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※この作品は現在、不定期連載中です。(週1~2回程度のペースで掲載)
その為以前のを読み返しやすいようにトップにリンクを繋げておきます。
バーニングクリスマス!(不定期連載) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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御堂の愛車に乗って、連れて行かれた先は…豪奢な作りの都内でも
指折りの高級ホテルだった。
克哉はホテルに辿り着いてから、ずっと俯いたまま…
御堂に腕を引かれていた。
その状態でエントランスに辿り着くと、まず…置かれている調度品の
レベルの高さに緊張してしまう。
普通のサラリーマンがおいそれと使えそうにない雰囲気が漂う
ホテルだった。それを…ここの内装を見るだけでも十分に判ってしまう。
…その辺にも、御堂がこちらを特別に意識してくれていると…そういう
気持ちが伝わってしまって、居たたまれなくなる。
(御堂さん…オレに対して、本気なんだな…)
その事実が、ひどく克哉の胸を突き刺していた。
いや…それだけじゃない。太一も、本多も…自分に対して真剣な気持ちを
向けてくれている。
薄々と彼らの気持ちに気づいていながら、意識的に煽っていた事が…
どうしようもない罪悪となって、克哉の心に圧し掛かっていた。
御堂が受付でチェックインの手続きをしている間だけは解放されて
いたけれど…さっきまでこちらの腕を掴んでいた御堂の指先の強さを
思い出して、葛藤を覚えていた。
男性二人でホテルを使用することを不振がられたくない、と言って御堂は
先に克哉にエレベーターの前に待機させていた。
待っている間、エントランスの中心に設置されている大きな噴水と
天井の方に目を向けて観察を始めていく。
細長くて長さがそれぞれ変えられていて、緩やかな稜線を描いている
金色の管のシャンデリアは、様々な光を乱反射させてキラキラ輝いている。
部屋の片隅に置かれている女性の彫刻の滑らかさと美しさに、ハっと
息を飲んでしまうぐらいだ。
こういう調度品の一つ一つに、そのホテルの格式というかそういうものが
滲み出るものだ。
同時に、本日の逢瀬にここを選んだという事実からも…御堂が本気でこちらを
口説くうもりだったという事実が如実に伝わってくる。
(…今なら、引き返せる…。いや、引き返さないといけない…)
脳裏に浮かぶのは、もう一人の自分の顔ばかりだ。
こうやって真剣な思いを向けられていながら…土壇場に、あいつの事
ばかり考えている自分に、この人に想われる資格などない。
そう考えて、克哉はそっと踵を返そうとした。
「…どこに行くつもりだ?」
冷たい声が、すぐ背後から聞こえた。
そうして…痛いぐらいに肩を掴まれていく。
「っ…!」
克哉は、何も言えなかった。
そうして無言のまま…その場に立ち尽くしていく。
相手の方を後ろめたくて、見れない。
振り返ることも…言葉を発することも出来ないまま…硬直した
時間が過ぎていく。
「…ここまで来て、君を逃がすつもりはない。…観念したまえ」
「…そんなっ!」
克哉が反論の言葉を発しようとした瞬間、エレベーターの扉が開いて
その中に押し込まれていく。
空かさず「閉」のボタンを押されて、扉が閉ざされていった。
「あっ…」
そうして、エレベーターがゆっくりと上昇し始めていった。
どうやらこのホテルはEVの外壁が透明になっていて…其処から街の
風景を眺められる構造になっていた。
目の前に宝石箱をひっくり返したかのような見事な夜景が広がっている。
克哉は無意識の内に御堂から後ずさっていた。
しかし…男はすぐにこちらを壁際まで追い詰めて、鋭い瞳で見据えてくる。
「克哉…君の真意はどこにある? 私を誘うような行動や仕草を、
二人で会う度に繰り返していたのは…そちらの方だろう…?」
「…それ、は…。はい、その通り…です…」
そう、その件に関して克哉は反論出来なかった。
御堂の、言う通りだったからだ。
…彼と親しくなったのは、ここ半年ぐらいからだ。
プロトファイバーの営業を担当した件で、確かな実績を打ち立てたという
事が幸いしてか…御堂はこちらを認めてくれる言動を以前よりも多く
してくれるようになった。
それが…もう一人の自分との恋愛で疲れていた心に酷く染み入って…
だから、自分は…御堂にある日、背中を借りて凭れ掛かってしまった。
そして…泣いてしまったのだ。
―御堂から、労わるような優しい一言を向けられた時に…。
克哉は、無言でそのまま…御堂の背中を借りた。
その日から、自分たちの関係は少しだけ変化していった。
疲れていたから相手の背中に無意識のうちに縋り付いたり、手を握り締めて
しまったりしていた。
それは…好意がある人間にすれば「誘っている」と見られても仕方ない
仕草や行動の数々だ。
御堂の手が…ゆっくりとこちらの頬を撫ぜていく。
「んっ…」
たったそれだけの事で、過敏に反応している自分がいた。
きっと今、自分の顔は上気して…瞳は潤んでしまっている。
ここまでついて来てしまったのは…この人に惹かれてしまっている部分も
あるからだ。
けれど同時に…強く、もう一人の自分のことを想って心はざわめき続けている。
「こんなに敏感な癖に…どうしてさっき、逃げようとした…?」
「…迷っている、からです。…貴方は真っ直ぐにオレだけを見ていてくれて
いるのに…こちらの心の中には、どうしても忘れられない奴がいるから…」
「…ほう? 他に想う人間がいると言いたいのか…?」
その瞬間、御堂の瞳が剣呑に揺れた。
克哉はそれを見て竦みそうになったが…それでも相手から目を逸らさずに
小さく頷いていく。
…殴られたり、不興を買っても文句を言えない事だと自覚はあった。
しかし…自分の気持ちを、そしてこの人を偽ったままで抱かれるような不誠実な
真似をしたくなかった。
だから正直に、短く答えて仕草で伝えていく。
「…はい」
「そうか…だが、問題はない。…君の中に今は他の男がいるとは薄々とは
気づいていたからな。だから私は…取られたくないと考えている…」
「えっ…?」
その言葉に、克哉は驚きの声を漏らして呆けていく。
同時に…エレベーターが目的の階に到着して…チーン、と小さくベル音を
鳴らしながら扉が開け放たれていく。
反論をする前に、腕を引かれて部屋まで引きずられていく。
「御堂さんっ?」
「…私は、誰にも君を取られたくない。だから…その気持ちを伝える為に
今夜、君を抱きたいんだ…!」
「そ、んな…」
普段冷徹で、感情など滅多に見せない人が…今日一日だけで何度、
その熱い感情を垣間見せてくれたのだろうか。
それに心を揺らしている自分が、確かに存在していた。
―けれど、自分はどうしてもあいつを忘れられなかった…!
