忍者ブログ
鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
[61]  [62]  [63]  [64]  [65]  [66]  [67]  [68]  [69]  [70]  [71
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。

 桜の回想 

 
―佐伯克哉は、いつの間にか…桜の日の回想に意識を飛ばしていた。

 目の前で少年の泣き顔が克哉の脳裏に浮かんで、いつの間にか
その状景に完全に引き込まれてしまっていた。
 直前まで手を繋いでいた筈の御堂の手の温もりすら忘れかけるぐらい
克哉は…過去の記憶に同調し…囚われてしまっている。
 青み掛かった髪をした、整った顔立ちの少年。
 年齢は、小学校高学年から中学に入ったばかりだろうか。
 ブレザーに身を包み、立っている姿には気品めいたものも感じられたが…
その顔が涙に濡れていたせいで、酷く幼い印象も受けてしまった。

『君は誰だい?』

 克哉は静かに問いかける。
 だが、相手は答えない。
 ただ…悲しそうにこちらを見つめて、涙を流している。
 凄く苦しそうに、顔を顰めながら…無理やり、歪んだ笑顔を
浮かべている。

『どうして、君はそんな顔を浮かべているんだよ…』

 少年が叫ぶように訴え掛ける。
 だが、彼の言葉は聞こえない。
 まるで口パクのように、唇だけは形作っているけれど…克哉の耳には
届かなかった。

『ねえ、何で泣いているの…?』

 克哉には、その少年が泣いている理由を思い出せない。
 けれどそう問いかけても、解答は戻って来なかった。
 満開の桜の下に立つ少年。
 これがきっと…自分が桜を恐れている原因となった出来事である事は
判っている。
 しかし…彼の顔だけを見ても答えは出ない。

『ねえ、君が誰なのか…教えてくれよ。オレはどうして…君の名前すら
思い出せないんだ…?』

 克哉は、その少年の顔をいくら見ても何も感じない。
 ただ泣き顔は酷く悲痛で…見知らぬ相手であっても胸を引き絞られるような
そんな想いを感じる。だから見ていて辛い。
 しかし克哉がその相手に抱く感情は、逆を言えば…その悲しみと疑問だけしか
存在していなかった。
 個人的な情や、感情等は思い出す事が出来ない。

 淡いピンクの桜の花。
 ただ、世界がその色だけで染め上げられているぐらいに咲き誇っていた日。
 その日は、一体…何があったのか?

(思い出すんだ…そもそも、この日は一体…何の日、何だ…? それにオレは
何を手に持って、着て…立っていたんだ…?)

 少年の顔を幾ら見ても思い出せないなら、他の事を思い出そうと思って…
その時点になってようやく自分の事を振り返った。
 手に持っているのは黒い革製の筒。
 恐らく中には卒業証書が入っているに違いなかった。
 …良く卒業式の日に校長や教頭から手渡される定番のものだ。

「卒業証書…?という事は…これは、小学校の卒業の日…なのか?」

 そういえば、自分は中学に入ってからの記憶しか殆ど思い出せなかった。
 中学は自宅のある位置からすれば随分遠くの方の学校に通っていたし
小学校時代の友人は誰一人、其処には入っていなかった。
 だから自分を知る人間が…それ以前の友人が一人もいなくても当然だと
当時は思っていたし、元々人に関わる気がなかったから…寂しいとも思わなかった。

―だが、それは何故だったんだろう…?

(よく考えたら…それは、おかしいことなんだ…。大人になった
今なら…判る、けれど…)

 けれど中学生だった当時は、一切気づかなかった。
 其れが極めて不自然な状況である事を。
 そもそも、どうして遠くの中学をわざわざ選んだのか…その理由すら知らないまま
当然のようにその学校に通い続けていた。

(そうだ、オレは…何も、知らなかったんだ…。疑問にすら、思わなかった…)

 大人になり、様々な経験を経た佐伯克哉が…過去を振り返ることにより、
当時は気づけなかった疑問と謎に、ようやく思い至っていく。

(君を知らなくて…当然、何だ…。オレは…君と、接した事がないんだから…)

 ようやく、その事実を認めていく。
 だから彼の泣き顔を見ても…自分は、懐かしさも感慨も何も覚えない。
 あの少年が大人になったであろう青年と顔を合わせた時も、この茶番の
ような出来事を実行に移すキッカケになったことが起こっても…やはり
自分の中に何も引っ掛からなかったのは、当然だったのだ。

―やっと判った。…ピースが埋まったよ…それがどうして、なのか…

 そうして、白昼夢。
 目覚めながら浸る夢の世界。過去の情景の中で…克哉は
得心したように呟いていく。

―彼は、お前に関わる存在だった。だから・・・だろう…? 『俺』…?

