちゃんと
見届けてやりたかった…という後悔が、今でも俺の中にあるよ…」
「…正直に答えてくれましたね。なら…許します」
「えっ…?」
思ってもみなかったバーナビーの言葉に、虎徹は目を瞠っていく。
だが…青年は、穏やかに微笑みながら答えていった。
「…もし、貴方が…僕が隣にいるのに、奥さんと幸せに過ごしていた時の
思い出なんて夢に見ていたのなら…遠慮なく殴りますし、文句を言わせて
貰います。けど…奥さんは貴方の家族でもあった。なら…『家族の死』の
場面を繰り返し夢に見てしまうのいうのなら…それは自分ではどうしようも
ない事だから、仕方ない事ですから…。復讐を遂げる前、僕は何度も
何度も、両親が殺された場面を繰り返し悪夢として見続けた。…そんな
僕が、どうして…奥さんが亡くなった日の事を見てうなされている貴方を…
責める事なんて…出来ないですから…」
そう…かつての両親と、幼い頃の自分を思わせる家族連れと遭遇して…
自分が亡くなった両親を今でも愛しているのだと気付いた瞬間、嫉妬を
超えて…バーナビーはその事実に思い至る事が出来たのだ。
妻を懐かしんで寝言で呼んだのならば…少し許せないけれど。
自分だって何度も何度も、己の無力感を実感させられた…あの最後の光景を、
何度も見せつけられていた。
ならどうして…嫉妬に狂って、この人を責める事など出来るのだろうか…!
「…家族を失うのは、辛い事ですから。愛しているからこそ…何度も後悔して、
それを夢に見てしまうのは…僕も同じだから。だからその夢が…奥さんの
臨終に立ち会えなかった後悔から生まれたものなら…許します。
…僕の方こそ、小さな嫉妬で…貴方を振り回してしまってごめんなさい…」
そういって、小さく謝って頭を下げていくと同時に…強い力で引き寄せられた。
それが思いがけず強くて、とっさに息を詰めてしまう。
「バニィィ…! おじさん、すげぇ感動しちゃったよ! お前が…そんな事
言ってくれるなんて思ってもみなかったから…!」
「わっ…虎徹さん! ちょっと痛いですってば…力、緩めて…!」
「うっ…ワリィな。…けど俺の失態を、暖かい気持ちでバニーちゃんが
許してくれたの、こうオジサン…ジーンときちまったからさ…。本当に
大人になったなぁ…って」
「…ちょっと待って下さい。何かその発言…非常に子供扱いされている
ような気分になって不快なんですけど…」
虎徹の発言に、バーナビーの額に青筋が浮かんでいく。
けれどそんな青年の柔らかな金髪を、虎徹は少し乱暴に撫ぜていった。
「いや、バニーが優しい子で本当に良かったなって…そういう話よ。
愛しくてさ、俺…お前を今…メチャクチャ抱き締めて、触れたくて…堪んないヨ…」
「あっ…」
気付くと、虎徹の顔が目の前にあった。
息を詰めていると同時に、唇がそっと重ねられていく。
あっという間に掠めるように唇を奪われていくと…目の前に、悪戯っ子の
ような相手の笑顔が存在していて…つい、毒気を奪われてしまう。
「バニーちゃん…ありがとう」
「いいえ、貴方に礼を言われる程の事じゃありませんよ…全く」
そう悪態を突きながら、バーナビーは虎徹の腕の中に素直に収まって…
軽く頬を赤く染めていった。
「…暖かい」
「ん、バニーを抱き締めている俺も暖かいよ。…んじゃ、そろそろベッドに行く?」
「そうですね。その方がお互いに冷えないで済むでしょうから。お姫様だっこ
でもしていきましょうか?」
「…いや、一応…俺にも男としてのプライドあるからさ。頼むからこういう時に
そういう発言するの止めてくれよ。ほら…行くぞ、バニー…」
「はいはい、仕方ないからオジサンについてってあげますよ」
「…また、俺の事…オジサンっていう…本当につれないなぁ…バニーちゃんは…」
「ふふ、僕がこういう態度なのは…いつもの事でしょう?」
「はは、確かに違いないな…それでこそ、バニーだけどな…」
そうぶっきらぼうに言いながら、虎徹がこちらの肩をグイっと引き寄せて
抱いていくと…柄にもなくドキドキした。
たったそれだけの事に、確かに自分は幸福感を覚えていた。
(いつか…貴方の奥さんよりも、貴方にとって大切な存在になれたら…良いですね…)
きっと今でも、虎徹は家族を…特に失くした妻を愛しているのだろう。
二人きりでいても、決して外されない左手薬指の指輪が…その想いを現している。
それに今でも、チリチリと小さな嫉妬を覚える瞬間は…特別な関係になって
しまった為に何度でもあるけれど。
いつか…虎徹にとって、一番の存在に…もしくはそれに近い処になりたい。
―そんな小さな願いを胸に秘めていきながら、素直に相手の腕に引かれて…
寝室の方に向かっていく。相手と共にこうして過ごせる事に…確かに幸福感を
覚えていきながら…今は意地を捨てて、身を委ねていく事にしたのだった―
※これは久しぶりに鬼畜眼鏡のキャラソングを聞いて
思いついた話です。
ストーリーのその後の事をつい妄想して書いた話なんで
ご了承下さい。
リハビリを兼ねた、軽いノリの話なんで宜しく。
お前に歌を 1
佐伯克哉は目覚めたら、気づいたらパーティールームを思わせる部屋に
連れ込まれていた。
そしてもう一人の自分と対峙して、混乱している内に噛みつくようなキスを
されて面喰っていった。
蹂躙されるように、熱い舌がこちらの舌を絡め取っていっている間は…
こちらの言葉は全て吸い取られてしまっていた。
ようやく解放された頃には…克哉の顔は真っ赤に上気して、呼吸も
荒いものへなっていた。
「…お前は、俺が目の前にいるのに…余計な事ばかり考えているのか?
ククっ…大した余裕だな…」
「…バ、オレの何処に余裕なんてあるんだよ! それに…目覚めたら、全く
見知らぬ場所にいて…混乱しないでいられる訳がないだろ! ちょっとはオレの
立場になって考えろよ…!」
「…そんな無駄な事をして、何になる?」
「…グッ、それを無駄な事ってお前は切り捨てるのかよ…はあっ…」
あまりにきっぱりともう一人の自分にこっちの訴えを切り捨てられて
しまったので克哉はガックリと肩を落としていく。
だが…その隙を狙ったかのように…もう一人の自分の両手がこちらの
両肩に回されてぎょっとなる。
「わわっ…!」
「暴れるな。大人しくしていろ…」
こちらがもがくよりも先に相手に抑え込まれて、強引にベッドシーツの上に
身体が縫い付けられていくような体勢にされていく。
相手の顔が間近に存在して、こちらの顔を覗きこんでくると…嫌でも
意識をせざるえなかった。
「こ、こら…何するんだよ! 俺ってば…」
「何を今更純情ぶっている…。何度も俺に抱かれて、毎回のように快感に
もだえて俺の下で啼いている癖に…判らないのか?」
「うっ…! ど、どうしてお前はそう…いやらしい言い回しをするんだよ!
聞いているこっちの方が恥ずかしくなるだろ!」
もう一人の自分はいつだってそうだ。
克哉の気持ちなどお構いなしに、強引に自分のペースに持ちこんでくる。
その自信満々の態度が非常に腹立たしくて、ムカムカしてくるのに…なのに、
この傍若無人な相手を、拒みきれない自分もまた確かに存在していた。
相手の身体の下で暴れて、其処から逃れようと足掻いてみると…気づかない内に
克哉のシャツのボタンは外されて、胸の突起を執拗に弄られまくっていた。
「やっ…こら、止めろってば…『俺』…」
「断る、俺は…お前を啼かせてやりたくて仕方ない気分だからな…」
「や、やだって言っているだろ…止めろ、ってば…あっ…!」
両手で胸の突起を攻め立てられていく度に、ジィンとした甘美な痺れが
全身に広がっていくのを感じていった。
その度に身体が嫌でもビクビクと震えてしまい…どうしようもなくなっていく。
「やっ…あっ…! やだ、其処…弄るな、くっ…!」
「何をそんなに嫌がる理由があるんだ…? お前がどうしようもなくいやらしくて
淫らな身体をしている事なんて…俺にはとっくに判っている事だろう…?」
「違う…お前が、こっちの意思…なんて、お構いなしに…快感を
強引に引きずりだすんじゃない、か…ああっ…!」
「…ふん、ちょっと胸を弄られただけで…こんなに下半身を硬くしている奴が…
何を言っているんだ…?」
「あっ…やだ、其処…触らないで、くれよ…頼む、から…!」
いつの間にかもう一人の自分の指先が、こちらの陰茎に絡んで
先端部分を執拗に弄り上げているのを見て…克哉は止めてくれるように
懇願していった。
だがその願いは聞き遂げられる事なく…先走りを塗りこめるようにしながら
クチュクチュと音を立てて快楽を引きずり出されていく。
全身を駆け巡る快感のせいで、満足に身体に力が入らない。
「やっ…やだぁ…ああっ…あっ―!」
そして、頭を必死に何度も振りかぶりながら…克哉は強引に、もう一人の
自分の手によって絶頂に導かれていったのだった―
思いついた話です。
ストーリーのその後の事をつい妄想して書いた話なんで
ご了承下さい。
リハビリを兼ねた、軽いノリの話なんで宜しく。
お前に歌を 1
佐伯克哉は目覚めたら、気づいたらパーティールームを思わせる部屋に
連れ込まれていた。
そしてもう一人の自分と対峙して、混乱している内に噛みつくようなキスを
されて面喰っていった。
蹂躙されるように、熱い舌がこちらの舌を絡め取っていっている間は…
こちらの言葉は全て吸い取られてしまっていた。
ようやく解放された頃には…克哉の顔は真っ赤に上気して、呼吸も
荒いものへなっていた。
「…お前は、俺が目の前にいるのに…余計な事ばかり考えているのか?
ククっ…大した余裕だな…」
「…バ、オレの何処に余裕なんてあるんだよ! それに…目覚めたら、全く
見知らぬ場所にいて…混乱しないでいられる訳がないだろ! ちょっとはオレの
立場になって考えろよ…!」
「…そんな無駄な事をして、何になる?」
「…グッ、それを無駄な事ってお前は切り捨てるのかよ…はあっ…」
あまりにきっぱりともう一人の自分にこっちの訴えを切り捨てられて
しまったので克哉はガックリと肩を落としていく。
だが…その隙を狙ったかのように…もう一人の自分の両手がこちらの
両肩に回されてぎょっとなる。
「わわっ…!」
「暴れるな。大人しくしていろ…」
こちらがもがくよりも先に相手に抑え込まれて、強引にベッドシーツの上に
身体が縫い付けられていくような体勢にされていく。
相手の顔が間近に存在して、こちらの顔を覗きこんでくると…嫌でも
意識をせざるえなかった。
「こ、こら…何するんだよ! 俺ってば…」
「何を今更純情ぶっている…。何度も俺に抱かれて、毎回のように快感に
もだえて俺の下で啼いている癖に…判らないのか?」
「うっ…! ど、どうしてお前はそう…いやらしい言い回しをするんだよ!
