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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※先日、某所で御題を引いて書き上げた作品です。
 内容は「鬼が泣く」にちなんで=鬼畜が泣くというイメージで
仕上げてみました。 一先ずこれを投下させて頂きます。
 切ない話なのでご注意下さいませ(ペコリ)
 


 ―暗い部屋の中で、男は一人…跪いていた。
 
 目の前に横たわるのは、壊れた人形のようになっている一人の男。
 端正な顔立ち、均整の取れた肢体。
 かつては…傲慢に、輝くように多くの人間の上に立っていた一人の男は…
虚ろな表情のまま、今日も…ベッドの上に横たわっている。
 
 御堂孝典。
 かつて彼が憧れ、手に入れたいと心から焦がれた存在。けれど…
今は、長く続いた責め苦と陵辱の日々の果てに…心を壊してしまっていた。
  
 時刻は深夜。
 部屋の明かりは消されて、室内には静かな月明かりだけが差し込んでいる。
 煌々とした透明な光だけが一筋、静かに差し込んでくる中…うっすらと
シーツの上に横たわっている男の姿が浮かび上がっていく。
 
「…御堂」
 
 静かに、佐伯克哉は…その相手の名を呟いていく。
 だが、彼は答えない。
 
「…御堂」
 
 もう一度、静かに呼びかけていく。
 だが…御堂は、それでも反応しなかった。
 いや…彼が壊れてしまってからすでに十日以上が過ぎている。
 けれど、どれだけ克哉が呼びかけようとも…どんな仕打ちをしようとも、
彼は決して答える事はなかった。
 
(あんたは…本当に壊れてしまったのか?)
 
 激しい焦燥に駆られながら…無意識の内に胸を掻き毟るような仕草をしていく。
 …その顔には、深い苦悩が刻まれていた。
 
 横たわり、微動だにしないその人の肌は…透き通っているかのように白くなっていた。
 その頬を、慈しむように克哉は撫ぜていく。
 
「…もう、あんたがこうして…何も言わなくなって十日余り、か…」
 
 切ない表情を浮かべながら、克哉はしみじみと呟いていく。そっと…
ベッドサイドに腰をかけていって、その頬や髪に静かに触れていく。
 
 相手が壊れたと、追い詰めたと…あの時、どこかで判っていた。
 なのに…自分はその事実を認めなかった。
 御堂が、怯えて…「助けてくれ!」とうわ言のように繰り返していた日。
 あの傲慢で気高かった男が、ここまで墜ちたしまったその姿を見て…
薄々と己の過ちに気づいていた筈なのに、それでも目を逸らして…
一層、彼を追い詰める行為を行ってしまった。
 
―その日から、御堂の瞳はガラス玉のように無機質になり、
何も映さなくなってしまった。
 
 今の御堂を形容するなら「壊れた人形」
 そうとしか言いようのない状態だった。
 自らの意思で身体を動かすことも、言葉を紡ぐことも止めた御堂は…
本当に人形のようで。
 元々、風貌が整った男だから…特にそう感じられる。
 
「なあ…御堂。一言で良い…憎しみでも、俺を詰る言葉でも良い…。
どうか、前みたく…何か言ってくれないか…?」
 
 御堂の唇を、そっと指先で慈しむように辿りながら問いかけていく。
 だが…その瞳には何の感情もなく、鏡のように窓の向こうに浮かぶ
月を映していた。
 
「…なあ、答えてくれないか…?」
 
 その声には、哀切なものが混じり始めている。
 後どれぐらい…こうして、何も言わないこの人の傍で…独り言に近い言葉を
投げかけていくのだろうか?
 ゆっくりと、相手の顎や頬のラインを辿っていく。
 けれど…それでも、何の反応はなかった。
 
「…なあ、本当に…俺を罵る言葉で構わない…。あんたの声を、
聞かせて…くれ…!」
 
 気づけば、耐え切れないとばかりに…声を荒げて…相手の唇に
噛み付くように口付けを落としていた。
 激しく、相手の口腔を犯すように貪っていく。
 熱い舌先を侵入させ、荒々しく犯して…深く舌先を捉えていった。
 だが…相手は、何の反応も示さない。
 どれだけ強い刺激でも、快感でも…すでに感じる心が今の御堂には
ないのだと…その事実を、今夜も…思い知らされていく。
 
「ふっ…」
 
 唇を離した瞬間、二人の唇の間から銀糸の糸が伝って月明かりに
照らし出されていく。 
 だが…それでも、腕の中のこの人は何も言ってくれない。
 反応すら…すでにしてくれない。
 それで、やっと思い知る。
 …自分がしてしまった過ちの重さを。
 そして…本当の気持ちに、嫌でも気づかされていく。
 
「はっ…ははははっ…」
 
 乾いた笑いが、唇から零れていく。
 こんな現実を突きつけられて、やっと判るなんて…何て自分は
愚かな道化だったのだろうか。
 胸があまりに切なくて…苦しくて、息をする事すら辛いような…
そんな心境に陥っていく。
 悲しくて、辛くて…知らぬ間に、ツウっと一筋の涙が零れていった。
 
 かつて、鬼畜の限りを尽くした…まさに鬼のような男が、本心に気づいて…
真実の涙を零していく。
 一粒、二粒と…まるで真珠のように、キラキラと月明かりに照らされて…
御堂の頬に落ちていく。
 
「あぁ…そうか、俺は…あんたを、好き…だったんだ…」
 
 その事実に、ようやく気づいて…そっと目を伏せていく。
 そして…その身体を強く強く抱きしめて、その首筋に顔を埋めていく。
 
 慟哭と呼べるほどの悲しみを覚えながら…声を必死に殺して泣いていく。
 …それは鬼が心から哭いた夜。
 
 その中で己の想いにようやく気づいた男は…ただ、強く強く…御堂孝典と
いう存在を、強く抱きしめて…己の罪を悔いていく。
 
―どうか願わくば、この人が以前のように輝いて欲しいと
 
 強くそう願いながら…克哉は静かに、涙を零し続けていったのだった―
 
 
 
 
 
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 とりあえず一日遅れになりましたが…御堂さん誕生日祝いSS、
眼鏡×御堂編の方をアップさせて頂きます。
 …え~と、絵チャに行って絵師様六人、文章書き五人な状況だった為に
もう一本私が書きます…と言ったので後日、ひょっこり某所で書いてアップして
いるかも知れませんが宜しく(汗)

 という訳でもう一本、眼鏡×御堂の方は書き上げます。
 …リセットの続きは一先ず、明日から開始しますのでご了承下され。
 無謀なことばかりやっている管理人ですみません。はい…(汗)

 興味ある方だけ「続きを…」をクリックしてお読みくださいませv
  以下に記してあります(ペコリ)
  本日は連載、一回お休みです。(明日中に続きはちゃんと書きます)
 代わりに日頃お世話になっているむいさんの誕生日お祝いSSを
書かせて頂きます。
 どのCPの連載を書いていても、いつも感想をチョコチョコ寄越して下さって
有り難うございました。
 特に2~4月くらいは自信喪失が酷かったので非常に励みになったので
ささやかですが、その時のお礼です。
良ければ受け取ってやって下さい(ペコリ)

 …いや、本当は連載とお祝いSSを両方書ければ良いんだろうけど
ぶっちゃけそこまで現在余裕がありませんので(ル~ルル~)
 メガミドの『花』をテーマにしたちょっとほのぼのチックなお話です。
 最後に…むいさん、お誕生日おめでとう~!
 …一日遅れの掲載になってしまってすみません~(ペコペコ)

『紫陽花』

  六月の週末の夜の事だった。
 御堂孝典は山のように積んであった仕事をようやく片付け終えると…ほう、と
安堵の溜息を漏らしていった。
 休日の前日という事もあって、忙しくても皆…残業のせいで遅くなるのは
嫌みたいで、本日…オフィスに残っている人間はすでに彼一人だけになっていた。

(やっと終わったな…)

 本日は一日中、雨がシトシトと降っていた為にデスクワークを中心に
業務をこなしていたが、最近…上昇企業の一つとして数えられるようになってきた
アクワイヤ・アソシエーションはそれこそやるべきこと、こなしていかなければ
ならない仕事は山積みになっていた。
 
「まだ、雨が降っているな…」

 しみじみと呟きながら、椅子の上で大きく背伸びしていく。
 打ち込み作業等は午前中に片付けたので、午後からは一日…必要な書類に
目を通したり、確認作業をし続けていた。
 おかげで身体のアチコチが硬く、この後に約束さえなければそのまま…
スポーツジムの方にでも赴きたいくらいだった。
 腕時計を見て確していくと、すでに20時を軽く過ぎていた。
 御堂の雇い主兼恋人でもある佐伯克哉が…自分が担当していた仕事を片付けると
さっさとこのオフィスの上にある住居へ戻っていったのが19時になった直後の事だ。
 一時間程前に立ち去っていった恋人の事を思い出すと、ふう…と溜息を突きながら
机から立ち上がっていった。

「さて…そろそろ向かうか。モタモタしていると…佐伯は恐らくスネるだろうしな…」

 軽く微笑みながら、自分の恋人が上の階で待っていてくれている姿を想像していって
知らず御堂は微笑んでしまう。
 …そう、克哉は仕事をしている時は冷徹で自他ともに厳しくて有能な男の癖に
私人として自分と一緒に過ごしている時は、案外単純な事でスネたり…やたらと
御堂と一緒に過ごす時間が他の雑事によって削れてしまうのを嫌がる部分があった。
  
