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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は眼鏡×御堂の独占欲をテーマにした
話です。それを承知の上でお読みください。


―あんたに俺を刻みつけたい
 どんな事があっても、俺を決して忘れないように。
 常にあんたが俺のモノであると確信出来るように…
 その肌に、全てに俺の刻印を刻みつけたい…
 けれど、それはどういったものが良いだろうか…?

 アクワイヤ・アソシエーションを設立してから一年余りが経過して…
御堂との関係も良好で、会社も起動に乗り始めた頃…いつしか佐伯克哉は
そんな思いに囚われるようになっていた。
 オフィス内で、自分のディスクに座りながら暫し手を止めて物思いに
耽ってしまっていた。
 今夜は週末。その為に藤田は少し早目に返して、御堂はもうじき出向先から
ここに戻る予定になっている。
 そうなればいつものように、同じビル内にある自分のマンションに御堂を招いて
一緒に過ごす事になるだろう。

(…その事に期待している癖に、どうして最近俺はこんな想いに
囚われているんだ…?)

 御堂の肌に、己を刻みつけたい。
 彼の全てを支配して、独占したいという感情が最近…異様に強く
なっているのを感じていた。
 其れはかつて、狂気に支配されて彼を監禁して凌辱してしまった時のような
激しさを徐々に持ちつつあって…克哉はそれを抑えるのに密かに苦労
する羽目になっていた。

「…俺は、もう二度と御堂を傷つけないと誓った。それなのに…どうして、
こんな想いが消えてくれないんだろうか…」

 そう打ちのめされた気分になりながら、書類に目を戻していった。
 さっきまではそれでも支障なく作業が出来ていたのに…今は、その
自分の中の黒い染みのような感情に振り回されて集中出来なくなっている。
 頭を振って意識を逸らそうとしても、瞼の奥には淫らな御堂の姿が
ゆっくりと浮かび上がり…こちらの心を煽っていく。

―いつまで、己の欲望に…蓋をし続けているつもりですか…?

 ふと、唐突に…脳裏に声が響いていった。
 とっさに弾かれたように顔を上げていくが…周囲を見回しても誰も
いなかった。
 だが…今の声は紛れもなく、聞き覚えのある人物のものだった。

「…どうして、Mr.Rの声が…聞こえたんだ…? 全くどこまでも人外の
奴め…。現実には有り得ない事をごく当たり前のようにやってくるな…」

 そう悪態をつきながら、手に持っていた書類を机の上に荒々しく置いていく。
 今ので完全に気が削がれてしまい…仕事をやる気分ではなくなって
しまっていた。
 其れに先程までには早急に対応しなくてはいけない件に関しては
すでに動いて片付けてしまっている。
 今、やっている書類は言ってみれば早目に動いた方が良いと判断して
先に手をつけている部分なので…急いで今、仕上げる必要はないのも
事実だったので…克哉はふんぞり返る用に自分の椅子の上に深々と
腰を下ろして、天井を見上げていった。

「御堂…いや、孝典か…。もう社員は俺以外は全て帰した訳だし…これからは
あいつと俺だけの時間となる。そう呟いても問題ないだろう…。けど、どうして…
こんな感情を再び持つようになったんだろうか…」

 いや、もしかしたら御堂と穏やかで幸福な関係を築くようになった頃から
この黒い欲望は潜在的に存在していたのかも知れない。
 かつての自分は、歪んでいた。
 御堂から全てを奪って堕としていき…尊厳や誇りまでも叩きつぶそうとしていた。
 あの行為は決して許されるものではない事は、克哉自身にも判っている。
 だからこそ二度と同じ過ちは犯さないと強く誓った訳なのに…どうして、
こんなにもドス黒い感情に翻弄されなければならないのだろうか。

「…全く、俺はどうかしてしまったのだろうか…。もうあいつを傷つけないと
心に誓ったのを忘れてしまったのか? 今…俺が妄想していた事を実際に
あいつにやってしまったら、以前と全く俺は変わっていないという事だろう。
…本当に、バカバカしい…」

 そういって、そんな考えを丸ごと切り捨ててしまおうと試みていった。
 けれど追い出そうとすればするだけ…余計に膨れ上がっていくような
気分になってそれが余計に克哉を苛立たせていった。

「ちっ…一服でもするか…」

 基本的にオフィス内では煙草を吸うな、と御堂にキツク注意を受けているが
それぐらいしなければ気持ちは収まりそうになかった。
 せっかくこれから恋人同士の甘い時間が訪れるというのに、しかめっ面で
最愛の相手と顔を会わせたくない。

(あいつには煙草臭い事ぐらい我慢してもらうか…。こんな苦い顔で
顔を合わせるよりはマシだからな…)

 そう自分に言い聞かせて、上着の内ポケットに収めていた煙草の箱と
ライターを取りだして、火を点けていった。
 紫煙がゆっくりと立ち昇ってフワフワと空気中を彷徨っていく。
 深く煙を吸い込んでいけば、胸の中が煙で満ちていった。
 煙草自身は身体には悪いが、この煙を深く吸う動作は深呼吸をしているのと
同じ効能があり、それが喫煙によって喫煙者がリラックスを得るのだという
学説も存在している。
 自分の好きな銘柄の煙草の煙を吸う事によって、イライラはゆっくりと
消えうせていくのを感じていった。
 そして短くなった煙草を常に持ち歩いている携帯灰皿の中で処理している時に
オフィスの扉がゆっくりと開かれていった。

「佐伯…今、帰った…が、お前…あれだけ煙草をこの部屋で吸うなと言っただろうが!
臭いがつくし、ここは多くの社員が働いている場なんだぞ。経営者ならそれぐらいは
配慮したらどうなんだ…」

「ああ、一本だけだ。今…色々考えてイライラしていたんだな。せっかくあんたと
これから共に過ごす事が出来るのに…しかめっ面で顔を合わせたくなかったので
安定剤代わりに吸う事にしたんだ。おかえり、孝典。お前が帰って来るのを
待ちわびていたぞ…?」

「うっ…君は、本当にずるい、な…」

 そう、甘く微笑みながらスラスラとそんな事を言われてしまったら、御堂に
してもそれ以上強く言う事が出来なくなる。
 言葉に詰まらせて、軽く頬を染めている恋人の姿を見ていくと…つい
おかしくなって克哉は声を立てて笑ってしまっていた。

「…はは、あんたのそういう処は本当に可愛いな。それじゃあ…そろそろ上の
俺の部屋にでも一緒に向かうとしようか。キチンと戸締りをしてからな…」

「…可愛いという言葉は余計だ、バカ。だが私も早く上に行って一息入れたいのは
同感だ。一緒に戸締りをして早く行く事にしよう…」

「ああ、そうだな…」

 そうして二人は協力してオフィスの戸締りを終えて電気を消していけば…
一緒に、克哉の自宅へと向かっていったのだった―


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 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7      10

 ―今思えば、去年の冬に再会して以来…ずっと克哉の胸の中には
重い罪悪感が宿り続けていた

 一度は成就を諦めた気持ちだった。
 本来なら叶うことなどありえない筈の恋だった。
 想いを自覚したことをキッカケに御堂から離れて、あの人を
解放することを選択した。
 滑稽な話だった。
 何が何でも御堂を手に入れようとしていたその執念の源となる気持ちを
克哉自身が自覚していなかったのだから。
 御堂を自分の処まで引き摺り下ろす為に、拉致監禁陵辱、脅迫まがいな
事をしでかしたのだと己自身も思い込んでいた。
 どうして、気持ちに気づかなかったのか。
 それは…自分にはそんな甘ったるい、生ぬるい感情など似合わないと
本心から目を逸らし続けていた。
 その行為が、御堂にあの屈辱の日々を送らせることとなった
最大の要因にもなった。
 だが、奇跡的に想いは叶い…御堂が自分の傍にいてくれるように
なってから克哉はずっと慢性的にこの疑問を抱き続けていたのだ。

―あんたは本当に、俺の事を愛してくれているのか? 腹の底から
許してくれているのか…?

