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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                   

 そしてクリスマス当日、克哉は御堂に会社前まで迎えに来て
貰うのと同時に目隠しをされていった。
 今日は少し、仕事が立て込んでしまったので残業になってしまった。
 その事を申し訳なく思いながら会社の玄関に慌てて向かっていくと
御堂はぶっきらぼうに対応して克哉の視界を白い布地で奪い、
助手席へと押し込んでいった。

(一体御堂さんはオレを何処に連れていくつもりなのだろう…)

 社内には車のエンジン音だけが大きく響いていく。
 恐らく御堂は運転の方に集中しているのだろう。
 先程から幾つかの質問の言葉をこちらから投げかけていったが
御堂からはまともな返答が戻って来る事はなかった。
 
―ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…

 目隠しをされて何も見て確認が出来ないという状況下のせいか
心臓が嫌に大きく脈動しているのが判った。
 自分の鼓動の音だけが、妙に大きく感じられてしまう。

(まさかクリスマスの日にこんな展開になるなんて…。何て言うか
何も見えないっていうのは落ち着かないな…。まるで御堂さんに
連れ浚われてしまうみたいな錯覚を覚えてしまうな…)

 御堂に拉致されて、どこかに監禁されてしまうような甘美な錯覚。
 だがそのシチュエーションを想像した途端、背筋に痺れが
走り抜けていくようだった。
 例えば、御堂に閉じ込められてしまったらどうなるのだろうか。
 他の人間と一切関わる事が出来ず、この人だけとしか接する事が
出来なくなったら。
 二人きりの世界でずっと生きる事が出来たら…。
 そんな現実離れした夢想が克哉の中に生まれて、次第に大きく
膨らんでいった。
 
(…きっと、そうなったら今のオレにとっては…一つの理想郷かも
知れないな…)

 まともに何も見れない状況下だからだろう。
 脳裏にそんな事を空想していく。
 実際は御堂はそんな事をしないだろうが…その瞬間、克哉は
己の胸の奥に潜む願望を垣間見る事になった。
 無意識の内に、縋るように御堂の名を口にしていった。

「御堂、さん…」

 恐らく自分が座っているのなら御堂はこちらにいるだろう。
 そう推測して愛しい人がいると思われる方角に克哉は振り向いていく。
 その瞬間、車が止まったような気がした。
 同時に…何かが近づいてくる気配も強く感じていくと…。

「っ…!」

 唐突に唇が塞がれていく。
 不意を突く形でこちらの口腔に捻じ込むように熱い舌先が
割り込んでくる。
 とっさに口を閉じて侵入を拒んでいくも…御堂はそれを抉じ開けるように
力強く舌先を挿入してくる。
 まるで御堂に無理やり犯されているかのような気分になってくる。

「はっ…ぁ…」

 強引に割り込まれていくかのように口づけられていく。
 たったそれだけの事で身体が熱くなってどうしようもなくなる。
 こちらの歯列を、そして上顎や下顎を…熱い舌先にも余す処なく
御堂の舌で舐め上げられて、そして深く絡め取られていく。
 時間にすれば一分程度。
 もしかしたら信号待ちをしている最中かも知れない。
 唐突なキスの時間に…克哉の思考はバラバラになりかけていく。

「…続きは後で、な…」

「えっ…あ…」

 名残惜しげにキスを解かれて、あやすような口調でそう一言だけ
告げられていった。
 御堂を追いかけるように、とっさに手を伸ばしていけば…ギアの
処に添えられている御堂の手の甲に己の手を重ねていく。
 
「佐伯…其処に手を置くのは今は危険だ…」

「あ、すみません…ごめん、なさい…」

 本当は見えなくて不安だった。
 けれどその言葉で確かに運転中にこちらが御堂の手の上にこちらの
手を重ねるのは危険と察して、おずおずと離していく。
 縋れるもののない不安を覚えていきながら…満足に外の景色を確認する
事も出来ないまま車は進められていく。
 確かにすでに迎えに来て貰った時点で暗くなっていて…空は
紺碧に染められていた。
 けれどそのせいで周囲の状況が見えづらいのと、全く見て確認を
する事が出来ないのは全く違う。

(御堂さん…貴方は一体、オレを何処に連れていくつもりなんですか…?)