 そう呟いた瞬間、強風が吹いていった。
 息もつけないぐらいに勢い良く…強烈な勢いで吹き抜けていって…
桜の花が鮮やかに吹雪いていった。

―その時、克哉の目の前に…12歳の姿をした…もう一人の自分が
酷く醒めた目をして…其処に立っていたのだった―

 

PR
 ※最近、SSばかりで連載止まってすみません。
 介護の道に行く、と決心した辺りから…十代の時の暗かった
時代の自分を思い出して、ウダウダしていたので(苦笑)

 まあ、情けなくて今よりもずっと弱かった頃の自分を思い出して
ヘコんでいたっていうのか一番ぴったりかも(汗)
その暗かった時代を振り返って気づいたことを話に組みこんで
語ってみたいとふと思い…本日はこんな話を投下させて頂きます。
 心を閉ざしていた頃の自分を、今の克哉が振り返るお話。
 少し澤村が絡みます。(けどCPものじゃないです)

 人間って、最初から強い人間じゃないし。
 私だけではなく…長く生きれば、生きた分だけ…誰しも心の傷とか、トラウマに
なるような事を経験するものでしょう。
 かつては思い出すだけで辛くて死にたくなるぐらいに辛かった記憶が
長い年月を持って、少しずつ癒えて…懐かしさを持って振り返れる
日が訪れる。
 そんな心を、表現したいと思って書いた話です。
 …前の連載終わる前に、次の連載書くなよって突っ込まれそうですが、ここ暫く
自分の心の中にあるのはこの話だったので。
 …何か前の終わらせてからじゃないと、と思っていたらここ暫く話を書くリズムを
完全に崩してしまったんで、胸の中にあるものを正直に書きますわ(トホホ)

 興味のある方だけ、お付き合い下さいませ(ペコリ)
  こんにちは、香坂です。 
  とりあえず7月24日に無事に職業訓練校が開催する
ヘルパー二級の講座の選考面接、済ませて来ました。

 …例年では募集40名に対して1.2~1.5倍ぐらいの倍率程度だ
そうですが…今年は不況のせいか、期間は半年、そして相当に厳しい
講座であるにも関わらず総勢121名。
 倍率三倍の激戦となってて当日、凄い驚いたけど…一応、作文も
面接も全力でぶつかって悔いがないようにして来ました。
 受かっているか正直、判らないけど自分の気持ちを真っ直ぐに伝えて
作文も、四十五分間フルに使って、テーマに添ったものを書き上げましたし。

 一度挫折した道にもう一回、挑むって本当になけなしの勇気を
振り絞っていたので…不安をどうにかコントロールして、前向きに
面接日に挑むのが精一杯でした。情けない話なんですけどね。

 香坂が申し込んだ講座、月曜日から金曜日まで一日六時間みっちりと
授業をやり、毎週小テストが開かれて…常に70点以上を取らないといけない。
 期間中によっぽどのことがない限りは休めない。休んだら補講を受けられる
可能性も低い。基本的に講座受けている三カ月半ぐらいは、本気で
取り組まないといけない。
 けど厳しいけど、合格出来たら二級ヘルパーより若干プラスの資格がつく。
 そういうものだったので…情けない話、願書出してから毎日武者震いして
受かった場合、本当にやれるのか。
 そんな不安に負けて弱気になったり、面接で尻ごみするんじゃないかって
毎日気が気じゃなかったんで…(トホホ)
 
 多少お待たせして申し訳なかったですが、通販の発送は7月24日早朝を持って
全員の方にさせて頂きました。
 近い場所の方なら、本日から明日辺り。
 遠方の方なら、日曜日から月曜日辺りにはお手元に届くと思います。
 とりあえず全力は尽くして来たので、ぼちぼち創作に向かいます。
 結果は八月始めに判明します。

