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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この作品は現在、不定期連載中です。(週1~2回程度のペースで掲載)
 その為以前のを読み返しやすいようにトップにリンクを繋げておきます。

  バーニングクリスマス!(不定期連載)                    10 
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 御堂の愛車に乗って、連れて行かれた先は…豪奢な作りの都内でも
指折りの高級ホテルだった。
 克哉はホテルに辿り着いてから、ずっと俯いたまま…
御堂に腕を引かれていた。
 その状態でエントランスに辿り着くと、まず…置かれている調度品の
レベルの高さに緊張してしまう。
 普通のサラリーマンがおいそれと使えそうにない雰囲気が漂う
ホテルだった。それを…ここの内装を見るだけでも十分に判ってしまう。
 …その辺にも、御堂がこちらを特別に意識してくれていると…そういう
気持ちが伝わってしまって、居たたまれなくなる。

(御堂さん…オレに対して、本気なんだな…)

 その事実が、ひどく克哉の胸を突き刺していた。
 いや…それだけじゃない。太一も、本多も…自分に対して真剣な気持ちを
向けてくれている。
 薄々と彼らの気持ちに気づいていながら、意識的に煽っていた事が…
どうしようもない罪悪となって、克哉の心に圧し掛かっていた。
 御堂が受付でチェックインの手続きをしている間だけは解放されて
いたけれど…さっきまでこちらの腕を掴んでいた御堂の指先の強さを
思い出して、葛藤を覚えていた。

 男性二人でホテルを使用することを不振がられたくない、と言って御堂は
先に克哉にエレベーターの前に待機させていた。
 待っている間、エントランスの中心に設置されている大きな噴水と
天井の方に目を向けて観察を始めていく。
 細長くて長さがそれぞれ変えられていて、緩やかな稜線を描いている
金色の管のシャンデリアは、様々な光を乱反射させてキラキラ輝いている。
 部屋の片隅に置かれている女性の彫刻の滑らかさと美しさに、ハっと
息を飲んでしまうぐらいだ。
 こういう調度品の一つ一つに、そのホテルの格式というかそういうものが
滲み出るものだ。
 同時に、本日の逢瀬にここを選んだという事実からも…御堂が本気でこちらを
口説くうもりだったという事実が如実に伝わってくる。

(…今なら、引き返せる…。いや、引き返さないといけない…)

 脳裏に浮かぶのは、もう一人の自分の顔ばかりだ。
 こうやって真剣な思いを向けられていながら…土壇場に、あいつの事
ばかり考えている自分に、この人に想われる資格などない。
 そう考えて、克哉はそっと踵を返そうとした。

「…どこに行くつもりだ?」

 冷たい声が、すぐ背後から聞こえた。
 そうして…痛いぐらいに肩を掴まれていく。

「っ…!」

 克哉は、何も言えなかった。
 そうして無言のまま…その場に立ち尽くしていく。
 相手の方を後ろめたくて、見れない。
 振り返ることも…言葉を発することも出来ないまま…硬直した
時間が過ぎていく。

「…ここまで来て、君を逃がすつもりはない。…観念したまえ」

「…そんなっ!」

 克哉が反論の言葉を発しようとした瞬間、エレベーターの扉が開いて
その中に押し込まれていく。
 空かさず「閉」のボタンを押されて、扉が閉ざされていった。

「あっ…」

 そうして、エレベーターがゆっくりと上昇し始めていった。
 どうやらこのホテルはEVの外壁が透明になっていて…其処から街の
風景を眺められる構造になっていた。
 目の前に宝石箱をひっくり返したかのような見事な夜景が広がっている。
 克哉は無意識の内に御堂から後ずさっていた。
 しかし…男はすぐにこちらを壁際まで追い詰めて、鋭い瞳で見据えてくる。

「克哉…君の真意はどこにある? 私を誘うような行動や仕草を、
二人で会う度に繰り返していたのは…そちらの方だろう…?」

「…それ、は…。はい、その通り…です…」

 そう、その件に関して克哉は反論出来なかった。
 御堂の、言う通りだったからだ。
 …彼と親しくなったのは、ここ半年ぐらいからだ。
 プロトファイバーの営業を担当した件で、確かな実績を打ち立てたという
事が幸いしてか…御堂はこちらを認めてくれる言動を以前よりも多く
してくれるようになった。
 それが…もう一人の自分との恋愛で疲れていた心に酷く染み入って…
だから、自分は…御堂にある日、背中を借りて凭れ掛かってしまった。
 そして…泣いてしまったのだ。