心の中が荒れ狂い、強烈な想いが渦巻いていく。
克哉はそれでも、相手の手から逃れようともがいた。
けれど…御堂が一瞬だけ、切なそうな悲しそうな…そんな瞳を向けた
瞬間に、動きが止まってしまった。
「あっ…」
無言で、真摯に向けられる眼差し。
それに…克哉も毒気を抜かれていく。
(どうしたら良いんだ…?)
一瞬困惑して、克哉が抵抗を忘れていく。
そうして…二人で互いに、見詰め合った。
―その瞬間、シュル…と空気を切る音が背後から聞こえた。
聞こえた方角は、御堂が予約した部屋がある筈だった。
その扉がいきなり、バタンと音を立てて一瞬だけ開け放たれていく。
そして…予想もつかなかった物が姿を現していたので…克哉は
目を見開いて、驚愕していった。
「えぇっ…?」
一瞬だけ視界を捉えたものが、信じられなかった。
そんんな訳がある筈ないと、とっさに思った。
しかし…見間違えでなければあれは…。
「何だ今の音は…?」
今の音に不振に思って、御堂がゆっくりとそちらの方向に
歩み寄ろうとしていた。
瞬間、彼を庇うようにそっと腕を掴んでいく。
「御堂さん! 駄目です!」
克哉は必死の形相を浮かべながら、相手の身を案じて…懸命に
その扉を開かないように静止していく。
しかし…遅かった。
―克哉が叫んだ瞬間、扉は中から開け放たれて…其処からありえない
ものの一部が、ゆっくりと現れていったのだった―
支障出まくっている香坂です。
こんばんは! 何か24~25日は新しいパソコンをいかにして
最低限使えるように持って行くかで一日終わりました。
saiもフォトショップエレメンタルも、プリンターもペンタブレットも
必要なソフトも何もかもを入れなおさないとあかんかったので
ソフトを探したり、古いバージョンのソフトの物は本元のサポートページを
確認しながらvistaに対応するように合わせたりしていました。
…そのせいあって、どうにか最低限のツールだけは
どうにか起動出来ました。
印刷所に出す際にはまだ色々とせなあかんけど、まず…今回は
前扉に当たるページと口絵を香坂が自力でやる事にしたので
本日はこんなのを地道に作っておりました。
…現在、ペンタブのドライバーはインストール出来たんだけど
不慮の事故(つか、落下)でペンタブまでご臨終しまして…WACOM
さんから取り寄せる羽目になりました。
…それでもマウスでポチポチ押して前扉のお星様を作るぐらい
出来るだろう…と地道にやった物の結晶。
…こんなのでも作成に一時間以上掛かっています。
星を打つのって、意外に大変でした。
けど、まだ物足りないのでもう何百個かお星様を打ち込んで
螺旋の星光というか、FFⅦ風に言うのなら命の流れというか
星の光が瞬いているというか…そういうのを表現したいので
頑張るっす!