聞いているこっちの方が恥ずかしくなるだろ!」
もう一人の自分はいつだってそうだ。
克哉の気持ちなどお構いなしに、強引に自分のペースに持ちこんでくる。
その自信満々の態度が非常に腹立たしくて、ムカムカしてくるのに…なのに、
この傍若無人な相手を、拒みきれない自分もまた確かに存在していた。
相手の身体の下で暴れて、其処から逃れようと足掻いてみると…気づかない内に
克哉のシャツのボタンは外されて、胸の突起を執拗に弄られまくっていた。
「やっ…こら、止めろってば…『俺』…」
「断る、俺は…お前を啼かせてやりたくて仕方ない気分だからな…」
「や、やだって言っているだろ…止めろ、ってば…あっ…!」
両手で胸の突起を攻め立てられていく度に、ジィンとした甘美な痺れが
全身に広がっていくのを感じていった。
その度に身体が嫌でもビクビクと震えてしまい…どうしようもなくなっていく。
「やっ…あっ…! やだ、其処…弄るな、くっ…!」
「何をそんなに嫌がる理由があるんだ…? お前がどうしようもなくいやらしくて
淫らな身体をしている事なんて…俺にはとっくに判っている事だろう…?」
「違う…お前が、こっちの意思…なんて、お構いなしに…快感を
強引に引きずりだすんじゃない、か…ああっ…!」
「…ふん、ちょっと胸を弄られただけで…こんなに下半身を硬くしている奴が…
何を言っているんだ…?」
「あっ…やだ、其処…触らないで、くれよ…頼む、から…!」
いつの間にかもう一人の自分の指先が、こちらの陰茎に絡んで
先端部分を執拗に弄り上げているのを見て…克哉は止めてくれるように
懇願していった。
だがその願いは聞き遂げられる事なく…先走りを塗りこめるようにしながら
クチュクチュと音を立てて快楽を引きずり出されていく。
全身を駆け巡る快感のせいで、満足に身体に力が入らない。
「やっ…やだぁ…ああっ…あっ―!」
そして、頭を必死に何度も振りかぶりながら…克哉は強引に、もう一人の
自分の手によって絶頂に導かれていったのだった―
4月14日から、入院先でネットが繋げるようになりました。
という訳でこの記事は、病院から書いております。
4月9日、入院したんですが…何の巡り合わせか、同じ日に
入院したオジサンが…実は8年前に私が入った時と同時期に
いた人で、ついでにこの病院紹介した親戚のおじさんとも顔見知り
でした。
ついでに言うとパソコン教室の先生とかもやってて、障害者や一般の方に
スカイプ、mixi、フェイスブック、ツイッター、HP作成、ブログの使い方等を
教えているそうで…。
こっちがパソコン持ってて、ネットの接続とかについて教えてほしいと
言ったら大喜びで、「ノートとかの準備をしておきなさい。色々と教えて
あげるから!」というので、まずスカイプについて本日の午後に
教えて貰う事になりました。
4月9日に顔を合わせたら、「俺のパソコンにあんたとおじいさんの写真が
残っているよ。何か見覚えあると思った」と言われた訳ですが…別に連絡を
取り合っていた訳でもないのに、こうして8年前にこっちが入った時の事を
覚えている人と会うっていうのは…縁が余程、あったんだろうと思います。
んで、暫く生活習慣改善入院の希望者がいなかったからベッドは
空いていると言われたので…一人でカリキュラムこなすのも覚悟して
おいたんですが、他にも女性二人が後日入ってきて…同室で、ベッドも
並んでいる配置になりました。
二人とも、私よりも年齢は一回り上ですが…まあ、似たような体格を
しているのである人から「森三中みたいだ」と言われ…否定出来ない事に
気づきました。まあ、他の方はそれを笑って受け止めていましたけどね(苦笑)
他にも、8年前に私を受け持ってくれた看護婦さんが…現在入院している
フロアの責任者に出世してて、「お久しぶり~!」と思いっきり抱きしめてくれました。
そしてついでにほっぺと手をぷにぷにと触られたりしていました。
…そういえば8年前も、こういう事を良くされていた事を思い出しました。
なんつーか、全体的に子供っぽい印象があるんで…良くこういう扱いを
30歳超えてもされるんですよね、私…。
けど、8年も経っているのに初日に…たった一度入ったきりの私を覚えて
くれていた人と二人も会えたのは相当に運が良いと思う。
同室の女性二人も、結構仲良くなりました。
3DS含め、DSを3台ばかり持っていったので…操作法を教えながら
「ちょっとだれでもあそび大全」というゲームで、ブラックジャックやページワン
とかを皆で遊んだりしましたしね。
…他の同室の人達とも、一応上手くやっています。
本当、ロンリー覚悟で入院して一人で暇つぶしが出来る方法を沢山
用意しておいたのに、人と話している事が多いんで…あんまり出来ないで
いますけど。
後、やっとネットを繋げる環境になったんで…記事の投稿した日付け等を
本日修正しました。
本当は12日に上京した時にその修正をする予定だったんですが…
身分証明書を持っていなかったので都内のネットカフェで、インターネットが
繋がる席に座る事が出来なくてねぇ。
10日から、13日に投稿予約した記事は…予約の設定したけど、投稿日時まで
キチンと治さなかったので、ちょっと変な感じになっていました。
それをちょいと直して投稿し直したという感じです。
10日から予約しておいた記事、全部予め書いた日付け扱いになっていた訳です。
とりあえずこれからも暇を見て更新していきますので宜しく。
ではでは~!
という訳でこの記事は、病院から書いております。
4月9日、入院したんですが…何の巡り合わせか、同じ日に
入院したオジサンが…実は8年前に私が入った時と同時期に
いた人で、ついでにこの病院紹介した親戚のおじさんとも顔見知り
でした。
ついでに言うとパソコン教室の先生とかもやってて、障害者や一般の方に
スカイプ、mixi、フェイスブック、ツイッター、HP作成、ブログの使い方等を
教えているそうで…。
こっちがパソコン持ってて、ネットの接続とかについて教えてほしいと
言ったら大喜びで、「ノートとかの準備をしておきなさい。色々と教えて
あげるから!」というので、まずスカイプについて本日の午後に
教えて貰う事になりました。
4月9日に顔を合わせたら、「俺のパソコンにあんたとおじいさんの写真が
残っているよ。何か見覚えあると思った」と言われた訳ですが…別に連絡を
取り合っていた訳でもないのに、こうして8年前にこっちが入った時の事を
覚えている人と会うっていうのは…縁が余程、あったんだろうと思います。
んで、暫く生活習慣改善入院の希望者がいなかったからベッドは
空いていると言われたので…一人でカリキュラムこなすのも覚悟して
おいたんですが、他にも女性二人が後日入ってきて…同室で、ベッドも
並んでいる配置になりました。
二人とも、私よりも年齢は一回り上ですが…まあ、似たような体格を
しているのである人から「森三中みたいだ」と言われ…否定出来ない事に
気づきました。まあ、他の方はそれを笑って受け止めていましたけどね(苦笑)
他にも、8年前に私を受け持ってくれた看護婦さんが…現在入院している
フロアの責任者に出世してて、「お久しぶり~!」と思いっきり抱きしめてくれました。
そしてついでにほっぺと手をぷにぷにと触られたりしていました。
…そういえば8年前も、こういう事を良くされていた事を思い出しました。
なんつーか、全体的に子供っぽい印象があるんで…良くこういう扱いを
30歳超えてもされるんですよね、私…。
けど、8年も経っているのに初日に…たった一度入ったきりの私を覚えて
くれていた人と二人も会えたのは相当に運が良いと思う。
同室の女性二人も、結構仲良くなりました。
3DS含め、DSを3台ばかり持っていったので…操作法を教えながら
「ちょっとだれでもあそび大全」というゲームで、ブラックジャックやページワン
とかを皆で遊んだりしましたしね。
…他の同室の人達とも、一応上手くやっています。
本当、ロンリー覚悟で入院して一人で暇つぶしが出来る方法を沢山
用意しておいたのに、人と話している事が多いんで…あんまり出来ないで
いますけど。
後、やっとネットを繋げる環境になったんで…記事の投稿した日付け等を
本日修正しました。
本当は12日に上京した時にその修正をする予定だったんですが…
身分証明書を持っていなかったので都内のネットカフェで、インターネットが
繋がる席に座る事が出来なくてねぇ。
10日から、13日に投稿予約した記事は…予約の設定したけど、投稿日時まで
キチンと治さなかったので、ちょっと変な感じになっていました。
それをちょいと直して投稿し直したという感じです。
10日から予約しておいた記事、全部予め書いた日付け扱いになっていた訳です。
とりあえずこれからも暇を見て更新していきますので宜しく。
ではでは~!
※今後は週に一回程度、日記とか雑談を混ぜた
話を掲載していきます。
個人的な話をすると暗くなる傾向にあるので、今後は
興味もったり面白いと思ったゲームや本とかの話を基本的に
するようにしていきます。
兄上が、最近携帯で…一話だけ無料で視聴出来る漫画を
読んで発掘作業にいそしんでいます。
その為、唐突に纏め買いをして…ドン、と新しい漫画が
並んでいる事が良くあります。
その中で読んでて面白い! と思ったのが…『めしばな刑事 タチバナ』
という漫画。
何が凄いかっていうと、日常にあるめし屋とか…ラーメン等を良く
ここまで調べて熱く語れるな! とちょっと目からウロコが落ちるような
作品です。
幾つか例に上げると…。
サッポロ一番の中で、一番オススメの味はどれか!
インスタント焼きそばの中で、どれが一番の王者か!
等の話を、仕事そっちのけで皆が熱く語ります。
中には、めし話をしている内に容疑者の心を動かして…気づいたら
自供に持っていくというのも最初の頃はたまにありますが。
基本はめし話を語り過ぎて、職務そっちのけ…という事が
多発している。
オマエラ、シゴトシロヨ~!
とツッコミたくなるも、タチバナが熱く語るB級グルメに関しての
話にグイグイと引きこまれていく。
普段、当たり前に使っている牛丼屋や、ラーメン屋、インスタントラーメンが
視点を変えればこんなに奥深いものなのかというのを気づかされる…
何て言うか原作者のそういった情熱が、キャラ達の言葉から
偉く感じられる凄い作品です。
しかもそれが、ちゃんと面白い!
とりあえず単行本1~4巻まで出ているんですが…一気に
読み終えてしまっていました。
他にも、「花のズボラ飯」とかそういうのも兄上買っているんですが…
これも結構面白かったり。
こう、夫が単身赴任している人妻の花さんが、毎回身近にある食材で
B級グルメっぽいメニューを作って、とにかく本当に美味しそうに食べて
くっちゃ寝している…という感じの話なんですが。
ちょこちょこと自然なお色気シーンとかあったり、妙に花さんが
愛橋のあるキャラなので…結構これもお気に入り。
食べ物に対して、結構興味がある方なんで…こういう漫画は読んでて
結構面白いです。
何か食べるのが好き、という方は良ければ読んでみて下さい。
私は結構、気に入りました。
後…どちらの漫画も、2011年の「この漫画が凄い!」という本で
押されていたりします。
(兄貴の場合は一話を無料で見て、気に入ったから買ったらしいけどね)
ではでは~!
話を掲載していきます。
個人的な話をすると暗くなる傾向にあるので、今後は
興味もったり面白いと思ったゲームや本とかの話を基本的に
するようにしていきます。
兄上が、最近携帯で…一話だけ無料で視聴出来る漫画を
読んで発掘作業にいそしんでいます。
その為、唐突に纏め買いをして…ドン、と新しい漫画が
並んでいる事が良くあります。
その中で読んでて面白い! と思ったのが…『めしばな刑事 タチバナ』
という漫画。
何が凄いかっていうと、日常にあるめし屋とか…ラーメン等を良く
ここまで調べて熱く語れるな! とちょっと目からウロコが落ちるような
作品です。
幾つか例に上げると…。
サッポロ一番の中で、一番オススメの味はどれか!
インスタント焼きそばの中で、どれが一番の王者か!
等の話を、仕事そっちのけで皆が熱く語ります。
中には、めし話をしている内に容疑者の心を動かして…気づいたら
自供に持っていくというのも最初の頃はたまにありますが。
基本はめし話を語り過ぎて、職務そっちのけ…という事が
多発している。
オマエラ、シゴトシロヨ~!
とツッコミたくなるも、タチバナが熱く語るB級グルメに関しての
話にグイグイと引きこまれていく。
普段、当たり前に使っている牛丼屋や、ラーメン屋、インスタントラーメンが
視点を変えればこんなに奥深いものなのかというのを気づかされる…
何て言うか原作者のそういった情熱が、キャラ達の言葉から
偉く感じられる凄い作品です。
しかもそれが、ちゃんと面白い!
とりあえず単行本1~4巻まで出ているんですが…一気に
読み終えてしまっていました。
他にも、「花のズボラ飯」とかそういうのも兄上買っているんですが…
これも結構面白かったり。
こう、夫が単身赴任している人妻の花さんが、毎回身近にある食材で
B級グルメっぽいメニューを作って、とにかく本当に美味しそうに食べて
くっちゃ寝している…という感じの話なんですが。
ちょこちょこと自然なお色気シーンとかあったり、妙に花さんが
愛橋のあるキャラなので…結構これもお気に入り。
食べ物に対して、結構興味がある方なんで…こういう漫画は読んでて
結構面白いです。
何か食べるのが好き、という方は良ければ読んでみて下さい。
私は結構、気に入りました。
後…どちらの漫画も、2011年の「この漫画が凄い!」という本で
押されていたりします。
(兄貴の場合は一話を無料で見て、気に入ったから買ったらしいけどね)
ではでは~!