―御堂から、労わるような優しい一言を向けられた時に…。

 克哉は、無言でそのまま…御堂の背中を借りた。
 その日から、自分たちの関係は少しだけ変化していった。
 疲れていたから相手の背中に無意識のうちに縋り付いたり、手を握り締めて
しまったりしていた。
 それは…好意がある人間にすれば「誘っている」と見られても仕方ない
仕草や行動の数々だ。   
 御堂の手が…ゆっくりとこちらの頬を撫ぜていく。
 
「んっ…」

 たったそれだけの事で、過敏に反応している自分がいた。
 きっと今、自分の顔は上気して…瞳は潤んでしまっている。
 ここまでついて来てしまったのは…この人に惹かれてしまっている部分も
あるからだ。
 けれど同時に…強く、もう一人の自分のことを想って心はざわめき続けている。

「こんなに敏感な癖に…どうしてさっき、逃げようとした…?」

「…迷っている、からです。…貴方は真っ直ぐにオレだけを見ていてくれて
いるのに…こちらの心の中には、どうしても忘れられない奴がいるから…」

「…ほう? 他に想う人間がいると言いたいのか…?」

 その瞬間、御堂の瞳が剣呑に揺れた。
 克哉はそれを見て竦みそうになったが…それでも相手から目を逸らさずに
小さく頷いていく。
 …殴られたり、不興を買っても文句を言えない事だと自覚はあった。
 しかし…自分の気持ちを、そしてこの人を偽ったままで抱かれるような不誠実な
真似をしたくなかった。
 だから正直に、短く答えて仕草で伝えていく。

「…はい」

「そうか…だが、問題はない。…君の中に今は他の男がいるとは薄々とは
気づいていたからな。だから私は…取られたくないと考えている…」

「えっ…?」

 その言葉に、克哉は驚きの声を漏らして呆けていく。
 同時に…エレベーターが目的の階に到着して…チーン、と小さくベル音を
鳴らしながら扉が開け放たれていく。
 反論をする前に、腕を引かれて部屋まで引きずられていく。

「御堂さんっ?」

「…私は、誰にも君を取られたくない。だから…その気持ちを伝える為に
今夜、君を抱きたいんだ…!」

「そ、んな…」

 普段冷徹で、感情など滅多に見せない人が…今日一日だけで何度、
その熱い感情を垣間見せてくれたのだろうか。 
 それに心を揺らしている自分が、確かに存在していた。

―けれど、自分はどうしてもあいつを忘れられなかった…!

 心の中が荒れ狂い、強烈な想いが渦巻いていく。
 克哉はそれでも、相手の手から逃れようともがいた。
 けれど…御堂が一瞬だけ、切なそうな悲しそうな…そんな瞳を向けた
瞬間に、動きが止まってしまった。

「あっ…」

 無言で、真摯に向けられる眼差し。
 それに…克哉も毒気を抜かれていく。

(どうしたら良いんだ…?)

 一瞬困惑して、克哉が抵抗を忘れていく。
 そうして…二人で互いに、見詰め合った。

―その瞬間、シュル…と空気を切る音が背後から聞こえた。

 聞こえた方角は、御堂が予約した部屋がある筈だった。 
 その扉がいきなり、バタンと音を立てて一瞬だけ開け放たれていく。
 そして…予想もつかなかった物が姿を現していたので…克哉は
目を見開いて、驚愕していった。

「えぇっ…?」

 一瞬だけ視界を捉えたものが、信じられなかった。
 そんんな訳がある筈ないと、とっさに思った。
 しかし…見間違えでなければあれは…。

「何だ今の音は…?」

 今の音に不振に思って、御堂がゆっくりとそちらの方向に
歩み寄ろうとしていた。
 瞬間、彼を庇うようにそっと腕を掴んでいく。

「御堂さん! 駄目です!」

 克哉は必死の形相を浮かべながら、相手の身を案じて…懸命に
その扉を開かないように静止していく。
 しかし…遅かった。
 
―克哉が叫んだ瞬間、扉は中から開け放たれて…其処からありえない
ものの一部が、ゆっくりと現れていったのだった―


 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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