(まったく、あいつにも困ったものだな…)

 と考えつつも、つい笑ってしまう。
 自室で、こちらの事を考えながら克哉がどのように過ごしていたのか…想像を
巡らせると少しだけ楽しかった。

「さて、と…そろそろ行こう」

 そうして御堂は、自分のディスクの上を片付け始めていく。
 その様子はどこか、ウキウキして楽しげだった―

                               *

 エレベーターに乗り込んで、彼の住居があるフロアに降り立っていくと…合鍵を
使って中に入っていった。
 以前はインターフォンを押して克哉本人に開けて貰っていたが…彼がいつかに
「あんたと俺は他人じゃないんだから、自由に入っても構わないんだが?」という
発言を受けてから、自然とこうやって中に入るように代わっていった。
 実際、そうやって入るようになってから…克哉は克哉で、自分が来るまでの
時間をマイペースに過ごしながら待ってくれている事を知ったので、出来るだけ
自分が来る直前まで彼に自由に過ごして貰いたいので…御堂自身もこうやって
出入りする事に今では躊躇いがなかった。

 扉を潜って中に入っていくと…丁度良い室温と湿度に保たれた空気に
フワリ、と包み込まれていく。
 どうやら温度は弄らず、空調で除湿だけしているらしい。
 ジトジトした感じがあまりせず、サラリとした空気に包まれていくと何となく
心地良さでホッとしていった。
 廊下を歩いていくと、丁度バスルームの方から水音が聞こえてくる。

(シャワーを浴びていたのか…)

 それに気づいた時に、やっぱりインターフォンを押さなくて良かったと思えた。
 元々、自分も彼もシャワー党なので入浴時間は大体10~15分で終わってしまう。
 その短い時間を邪魔せずに済んで良かった…としみじみ思いながら御堂は
リビングの方へと向かっていった。
 其処で彼が上がってくるまで待っていよう。そう考えて向かっていくと…。

「はあっ…?」

 少しだけ意外な物を発見して、つい驚きの声が漏れてしまった。
 部屋の真ん中。ソファの前の大理石で作られた膝丈くらいのシンプルなデザインの
机の上に…花瓶が置かれていた。
 其処には目にも鮮やかな紫掛かった藍色の紫陽花の花が生けられていた。
 うっすらと露に濡れたそれは強い存在感を放っていて、思わず見惚れるくらいに
鮮烈な美しさを放っていた。
 別に部屋の真ん中に花があるくらい、普通なら驚くことではないのかも知れないが
佐伯克哉という人間はよく言えば合理的。悪く言えば無駄なものはすっぱりと切り捨てる
ような性格の持ち主だった。

 それはこの部屋の内装にも良く現れていて…すでにここに引っ越してから半年は
経過しているというのに相変わらずこの部屋の中は無駄な物は殆どなかった。
 無機質な内装、整然とした雰囲気を讃えた室内。
 まるでモデルルームのように綺麗に片付かれた室内に、花という暖かなものは
酷くその空間から浮き上がっているように感じられた。

「…佐伯の部屋の中に、花が飾られているなんて珍しいな…」

 オフィスには、部下の中に女性がいるおかげでアチコチに花が飾られているのだが
克哉の部屋に今まで、花の類が生けられていた事などまったくなかった。
 彼自身がそういう事に気を配るような性分でない事は…見ていれば充分過ぎるくらい
判るので本当にこれは意外だった。
 つい珍しくて…ジロジロと紫陽花の方を見てしまう。
 花と克哉、実にミスマッチな組み合わせだ。
 それなのに…知らない内に釘付けになってしまっていた。

(そういえば…最近、こうやって花なんて眺めている余裕なかったな…)

 二人で会社を興してからというもの、軌道に乗ってからは毎日が忙しくて、
同時に充実もしていたから…久しく花を眺めてゆっくりすることなどなかった
ように思う。
 今の会社もMGN時代も、受付や職場内に女性社員達が気を利かせてくれて
いるのか…目の端に花は常に存在していた。
 だが、それをじっくりと見ていた事など殆どなかったことに気づいていく。

(…綺麗な藍色だな…)

 ジイっと眺めていると、ふいに紫陽花がガサゴソ動いている。
 一瞬、ビクっとなってしまったが…いきなり藍色のガクと丸いノコギリのような
ギザギザの葉っぱの隙間から…一匹の小さなカタツムリが姿を現していった。

「カ、カタツムリ…っ?」

 一瞬、何でこんなのが…という思いもあったが、それは本当に小さな個体で…
可愛らしい印象があった。
 紫陽花の上を一生懸命這いずり回っている様はけなげというか、妙に
見ていて和む光景だ。

「妙に風情があるな…」

 これが大きな奴だったら、グロテスクに感じられたかも知れないが…子どもの
カタツムリなら軟体生物特有の触覚や、ヌメヌメした姿もあまり気にならない。
 机に肘をついて…何気なくその光景を眺めていくと、ふいに背後から
抱き締められていった。

「なっ…!」

 突然の事態に、一瞬身構えていくと首筋に柔らかい感触を覚えていった。
 自分にこんな真似をしでかす男はこの世に一人しか存在しない。
 御堂の恋人である、佐伯克哉の仕業であった。

「…孝典、すっかり紫陽花に魅入っていたみたいだな。背後が隙だらけ
だったぞ…?」

 シャワーから上がったばかりのせいか、克哉は上半身にYシャツを羽織った
だけのラフな格好をしていた。
 フワリ、と湯上りの良い香りが漂ってきて妙に意識をしてしまう。
 振り返ると、色素の薄い髪にはまだ雫が滴っていて…普段よりも彼を
艶っぽい印象にしていた。

「だ、だからって人の不意を突かなくっても良いだろうが…! まったく、君と
いう男はどこまで意地が悪いんだ…。驚いただろうが…!」

「そういうな…。ぼんやりと紫陽花と戯れていたあんたが可愛らしくてな。
つい悪戯したくなってしまった…」

 そんな事をサラリと言ってのける恋人を問答無用で睨みつけていく。
 御堂の気丈な態度に、克哉は満足げに微笑んでいきながら…頬にキスを
落としていった。

「ふん…」

 片目を伏せながら、それでも特に抵抗せずにそのキスだけは受けていく。
 そうしている間に優しく髪を梳かれてしまって、少々戸惑っていった。
 …少し癪だが、こうされているのはひどく心地良かったから―

「…何故、紫陽花なんて置いてあったんだ。君が花の類を…部屋の中に
飾っているのなど初めての事だったから少し驚いてしまった…」

「…俺にも良く判らない。ただ…あんたの分の夕食も作ろうとスーパーに
赴いた帰りに、この紫陽花が歩道に投げ捨てられていてな。
 何か小さなカタツムリが必死になってその上を這いずり回っている姿を
見ていたら、何故か放っておけない気分になって持って帰って来てしまった…」

「…克哉。お前もしかして…何か悪いものでも食べたのか? 何と言うか…
普通の人から見たら美談なのだが、君がそれをやると…正直言うと
イメージに合わな過ぎて、どう返答すれば良いのか判らなくなるんだが…」

「…悪かったな」

 明らかに克哉が憮然とした表情を浮かべていくと、少し悪かったかなという
気分になったのか…御堂がためらいがちに瞳を細めてくる。
 …そう、自分でも全然らしくない行動を取ってしまったと思う。
 だが、その光景に遭遇した時…もう一人の自分が「家に連れて帰ってあげようよ…」
とやたらとうるさかったのだ。
 普段は自分の中で眠っていて大人しくしているのだが…何かの拍子に向こうと
意識が繋がる時があるらしく、今日たまたまそれが起こっただけの話だ。

「悪くない…むしろ、逆に君にもそういう人間らしい暖かい心があったんだな、と
少々感心しただけだ…」

 そう言いながら、御堂が悪戯っぽく笑ってみせる。
 普段気難しい表情ばかりしている彼が、こんな顔を見せることなど滅多にない
レアな事であった。
 さっきの紫陽花を眺めていて隙だらけになっているのも…珍しい姿だった。

「ほう? そんなに俺は冷たい心の持ち主であるというのか…?」

「あぁ、かつてはな…。だが今は随分暖かくなったものだな…と思っているぞ?」

 そういって彼は楽しげに笑っていった。
 今日はいつになく、御堂の表情が豊かなように感じられた。
 その変化につい目を奪われていきながら…自分もカーペットの上に膝を突いていって
御堂の唇にそっとキスを落としていく。
 何度かついばんでいくように、唇を重ね続けていくと…首筋に御堂の腕が
絡まって互いに抱き合う体制になっていった。



「んっ…」

 こちらの腕の中で、御堂が甘い声を漏らしながら身を委ねていく。
 相手の無防備な姿に、つい顔が綻んでいくような想いがした。

「…孝典。このまま触れ合うのと…夕食と、どちらが先が良い…?」

 ほんの少しだけ唇を離していきながら、口元に吐息が感じられる距離で
そっと尋ねていく。

「…この体制では、聞くまでもないと思うがな…?」

 強気に微笑みながら、ペロリ…と相手の口元をそっと舐め上げていく。
 独特に甘い感覚に、軽い酩酊感すら覚えていった。

「そうだな…確かに、質問するまでもなかったな…」

 ククっと笑いながらさりげなくソファの上に誘導していって、その腰を
抱いていく。
 克哉の掌が気づけば、こちらの背中を優しく撫ぜ擦っていた。
 その快い感覚に、御堂はうっとりしそうになってしまった。 
 静かにソファの上に横たえられて、克哉に組み敷かれていく。
 