…まあ、本文に関しては…火事場のくそ力が出れば仕上がるでしょう。
本気でやればどうにかなる。
ちょっと不慮のトラブルにより…連載、二日ほど休ませて頂きました。
26日分は、頑張って書きます。
口絵の方は…依頼していた方がどうも今、忙しくて大変そうなので…それなら
相手様に負担掛けない為にも、自力でやってみるか…と香坂が挑戦
してみることにしました。
満足いく出来のが書けたら、新刊にカラーページが一枚つきます。
イマイチの物しか出来なかったらつかない、とまあ…そんな感じで。
こっちは自分で描くことが決まった日に、習作見たいのを一枚描いてみました。
saiを使ってペンタブで描いた奴です。
文字入れとサイズ調整のみ、フォトショップを使用していますが。
こんなの~。
これは現在やっている原稿の、2話目ぐらいに出てくる場面なので
口絵はもうちょい優しい感じというか、ハッピーな感じに仕上げる予定。
まあ自分の小説の場面を、自力で描いてみるというのを試しに
やってみたという感じです。これは収録されないのであしからず(ペコ)
…まあ、どんな修羅場でもトラブルはつきものだし。
データーが全部ロストして、最初からやり直しという羽目にならなかっただけ
ヨシとします。(携帯で書いたのは、転送先のホットメールの方に本文のバックアップが
残るから…完全に消えることはほぼないんですけどね)
つ~訳で頑張ります。えいえいお~。
えっと…24日早朝に、メインのパソコンがご臨終致しました。
とりあえず早朝に最低限のデーターを外付けのHDに
移すのだけはどうにか出来ましたけど、新しいPCの方を
ネット出来るようにしたり…データー移したりやっていたら
連載やる余裕はありませんでした(汗)
一応携帯の方で先月から地道に進めて、30~40P分はトータルで
書き上げたているので、このトラブルで本が落ちるって事はないすが…。
とりあえず、幸いにもドキュメント内のデーターだけは
全部バックアップ取るのに成功しました(ホッ)
ただ、色々とディスクを探して再インストールとかしないと
満足にパソコンが使えそうにないので、25日分の更新は
ギリギリになると思います。
とりあえず今日中には最低限の機能を使えるように
だけはしないと…春コミ原稿という名の修羅場は乗り越えられそうに
ありません。トホホ…。
つ~訳でちょいと色々と改めて入れて来ます。
ペンタブレットのディスクと、プリンターのディスクや~い、
どこ行った~!という状態。
この二つの発掘作業(お部屋探索)してきます。
…本気で重要なものを、どこにやっているんだよ自分と突っ込み
入れたいです。がお…(T○T)
※太一×克哉の悲恋前提の物語です。
ED№29「望まれない結末」を前提に書いているので
眼鏡×太一要素も含まれております。暗くてシリアスなお話なので
苦手な方はご注意下さいませ(ペコリ)
―あんたの事なんて、大っ嫌いだ!
この関係が始まってから一年余り。
どれくらい、その言葉を太一の方から突きつけられて来たのだろうか。
最初は彼からの拒絶にどこかで傷ついたり、苛立ったりしていた。
その度にお仕置きめいた仕打ちを与えて、その言質の責任を取らせて
いったりもしたけれど…今となっては、何の感情も湧いて来ない。
太一が自分の方を求めていない、それはもう…一緒にいる間に
嫌という程、思い知らされたから。
だから彼が何をしようと、言おうと今更…心が揺れたりなど
しない筈なのに、どうして自分は…その声が頭の中を過ぎる度に
胸がどこか、苦しくなるのだろうか。
―その理由は、彼自身にも判らないままだった
*
この一年で、太一の実家の権力を利用して…キクチ・マーケティングに
勤める傍ら、裏の世界の方でも商売を始めていた。
そちらの方も軌道に乗り始めていて、気づけば単純にサラリーマンだけを
やっていた頃に比べて、膨大な財産を彼は築き上げていた。
昼間の吐血が収まってから暫く安静にしていたら、幾分か体調は回復
したので…彼は気晴らしに夜の街を歩いていた。
時折、発作で苦しい時もあるが…それ以外の時はまだ、普通に身体を
動かしたり…ちょっとした用事をこなすぐらいのことは出来るからだ。
自宅にいると、また…憂さ晴らしに必要以上に強い酒を煽ってしまいそう
だったので…それを防止する為だった。
散策中にふと気まぐれに…たまたま通りかかった銀行で久しぶりに記帳してから、通
帳を改めて見直していくとそこには八桁に及ぶ金額が記されている。
あの弱々しい性格の佐伯克哉だった頃には、決してなかった預金額。
全ては彼が商売を始めて、それを掌握したからこそ出来た財産だ。
―しかしどれだけ数字が羅列した通帳を見ても、心は満たされなかった
…その通帳を改めてカバンに仕舞い、彼は銀行から後にしていく。
二月の初旬、空気がもっとも冴え渡るように冷たい頃…彼は一人で夜の
繁華街を歩いていた。
太一の家に、真っ直ぐに帰る気になれなかった。
だからと言って、自分の部屋にも戻る気になれない。
ふと、どっかのホテルにでも泊まろうかという想いが生まれていく。
(ここから…アパートはそんなに遠くないんだがな…)
かつての自分が住んでいたマンションと、太一のアパートの部屋は
この液から三つほどの距離だ。
21時という時間からしても、外泊する程の距離ではない。
しかし…どちらにも帰る気になれなかった。