 …受かっていると信じたいです。
 それでは本日はこの辺で。
 明日辺りに、止まっていた連載に着手致しますね。では…。
 
※鬼畜眼鏡R 御克ルート前提のお話です。
 ハッピーエンド後の、克哉が自宅を整理する時の
一幕の話です。
 ネタバレ有なので未プレイの方は要注意。
 それを前提の上の克克…というか、眼鏡と克哉の
お話なのでご了承の上でお読み下さい。

 興味ある方は「つづきはこちら」をクリックして
詳細をどうぞ~。

 …とりあえず、職業訓練校の面接の件。
 24日の午前中に決まりました。
 …そして、いつにないぐらいに緊張している自分がいます…(ガタガタ)

 現時点での第一志望が、ヘルパー二級の資格を取ることなので…
とりあえず面接の本を読みつつ、セルフで練習中。
 願書読み直したり、とりあえず面接官に対しての回答を自分なりに
シュミレーションしたり、気持ちを静めるような行為ばっかりやっています。
 …不安でいっぱいなので今、余裕ないっす。
 どうもそういう要因も…ちょっと最近、書くのに集中出来ない事に
繋がっている気がします。(トホホ)
 気がつくとその事で頭がいっぱいで、色んな事が抜け落ちて
しまっています…(涙)

 …まあ、一番懸念していた耳の病状も沈静化しているので・…悪化
しなければ面接に影響は出なくて済みそうです。
 通販の処理、遅れてすみません!明日の午前中に最後の方に入金を
して下さった方全員分発送致しますのでもう少しお待ち下さい。
 う~心臓がバクバクしていて、こんなに緊張しているの久しぶり。
 とりあえず全力でやって来ます。
 …終わったら連載に専念します。もう少しだけ待ってやって下さいませ。
 どうか、受かって下さいませ…む~ん!(祈り)

 香坂です。
 何かこのサイトを開設してから、原稿もない状態で
一週間SSを書かないでいるのは初めてなので落ち着かない。
 耳の方の状況は安定してきたんですが、どうもずっと
動かし続けてきたエンジンを一旦、長期間止めてしまったので
なかなか着火してくれません。

 しかしいつまでもこの状況に甘んじているのも情けないので
ちょっとリハビリにSS書いてみた。
 連載、止まっててすみません。
 けど、水面下で起こっていた問題(外耳炎になったのはその
ストレスが要因だった…)もどうにか片付いて来たのでボチボチ
手をつけます。
 興味ある方は読んでやって下さい。

 ※鬼畜眼鏡R 御堂×克哉ルートネタバレ有です
 入院期間中の御克の一幕でございます~。
   中耳炎に限りなく近い外耳炎に掛かっていた為に…
ちょっと激痛で満足に寝ることも、集中することも出来なくて
連載、及び連絡等止まっていました。

 …香坂、耳が弱いので毎年夏になると一回は
耳を炎症させてしまいます(汗)
 やっと薬も効いて来て、アイスノンで常に耳の周辺を
冷やさなくても多少は大丈夫になってきたのでボチボチ
止まっていたことを再開しますね。

 …何か今週、LANの件と良いこれと良い…グダグダで
本気ですみません(汗)
 今夜(19日)は書けそうなコンディションなので…連載
書いて来ますね。
 通販の振込報告をして下さった方、月曜日には発送
致しますのでもう少しお待ち下さい。
 お待たせしてしまって申し訳ないです。
 やっと体調落ち着いて来たので動きますね。では…。

 本日は雑記。
 香坂の近況及び、状況報告になります。
 興味ない方はスルー出来るようにコソっと隠しておきます。
 読んでも良いという方だけ、「つづきはこちら」をクリックして
やって下さいませ~。


 

※ 突発に思いついたネタです。
  本日、濃いエロを書くよりも甘い話を書きたい心境だったので
短い話ですが投下させて頂きます。
 連載の続きはエロテンションが上がった時にやらせて頂きますので
宜しくです。(何でこんなに今夜は穏やかな心境なの…!)