 まだ付き合い始めて日が浅いせいか、一カ月も経っていないせいで
克哉にはそれを推測するだけの情報を持っていない。
 御堂が何を考えて、この日に自分を迎えに来て何処に連れて行こうと
しているのか。
 だからこそどうしようもない高揚を同時に生みだし、耳までつい赤く
なるぐらいに興奮を覚えていく。

―早く、目的地に着いて欲しい。そうじゃなければ…オレの心臓の方が
先にパンクしてしまいそうだ…!

 そうしてギュっと強く目を閉じていきながら…その瞬間が早く訪れて
くれる事を克哉は切実に祈っていったのだった―

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 現在連載中のお話のログ

この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                 

 
 今日、突然に御堂に誘われて一緒にクリスマスツリーを買ったのが
とても嬉しかった。
 ついこの間まで、こんな風に恋人同士として日常を送るなんて
自分達には無縁だったから。
 その嬉しさが、身体の反応として出てしまっているのだろう。
 御堂の指がこちらの奥まった個所に侵入し、暴かれているにも関わらず
克哉は胸が詰まりそうな喜びを覚えていた。

「はっ…御堂、さん…、イイ…!」

「ああ、なら此処をいっぱい擦り上げてある…。ほら、もっと私を感じるんだ…」

「は、い…ん、あはっ…!」

 その指先がこちらの前立腺の部位を探り当てていく度に、克哉の肉体は
大きくベッドシーツの上で跳ねて悶え始めていく。
 男の魔法のスイッチとも称される其処は…一度その部位から与えられる
快感を知ってしまえば相当に癖になる。
 実際、克哉もこうやって御堂に抱かれるまでは…男の指や性器を受け入れる事で
ここまで深い悦楽を得られるなど知らなかった。
 しかし散々御堂に抱かれて快楽を覚え込まされてしまった身体は顕著に
与えられる刺激に反応し、浅ましく収縮を繰り返していく。
 最初は硬かった内部が徐々に蕩けるように柔らかくなり…吸いつくように
御堂の指を食み始めていくのを感じ取ってから、御堂はようやく其処への愛撫を
中断して、内部から指を引き抜いていった。

「あっ…ぅ…」

「抱くぞ、克哉…」

「えっ…? う、ああああっ…!」

 御堂がこちらの事を下の名前で呼んだことに違和感を覚えるのと同時に
バックから容赦なくペニスが侵入してきた。
 その衝撃に、直前に感じた違和感を口に出す事が出来なくなっていく。
 ズン、と深い場所を抉られて最奥を突き上げられていく感覚に抗う事が
出来なくなって…その強引なリズムに巻き込まれていく。

「あっ…ふっ…イイ、凄く…イイ、御堂、さん…ん、あっ…!」

 克哉はともかくシーツを強く握りしめてその感覚に耐えていった。
 その瞬間、耳元で低い声で囁かれていく。

―君は私の名前を、まだ下の方では呼んでくれないのか…?

 その言葉を聞いた瞬間、冷や水を浴びせられたようになった。
 だが…グっと唇を噛んでいきながら小さく克哉は答えていく。

「ん、はっ…まだ、貴方の名前を…呼べる、程…勇気、が…んんっ…!」

「私はたった今、君の名字でなく下の名で呼んだのにか…?」

「え、ええっ…ごめん、なさい…はっ…!」

 まだ、克哉と御堂はお互いの名を名字で呼びあっていた。
 恋人同士になったというのに、そのせいでどこか堅苦しい感じがあるのは
否めなかった。
 けれど克哉にとっては御堂とこうやって恋人同士になるというのはまだ
何処か夢を見ているのではないかというぐらい現実感が伴わない事で。
 あの御堂を、本当に下の名前で呼んで構わないのだろうかと…半分
信じられない部分があるからこそ、未だに呼べないでいた。