(…あの部屋に、最後に泊まったのは随分前になるな…)
ふと、そんな事を考えつつ…遠い目になっていく。
不経済である事は承知の上だが…彼はどうしても「オレ」が住んでいた
部屋になかなか戻る気になれなかった。
それでも太一の部屋に全ての荷物を置き切れる訳ではない。
だから何度か荷物整理の為に家に戻ることもあったが…最近はそんな
事でさえも戻ることが億劫になりがちだった。
「手荒に扱った日の夜に戻ると面倒だからな…」
そんな事を呟きながら、胸ポケットからタバコとライターを取り出して
紫煙を燻らせていく。
あの部屋では、タバコの一本吸うのでさえ…太一は色々とうるさい。
『克哉さんはタバコなんで吸わないだろう…』
そんな事を言いながら、愛用の銘柄の物を感情任せに奪い取られたことは
何度かあった。
タバコ一本ですら、面倒に思わなければ吸えないあの部屋に…どうして
自分は頻繁に帰るのか、その理由すら判らなかった。
すでに自分の余命はそんなに長くないと医者から宣告されている。
だから今更止めた処で手遅れだ。
それにこんな…心がモヤモヤしてすっきりしない日は、酒とタバコは
どうしても手放せなかった。
「あまり、長くはないか…」
一人で街中になど立っていると、その重い現実が圧し掛かってくるようだった。
若年性の進行性のガン、余命はそんなに残されていない。
この一年余り、身体を痛めつけるように浴びるように沢山の酒とタバコを
摂取し続けた。
その結果がこれだというのなら…眼鏡としても受け入れるしかない。
それなのにショックを受けるよりも…イライラ、モヤモヤしている事の方が遥かに
多かった。
どれぐらいまで身体の自由が利くのか見通しも立たない。
すでに長くないと判っている以上、身辺整理は早いに越したことはないだろう。
それが判っている筈なのに、全てが億劫だった。
何もかもが…どうでも良かった。
「…俺は一体、何を望んでいるんだろうな…」
かつては欲望に忠実に生きず、心を偽ってばかりのもう一人の自分を
馬鹿にしていた。
己が何が欲しくて、何を求めているか正直でないあいつを…見下して
あざけっていた。
しかし…今の彼には自分が何が本当に欲しかったのかすでに判らなく
なってしまっている。
そんな自分に苦笑したくなると…また、次のタバコを手に取っていった。
医者には止めるように薦められたが、どうせ長くないのならば自分の
好きなように過ごすことに決めたからだ。
だがどれだけ愛用の銘柄を吸っても、心は満たされることはない。
空虚な心が日々、大きく増していくような気がする。
何もしたくない。
何もかもがどうでも良い。
そんな捨て鉢の、ヤケクソの思いだけがジワリジワリと広がって
自分を侵食していくようだった。
身体だけではなく、精神までもが病魔に侵されていくようで気分が
悪かった。
「一杯…どこかで飲むか…」
そんな事を呟きながら踵を返した瞬間、歌うような声が聞こえた。
―いけませんね。そんな身体で…強い酒など煽っては、ただでさえ短い
命を更に縮めるようなものですよ…佐伯克哉さん
ふいに、一年以上ぶりに…聞き覚えのある声が耳に届いていく。
弾かれたように振り向いていくと…其処には、自分を解放する
キッカケでもあった、あの眼鏡を与えた黒衣の男―Mr.Rが其処に
立っていた。
「…お前は…!」
「お久しぶりです、佐伯克哉さん。お元気でしたか…?」
そう言いながら、コツコツ…と靴音を立てて、こちらの方に
歩み寄って来た。
「何の用だ…?」
不機嫌そうに眼鏡が問いかけると、男は愉快そうに微笑んだ。
「…いえ、貴方の意思をお聞きしたくて参上しました…」
そう、何でもない事のように嗤いながら告げてくる。
しかし…どこか不穏なものを感じて、眼鏡は緊張していった。
そうして…夜の街で、彼は対峙していく。
―得体の知れない、謎多き男を前にして、固唾を呑みながら相手の動向を
伺っていったのだった―
ここ数日、原稿に手一杯で更新等が日付越えてになっているのが
続いてしまっていてすみませんです。
取り急ぎ、春コミの情報をアップしますね~。
3月15日開催の春コミ、スペースが取れましたv
…と言っても今回はKYMのへそまる嬢の処に委託させて貰う形で
参加します。
委託先の配置場所とサークル名は以下の通りです。
「東5―ぬ23b KYM」
になります。当日の新刊はこちらになります。
『LUNA SOLEIL』
フランス語で「月と太陽」の意味。
冬コミで発行した克克新婚本と対になる本です。
今回の表紙と挿絵は、委託先のへそまる嬢に担当して貰いましたv
前回の本とイラスト担当の方は諸事情により変わっておりますが…内容は
INNOCENT~の方に負けない物を用意してあります(ニヤリ)
一冊目のInnocent Blueが甘くて幸せいっぱいの内容なら…こちらは
ほろりと切ない要素が結構混ざっております。
甘いのと、切ないのが半々となる構成になります。
興味のある方は続きは以下に参考までに第一話に当たる部分だけを
アップしてありますので良ければ参考にどうぞ。
興味ある方はクリックして飛んでやって下さいませ~。
LUNA SOLEIL 第一話
今回は一夜の間に…Rが克哉に、もう一人の自分の秘められた心を
垣間見せる…という流れで構成されています。
前回の本が克哉視点でほぼ語られているのに対して、こちらの本は