『スリーピング・ビューティー』  御堂×克哉


―最愛の恋人と一緒に暮らすようになってから、御堂にとっては
ささやかな幸せが日常の中に幾つも増える事となった

 紆余曲折があって、克哉も正式にかつて住んでいた部屋を引き払い…
名実共に一緒に暮らす仲となった。
 そして…ビオレードの販売の成功と共に、御堂は海外の支社とも頻繁に
連絡を取る必要性に迫られて最近は帰宅する時間が連日遅くなっていた。

(軌道に乗るまでは…仕方ないな…)

 この多忙ぶりは、自分が手がけた商品の成功の結果なのだから…むしろ
有難いと思うべきだ。
 そうは思っても…連日、こうも夜遅くに帰宅する日々が続いてしまうと…
せっかく正式に同居をしたばかりだというのに少し残念に感じてしまう。
 もうじき、お互いに外国に出向して活動したりなど…顔も見れない日々が
暫く続くというのに…実にじれったいものを感じる。
 だが、今の御堂には…帰宅直後にささやかに胸が温まるものが待っている。
 それは密やかなに…今の彼の活力となっていた。

「ただいま、克哉…おや…?」

 リビングにたどり着くと、そこには最愛の恋人である克哉が…テーブルに
突っ伏した状態で眠っていた。
 どうやら御堂を待って出迎えようとして…先に眠ってしまったらしい。
 本来なら日中、彼も忙しい日々を送っている。
 だから待たなくても良いと何度も言っているのに、克哉は御堂に
「おかえりなさい」と伝えることにこだわった。
 今は忙しくて、なかなか恋人として…伴侶としての時間を過ごせない。
 だから一日の終わり…眠りに就く直後だけでも、「恋人」として御堂に
接したいと。そう頑として言い切られてしまって、この習慣は続いていた。

「…先に眠ってしまったみたいだな。まあ…無理もない。克哉がこなしている
仕事だけでも今は膨大なものがあるからな…」

 そう言いつつも、机に顔を伏せて眠っている恋人を愛しげに
見下ろしていく。
 安らかに眠っている克哉を眺めていると…強い庇護欲と、嗜虐性を同時に
刺激されてしまう。
 守りたいのに、同時に悪戯したいという…相反する感情が湧き上がっていく。

「…まさに君は、私だけの眠り姫だな。…王子のように、君に口づけるか…
もしくは意地悪なオオカミとなって…その唇を貪るか。迷う処だな…?」

 今の克哉は御堂に対して、完全に構えを解いている。
 だから…傍らに立ったとしても目覚める気配はなかった。

「…克哉」

 そして短く呟きながら男はそっと…身体を曲げて、テーブルに突っ伏して
寝ている克哉の方へ顔を寄せていく。
 最初はどこまでも甘く優しく、そしてすぐに情熱を帯びていきながら…
恋人の唇を堪能していく。

「ふっ…っ…ぅ!」

 流石にこの攻撃には、克哉も目覚めざるを得なかったようだ。
 最初は茫然と御堂に舌先で、口腔内を犯されていたが…意識が覚醒してから
ジタバタと必死にもがいていく。
 酸欠寸前になりながら、どうにか御堂の執拗なキスから逃れていくと…
克哉は瞳を潤ませていきながら、荒い呼吸を吐いていった。

「た、孝典さん…!  いつ帰って来た、というか…今、な、何をしたんですか!」

「…ん? 私の可愛い眠り姫に向かって、目覚めのキスを交わしただけだが?」

「だ、誰が眠り姫ですか! そ、そんな恥ずかしい事を言わないで…!」

「いいや、眠り姫は英語で言えば…スリーピング・ビューティー…眠れる美女だ。
私にとっては無防備に眠っている君の姿ほど、その単語に相応しい存在はいない。
だから…君が私の、愛しい眠り姫だという事実は譲るつもりはないな…」

 平然と、きっぱりと御堂は言いきったので…克哉は恥ずかしさのあまり
口をパクパクさせながら、反論する気力すら失っているようだった。

(嗚呼…交際するようになってからも、数えきれないぐらいに抱いているというのに…
君は未だに処女のようにウブな処が抜けきらないな…)