「そうか、残念だが…私が、君にした事を思えば無理もない事だ…。気長に、
構える事にしよう…」

「いえ、オレは…貴方を、憎んでなんて…いません、から…。まだ、オレの
方の心、の準備が…出来て、いない…だけ、です…んはっ…!」

 御堂から与えられる衝撃に必死に耐えていきながら、克哉は懸命に
声を絞り出していく。
 辛うじて言葉のやり取りが出来る程度まで抽送の速度は抑えられて
いたが…気を抜けば嬌声が漏れてしまう状況下で、言葉を交わし合うのは
かなりの気力が必要だった。

「判った…待とう。君が自然に、私の名前を呼べるようになる…その日まで、な…」

「あり、がとう…ござい、ます…はっ…!」

 克哉が礼を告げたその瞬間に、御堂の突き上げは一層激しさを増していく。
 その段階まで来ればもうまともな言葉など紡げる筈がない。
 必死になってその衝撃に耐えて、懸命に御堂が刻むリズムについて
いく以外に成す術はなかった。

「はっ…ううっ…くっ…あっ、もう…ああっ!」

「早く、イクんだ克哉…私も、もう…!」

「はっ…い…んんっ、あっ…ああっ―!」

 そうして克哉は御堂から与えられる刺激によって、昇り詰めていく。
 頭の中が真っ白になって何もまともに考えられなくなっていった。
 その感覚に翻弄されて、一瞬意識を失いかける。
 自分の身体の奥に、すぐに熱い精が注ぎ込まれていって…満ち足りた
感覚が彼を包み込んでいった。
 間際に、御堂の唇が耳元に宛がわれていって…克哉はその内容を
聞いていった。

―クリスマスの日の夜は、君と…

 それは御堂にとっては、精一杯の告白であり…誘いの言葉だった。
 だが、克哉はその言葉に対してキチンと答える事が出来たのか定かで
ない状態で…緩やかに意識を失い、まどろみの中に落ちていったのだった―

 


この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス               

 
 御堂からの口づけは強引で、情熱的だった。
 恋人同士になる前から、執拗なキスだと常々感じていたが…それは
今でも変わらない、いや余計に力強さを増したようにさえ思える。

「ふっ…うっ…」

 克哉の唇からくぐもった声が自然と漏れていく。
 相手の背中に縋りつき、そのシャツを強く握りしめていきながら
その感覚に必死になって耐えていった。

(キスだけで、本当におかしくなりそう…だ…!)

 体中が敏感になって、御堂から与えられる快感に反応して
しまっているのを自覚する。
 胸の突起も、ペニスも…奥まった蕾すらも愛しい相手を求めて
過敏になってしまっている。
 御堂の手で乱暴に衣服を剥かれていく。
 未だにこの瞬間に慣れないでいる。

「御堂、さん…見ない、で…」

「断る。君の恥ずかしい姿を見ないのは勿体ないからな…」

「ん、ふっ…」

 部屋の明かりが点けられた状態のまま、性急な手つきで裸身を
晒す羽目になる。
 御堂の眼差しがこちらに絡みついてくるようで…触れられても
いないのに、怪しい電流が視線が注がれている個所に走り抜けて
いくようだった。
 胸の突起を荒々しく弄られるだけで、ビリリと甘い痺れが走って
ペニスが一層力強く息づいていくのを自覚していく。
 
「やっ…御堂さん、早く…下、触って…」

 もうさっきから、下半身が反応しているのに決定的な刺激を
与えられないままなのが辛くて…思わずそう懇願していってしまう。
 腰をしきりに捩り、股をすり合わせるようにしながら…克哉は
つい瞳を潤ませて訴えかけていく。

「…もう、恥ずかしい場所に触れられるのを君はおねだりするのか…?
今夜は随分と積極的じゃないか…」

「やっ…言わないで、下さい…んんっ…」

「ほう…もう、燃えるように熱くなっているな…。この家に来てからずっと…
私にこうされるのを期待し続けていたのか…?」

「は、はい…そうです…。貴方の匂いを感じてしまったら、オレは…
冷静でなんかいられないですから…はっ…」

 御堂の手がこちらの衣服に侵入してきて、的確にペニスを刺激し始めていく。
 それはじれったいぐらいの速度ながら…克哉の感じる部位を的確に攻めて
くるせいで…あっという間にまた性器の先端から蜜が溢れていった。
 ドクンドクン、と荒く脈動するペニスは如実の克哉の性欲を表していて…
それを自覚した途端に更に耳まで真っ赤になっていく。