 恐らく同じ事を自分が誰かにされたら、克哉は許すことなど出来ない。
 そう考えたからこそ、愚かしいことと判っていても克哉はその気持ちに
囚われ続けていた。
 本当に憎いと思っているのなら、そもそも一緒に働いたりセックスを
する道理がない。
 愛しい人を抱く度に、そう己に言い聞かせ続けていた。

 ―だが、克哉のその想いに反して…罪悪感や後悔の念は決して
胸の中から消えることなく…彼の心を苦しめ続けていた。

 まるで自分の中で澱になっていた気持ちを浮かび上がらせる為に…
もう一人の克哉はこちらを責めて来た。
 その時に、御堂が力強く言ってくれたからこそ…再会してから
初めて、克哉は…気持ちが軽くなったように思った。
 御堂がかつて住んでいた部屋とまったく同じ内装をした…薄暗い
部屋の中で、二人は対峙していく。

―あれは俺の罪を照らす鏡のようなものですよ

 もう一人の克哉に対して、そう返答して以来…重い沈黙が
訪れていた。
 息が詰まるぐらいに双方見つめあい、瞳で語り合っていく。
 その時間をどれくらい過ごしていただろうか。
 ついに克哉の方が焦れてしまい…深い溜息を突いていきながら
先に口を開いていった。

「…孝典。あんたは本当に…俺をもう憎んでいないのか…?」

 その言葉は、ずっと彼の中に潜んでいた疑問だった。
 御堂が全力でこちらの信頼に応えてくれていたからこそ、
尋ねたら失礼だと思って言えずにいた問いかけだった。

「当然だ。今でも憎んでいたり恨んでいる男の元に…新しい会社で
得た役職を捨ててまで来ると思うのか? 君が疑問に思うのも無理も
ない事だが…私が君の申し出を承諾した。その事に全ての答えが
存在していると思わないのか…?」

「……ああ、そうだな。本当に…あんたの言う通りだ」

 そうだ、思い出した。
 御堂は無理やり屈服させようとして…どうにかなるような生易しい
人では決してなかった。
 むしろ月単位にまで及ぶ監禁の日々でさえも、心が壊れる寸前まで
こちらに抗う意思を見せ続けた男だった。

「…私は無理やりいう事を聞かそうとしても、どうにかなる人間じゃないと
いう事は君自身が一番良く判っているだろう? どうして今更…そんな
疑問を抱くんだ?」

「…それは、あんたを愛しいと思えば思うだけ…かつて自分がやった
馬鹿げた行動に呆れたからですよ。正しい手段をあんたの気持ちを
手に入れたからこそ…あんな愚かなことをやった自分を許せないでいた。
それこそ、そんな単純な答えしか出てこないさ…」

 自嘲気味に克哉が答えると、御堂はグっとこちらの方に距離を
詰めていった。
 自分と同じぐらいの立派な体格をした…端正な男の顔が目の前に
存在して反射的にこちらから抱きしめていく。
 息が詰まるぐらいに強く抱きしめる。
 それを許すように御堂からも強い力を込めて抱きついてきた。

「…君にもまともな神経が宿っていたんだな。あれだけ可愛くなくて不遜な
態度を取っている男が人並みに罪悪感を覚えていたなんて…まったく
予想もしていなかった…」

「…おいおい、随分な謂われようだな…」

「うむ、キツイ事を言っている自覚があるが…再会してから会社を立ち上げる
までの君の電光石火のような行動の奥に、そんな殊勝な感情が存在していた
とは私も読み取れていなかった。…だから、君も言えないままになっていた
のかもな…」

「ああ、そうかもな…」

 そういって御堂はあやすように克哉の背中を撫ぜて、唇にキスを落としてきた。
 その柔らかい温もりを与えられて、克哉の中の罪悪感や後悔の念が…
氷解していくのを感じ取っていく。
 思いがけず目の前の御堂の双眸が優しい色合いを帯びていく。
 その紫紺の瞳に目を奪われていきながら…克哉は相手が紡ぐ心地の良い
言葉にそっと耳を傾けていった。

『だが、私は君の傍にいる。そしてこうして…触れ合いながら共に同じ
目標を持って日々を送っている。行動の中に私の本心があるだろう。
…憎んでいるなら、その気持ちの方が強いようなら…そもそも君に告白
めいたことも、あの日…待ち伏せをしたりもしなかっただろうに…」

「ああ、そうだな。確かに…あの日、再会したことが…あんたが気持ちを
伝えたことが…何よりの、証だったな…」

 忙しい日々を送っていたから…忘れかけていた。
 今の自分達の関係が新たに始まったあの冬の日の出来事を。
 そう、御堂が待っていてくれたから。
 こちらに気持ちをぶつけてくれたからこそ…克哉は一度は諦めた
恋心を得ることが出来たのだ。
 克哉からはどうしてこの人に告白することが出来ただろう。
 御堂からのリアクションがあったからこそ…克哉はこの人の手を
取ることが出来たのだ。
 そう、答えは…あの日に全て存在していたのだ。

―御堂が告白して想いを告げてくれた。それこそが…全ての答えで
あった事をようやく克哉は気づいていった

「そうだ、君は…本当に手のかかる男だな。こんな男の傍をうっかり
離れようものならどうなるか判らないからな。簡単には離れないぞ…」

「おいおい、それじゃあ俺が本当に手の掛かるどうしようもない
人間みたいなじゃないか…」

「そうじゃなかったのか? 私はそういう風に君を見ていたがな…」

「…あんたも、相当に人が悪い。そんな口を俺に叩いたらどうなるか…
実際に思い知らせてあげましょうか…?」

 そういって軽口を叩きあいながら、二人は静かに唇を寄せて…
口付けあっていく。
 その感触に克哉はうっとりとなりかけていった。
 こうして抱き合い、キスをしているだけで…どこまでこの人はこちらに
幸福感を与えてくれているのだろう。
 そう実感した瞬間、克哉は違和感を覚えていった。

(…どうして、ポケットが熱いんだ…?)

 唐突に上着のポケット部分がまるでホッカイロでも入れているかのように
暖かくなり始めているのに気づいて、そっとキスを解いて手で探って
鍵を取り出していく。

「…っ! これは…」

 克哉が驚いた顔をして取り出した鍵を確認していくと…魔法の鍵は
淡く輝きながら、脈動しているかのように…一定の間隔を持ちながら
光を点滅させて熱を持っていたのだった―


2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7    

 かつて自分が罪を犯した場所とまったく同じ内装の部屋を改めて
見ることで忘れかけていた罪悪感が胸の中に湧き上がった。
 人は罪を犯して、初めて罪の重さを知る部分がある。
 それを体験するまで、軽い気持ちだったり欲望の赴くままに
過ちを犯してしまう。
 克哉も、そうだった。
 あの時の自分は、御堂の心を屈服させる為ならば手段を
選ばなかった。
 犯罪といえるような真似すら、何のためらいもなく行った。
 自分の欲しいものを得る為ならば、そして警察などに捕まったり
しなければ何をやっても関係ないとすら思っていた。

―だからこそ、御堂を心から愛しく思えた…欲しいものを得ることが
出来たからこそ、あの頃の自分の愚かさを心の底では吐き気が
覚えるほど嫌悪していた

 もう一人の自分に罪を突きつけられて、本当に足元が崩れてしまうような
そんな想いを感じていた。
 だが、そんな自分に…御堂はそれでも支えてくれていた。

「克哉…惑わされるな。私は君の罪を許した上で…今、君の傍にいる。
外野が何を言おうとも…揺らぐな。私はそんな弱い男の右腕になった
記憶は無い…!」

「あ、あぁ…そうだな…」

 その一言が、今の克哉にとってはどれだけ救いだっただろうか。
 自分の肩に置かれている御堂の指が痛いぐらいに食い込んでくる。
 そっと後ろを振り返って、愛しい人の顔を見つめていく。

(嗚呼、何て綺麗なんだろう…)

 御堂の美は、硬質のものだ。
 儚さや脆さを感じさせず…鉱石や金属のような美しさだ。
 芯がしっかりとして周りの人間の目を惹き付けながら…決して容易に
折れたり壊れたりしない。
 その姿が余りに凛々しくて、眩しくて…だからかつての自分はどんな
手を使ってでもこの人を陥落させようとした。
 改めてその事実を思い知らされて…克哉は唇を噛み締めた。

―あんたにこれ以上、みっともない姿を見せたくない…。俺は、あんたの
隣にいるに相応しい男で…在りたい…!

 御堂がこちらを肯定する言葉を、許すという一言があったからこそ…
克哉はギリギリの処で踏み止まっていく。
 愛しい人がこういってくれているのに、これ以上過去の罪に怯えて…
恐れて一体何になるんだと。

「…克哉、私は君の傍にいる。…何を言われても…揺らぐな!
その事実こそが、私の想いの全てだ…!」

 そして叫ぶように、御堂は訴えかけていく。
 そう、事実は何よりも雄弁に本心を語っている。
 御堂が本当にこちらを憎んでいるならば…今でもその気持ちを
燻らせているのならば、そもそもアクワイヤ・アソシエーション自体が
存在していないだろう。
 再会した日に、御堂がこちらと同じ想いを抱いていてくれて…
そして心を通わしたからこそ、克哉は心の底で抱いていて叶うことが
諦めていた…御堂と一緒に会社を興して、発展させるという夢を
実現させる為にこの九ヶ月余り…努力をし続けたのだから。
 その事をようやく思い至った時、克哉は涙が出そうだった。
 そして、己の過去の過ちを断罪しようとする…酷く凶悪な顔を
浮かべているもう一人の自分を睨み付けた。

―過去に負ける訳にはいかない

 どれだけ消え去りたくても、なかった事にしたくても…かつて
自分がやってしまったことからは人は逃げられない。
 なら、それを踏まえた上で…その教訓を胸に刻んで次に生かす
形で前を進んでいくしかないのだ…!

