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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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 ―五十嵐太一のアルバイトしているロイドに、不振な男の集団が
押し寄せてきたのは午後6時を回ったぐらいだった。
 現在、マスターである太一の父親は買い出しに出かけていて
店の中にいるのは太一一人だけだった。
 スーツ姿の男が3人入って来るのを見て、太一は営業スマイルを
浮かべて応対していく。
 
「いらっしゃいませ~。三名様ですか? カウンター席とテーブル席…
どちらをご希望ですか?」
 
 大学も現在、一浪している状態な為…学費を出してもらっている父親に
すっかりと頭が上がらなくなり、今では太一も少しはきっちりした言葉遣いで
客に対応するようになっていた。
 は人間、引け目や弱みがあるとその相手に逆らえなくなる傾向にあるが…
彼にとって今は父親がその対象だった。
 だが、声を掛けたが男たちは何の反応を見せない。
 
「もしもし~お客さ~ん?」
 
「…五十嵐太一だな?」
 
「そうですけど、お客さん達…俺に個人的な用があるんですか? 俺、
まったくそちらには面識がない筈なんですけど…」
 
「答える必要はない。我々と一緒に来てもらおうか…」
 
「げげっ…! もしかしてそれ、スタンガンかよ!」
 
 いきなり、先端の部分に電極のような金属の突起が突き出ている
器具を突きつけられて、太一は面食らっていく。
 紛れもなくそれはスタンガン、高圧の電流を瞬間的に人体に流して
意識を失わせる為の物だった。
 そんな物をいきなり突きつけられるとは尚更穏やかな話ではない。
 
(うっわ~久々にヤバイ場面が訪れたなぁ…。親父が傍にいてくれれば
何て事ないんだろうけど、スタンガンを持っている奴等、三人を相手に
一人ではきっついかも…)
 
 当然、相手が丸腰ならば三人ぐらい同時に相手にしても太一は
逃げる程度の事ならば十分可能だ。
 五十嵐の実家は名の知れた古くからあるやくざの家柄でもある。
 その関係で子供の頃から荒っぽい事にそれなりに免疫があるし…
実家のゴタゴタに巻き込まれて何度か修羅場を体験した事すらあった。
 だから大げさに驚いて見せて、まず相手の出方を伺っていく。
 
「…そうだ。抵抗さえしなければこちらも手荒い真似はするつもりはない。
一緒に来て貰おうか…」
 
「イヤだ、と言ったら…どうするつもり?」
 
「…それ相応の覚悟はして貰おうか…」
 
 そういって淡々とした口調で男はそう告げていく。
 その態度を見て、太一は歯噛みしたくなった。
 素人が慣れない強力な武器を手にしたのなら、もう少し気持ちが
高揚していたり…得意になって頼んでもいないのにベラベラと解説を
始めたりするものだが、男達の態度は落ち着いたものだった。
 それだけで相手はこういった事に対して場数を踏んでいる奴等で
あるのが判明していく。
 
(参ったな…一人で切り抜けられるかな…?)
 
 まず逃げ道を確保しようと、太一はカウンターの裏手にある従業員用の
出入り口の方を見遣っていく。 
 だがこちらの意図を察したかのように、相手が冷然と言い放った。
 
「裏口から逃げようとしても無駄だ…すでに其処はマークしてある…」
 
「ちぇ…こちらの考えはすでにお見通しって訳ね…」
 
 何でもない事のような顔を浮かべて取り繕っていたが、今の一言で
太一は内心、大きく動揺していた。
 大立ち回りを演じれば、太一とてそれなりに腕に覚えはある方だ。
 店の外に逃げ出すだけならば、それでも十分に可能だろう。
 だが、太一にとっては以下に店の内装に損害を出さずにこの場を
切り抜けるか…という算段も意識の中に入っていた。
 
(ここは親父の城だからなぁ…本当にどうしようもない時は仕方ないけど、
ここで大立ち回りを派手にやる訳にはいかないんだよな…)
 
 太一の父がこのちっぽけな自分の店にどれだけ愛情を込めているか…
ここで働いているからこそ、太一は良く理解していた。
 全力で頭を働かせて、この場をどう切り抜けるかを必死になって考えていく。
 
(ちぇ…ちょっとで良い。少しでも隙が出来れば…それを糸口にどうにか
出来そうなのにな…)
 