「…体調は本当に、大丈夫なのか…?」

「はい、大丈夫です…。風邪じゃなくて、その…これは…貴方の家に来て…
身体が、収まり切らなくなってしまったからですから…」

 その真相を打ち明けるのが恥ずかしくてカアァ…とまた顔が赤くなってしまう。
 御堂に事実を伝えるのは多少、躊躇いがあった。
 けれど抱きあうからにはこの人に加減などして欲しくなかった。
 本当に体調不良なら仕方ないと思う。
 明日だって仕事が控えている訳なのだから…けど、今はそうじゃないのだから
全力で自分に触れて、抱いて欲しいと心底思った。

「…ほう、やはり君には淫乱の素質があるようだな…。たったそれだけの事で
ここまで顕著に反応してしまうなんてな…」

「やっ…言わないで、下さい…はっ…」

 そう耳元で揶揄する言葉を囁かれていきながらごく自然に体制を
変えられていってしまう。
 ベッドの上で四つん這いになり…御堂に向かって高々と腰を突き出すような
体制になった時、あっという間に下着ごとズボンを引き下ろされていった。
 臀部に冷たい外気が触れて、ゾクっと背筋に寒気のようなものが走っていく。
 だが…欲情で身体がほてっているせいか、それも僅かな間の事だった。

「今夜はバックから、君を抱くぞ…」

「あ、はい…御堂さんの好きに、して下さい…」

 御堂の手が克哉の滑らかな臀部を辿って…ゆっくりと揉みしだき
始めていく。
 この体制だと自分の浅ましい個所は御堂に赤裸々に晒される事になるので…
頭のてっぺんから火を噴きそうなぐらいに恥ずかしくて仕方なかった。
 ヒクヒクと相手を求めて、自分の蕾が収縮を繰り返してしまっている様を
見られているのを自覚して…それだけで気が狂いそうになる。

「君のこっちの口は本当にいやらしいな…。さっきから何度も私を
求めてパクパクと収縮を繰り返しているぞ…」

「ん、あっ…言わないで、早く…御堂、さん…!」

 言葉で苛まれる度に嗜虐的な喜びが克哉の背中に走り抜けていく。
 それが限界近くにまで達したのか、克哉は必死になって背後にいる
愛しい人に強請っていった。
 そう告げた瞬間、臀部に冷たいものが大量に掛けられていく。

「は、んんっ…冷たい…」

「すぐに熱くしてやる…心配するな…」

「はっ…くっ…!」

 御堂の指先が、克哉の蕾の中に侵入してくる。
 ローションの滑りがプラスされているせいかあっさりと奥まで挿入されて
克哉の脆弱な個所を探り当てられていく。

「ん、はっ…御堂、さん…其処、イイッ…あっ…!」

 そしてすぐに御堂から与えられる強烈な刺激に翻弄され…指だけにも
関わらず克哉はベッドの上で大きく身体を跳ねさせていきながら
暫くその感覚を享受していったのだった―
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス          

 扉が開いた瞬間、克哉はどうしたら良いのか判らなくなった。
 せめて後一分、いや30秒の猶予があれば頂点に達する事が出来たのに
その寸前で御堂が部屋に入って来てしまったせいで手を止めざるを
得なかった。
 
(どうしようどうしようどうしよう…!)

 御堂の部屋で耐えきれずに自慰をしてしまった事に対しての後ろめたさが
一気に襲い掛かって、半ばパニックになりかけた。
 動機と息切れがして、本気でこのまま意識を失くして眠りに落ちて
しまえたらどれだけ自分は救われる事だろうか。
 心底そんな事を考えてグルグルしている克哉に対して、御堂は優しく
声を掛けてくれた。

「克哉…とりあえずあっさりと玉子ガユでも作って見た。コンソメを
ベースにした洋風の味付けのものだが…味は悪くないと思う。
良かったら食べてみてくれ…」

「あ、ありがとうございます…俺の為に、わざわざ…」

 御堂の心遣いに思わず、ジーンとなってしまった。
 だからこそ相手がこれを作ってくれている間に…欲情して自慰を
してしまった事実に居たたまれなくなってしまう。

(うう…オレってば、最低かも…。こんなオレに御堂さんはとても
優しく労わってくれているのに…)