「…おい、『オレ』…! お前が何を言おうとも…俺は決して惑わされない。
確かに俺は愚かでどうしようもない間違いを犯した。かつて俺が御堂に
した事を忘れることは許されないだろう…!
 だが、その罪の意識に囚われてグダグダとくだらなく過ごしていく
つもりはまったくない…! だから、無駄だ! お前が何を言おうとも…
御堂が傍にいる限り、お前の糾弾で…俺は打ちのめされる訳には
いかない…!」

 今までになく強い口調で、もう一人の自分に訴えかけていく。
 視線がぶつかった瞬間、本当に火花でも散っていそうなぐらいに
強い眼差しで見つめあっていく。
 だが、克哉も一歩も引く訳にはいかなかった。
 自分の背後に、御堂の気配を感じていく。
 そう、その温もりが…何よりも克哉に勇気を与えてくれた。
 どれくらいの時間、そうして…己の鏡でもあるもう一人の自分と
睨み合っていただろうか。
 凍りついたようなその時間が、唐突に終わりを迎えていった。

―そう、それで良いんだよ…『俺』…

 そして打って変わって、とても優しく…慈愛に満ちた声で
一言だけもう一人の克哉はそう呟いた。

「えっ…」

 先程までの冷たく鋭い瞳は、まるで氷が解けて消えてしまったかの
ように…いつの間にか相手の双眸からは消えうせていた。
 背後にいた御堂も、それでアッケに取られて言葉を失いかけていた。

―お前が犯した罪は忘れてはいけないけれど…それを承知の上で
日々を送っているならば…これ以上、何も言わない。けど…どうか
忘れないで欲しい…。本当に、その人と…御堂さんと幸せになりたいならば…

「………」

 克哉は、言葉を失っていく。
 これではまるで…御堂のさっきの一言を引き出す為に…自分から
悪役を買って出たような感じではないか。

(いや、実際にそうだ…。あいつの言葉に揺らいでいたからこそ…御堂は
肯定する言葉を吐いて…俺を支えてくれようとした…)

 その労わりの言葉から、克哉はようやく…相手の隠された意図のような
ものを感じ取っていく。
 何と返して良いのか…言葉に詰まった。
 だが、ゆっくりと相手の姿が透明になっていくのを見て…克哉は
簡潔に、そして力強く言い放った。

「…嗚呼、忘れはしないさ。そしてこれからも…俺は御堂の手を取って
歩んでいく…ずっとな…」

 その短い言葉こそが克哉の本心。
 そして偽りのない想いだった。
 奇跡のような確率で、御堂の気持ちを得られた。
 その僥倖を…どうして手放すことなど出来ようか。
 もう一人の自分と、もう一度視線が重なっていった。
 泣きそうな顔で、彼は笑い…そして…幻のように儚く消えていった。
 そして克哉と御堂の二人だけが、かつての罪を示す部屋の中で
立ち尽くす格好となった。

「今のは…一体何だ…? どうして、君が二人同時に…」

 その時点になってようやく、御堂がずっと疑問に思っていたことを
呟いていった。
 それを聞いて克哉は自嘲的に笑っていく。

「…あれは俺の罪を照らしてくれた…鏡のようなものですよ…」

 そして力なく笑いながら、克哉は改めて…罪を自覚した上で
御堂と向き合い、しっかりとその顔を見据えていったのだった―

 掲載が随分と間が空きました。
 こちらもボチボチ終わらせていくので良ければお付き合い
下さいませ~。

 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7  

  御堂が立ち止まり、奇妙な反応をしていた部屋の扉を
開いていくと…其処にh見覚えがある光景が広がっていた。
 それを目の当たりにして克哉は言葉を失い、呼吸すらも
困難になりそうだった。

「ここ、は…」

 確信を深めていくと同時に、強烈な眩暈すら覚えていった。
 間違いない、此処は…この光景は決して忘れることなど出来ない。
 薄暗くて視界は効かなかったが…此処は以前の御堂の部屋だった。
 今、ビジネスのパートナーとして傍らにいる御堂はあの時とは
別の部屋に住んでいる。
 一度、克哉と決別をした際に…それ以前に住んでいたマンションは
引き払っている。
 コレは、以前に彼が住んでいた部屋の方だった。
 今では決して失うことが出来ない最愛の人間に…拭い去ることの
出来ない行為を繰り返した…。

「あ、あああ…!」

 知らない間に唇から声が零れていた。
 其れは嘆き、後悔の念が現れた叫びだった。

「俺は…俺は…あんた、に…!」

 しかも部屋の中は「あの当時」を再現したものだった。
 御堂の自由を奪っていた拘束具が壁に取り付けられて…彼を
快楽で苛んでいた無数の性具が散らばっていた。
 独特のすえた臭気が部屋の中に漂っている。
 其れは克哉にとって決して忘れることが出来ない罪を示した部屋。
 幸せで満たされた日々を送っていたからこそ…半ば
忘れていたかつての鬼畜めいた己の行動。
 其れを再び思い出して、さっきまで腕の中にあった幸福が…
一片に克哉の心の中で消え去ってしまいそうだった。

「み、どう…」

 すまない、とは素直にいえなかった。
 ごめんさないだの、すまなかったなど…そんな言葉一つで流せる程…
かつて自分が犯してしまった罪は軽くなどないのだから。
 思い出せば思い出すだけ、御堂という存在への愛情があの頃とは
比べ物にならないぐらいに強くなったからこそ…その罪が一層
彼の心に重く圧し掛かる。

―そうだ、俺は一生掛けて償えないぐらいの行為をあんたにしたんだ…

 その部屋を見た時、克哉は己の罪を鮮明に思い出していく。
 幸せだった日々に忘れかけてしまっていたかつての所業を。
 決して消え去ることが出来ない過去の証が、其処に存在していた。

「俺は…本当に、何て事をしたんだろうな…」

 自嘲的な笑みが口元に知らず浮かんでいた。
 ただ一人の人間を欲しくて、その為に陥れようとした。
 自分よりも遥かに上に…高みに存在していたその人を
己の位置まで落とそうと相手を監禁して、貶め続けた。
 その行動によって御堂は十年掛けて築き上げた大企業MGNでの
部長職を失う結果になった。
 しかもあろう事か…自分がその後釜に収まり、相手の怒りを
煽るような言動を繰り返していた。
 最初は憤りに燃えていた御堂が…年月を重ねるごとに
空ろな表情を瞳を浮かべるようになり…何の反応も返さない
人形に等しくなったのはいつぐらいの事だったろうか。

「思い、出した…俺、は…あんたに…」

 再会してから十ヶ月近くが経過している。
 そして…決別してから、再び出会うまでは一年以上の時間が
過ぎている。
 合計すれば二年近くの時間が流れていたから…すでに
遠いものになっていて、忘れかけていた。
 その忌まわしい記憶も罪も、上書きして幸せなものに
する為にアクワイヤ・アソシエーションを建設してから
一緒に頑張り続けた。

(それで俺は…自分の罪を償った気になっていた。けれど…
果たして本当にそうだったのか…? 御堂は本当に俺の事を
心から許しているのか…? こんな愚かで、卑劣極まりない行為を
した俺の事を…!)

 さっきまで腕の中に抱いて、愛情を確かめ合った筈だった。
 心から愛おしいと、この人が大切だと思い知った直後に…かつての
己の罪を思い知らされたことで克哉は自分という存在が全否定を
されたような気持ちになった。
 身体が大きく震えて、情けない事にその場に膝をつきそうになった。
 それぐらいの衝撃を、すでに失われたはずの光景を目の当たりにする事で
彼は覚えてしまったのだ。
 息をする事すら忘れて、克哉は食い入るようにその薄暗い部屋の中を
見つめていく。
 その瞬間…克哉は信じられないものを見た。

―其処に立っていたのは…もう一人の自分。眼鏡を掛けていない方の
自分が…いつの間にか部屋の中心に立っていたのだ…

「お前、は…!」

―やっと思い出したんだね…かつての自分の罪を…。そうだよ、お前は
これだけ酷い事をあの人にしたんだよ…?

 いつも気弱でおどおどした表情を浮かべていたもう一人の自分が…
信じられないぐらいに凶悪な目を浮かべていきながら…こちらの
罪を言及していく。
 其れは黒衣の男が仕掛けた、罠でもあり…問いかけでもあった。

「うるさい…黙れ!」

―へえ? オレにそんな事をいう権利がお前にあるんだ…?
此処はお前の罪の証が眠る場所。…すでに現実では御堂さんが手放して
存在しなくなったとしても…お前がした事の全てが消える訳じゃない。
…お前は、容易に許されない…それだけの事を御堂さんにした。
その事は…決して忘れちゃダメなんだよ…?

 クスクスと、尋常じゃない笑みを浮かべていきながら…もう一人の
自分が断罪するように…言葉を連ねていった。
 狂気すら感じられる澄んだ蒼い双眸が…こちらを真っ直ぐに
見据えてくる。
 たったそれだけの事に、こちらは呼吸すら困難になりそうだった。

「判っている…俺は、忘れない! 忘れる訳がないだろう…!
あいつに、してしまったことを…!」

 引き絞るように声を張り上げていく。
 それは…克哉の心の中に、奥底ではずっと眠っていた…後悔の念であり
本心でもあった。
 決して得られる筈がなかった筈の愛を得られたことで…幸福を
感じながら、素直に享受することが出来ないでいた。
 何故なら…克哉の中にはずっと、かつて犯した罪の…その罪悪感が、
後悔する気持ちが潜んでいたからだ。

『にはこの幸せを受け取る権利などない…!』

 心のどこかで、自分を責め続けていた。
 其れは癒えることのない傷のように…ずっと心の奥底で血を
流し続けて存在し続けてきた思いであり、傷でもあった。
 かつての罪を喚起されて、思い知った。
 自分は…あの人と幸せになる権利など、存在しない事を。
 本当の意味で許されることなど有り得ないのだと…その重さを思い知らされる
事で確信を深めていった。

―そうだよ。やっと判ったんだ…。だってそうだろ…? お前が同じことを
されたら、相手を許せるかな…? 無理だよね? だってオレだって許すことなど
出来ないもの…。そんな事も判らなかったなんて、お前は本当におめでたいよね…?