 今夜の彼の顔は、どこか柔らかかった。
 恐らくこちらの顔も、普段よりも綻んでいる事だろう。
 特に抵抗することもなく大人しく身を委ねていくと…そっと静かに
目元にキスを落としていった。

「…何か、今夜の君は凄く優しい…な…」

「そうだな。俺も少しだけ、そう思う…。普段なら愛しいあんたが目の前にいれば
苛めてどこまでも啼かせたいという欲求に駆られるが、今夜は何故か…凄く
優しくしたい気持ちになっている…」

 そんな自分に少し驚きながらも、もう一つ…御堂の唇にキスしていく。
 恋人らしい、甘ったるい戯れの時間だった。
 もしかしたら…それは、小さな花の効能なのかも知れなかった。
 花や自然は、人の心を和ませると良く言われる。
 慌しい日々を送っている中、小さな生き物や自然の美は…人の心を潤して
余裕を齎してくれるものだ。
 
「…珍しいな。そんなに優しい気持ちになっている君など、ついぞ…遭遇した事が
ないから、凄く見てみたいな…」

 促すように、相手の頬を御堂の方からも静かに撫ぜていく。
 重なる部位から相手の温みをしっかりと感じ取って…お互いにクスクス笑っていく。
 空腹感は確かにあったけれど、それよりも遥かに強い気持ちで…相手が欲しくて
堪らなくなっていた。

「あぁ、俺も珍しいと思う。今夜のあんたは…貴重なものが見られると思うぞ…」

「そうか…それは、楽しみだ…」

 そういって相手の重みがしっかりと身体の上に感じながら…深い口付けを
交し合った。
 何となく今夜は、室内の雰囲気もどこか柔らかくて穏やかなものだった。
 その空気に包み込まれていきながら、御堂はそっと克哉の腕に身を
委ねていく。

「克哉…」

 愛しげに、自分をこれから抱いていく恋人の名を囁きながら…しっかりと
その首に抱きついていく。
 視界には、フイに…鮮やかな藍の紫陽花の花が飛び込んできた。

(…こんなに穏やかな君を見る事が出来るなら、花を飾るというのも…
たまには悪くないかもな…)

 確かに苛められるように抱かれている時、自分は確かに深く感じているけれど
今日みたいに忙殺された日は…こうやって優しくされた方が嬉しいのだ。
 そんなのを克哉に求めても無駄だ、と当の昔に諦めていたからこそ…今夜は
凄く嬉しかった。
 だから少しだけ、こちらも素直になっていく。
 普段は男としての矜持が邪魔していて…なかなか口に出来ない言葉を…
そっと唇を食んでいってから、そっと呟いていった。

「…好き、だ…」

 そういいながら、ギュウっと強くしがみついていくと…相手の方からも
強く抱きすくめられていく。

「あぁ…俺、もだ…」

 そう、切り替えされてじんわりと幸福感が広がっていく。
 凄く幸せな気持ちだった。

 そしてその夜…御堂は胸の奥があったかくなるのを感じながら
克哉から与えられる感覚を、全身で享受していったのだった―

 ―昨晩のあんたは凄く可愛かったな…

 朝焼けが部屋の中に静かに差し込んでくる中で…佐伯克哉は目覚めると
自分の傍らで安らかな寝息を零している御堂孝典の顔を見つめていった。
 日曜日の朝、誰も邪魔など出来ない二人きりの一時。
 余分な家具など殆ど置かれていない機能的な室内において…恋人の
存在だけが、とても暖かな温もりを放っていた。

(ふっ…本当に良く眠っているな…)

 自分が目覚めて、軽く身じろぎをしても…御堂はまったく目覚める気配が
なかった。
 その無防備な姿に、克哉は満足げな微笑を浮かべていく。
 まったく…自分達にこんな日が訪れようとは以前からは想像出来なかった。
 かつての有り様をふと思い出して…苦笑していくと、その紫紺の髪を優しく
梳き上げていった。

(以前のあんたの寝顔は…どこか強張っていて、こちらを警戒しているのが
良く判ったけどな…。今はこんな顔を俺の前で浮かべてくれるようになったんだな…)

 かつて、相手を自分と同じ位置まで引き摺り下ろしたい一心で監禁していた頃。
 何十日もの間…拘束具をつけて彼のマンションにこの人を閉じ込めていた。
 その頃の御堂の眉間の間には…いつも深い皺が刻まれていて、その寝顔すらも
苦しげなものであった。
 だが…今、目の前にいる彼は子供のようにあどけない表情を浮かべながら
寝顔を晒していた。
 それが…克哉の心中に、何ともいえない甘い疼きを与えていった。

(何かこの寝顔一つだけでも…あんたと、今は良好な関係を築けているんだなって
実感出来る。奪い奪われるような…そんな殺伐とした間柄じゃなくて…もっと…)

 それをどう形容詞すれば良いのか、一瞬迷ってしまっていた。
 こんなに胸が温かくなるような、そんな関係を他者と築いたのは彼自身にも
初めての経験で。
 この穏やかな寝顔を守りたくて…そっと、頬を這わせていった。
 自分にとっては、この姿は…脳裏に刻んでおきたいくらいに、愛おしく感じられた。
 その瞬間…昨晩、行為の最中にベッドサイドに放り出した携帯の存在を思い出す。

(そういえば…三枚だけ、と許可を受けたのに…撮影したのは結局、二枚だけだったな…)

 昨日は一枚目は、局部をこちらに晒した状態で相手が淫らな顔を浮かべている姿。
 二枚目は己を含みながら、自らを慰めている状態を撮影した。
 三枚目は…一応考えていたのだが、その最中に…御堂が「私を見ろ!」と挑発して
しがみ付いてきたので…結局撮影する余裕などなくなって、撮れないままであった。

「せっかく…あんたから三枚、と言われたのに…二枚だけで終わらせるのは
心底勿体無いな…」

 目の前にあるのは、とびっきりの可愛らしい寝顔。
 それをチラリと見て…克哉はカメラの設定を色々と弄っていく。
 朝焼けが眩しい室内なので、フラッシュの設定と効果音を消していき。
 慎重に相手の前に携帯電話を構えていきながら…ボタンを一回押していく。

「あぁ、レアなものを撮影出来たな…」

 そう言いながら、ディスプレイに視線を向けて確認していった。
 これは…おかずにしたいとか、そういう画像ではない。
 自分にとって大切な愛しい人を確かめる為の一枚だ。
 現在のこの人との関係は…これだけ良好であり、警戒されずに…この腕の中で
眠ってくれるようになったのだと、その事実を教えてくれる貴重な画像。

「これだけは…他の人間に、見せたくはないな…」

 御堂のあれだけ淫らな姿を、他者に見せることなど当然論外なのだが…この
姿はまた別次元で、決して誰にも見せたくない。
 孤高、と呼ぶに相応しいくらいに気高いこの人が…こんなあどけない顔を
しながら眠っている。
 それは信頼関係が結ばれたから、愛情をお互いに確かめ合っている今だから
撮影出来たものなのだ。
 
―俺だけしか知らない、あんたの秘蔵写真だな…。

 誰にも見せない。
 離れて、見せる隙すらも今後作る予定はない。
 見ているだけで暖かな気持ちを齎してくれる、とっておきの画像だ。
 一瞬…待ち受け画面にでも設定してやろうという考えが過ぎったら、そんな事を
したら何かの拍子に誰かに見られてしまう恐れがあると思い直した。

「んっ…」

 そうして、堪能するように撮影終了後も相手の寝顔をジっと見つめ続けて早五分。
 こちらの視線を感じ取って目覚めてしまったのか…相手の睫が大きく揺れながら
重い瞼が徐々に開かれていった。

「…起きたか、孝典…」

「ん…克哉、か…おはよう…。今、何時だ…」

「朝の五時をやっと回った頃くらいだな…休日だから、もう少しゆっくりと寝ていられるぞ…」

「う…ん、そうだな…まだ、正直…眠い…」

 少し寝ぼけながら目をトロンとさせながら、こちらを見つめてくる様は…普段のピシっと
した彼の姿と酷いギャップがあって…本人に言ったら憤死するくらい怒るだろうが、
本当に可愛くて仕方なかった。

「あぁ…ゆっくりと眠っていると良い。俺も…もう少ししたら一寝入りをする予定だしな…」

 そうして、相手の髪を掻き上げながら…額と目元にそっと口付けていく。

「ん…克哉、くすぐったいぞ…」

「だが、悪い気持ちではないだろう…?」

「そうだな、良い気分だ…」

 そうして、お互いに瞳を見つめあいながら満足に微笑んでいく。
 御堂の優美な指先が、こちらの頬にそっと触れていった。
 他愛無く、同時に限りなく幸せな恋人同士としての戯れの時間。
 静かにお互いの顔が寄せられて、徐々に瞼が伏せられていった。

「だが…少し、物足りなくはあるな…」

 挑発的な事を呟きながら…ごく自然に唇が重なり合った。
 柔らかく暖かい感触を感じながら、ジィンと広がる幸福感に身を委ねていく。
 甘ったるくて、幸せな気分だ。
 昨晩の焼き焦がれそうな強烈な想いとはまた別の…酩酊しそうなくらいに、
ほんわかとした…くすぐったい気持ち。

「じゃあ、これなら…どうだ…?」

「ん、そうだな…悪くない…」

 そうして、戯れるように唇をお互い啄ばんでいきながら…相手を愛撫するように
二人はそっと、髪や項、首筋から肩に掛けて指先を這わせ続ける。
 今…目の前に存在する相手を確認するように。
 このじんわりと広がる幸せを、強く噛み締めていく為に…。

―愛しているぞ

 再び深く瞼を閉じていく相手を見遣りながら、耳元に唇を這わせて…甘い睦言を
そっと囁いていってやる。

―私、もだ…。

 そして、相手からそう返答されると…本当に幸福で、そのまま死ねそうだった。
 また…御堂がまどろみの中に落ちていく。
 その顔は…克哉にとって宝物のような、愛しい姿であった―
―見るのなら、真っ直ぐに私を見ろ…克哉!