 現在の太一は三人の男に完全にマークをされている。
 左右正面、どこに動いてもぴったりと張り付かれてとても
逃げ切れそうにない。
 だとすれば後ろに下がって、裏口からがベストかも知れないが…男のさっきの
口振りではすでに其処にも人が置かれているらしかった。
 それが何人程度なのか、情報がない状態では…迂闊に後ろに
逃げるのは早計だった。
 
(さて、どうするかなぁ…。ほんのちょっとでも隙が出来れば其処から
突破口は掴めると思うけど…)
 
 今のこの状況では無駄に睨み合いが続くだけだ。
 空気が硬直しているのを感じていく。
 意識を研ぎすませば連中の息づかいすら鮮明に聞き取れる程だった。
 太一は真剣に、三人の男達の付け入る隙を探していく。だが彼らも
同じようにこちらの隙を伺っているのだろう。
 実力行使に入るとしても一対三では分が悪い。
 全員の体格も、太一よりも一回りは大きかった。
 
(…せめて一対一か、親父を入れて二対三とかだったらまだ勝負になるけど…
俺よりもガタイが良さそうな奴らに真っ正面からぶつかって行っても…返り討ちに
遭うだけっだよな…。あ~防犯グッズは奥の部屋のカバンの中だし。
外出している時ならもうちょい警戒して手元に置いておくけど…まさか店の中で
堂々と拉致してくる輩が出るとは思っていなかったもんなぁ…。うちのじいさんの
事を知っている奴等だったら、少なくともロイドにいる時に親父や俺にチョッカイ
掛けてくるような奴はまずいないからな…)
 
 と、そこまで考えた時に…ふと太一は気づいていった。
 
―この連中は極道絡みの件でこの店に顔を出した奴等でないかも知れないな…
 
 祖父の五十嵐寅一は関西の極道を束ねる存在であるし、父も表向きは
小さな喫茶店のマスターだが、裏社会では痕跡を殆ど残さずに人を殺める、
凄腕の殺し屋として名が知れている人間だった。
 だから裏社会の人間だったら、まず…この店に手を出す愚かな真似はしない。
 父と母、そして寅一を敵に回すことはいわば命がいらない事とイコールになる。
 今では五十嵐組と対立関係にある組とて、安易にこの店で太一にチョッカイ
掛けるような真似はしないだろう。
 なら、この男達はどういったツテでこちらを拉致しようとしているのだろう。
 そこまで考え至った時、太一はカマを掛けにいった。
 
「…ねえ、あんた達さぁ…どこの組の関係者? 俺がさ、関西の極道の元締め、
五十嵐寅一の孫だって知った上で…俺を拉致しに来た訳?」
 
「っ…!」
 
 その瞬間、衝撃が男たちの間に走っていったのを太一は見逃さなかった。
 
(やっぱりそうだ…こいつ等は、俺が…あの厄介なじじぃの跡継ぎと
見込まれているお気に入りの孫だっていう情報を…根本的に知らない…!)
 
 はっきり言うと、太一はあの祖父が好きではない。
 豪快な性格とかイザっていう時は筋を通す部分があることは認めている。
 だが、自分は跡継ぎになどまったくなる気がないのに唯一の男孫だからと
いう理由で事あるごとに…跡目は太一だと周囲に触れ回っているのは嫌だった。
 だが、この状況を打破出来るなら幾らでもそのネタを振ってやろうと思った。
 そういった切り替えの早さと割り切りの良さこそが、太一の武器でもあった。
 
―あのじじぃの事をダシに使うのは気が進まないけど…このネタを使って
こいつらに圧力を掛けるのを成功すれば、絶対隙は作れる筈だ…!
 