 そして凶悪に、ゾっとするぐらいに綺麗に微笑んでいきながら…もう一人の
自分はゆっくりと克哉の方に歩み寄っていく。
 その眼差しが、澄み切っているそのアイスブルーの双眸が、今の克哉の
恐怖心を煽っていく。
 まるで己の罪の全てをその目に映して見せ付けられてしまいそうで…
本当に怖くて仕方なかった。
 だが、それでも目を逸らすことが出来ず…硬直していると…。

「惑わされるな、克哉…。其れは全部、戯言に過ぎない…!」

 不意に肩に暖かい手の感触を覚えた。

「孝典…!」

 もう一人の自分が断罪する為にゆっくりと歩み寄っている最中、
克哉の背後には…気づけば、本物の御堂が傍らに存在し、励ますように…
言葉を放っていったのだった―
 

 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7



 貪るように続けて御堂を認めて、二度目の行為を終えていくと…
二人はそのまま気だるい余韻に浸っていきながら、眠りについていった。
 深海を思わせる部屋の中で、ウォーターベッドの上に横たわって
眠っていると…本当に心地良い水の中に浸りながらまどろんでいるような
気分になった。
 水槽の向こうに広がるのは黒と藍色、そして新緑が折り重なった世界。
 しかし完全に深い眠りについている訳ではなく、浅い所で意識は留まり…
半分現実に意識を留めつつ夢の世界をさまよっているような奇妙な感覚だった。
 その時、克哉の脳裏に蘇ったのは御堂と出会ったばかりの頃だった。
 
―二年前、あんたと出会ったばかりの頃は誕生日なんて意識していなかったな…
 
 御堂との出会いは、二年前の秋の初めだった。
 その時の自分と御堂はこうやって誕生日を祝い合う間柄になど
到底なれそうになかった。
 むしろ険悪と言った方が良く…御堂は強引にプロトファイバーの
営業権を勝ち取った克哉を良く思っていなくて、順調に営業が行っている
最中に目標値をとんでもない数字に引き上げるという行動に出て来た。
 其処から、歪な関係が始まった。
 克哉が御堂を強引に犯し、その光景をビデオカメラに収めて脅迫する事で
心が伴わない肉体関係は暫く続けられていった。
 克哉はあの時期はともかく御堂を屈服させて自分の下に来させることしか
考えなかったし、御堂もまた必死に抗って…決して自尊心だけは
失わないと足掻いていた。
 決して屈しない御堂に焦れて、一度は長期間監禁までした。
 克哉のその行動によって御堂は十年掛けて築いた部長職を失うことになり、
一時は廃人になりかけた。
 ギリギリの所で克哉が己の過ちに気づいた事で…致命的な事態は避けられた。
 決別した後、御堂は自力で社会復帰を果たして…そして決別してから一年後、
再会して…こうして恋人という関係になれた。
 だが、克哉の中ではどこかですっきりしない感情が燻っていた。
 
―あんたは本当に…俺を、許してくれているのか…?
 
 アクワイヤ・アソシエーションを設立してから…御堂は仕事上でも
かけがえのないパートナーとなってくれている。
 同じ目標を抱きながら、会社の発展の為に努力している日々は心に
張りを与えてくれている。
 心の底から、この人と一緒に働けて良かったと思っている。
 だからこそ余計に…今の克哉の中では、かつてあんな行為をした自分が
この人の傍にいて果たして良いのだろうかという思いが…黒い染みのように
広がり続けて、苦しめ続けていた。
 寝返りを打って、自分の傍らに眠っている御堂の顔をそっと見つめていった。
 愛しい存在はこちらと違って…ぐっすりと眠りに就いているようだった。
 その無防備な姿を見れて…信頼されているのだと嬉しく思う反面、かつての
罪が鋭いトゲとなってチクチクと克哉を刺激してきた。
 
「孝典…あんたは本当に…俺を許してくれているのか…?」
 
 それは良く耳を澄まさなければ決して聞こえないぐらいの微かな声音だった。
 無意識の内に手を伸ばして…その頬を撫ぜていく。
 男性にしては…そして睡眠を削って連日働き尽くめになっている割には
手触りの良い肌だった。
 その瞬間…克哉の脳裏に、監禁していた頃の御堂の絶望に染まった顔と…
荒れた肌触りを思い出していった。
 
(あの頃のあんたは…本当に酷い有様だったな…。其処まで追い込んだのが…
俺だった訳だが、あの時の肌はこんな風に良い手触りではなかった…。
もっと荒れてて…乾いた感じがしていた…)
 
 人間の肌は、精神や栄養状態を表す一つの目安となる。
 これだけ多忙の状態でも今の御堂の肌の状態が良いのは…心に張りを
持って働いてくれている何よりの証だ。
 それに安堵を覚えていきながら…同時に、愛しいと思う気持ちが増せば
増すだけ…この人に以前してしまった過ちが本当に悔やまれて仕方なくて。
 こうして共にいられる事自体が一種の奇跡だと思った。
 相手の寝顔を見て嬉しいと思う反面…過去を思い出してしまった以上、
いたたまれない気がして…直視出来なくなる。
 頬をそっと撫ぜて唇を小さくついばんでいきながら…そっと身体を反転させて
起こしていくと…克哉は身繕いを整え始めていった。
 
「…眠れそうにないな…。少しこの辺りを歩いてみるか…。こんな奇妙な場所に
来ることも二度となさそうだしな…」
 
 それに一つ、克哉の中で気がかりになっている事があった。
 御堂が最初に開いた扉の事だった。
 愛し合っている最中は綺麗に頭の中から吹き飛んでいたが…何故、
御堂はあんな反応をしていたのかずっと心の底では引っかかり続けていた。
 だが…御堂の目がある状態では、間違っても勝手に開いて見る
訳にはいかなかった。
 しかし…こうして相手がぐっすりと眠っているのなら、こっそりと見に
行っても恐らく大丈夫だろう。
 
(何故…あの部屋の事が俺はこんなに気になるんだ…?)
 
 自分でも不思議だった。
 だが…どうして御堂があんな顔をしたのか知りたいという気持ちの
方が勝っていった。
 ベッドから立ち上がる寸前、御堂の方を振り向いていった。
 相手は連日の激務で疲れ果てているのだろう。
 こちらがゴソゴソやっても起きる気配を見せなかった。
 それが…克哉に小さく決意をさせる要因になっていく。
 
「…悪いな孝典。中を覗いて何があるのか確認したら…すぐにあんたの
元に戻ってくるから…」
 
 そう一言謝罪していきながら…克哉は部屋を出て、無数に並ぶ扉の中から…
御堂が最初に開いた扉を探し出していく。
 基本的に鍵を使用した扉以外はビクともしないので…幾つかドアノブを
回して確認している内にようやく…探し当てることに成功した。
 
「…恐らく、この扉だな。さて…この部屋に一体何があるんだ…?」
 
 緊張しつつ…克哉はゆっくりとドアを開いていく。
 部屋の中は薄暗く…チラっと見たぐらいでは何があるのかまったく
伺うことは出来ない。
 そうしてギイ…と軋み音を立てていきながら扉は開け放たれていき…
克哉はその奥に広がる光景を眺めて、目を見開き…そして息もとっさに
出来なくなるぐらいに驚愕を覚えていったのだった―
 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
        


 ウォーターベッドの上に愛しい人間の体を組み敷いていきながら、
克哉はゆっくりと御堂のスーツを寛げ始めていった。
 均整の取れたしなやかな肌がゆっくりと露になっていくのを愉快そうに
眺めていきながら…首の付け根にそっと己の所有の証を刻んでいく。
 
「こら、克哉…あまり痕はつけないで、くれと…あれだけ…」
 
「…すまないな。今はあんたの身体に俺の痕跡を刻みたいんだ…」
 
「…なら、あまり目立たない場所にしてくれ。仕事に差し障りが出したくない…」
 
「ああ、それくらいは心得ているさ…」
 
 御堂は仕事上、外部の会社に赴く機会が非常に多い為…見える位置に
キスマークを刻むのをひどく気にする。
 確かにそれは社会人としては正しいことだが、こうして二人きりで過ごしている
時は恋人として少し拗ねたくなってしまう。
 
(まあ…そういう処にひどく拘る部分があんたらしいと言えるんだがな…)
 