 強い感情を讃えた双眸をこちらに向けながら、きっぱりと御堂は
言い切っていく。
 そして噛み付くように、深く唇を重ねていった。

「むっ…ぅ…」

 その挑発的な行動に、今度は克哉の方が虚を突かれる形となった。
 荒々しく御堂の方から熱い舌先が絡められて、こちらの舌先を強烈に
刺激されていく。
 
 クチュ…ピチュ…ジュル…グチャ…

 こちらの口腔を掻き回していくように、積極的に御堂の方から舌を
蠢かしていくと…こちらも余裕などかましていられなくなる。
 
「はっ…ぁ…」

 息苦しくなって、一瞬だけ唇を離していくと…相手の魅惑的な光を放つ
その双眸に目を奪われていく。
 こんな時でも強気な態度を決して失わない愛しい相手の…そんな姿を
見て、ズクンと再び欲望が疼いていった。

「克哉…撮影よりも、私を…見ろ…! 君のその瞳が…携帯越しで
私を見るなど、もう…我慢、出来そうに…ない…!」

 宝石のように綺麗な、克哉の蒼い双眸。
 その透き通る二つの宝が…こちらの痴態を眺めて、深く濡れるように輝きを
放つ様は…とても美しく、同時に御堂の心を煽っていた。
 当然、見られれば激しい羞恥が生まれるのは否めない。
 だが同時にとてつもない喜びもまた…彼の心に齎しているのだ。

「私を、見ろ…君のその瞳で、私…だけ、を…!」

 ギュっと強く縋りつきながら、こちらを煽るように…耳元を強めに噛んで
熱っぽい声で囁いていく。
 愛しい相手に、こんなに精神的にクる言葉を言われてしまえば…克哉の
方とてただでは済まない。
 彼の内部に深く埋め込まれた熱い欲望が、一層滾っていくのを感じる。
 もう、撮影など…どうでも良かった。
 この人を全てで感じ取って、ムチャクチャに貪りつくしたくて仕方が無い。

「あんたは…本当に、俺を挑発することに掛けては一流だな…」

 感心と、呆れを半々に混ぜながら呟いていくと…克哉は片手に構えていた
携帯をベッドサイドに荒々しく放り出して、自分の両手を自由にしていく。
 本来ならもう一枚、恐らく御堂が知ったら憤死もののシチュエーションを
指定して撮影する予定だったが、気が変わった。
 これだけ夢中になって御堂がこちらを求めてくれているのならば、自分も
その気持ちに応えたかった。

 ズックン…!

 相手の中で、荒々しく克哉のペニスが脈動していく。

「あぁ…!」

 それに反応して、御堂もまた…歓喜の声を上げながら、相手のモノを強く
締め付けてしまっていた。
 それと同時に御堂の胸の突起に両方の指を這わせていくと…その肉体が
ビクン、と大きく震えていった。

「あっ…か、つや…其処…!」

「全身、すでに過敏になっているから…ここを弄るだけでも凄くイイ顔を浮かべて
いるじゃないか…。もっとおかしくしてやろう…」
 
 一見、酷薄とも見える嗜虐的な笑みを刻みながら…克哉の執拗な胸への
責めが始まっていった。

「あっ…ふっ…! だ…ヤメ、本気で…!」

 その動きに連動させるように、本格的に抽送を開始されたものだから堪った
ものではなかった。
 克哉の丸みを帯びた先端の部分が的確に、御堂の弱い場所を探りながら
抉って来て、その度に嫌悪感と紙一重の凄まじい快楽がその部位から溢れ
出して翻弄させていった。

「止めてなんて、欲しくない癖に…相変わらず、嘘つきだな…孝典は…」

「嘘つき、なんか…じゃ…! あぁ…やだ、本気で狂い、そうだ…から…
うっ…はぁ…克哉…!」

 克哉の背中に爪を立てる勢いで、その背中にしがみ付いていくと…ともかく
相手が与える凶悪すぎる快感を必死にやり過ごしていった。
 だが、もう完全に抗えない段階にまで来てしまっている。
 相手の腹部に擦られて挑発された彼のペニスは、再び限界が近いと
訴えるようにしとどに先走りを零し続けている。

 この快楽から逃れたいのか、更に深いものを求めているのか…もう自分でも
判らなくなりそうだ。
 恐怖すら覚えそうな、あまりに強すぎる感覚に…ただ翻弄される以外に何が
出来るのだろう。

 パン、パン、パン、パン…!

 グチャグチュ…ヌチャネチュ…!

 肉を打つ音と、淫靡な水音がお互いの接合部から同時に響き渡っていく。
 その淫らな演奏に…聴覚さえも犯されてしまいそうで、更に深い愉悦が…
身体の奥から湧き上がっていった。
 しこった胸の突起に爪を立てられた瞬間、ビリリ…と鋭い電流が全身を
駆け巡っていった。

「い、や…だ…こんなの、は…! もう…訳が、判らなくなり…そ、うで…
あぁ…はぁぁ…!」

 一足先に、また先に御堂の方が達していく。
 それと同時に相手のモノもまた限界寸前まで、自分の中で膨張しているのを
感じ取っていった。

「…あっ…!」

 ジュッ…と相手の先走りが自分の内部に滲み出ているのを感じて、彼の
腕の下でピクン…と御堂は震えていった。

「孝典…も、う…イクぞ…!」

 先程からイキたくても…愛しい相手が乱れる様を一秒でも長く見ていたい一心で
堪え続けていたが…そろそろ彼も真の限界が訪れようとしていた。
 克哉の余裕のない表情が、こちらの視界に飛び込んでくる。
 それが…自分だけが感じている訳ではない、その事実を如実に伝えてくれているから
酷く…御堂にとっては嬉しかった。 

「ん、来い…」

 強気に微笑みながら、再び唇を重ねていく。
 上も下も…相手で満たされながら…また、達していくのを感じる。
 射精の快感ではない、もっと性質が悪く…疼くような感覚だ。
 相手を根元までキツく締め付けていきながら…その強烈過ぎる感覚に
御堂は身を委ねていった。

「た、かのり…」

「はっ…んっ…! かつ、やぁ…!」

 珍しく鼻に掛かった甘えるような声で、御堂は彼の名を呼んでいった。
 それだけで…克哉は酷く満たされるような感じがした。
 今度はほぼ同時に絶頂を迎えて…熱い精を相手の最奥に向かって
飛沫かせていく。
 自分の深い場所で…相手の熱を受け止めていくと…ホウ、と御堂は
甘い吐息を零していった。

「…本当に、君という男は…」

 半分呆れ混じりに、同時にどこか優しい眼差しで…御堂はたった今、
自分を激しく抱いた男の事を見つめていく。
 強引で傲慢で、自分勝手で…ついでに意地悪で仕方が無い男なのに…
どうして、こんなに愛しく思えてしまうのか。
 自分でも本当に不思議でしょうがなかった。

「…俺が、何だって言うんだ…? 孝典…?」

 荒く呼吸を繰り返すこちらの頬を、優しく撫ぜながら男は問いかけてくる。
 嗚呼、本当に性質が悪い。
 抱く時はいつも意地悪な癖に…再会してからの彼は、ふとした拍子に…
こんなに優しい表情や仕草をするようになったから、余計にこちらは困るのだ。
 あのロクでなしの彼のままだったら…きっと自分は、こんな熱病のような
厄介な感情を今も抱き続けないで済んだ筈なのだから…。

「…本当に性質が悪い男だ…。こんなに私を翻弄させるんだからな…」

 そういって、強気に微笑みながら…チュっと相手の唇にキスを落としていく。
 強い快楽の余韻のせいか…殆ど力が入らない状態では、それが精一杯の
意趣返しだった。
 しかし克哉は大層、今の台詞と口付けが気に入ったらしく…心から愉しそうな
笑みを浮かべながら、言い返してくる。

「それを言ったら…あんたも充分、性質が悪い。こんなに…こちらの心を
熱くして、翻弄してくれるんだからな…」

 そう呟きながら、克哉の方からも触れるだけのキスを落としてくれる。
 たったそれだけのやり取りなのに…最高の気分だった。
 今日なんて、さっきまでは羞恥で死にそうなくらいだったのに…こうやって
事が終わってしまえば、それも強烈な快楽に導く為の導火線に過ぎなかった
ことを思い知らされる。

「ふっ…お互い、さま…だ、な…」

 嬉しげに呟きながら、フっと意識が遠くなっていくのを感じた。
 強烈な快感は、同時に激しい疲弊をも齎すものだ。
 フっと気が緩んだ瞬間に、猛烈な睡魔が彼に襲い掛かっていく。
 もう…御堂は、それに抗えそうになかった。
 
―好きだぞ

 夢現に、ついそんな事を呟いてしまっていた。
 滅多にそんな事を言わない御堂が、そんな発言をかました事によって…
克哉は驚愕で目を見開いていった。

(君でも…そんな顔をするんだな。悪くない…気分、だ…)

