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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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克哉が御堂と寄り添いながら、部屋のある階までエレベーターに乗り、
其処から出た時…隣のエレベーターに乗り込んだ人物の後ろ姿を見て、
驚愕を隠せなかった。
 マンションの入り口でMr.Rに遭遇しただけで相当に驚いたのに、まさか
彼までがこうして現れるだなんて予想してもいなかったからだ。
 
「えっ…?」
 
「…克哉、どうしたんだ?」
 
「い、いえ…今、入っていった人がもしかしたら知り合いかなと思って
少し驚いただけです…」
 
「…? そうか…」
 
 御堂は怪訝そうに眉を寄せていったが…克哉が言いづらそうにして
いるのを察して、それ以上の詮索はしてこなかった。
 それが克哉にはありがたかった。
 
(良かった…孝典さんがそれ以上、尋ねて来なくて…。まかさ言える訳が
ないよな…。もしかしたら今、オレたちと入れ違いに隣のエレベーターに
乗り込んだ人物が…もう一人の』俺』かも知れないなんて…)
 
 ただでさえもう一つの人格があるだの、しかもその人物と対面して
抱かれた経験すらあるなど、決して口に出して言える事ではない。
 御堂に例の眼鏡の事を打ち明けた時ですら、信じている様子は
なかったのだ。
 そんな事を口に出したら…絶対に正気を疑われることは
目に見えていた。
 自分が誰かからこの体験を打ち明けられたとしても…
恐らく信じられないだろう。
 それぐらいMr.Rと…もう一人の自分の存在については
非現実すぎる体験なのだ。
 だが、このフロアは自分と御堂の部屋がある。
 どうしてその階層にもう一人の自分が具現して現れていたのか…
腑に落ちない気がして克哉は首を傾げていった。
 
(…どうしてあいつはこの階にいたんだろう…?)
 
 何となくそれが納得いかない。
 用もなく、あいつがこうして現実に存在しているなどとても
思えなかったからだ。
 グルグルと思考が回り始めていく。
 出口のない迷路にまた迷い込んでしまったような気分だった。
 
(判らない…Mr.Rも、あいつも…何を考えて行動しているのか、
その理由が…)
 
 ただ一つ言える事はこの一年…安定していた筈の自分の環境が
あの男性が目の前に現れた二週間前から崩れてしまったという事だ。
 自分が動揺する度に、御堂はいつだって心配そうな…どこか
苦しそうな顔を浮かべていく。
 その表情を見る度に克哉は申し訳ない気持ちでいっぱいに
なってしまう。
 けど、もし逆の立場なら自分だって御堂を心から案じるし…少しでも
手助けしたいと思うだろう。
 
(いちいち、小さな事に動揺するな…孝典さんにこれ以上、心配を
掛けてはいけない…)
 
 そうして気をしっかり持とうと覚悟したのと同時に、自分たちの
部屋へと辿り着いていった。
 そしてカードキーを使用して中に入り、リビングに向かって
二人は愕然とした。
 
「なっ…! これは…!」
 
「そんな…どうして、こんな、事が…?」
 
 御堂と克哉は驚きを隠せない様子で、部屋の中の惨状を
目の当たりにした。
 定期的にハウスキーパーを入れて清掃も行ってもらい…自分たちが
生活している時でも整理整頓に出来るだけ気を配って整えている筈の
室内が、まるで空き巣か何かに入られたかのように荒らされていたからだ。
 このマンションのセキュリティは都内でもかなり上ランクの方に入る。
 住人と一緒に入るか、もしくは住人が許可した人間が入れないように
工夫されている。
 関係ない人間が…入り口より先に入るのはそれなりに骨が折れる筈だ。
 
「何故、こんな事が…? この部屋のカードキーは君と私、後は管理人
しか持っていない筈だ…! 何故、こんな事が起こりうる…?」
 
 このマンションではカードキーを使用する以外でドアを開いた場合、
例えばピッキングなどで強引に開錠した場合は盛大にアラームが
鳴り響いて強盗など出来る状態ではなくなる。
 もし、この高級マンションでそれでも何かを盗みたかったら、住人と
一緒に入るか…もしくは住人になりすまして入り口を越えるのと、
カードキーを何らかの手段で手に入れなければならない。
 その二つのハードルを越えなければ、到底こんな事態になりようがない。
 
(まさか…?)
 