 そうして苦笑していきながら、鎖骨から胸元に掛けて唇を滑らせて軽く
啄ばんでいってやる。
 
「克哉、君も…脱いでくれ。私だけ裸にさせられるのは…嫌だ…」
 
「なら、あんたも手伝ってくれよ。俺は気を抜いたらあんたを悦くしてやる事
だけに専念しそうだからな…?」
 
「っ…! また、君はいつもそういう言い回ししか…しないんだな…まったく…」
 
 酷く低い声音で耳元で意地の悪いことを囁かれると御堂はボソっと呟いていく。
 だが、すぐに気を取り直して御堂の方から克哉の衣類を脱がしに掛かった。
 数分後にはお互いに生まれたままの姿となり、ウォーターベッドの上で
互いに向き合っていく。
 薄暗く、淡い光しか存在しない深海を思わせる部屋で…水特有の弾力を
持つベッドの上でこうして抱き合っていると確かにいつもと少し気分が違って感じられた。
 
「…何かやっぱり、いつもみたいに君の部屋で抱き合っている時とは
違って感じられるな…」
 
「あぁ、そうだな。確かにいつも同じ場所でばかりヤっているとマンネリに
なってしまうからな。たまには違った場所でするのも刺激的で良いかも知れないな…」
 
「こら! どうして君はそういう言い回ししか出来ないんだ…。もう少し、
他に言いようというものが、ムグ…!」
 
 このままではセックスではなく、軽い口論が始まってしまいそうな気配
だったので一先ず相手の唇を深く塞ぐことで克哉は本来の流れに
戻そうと試みていった。
 それは上手くいったらしく、熱い舌先を相手の口腔に滑り込ませていくと…
最初は軽く身じろぎして抵抗を試みていた御堂も、すぐに甘く絡ませ返してきた。
 ピチャクチャ…という水音が脳裏に響き渡って、互いの背筋に甘い痺れが
走り抜けていく。
 相手の胸元から腹部に掛けて手を這わせていきながら深い口付けを
繰り返しているうちに御堂の身体からは力が程好く抜けていって、
合間に甘い吐息を零し始めていく。
 
「はっ…あ…」
 
「…あんたに触れるのも、久しぶりだな…」
 
「…そう、だな…。最近は特に決算期間近だから普段以上に忙しくて…仕事
上がりに君の自宅に上がり込んでもすぐお互いに寝てしまって、セックスまで
する余裕がなかったからな…」
 
「ああ、そうだな…最近は色っぽい事から少し遠ざかっていたからな…。
だから今夜、あんたにこうして触れられるのが、嬉しい…」
 
「えっ…」
 
 克哉の言葉に少し瞠目して驚いた様子を見せたが、克哉はすぐに相手の胸の
突起を両手で攻め始めたのでそれ以上はまともに会話が出来なくなってしまった。
 最近御堂はようやく、仕事場の真上にある克哉の自宅に泊まることに抵抗は
なくなってきたようだが、こうして忙しい時期を迎えてしまうと…別に借りている
マンションの部屋に戻る時間すら惜しいという感じの方が強かった。
 御堂が泊まって、せめて寄り添って眠れるだけでも克哉としては充分なのだが…
散々そのまま一緒に暮らそうと誘いを掛けても御堂は決して首を縦に振らなかった。
 克哉の家に頻繁に泊まっているだけで疑われそうなのに、一緒に暮らして
いるとなったら流石に誤魔化しが効かなくなるから、というのが御堂の弁だ。
 克哉は一応それに納得しているが、対面よりも何よりも御堂と一緒に過ごす
時間をもう少し増やしたいという想いがある為、少しだけ不満だった。
 
「はっ…あっ…克哉…」
 
「ククッ、相変わらず敏感な身体だな…」
 
「…本当に、君という男は…あっ…もう少し、優しい事ぐらい…んんっ…
言え、ないのか…!」
 
「…俺がこういう男である事はお前は最初から承知の上だろう…? こういう
所を込みで、愛してくれているんじゃないのか…?」
 
「っ…! ったく、本当にろくでもない…男だ、なっ! はあ…!」
 
 愉快そうに微笑みながら御堂の両方の敏感な突起を刺激していってやる。
 すでに何度も身体を重ねているせいか、再会したばかりのような強ばりは
御堂からは感じられない。
 それでも自分が受けに回っているというその羞恥からか、御堂は何かを
堪えているように眉根をしかめ続けている。
 
「…そんなのは判りきったことだろう…? それよりもあんたの此処はもうすでに
こんなになって…俺の手を汚しているじゃないか…?」
 
「言う、な…はっ…!」
 
 御堂の足を大きく開かせていくと、克哉は相手のペニスをしっかりと
握り込んで執拗に扱き始めていく。
 キスや愛撫ですっかりと硬くなってしまっていた其処は顕著に反応を示していき、
あっという間に先走りで手を濡らしていった。
 
「ふっ…あっ…其処ばかり、弄るな…」
 
「ほう…? 早く恥ずかしい穴にも触れて欲しくて堪らないのか…?」
 
「っ! 君という男は…! どうしてそんな露骨な言い方しか出来ないんだ!
 はあ…うっ…」
 
 顔を真っ赤にして反論しつつも、あっという間に御堂は限界寸前にまで
追い詰められていく。
 最近、色事関係に関してはご無沙汰になっていたのも大きく関係しているだろうが…
認めるのは悔しいが、克哉の手管が優れているのも大きな理由だった。
 
(…まったくどうしてこの男は、こういう事に関してはこんなにも巧みなんだ…)
 
 心の中で毒づきながらも、耳まで真っ赤に染めて快楽に翻弄されるしかなかった。
 御堂の息遣いはドンドンと荒くなり、忙しいものへと変わっていく。
 それに呼応して…克哉の手の中に収められているペニスもまた、荒々しく
脈動を繰り返して小刻みに痙攣を続けていた。
 頭が真っ白になる感覚がして、意識が浮遊するような気がした。
 
「はっ…あっ…あああっ!」
 
 そして一際高い声で啼いていきながら、絶頂に達していく。
 克哉の青い双眸がその様子を真っ直ぐに見つめていき…それだけで羞恥で
神経が焼ききれてしまいそうだった。
 
(そんな、目で…見るなぁ…!)
 
 愛しい男の手で達する歓喜と、どうしようもない恥ずかしさを同時に覚えて
いきながら御堂は相手の掌の中に白濁を放っていった。
 
「はっ…くっ…。やっぱり…久しぶりだと、疲れるな…」
 
「おいおい…まだ、前戯が終わったばかりだろう…? こんなに早くヘタばって
しまうような年でもないだろう…?」
 
「うるさい。一応私はこれでも君よりも七歳年上なんだ。少しぐらい気遣ったら
どうなんだ…?」
 
「その件に関しては気にしない事にしますよ。気にしてしまったらあんたにこうやって
触れられなくなりそうだからな…」
 
「あっ…」
 
 そうして克哉の濡れた指先が奥まった蕾に宛がわれていく。
 たった今、御堂が放ったばかりの精が塗りつけられて…指を沈められて
じっくりと解されていった。
 何度も身体を重ねて来ているがやはり未だにこの瞬間に慣れない。
 自分が抱かれる側に、しかもそれを享受する側になるなど想像もしたことも
なかったし…今だって、多少の戸惑いは存在しているのだ。
 だが、真摯な目をしてこちらを求めている克哉の顔を見ていると…次第に、
そんなささやかな矜持はどうでも良くなってくる。
 
「…やはり久しぶりだから、硬いな…」
 
「そう、だな…。だが、今日はキチンと最後まで抱かれたい。夢の中でも、
何でもな…」
 
「ああ、俺も同じ気持ちだ…だから、ちょっと我慢していてくれ…」
 
「う、む…判った…」
 
 そうして的確に指を蠢かして、御堂の蕾を慣らしていく。
 男女のセックスと違い、男同士のセックスは潤滑剤やしっかりと解さなければ
受け入れる側に甚大な負担が掛かってしまう。
 かつてはそんな事を無視して、一方的に御堂を抱いていた時期もあった。
 だが、この人を大事にしたい今となってはそんな振る舞いは二度としたく
なかったから…克哉は丹念に時間を掛けて、自らを受け入れる準備を施していった。
 そして前立腺を何度も擦り上げて、容赦ない快楽を引きずり出していく。
 その段階にまで達すれば今度は御堂の方が懇願する側になった。
 
「克、哉…。もう、良い…大丈夫、だから…君を…」
 
「ああ、そろそろ大丈夫そうだな…抱くぞ。孝典…」
 
「ん…来い…」
 
 そうして正面から向かい合いながら…相手の身体の上に圧し掛かって、
正常位の体制で抱き合っていく。
 深く唇を重ねあい、お互いに強く抱き合いながら…克哉は御堂の中へと
ゆっくりと押し入っていったのだった―
 


  2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
      


魔法の鍵 5
 
無数の鍵穴が存在する回廊で、お互いに何個かの扉を開いていって…最終的に
深海を思わせる部屋を二人は選んで、其処を使用することに決めていった。
 室内に足を踏み入れればまさに別世界に迷い込んだような錯覚さえ覚えていく。
 どうやら部屋の天井や壁は巨大な水槽の一部のようだった。
 藍色の水の中を無数の魚達が泳いでいる姿は幻想的でもあり、実際に
深い海の底を歩いているような気分になっていく。
 照明は淡く灯されていて…部屋の真ん中には巨大なウォーターベッドが置かれていた。
 これはMr.Rが作り出した空間だという認識があるから克哉も敢えて
突っ込まなかったが…現実でこんな部屋を作ろうとすれば一体どれくらいの
費用が掛かるのかまともに考えるだけバカらしくなりそうな造りだった。
 