 御堂は、自分がたった今…口にした言葉を良く把握していなかった。
 それぐらい自然に、無意識に出た発言だったからだ。
 ただ相手のその驚いた顔が心地よくて。
 嬉しげに瞳を細めながら…そのまま瞼を閉じていった。

『最後の最後に…あんたに、やられたみたいだな…俺は…』

 眠りに落ちる直前、克哉のそんな呟きが耳に届く。
 それが妙に小気味良くて、嬉しそうに御堂が唇に笑みを刻んでいくと…
柔らかく暖かい克哉の唇が、そっと其処に落ちていくのを…眠りに堕ちる寸前
確かに、感じられたのだった―
 
 ―熱くて堪らなかった。

 相手の昂ぶりが自分の中に入って来た瞬間、その熱さに思わず酔いしれそうだった。
 あっという間に奥深くまで挿入されて…自分の眼前に、相手の情熱的な眼差しがあった。

「あっ…そんなに、見る、な…!」

 煌々と明かりが灯された室内で、深々と相手のモノを飲み込んでいる姿など…
見られたくない、そう思う反面…身体はそんな心とまったく異なった反応を見せている。

「…何を今更。それに…こんなに興奮する場面を…見ないで済ませるなど、
勿体無いことは出来ないさ…」

 そして眼鏡は淫蕩に微笑んで見せる。
 奥深くまで入り込んでいる癖に、腰を動かす気配はまったく見せない。
 相手と自分の身体の間には、御堂のペニスが元気良く勃ち上がっていた。
 その先端からはしたなく蜜が溢れて、しとどと…下になっている自分の袋から
下肢の茂みを濡らし始めていった。

「あんたのここ…こんなに熱く、濡れているな。俺に挿れられただけで…そんなに
興奮してピクピクといやらしく震えて…本当に孝典は、淫乱だな…」

「だれ、が…淫乱だっ! 人の身体を…こんな風に仕込んだのは、君じゃ…
ないかっ…!」

 キっと眦を上げて相手を睨んでいくが…やはり克哉は涼しい顔をしたままであった。
 本当に今夜は、腹立たしくて仕方ない。
 自分ばかりがこの男に乱されて喘がされてばかりで…この男は平静な態度を
まったく崩そうとしない。

「あぁ…そうだな。あんたの身体をこんな風にして良いのも…俺だけだ。そうだろう…
孝典…?」

 そういって、こちらの手をいきなり掬い取ると…指先をゆっくりと口に含んでいく。
 熱くて柔らかい舌先が、こちらの人差し指と中指を辿り始めていった。

「んっ…ぁ…」

 内部に克哉自身が入ってきた事でこちらも感覚が鋭敏になっているのだろう。
 指と指の境目や、付け根の周辺を舐め取られるだけで…何とも形容しがたい奇妙な
快感が背筋を走り抜けていった。

 ピチャ…クチャ…。

 わざと音が立つように、こちらの指先を舐め上げて…実に淫猥な眼差しで
熱っぽくこちらの瞳を覗き込んでくる。
 何とも挑戦的で、同時に…危険な眼差しだった。

(そんな目で…見る、なぁ…)

 背筋がゾクゾクして、頭が霞み掛かっていく。
 あぁ…そうだ。自分はこの男に見つめられるだけでこんなに身体を熱くして…
その言葉に逆らえなくなっていく。
 屈服したくないのに、この甘い責め苦から逃れたいという気持ちが…あっという間に
押し潰されていく。

「孝典…俺を、愉しませてくれ…」

 男が、危なげな笑みを浮かべながら…甘く囁く。
 まるで催眠術にでも掛けられてしまったかのようだ。

「あっ…あぁ…」

 決して、男は動いてくれない。
 内部で…はっきりと自己主張をして、圧倒的な熱量と質感を持って…こちらを内部から
圧迫している癖に…それ以上の刺激を与えてくれなかった。

(ダメ、だ…。もう…おかしく、なりそうだ…)

 ビクン、と震えると同時に…こちらの先端からドロリとした体液が溢れてくる。
 男のモノも…こちらの内部で、先走りを微かに滲ませているにも掛からず…それでも
抽送を開始する気配はなかった。

「克哉…早く、動いて…くれっ…」

 もう焦れったくて溜まらなくて…堪えきれないようにしきりに御堂が腰を捩っていく。
 キュっと相手のモノを強く締め付けて、煽っても…微かに眉を顰めるだけで…
克哉は望んでいる強烈な感覚を与えてくれなかった。

「まだ、だ…あんたの痴態を…まだ納めていないからな…」

 そう告げると、再び…片手にカメラを構えて、撮影の準備に入っていく。

「俺の目を愉しませろ…それなら、お前が与えて止まない強烈な快楽を…
此処に与えてやるぞ…?」
 
 そう言って、一回だけ腰を突き入れていく。

「はっ…うっ…!」

 耐え切れずに御堂は甘い声で啼いていった。
 ビリビリビリ…と背筋から電流が走り抜けていったかのようだった。
 だが…もっとと強請るように腰を突き動かしても、それ以上は克哉は与えてくれる
気配はなかった。

「克哉…欲しい、のに…どうし、て…」

「それなら…早く、俺の前で…この状態で自分で慰めてみせろ…。それで俺の目を
存分に愉しませてくれたら…お前が望むものをご褒美にたっぷりと与えてやるぞ…?」

「はっ…あ、判った…」

 普段の御堂なら、決して受け入れないであろう提案も…ここまで欲望を焚き付けられて
しまった後でなら受け入れざるを得なかった。
 オズオズと自分のペニスに指を絡ませていく。
 もう痛いぐらいに硬く張り詰めている先端に自ら指の腹を這わせて…もう一方の手で
竿と袋の境目に当たる部分を握り込んでいった。

「あぁ…良い、眺めだぞ…孝典…」

「バ、カ…本当に、お前は…意地悪で、酷い…男、だ…」

 恥ずかしくて血液が沸騰して、そのまま死んでしまいそうなくらいだった。
 だが…男の目が、さっきまでと違って余裕のないものに変化していっている事に…
御堂は気づいていく。

―はっ…はぁ…はっ…。

 表情はあまり変わっていなかったが、呼吸が荒くなって紅潮が始まっているようだ。
 
(克哉が…私の姿を見て、興奮…している…)

 その事実に直面した途端、受け入れている箇所が更に淫らに…相手のモノに
絡み付いて、ジンワリと締め付け始めていく。
 もうこちらも…堪らなかった。
 もっと相手を感じさせたくて、煽りたくて…夢中になって自らの性器を弄り上げていく。

「んっ…んぁ…こ、んな…!」

 羞恥の余り、頭がどうにかなってしまいそうなのに…同時に、自分の性器に触れる度に…
強烈過ぎる悦楽が尾骶骨の辺りから競り上がって来ていた。
 瞬く間に、自分の手が蜜によってビショビショになっていく。
 その度にドクンドクン、と相手の性器も内部で蠢いて…もう何も考えられなくなっていった。

「あぁ…凄く良い画(え)だ…孝典…」

 克哉はこっそりと動画撮影モードに切り替えて、夢中で自慰を続けていく御堂の
艶っぽい表情と…手元を交互に撮り始めていった。
 カメラ越しに見ているだけでも、そのままオカズにしてイケそうなくらいの御堂の
淫乱な姿に…こちらも腰を一切動かさなくても達せそうなくらいだった。

「んんっ…言う、な…言うな…! も、ダメだ…克哉…!」

 半分、快楽によって涙目になりながら御堂が訴えていく。
 異常なシチュエーションのせいか…普段より遥かに早く絶頂が訪れようとしていた。
 もうじき、最大のシャッターチャンスが来る。
 そう判断して、辛うじて…理性を総動員しながら、動画撮影モードから…通常の
写真撮影モードの方へとボタン操作して切り替え…。

「克哉ぁ…!」

 相手が、一際高い声音でこちらの名を呼びながら…自分の身体の下でついに
絶頂に達していった。
 それに導かれるように、こちらも達する後一歩の処まで追い詰められていく。
 だが…ここでイったら、撮影などする余裕がなくなるだろう。
 ギリギリの処で耐えていくと…徐に撮影ボタンに指を這わせて、プッシュしていった。

 パシャッ!