 太一はそう考えて、思考をフル回転させていく。
 まずはったりとして余裕のある、不適な笑みを浮かべていった。
 笑顔は時に、相手を精神的に追い詰める最大の武器となりうる。
 出来るだけ自信ありげに、ふてぶてしく笑う事を目標としていった。
 
「…俺さぁ、五十嵐組の血族の中でさ…唯一の男孫な訳ね。だからじじぃがさ…
ガキの頃から自分の跡継ぎは俺だって言って譲る気ないんだよ…。
あんたらが誰に頼まれて、俺を拉致しようとしているのか知らないけどさぁ…
俺に何かあったとしたら、五十嵐組を始め…関西のヤクザ達が黙っちゃいないよ…。
あんたらにはその覚悟があるのかな…?」
 
「で、デタラメはそこまでにして貰おうか…そんな嘘に我々が
引くとでも思っているのか…?」
 
「はは、声が震えているよ…。それにちょっと調べれば俺のことなんて
すぐに判るよ。人の話を嘘だって決め付ける前にさ…調べれば良いじゃん。
じじぃに太一って名前の男孫がいるかどうかさ…。それを調べれば俺が
本当のことを話しているって絶対に伝わる筈だよ」
 
 太一が余裕を取り戻していくのと対照的に、男たちはドンドン青ざめていく。
 もし…太一が言っていることが事実だったら、とんでもない事を
引き起こすキッカケにすらなりうるのだ。
 彼等が慎重になるのは、むしろ当然の事だった。
 
(ようしっ…! この手はイケる…この調子で少しずつ前に出て
間合いを詰めていけば…抜けられる…!)
 
 そうして男たちが惑い、視線を彷徨わせている僅かな隙を狙って…
ジワジワっと間合いを詰めていく。
 精神的な動揺が、彼らの包囲網に穴を作り始める。
 太一はそれを的確に突いて、それを打破しようとしていた。
 
―良し、もう少し奴らに気づかれないように近づけるなら…こいつらの隙を突ける!
 
 そう確信した瞬間だった。
 ロイドの扉はバァン!! と盛大な音を立てて開かれ…立派な体格を
した青いスーツ姿の青年がいきなり中に飛び込んで来た。
 
「太一! 無事かぁぁぁ!」
 
「げげげっ…!」
 
 その瞬間、太一はあまりの想定外のことが起こって一瞬フリーズを
仕掛けてしまった。
 相手の心理を微細な所まで読み上げて、心理戦に持ち込もうとしている
太一にとってはまさにKYを絵に描いたような男が乱入してきた事は
邪魔以外の何者でもなかった。
 
―何でこんな時に本多さんがやってくるんだよぉ…
 
 太一はその瞬間、本気で泣きたくなったが…どうにか気を取り直して、
切り替えていった。
 
「太一、助太刀するぞ! 俺が来たからには泥舟に乗ったつもりでいてくれ!」
 
「…本多さん、それを言うなら…大舟だってば! 泥船だと確実に沈むから!」
 
 太一は力いっぱい叫んで、突っ込み返していった。
 決して相性が良いとも、仲良いとも言えない本多がどうして今日に
限っては太一を助けに来たのか真意を計りかねようとしていた。
 だが、本多が来たことでまた場の空気が大幅に変わったのも事実だった。
 
(あっちゃ~この人のKYっぷり…健在かよ。せっかく良い流れになって
きたのに…何もかもが台無しだっつーの。…けど、この人強そうだし…
実力行使でも平気か…?)
 
 本多は標準的な男性の体系よりも遥かに優れている。
 最近、バレーを再開したみたいだと克哉が少し話していたし…スポーツマンなら
体力も人並み以上にある筈だ。
 とっさに作戦を切り替えて、太一は叫んでいく。
 
「本多さん、この人たちを片付けるの手伝って! こいつら、営業妨害
しているからさ…出来るだけ店の内装を壊さないように配慮しながら…宜しく!」
 
「おいおい…難しい注文をつけるなよ! まあ良い…気絶させりゃあ良いんだな?」
 
「うん! 宜しく!」
 
 二人が男たちを挟みながら、実に物騒な会話を交わしている間…男たちの
全身から殺気のようなものが発生し始めていたが…太一は敢えてスルーしていった。
  喧嘩慣れしている彼は、本多が来てくれた事でこの状況をひっくり
返せると確信をしていた。
 一対三なら直接相手にするのは無謀でも、体格的に勝っている本多と
一緒ならば…認めるのは癪だが、勝負にキチンとなってくれるのだ。
 
―悔しいけど、本多さんが来てくれた事で…勝負になる。とりあえず今は
この男たちを片付けさせてもらおう…!
 
 太一は目配せして、本多にもうこちらが動くことを伝えていく。
 そうして数分後…即興のタッグを組んだことでどうにか男たちを撃退して
追い払い…太一はどうしてこのタイミングで本多がこの店にやってきたのか
その事情を聞き出していったのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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