※ 最近、というか2012年の3月にネットで全話を
視聴したらうっかりハマってしまったタイガーバニーの
初作品です。
世間では兎×虎の方が多いって判っているんですが…
逆CPの虎兎にハマりました。
お姫様だっこされているのは虎だって判っているんだけどね!
それでもオジサン受けよりも、私はオジサンは攻めが好きなのよ!
と力説してやります(笑)
とりあえず初作品はエロ描写基本ありません。
原作の設定とか、そういうのをある程度意識して守るよう
意識して書いています。
良ければ見てやって下さい。
これは先月、書き上げて完結している作品なので
前後編の掲載になります。
『貴方と一緒に(前編)』
一虎徹と昨晩、一緒に過ごしたバーナビーは、早朝…朝日を
受けながらまどろんでいた。
バーナビーの使っているベッドはキングサイズのものなので…大の男二人が
寝ても寝返りを打てるくらいの余裕がある。
傍らに自分の相棒の体温を感じていきながら、ヌクヌクと布団に包まれている
時間がバーナビーは好きだった。
(暖かくて気持ち良い…特に…この人がソバにいてくれると…)
昨晩、熱い時間を共に過ごした。
そして行為が終わった後…その心地良いけだるさを感じながら眠りに落ちた。
その余韻が体に残っている状態で…こうして、虎徹の体温と匂いを感じて
まどろんでいられるのはかなりの至福だった。
しかし…次の瞬間、その幸福感を一気に破壊する言葉が相手の口から
こぼれ落ちていった。
「…友恵…」
一ピキッ…!
幸福感で満たされていた金髪の青年の額に、怒りによって大きく
血管が浮かび上がってくる。
とっさにハンドレットパワーでも発動させてしまいかねないくらいの勢いだった。
(…このオジサン…! 散々昨日はこっちを好き放題してくれた癖に…
その僕の隣で、亡くなった奥さんの名前を呟くとは良い度胸してますね…!)
どうにかギリギリの所で踏み留まって…シーツを強く握り締める程度で抑えていく。
しかしその手も力を込めすぎて蒼白になっているくらいだった。
幾ら何でも、寝ている相手に対して100倍の身体能力になる
ハンドレットパワーを発動するのは危険過ぎる。
しかし何もしないでは、この胸のムカムカは収まりそうになかつた。
(せめてもの意趣返しに…頬でもつねってやりましょうか…)
最終的にそういう結論に達して、ゆっくりと虎徹の方へと指先を伸ばしていく。
その瞬間…相手は小さく続きの言葉を呟いた。
「友恵…お前の臨終に…立ち会うことが出来なかったこと…御免、な…」
その内容の重さに、バーナビーの手はピタリと止まっていく。
虎徹の目元にうっすらと涙が滲んでいるのを見て…余計にこちらの
葛藤は色濃いものへと変わっていった。
「貴方は…本当に卑怯ですよ…。そんな言葉を続けられてしまったら…
こっちは何も言えなくなるじゃないですか…」
そう口にしながら、青年はモヤモヤした気持ちを胸に抱え込んでいく。
この複雑な気持ちを相手にぶつけて良いか深く迷っていきながら、
暫くその切なそうな相手の寝顔を見つめていったのだった―
*
虎徹がベッドの上で、爆弾発言に近い寝言を呟いてから
数日があっという間に過ぎていった。
その間もいつものように、何度もアニエスからヒーローの出動要請が来て、
パニックに陥っている市民の救出や避難誘導、悪人の捕獲などをこなしていった。
仕事中は…その一件の事を忘れて、ヒーローとしての自分の役目を
果たすのを優先する事が出来た。
だが、ヒーロースーツを脱いだ、バーナビー=ブルックス・Jrとしては、
簡単にそう割り切れなかった。
その為、久しぶりのオフの日が来ても…今回は、虎徹から一緒に
過ごそうという誘いが来ても、素直に頷く気持ちになれなくて。
結局、彼は…ゴールド地区内のリバーサイド周辺を、気持ちの整理を
つける為にあてもなく散歩していた。
こうして歩いていると、幾つもの視線が感じられる。
だが、バーナビーにとっては…一歩、マンションの部屋を出ればある意味…
常に一挙一足を見られ続けるのもまた仕事の一環のようなものだ。
最初は一人になりたい気分の時に、無遠慮に視線が注がれていることに
不快に思ったが…すぐに気を取り直して、気にしないことにした。
今は…考えたいことがあったからだ。
(一体僕は何をしているんだろう…。あの日の虎徹さんの寝言を未だに
引きずって、せっかくの誘いすら断ってしまうなんて…)
けれど、今だに自分の胸の中にはモヤモヤした気持ちが色濃く残っていて。
妻の臨終に立ち会う事が出来なかった後悔…そういったものが
あの言葉には色濃く残っていて。
その事で虎徹を責めてしまうのは人としてどうなのか…という思いが
あるからこそ、青年は口を閉ざしているしかなかった。
(僕はバカだな…。あの人が僕の部屋のベッドの上で亡くなった奥さんの
名前を呟いた事で、凄く嫉妬をしてしまうなんて…)
セブンマッチを経て、虎徹の作戦のおかげでジェイクを倒した辺りから
自分たちの関係はそれまでと大きく変わっていった。
それまでずっと「オジサン」と彼の事を呼んでいた。
元々、相棒になったのは会社からの命令だったし…自分と何もかも
考え方の違う相手の行動に、共感も納得も出来ないことだらけだった。
だから、意固地になって最初は絶対に認めるものか…と思った。
けれど、そんな冷たい態度をとり続けていたにも関わらず相手はこっちの
誕生日を祝おうとしたり…ルナティックからの攻撃からかばって負傷したり、
そういうバカな事をやり続けた。
そうしている内に、気づいたら…徐々に虎徹を認め始めている自分に
気づいて、虎徹さんと初めて呼んだ時から…何かが大きく変わっていった。
―その結果、こんな関係に転じてしまうなんて…呼び始めた当初は
予想もしていなかったけど
(あれからもう半年か…。ジェイクを…あの人の助けを得て倒してから…)
太陽の光を浴びて、キラキラと輝く水面を眺めながら…バーナビーは
深く溜息を吐いていった。
その光景を素直に…今の自分は美しいと感じている。
だが、両親の復讐を果たす事に燃えていた頃の自分は…今、思い返すと
何を見ても心から美しいとか、綺麗だと感じられなかったように思う。
そのせいで、恋愛も縁遠く…心を許せる友人も、出来ないで生きてきた。
25年の人生の中で、バーナビーにとって大切な人といえるのは21年前に
殺された両親、家政婦のサマンサおばさん、自分を引き取ってくれた
マーベリックさん、それと…虎徹と、同じヒーローをやっている仲間たちぐらいだ。
(特に…僕にとって、虎徹さんは…その中で誰よりも大切になっている…)
独占欲も嫉妬も、今までのバーナビーにとっては無縁に近いものだった。
女性に好意を寄せられた事は数多くあるが、自分には恋愛感情というのは
欠落していると思った。
だからそれまで異性と付き合い始めても…両親の復讐に関する情報が
得られる可能性があれば何よりもそれを優先していた。
そんな自分に、女性たちはすぐに愛想が尽きて…気づいたら終わっている。
それが何度も続いた為、誰とも深い関係になることもなく生きてきた。
けど、虎徹は違った。自分の復讐を果たす為に…大怪我をしているにも
関わらず、病院を抜け出し…自分が勝利する為に協力してくれた。
キング・オブ・ヒーロー…今の自分がその称号を得て、栄光の中で笑って
いられるのは…虎徹の存在無くしてはあり得ないと思っている。
(あの日…虎徹さんが手を貸してくれなかったら、僕はみじめにジェイクに
負けて、このシュテルンビルドの街も…沈められてしまっていただろう…)
今、目の前に広がる平和な光景。
それは…自分だけの力では、守る事が出来なかった。
虎徹がいたから…あの人が、自分をあの日助けてくれたから
失わないで済んだもの。
そう思うと…ひどく愛しいものに感じられて、バーナビーは瞳を細めて
周囲の風景を見やった。
「あ…」
すると視界に、一組の親子連れが入ってきた。
金髪の小さな少年が…茶色の髪をした身なりの良い男性と、綺麗に
金髪をまとめた婦人に両手を繋がれて幸せそうに笑っている。
一瞬、声に詰まりそうだった。
…小さな頃の自分が、両親に手を引かれて歩いている光景を思い出したから。
それを見た瞬間、とっさに涙が流れそうになった。
だが、自分が何人かに注目されていたことを思い出し…とっさに押さえていく。
そしてどうにか表情が崩れないように保ちながら、小さく呟いていく。
「父さん…母さん…」
もう、自分の両親は殺されてこの世にいない。
そんなのは分かりきっている。
けれど…その幸せな親子連れは、自分がかつて幸福だった頃の
記憶を呼び覚ましていった。
自然と、一粒…二粒と、涙がこぼれていく。
あれは自分自身でも、亡くなった両親そのものじゃないって理性では判っているのに。
なのに…幸せだった頃の記憶が蘇るだけで、自分の意志と関係なく涙が零れていった。
(ああ、そうか…)
その瞬間…天啓のように、バーナビーは気づいていく。
とても当たり前の事に。
小さな嫉妬の心に囚われて、視野が狭くなってしまった状態では
つい見落としてしまっていた事に。
それに気づいた瞬間…胸のモヤモヤは霧散していき。
「…あの人に、すぐにでも会いに行こう…」
そう決めて、赤いジャケットのポケットから携帯電話を取り出していくと…
虎徹に掛けていった。
―すぐにでも会いたいと、率直に伝える為に…
視聴したらうっかりハマってしまったタイガーバニーの
初作品です。
世間では兎×虎の方が多いって判っているんですが…
逆CPの虎兎にハマりました。
お姫様だっこされているのは虎だって判っているんだけどね!
それでもオジサン受けよりも、私はオジサンは攻めが好きなのよ!
と力説してやります(笑)
とりあえず初作品はエロ描写基本ありません。
原作の設定とか、そういうのをある程度意識して守るよう
意識して書いています。
良ければ見てやって下さい。
これは先月、書き上げて完結している作品なので
前後編の掲載になります。
『貴方と一緒に(前編)』
一虎徹と昨晩、一緒に過ごしたバーナビーは、早朝…朝日を
受けながらまどろんでいた。
バーナビーの使っているベッドはキングサイズのものなので…大の男二人が
寝ても寝返りを打てるくらいの余裕がある。
傍らに自分の相棒の体温を感じていきながら、ヌクヌクと布団に包まれている
時間がバーナビーは好きだった。
(暖かくて気持ち良い…特に…この人がソバにいてくれると…)
昨晩、熱い時間を共に過ごした。
そして行為が終わった後…その心地良いけだるさを感じながら眠りに落ちた。
その余韻が体に残っている状態で…こうして、虎徹の体温と匂いを感じて
まどろんでいられるのはかなりの至福だった。
しかし…次の瞬間、その幸福感を一気に破壊する言葉が相手の口から
こぼれ落ちていった。
「…友恵…」
一ピキッ…!
幸福感で満たされていた金髪の青年の額に、怒りによって大きく
血管が浮かび上がってくる。
とっさにハンドレットパワーでも発動させてしまいかねないくらいの勢いだった。
(…このオジサン…! 散々昨日はこっちを好き放題してくれた癖に…
その僕の隣で、亡くなった奥さんの名前を呟くとは良い度胸してますね…!)