「…何というか、凄いな…」
 
「嗚呼、そうだな。こんな部屋で一晩を過ごすなんて滅多に体験出来ることじゃない。
現実で再現しようとすれば莫大な金が掛かりそうだからな…」
 
 そう呆れたように呟きながら克哉は御堂の腕を引いて巨大なウォーターベッドの
方へと歩み寄り、その上に腰を降ろしていく。
 それは生まれて初めての感触だった。
 水に満たされているそのベッドの感触は人間の皮膚をごく自然に受け止めてくれる
ような柔らかさと暖かさがあった。
 ほんのりと冷たい感触は心地良く、夏場とかにこのベッドの上に横たわったら
安眠出来そうな感じだ。
 
「…ほう、普通のベッドとは随分感触が違うな…。もしかしてこれはウォーター
ベッドか。…実際に使ってみたのは今夜が初めてだが…意外に悪くないものだな。
スプリングが効いたベッドとはまた違った感覚で新鮮だ」
 
「あぁ、私も使うのは初めてだが…自然な感じで体が受け止められているような
感触で良いものだな。癖になってしまいそうだ…」
 
 そうして思いがけず御堂が無防備な顔を浮かべていきながらそう言って
いったので…克哉の心臓は小さく跳ねていった。
 Mr.Rの甘言になど乗っかってしまったせいでこんな奇妙な空間に
連れて来られてしまった訳だが…ジタバタした所ですぐに現実に戻れる訳ではない。
 溜息を吐きながらもようやく彼はその事実を受け入れ始めていった。
 
(もう一度こうなってしまったのならば仕方ない…。割り切って、状況を
楽しむことにするか…)
 
 そう思考を切り替えて、そのベッドの上に二人で一緒に横たわっていった。
 お互いに身を寄せ合いながら仰向けの体制になって天井を眺めていくと…
大きな何らかの魚の影がユラリ、と揺らめいてヒレを蠢かしてゆったりと泳ぎ続けていく。
 室内は静まり返っていて、お互いの息遣いくらいしか聞こえない程だ。
 
「…まるで、本当に深海に二人でいるみたいだな…克哉…」
 
「嗚呼、そうだな…こんな風にあんたと穏やかな時間を過ごすのは…もしかしたら
初めての事かも知れないな…」
 
 ウォーターベッドはその構造上、横たわっていると浮力が働いて水に
浮かんでいるのに近い感触が得られる。
 元々、寝たきりの患者の床ずれ対策の為に生み出されただけあって人体に
自然な形でフィットしていった。
 内臓のヒーターでほんのりとマットの中が暖められていると…本当に水に
包み込まれているような気分になっていく。
 再会してからアクワイヤ・アソシエーションを設立するまで毎日が戦争の
ような忙しさであったし。
 一緒に働くようになってからもかつて憧れた相手と肩を並べたいという想いが
強くなりすぎてなかなか寛ぐことが出来なかったかも知れない。
 横に寝そべっている相手の方を向き直りながらそう呟いていくと…御堂は
苦笑しながらその言葉に頷いていった。
 
「そう、だな…。君と再会して恋人同士になってから何度も抱き合ったけれど…
こんな風に心の底から寛いで接しているのは初めてかも知れないな…」
 
 海の底を思わせる部屋には、人の心を安らげる力があるのかも知れない。
 藍色の深い闇と静寂。
 それはあまりに日常からかけ離れているせいで…そして海は母親の羊水にも
繋がっているという。
 女性の胎内を海、と例えるケースも多い。もしかしたらこんな風に寛げているのは
その効能かも知れなかった。
 
「…あんた、そういう顔も出来たんだな…。今、凄く優しい顔をしている…」
 
「何を言う。私だって…優しい顔を浮かべる時だってある。そういう君こそ…
目がいつもよりも柔らかくて、まるで別人みたいだ…」
 
 お互いに相手の顔を覗き込んでいきながら、そっと頬に触れ合っていく。
 相手の指先は温かくて、撫ぜられると心地良かった。
 
「くすぐったいぞ…克哉」
 
「俺だってそうだ…。だが、こんな風にあんたと過ごすのは…悪くない」
 
「ああ、そうだな…。もしかしたら、ここが夢の中だと割り切っているから…
少しだけ素直になっているのかもな…」
 
 そうしてフっと目を細めて笑っていく御堂の表情が愛しくて、克哉はそっと
顔を寄せていくと唇にキスを落としていく。
 ほんのりと湿っていて柔らかいその感触に欲望を刺激されていく。
 
「…孝典…」
 
「克哉…」
 
 淡い光にお互いの姿が浮かび上がっていきながら…見つめ合っていく。
 横を向いて抱き合う格好から、克哉が相手の体を組み敷いていく
体制にごく自然に変わっていく。
 ここがあの得体の知れない男が用意した空間であっても、もうどうでも
良いと思い始めていく。
 今、目の前にいる御堂の顔は優しく…寛いでいて、滅多に見れないその表情を
目の当たりにして克哉の心の中には相手を愛しいという想いだけで満たされていく。
 それだけで充分だ、と思った。
 
「ここであんたに、触れて良いか…?」
 
「愚問、だな…。今夜は私の誕生日だ…それならば、君と共に過ごしたいと…
こうして触れ合いと望むのが自然だろう…? 今の私にとって、君だけが公私共に
パートナーであり…こうして抱き合いたいと望む存在なのだから…」
 
「…っ! 最大の、殺し文句だな…。本当に最高だよ…。あんたは…」
 
 喉の奥で笑いを噛み殺して、克哉は不適に微笑んでいく。
 そうして貪るように深く唇を奪っていきながら…克哉は本格的な愛撫を、
御堂の体に施し始めたのだった―
 


2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
    


 無数に鍵穴が並ぶ奇妙な回廊にて、二人はまずは鍵を使って扉を開けて
いこうという結論に落ち着き…部屋を探り始めていった。
 まず、克哉の方の最初の扉を開いていくと…其処は宇宙空間だった。
 漆黒の空間にキラキラと星が瞬くのは見方を変えれば素晴らしいプラネタリウムと
取ることが出来るが…色んなものがフヨフヨ浮かんで漂っているのだけは
どうも頂けない。
 
「…よし、見なかった事にしよう」
 
 どうも部屋の中は無重力まで再現されているらしく家具の類がプカプカと
浮かんでいる。 
 花瓶がひっくり返っていて中にあった花が宙に散乱し、水が球状になって漂って
いる処からしてもほぼ確実だった。
 
(…趣向としては面白いかも知れない。だが…無重力の部屋で過ごしても絶対に
寛ぐことは出来ないと断言しよう…)
 
 無重力というのは特殊で効果な機材を用いて、やっと地球上で再現することが
出来るものなのに…平然とそれをやってしまうMr.Rという存在はやはり人外の
存在であるという結論に落ち着くが、どうせ部屋を選ぶなら普通に重力のある場所が良い。
 克哉はそう思い、さっさとこの部屋は対象から外していった。
 二つ目の部屋は御堂の鍵を使って、彼が選択した方を克哉も立会い
ながら覗いていく。
 其処には、天空の城の庭園が広がっていて…二人とも開いた口が
塞がらなくなりかけた。
 何て言えば良いのだろうか。
 不朽の名作に数えられる不思議な少女が天から落ちてくるあの話の世界観を
再現したような感じだった。
 しかし部屋の中に何故、広大な庭園が広がっているのか。
 そして遠くの置物には何故、映画の中に出てくる巨人兵まで存在しているのか…
これもまた突っ込みどころ満載で、とても寛げそうになかった。
 
「…佐伯、どう考えてもこの部屋は…廊下の扉と扉の感覚と無視した広さになって
いる気がするのだが…」
 
「御堂、これは最初から夢と言っているだろう。不条理なことは全てそれで片付けるんだ…」
 
 軽い眩暈と頭痛を覚えていきながら、克哉は恋人に何度もそう言い聞かせて…
この異常な状況をそれで割り切るように薦めていく。
「…うむ、確かに夢以外では説明は付かないな…。しかしどうして天空の城ラ〇ュタを
思わせる部屋などが用意されているんだ…?」
 
「その辺は俺も非常に聞きたい…。あいつの趣味というのはどうなっているんだ…」
 
 こんな異常な部屋ばかり続いていたら、とても眠れそうにない。
 克哉はこの時点ですでにMr.Rの提案になど興味を持って乗っかるべきではなかったと
後悔し始めていく。
 しかし…中にはまともな部屋の一つや二つぐらいはあるかも知れない。
 そう気を取り直して、克哉は次なる部屋を開けていくと…。
 
―目の前には樹海と、濃い霧が広がっている部屋に辿り着いて…克哉は本気でその場に
崩れ落ちそうになった
 
「…一体、どうやったらここまでリアルな樹海を部屋の中で再現出来るんだ…?」
 
「ふっ…ふふふっ…」
 
「佐伯、その笑い方は怖いから頼むから止めてくれ! 傍から見ているだけで
何となく寒気がしてくるんだが…」
 
「…はっ、悪いな。何かすでにまともに考える事すら馬鹿馬鹿しくなってきてな…。
此処にはこんな異常な部屋ばかりしかないのか…と思うと、笑いがこみ上げてくる」
 
「…佐伯、此処にはこれだけ沢山の部屋が存在しているんだ。中には…まともな
部屋の一つや二つぐらいは存在しているかも知れない。まだ…鍵の使用限度は
残っているんだ。その範囲内で一つでも普通の部屋を引き当てれば…恐らく
私達の勝ちだ。良し、次の部屋に行くぞ…」
 