 ベッドの上で抱いている時はまさに淫乱な娼婦のように乱れる癖に…
こういう戯れのような言葉で動揺して、顔を赤らめている様は本当に
ギャップがあって…可愛らしいものだと思う。
 だからこそ数多の美女を相手にしてもただの一度も相手に狂うことなど
なかった御堂が…この年下の青年だけは、本気になった訳だが。

「もう! 帰ってくる早々…何ですか! そんな恥ずかしいことばかり言って…!
そんなに、オレをからかって愉しいですか!」

「あぁ、実に愉しい。あぁ…そんな拗ねた顔はしないでくれ。…こうして毎晩、
遅くまでたった一言をいう為に遅くまで待っていてくれている君をどうして
愛しいと思わずにいられるのだろうか…。そう思って、割り切ってくれないか…?」

「っ…! 今夜の御堂さん、おかしいです…! さっきからどうして聞いているだけで
恥ずかしくなるようなことばかり言うんですかー!」

 どうやら、からかうのはこの辺までにした方が良さそうだった。
 克哉の反応が可愛くて仕方なくて、普段よりも大仰な言い回しで想いを
伝えていたが…これ以上やると本当にへそを曲げられてしまいそうだ。
 そう考えて華美な装飾を施した大仰な言い回しをを止めて…いつもの御堂の
口調に戻っていく。

「あぁ…悪かった。あまりに君が動揺して、顔を真っ赤にするものだからな…。
つい、悪ふざけが過ぎてしまった…」

「……。本当に、孝、典さんは…意地悪です…」

 そうして、椅子に腰かけたままの体制の克哉の背中にそっと覆い被さり…
彼を静かに抱きしめていく。
 温かくて、この温もりを腕の中に感じるとほっとした。

「…すまなかった。さあ…今夜も、そろそろ…言ってくれるだろうか?
その一言を君に毎晩聞かせてもらうだけで…明日も頑張ろうと、
私も奮起が出来るからな…」

「…もう、仕方ないですね・・・。判りました…」

 背後から抱きしめて、米神にキスを落としたことで少し克哉も機嫌を
直してくれたようだった。
 スウ、と深呼吸をしてから…克哉は静かに告げていく。

「…今日も、おかえりなさい。孝典さん…一日、お疲れ様でした…」

「うむ…君、もな…」

 そうして、愛しい存在がこちらの方に振り返って…労いのキスを
与えてくれる。
 この一時の甘さに、酔いしれて…それだけで幸福感が満ちていく。
 社会に出れば、日常の中では叱責や注意、文句ばかりで。
 そんな言葉に晒され続ければ心がすさむのは当然だった。
 だが、大切な人間に認められて…こうして温かく声を掛けられれば
それだけで活力は満ちて、明日も頑張ろうと心を奮い立たせられる。
 だから克哉は、御堂を待って…この一言を、想いを告げることに
拘っているのだろう。
 一日も長く、自分たちの恋愛が長く続くように…そう願っているから―

『………………』

 暫く無言のままで、静かに唇を重ね合っていた。
 だが少し経ってから御堂のいたずらな舌先が…克哉の口腔内をくすぐり
始めたので・・・僅かにその背が戦慄き続ける。

「…克哉…」

「あっ…ぅ…ダ、メ…です。明日も…仕事が…」

「…あぁ、判っている…」

 けれどせめて、深い口づけだけでも欲しいと…掻き立てるような
欲望と戦い続ける。

「…もう、オレの王子様は…随分とエッチなキスをされるんですね…」

「嫌か?」

「いいえ。それが…孝典さんですから…」

 そうして、全てを達観しきったように…克哉は笑う。
 御堂の素晴らしいところも、意地悪な処も…彼を構成する要素の
全部が愛しいと受容してくれている…そんな微笑みを浮かべていく。

「…貴方のそんな処も、オレは…好きですから…」

「…そうか。それは…光栄だな…」

 そうして、大切な人間を背後からしっかりと抱きしめながら…
暫く幸福なキスにお互いに酔いしれていく。
 そして御堂は心の中で、その甘い口づけに酔いしれながら…
心から強く願っていった。