どうにかギリギリの所で踏み留まって…シーツを強く握り締める程度で抑えていく。
しかしその手も力を込めすぎて蒼白になっているくらいだった。
幾ら何でも、寝ている相手に対して100倍の身体能力になる
ハンドレットパワーを発動するのは危険過ぎる。
しかし何もしないでは、この胸のムカムカは収まりそうになかつた。
(せめてもの意趣返しに…頬でもつねってやりましょうか…)
最終的にそういう結論に達して、ゆっくりと虎徹の方へと指先を伸ばしていく。
その瞬間…相手は小さく続きの言葉を呟いた。
「友恵…お前の臨終に…立ち会うことが出来なかったこと…御免、な…」
その内容の重さに、バーナビーの手はピタリと止まっていく。
虎徹の目元にうっすらと涙が滲んでいるのを見て…余計にこちらの
葛藤は色濃いものへと変わっていった。
「貴方は…本当に卑怯ですよ…。そんな言葉を続けられてしまったら…
こっちは何も言えなくなるじゃないですか…」
そう口にしながら、青年はモヤモヤした気持ちを胸に抱え込んでいく。
この複雑な気持ちを相手にぶつけて良いか深く迷っていきながら、
暫くその切なそうな相手の寝顔を見つめていったのだった―
*
虎徹がベッドの上で、爆弾発言に近い寝言を呟いてから
数日があっという間に過ぎていった。
その間もいつものように、何度もアニエスからヒーローの出動要請が来て、
パニックに陥っている市民の救出や避難誘導、悪人の捕獲などをこなしていった。
仕事中は…その一件の事を忘れて、ヒーローとしての自分の役目を
果たすのを優先する事が出来た。
だが、ヒーロースーツを脱いだ、バーナビー=ブルックス・Jrとしては、
簡単にそう割り切れなかった。
その為、久しぶりのオフの日が来ても…今回は、虎徹から一緒に
過ごそうという誘いが来ても、素直に頷く気持ちになれなくて。
結局、彼は…ゴールド地区内のリバーサイド周辺を、気持ちの整理を
つける為にあてもなく散歩していた。
こうして歩いていると、幾つもの視線が感じられる。
だが、バーナビーにとっては…一歩、マンションの部屋を出ればある意味…
常に一挙一足を見られ続けるのもまた仕事の一環のようなものだ。
最初は一人になりたい気分の時に、無遠慮に視線が注がれていることに
不快に思ったが…すぐに気を取り直して、気にしないことにした。
今は…考えたいことがあったからだ。
(一体僕は何をしているんだろう…。あの日の虎徹さんの寝言を未だに
引きずって、せっかくの誘いすら断ってしまうなんて…)
けれど、今だに自分の胸の中にはモヤモヤした気持ちが色濃く残っていて。
妻の臨終に立ち会う事が出来なかった後悔…そういったものが
あの言葉には色濃く残っていて。
その事で虎徹を責めてしまうのは人としてどうなのか…という思いが
あるからこそ、青年は口を閉ざしているしかなかった。
(僕はバカだな…。あの人が僕の部屋のベッドの上で亡くなった奥さんの
名前を呟いた事で、凄く嫉妬をしてしまうなんて…)
セブンマッチを経て、虎徹の作戦のおかげでジェイクを倒した辺りから
自分たちの関係はそれまでと大きく変わっていった。
それまでずっと「オジサン」と彼の事を呼んでいた。
元々、相棒になったのは会社からの命令だったし…自分と何もかも
考え方の違う相手の行動に、共感も納得も出来ないことだらけだった。
だから、意固地になって最初は絶対に認めるものか…と思った。
けれど、そんな冷たい態度をとり続けていたにも関わらず相手はこっちの
誕生日を祝おうとしたり…ルナティックからの攻撃からかばって負傷したり、
そういうバカな事をやり続けた。
そうしている内に、気づいたら…徐々に虎徹を認め始めている自分に
気づいて、虎徹さんと初めて呼んだ時から…何かが大きく変わっていった。
―その結果、こんな関係に転じてしまうなんて…呼び始めた当初は
予想もしていなかったけど
(あれからもう半年か…。ジェイクを…あの人の助けを得て倒してから…)
太陽の光を浴びて、キラキラと輝く水面を眺めながら…バーナビーは
深く溜息を吐いていった。
その光景を素直に…今の自分は美しいと感じている。
だが、両親の復讐を果たす事に燃えていた頃の自分は…今、思い返すと
何を見ても心から美しいとか、綺麗だと感じられなかったように思う。
そのせいで、恋愛も縁遠く…心を許せる友人も、出来ないで生きてきた。
25年の人生の中で、バーナビーにとって大切な人といえるのは21年前に
殺された両親、家政婦のサマンサおばさん、自分を引き取ってくれた
マーベリックさん、それと…虎徹と、同じヒーローをやっている仲間たちぐらいだ。
(特に…僕にとって、虎徹さんは…その中で誰よりも大切になっている…)
独占欲も嫉妬も、今までのバーナビーにとっては無縁に近いものだった。
女性に好意を寄せられた事は数多くあるが、自分には恋愛感情というのは
欠落していると思った。
だからそれまで異性と付き合い始めても…両親の復讐に関する情報が
得られる可能性があれば何よりもそれを優先していた。
そんな自分に、女性たちはすぐに愛想が尽きて…気づいたら終わっている。
それが何度も続いた為、誰とも深い関係になることもなく生きてきた。
けど、虎徹は違った。自分の復讐を果たす為に…大怪我をしているにも
関わらず、病院を抜け出し…自分が勝利する為に協力してくれた。
キング・オブ・ヒーロー…今の自分がその称号を得て、栄光の中で笑って
いられるのは…虎徹の存在無くしてはあり得ないと思っている。
(あの日…虎徹さんが手を貸してくれなかったら、僕はみじめにジェイクに
負けて、このシュテルンビルドの街も…沈められてしまっていただろう…)
今、目の前に広がる平和な光景。
それは…自分だけの力では、守る事が出来なかった。
虎徹がいたから…あの人が、自分をあの日助けてくれたから
失わないで済んだもの。
そう思うと…ひどく愛しいものに感じられて、バーナビーは瞳を細めて
周囲の風景を見やった。
「あ…」
すると視界に、一組の親子連れが入ってきた。
金髪の小さな少年が…茶色の髪をした身なりの良い男性と、綺麗に
金髪をまとめた婦人に両手を繋がれて幸せそうに笑っている。
一瞬、声に詰まりそうだった。
…小さな頃の自分が、両親に手を引かれて歩いている光景を思い出したから。
それを見た瞬間、とっさに涙が流れそうになった。
だが、自分が何人かに注目されていたことを思い出し…とっさに押さえていく。
そしてどうにか表情が崩れないように保ちながら、小さく呟いていく。
「父さん…母さん…」
もう、自分の両親は殺されてこの世にいない。
そんなのは分かりきっている。
けれど…その幸せな親子連れは、自分がかつて幸福だった頃の
記憶を呼び覚ましていった。
自然と、一粒…二粒と、涙がこぼれていく。
あれは自分自身でも、亡くなった両親そのものじゃないって理性では判っているのに。
なのに…幸せだった頃の記憶が蘇るだけで、自分の意志と関係なく涙が零れていった。
(ああ、そうか…)
その瞬間…天啓のように、バーナビーは気づいていく。
とても当たり前の事に。
小さな嫉妬の心に囚われて、視野が狭くなってしまった状態では
つい見落としてしまっていた事に。
それに気づいた瞬間…胸のモヤモヤは霧散していき。
「…あの人に、すぐにでも会いに行こう…」
そう決めて、赤いジャケットのポケットから携帯電話を取り出していくと…
虎徹に掛けていった。
―すぐにでも会いたいと、率直に伝える為に…
※前ジャンルの友達もこのブログをちょこちょこ覗いている
みたいなので、週1~2回程度の頻度で過去作品を掲載
していく事にしました。
この作品は私が一番最初に書いた王レベ小説になります。
今読み返すとやや文章が拙い感じが残っていますが…誤字脱字等
以外はほぼ修正せずにそのまま掲載してあります。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
『優しい夜』
あれは月の明かりが鮮やかな夜だった。
何となくセレストの顔が見たくなって抜け出したのに、騎士団の宿舎には
彼がいなくて…そういう時は実家に戻っているか、同僚と飲みにいっている
かのどちらかだと体験的に知っていたカナンは町にまで足を運んだ。
(今日は顔を見せてやろうかな…)
多分、自分がこんな時間に外をうろついている事を知れば、
あの真面目な男の事だ。
またお説教を始めるに違いない。
けれどお説教を食らうと判っていても、今夜は何となくセレストの
驚く顔が見たい気分だった。
だが彼の実家に立ち寄って暫く家人の会話に耳を澄ませてみたが、セレストの声
らしきものは聞こえない。 次は酒場の並ぶ街道に足を運んだ。
しかし、中まで入って確認する訳にはいかなかった。
一応王族である自分が、迂闊に入ってはいけない場所である事は
何となく判っていたからだ。
だから全部の酒場の入り口が把握出来る位置で、カナンは待つことにした。
あの男の事だ。朝まで飲み明かすという事はまずない筈だ。
相手を慮って程々の所で切り上げる筈である。
そう踏んで月が少し下降し始めだした頃、酒場からようやくセレストの姿が現れた。
やはり、自分の読みは正しかったとカナンは自慢げな気持ちになった。
さぁどうやって姿を現して、あいつを驚かしてやろうかと目論んで…その思考は
すぐに中断する羽目になった。
(何故…白鳳が?)
そのすぐ後に現れたのは、自分達の天敵である男の子
モンスターハンターの白鳳だった。
初対面の時からセレストを気に入り、彼にとって何度か危険な目に
遭わされた筈の相手である。
何か、セレストの隠された部分を覗いているような気分だった。
いや裏切られたような、そんな気持ちだった。
今までの態度から、絶対に彼はあの危ない男を嫌ってるとカナンは
思っていたからだ。 だが現実はこうして二人は飲みにいく程親しくなっている。
あの態度はもしかしたら自分を欺く為…彼がそんな事出来る性格では
無い事は判りきっている筈なのについそう考えてしまう。
更にカナンの気持ちをモヤモヤさせたのが、白鳳が妙にセレストに
ぴったりくっついて見えた事だ。
(セレスト! 何している。そんなぴったりくっついているのを何故そんな奴に
許している! 僕にだってそんな近くにいてくれない癖に!)
いつもセレストは、自分より一歩下がった位置にいる。
パートナーでいる時でさえその態度は崩れない。
二人がイヤに親しそうに見えて、悔しかった。
もう我慢が出来なかった。二人の前に出てって驚かせてやる。
そう覚悟を決めた次の瞬間、カナンの頭は真っ白になった。
二人は、月明かりが浩々と照らす中で口付けていた。
信じられないものを見た気分だった。やはり二人は…自分の知らない所でいつの
間にかくっついていたのだ。
もう当初のセレストを驚かしてやろうという気持ちは完全に吹っ飛んでいた。
その後どうやって自分の部屋に戻ったのかも…カナンは思い出す事が出来なかった。
*
「カナン様! どうなさったのですかっ?」
激しく肩を揺さぶられながら、聞き慣れた声が耳に飛び込んでくる。
過去の情景に心を置いていたカナンには、すぐに状況が把握出来なかった。
目の前に、綺麗な青い髪と心配げに揺れている緑の瞳がある。
自分の側にずっといた従者でありパートナーであり…そして…。
「う…ん…」
身体が重い。思考に霞が掛かっているようだ。
それでようやく自分が今まで寝ていたという理解する。
肩を揺さぶられる度に、ベッドが軋む。今、自分が彼に覆い被されるような
体勢になっていた事を自覚し、途端に顔が真っ赤になった。
「わわわわっ! カナン様!」
こちらの顔が赤く染まっている事に気づくと、相手も意識し始めたらしい。
慌てて飛びのこうとするが、カナンはその腕をガシッと掴んだ。
「カナン様…?」
主の不可解な態度に、セレストは固唾を呑んで見守る。
上気した顔がこちらを真っ直ぐ見据える様が…何とも色っぽくて
セレストの心を煽る。
そして、カナンの唇と手がゆっくりと動き始め…。
ドガァ!