 御堂とて、この状況に精神的にはかなり疲れていたが…だからと言って、
この夢がいつ覚めるか判らない以上、まずは落ち着く場所が欲しかった。
 そうして次の扉を開いていくと…今度は穏やかな森の中に、木漏れ日が
差し込んでいて…森林浴をするには大変良さそうだが、またしてもどうやって
こんな物を部屋の中に再現したんだと突っ込みたくなるような光景が
広がっていて…御堂も少し、めげそうになってしまった。
 
「…佐伯、悪い。私も今…少し精神的にめげそうになった…」
 
「…俺もだ。だが…後、俺は三つ、あんたは二つは鍵を開けられる筈だ。
その範囲内で一つで良い…どうにかまともな部屋を探していこう…」
 
 それでも暫くして立ち直っていくと、再びどの鍵穴に鍵を差し込むか
二人は真剣に選び始めていく。
 そして克哉側の三つ目になって、どうにかまともな部屋が出た。
 豪華客船を思わせる部屋と、薔薇が敷き詰められている部屋に遭遇した時…
二人は心から安堵した表情を浮かべていった。
 しかし豪華客船のスィートルームを再現している部屋の中には丁寧に
波の音まで聞こえて、室内が緩やかにゆれ続けているし、薔薇の部屋に
感じては花の芳しい匂いが充満していて噎せ返るようで…どちらも、
寛ぐことは出来そうにないと結論付けて、残念ながらこの部屋も選ばなかった。
 しかし光明のようなものは見えたのも確かであった。
 
「…いまの二つは揺れと、濃厚な匂いさえなければ今までのに比べて随分と
マシだったな。だが…もう一つぐらいは試しておこう。…割り切れば予想も
していない部屋ばかり出てくるというのも、アトラクションの一つと思えば
楽しめるかも知れないな…」
 
「まあな、そうかも知れないな。…どんなものが出てくるか判らない
魔法の鍵か…。言いえて妙だな…」
 
 そういえばあの男も、自分にここを薦める時にそういっていた事を
思い出した。
 日常では体験出来ないことがここでは出来る…みたいなことをそういえば
口にしていた気がする。
 ようやくまともそうな部屋に当たったせいか…御堂の方にも余裕が感じられた。
 その顔を見て、克哉もまた…この状況を少しは楽しむか、という気持ちになっていった。
 そして克哉の四つ目、御堂にとっては最後になる部屋をそれぞれ選んだ時…
これはどちらも今までのものに比べれば大当たりの部屋に行き当たっていく。
 克哉側は全てが白の色調で統一された…貴族の寝室を思わせる部屋。
 そして御堂の方は…深海を思わせる色合いで統一された、中心に巨大な
ウォーターベットが設置されている部屋を引き当てていく。
 これならどちらを選んでも、リラックスして過ごすことが可能そうだった。
 
「…俺の方は後一つ開けられますが…今回のはどちらを選んでも良さそうな
感じだな。孝典はどちらの部屋が良い…?」
 
「ふむ、どちらも今回に限っては良さそうな感じだが…どうせなら、ウォーター
ベッドを体験してみるのも悪くないかも知れないな。寝たことがないから…興味はある」
 
「へえ、寝たことがないから興味はあるって言い回しは…何か妙に卑猥だな。
だが…あんたがそう言うならこの部屋にしよう…」
 
「あ…」
 
 そうして克哉は御堂の手を引いて、深海を思わせる部屋を選んでいき…
静かにその室内へと足を踏み入れていったのだった―
 
 
 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
  

-あんな男の事などやはり信用するんじゃなかった
 
 佐伯克哉は目覚めた瞬間、謎の空間にいつの間にか移動させられている
現実を把握すると同時に心底そう感じていった。
 どうやらどこかの城の回廊か何かのようだ。
 異様に長く広い廊下には無数の扉と、鍵穴がズラリと並べられている。
 扉の数は優に50は超えていて、こうしてみているだけで圧巻ものだった。
 
「ちっ…一体、ここは何処なんだ…! …っ! 孝典、しっかりしろ…!」
 
 霞掛かった頭で、ぼんやりと周囲を見回していくと…自分のすぐ傍らには
御堂が倒れて意識を失っているようだった。
 慌てて駆け寄り、抱き起こしていくと…克哉の腕の中で小さく呻き声を
漏らしていく。
 
「…良かった、外傷等はないようだな…」
 
 その事実に心からの安堵を覚えていく。
 周囲は薄暗く、壁の高い所には蜀台が取り付けられていて…蝋燭の炎が
怪しく揺れている。
 本当に古い時代の貴族か…王族達が住む城、そういった雰囲気が漂う場所だった。
 
(あいつは一体…俺達をどこに連れて来たんだ…? まったく見覚えが
ない場所だぞ…?)
 
 あの男が絡むと超常現象や、有り得ないことが起こるのが最早当然になる
訳だが…意識を失う前までは自分たちは間違いなくオフィスにいた筈だ。
 果たしてどのような手段を用いて自分たちをここまで運んだのか疑問は
残るところだが、あの男に関することは深く考えないようにすることが精神衛生上
宜しい…とすぐに気持ちを切り替えて、克哉は現状の把握の方に重点を置いていった。
 無数の鍵穴と、扉…これはあの男から先日渡された鍵で恐らく開くものだろう。
 何が現れるか、出てくるか判らないという点では…確かにサプライズ感や
ドキドキは存在している。
 
(さて…鍵を使って開けてみたら…魑魅魍魎(ちみもうりょう)か…鬼か蛇が
出るかといった所だな…。さて、これからどうするか…)
 
 御堂の身体を軽く抱き上げていきながら周囲に目を凝らしていくと…
腕の中の恋人は小さく呻き声を漏らしていく。
 
「ん…ここは、一体…どこだ? 私はどうして…?」
 
 御堂もまた、現状の把握がイマイチ出来ていないようだった。
 しかし…本当の事を言って良いものか克哉は悩んでいく。
 Mr.Rに関係する事や、現状を説明したとしても相手に信用してもらうのは
かなり難しいことだろう。
 しかもここでこの後、どれだけ非常識なことが起こるのか予想もつかない。
 だから克哉は先手必勝とばかり…先にこう言っておいた。
 
「…御堂、どうやらここは夢の中らしい。そして俺達は…今夜に限っては偶然、
同じ夢を見て共有している。だから…どんな事が起こっても、夢の中だから
不思議はないとでも思っていてくれ…」
 
 そう、夢の中…これほど都合の良い、言い訳は存在しないだろう。
 漫画や小説、ドラマや映画の世界でもオチでこれが使われた作品は
無数に存在している。
 都合の悪いことや辻褄の合わないことだってこの一言が前置きにあれば
必要以上に突っ込まれないで済む一言を真っ先に克哉は言い放っていった。
 
「夢…? そうか、そうだよな…。さっきまで私は君と確かにオフィスで
一緒に働いていた筈だからな。どのような手段を用いろうとも…簡単に
大の男二人をこんな場所まで運ぶのは難しい。…納得いかない部分もあるが、
君のいう通り…知らない間に眠りに落ちて…夢を見ているというのが
確かにしっくりは来るな…」
 
 御堂の方も全てを鵜呑みにするのは納得がいかなそうだったが…とりあえず
半信半疑で克哉の言葉を受け入れていく。
 そうして腕の中から抜け出て、御堂がヨロヨロと身体を起こしていくと…
周囲を確認するように見回していく。
 
「…何でこんなに、無数の鍵穴が存在しているんだ…?」
 
「…どうやら沢山の部屋が用意されているらしい。一応…この鍵で5個まで、
扉を開くことが出来るらしいがな…」
 
 そういって克哉は先日、黒衣の男から渡された鍵を見せていく。
 御堂はそれを興味深そうに見つめていった。
 
「…五個まで、とそう制限があるのか…? なら、どちらかが二個、もう一方が
三個…選んで鍵を開けていくのが妥当なのか…? おや…?」
 
 相手から鍵を見せられた直後、突然…御堂の上着のポケットに何かが
入って来た感触がした。
 違和感を覚えて手を差し入れて確認していくと…其処には小さく折りたたまれた
手紙と、克哉が今持っているのと同じ鍵が入っていた。
 
『お誕生日おめでとうございます。貴方にとって今宵が楽しい一夜と
なりますように…心から祈らせて頂きます。   
                             当館の主 Mr.Rより』
 
 そう記されていた一文を読むと…御堂は怪訝そうに眉をひそめていった。
 
「何だこの手紙は…いつの間に入れられていたんだ…?」
 
「…御堂、だから言っただろう。これは夢の中だと…多少不可解なことでも
そう割り切ってしまえば大丈夫だ…」
 
 克哉は基本的に極めて現実主義者で、日頃ならば夢だ何だ言うようなことは
決してないが…Mr.Rが関わっている時のみ、非現実な事は当然と割り切るように
いつのまにか思考回路が出来上がっていた。
 もう招かれてしまったのならば仕方ない。
 開き直って現状をそれなりに楽しんでいくしかないと想い…もう一度、
そう説明していく。
 
「…うむ、納得はいかないがな。まあ…とりあえず試しにこの扉でも
開いてみるか…?」
 
 無数に並んでいる扉はどれも同じデザインをしていて外見上では
区別がつかない。
 だが、御堂は…一本だけ頭上の蝋燭が消えかけている、それが目印に
なるであろう部屋を選んで鍵穴に鍵を差し込んでいった。
 
「…開いたな、さて…中を確認してみるか…」
 
 その部屋は薄暗く、軽く覗き込んだだけでは様子が判らなかった。
 闇に目が慣れる頃までジっと見つめていくと…すぐに顔色が変わり、
扉を勢い良く閉めていく。
 
 バタン!!
 