 その瞬間を狙うように…克哉は御堂の顔をドアップにして撮影していった。
 達した瞬間の御堂の苦しげで…最大にセクシーな顔の確認画面が…携帯の
ディスプレイに表示されていく。

(本当に昨今は…優秀な手ブレ修正機能がついていて助かったな…)

 綺麗に撮影された二枚目の画像を見ながら、克哉は満足げに微笑んでいく。
 それを御堂にでも見せてやろうかと思った次の瞬間…。

「はっ…ぁ…かつ、や…」

 苦しげな呼吸を繰り返しながら、御堂が上半身を起こして来て…。

「もう、私を…カメラ越しで何て、見るな…!」

 怒ったような悲しんでいるような、切なげな表情を浮かべながら…ギュっとこちらの
首元に強く抱きついてきたのだった―
 相手の目線が、酷く鋭くて怖かった。
 まるでこちらの全てを見透かすように…暴き立てるかのように、強烈で…
力が篭った視線だった。
 その目だけで、身体の奥が疼いて…次第におかしくなっていく。
 もう、二人を隔てるものなど何も無い。
 裸で向き合い、そして…命じられていった。

「御堂…ベッドの上にうつ伏せで寝そべるんだ…」

 艶っぽい声で、克哉が囁いていった。
 
「判った…」

 張り詰めた空気が流れていたせいで…てっきり彼に抱き締められて、ベッドに
なだれ込む事になると予想していただけに、少しだけ驚いていく。
 言われた通りに…先にベッドに横たわると、とんでもない指示が相手の口から
飛び出していった。

「そう…それで良い。そうしたら…腰を高く上げて、あんたの恥ずかしい場所を
こちらに晒しながら…俺の方を向いてみろ」

「なっ…!」

 いきなり下された突拍子もない注文に、カっとなって振り向いていくと…いつの間にか
克哉は携帯電話を片手に構えて、カメラのレンズ越しに御堂を凝視していた。

「そう、そんな感じだ。あぁ…でも、腰はちゃんとこちらに突き出せ。あんたのいやらしい
場所がはっきりと見えないからな…」

「そんな格好…出来る訳が…!」

「俺はあんたの…いやらしい場所と、とびっきり淫らな顔を同時に収めておきたい。
だからこの構図を選ばせて貰う。…さっき、三枚までなら良い…と確かに言った筈だ。
男に二言はないよな…孝典?」

「ぐっ…ぅ、判った…」

 確かに、三枚までなら許す…と言ったのは自分の方だ。
 それを指摘されると確かに、言い返せなくなってしまう。
 相手の目が、見えない指先になって自分の肌にまとわりつくような感覚がした。
 そんな状態で、排泄機関を恋人の前に自ら晒すなど…屈辱以外の何物
でもなかった。

「はぁ…」

 けれど、自尊心が傷つくのと裏腹に…見られることで身体は勝手に反応してしまう。
 何か操り人形のように、彼に見られる中…指示された通りの体制をベッドの上で
取っていく。

「これで…良い、のか…?」

「あぁ、最高にいやらしい姿だ…だが、まだ足りないな…?」

 

 頬を赤く上気させながら相手の方を仰ぎ見ると…満足げに男が、獰猛に微笑むのが
見て取れた。
 すると…ベッドに身を乗り出して…蕾にいきなり指を挿入していった。

「あぁ…!」

 突然の行動に、御堂は鋭い声を漏らしてしまう。
 だが男は容赦しない。
 どうやら…最初からそのつもりだったらしく、男の手は潤滑剤がすでに指先に塗りたく
られていた。
 軟膏のようなものが自分の中にたっぷりと塗りつけられて…いきなり弱い場所を
攻め立てられていく。

「やっ…な、何を…撮影、するんじゃないのか…!」

「…どうせ撮影するなら、綻んでいない状態の硬いものよりも、俺が欲しくなって
ヒクヒクと蠢いているようなやらしいものの方が良い…」

「お、お前は悪趣味…過ぎる…! はっ…あっ…!」

 そうしている間に、すでにこちらの肉体を知り尽くしている男は一切の遠慮を見せず
自分の弱い場所を探り当てて、其処ばかりを執拗に責めていった。

「やっ…やめ、ろ…本気で、おかしく…なるっ…!」

 そういって、相手の方を仰ぎ見ると…こちらを食い入るように見つめながら…下肢を
熱く滾らせている克哉の姿が目に飛び込んで来た。

「あっ…ふっ…」

 その瞬間、悔しい事にこちらも感じてしまった。
 自分の恋人が、こちらが乱れる姿を見て…欲情で瞳を濡らし、硬く性器を起立させている。
 それを目の当たりにした事で…御堂の身体も、更に興奮を高めていった。
 触れられてもいない性器が、すでに先走りを滲ませてシーツにシミを作っていく。
 
(こ、んな…のって。お前が興奮している姿を見るだけで、こちらも…こんなに、感じて
しまうなんて…)

 自分の知りたくもない領域と嗜好を見つけ出されたような気になって…更に御堂は
居たたまれなくなる。
 そうしている間に、克哉に前立腺を的確に弄られているだけで…それだけで
達してしまいそうになってしまう。

(も、う…ダメ、だ…イク…!)

 頭が真っ白になる程の絶頂感が押し寄せてくるのを感じる。
 ギュっとシーツを握り締めてその感覚を堪えようとした瞬間…いきなり指が
引き抜かれていった。

「えっ…?」

 いきなり放り出されたので、咄嗟に相手の方を物欲しそうな目で見つめてしまった。
 その瞬間…フラッシュが焚かれて、撮影されてしまう。

 パシャ!

 どうやら…克哉はキチンと撮影出来るように、室内の照明状態に合わせた撮影モードと
フラッシュをキチンと設定しておいたようだった。
 目を焼くような眩い光が、彼を瞬間的に照らし出していく。

「…予想通り、最高のシャッターチャンスだったな…」

 そうして男が悠然と笑う。
 御堂は…身体に灯る熱を持て余したまま…呆然とするしかなかった。
 されど、肉体はこちらの意思とは関係なく反応し…未だに淫らに収縮を繰り返していく。

「き、君という男は…!」

 こちらが怒りを込めて、相手を睨み付けた途端…いきなり男は、こちらの方に一気に
間合いを詰めて…身体を反転させて、正面から向き合う体制へと変えていった。
 流れるような、見事な体位変換だった。

「なっ…何、を…」

 いきなり相手に組み敷かれて…足を大きく開かされたまま、相手の下になる体制に
されてしまうと…困惑のあまり、唇を震わせていく。

「何って…次の画像の撮影に決まっているでしょう…? そうですね…次の画像は、
俺のものを飲み込んだ状態で…貴方に自分のモノを慰めてもらう処なんて…
どうでしょうか…?」

「なっ…!」

 今のでも充分恥ずかしかったのに、更に酷いシチュエーションを指定されて…
御堂は耳まで真っ赤に染めていった。

「ショータイムの本番は…これからだぞ、孝典…」

「待て…や、あぁぁっ…!」

 だがこちらが相手の身体を押しのける間もなく…ヒクヒクと絶え間なく蠢く其処に
克哉の熱い塊が押し当てられて…一気に深い処まで串刺しにされたのだった―
  ―こんなに、抱かれる前に緊張するのは久しぶりだった。

  心の準備をしたいから、と言ってシャワーを浴び終えると…改めて気恥ずかしく
なってしまった。
 少しでも時間を引き延ばして、丁寧に身体を洗ってしまったが、もしかしたらアイツに
期待しているから…と見られたかも知れなかった。

(あぁ…もう、何たって私がこんな想いをしなきゃいけないんだ…。本当に
アイツの意地の悪さは半端じゃないな…!)

 あんな提案を受け入れてしまった自分に対して、少し腹を立てながら…バスローブを
身に纏い…寝室の方へとゆっくりと向かっていく。
 静寂を讃えた廊下を歩いていると、自分の心臓の鼓動のやかましさを余計に
意識する形になった。
 
 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…。

 早鐘を打っているのが自分でも判る。
 時々…これから起こるであろう時間を想像して、無意識の内に息を詰めてしまっていた。
 だが、一度承諾した以上…やはり止める、と言うのは絶対に許して貰えないだろう。

(ええい、ままよ…!)

 寝室の前に辿り付くと…勢い良く部屋の扉を開けていった。

 バァン!

 …勢い余って、思いっきり壁にドアが衝突して…盛大な音が周囲に響き渡る。
 
「おやおや…ずいぶんとやかましいな」

 煌々と照らされた明かりの下、ベッドに腰掛けながら…克哉は待っていた。
 部屋の入り口の方へ向き合うように…腰を深く下ろして、両手を組みながら…
強い眼差しでこちらを見つめてくる。
 彼の銀縁眼鏡が、ギラ…と輝く。

「…覚悟は出来たか? 御堂…?」

「あぁ…」

 軽く頬を染めながら頷くと、知らず頬が赤く染まっていった。
 そんな恋人の様子を眺めながら…悠然と、傲慢に男は微笑んだ。

「そうか…なら、来いよ。早く…あんたをじっくりと確認したい…」

「う、む…」

 そういいながら、克哉の下へと向かっていく。 
 一歩、一歩…慎重に相手の処へ歩み寄る度に、反比例するように鼓動は
大きく、けたたましいものへと変わっていった。

 バックン…バックン、バックン、バックン…。

 胸がそのまま張り裂けるのではないか…と疑いたくなるくらいに大きな音を
立てながら、心臓が激しい脈動を繰り返していく。

「…顔が、赤いな…。あんたのそういう殊勝な顔…そそるぜ?」

「あんまり、そういう事を言うな…」

 すぐ目の前までたどり着いた時に…からかうような口調で声掛けてくる相手に対して
プイ、と顔を背けていくと…強い腕の力で、克哉の方へと引き寄せられる。

「さあ…ショータイムの始まりだ。あんたと俺だけの…秘密の撮影会、がな…?」

「ん、あっ…」

 そのまま深いキスを交わされていくと…口腔を暖かい舌先で、性急にくすぐられていく。
 歯列をやわやわと辿り、舌の表面同士を擦り合わせながら…そのまま深く絡め取られて
強めに吸い上げられていった。
 相手はベッドに座したまま…こちらはその上に圧し掛かるような体制で、深い口付け
だけをまず与えられていく。
 克哉の両手が、こちらのバスローブをずり上げて…臀部を剥き出しにしていった。
 外気に晒されて、若干の肌寒さを覚えている間もなく…相手の両手が其処に伸ばされて、
早くも揉みしだかれていった。

「はっ…くっ…」

 口の中全体を、相手の舌で犯されているみたいだ。
 グチャ…ピチャ…と淫らな水音が脳裏に響き渡っていく中、尻肉を執拗に弄られていくと
それだけで早くも奥まった蕾が反応し始めていった。
 