いきなり会心の一撃がセレストの頬に命中した。
「な…何をするんですかぁ! カナン様ー」
「うるさい黙れ! 一度くらい黙って殴られろ!」
相変らず、ご無体全開の王子である。訳も判らず殴られても、やっぱりさっきまで
物凄いうなされ方をしていたカナンを放り出すという事は、彼の頭にはなく…。
「あの…私、カナン様を怒らすような事を何かなさいましたか?」
「したんじゃなくて、されたんだろう、馬鹿者」
何の事を言われているのかさっぱり判らない。
「お前が…白鳳に…」
「はぁ?」
最初は何を言われているか把握出来なかったが、それが以前白鳳に
不意にされたキスの事を指していた事を少し経ってから理解した。
「あの時の…夢を見てたんだ。それで…」
「それで?」
「うなされてた。情けない話だ…あれから随分と経つのに、まだ僕は拘っていたようだ。
もうお前は…僕の恋人なのにな…」
「カナン様…」
どうやらカナンが嫉妬していたらしいという事が判って、セレストの方が照れ始めた。
だが、それは目の前の主も同様だった。
顔の赤みは引く事無く、今度は顔を俯かせた。
けれど耳まで赤いのでまるで隠していないのに等しい。
その姿勢のまま、カナンの細い指先がセレストの頤に触れる。
そして言葉も無く頬を、唇をゆっくりと辿っていく。
特に唇を重点的になぞっていた。それだけで、ゾクリとしたモノが背筋を走って行く。
ヤバい、限りなくヤバい。
あの日以来カナンに触れていないセレストには、それだけで理性が
焼き切れてしまいそうな誘い方だ。 しかも今は夕食が終わって、
そろそろ就寝の時刻だ。
この時間帯にはまず自分以外の人間がカナンの自室に訪れる事もない。
状況は揃いすぎている。
急いで身体を離そうとする前に、瞳を覗き込まれた。その青い双眸が
自分の身も心も捕らえていく。
「セレスト…」
消え入りそうな声で自分の名を呼ぶ。もう、抗えない。
「ん…」
久しぶりに触れたカナンの唇は、途方もなく甘く感じる。
カッと熱いモノが背筋を駆け上って行く。
その柔らかさが、温もりがたまらなく愛おしかった。
気がつくとその身体を抱きすくめ、唇を貪っていた。
セレストの舌が歯列を割り、その舌を絡めとっていく。
時折角度を変え、息を吹き込んだり、上顎の所をそっと優しく舐めるとその度に
カナンの身体がビクリと反応する。
「相変らず、敏感ですね…」
「ば…か…」
唇を離して、耳元でそっと囁く。
ついでに息を吹きかけながら、耳たぶや耳の後ろまで、丹念にキスしていく。
セレストの手が首筋をそっと撫で、ようやくカナンの着衣に手を掛けていく。
「待て…お前も…」
「はい。それではお互いに…」
あの湖のダンジョンの時のように、二人はお互いを愛撫しながら着衣を
脱がしっこした。 カナンはセレストの頬や髪に触れながら、セレストは
胸や首筋のラインをなぞり、口付けながら服を取り去っていく。
鎧等の装備のない分だけ、あの時より脱がせるのは楽だった。
セレストの方は腰に下げた剣だけ自分で外して、ベッドの脇に
静かに横たえる。
何かあった時はすぐ手に取れる位置だ。こんな時でも彼の職務に忠実な
性格が良く現れていた。
二人は一糸纏わぬ姿になると、ベッドに倒れ込みもう一度抱き合い
ながら深く口付け合う。
その間セレストの指は上半身を忙しなく蠢き…胸の頂きで止まった。
ツンとすでに反応しているそこを、両手で優しく触れ…時に抓りながら
同時に責め続けた。カナンの唇から、熱い吐息が洩れる。
「ン…ハァ…」
キスの合間に、すぐ側にあるセレストの唇に吐息が掛かる。
それだけで、更に彼の欲情を煽って行く。 反応する身体が堪らなく愛しい。
この顔も、この行為も全て自分だけに許された特権だ。
それが、更にセレストを熱くさせた。 カナンのモノに触れようと
身体をずらし始めた矢先。
「うりゃ!」
「どわっ!」
先手必勝。カナンが思いっきりセレストをひっくり返した。
「カ、カカカカナン様っ?」
「…今、何度カを繰り返した?」
「そ、それよりも…うっ!」
カナンはいきなり、セレストのモノを咥え始めた。
突然のカナンの行動に、彼の状況判断能力はついていけないようだった。
いつの間にかカナンはセレストの脚の間にいた。
まだセレストが反撃出来ない内にカナンの舌と唇が、彼の一番
敏感な部分を攻める。
「だ、駄目です! カナン様…」
セレストの泣き言に、カナンは一旦唇を離して答えた。
「うるさい! いつか仕返しするって前から宣言してただろう!
大人しく僕の手でイッてしまえ!」
「カナン様―!」
先程までのセレストの優位はどこへやら。
引き剥がそうにも、すでに感じ始めている彼の身体は、すでに力が入らない。
(この人だってあんなに感じてたのに…良くこんな事を…)
それはカナンの強靭な精神力の賜物である。
まさかあの瞬間に反撃をされるとはセレストだって思っていなかった。
しかも拙いながらもオズオズと咥えているのが、皮肉にもセレストの
一番敏感な先端を丹念に刺激する結果になった。
しかも、ビジュアル的にも途方もなくクる光景である。
あの時のカナンのように、セレストも目を逸らす事など出来ない。
それが余計に青年を追い込んで行く。
(駄目だ…! もう…!)
ついに耐えられず、カナンの口内に精を放つ結果になった。
「僕の気持ちが…判ったか?」
受け切れず、唇の端に伝う白濁の液が、何とも卑猥に映った。
セレストは慌てて手の甲でそこを拭い、清めた。
「十分過ぎる程…けど、もう止めてくださいね…」
泣きそうになりながら、セレストが哀願する。
あんなのはもう視覚の暴力以外の何物でもない。
本当に頭の芯が焼き切れてしまいそうな快楽ではあったが…。
「どうしてだ?」
「どうしてもです」
とんでもない事をしでかしたばかりなのに、問い掛けてくる少年の目は無邪気で…。
これ以上の言葉を封じるように、セレストは有無を言わさずカナンの唇を塞いだ。
「うっ…ン!」
「カナン様…」
セレストの舌が、容赦無く相手の舌を絡め取り、きつく吸い上げる。
唇を離すと、性急にカナンの全身を満遍なく愛撫していく。
先程のゆったりした感じはなく、動作もどこか荒っぽさがあった。
「ちょと。あっ…セレスト?」
「貴方が…悪いんですよ…」
カナンのモノを、セレストの手が捕まえる。
すでに怒張しているそれを、青年は容赦なく追い込んで行く。
左手を胸の頂きに添えながら、右手と口で愛撫を始める。
やや痛みすら伴うそれも、身体に火がついた今では快楽を与える結果になる。
「バカ! お前僕の気持ちが判ったばかりで…こんな…アッ」
「ですが…貴方には私の気持ちは判らないでしょう?」
カナンはきっと知らない。
あんな事をされたら、カナンを欲しくて堪らなくなるという、この狂暴な
感情の存在の事は。 先端を弄られる度に、湿った音がイヤらしく響く。
敏感な部分に唇を添え、余った皮を上下に的確に動かしていく。
瞬く間に、カナンは絶頂を迎えさせられる。
そして自らの放った精を、手で後ろの口に塗り付けられて、
更に少年は顔を赤らめた。
「アッ…ヤダ…」
「カナン様…力を抜いて…」
耳元で囁きながら、何度もセレストはその場所を解し始めた。
少しでもカナンの負担を減らしたかったからだ。
「そんなトコ…じっくり触るな…うっ」
カナンの感じるポイントに辿りついたらしく、大きく身体が跳ねる。
爪の先まで浮いてしまいそうな感覚が、大きな奔流のように襲ってくる。
何度も拒絶の言葉を吐いていたが身体に力が入らないらしく、その抵抗は
微々たるものであった。
一度放ったばかりのモノが、再び硬度を取り戻した頃を見計らってセレストは
カナンの上に覆い被さった。
「もう…大丈夫そうですね」
「来るなら…早く…しろっ」
こんな時でも気丈なカナンの態度にセレストは微笑みながら
指を引き抜き、代わりに
自分のモノを当てがう。そしてじっくりとカナンの最奥まで進んでいく。
きつくて熱い、愛しい人の熱が青年を包んだ。
「大丈夫ですか? カナン様…」
「ン…平気だ。けど、もう少し…」
顔を真っ赤にして、それ以上の言葉の言えない主の意思を、青年はすぐに察した。
軽く微笑んで額に口付け、そっとその黄金の髪を撫ぜた。
「判りました…それでは暫くこうしていましょう」
暫しの間、セレストはカナンの中で殆ど動かずに収まっていた。
それだけでも放ってしまいそうなくらいの締め付けであったが、
彼は懸命に耐える。
そうこうしている内に、カナンの表情に余裕が生まれてくる。
少しだが、慣れて来たらしい。そろそろ大丈夫だろうと、セレストは伺いを立ててみた。
「あの…そろそろ、動き始めてよろしいでしょうか…?」
「うん…」
珍しく主の甘えたような声に、更にセレストの心が熱くなる。
普段のカナンなら絶対にうんなど言ってくれない。だからこそ
余計に可愛く感じる。
最初は緩やかだった律動も、カナンの口から甘い嬌声が零れる度に
激しくなっていく。
特にその声が一際大きくなる、さっき見つけたばかりのカナンの感じる
場所をセレストは重点的に擦り、攻めていった。
「アッアッ!…ウゥ!」
声を殺す事も忘れ、カナンはその熱に翻弄される。
初めてした時は、圧迫感と苦しさが伴っていたが、今セレストの
動きから齎されるものは純粋な快楽だった。
頬や額、そして唇に口付けを繰り返し、セレストはその間も胸の
頂きや脇のラインへの愛撫を忘れなかった。
「カナン様…可愛い…」
「バカ…言うな」
「ですが…本当のことですよ…」
そういってこめかみに優しくキスすると、うーと言いながらカナンは黙った。
こんな状態では拳を振るう事も出来ないと悟ったらしい。
そんな彼をセレストは緑の瞳を優しく細めながら、見つめていた。
どこに触れても、反応を返すカナンが愛おしい。
そうしている内に二人のリズムが重なる。
鼓動が、吐息が、動きが…そして心の全てが頂点に向かう為に一つに重なって行く。
「セレスト…セレストッ…」
「カナン様…!」
二人とも、互いの名を必死に呼び合い…。
「アァァァァ!」
カナンの一際高い声が室内に響くと同時に、セレストは愛しい
人の中に精を放ったのだった…。
*
すでに冷たくなった風が、窓から緩やかに吹き込んで来る。
カーテンが風に靡き、冴え渡る月明かりが静かに射し込んでくる。
もう空気も澄んで来ている季節だ。
窓を開けて眠るにはきつい季節だが、今カナンは寒さなど感じていなかった…
自分のすぐ側に、大事な人間の温もりがあるから…。
「もう安心しましたか…?」
「あぁ…」
ベッドの上でセレストに腕枕をしてもらいながら、カナンが頷く。
二人はすでに服を着ていた。
流石に朝まで一緒にいる訳にも、ここで夜を明かす事までは
二人には許されていなかった。 それでも、セレストはギリギリまで
カナンの側にいるつもりだった。
「私はもう、カナン様しか見えませんから…今度白鳳さんにあぁやって
誘われても絶対に断りますから…」
「そうしろ。あいつは隙を見せると、ロクな事にならないからな…」
不意チュー然り、伝説の滝然り、そして最後のダンジョン然り…。
確かに散々、彼には苦渋を舐めさせられた。けれども…。
「けど、一つだけ良かった事もありますけどね…」
「在るのか? そんな事が?」
物凄い言われようだが、彼の所業を考えるとまあ仕方が無い事かも知れない。
「カナン様への気持ちに、気づけた事です」
予想もしてなかった答えに、カナンの目が見開かれる。
「多分白鳳さんが現れなかったら、きっとこの気持ちに気づくことはなかった
と思います…それだけは、実は感謝しているんですよ」
「本当にか?」
「嘘言って何になるんですか? そりゃ確かに可愛い妻を貰って
幸せな家庭を築くという夢にまったく未練がないとは言えませんけれど…」
「…後悔してるんじゃないか」
「…人の事まったく信じてませんねカナン様…けど、それよりも貴方のお側にこうして
いられる事の方が私には大事ですよ…」
その言葉に、カナンの不安は取り払われていく。
「僕だって…お前の事」
「判っていますよ…」
クスクス笑いながら、二人の唇が自然に重なる。本当は
もっと一緒にいたいけれど…。
カナンはセレストの立場を考え、その甘えを噛み殺して呟いた。
「セレスト…もう戻っていいぞ」
「…判りました」
二人は名残惜しげに、身体を離した。
セレストの温もりが離れていくのは寂しいが、カナンの胸には
先程の不安はなかった。
自分は彼に誰よりも愛されているから。
それを信じる事が出来るから。
「おやすみなさい…カナン様」
「あぁ…おやすみセレスト」
最後にそっとカナンの黄金の髪を撫ぜながら、セレストは立ち去った。
優しい気持ちが、彼を満たす。
きっと夜を共に過ごすことは出来なくても。
朝になれば、絶対に彼と会えるから…。
そう考え、眠りに落ちたカナンの表情は、どこまでも安らかで
満たされたものだった…。
みたいなので、週1~2回程度の頻度で過去作品を掲載
していく事にしました。
この作品は私が一番最初に書いた王レベ小説になります。
今読み返すとやや文章が拙い感じが残っていますが…誤字脱字等
以外はほぼ修正せずにそのまま掲載してあります。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
『優しい夜』
あれは月の明かりが鮮やかな夜だった。
何となくセレストの顔が見たくなって抜け出したのに、騎士団の宿舎には
彼がいなくて…そういう時は実家に戻っているか、同僚と飲みにいっている
かのどちらかだと体験的に知っていたカナンは町にまで足を運んだ。
(今日は顔を見せてやろうかな…)
多分、自分がこんな時間に外をうろついている事を知れば、
あの真面目な男の事だ。
またお説教を始めるに違いない。
けれどお説教を食らうと判っていても、今夜は何となくセレストの
驚く顔が見たい気分だった。
だが彼の実家に立ち寄って暫く家人の会話に耳を澄ませてみたが、セレストの声
らしきものは聞こえない。 次は酒場の並ぶ街道に足を運んだ。
しかし、中まで入って確認する訳にはいかなかった。
一応王族である自分が、迂闊に入ってはいけない場所である事は
何となく判っていたからだ。
だから全部の酒場の入り口が把握出来る位置で、カナンは待つことにした。
あの男の事だ。朝まで飲み明かすという事はまずない筈だ。
相手を慮って程々の所で切り上げる筈である。
そう踏んで月が少し下降し始めだした頃、酒場からようやくセレストの姿が現れた。
やはり、自分の読みは正しかったとカナンは自慢げな気持ちになった。
さぁどうやって姿を現して、あいつを驚かしてやろうかと目論んで…その思考は
すぐに中断する羽目になった。
(何故…白鳳が?)