 まだ下半身は疼いて、半勃ち状態になっている。
 だが御堂がわざわざ作ってくれた料理をムゲにするような真似を
する訳にはいかないとどうにか身体を起こしていく。

(よ、良かった…丁度、半分だけ身体を起こした状態だと、布団にも大きな
シワが出来るから…それで、テント張ったモノをどうにかギリギリで隠せる…)

 一番危惧していた問題はどうにかなったので、意を決して料理が
乗せられた丸型のお盆を受け取っていく。
 白い器に適量盛られたコンソメの風味がする玉子ガユは見ているだけで
食欲をそそっていった。
 正直言うとお腹はペコペコだったが、一応自分は体調不良という事に
なっているのでがっつく訳にもいかない。
 だからゆっくりとスプーンに手を伸ばしていき。
 火傷しないように恐る恐ると口に運んでいっった。

「うわ、美味しい…」

 そして素直に感嘆の言葉が漏れていった。
 少量だが味付けにチーズの風味がしているその卵ガユはどちらかというと
洋風のリゾットに近い味わいだった。
 その素朴で豊かな味に克哉は思わず顔をほころばしていった。

「そうか、君の口に合ったなら良かった…。そういえば君にこうやって手ずから
料理を作るのは初めてかもな…」

「そう、ですね…。先々週と先週の週末は、オレが全部料理を作っていましたからね…。
張りきって、良い処見せようと頑張ってしまったから…」

「ああ、そうだな。だから君の気持ちを無駄にしたくないから一切手を出さないで
任せる事にしていたが…私も、こうやって君に手料理ぐらい振る舞いたいとは
密かに思っていたからな…。思いがけず、その機会を得る事が出来て今は
少し嬉しいな…」

「えっ、そうだったんですか…?」

 思ってもみなかった事を言われて克哉はポカンとなっていく。
 だが御堂はベッドの傍らに腰をおろしていきながら、「そうだ」と
短く肯定していった。

「…こうして正式に恋人同士になったのならば、恋人の喜んだ顔が
見たいと思うのは自然な反応だと思うんだがな…。君は違う考えなのか…?」

「い、いえ…! そんな事はありません…! オレだって同じ気持ちだから…
だから、貴方の為に料理をいっぱい作った訳ですし…」

「ふふ、なら私たちの気持ちは一緒だという事か。そう知ると…何か
嬉しい気持ちになれるな…」

「あっ…」

 きっとその表情は御堂本人にとっては無意識に浮かべたものに違いないだろう。
 けれどフっと微笑したその顔に思わず克哉の視線は釘付けになっていく。
 瞬間、ジワっと半勃ち状態になっていた性器が張りつめて自己主張をしていき…
先っぽから蜜が滲み始めていくのを自覚していった。

(ううう…何てオレって即物的なんだろう…。御堂さんに対してときめいて
しまっただけで身体がすぐ反応してしまうなんて…!)

 けれどまだ御堂が作ってくれた料理を完食しきっていない。
 幸いお盆が上に置かれているので隠せているけれど…パンパンに張りつめて
しまっている事で苦しさを克哉は覚えていった。

(幸せだけど、ある意味拷問だな…この状況は…)

 本気で今すぐ御堂に抱きついて、貪るように口づけながらこの人から
深い快楽を与えられたいと望む自分がいる。
 そのせいではぁはぁ、と熱っぽい吐息を零していってしまう。

「…どうやら君は今、本当に苦しいみたいだな…。それを食べたら今夜は
無理をせずに早く寝ると良い…」

「い、いえ…そんな事は…絶対に、嫌です…!」

 それがこちらを案じた発言だと判っていたが、克哉は反射的に
否定していった。
 その剣幕に御堂は思わず押されて、絶句していってしまう。
 この状態で早くなんて寝られる訳がない。
 けれど相手を直接的に求める言葉をどうにも言う事が出来なくて…
否定する言葉は言えど、それ以上続ける事は克哉にとっては困難だった。