 ―私の愛しいスリーピング・ビューティーよ
  いつまでも、この腕の中で愛らしいままで…こうして私の帰りを
待っていておくれ

 自宅に帰れば、君が微笑んで待ってくれている
 それだけで…私はどれほどの激務をこなしていても耐えられる
 君の笑顔だけで―
 

※予定より大幅に掲載遅れてすみません!!
お待たせしました!
 6月25日から新連載です。
 今回のCPは御堂×克哉となります。
 テーマは酒、(「BAR」&カクテル)です。
 鬼畜眼鏡Rで、太一×克哉ルートで克哉が軌道が乗るまでアメリカで
BARで働いていたという設定を見て、御堂×克哉でもカクテルやバーを
絡めた話が見たいな~という動機で生まれた話です。
  その点をご了承で、お付き合いして頂ければ幸いです。

 秘められた想い                      

 ―相手の腕の中に囚われた時、克哉はふと…クモの巣に掛かった
蝶の気持ちとは、こんな感じなのだろうかと思った。

 いつもの理知的な仮面はかなぐり捨てられ、獰猛な雄としての
御堂が目の前に存在している。
 シャワーを浴びていないせいか、お互いの汗と体臭の匂いが
鼻を突いて…酷く興奮していく。
 窓ガラスに張り付けられた状態で、衣服を手荒に脱がされて…
御堂にその場に縫い付けられている自分は、まるで標本にされる
昆虫か何かのようだ。
 窓際で抱かれるなんて、他の誰かに見られるかも知れない。
 そう思うと、恐怖に似た感情が湧き出てくる。
 だが、恋人関係になる前の御堂とのセックスは何度も危ない橋を
渡った事を思い出していく。

(…そうだ、御堂さんには執務室で無理やりされた事もあった…。
あの時も、誰かが途中で来たりしないか…ヒヤヒヤしていた事が…)

 その時の官能的な記憶を思い出して、克哉は悪寒めいたものを
感じていく。
 アッという間に自分だけが全裸になる。御堂は上着を脱ぎ、ネクタイを解いて…
シャツを僅かに着崩している程度だ。

「オレ、ばかりが…何て、恥ずかしい…です…御堂、さん…」

「…クク、それすらも…君にとっては快楽の要因…だろう…?」

「っ…!」

 自分ばかりが全裸となり、相手に全てを曝している状態は…焼けつくような
羞恥を覚えていく。
 だが相手はそんなのはとっくの昔にお見通しらしい。
 だからわざと脱がずに、克哉だけを剥いていったのだ。
 それすらも快楽の導火線とする為に…そんな意志を、喉の奥で噛み殺した
笑い声で悟っていく。

「…克哉、どうせなら…夜景をたっぷりと楽しむと良い。この部屋から見える
夜景はきっと…絶品だぞ?」

「そ、そんな…っ!」

 ふいに身体を反転させられて、身体の前面部の方がガラス戸に押し付けられる。
 克哉の眼前には、宝石箱をひっくり返したような見事な夜景が広がっている。
 色とりどりのネオンは、まるで生きているかのような輝きだった。
 その明かりは、この眼下に多くの人々が息づいて生活をしている証だ。
 自覚した途端、克哉の顔は一層赤く染まっていく。

「孝、典さん…ヤメ、て…」

「ほう? 嫌だと言っている割には…ここはもうこんなに硬くなって…私の指を
弾かんばかりになっているがな…?」

「ひっ! うっ…!」

 背後から手を回されて、両方の胸の突起を弄られていく。
 執拗に、強弱をつけられていきながら其処を責められて…克哉は半ば
気が狂いそうになった。
 ガラス戸にとっさに爪を立ててしまいそうになるが、ツルツルと滑って
叶わなかった。
 胸を責められている間、首の付け根や肩口、耳の後ろを…唇で強く
吸い上げられて所有の痕を刻まれる。
 セックスの度に、御堂は克哉は自分のものだと主張するように…
全身に赤い痕を刻みつける。
 身体の関係を持って暫くしてから、いつの間にかされるようになっていた。
 抱かれるたびに、飽く事なくつけられる痕跡。
 御堂の、所有と独占欲の証。
 いつだって色濃く刻まれるから、痛みが伴う。
 だが…情事の時には、それすらも快楽に繋がっていくようだ。