そのすぐ後に現れたのは、自分達の天敵である男の子
モンスターハンターの白鳳だった。
初対面の時からセレストを気に入り、彼にとって何度か危険な目に
遭わされた筈の相手である。
何か、セレストの隠された部分を覗いているような気分だった。
いや裏切られたような、そんな気持ちだった。
今までの態度から、絶対に彼はあの危ない男を嫌ってるとカナンは
思っていたからだ。 だが現実はこうして二人は飲みにいく程親しくなっている。
あの態度はもしかしたら自分を欺く為…彼がそんな事出来る性格では
無い事は判りきっている筈なのについそう考えてしまう。
更にカナンの気持ちをモヤモヤさせたのが、白鳳が妙にセレストに
ぴったりくっついて見えた事だ。
(セレスト! 何している。そんなぴったりくっついているのを何故そんな奴に
許している! 僕にだってそんな近くにいてくれない癖に!)
いつもセレストは、自分より一歩下がった位置にいる。
パートナーでいる時でさえその態度は崩れない。
二人がイヤに親しそうに見えて、悔しかった。
もう我慢が出来なかった。二人の前に出てって驚かせてやる。
そう覚悟を決めた次の瞬間、カナンの頭は真っ白になった。
二人は、月明かりが浩々と照らす中で口付けていた。
信じられないものを見た気分だった。やはり二人は…自分の知らない所でいつの
間にかくっついていたのだ。
もう当初のセレストを驚かしてやろうという気持ちは完全に吹っ飛んでいた。
その後どうやって自分の部屋に戻ったのかも…カナンは思い出す事が出来なかった。
*
「カナン様! どうなさったのですかっ?」
激しく肩を揺さぶられながら、聞き慣れた声が耳に飛び込んでくる。
過去の情景に心を置いていたカナンには、すぐに状況が把握出来なかった。
目の前に、綺麗な青い髪と心配げに揺れている緑の瞳がある。
自分の側にずっといた従者でありパートナーであり…そして…。
「う…ん…」
身体が重い。思考に霞が掛かっているようだ。
それでようやく自分が今まで寝ていたという理解する。
肩を揺さぶられる度に、ベッドが軋む。今、自分が彼に覆い被されるような
体勢になっていた事を自覚し、途端に顔が真っ赤になった。
「わわわわっ! カナン様!」
こちらの顔が赤く染まっている事に気づくと、相手も意識し始めたらしい。
慌てて飛びのこうとするが、カナンはその腕をガシッと掴んだ。
「カナン様…?」
主の不可解な態度に、セレストは固唾を呑んで見守る。
上気した顔がこちらを真っ直ぐ見据える様が…何とも色っぽくて
セレストの心を煽る。
そして、カナンの唇と手がゆっくりと動き始め…。
ドガァ!
いきなり会心の一撃がセレストの頬に命中した。
「な…何をするんですかぁ! カナン様ー」
「うるさい黙れ! 一度くらい黙って殴られろ!」
相変らず、ご無体全開の王子である。訳も判らず殴られても、やっぱりさっきまで
物凄いうなされ方をしていたカナンを放り出すという事は、彼の頭にはなく…。
「あの…私、カナン様を怒らすような事を何かなさいましたか?」
「したんじゃなくて、されたんだろう、馬鹿者」
何の事を言われているのかさっぱり判らない。
「お前が…白鳳に…」
「はぁ?」
最初は何を言われているか把握出来なかったが、それが以前白鳳に
不意にされたキスの事を指していた事を少し経ってから理解した。
「あの時の…夢を見てたんだ。それで…」
「それで?」
「うなされてた。情けない話だ…あれから随分と経つのに、まだ僕は拘っていたようだ。
もうお前は…僕の恋人なのにな…」
「カナン様…」
どうやらカナンが嫉妬していたらしいという事が判って、セレストの方が照れ始めた。
だが、それは目の前の主も同様だった。
顔の赤みは引く事無く、今度は顔を俯かせた。
けれど耳まで赤いのでまるで隠していないのに等しい。
その姿勢のまま、カナンの細い指先がセレストの頤に触れる。
そして言葉も無く頬を、唇をゆっくりと辿っていく。
特に唇を重点的になぞっていた。それだけで、ゾクリとしたモノが背筋を走って行く。
ヤバい、限りなくヤバい。
あの日以来カナンに触れていないセレストには、それだけで理性が
焼き切れてしまいそうな誘い方だ。 しかも今は夕食が終わって、
そろそろ就寝の時刻だ。
この時間帯にはまず自分以外の人間がカナンの自室に訪れる事もない。
状況は揃いすぎている。
急いで身体を離そうとする前に、瞳を覗き込まれた。その青い双眸が
自分の身も心も捕らえていく。
「セレスト…」
消え入りそうな声で自分の名を呼ぶ。もう、抗えない。
「ん…」
久しぶりに触れたカナンの唇は、途方もなく甘く感じる。
カッと熱いモノが背筋を駆け上って行く。
その柔らかさが、温もりがたまらなく愛おしかった。
気がつくとその身体を抱きすくめ、唇を貪っていた。
セレストの舌が歯列を割り、その舌を絡めとっていく。
時折角度を変え、息を吹き込んだり、上顎の所をそっと優しく舐めるとその度に
カナンの身体がビクリと反応する。
「相変らず、敏感ですね…」
「ば…か…」
唇を離して、耳元でそっと囁く。
ついでに息を吹きかけながら、耳たぶや耳の後ろまで、丹念にキスしていく。
セレストの手が首筋をそっと撫で、ようやくカナンの着衣に手を掛けていく。
「待て…お前も…」
「はい。それではお互いに…」
あの湖のダンジョンの時のように、二人はお互いを愛撫しながら着衣を
脱がしっこした。 カナンはセレストの頬や髪に触れながら、セレストは
胸や首筋のラインをなぞり、口付けながら服を取り去っていく。
鎧等の装備のない分だけ、あの時より脱がせるのは楽だった。
セレストの方は腰に下げた剣だけ自分で外して、ベッドの脇に
静かに横たえる。
何かあった時はすぐ手に取れる位置だ。こんな時でも彼の職務に忠実な
性格が良く現れていた。
二人は一糸纏わぬ姿になると、ベッドに倒れ込みもう一度抱き合い
ながら深く口付け合う。
その間セレストの指は上半身を忙しなく蠢き…胸の頂きで止まった。
ツンとすでに反応しているそこを、両手で優しく触れ…時に抓りながら
同時に責め続けた。カナンの唇から、熱い吐息が洩れる。
「ン…ハァ…」
キスの合間に、すぐ側にあるセレストの唇に吐息が掛かる。
それだけで、更に彼の欲情を煽って行く。 反応する身体が堪らなく愛しい。
この顔も、この行為も全て自分だけに許された特権だ。
それが、更にセレストを熱くさせた。 カナンのモノに触れようと
身体をずらし始めた矢先。
「うりゃ!」
「どわっ!」
先手必勝。カナンが思いっきりセレストをひっくり返した。
「カ、カカカカナン様っ?」
「…今、何度カを繰り返した?」
「そ、それよりも…うっ!」
カナンはいきなり、セレストのモノを咥え始めた。
突然のカナンの行動に、彼の状況判断能力はついていけないようだった。
いつの間にかカナンはセレストの脚の間にいた。
まだセレストが反撃出来ない内にカナンの舌と唇が、彼の一番
敏感な部分を攻める。
「だ、駄目です! カナン様…」
セレストの泣き言に、カナンは一旦唇を離して答えた。
「うるさい! いつか仕返しするって前から宣言してただろう!
大人しく僕の手でイッてしまえ!」
「カナン様―!」
先程までのセレストの優位はどこへやら。
引き剥がそうにも、すでに感じ始めている彼の身体は、すでに力が入らない。
(この人だってあんなに感じてたのに…良くこんな事を…)
それはカナンの強靭な精神力の賜物である。
まさかあの瞬間に反撃をされるとはセレストだって思っていなかった。
しかも拙いながらもオズオズと咥えているのが、皮肉にもセレストの
一番敏感な先端を丹念に刺激する結果になった。
しかも、ビジュアル的にも途方もなくクる光景である。
あの時のカナンのように、セレストも目を逸らす事など出来ない。
それが余計に青年を追い込んで行く。
(駄目だ…! もう…!)