サイト掲載のバーニングクリスマスの中盤とリンクしています。
結婚する前の克哉の知らなかった眼鏡側の事実がこの本で明らかに
なる…という作りに仕上げています。
合わせて読むと、「成る程!」と頷ける部分が多いと思います。
現在、難産でヒッヒッフ~と呻きながら作っておりますけどね…(トホホ)
以前から一度、サイトの連載物とリンクさせて…それの別視点を混ぜ込んだ
本を作ってみたいと思っていたので…実際にやらせて頂きました。
バーニング中盤で、眼鏡視点を極力最低限にしたのは…これに掲載
したかったからです。(あくまで中盤の部分のみですが)
とりあえず春コミでは、他に…冬コミに発行した「INNOCENT BLUE」と
「幻花繚乱」の二種類を持って行かせて貰います。
当日、私の本は三種類…へそまる嬢の本が二種類並んでいる筈です。
今回の委託主であるへそまるさんの既刊と本に関しては…また後日
改めてアップさせて頂きます。
本日はこの辺で。ではでは~。
当たるお話です。
どんな内容になるのか参考までにお読みになって
判断して下さいませ(ペコリ)
―この奇妙な新婚生活は大晦日に『俺』に拉致され、
強引に挙式を挙げた日から始まっていた。
始まった新婚生活。
克哉は夜半に目覚めて…ふと瞼を開いていった。
最初は見知らぬ天井だった。
だがこの三ヶ月の間にもっとも『俺』と一緒の時間を過ごしたこの
寝室を軽く見回していくと、もう一人の自分の整った顔が存在していた。
それでも窓から差し込む淡く儚い月光に照らされたもう一人の自分は綺麗だった。
なんて、なかったな…)
どうか、漠然とした不安を抱えていた。
運命の日に『俺』に伝えた。
渡すのを保留にされていた指輪は…今、克哉の薬指に戻って来ていた。
安堵の表情を浮かべた。
なった男を見つめていく。
自分が脳裏をよぎっていく。
してくれるまで…今思い返すと、ずっとオレ…不安だったよな…)
見えないままだった。
克哉はずっと怖かった。
憂いの表情を浮かべていく。
克哉は苦笑していく。
してたか滑稽さが良く判った。
あの頃のオレって馬鹿みたいだよな、と思うけど…。お前も言葉が
足りなさすぎたんだよな…あの頃は」
安らかな顔を浮かべていた。
端正な顔立ちを凝視してしまった。
自分と同じ顔の造作をしている筈なのについ見とれてしまう。
克哉は相手から反射的に顔を背けていった。
衝動が湧き上がってきて、克哉は無意識の内に口元を覆っていった。
顔を見ているだけで気持ちが落ち着かなくなって…さっきあれだけ
抱かれたのに、もっと相手が欲しくなってしまっていた。
睡眠時間は大きく削れてしまうだろう。
『俺』は仕事中に寝る訳にいかないからな…ちゃんと少しは寝ておかないと…)
乱れがちになってしまっていた。
いたら…きっとまた、求めてしまいそうだから…)
恋人とイチャつくのも良いかも知れない。
する訳には行かなかった。
身体を起こしていった。
朝日が地平線からゆっくりと昇ろうとしている頃だった。
同居している幻想的な光景。
美しいグラデーションだった。
どれくらいぶりだろう…」
もたれ掛かながらその光景を眺めていく。
見る限りはシャツ一枚の格好でも問題はないだろう。
散らされていたが…まだ辺りは薄暗いし、遠目で見る限りは全然大丈夫だ。
いるのを自覚していった。
自分の姿が鮮明に頭の中に再生されていく。
口にしてくれなかったから…見えなかっただけだ…」
泣き止む様子はなかった。
色んな出来事が脳裏に蘇っていった。
悲痛な叫びだった。
本気になってしまっている事実に絶望して悲観に暮れてしまっていた。
それは奇跡が起こってくれたからこそ辿りつけた結末。
夢物語以外の何物でもなかった。
式を挙げる一ヶ月前…去年の暮れぐらいが一番、煮詰まってしょうがなかったな…」
覚えていった。
資格などないような気がしてきた。
くれていた御堂、本多、太一…彼等の気持ちを察していた癖に自分は
思わせ振りな態度を取り続けて、結果的に彼等の気持ちを持て遊んでしまった。
なっていたのは…あの方が望んだ事ですから…
場所から離れた所から語りかけていますから…
宜しいじゃないですか…。
それで声を掛けさせて頂きました…
恋敵となる方達とどのようにケリをつけていったかです。あの方は
無器用ですし…余計な事は言わないですからね。
だからこうでもしない限り…貴方がその事実を知る事がないと
判断しました…。興味はありますか…?
本来ならするべきではないとは理解している。
感じて想ってくれていたのか…知れるものなら克哉は本当に知りたかった。
だから男の言葉に素直に頷いていた。
月と太陽が同時に存在し、現実と幻想が混じりあう事が出来るこの時に…。
あの方の記憶に貴方が触れられるように致しましょう…。
これから貴方が垣間見るのは…あの方にとって忘れがたい思い出の欠片と、
貴方に伝える事はなかった想いと真実です…。覚悟はありますか…?
そのまま意識も…肉体の感覚も全てが遠くなっていく。
暖かいぬるま湯に浸って浮かんでいるような…相反する感覚を
同時に覚えていった。
急速に走り抜ける強烈な衝動を堪えていくように我が身を強く抱きしめていく。
半身の想いの欠片…。それを知ることで貴方は苦しみ、引き裂かれるような
痛みも感じるでしょう…? 本当に後悔しませんか…?