 克哉は慌てて、スーツの上着のポケットに手を差し入れて
カードキーを探っていった。
 其処には確かに肌身離さずに大切に持っているこの部屋の
鍵が入っていた。
 そう…自分が起きている限り、外出する時は常に克哉はこれを
無くさないように意識している。
 これは自分の住んでいる部屋のキーである以上に、御堂から
初めて御堂から貰った…強い想いが込められた品だったからだ。
 合い鍵を渡しても構わないと想うぐらいに、自分を好きになって
くれた事が嬉しくて…だから克哉はこれだけは絶対に無くさないように
気をつけ続けた。
 
「克哉…君のカードキーは…?」
 
「…キチンとここにあります。これは貴方からもらった大切な
思い出の品でもあります…。これを無くすような事はしていません…」
 
 そうして自分の言葉が事実だと相手に伝える為に、ポケットから
キーを取り出して見せていく。
 
「嗚呼、そうだな。君がそんな不注意を簡単にする筈がないし…万が一
やってしまったのなら、黙ってそのままにしておくような愚かしい真似を
する筈がないからな…」
 
「えぇ…」
 
 克哉は小さく頷きながらその言葉に同意していく。
 本当に酷い有様だった。
 
「…克哉、何を取られたのか確認しておこう。金銭に関わる物が
盗み出された場合は早急に対処しなければならないからな。私は
書斎を見てくる。君は寝室の方を確認して来てくれ…」
 
「はい、判りました!」
 
 そうして力強く頷いていくと克哉は早足で寝室の方へと
向かっていった。
 二人はそれぞれ自分が確認を担当した部屋を30分くらい
掛けて入念に調べていった。
 特に金品や高価な物に掛けてはしっかりと無くなった物は
ないか確認していった。
 だが全ての確認が終わった後、お互いに唸るしかなくなってしまった。
 そう、これだけ派手に部屋の中が荒らされているにも関わらず…
お金に繋がりそうなものは何一つ、家の中から無くなっていなかったのだ。
 一度区切りをつけて御堂にその事を報告したが、やはり納得が行かなくて…
二人は今度は金品以外の物でなくなった物がないかを確認する事にした。
 その時、たった一つだけ消えている物をようやく克哉は発見した。
 
―それは帰省する時に持って帰って来た…もう一人の自分と
あの男性の、小学校時代の写真だった
 
 それは今度、あの男性が現れた時の為に自分の会社用のカバンの中に
潜ませていた物だが…其れが全て無くなっていた。
 その事実に気づいた時、どうしてもう一人の自分が隣のエレベーターに
入れ違いで乗り込んでいたのか…全ての符号が克哉の中に一致していく。
 
―どうやら、真実の近くまで辿り着いた事で…オレはお前を敵に
回してしまったみたいだな…
 
 他者を理解したい、知りたいと思う気持ち自体は決して
悪いものではない。
 時に自分を知ってしまい、共感したり労られたりする事で人はどん底から
救われて、立ち上がる気力を得られる時だってあるのだから。
 だが、まだ人に語れるまで昇華されていない出来事や体験を無理矢理
踏み込んだり、知ろうとする事は…される側にとっては暴力に等しい。
 今の克哉の人格は、それ以前の自分を消したいと…変わりたいという、
少年時代の眼鏡が願った事で生まれた心だ。
 例え自分と同じ身体を共有している存在であっても、その事を
知られたくないと頑なになっている事実を目の当たりにして…克哉は
歯噛みしたくなった。
 
「…そんなに、お前を知ろうと…理解しようと思う事が悪いのかよ…! 
何でそこまでお前は、一人で傷を抱えようとしているんだよ…バカ…!」
 
 克哉はこの部屋を荒らした犯人が、もう一人の自分であった事実を
悟ってしまったとき…泣きたくなった。
 それは彼からの拒絶に等しかったから。
 克哉はその時、頬に一筋だけ涙を伝らせていった。
 
「克哉…」
 
 だが部屋の入り口から愛しい人がこちらに対して呼びかけていた事に
気づくと、これ以上愛しい人を心配かけまいと…どうにか笑顔を浮かべて
『はい』と小さく返答していったのだったー
 
             
 
             
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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