ついに耐えられず、カナンの口内に精を放つ結果になった。
「僕の気持ちが…判ったか?」
受け切れず、唇の端に伝う白濁の液が、何とも卑猥に映った。
セレストは慌てて手の甲でそこを拭い、清めた。
「十分過ぎる程…けど、もう止めてくださいね…」
泣きそうになりながら、セレストが哀願する。
あんなのはもう視覚の暴力以外の何物でもない。
本当に頭の芯が焼き切れてしまいそうな快楽ではあったが…。
「どうしてだ?」
「どうしてもです」
とんでもない事をしでかしたばかりなのに、問い掛けてくる少年の目は無邪気で…。
これ以上の言葉を封じるように、セレストは有無を言わさずカナンの唇を塞いだ。
「うっ…ン!」
「カナン様…」
セレストの舌が、容赦無く相手の舌を絡め取り、きつく吸い上げる。
唇を離すと、性急にカナンの全身を満遍なく愛撫していく。
先程のゆったりした感じはなく、動作もどこか荒っぽさがあった。
「ちょと。あっ…セレスト?」
「貴方が…悪いんですよ…」
カナンのモノを、セレストの手が捕まえる。
すでに怒張しているそれを、青年は容赦なく追い込んで行く。
左手を胸の頂きに添えながら、右手と口で愛撫を始める。
やや痛みすら伴うそれも、身体に火がついた今では快楽を与える結果になる。
「バカ! お前僕の気持ちが判ったばかりで…こんな…アッ」
「ですが…貴方には私の気持ちは判らないでしょう?」
カナンはきっと知らない。
あんな事をされたら、カナンを欲しくて堪らなくなるという、この狂暴な
感情の存在の事は。 先端を弄られる度に、湿った音がイヤらしく響く。
敏感な部分に唇を添え、余った皮を上下に的確に動かしていく。
瞬く間に、カナンは絶頂を迎えさせられる。
そして自らの放った精を、手で後ろの口に塗り付けられて、
更に少年は顔を赤らめた。
「アッ…ヤダ…」
「カナン様…力を抜いて…」
耳元で囁きながら、何度もセレストはその場所を解し始めた。
少しでもカナンの負担を減らしたかったからだ。
「そんなトコ…じっくり触るな…うっ」
カナンの感じるポイントに辿りついたらしく、大きく身体が跳ねる。
爪の先まで浮いてしまいそうな感覚が、大きな奔流のように襲ってくる。
何度も拒絶の言葉を吐いていたが身体に力が入らないらしく、その抵抗は
微々たるものであった。
一度放ったばかりのモノが、再び硬度を取り戻した頃を見計らってセレストは
カナンの上に覆い被さった。
「もう…大丈夫そうですね」
「来るなら…早く…しろっ」
こんな時でも気丈なカナンの態度にセレストは微笑みながら
指を引き抜き、代わりに
自分のモノを当てがう。そしてじっくりとカナンの最奥まで進んでいく。
きつくて熱い、愛しい人の熱が青年を包んだ。
「大丈夫ですか? カナン様…」
「ン…平気だ。けど、もう少し…」
顔を真っ赤にして、それ以上の言葉の言えない主の意思を、青年はすぐに察した。
軽く微笑んで額に口付け、そっとその黄金の髪を撫ぜた。
「判りました…それでは暫くこうしていましょう」
暫しの間、セレストはカナンの中で殆ど動かずに収まっていた。
それだけでも放ってしまいそうなくらいの締め付けであったが、
彼は懸命に耐える。
そうこうしている内に、カナンの表情に余裕が生まれてくる。
少しだが、慣れて来たらしい。そろそろ大丈夫だろうと、セレストは伺いを立ててみた。
「あの…そろそろ、動き始めてよろしいでしょうか…?」
「うん…」
珍しく主の甘えたような声に、更にセレストの心が熱くなる。
普段のカナンなら絶対にうんなど言ってくれない。だからこそ
余計に可愛く感じる。
最初は緩やかだった律動も、カナンの口から甘い嬌声が零れる度に
激しくなっていく。
特にその声が一際大きくなる、さっき見つけたばかりのカナンの感じる
場所をセレストは重点的に擦り、攻めていった。
「アッアッ!…ウゥ!」
声を殺す事も忘れ、カナンはその熱に翻弄される。
初めてした時は、圧迫感と苦しさが伴っていたが、今セレストの
動きから齎されるものは純粋な快楽だった。
頬や額、そして唇に口付けを繰り返し、セレストはその間も胸の
頂きや脇のラインへの愛撫を忘れなかった。
「カナン様…可愛い…」
「バカ…言うな」
「ですが…本当のことですよ…」
そういってこめかみに優しくキスすると、うーと言いながらカナンは黙った。
こんな状態では拳を振るう事も出来ないと悟ったらしい。
そんな彼をセレストは緑の瞳を優しく細めながら、見つめていた。
どこに触れても、反応を返すカナンが愛おしい。
そうしている内に二人のリズムが重なる。
鼓動が、吐息が、動きが…そして心の全てが頂点に向かう為に一つに重なって行く。
「セレスト…セレストッ…」
「カナン様…!」
二人とも、互いの名を必死に呼び合い…。
「アァァァァ!」
カナンの一際高い声が室内に響くと同時に、セレストは愛しい
人の中に精を放ったのだった…。
*
すでに冷たくなった風が、窓から緩やかに吹き込んで来る。
カーテンが風に靡き、冴え渡る月明かりが静かに射し込んでくる。
もう空気も澄んで来ている季節だ。
窓を開けて眠るにはきつい季節だが、今カナンは寒さなど感じていなかった…
自分のすぐ側に、大事な人間の温もりがあるから…。
「もう安心しましたか…?」
「あぁ…」
ベッドの上でセレストに腕枕をしてもらいながら、カナンが頷く。
二人はすでに服を着ていた。
流石に朝まで一緒にいる訳にも、ここで夜を明かす事までは
二人には許されていなかった。 それでも、セレストはギリギリまで
カナンの側にいるつもりだった。
「私はもう、カナン様しか見えませんから…今度白鳳さんにあぁやって
誘われても絶対に断りますから…」
「そうしろ。あいつは隙を見せると、ロクな事にならないからな…」
不意チュー然り、伝説の滝然り、そして最後のダンジョン然り…。
確かに散々、彼には苦渋を舐めさせられた。けれども…。
「けど、一つだけ良かった事もありますけどね…」
「在るのか? そんな事が?」
物凄い言われようだが、彼の所業を考えるとまあ仕方が無い事かも知れない。
「カナン様への気持ちに、気づけた事です」
予想もしてなかった答えに、カナンの目が見開かれる。
「多分白鳳さんが現れなかったら、きっとこの気持ちに気づくことはなかった
と思います…それだけは、実は感謝しているんですよ」
「本当にか?」
「嘘言って何になるんですか? そりゃ確かに可愛い妻を貰って
幸せな家庭を築くという夢にまったく未練がないとは言えませんけれど…」
「…後悔してるんじゃないか」
「…人の事まったく信じてませんねカナン様…けど、それよりも貴方のお側にこうして
いられる事の方が私には大事ですよ…」
その言葉に、カナンの不安は取り払われていく。
「僕だって…お前の事」
「判っていますよ…」
クスクス笑いながら、二人の唇が自然に重なる。本当は
もっと一緒にいたいけれど…。
カナンはセレストの立場を考え、その甘えを噛み殺して呟いた。
「セレスト…もう戻っていいぞ」
「…判りました」
二人は名残惜しげに、身体を離した。
セレストの温もりが離れていくのは寂しいが、カナンの胸には
先程の不安はなかった。
自分は彼に誰よりも愛されているから。
それを信じる事が出来るから。
「おやすみなさい…カナン様」
「あぁ…おやすみセレスト」
最後にそっとカナンの黄金の髪を撫ぜながら、セレストは立ち去った。
優しい気持ちが、彼を満たす。
きっと夜を共に過ごすことは出来なくても。
朝になれば、絶対に彼と会えるから…。
そう考え、眠りに落ちたカナンの表情は、どこまでも安らかで
満たされたものだった…。
※ 久しぶりに鬼畜眼鏡の小説を書くので
リハビリ的に短めで、軽い感じの話を書かせて頂きます。
キャラソングCDを久しぶりに聞いて…何か書いてみたく
なった話なんで宜しくです。
佐伯克哉は困惑していた。
此処に来るまでの記憶が、ぼやけて殆ど思い出せなかった。
何となく身体はだるくて、思考がまともに働いてくれていなかった。
(此処は…一体、どこなんだ…?)
頭の中に、まるで濃厚な霧でも掛かっているような感覚だった。
周囲を見回しても…まるで見覚えがなかった。
果たしてどういった経緯で、此処まで自分がやってきたのか…それに
繋がる記憶が全く思い出せない。
―気づいたら、大きなパーティールームのような部屋のソファの上に
克哉は横たわっていたのだ。
「…うぅ、ここは一体…何か、カラオケとかの…多人数のパーティールームの
ような感じだけど…何か、カラオケの機械とかあるし…」
しかし、何となく違和感を覚えるのは…カラオケルームにしては、調度品の
類がちょっと豪勢な物である事だ。
赤いベルベッドのような肌触りの良い生地が敷かれたソファに…複雑な
紋様が端っこや柱の部分に施された机などは、普通はカラオケルームに
置かれていないだろう。
それが…部屋の隅に置かれた大きなモニターとカラオケの機械と
酷くミスマッチな印象を与えていて…克哉は困惑した。
「…ようやく目覚めたか、待ちわびたぞ…『オレ』…」
「へっ…? ああっ! どうしてお前が此処にいるんだよ!」
「…随分な言い草だな。実に平和そうに寝ていたお前を…自然に目覚めるまで
気長に待っていてやったというのにな…」
「えっ…そうなんだ…って、だから…どうしてオレの前に…お前がいるんだよ」
「…お前は、覚えていないのか…?」
「…ゴメン、何か…此処に来るまでの直前の記憶が…何か、良く…
覚えてないんだ…」
相手の、覚えていないのか…という問いの時…一瞬、眼鏡を掛けた方の
自分が何となく寂しそうな顔をしたので…克哉は言葉に詰まっていった。
それに対して少し、後ろめたさのようなものを覚えたので…素直に謝っていく。
「…なら、教えてやろう。お前は…接待カラオケを俺と一緒に披露した後…
ここにやって来た。どうせなら…ただホテルに連れ込んだり、いつものように
お前の自宅でヤルよりも…たまには場所を変えた方が気分がより
盛り上がると思ったからな。あの男に…この場所を準備されて、此処に
招いてやったんだ。一緒にお前と歌ってやった御褒美を…たっぷりと
堪能させて貰う為にな…」
「えっ…?」
その言葉を聞いた瞬間、克哉の脳裏に急速に直前の出来ごとが
再生されていく。
そうだ、接待の為に自分はカラオケに向かって…其処で、もう一人の
自分とデュエットをして…それで…。
「ああああああっ!」
そして、よりにもよって酒の席とは言えど…会社の関係者の前で、もう一人の
自分と二人で並んで歌ってしまった事を思い出して、克哉は叫んでしまった。
「何だ…その反応は。お前と俺とで一緒に歌って…非常に盛り上がったし、
接待も成功した。それで何でそんな風に叫ぶんだ?」
「だ、だって…会社の…権田部長の前で…お前と二人で並んで歌っている
処を見られたんだぞ…! 追及されたら、一体どうするんだよ!」
「何だ、そんな事か…。お前は覚えていないだろうが…そんなの、
気にしなければ良い。どうせあれだけ酒を飲んでベロベロになっていた
連中の事だ。お前が二人いたって事も…自分が酔っていたから見た
幻覚程度に処理するだろう。気にするな」
「…気にするな! って言われたって…そんなの無理だろ! …ああ、明日から
一体どうしたら良いんだろう! どんな顔をして会社に行ったら…!」
「…お前の頭には、明日の事しかないのか…?」
「えっ…あっ…うわっ、何だ…」
こっちが頭を抱えて嘆いていると、もう一人の自分の顔が
唐突にグイっと近づいて来た。
その事に泡食って目を見開いていくと…まるで不意打ちのように…
唇に噛みつくようなキスをされていったのだった―
リハビリ的に短めで、軽い感じの話を書かせて頂きます。
キャラソングCDを久しぶりに聞いて…何か書いてみたく
なった話なんで宜しくです。
佐伯克哉は困惑していた。
此処に来るまでの記憶が、ぼやけて殆ど思い出せなかった。
何となく身体はだるくて、思考がまともに働いてくれていなかった。
(此処は…一体、どこなんだ…?)
頭の中に、まるで濃厚な霧でも掛かっているような感覚だった。
周囲を見回しても…まるで見覚えがなかった。
果たしてどういった経緯で、此処まで自分がやってきたのか…それに
繋がる記憶が全く思い出せない。
―気づいたら、大きなパーティールームのような部屋のソファの上に
克哉は横たわっていたのだ。
「…うぅ、ここは一体…何か、カラオケとかの…多人数のパーティールームの
ような感じだけど…何か、カラオケの機械とかあるし…」
しかし、何となく違和感を覚えるのは…カラオケルームにしては、調度品の
類がちょっと豪勢な物である事だ。
赤いベルベッドのような肌触りの良い生地が敷かれたソファに…複雑な
紋様が端っこや柱の部分に施された机などは、普通はカラオケルームに
置かれていないだろう。
それが…部屋の隅に置かれた大きなモニターとカラオケの機械と
酷くミスマッチな印象を与えていて…克哉は困惑した。
「…ようやく目覚めたか、待ちわびたぞ…『オレ』…」
「へっ…? ああっ! どうしてお前が此処にいるんだよ!」
「…随分な言い草だな。実に平和そうに寝ていたお前を…自然に目覚めるまで
気長に待っていてやったというのにな…」
「えっ…そうなんだ…って、だから…どうしてオレの前に…お前がいるんだよ」
「…お前は、覚えていないのか…?」
「…ゴメン、何か…此処に来るまでの直前の記憶が…何か、良く…
覚えてないんだ…」
相手の、覚えていないのか…という問いの時…一瞬、眼鏡を掛けた方の
自分が何となく寂しそうな顔をしたので…克哉は言葉に詰まっていった。
それに対して少し、後ろめたさのようなものを覚えたので…素直に謝っていく。
「…なら、教えてやろう。お前は…接待カラオケを俺と一緒に披露した後…
ここにやって来た。どうせなら…ただホテルに連れ込んだり、いつものように
お前の自宅でヤルよりも…たまには場所を変えた方が気分がより
盛り上がると思ったからな。あの男に…この場所を準備されて、此処に
招いてやったんだ。一緒にお前と歌ってやった御褒美を…たっぷりと
堪能させて貰う為にな…」
「えっ…?」
その言葉を聞いた瞬間、克哉の脳裏に急速に直前の出来ごとが
再生されていく。
そうだ、接待の為に自分はカラオケに向かって…其処で、もう一人の
自分とデュエットをして…それで…。
「ああああああっ!」
そして、よりにもよって酒の席とは言えど…会社の関係者の前で、もう一人の
自分と二人で並んで歌ってしまった事を思い出して、克哉は叫んでしまった。
「何だ…その反応は。お前と俺とで一緒に歌って…非常に盛り上がったし、
接待も成功した。それで何でそんな風に叫ぶんだ?」
「だ、だって…会社の…権田部長の前で…お前と二人で並んで歌っている
処を見られたんだぞ…! 追及されたら、一体どうするんだよ!」
「何だ、そんな事か…。お前は覚えていないだろうが…そんなの、
気にしなければ良い。どうせあれだけ酒を飲んでベロベロになっていた
連中の事だ。お前が二人いたって事も…自分が酔っていたから見た
幻覚程度に処理するだろう。気にするな」
「…気にするな! って言われたって…そんなの無理だろ! …ああ、明日から
一体どうしたら良いんだろう! どんな顔をして会社に行ったら…!」
「…お前の頭には、明日の事しかないのか…?」
「えっ…あっ…うわっ、何だ…」
こっちが頭を抱えて嘆いていると、もう一人の自分の顔が
唐突にグイっと近づいて来た。
その事に泡食って目を見開いていくと…まるで不意打ちのように…
唇に噛みつくようなキスをされていったのだった―
とりあえず、4月8日の夜にペルソナライブに
行って参りました。
何て言うか、あんなにでかい会場でのコンサートに行ったのは
生まれて初めてでしたが、楽しかったー!