 御堂に習って、自分もどの扉を試しに空けてみようか迷っていた克哉は
慌てて音がした方を振り返って声を掛けていった。
 
「御堂、どうした…? 大丈夫か…!」
 
 血相を変えて克哉が問いかけていくと、御堂は蒼白になりながら…
それでも気丈そうな様子を取り繕って返答していった。
 
「だ、大丈夫だ…予想外のものを突然目の当たりにしてびっくりしただけだ…。
とりあえずお互いに鍵の使用限度まで扉を開けて、どんな部屋があるのか
確認していこう…」
 
 そうして御堂が無理に微笑みながら答えるのを見て、胸騒ぎを覚えたが…
彼がこういう表情を浮かべている時はこちらにそれ以上、問いただされたくない
事だというぐらいはすでに判っている。
 
(これは…今は無理に聞かない方が良さそうだな…)
 
 そう判断し、克哉もまた何でもないような顔をして返答していった。
 
「判った…それなら、お互いに鍵を使って部屋の中身を確認していこう…」
 
 そう頷き、克哉は五つの扉を物色しながら…開いていくことにした。
 御堂が最初に辿り着いた部屋が一体何を暗示していたのか…まだ、この時点では
知る由もなく…この奇妙な回廊をゆっくりと探り始めていったのだった―
 
 
 

 ※この話は2009年度の眼鏡×御堂の誕生日話となります。
 カレンダーの日付等も2009年のを使用しています。
 そしてややファンタジーというか、不思議な要素が入り混じるお話ですが
この三点をご了承の上でお読み下さいませ~(ペコリ)

 魔法の鍵  

―Mr.Rから渡された鍵を使用するか否か、必死になって考えている内に
あっという間に一週間が過ぎ、ついに克哉は恋人の誕生日当日を迎えてしまっていた。
 
(ついにこの日が来てしまったか…)
 
 アクワイヤ・アソシエーションのオフィスで、御堂と二人で就業時間後も業務を
こなしている内に…どっぷりと日は暮れてしまい、代わりの物を手配出来ずじまいに
なってしまっていた。
 本命であった御堂の生まれ年のヴァンテージワインは、結局水準を超える物が
オークションには出ず、諦めるしかなかった。
 贈る以上は絶対に御堂に喜んで貰える物を、という気持ちがあるせいか中途半端な
物を選ぶ気にはとてもなれず…完璧にこだわってしまったせいで、逆に何も用意
できてない状況に陥ってしまった。
 
(さて、どうするかな…。せめてこの近くの貴金属店にでも行って、ネクタイピンや
カフス、腕時計の類でも選んで購入するか…?)
 
 かなり間に合わせになってしまう事は否めないが、このまま大切な人間の誕生日を
黙ってスルーしてしまうよりはマシだろう。
 そう考えて、克哉は仕方なく妥協をする事を決心した。
 今夜、これから急いで駆け込めば明日、当日には確実に御堂に
手渡す事が出来る。
 そう考えて、克哉は顔を上げて…隣のディスクで熱心に書類に向き合っている
御堂に声を掛けていく。
 
「御堂…これから、30分くらい席を外す。出来るだけすぐに戻ってくる
予定だから…待っててくれ」
 
「…この時間から用事か? 珍しいな…そんなに時間の都合がつかない
クライアントでもいたのか?」
 
「いや、ちょっとした俺個人の私用だ。今夜中に済ませておきたい事が
出来たのでね…」
 
「そうか、判った。私の方は君が戻って来るまでここで待っている。もう少し
この件を整理しておきたいからな…」
 
「すまないな。それじゃあ行ってくる…」
 
 御堂に対して柔らかく微笑みながら克哉はそっと椅子から
立ち上がっていった。
 春の一件を経てから、自分たちの関係は随分と安定してきていた。
 その前までは薄氷の上にギリギリ成り立っているような危うい部分が自分たちの
間にはあったが…雨降って地、固まるとは良く言ったものだ。
 澤村の一件は本気で腹を立てたが、それを乗り越えた事で自分たちは相手に
対して信頼出来るようになった。
 それが自分たちの間にあった危ういものを払拭出来たと克哉は感じていた。
 
(…こういうやりとりも、悪くないものだな…)
 
 この忙しい中で30分抜けると言っても、特に細かく詮索せずに送り出して
くれることが嬉しかった。
 軽くほくそ笑みながらオフィスを後にして、エレベーターに乗り込んで下に降りて
ビルを出ようとした矢先に、克哉はぎょっとなった。
 漆黒のコートに目にも鮮やかな長い金髪。
 そして独特の空気を感じ取って克哉は確信していた。
 
「貴様…どうして、ここにいる…」
 
「おや、克哉さん。一週間前に例の鍵を渡した時にお伝えしたでしょう…? 
当日にお迎えに上がりますと…」
 
「…俺はこの件でお前に協力を仰ぐつもりはない。お引き取り願おうか…」
 
 この男相手にはともかく強気で応対しなくてはならない。そう直感的に察して
克哉はきっぱりと相手の申し出を拒絶していく。
 だが男はそんな彼の様子を愉快そうに眺めてきた。
 
「…強がりを言っても私の前では無駄ですよ…。貴方がちゃんと御堂様に
相応しいプレゼントを用意されていたのならばこんなに差し出がましい真似を
しませんでしたけどね…。愛しくて堪らない方と恋人同士になり、初めて迎える
御堂様の生誕日…。それを適当な物で妥協されて貴方は本当に後悔しませんか…?」
 
「くっ…!」
 
 その一言を言われると、こちらはそれ以上反論が出来なくなってしまった。
 相手の言う通りだった。ワインをメインに扱っているオークションサイトの
品ぞろえの悪い時期に当たってしまって、求めていた物をこちらが
得られなかったのは確かだからだ。
 
「…貴方に一週間前に渡した鍵を使えば、少なくとも一生の思い出になるとは
思いますよ。滅多に出来る経験ではないですしね。遊園地のアトラクションの
一つ程度に据えれば良いんですよ…」
 
「アトラクション、か…」
 
 本能的にこんな怪しい男の言葉に乗ったら確実にろくでもないことになりそうなのに…
そういわれてしまうと心が動き始めている自分がいた。
 こちらの心が動き始めているのが判ったのだろう。
 克哉が沈黙していくと…対照的にMr.Rは愉快そうに微笑み始めていく。
 
「…ふふ、心は揺れ動き始めているみたいですね…」
 
「…本当に御堂を楽しませたり、驚かしたり出きるんだろうな…?」
 
「えぇ私はそういうことでは嘘は言いませんよ。少なくとも確実に御堂様を
びっくりさせることだけは出来ます。それは保障しますよ…」
 
 そう言われて…スーツの上着ポケットの中にひっそりと忍ばせていた例の鍵を
無意識のうちに握り締めていく。
 その冷たさと金属特有の冷たさを指先で感じて…克哉は決心していく。
 
「本当に…大丈夫なんだろうな?」
 
「えぇ…私を信じて下さい」
 
「…さりげなく困難なことをこちらに要求してくるな」
 
 黒衣の男からの友好的な笑みと言葉を克哉はばっさりと断ち切りながら、
言葉を続けていく。
 
「…なら、この鍵を使う場所にはどうやって連れていくつもりだ…?」
 
「…そうですね。後、一時間もしたら御堂様の仕事の方も片付くでしょうし…その頃を
見計らってお迎えに上がります。お二人はオフィスにいて下されば結構ですよ…」
 
「…そうか。なら待っている事にしよう」
 
「はい、期待して待ってて下さいませ…」
 
 男の物言いに物凄い不安を覚えていくが、一度決めた以上…これ以上
疑ったり、ガタガタ文句を言っても仕方がない。
 克哉がうなずいていくと恭しく黒衣の男は頭を下げていき…そして踵を返して、
悠然とその場を立ち去っていった。
 
「…本当に、大丈夫なんだろうな…」
 
 克哉は一抹の不安を覚えつつ…どうしてあの男の口車に乗って頷いて
しまったのだろうかと早くも後悔し始める。
 だが、一度決めた以上ジタバタするのは情けなかった。
 
「腹を括るしかないな…」
 
 そして暫く時間が経過してから、短くそう呟きながら…克哉は
覚悟を決めていったのだった―
 
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派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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