「ひっ…」

 ふいに克哉の指先が、菊門の入り口を掠めていくと…たったそれだけの刺激で
御堂は高い声を漏らしていった。
 相手に揉まれる度に、御堂のしっかりとした体躯が揺らめき…ベッドがギシギシと
軋み始めていく。
 180を越える長身の二人が寝具の上で絡み合えば…必然的にそうなるのだが、
その音すらも…御堂を煽る因子の一つとなっていった。
 奇妙な疼きが、早くも身体の芯に灯り始める。
 それがもどかしくて仕方なくて…懸命に御堂も相手の方へと手を伸ばして、未だに
着込まれたままの相手のYシャツのボタンへと、指を掛けていく。

「…君も、早く…脱げ。私ばかりが…こんな格好にさせられる、のは…フェアじゃ…
ないだろう…!」

 顔を真っ赤にしながら唇を離して、御堂がそう呟いていくと…克哉はククっと喉の奥で
笑い始める。

「あぁ…そうだな。お互い…生まれたままの格好にそろそろなろうか…。孝典、脱げよ…。
あんたが自分の手で…その布を取り払う姿が、見たい…」

 そう言いながら、少し身体を離して…眼鏡は自分のYシャツのボタンを一つ一つ…
作為的な動きで外し始めていく。
 それに目を奪われながら…御堂は、深呼吸をしていく。
 明るい光の下で自分の意思で、このバスローブを取り去るのは…かなりの
羞恥が伴った。

「…トコトン、君は悪趣味で意地悪な男だな…。そんなに強く見つめられる中で…
私に自分で脱げというのは…嫌がらせ以外の何物でもないぞ…」

 そう呟きながら、御堂はバスローブの紐を緩ませ始めていく。
 視線だけで…こちらを犯す尽くされそうな勢いだ。
 息を詰めながら、ゆっくりと脱ぎ始めていくと…。

「…俺が意地悪な男だっていうのは、あんたは…よ~く知っているだろう…?
今更、だろ…?」

「…ああ、そうだな。本当に今更な話だったな…」

 そう言いながら男も、こちらに見せ付けるように…服を一枚、一枚…
脱ぎ去っていく。
 ここまで言い切られてしまうと、こちらもこれ以上反論出来なくなる。
 結局、それ以上の言葉は深い溜息を突くことで押し殺す羽目になった。
 お互いに、相手の裸身が暴かれていく光景に目を離せない。
 そして一分後…彼らは、何も隔てるものがない状態で…相手に向き合っていった。

 赤くなって居たたまれない表情を浮かべる御堂に対し、眼鏡は決して…
平静な表情を崩すことはなかったのだった―
 眼鏡と御堂が二人で会社を興して、共同経営者になってから半年が
経過していた。
 二人が設立したアクワイヤ・アソシエーションは…驚異的なスピードで
急成長し、その頃には大きな仕事を多数扱うようにまでなっていた。
 仕事が忙しくなれば、二人きりで過ごす時間が減ってしまったり…暫く
会えない期間も当然出てくる。
 来週の頭から、十日ほどの出張に眼鏡が発つことが決まった週末の夜。
 佐伯克哉のマンションのゆったりとした造りのリビング内にて、御堂孝典の
叫び声が響き渡っていった。

「き、君は一体…何を考えているんだっ! そんな事が出来る訳が
ないだろう…!」

 ワナワナと震えながら、御堂は勢い良くさっきまで腰掛けていたソファの上
に置かれていたクッションを、隣に座っていた克哉に投げつけていく。
 最初の一撃を相手があっさりとかわしていくと…御堂はすかさず次の
クッションを投下していった。

「おっと…危ないなぁ。こんなに近い距離でそんなに強く投げつけたら、クッションと
言えども、それなりにダメージはあるぞ?」

「…君がロクでもない提案を持ちかけるからだっ…! これくらいは当然の結果と
して受けろっ!」

 御堂はどうやら、先程…克哉が提案した内容に対してかなり憤っているようだった。
 顔を真っ赤にしながら、ジトリとねめつけるようにこちらを睨みつけてくる。
 相手の感情を剥き出しにした態度に、極めて意地悪い表情を浮かべながら眼鏡は
言葉を続けていった。

「…やれやれ、お前がそこまで怒るとはな…。俺は単純に、これから十日間も孝典に
会えなくなるのを寂しく思ったからこそ、おねだりしただけに過ぎないぞ?」

「…どうせおねだりするっていうのなら、もう少し可愛らしい内容を持ちかけたら
どうなんだっ! どうして、そんな発想が思い浮かぶのか君の正気を疑うぞっ!」

「…御堂。俺たちは恋人同士なのだろう? それなら…愛しい恋人の写真や
動画を携帯の中に収めたいと願うのはそんなに正気を疑うような行為か?」

 平静な態度で、克哉があっさりと言い返すと次の瞬間…御堂の拳がぎゅっと
握りこまれて、ワナワナと震えていった。
 その目線には強い殺気まで込められていた。

「お前はー! 私だって普通の写真や動画を求めたというのならこんなに怒ったりは
しない! だが…私が自慰している処や、お前に抱かれている時の画像を欲しいと
言うから怒っているんだろうがー!」

「しょうがないだろう。今回の場合…俺が出先に赴かなければ此度のプロジェクトは
動き出しそうにないし…あんたにはその間、会社に残って俺の代わりに仕事を
こなして貰わないと通常業務にさえ支障を来たしそうだからな。
 これから先、仕事が軌道に乗ればこういった機会は増えてくるだろう。そういう時に
心を慰めてくれる画像を欲することがそんなに可笑しいか?」

 だんだん怒り始めて冷静さを失っている御堂に対して、克哉の方は…平然と
した態度をまったく崩さなかった。
 それが余計に、御堂は気に食わなかった。
 自分ばかりが興奮して立ち上がって、相手が座ったままでいるのも癪だった。

「…そんな物を撮影されて万が一誰かに見られたり…携帯を紛失したら一体
どうするつもりなんだっ…!」

「俺がそんなヘマをすると思うか? それに…そんなお宝画像が収まっている携帯を
絶対に俺は失くしたくはないからな。…御堂」

 ふいに克哉が立ち上がっていくと…グイ、と腕を引かれて彼の方に強引に引き寄せ
られていく。
 一瞬の隙を突かれて、相手の腕の中に抱き締められていくと…耳元に唇を
寄せられていった。

『離れている間も、あんたの事をはっきりと思い出したいんだ…。俺の愛しい
恋人である御堂孝典の事をな…?』

「…っ!」

 熱い吐息を耳奥に吹き込まれながら、甘い声音で囁かれたのだから…それだけで
腰がジィンと痺れそうになってしまった。
 反射的に相手からバっと離れていく。
 だが…相手の唇と吐息が触れた耳朶には、痺れるような余韻が残されていた。

「…ダメか?」

「当然、だ…。そんな事を、言われたって…」

 先程と違い、今の攻撃に少しグラリと来たらしい。
 顔を真紅に染めながら…少し艶っぽい瞳でこちらを見つめてくる。
 嗚呼、この男から与えられる快楽にすっかりと馴染んでしまったこの身体が
恨めしい。

「あんたの痴態を…この網膜に焼き付けたい。そして…あんたを想って疼く夜を…
鮮明に思い出して、あんたの事だけをただ考えて…イキたい。俺は…そう考えて
こんな提案を持ちかけた。それでも…ダメ、か…?」

 ふいに意地悪な表情から、切なげな表情に一転して変わっていく。
 その顔つきの変化に、目を奪われていった。

「だから、そんな風に…熱く見られて、も…」

「御堂。これは…恋人からのお願いだ。それでも…聞き遂げてくれないだろうか…?」

 こちらが惑っている隙に、克哉に強引に抱き締められて…耳元で甘く囁かれていく。
 そうしている間に…耳朶をやんわりと食まれていった。

―御堂、ダメか…?

 そう呟かれながら、優しく背中を擦られていくと…何かこれ以上突っぱねるのも
難しくなってしまった。
 ああ、何故こんな酷くて厄介な男に自分は惚れてしまったのだろう。
 そんな己を歯噛みしたくなりながら、御堂は口を開いていった。

―三枚だけだ。ちゃんと…しっかりと他人に画像を見られないようにしっかりと
対策を立てた上でな。それでなら…応じてやっても良い…。

 そう応えると男は愉しげに微笑んで見せた。

―判った。その三枚はトコトン厳選させて貰おう。実に楽しみだな…。

 そうして、男は獰猛に微笑んでいく。
 その顔を見て…御堂はゴクリ、と大きく息を呑んで身構えていったのだった―

 仕事を終えた週末の夜。
 克哉に誘われるままに、彼の部屋に足を踏み入れて…御堂の方から先にシャワーを
浴びていた。
 再会してから、数ヶ月。
 一緒に仕事をするようになってからはまだ一ヶ月程度しか経過していないせいか…まだ、
彼の自宅に慣れる事は出来ない。

 ドックンドックンドックンドックン…。

 シャワーを浴びて身を清めている間も忙しなく鼓動が高鳴り、このまま心臓が動作不良を
起こしてしまうのではないかと不安に陥るくらいだった。

(落ち着け…克哉の部屋で、もう何度か過ごしているんだ…今更、不安になる必要なんか…)

 そう自分に言い聞かせているにも関わらず、胸のざわめきは収まる気配は一向にない。
 心が荒くざわめいたまま…目の前のコックをヒネってシャワーの湯を止めていく。
 バスタオルで身体を拭って、バスローブを羽織ると…そのまま真っ直ぐ、彼の寝室へと
向かっていった。