三時間二十分があっという間に過ぎた感じでした。
トークとか面白かったし、ライブ用のアニメーションとか
書き下ろされて、現実のライブとリンクしている感じの作りが
なかなか楽しかったです。
クマの着ぐるみがチョコチョコと動き回る様も愛橋があって
とっても可愛かったです!
正午頃から、開場する時間までは都内に住んでいる友人達に
連絡して合計4人で執事喫茶&有楽町付近のオシャレなチョコレート
カフェとか行ったりして、美味しい物もいっぱい食べれたしね。
ライブが長引いたので、夕食を食べませんでしたけど…昼に結構な
カロリーを摂取していたので、むしろそのぐらいで帳尻がついて
いるかも知れません…。
と、結構充実した一日を過ごせましたが…4月9日から
入院してきますので宜しく。
けど、10日から暫くまた毎日更新始まるよ~。
鬼畜眼鏡、タイガーバニー、王レベの過去作品の再掲載、それと
雑記等を組み合わせる形になります。
その辺がまあ…一応、10日分ぐらいは規則正しく予約という形で
アップされていきます。
…まあ、タイガーバニーに関しては諸事情によりすでに2作ぐらい
書きあげたので、それを分割→編集してアップしましたっていう形なんで。
後…五月四日の、スパコミの2日目にイベント出ますが…
一先ず、王レベの無料配布(友人用)、タイガーバニー、そして鬼畜眼鏡と…
今回のノルマは三冊です。
…まあ、入院期間は夜は結構時間があるので真面目にやれば
それぐらいは出来るだろう…ぐらいの目標設定です。
んで、現時点で実はタイバニは製本終わっていたり…。
まあ、サイト掲載した話なんで置いてもこの本は無料配布扱いに
して10部ぐらい置くかな…という感じですが。
一応、鬼畜眼鏡では克克でそれなりのP数の新刊作りますので宜しく。
では、行ってきま~す!
行って参りました。
何て言うか、あんなにでかい会場でのコンサートに行ったのは
生まれて初めてでしたが、楽しかったー!
三時間二十分があっという間に過ぎた感じでした。
トークとか面白かったし、ライブ用のアニメーションとか
書き下ろされて、現実のライブとリンクしている感じの作りが
なかなか楽しかったです。
クマの着ぐるみがチョコチョコと動き回る様も愛橋があって
とっても可愛かったです!
正午頃から、開場する時間までは都内に住んでいる友人達に
連絡して合計4人で執事喫茶&有楽町付近のオシャレなチョコレート
カフェとか行ったりして、美味しい物もいっぱい食べれたしね。
ライブが長引いたので、夕食を食べませんでしたけど…昼に結構な
カロリーを摂取していたので、むしろそのぐらいで帳尻がついて
いるかも知れません…。
と、結構充実した一日を過ごせましたが…4月9日から
入院してきますので宜しく。
けど、10日から暫くまた毎日更新始まるよ~。
鬼畜眼鏡、タイガーバニー、王レベの過去作品の再掲載、それと
雑記等を組み合わせる形になります。
その辺がまあ…一応、10日分ぐらいは規則正しく予約という形で
アップされていきます。
…まあ、タイガーバニーに関しては諸事情によりすでに2作ぐらい
書きあげたので、それを分割→編集してアップしましたっていう形なんで。
後…五月四日の、スパコミの2日目にイベント出ますが…
一先ず、王レベの無料配布(友人用)、タイガーバニー、そして鬼畜眼鏡と…
今回のノルマは三冊です。
…まあ、入院期間は夜は結構時間があるので真面目にやれば
それぐらいは出来るだろう…ぐらいの目標設定です。
んで、現時点で実はタイバニは製本終わっていたり…。
まあ、サイト掲載した話なんで置いてもこの本は無料配布扱いに
して10部ぐらい置くかな…という感じですが。
一応、鬼畜眼鏡では克克でそれなりのP数の新刊作りますので宜しく。
では、行ってきま~す!
本日、相当に寿命縮みそうな事がありました(遠い目)
4月8日に、ペルソナのライブを友達と行く約束していて…
去年の暮れに抽選申し込みして、どうにか受かって無事に
取れたんですよ。
もう近いから、そろそろチケット確認しようと探しましたら…。
ない!!!!
…はっきり言うと、かなり混乱しました。
これだけは失くさないように、と入れた場所ははっきりと
覚えていたし…もう一枚を友人に引き渡してから、今日まで
二回ぐらいは間に所在を確認していた。
其処から動かしてなかった筈なのに…入れた筈のタンスの引き出しを
幾らひっくり返してもない! ない! ない!
というので血の気引きまして…大捜索に乗り出しました。
確かにあんまり物の管理は良い方じゃないですが、一応何度か
痛い目を見たので大事な物に関しては種類別に、大体特定の三か所に
纏めておくように心掛けていたのに…何故、失くさないように重要な物を
入れる場所に収めておいたもんが無くなっているんじゃ~! と
心の中で大絶叫かましておりました。
…必死になって、ここ数カ月の記憶を探って…その中で一番古い
冬コミ周辺の記憶を探りまして。
確か、チケットをある封筒の中に収めてあったのは間違いなく。
チケットを引き渡された時のコンビニから貰ったチケットの袋は友人の
方に渡したのは間違いない。
…で、其処まで思い出した時に、確かそのチケットを取得した時に入会した、
ローソンの抽選チケットが優先的に手に入るエルアルコール会員の
カードを収めた封筒の中に間違いなく入れていた事を思い出す。
二回ぐらい確認した時も、確かにそれに入っていた。
ここまでの記憶は間違いない、と確信を得る。
その後…冬コミの前後、私はチケットをどう扱ったかを記憶から探りました。
友人に引き渡す前日の記憶をどうにか必死に唸りながら思い出す。
そう、その時…万が一紛失してはいけないと、「自分の分のチケットは持っていかず、
友人の分だけを持っていった」、ここまではっきりと思い出す。
…で、絶対に失くすもんかと…大事な物を入れている引き出しに入れた。
はて、それでどうしてないのだろうか?
記憶は間違ってない筈なのに、現物がない。
引き出しの中は隅々と調べた。
そっちの引き出しに関しては、全部引き抜いてまで調べた。
後、自分の性格で考えられる可能性は…「他の物を探している時に
無自覚に移してしまっていた」という事。
「他の物に意識が行っている時は、もしかしたら知らない内に移してしまって
いるかも知れない。自分の行動パターンを分析すると…それくらいしか
考えつかないな。他の段も調べてみよう…」
其処まで考えて、その隣の小さな引き出しを大きく開いたら!
パタン!
と音を立てて盛大な音を立てて、封筒が床に落ちました。
ビンゴかよ!
…どうも、知らない内に…隣の引き出しの隙間に封筒が入り込んで
しまったようで。
…封筒の中身を調べたら、エルアルコールの会員カードと一緒に…
チケットがあるのを確認して、やっと生き返ったような気持ちになりました。
一時間ぐらい、こう…心臓がギュっと縮むような思いしたよ。
本当、このライブだけは本当に楽しみにしていたし…実は友達と
今までコンサートの類とか、私…行った経験ってないんですよ。
本当、せっかく遠くから上京してきてくれるのに…一緒に行けない、なんて
事態は冗談じゃない。
何がなんでも見つけなきゃと思って、このまま今夜の探索で見つからなかったら、
明日は部屋を根本から大掃除して、意地でもライブの日までに見つけ出す! と
まで思いつめたよ…。
本当、久しぶりに生きた心地がしませんでした…。
けど、なんかチケットが見つかったら…半分、泣きそうになって
おりました。
本当に…記憶が間違ってなくて、ちゃんと出て来てくれて
良かったよ~。おいおいおい~。
…まあ、見つかったらから話のネタに出来るんですけどね(笑)
あ~本気で寿命が縮むと思いましたよ。がお…。
4月8日に、ペルソナのライブを友達と行く約束していて…
去年の暮れに抽選申し込みして、どうにか受かって無事に
取れたんですよ。
もう近いから、そろそろチケット確認しようと探しましたら…。
ない!!!!
…はっきり言うと、かなり混乱しました。
これだけは失くさないように、と入れた場所ははっきりと
覚えていたし…もう一枚を友人に引き渡してから、今日まで
二回ぐらいは間に所在を確認していた。
其処から動かしてなかった筈なのに…入れた筈のタンスの引き出しを
幾らひっくり返してもない! ない! ない!
というので血の気引きまして…大捜索に乗り出しました。
確かにあんまり物の管理は良い方じゃないですが、一応何度か
痛い目を見たので大事な物に関しては種類別に、大体特定の三か所に
纏めておくように心掛けていたのに…何故、失くさないように重要な物を
入れる場所に収めておいたもんが無くなっているんじゃ~! と
心の中で大絶叫かましておりました。
…必死になって、ここ数カ月の記憶を探って…その中で一番古い
冬コミ周辺の記憶を探りまして。
確か、チケットをある封筒の中に収めてあったのは間違いなく。
チケットを引き渡された時のコンビニから貰ったチケットの袋は友人の
方に渡したのは間違いない。
…で、其処まで思い出した時に、確かそのチケットを取得した時に入会した、
ローソンの抽選チケットが優先的に手に入るエルアルコール会員の
カードを収めた封筒の中に間違いなく入れていた事を思い出す。
二回ぐらい確認した時も、確かにそれに入っていた。
ここまでの記憶は間違いない、と確信を得る。
その後…冬コミの前後、私はチケットをどう扱ったかを記憶から探りました。
友人に引き渡す前日の記憶をどうにか必死に唸りながら思い出す。
そう、その時…万が一紛失してはいけないと、「自分の分のチケットは持っていかず、
友人の分だけを持っていった」、ここまではっきりと思い出す。
…で、絶対に失くすもんかと…大事な物を入れている引き出しに入れた。
はて、それでどうしてないのだろうか?
記憶は間違ってない筈なのに、現物がない。
引き出しの中は隅々と調べた。
そっちの引き出しに関しては、全部引き抜いてまで調べた。
後、自分の性格で考えられる可能性は…「他の物を探している時に
無自覚に移してしまっていた」という事。
「他の物に意識が行っている時は、もしかしたら知らない内に移してしまって
いるかも知れない。自分の行動パターンを分析すると…それくらいしか
考えつかないな。他の段も調べてみよう…」
其処まで考えて、その隣の小さな引き出しを大きく開いたら!
パタン!
と音を立てて盛大な音を立てて、封筒が床に落ちました。
ビンゴかよ!
…どうも、知らない内に…隣の引き出しの隙間に封筒が入り込んで
しまったようで。
…封筒の中身を調べたら、エルアルコールの会員カードと一緒に…
チケットがあるのを確認して、やっと生き返ったような気持ちになりました。
一時間ぐらい、こう…心臓がギュっと縮むような思いしたよ。
本当、このライブだけは本当に楽しみにしていたし…実は友達と
今までコンサートの類とか、私…行った経験ってないんですよ。
本当、せっかく遠くから上京してきてくれるのに…一緒に行けない、なんて
事態は冗談じゃない。
何がなんでも見つけなきゃと思って、このまま今夜の探索で見つからなかったら、
明日は部屋を根本から大掃除して、意地でもライブの日までに見つけ出す! と
まで思いつめたよ…。
本当、久しぶりに生きた心地がしませんでした…。
けど、なんかチケットが見つかったら…半分、泣きそうになって
おりました。
本当に…記憶が間違ってなくて、ちゃんと出て来てくれて
良かったよ~。おいおいおい~。
…まあ、見つかったらから話のネタに出来るんですけどね(笑)
あ~本気で寿命が縮むと思いましたよ。がお…。
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趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
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リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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