そんなビジョンが鮮明に脳裏に描かれていく。
一時の幻想へと堕ちていく。
そうして…始まりを告げていったのだった―
…久しぶりにがっちり肉体労働系の作業来たので
身体がピシパシ言っています(汗)
とりあえず20日分は、通販の最終報告のみを
させて頂きます。
最後の入金確認者の発送を20日早朝には済ませましたので
これで…今回の通販取り扱いは終了させて頂きます。
利用して下さった皆様、どうもありがとうございました。
感想、ご意見等…非常に励みになりました。
…返信が遅いのは、えぇ…私の要領が非常に悪いからですが
正直言うと…年明け辺りからずっとちょっとエンジンが掛からなかったり、
弱気になっていたりしていたので皆様の感想を頂いて「もう少し頑張ろう!」と
大いに発奮出来ました。
本当にこの度は、通販のご利用ありがとうございますv
事務処理等が大変苦手な奴な為に…時期によっては処理が遅れて
しまった方等いらっしゃいましたが…とりあえず無事に終了しました。
春コミ後も、もう一回ぐらい通販を取り扱います。
遠方在住で、東京の方になかなか出て来れない方は良ければご利用
下さいませ。
それでは今宵は、これにて失礼致します(ペコリ)
剥がしていく。
寝室のベッドシーツの上にこちらを組み敷いて覆い被さっている
もう一人の自分は…腰にタオルを一枚巻いただけの格好なので、
見ているとどうしても意識をしてしまう。
それでも、今日は相手にやられっぱなしだったので…一回ぐらいは
相手の意表を突かないと、流石に気が済みそうになかった。
頬を紅潮させながら挑発的な笑みを浮かべている克哉の表情には
どこか艶があり…眼鏡の心を強く煽っていく。
「…何のつもりだ? それはこれから…俺に贈ってくれる筈の
物なのだろう…?」
「…立った今、お前が包装よりも中身が重要だって言ったばかりだろう?
それなら…中身で勝負させてもらう事にしただけだよ?」
それは他愛無い、恋人同士の睦言だった。
ゆったりとした手つきで克哉が箱を開いていくと…そこには三種類の味の
生チョコレートが三つずつ、計九個程収められていた。
手が汚れるのも構わず、箱にしっかりと収められていた一個を克哉は
手に取って行くと…そのままゆっくりと相手の口元に寄せていった。
専用のプラスチック製の楊枝ではなく、指で取った物だから…洋酒が
練りこまれた深いブラウン色の生チョコは変形してしまっている。
それでも、克哉は気にせずにこう口にしていった。
「…せっかくだから、オレが直接食べさせてやるよ…。ほら、口を
あ~んと広げて…?」
瞳を半分伏せて、艶かしい顔を浮かべていきながら…眼鏡の唇に
チョコを押し当てていく。
「…ほう? 随分と今夜はサービスが良いな…? それなら遠慮なく
食べさせて貰うぞ…?」
そういって、眼鏡は熱い舌先を…克哉の指先にねっとりと絡めていきながら
それを舐め取っていく。
「んんっ…!」
日常生活ではあまり意識しないが、指先や指の間というのはかなり
敏感な性感帯だ。
特に今みたいに相手と密着しながら見下ろされているような…そんな
体制でこんな真似をされたら、必要以上に感じてしまう。
眼鏡もそれを判った上で、相手を挑発するように…丁寧に親指と
人差し指を舐め上げて、その指ごとチョコを頬張っていく。
相手の舌先が、唾液を指先に感じて…その濡れた生暖かい感触に
ブルリ…と克哉は肩を震わせていった。
チュパ…チュパ…
指先を吸われたり、舐めあげられたりする音が軽く響き渡っていく。
「…うむ、悪くないな…だが、俺の好みとしては…指で掴まれて渡すよりも
こっちの方が好みだ…」
「えっ…?」
克哉が一瞬、呆けた表情を浮かべていくと…空かさず、次のオレンジリキュールが
練りこまれた別の列の生チョコレートが唇に宛がわれていく。
「…次は口移しで…お前から貰いたい。良いか…?」
(…何でこいつは、こっちが憤死したくなるような提案とかを平然として
くるんだよ~!)
心の中でそんな事を叫んでいったが、生チョコを唇の上に乗せられた状態では
単語になっていない振動が軽くするだけだった。
どうしようか、と迷った瞬間…相手の掌がそっとこちらの頬に宛がわれていく。
男性的な骨ばった手でありながら…その手は暖かくて、その温もりを感じた
瞬間に…優しく撫ぜられていく。
まるで促されているような、そんな手つきに…克哉の抵抗の意思はゆっくりと
殺がれ始めて…。
(本当に、こいつって…ズルイよな…。こんな風に優しくされてしまったら…
これ以上、抵抗なんて出来ないよ…)
瞳を熱っぽく潤ませて、羞恥を堪えていきながら…克哉の方から
そっと相手の首元に両腕を回していく。
そうして…自ら唇を重ねて、舌先で相手の口内に…オレンジの香りがほんのりと
する橙色の生チョコレートを送り込んでいった。
「はっ…」
克哉の舌が相手の口腔に忍び込んでいくと同時に、相手に強く背中を掻き抱かれて
引き寄せられていく。
熱い口付けと…洋酒の香りに、酔いしれてしまいそうだ。
クチャグチャ…とお互いの唾液と舌先が絡まりあう淫靡な水音が頭の中で
響き渡って、意識が飛びそうになる。
お互いにあまり甘い味は好きではない性分の筈だった。
しかし…こうやって味わうチョコの味は悪くなく、味覚とは別の領域を刺激されるので
双方とも夢中になって…相手の唇の味と一緒にそれを堪能していく。
ようやく生チョコの塊が完全に溶け切った頃には…克哉はぐったりとなって
シーツの上に腕を投げ出していった。
「…お前、あんなキス…反則だ…」
「…ククッ、お前からのチョコも…キスもとても旨かったぞ…?」
克哉の眼前には、心から愉快そうな笑みを浮かべたもう一人の自分の