「…どうして、だ? 君を無理させたくないんだが…」

「そ、それでも…オレは、今…凄く貴方が欲しいですから…! だから、
このまま大人しく寝るなんて…出来ません!」

 食べる手を止めて、必死になって喰いついていく。
 暫く重苦しい沈黙が訪れて、克哉は肩身の狭い気分を味わっていった。
 だが…暫くすると、御堂がお盆をヒョイ、とサイドテーブルの上にどかして…
ベッドに膝をついて乗り上げていった。

「…せっかく、今夜は我慢してやろうと思ったのに…君は本当に…
私を煽るのだけは上手いな…」

「我慢なんて、して欲しくないんです…。オレは、今だって…貴方に
触れて欲しくて、仕方ないんですから…!」

 そうして力いっぱい訴えていけば、御堂から容赦ない力で抱き寄せられ…
強引に唇を塞がれて、組み敷かれていったのだった―
 
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス      

―克哉にとってはたった一つのツリーを御堂と選んで買った
だけでとても嬉しかった

 普通の恋人同士においては当たり前にある事が、今までの自分達の
関係には存在しなかったから。
 後部座席の上に横にした状態で、購入したばかりのツリーを
横たえていく。
 その隣には二日分の最低限の食料が入った買い物袋が
置かれていた。
 一通りの買い物が終わるとすぐにデパートを出て、車で
御堂の自宅へと向かっていった。
 その最中…御堂と過ごした、他愛無い買い物の時間を克哉は
幸せそうに噛みしめていた。

(…オレ、おかしいかな…。こんな風に御堂さんと一緒に買い物が
出来たってだけで凄く嬉しくなってる…)

 思い返してみると、こんな風に御堂に送迎されたり…週末を
過ごしたり、そんな事すら今の自分には新鮮な事なのだ。
 こんなのは自分達の関係が強引に始まった頃には考えられない時間で。
 気がつくと頬が緩みっぱなしになってしまう。

(何か凄く単純だよな。一緒に買い物して今日の記念になりそうな物を
購入しただけなのに…。こんなに幸せな気持ちになれるなんて、さ…)

 チラリと運転している御堂を見ながら、笑ってしまいそうになるのを
堪えていく。
 きっとこのニヤけた顔を見られてしまったら、御堂に怪訝そうにされそうな
気がしたから。
 けれど信号待ちをしている最中、ふいに相手がこちらの方に
振りかえっていった。

―そして唐突に、左手で強く手を握り締められていった

 予想もしていなかった行動に、克哉は一瞬息がつまりそうになる。
 グイ、と顔を寄せられるような動きもあったが…シートベルトがあるせいで
身体をこれ以上近づける事は叶わなかった。
 一瞬だけ御堂の瞳が情熱的に揺れた気がして、それだけで大きく
胸が高鳴っていく。
 信号が青になると同時に手は離されて…ギアの処に戻されて
いったが…今の行動だけで克哉をドキドキさせるには充分だった。

(い、今のは一体…どういう意図があったんだろう…。凄くびっくりした…)

 御堂の突然の行為に、鼓動が荒くなって頬が熱くなるのを感じていた。
 下手にキスするよりも、もしかしたら興奮してしまったのかも知れない。

(嗚呼、だからオレ…御堂さんに振り回されるんだな…。こんな風にこの人は
予想もつかない行動をしてくるから…。その度に、心臓が壊れそうになるぐらいに
ドキドキしてしまうんだ…)

 今夜は、週末でもクリスマス当日という特別な用事がある訳でもない。
 それでも買い物の後に、御堂はこうして一緒に過ごす時間を作ってくれた。
 二人きりになったら、この人は自分に触れてくれるだろうか。
 そうして…今見たいにこちらの胸を大きくドキドキさせるような事を
してくれるのだろうか。
 そんな期待感が胸の中に膨らんで…ワクワクとドキドキが同居
していった。
 克哉は其れを自覚した途端、ギュっと目を瞑って拳を握りこんでいった。

―嗚呼、オレ…本当に、この人の事を好きなんだな…

 そんな事を噛みしめながら移動中、チラチラと御堂の方を見遣っていき…
そして二人が乗った車は、今夜の目的地へと静かに辿りついていったのだった―
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス    
 