「克哉…今、上がった。君も入るのか…?」

 ドアノックをしながら、室内にいるであろう…恋人に向かって声を掛けていく。
 だが、返答はないままだった。

「…? もしかして部屋にいないのか?」

 何度も、トントンとノックをしていくが…やはり反応がないままだった。
 訝しげに思って少し扉を開けて部屋の中を覗いていくと…室内は真っ暗で、中の様子は
伺い知れなかった。

「…暗い。もしかして…いないのか?」

 怪訝に想い、入り口の辺りを探って電灯をつけて…ゆっくりと慎重に部屋の中に足を
踏み入れていく。
 ベッドに真っ先に視線を向けるが、やはり彼の姿はない。

「克哉…どこにいるんだ…?」

 少し不安そうに窓際に歩み寄り、彼を必死になって探そうと試みていた瞬間。
 カーテンの影から克哉の姿が躍り出て…フローリングの床の上に、半ば強引に
組み敷かれていく。

「なっ…! 克哉っ?」

 突然の事に御堂は驚愕していくが…克哉の方はおかまいなしだ。
 彼の方は先程見た通り、青いYシャツにダークのスーツズボンを纏っていた。
 だが…相手に背後から抱きすくめられて引き倒されている間に…紐の部分に
手を掛けられて、瞬く間にバスローブは剥ぎ取られて…こちらは全裸にされてしまう。

「ちょっと…待てっ! いきなり…!」

「あんたが一刻も早く欲しいんだ…大人しくしていろ…」

 ふいに剥き出しの尻を掴まれて、狭間に…布地越しとは言え熱い欲望を押し当てられると…
それだけでゴクリ、と喉を鳴らしてしまう自分が信じられなかった。

「あっ…やだ、止めろ…」

「…ほう? 早くもこんなに自分からヒクつかせている癖に…口では、止めろか? 
トコトン…あんたは正直じゃないんだな…」

 クスクスクスと笑いながら、いきなり背後から覆い被されて…胸の突起を
両手で刺激されていく。
 プクン、と張り詰めた胸の突起が…相手に弄られるだけで強烈な快感が走り抜けていった。

「ひぃ…ぁ…! ダメだ、克哉…こんな、処…では…明かり、だって…」

「明かりをつけたのは…あんた、だろ…」

「それは君の姿が、見えなかった…から…! ベッドに座っていたのなら…わざ、わざ…」

「あぁ…だから、俺は隠れていたんだよ。今夜は…あんたを明るい中で犯したかった、からな…」

「犯すって…ぁ…!」

 その一言に羞恥を覚えて、僅かながらの抵抗とばかりに…窓際の、少しでも
蛍光灯の明かりが及ばない位置に身体を逃がしていく。
 逃げる御堂を、すかさず窓際に追い詰める。
 冬の冷たい露が伝うガラスの向こうには、漆黒の闇と真円の月が浮かぶ。
 
―月明かりに透けた御堂の髪を一瞬綺麗だ、と思いながら…その身体を
自分の方へと引き寄せて、背後から抱きすくめていく。 

「あっ…熱い…」

  今度は直接、相手の情熱を尻の狭間に感じて…それだけで身体が竦んでいく。
 だが克哉はそんな事でまったく怯む様子も見せず…アヌスの縁の浅い処に、己の先端を
何度も含ませて焦らしていく。
 克哉の先走りが先端から溢れているせいだろうか。彼の腰が蠢く度に…ネチネチと
淫靡な音が響き渡って、御堂の神経を焦がしていった。

「あっ…あっ…待て。こんな、いきなり…!」

「いきなり、じゃない…あんたの傍にいて…俺はずっと…仕事中は犯して、グチャグチャに
したい欲求を抑えて働いているんだ…。これ以上は、待ってなんて…やれない…」

「そ、んな…ひぅっ…!」

 克哉の両手が臀部に添えられて、浅く受け入れている箇所を間接的に刺激するように…
強弱をつけて捏ねるように揉まれていく。
 たったそれだけの刺激で前ははち切れんばかりに膨張し…しとどに蜜を零していく。
 
「ダメ、だ…克哉…! ダメ…っ!」
 
 せめて、ベッドで…と続けようとしたが、呼吸が乱れてそれ以上は言葉にならない。
 克哉の手が…ペニスに添えられて、浅い場所での抽送と同時に強い快楽を与えられて
しまったらもう抗う事など不可能に近かった。

「何がダメなんだ…孝典。こんなに俺の手をグチョグチャに濡らしている癖に…」

「バカ、そういう事は…言うなってば…あっ…はぁあ!!」

 泣きそうに切ない表情を浮かべながら反論していくが…相手の顔には自信満々そうな
表情が張り付いているだけだった。

「あんたのここは…早くもいやらしく、俺のモノに吸い付いて離そうとしないぞ…?」

「ん、はっ…耳元で、言うな…! もう…おかしく、なる…だろ…」

「そんなのは…とっくの昔に、だろ…素直に認めろよ…そんなに感じ捲くっている癖に…!」

「ひぃっ…!」

 ふいに根深くペニスが入り込んできて…御堂は驚愕の声を漏らしていく。
 だが克哉は一切容赦などしない。
 彼の身体をどこまでも深く割り裂き…熱い塊で蹂躙をしていくだけだ。

「んあっ…待て…っ! 私だけ…裸、なんて…っ!」

「その方が…『犯されている』感じがして…ゾクゾクするんじゃないのか? あんたは…?」
 
「んはっ…ダメ、耳まで…は…!」

 克哉の舌が執拗に耳の奥まで犯し…熱い舌先が鼓膜の傍で蠢く度に全身から力が
抜けそうになって…支えている腕まで崩れ落ちてしまいそうだった。
 そうしている間に胸と尻に克哉の手が伸ばされて、其処を重点的に愛撫されていく。
 その度に御堂の身体はビクビクビク…と淫らに震えて、強烈な感覚に耐えていくしかなかった。

「うぅ…はぁ…! か、つや…やぁ…」

 もう、喘ぎ声に言葉が掻き消されて…すでに意味の無い言葉しか紡げない。
 相手の熱いペニスが、御堂のもっとも感じる部位を執拗攻め上げ…快楽を
引きずり出していく。
 フローリングの床と触れ合っている部位が痛くて仕方なかったが、今はそんな感覚も
気にならないくらいに…強烈な快感に御堂は支配されていく。

 相手の手の中で蜜を溢れさせながら…どこまでも激しく身体を揺さぶられて…後孔の
内部を克哉自身で満たされていっぱいにされていく。
 ドクン、と内部で相手が脈動すればもう駄目だった。

「あっ…あぁ!」

 快楽の波が押し寄せてくるのが判った。
 克哉が刻んだ律動のリズムに合わせて腰を動かして行く度に強烈な悦楽が脊髄を
走り抜けていって…御堂の身体は弓なりに反りあがっていく。

「ん…はっ…!」

 精一杯顎を逸らしていきながら、ビクビクビクと全身を小刻みに震わせて…御堂が
達すると同時に、克哉の熱い精も…際奥を目掛けて勢い良く注ぎ込まれていった。

「んっ…あんたの中、相変わらず…イイ、味だ…」

「…ど、うして…君は、こういう時すらも…そういう…物言い、しか言えないんだ…バ、カ…」

 快楽の涙を瞳にうっすらと浮かべていきながら…拗ねた顔をして、こちらを振り返り…
御堂が反論してくる。

(今夜は言葉で虐めすぎたか…?)

 御堂の瞳が少し恨めしそうになっていたのでやりすぎたか…と思う事があっても、
結局は反省して改める事まではする気はなかった。

「…悪かった。あんたが可愛すぎた…からな…」

「…また、お前は私を可愛い…という。これでもこちらは君より年上なんだぞ? 
いい加減…そうこちらを評するのは止めて、もらいたいんだがな…」

「無理、だな。あんたを可愛いと思うのは俺の紛れも無い本心だからな…」
 
 そういって、不貞腐れる恋人に背後からそっと優しく口付けて機嫌を取っていってやる。

「…困った男だな…君は…」

「悪いな…これが、俺なんだ…」

 そうして…恋人の身体が冷えないようにしっかりと背後から抱きすくめて…髪や生え際にも
小さいキスを落としていってやる。
 振り向いてくれないと…相手の顔までは見えないので表情までは伺い知れなかったが…。

(耳まで赤くなっているな…照れているんだな…)

 真紅に染まっている耳だけは、隠しようがなく…それが如実に、御堂の心情を表してくれていた。

「どうして、そんなに…意地悪なんだろうな…」

 御堂が苦し紛れにそう悪態を突いていく。
 そんな彼も、胸が引き絞られそうに愛しくて仕方が無かったので…。

「あぁ…でも、そんな意地悪な俺を受け止めてくれているあんたを…俺は心から愛しているぞ…」

 と言い返したら、月光が静かに降り注ぐ窓際の近くで…哉にとって心から愛しい麗人は…
フルフルと全身を震わせてから深い溜息を突いていく。
 白い張りのある肌が…淡い光を受けてとても綺麗に見える。
 ただ、目の前の…御堂の顔に克哉は釘付けになってしまっていた。

「本当に…君は仕方の無い男だな…そんなのに惚れたのが私の運の尽きという訳か…」 

 と、精一杯の憎まれ口を叩いて。
 克哉の腕の中に…身を委ねて、苦笑しながら…こちらを振り向いて、どこまでも
優しいキスを俺に与えてくれたのだった―
 
  

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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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