「あっ…はっ…ぁ…」

 悩ましい声を漏らすと同時に、蕾に熱く猛ったものが宛がわれた。
 紛れもなく御堂の欲望そのものだった。
 それが慣らしてもいない狭い入口を割り開くように…先端を宛がわれて
幾度も擦りつけられていく。

「やっ…いきなり、は…!」

 すでに御堂に何度も抱かれて、その形が記憶に刻まれている程だ。
 それでもいきなり慣らしもせずに突っ込まれるのは抵抗があった。

「…心配するな。私とて、君を傷つけたい訳ではないからな…」

「あっ…」

 そうして、御堂は…ポケットから小さなジェルの入った容器を取り出していく。
 最初は冷たいそれをたっぷり目に取られて…奥まった箇所に塗りつけられていく。
 その滑りの手伝いもあってか…あっという間に御堂の指先を二本、飲み込んでいき。

「あっ…あぁぁ…っ…!」

 期待していたものではなく、代わりにスルっと指を含まされてもどかしいと
ばかりに克哉が高い声で啼いていく。
 御堂の整った指先がまるで別の生き物のように蠢いて…克哉の
脆弱な場所ばかりを攻め立てていく。
 だが、すでに御堂の性器の質感と熱さを覚えこまされてしまっている貪欲な
肉体はそんな刺激だけでは最早満足しきれなくなっている。
 ジェルを溢れんばかりに、淫らな場所に塗り込まれて…ジュプジュプ、と
淫靡な音が立っていくのが判る。

「…相変わらず君の中は貪欲だな。指だけでも…こんなにキツく
締め付けて、私のを食いちぎらん限りだ…」

「やっ…ぅ…お願い、です…言わない、で…! ひうっ…!」

「…聞く気はないな…。それに、あのBARにいた時からずっと…今夜は
君をトコトン、啼かせたくて仕方なかった…」

「はっ…ほん、とうに…いじ、わる…です。孝、典さんは…んんっ!」

 指の腹が前立腺の部位を執拗に擦っていくと、克哉の眼元から生理的な
涙が溢れだしていく。
 耐えきれないとばかりに懸命に頭を振っていくが…御堂は一切、容赦する
つもりはなかった。
 指だけでも気が苦しそうな快楽をすでに与えられて、身体は何度も窓ガラスに
全身を押し付けるようにしてその衝撃に耐え続けている。
 だが、奥深い処では貪婪に…さらに深い快楽を求め始めている。

(貴方が…早く、欲しい…!)

 あの熱くて硬い凶器で、自分をメチャクチャにしてほしい。
 いつしかその欲望だけが克哉の思考を支配していった。
 なりふり構わず、相手にねだるように腰をくねらせて…御堂が与えてくる
刺激に耐えていく。

「は、やく…くださ、い…! もう…オレ、耐えきれ、ないです…!」

 そして…応えきれず、懇願する声が克哉の喉から漏れていく。

「…淫らな奴だ。そんなに…欲しいのか…?」

「は、はい…!」

 気づけば指は素早く引き抜かれて、相手のペニスが宛がわれていく。
 ドクドクドク…と硬く張り詰めているソレを感じ取って、期待するように克哉の
喉が鳴っていった。
 そうだ、それが欲しくて堪らない。
 その熱くて硬いモノで…どうか自分の奥深い処を割り開いて根元まで
貫いていってほしいと…そう訴え掛けるように克哉の腰がくねって、自ら
それを飲み込もうとしていく。

「…がっつくな。今から、君を存分に…犯してやる…」

「うれ、しい…です…やっと…貴方、と…」

「あぁ、そうだな。やっと君を味わえる…。本当に、週末が恋しくて仕方ないな…」

「はぁ…ん!」

 そうして、御堂に顎を掴まれて苦しい体制を取らされていってから…
熱いペニスが入り込んでくる。
 眼前に広がる夜景も、今は意識から飛んでいった。
 今、克哉の心に存在しているのは自分をこうして抱いている御堂だけだから。
 ただ…相手から与えられる刺激に集中しようと…克哉は、奥まで御堂の
性器をズブズブと飲みこんでいったのだった―

 
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[03/16 ほのぼな]
[02/25 みかん]
[11/11 らんか]
[08/09 mgn]
[08/09 mgn]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

 当ブログサイトへのリンク方法


URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/

リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ * [PR]