顔が存在していた。
それに少しムッっとなっていきながらも…相手の掌が今度はこちらの
項や肩口の辺りを撫ぜていくと…反発心もゆっくりと失せて…。
「…もう、本当にお前って…。けど、喜んで貰えたなら良かったよ…。
買って来たは良いけれど…お前が気に入らなかったらどうしようかって
思っていたから…」
「…まあ、悪くない味だった。お前が手ずから食べさせてくれたからな…」
不意に耳元に唇を寄せられて、そんな事を囁かれたものだから…
克哉は再び顔をカッと熱く火照らせていく。
まったく…今夜は何回、こんな風に相手に羞恥心を煽られているのだろう。
挙式をした日から一ヵ月半。
毎晩のように抱かれているのに、未だに相手の言動に、肌に…触れられる指先に
そして…低い声に慣れない。
自分と同じ声と顔をしている筈なのに…どうしてこんなにドキドキするのか
克哉にも不思議で仕方なかったが…。
―その瞬間、相手の澄んだアイスブルーの双眸が宝石のように輝く
まるでその瞳を、アクアマリンやブルートパーズのようだ…と一瞬、見蕩れた。
宝石のように綺麗な瞳に、克哉の意識は釘付けになる。
同じ瞳なのに、その瞳の色は…それぞれの心の在り方を良く示している。
克哉の方の瞳が、同じ色合いの筈なのに…空や海を連想させる柔らかさが
あるなら、眼鏡の方は…やや硬質で、鉱石を思わせる色をしていた。
宝石には魔力がある。
見る者の心を容赦なく惹き付けて、狂わせる程の魅力が…。
―その瞳の持つ輝きに、今夜も克哉は惑わされていく
抗えないまま…今夜も流されていく。
小さなプライドも、意地も何もかもが…その視線の前では無になっていく。
残るのはただ、相手を欲しいという剥き出しの強い欲望だけ。
いつしか克哉の方も…蕩けたような、艶っぽい笑みを浮かべて…相手の
背中にそっと両腕を回していった。
「…なら、もっと食べる? …今夜は、初めてのバレンタインだしな…
サービス…しても、良いよ…?」
そういって、三つ目の…抹茶味の生チョコレートを指先に取って、己の
口腔に含んでいく。
そのままごく自然に…唇は重なり合い、自然と眼鏡の手つきもまた…
克哉を愛撫するような動きになっていった。
その手に、克哉は翻弄されて甘い声を漏らしていく。
「んあっ…!」
熱い口付けと、愛撫に…克哉の意識は早くも蕩けかけて…強請るように
腰を蠢かしていく。
そうして…彼らの夜は、更けていく。
―来年もこうして二人で共に、この日を過ごせることを心から願いながら―
ちょいと18日分はお休みします。
(現時点で書き下ろしの1話&2話目はほぼ完了しました。
これから三話目の執筆に入ります)
代わりに19日分はキチンと書いて行きますので
ご了承下さい。
明日は何故か家族でデズニーシーに行くことになりました。
…つか、出かける前にバレンタイン編の続き書いて
出て行くようにします。
…PCと携帯持って、原稿やります。
車の中ではPCで書いて…乗り物待ちしている間に
少しでも書き進めようかと…。
週末には法事で東京に出るし…本気で携帯で原稿を
いかにして進めるかが鍵になりそうです…(ルルルル~)
とりあえず、近日中に何ページの本にするか、構想はどうするか
完全に固めるつもりなので、その上でサイト上でアナウンスします。
現時点で報告出来ることをざっと書いておきます。
春コミの新刊は全部で100~108P、口絵は一枚あるかないか…(まだ未定)
挿絵は4~5枚(一枚は香坂が自分で挑戦する予定)です。
前回収録出来なかった4話の他に、現在連載中のバレンタイン編、
書き下ろしが4~5話ぐらい入る予定です。
全部で…8~10話ぐらいのボリュームになるかな。
へそまる嬢が気合入れて、表紙と挿絵を描いてくれています。
だから…買って損をさせない物を私も仕上げる気満々です。
今の時点で決まっているのはこんな感じ。
来週辺りには90%以上、どうなるかが決まるのでそれから
正式にページをアップさせて頂きます。
本日は近況報告だけで失礼しますね。
では原稿の方も頑張ります。おやすみなさい~。
―どうしてもう一人の自分はあんなに意地悪なんだろう
自分の部屋に立てこもりながら、克哉はそんな事を
考え始めていた。
そのくせ、心臓は凄くバクバク言っていて忙しなくなって
しまっている。
「バカ…」
明かりが落とされた、シンプルな内装の室内で…克哉は
胸元をギュっと握り締めながら、呟いていった。
片手には、相手に渡しそびれた四角い箱。
(せっかく…結婚してからの初めてのバレンタインなのに
何をやっているんだろ…オレ…)
去年は、バレンタインなんて祝いようがなかった。
今は夫となったもう一人の自分は、挙式をする以前は…
石榴が目の前に現れた時以外は会うことが叶わない存在だった。
本来なら実らない恋、結婚して一緒に暮らすことなんて…
ありえない恋だったのに…。
「去年は、渡したくったって…会うことすら出来なかったんだよな…」
昼間に、居たたまれない想いをしながら買って来たチョコレート。
それをそっと見つめながら…克哉は逡巡していく。
克哉とて、恥ずかしさやら意地悪されて悔しいやら…で一瞬
感情的になってしまったが、渡さないままでこの日を
終わらせたくなんてないのだ。
―けれど、小さな意地が邪魔をして…この扉を自分から開けるのは
躊躇われてしまった
何となく素直になるキッカケがないままだったから…克哉はキュっと
唇を噛み締めながら、生チョコレートの入った箱を見つめていく。
(…一言ぐらい、謝ってくれたら出ていっても良いけど…)
そんな事を考えた瞬間、いきなり…とんでもなく大きな音が
耳に飛び込んで来た。
ビービービービー!!
唐突に派手なサイレンというか…危険信号のようなものが
部屋の外から聞こえ始めて、一瞬何事かと思った。
「うわっ! この音は何なんだよ!」
何というか、映画とかドラマとかで鳴っている火災報知機とか、
これからここは崩壊しますよ~という時に鳴り始める音というか…
そんな音が突然聞こえ始めて、克哉はパニックになりかける。
人間、そういう時は生存本能の方が優勢になるらしい。
瞬間、もう一人の自分に腹を立てて閉じこもってしまったことなど
頭から吹っ飛んでとっさに、開錠してドアノブを回していくと…。
「やっと開けたな…まったく、手間が掛かる奴だな…!」
その瞬間、隙間からもう一人の自分の手が伸びてきて、手首をガシっと
掴まれていった。
あっ…と思った時にはすでに遅かった。
瞬く間にもう一人の身体がその隙間から割り込んできて…強引に
唇を塞がれていった。
「むぐっ…!」
克哉がジタバタと暴れて、とっさに相手の胸を押しのけようともがいたが…
そんな抵抗など物ともせずに、眼鏡は荒々しい口付けを施していく。
「んっ…ぅ…あぁ…」
頭の中に、淫靡な水音が反響する程の熱烈な口付けを落とされて…
克哉の思考は一瞬、甘く蕩け始める。
本当に、こういう手段は卑怯だ…とぼんやりと考えていくと…ようやく
唇を解放されていく。
「…お前って、本当にズルイ…」
「…そんなの、判りきっている事だろう…?」
扉のすぐ目の前で、顎の周辺をやんわりと擽られていきながら…
こちらの瞳を覗き込まれていく。
(本当に…ズルイ、よ…。いつも意地悪な癖に…こういう時だけ、凄く
蕩けそうなぐらいに優しい目をしているなんて…)
相手の目の奥が、今はとても柔らかくて穏やかだ。
愛されていると…口にはあまりしてくれなくても、そう実感出来てしまう。
そう思うと…意地を張っているのもダンダンとバカらしくなってきて…
克哉は溜息を吐いていく。
「…こっちを炙り出す為に火災報知機を使うなんて、どんな発想を
しているんだよ…。マンション中が大騒ぎになっても…知らないからな…」
「放っておけば良い。火災報知機の誤作動ぐらい…良くある話だ…」
「…お前って本当に良い神経しているよな。…オレと同一人物だなんて
やっぱり…信じられない…」
と、呟いた瞬間…唇に指先を宛がわれていった。
「今は…同じ人間じゃなくて、二人だろう…俺達は…」
はっきりと、強い口調で…そう宣言していった。
そうだ…今は、同一存在ではなく…それぞれが別個の意思と身体を
持った人間として存在している。
「…そうだね」
だからそれ以上は反論せずに、克哉も小さく頷いていった。
そのまま…静かに相手の胸元に引き寄せられていく。
さりげなく、部屋の奥に置かれているベッドの方までその体制で
誘導されていくと、トサっと小さな音を立ててその上に座らされていく。
気づけば、もう一人の自分の顔が間近にあった。
「…そろそろ、お前の手に持っている物を俺にくれないか…?」
ごく自然な動作で、ベッドの上に組み敷かれていきながら…
静かに囁かれていく。
言われて、無意識の内に四角い箱を落とさないように強く握り締めて
しまっていた事を思い出す。
そのせいで、綺麗にラッピングをされていた筈だったのに少しヘコんで
包装紙にシワなどが出来てしまっていた。
「…ちょっと、力込めてしまったから見た目悪くなっているよ…?
それでも…良いのかよ…?」
「問題ない。外装よりも…中身が問題だろう? …お前の服装のセンスに難点が
あっても…お前という中身の方が美味しければ問題ないのと一緒だ…」
そんな意地が悪いことを耳元で囁かれながら、ねっとりと…耳から
首筋に掛けてのラインを舐め上げられていく。
「どんな例えだよ! もう…!」
と、相手の胸の下で再び暴れようとした瞬間…ふいに手を取られて
指先に口付けられていった。
それで一気に毒気を抜かれていくと…。
「…お前の想いをちゃんと、俺にくれ…確認をする為にもな…」
と、真摯な眼差しを浮かべながらそう言われてしまったら…こっちは
耳まで赤くしながら黙る他…なくなってしまう。
何でこの男は、こうやって…こちらの羞恥を煽るような反則に近い行動
ばかりしてくるのだろう…としみじみ思ってしまった瞬間だった。
「…判った。仕方ないな…」
と、呟きながら…克哉は自分の手の中に収められたチョコの包装を…
ゆっくりと剥がし始めていった―
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。