 
車内に乗り込んだは良いが、非常に気まずい雰囲気だった。
それまでと関係が激変して、正式に付き合うようになったは良いが…
やはりこうして二人きりになるとたまにこういう重苦しい空気になる事はあった。
 御堂はどうやら運転に集中しているらしく、殆ど言葉を発さない。
 何となく張りつめたものを其処から感じて、克哉もまた口を噤むしかなかった。
 
(ううう…やっぱり、まだ御堂さんと二人きりになると気まずい…。セックス
している時はこんな事を考えないで済むけれど…)
 
 御堂と一緒にいて、こういう空気を感じないで済むのは抱き合っている時ぐらいだ。
 その時間は熱くて激しい上に、快楽に翻弄されているおかげで…こんな
気づまりを感じないのだが、こうして平常の状態だとまだ…何を話して
良いのか判らない部分があった。
 
(何ていうか仕事の話以外、まともにした事がないしな…。本当に、正式に
恋人同士になっても…セックスと仕事以外でしか、オレ達って繋がって
いないかも知れない…)
 
 御堂に気付かれないようにそっと溜息を吐きながら、窓の外の流れていく
風景を何気なく眺めていった。
 やはり街中の景色は、クリスマス色が濃いものになっている。
 街路樹には華やかなイルミネーションが輝いて、闇の中にフワリと
浮かび上がっている様は酷く幻想的だった。
 きっとこういう処を恋人と一緒に腕でも組んで歩いていけば、外気の寒さ
など吹っ飛んでしまうだろう…とふと考えた時、自分と御堂がそうやって
歩いている様を夢想し…すぐに否定するように首を振っていった。
 
(何を考えているんだろオレ…。オレ達は同性同士で、基本的に関係を
隠さなきゃいけないのに…。そんな風に堂々と腕を組んで歩くなんて
ありえる訳がないのにさ…)
 
 すぐに首を左右に振ってその考えを否定していきながらも、きっと実現
したら自分は満たされるだろうな…と思った。
 そうしている間に、御堂の車は滑らかに目的地に向かって走り続けて…
そして、大きなデパートの中に滑り込んでいく。
 屋上の駐車場に車を停めて行けば、御堂がポツリと呟いていった。
 
「…着いたぞ。君も一緒に来てくれ…」
 
「えっ…? 此処に何の用があるんですか…?」
 
「…一緒に見たいものがあるんだ。だから来てくれ」
 
「あ、はい…判りました…」
 
 どうして今夜に限って、真っすぐに御堂の自宅ではなく此処に連れて
来られたのかその意図を測りかねて克哉は首を傾げていったが…素直に
従って、すぐに車を降りていく。
 そして御堂の後をついていくように階段を下りて、下の階へと向かっていった。
 そうして辿り着いたのは…雑貨などを扱っているフロアだった。
 現在はやはりクリスマスシーズンという事もあって、目にも鮮やかなぐらいに
クリスマスに関連したグッズや飾りなどが並べられていた。
 中にはパーティーグッズを豊富に扱っている一角もあって、仮装用の衣装が
ズラっと並べられている。
 メイド、バニー、ピエロ、サンタクロース…定番とも言える商品の他に、
面白系の色物の衣装も沢山あって…見ているだけで結構楽しめそうな感じだった。
 御堂はいきなり克哉の手を掴んでいくと、その一帯を駆け足で突っ切っていった。
 
「うわ、御堂さん…」
 
「良いから黙ってついて来い…!」
 
 余程テンパっているのだろうか。
 交際し始めてから多少は優しくなっていた筈の口調が、以前のように命令
口調に戻ってしまっていた。
 しかし背後からついて来ている克哉からは、現在の御堂の表情は窺い知れない。
 そうして駆け足で抜けていくと…其処に並べられている商品を見て、克哉は
軽く目を瞠っていった。
 
「あ…これ、は…?」
 
「ああ、ここが目的地だ…。これを一緒に君と見たかったからな…」
 
 そうしてようやく御堂が立ち止まったのは、やや小ぶりのクリスマスツリーが
沢山並べられている一角だった。
 光ファイバーの様々な色合いに変わるものから、手のひらに乗るぐらい小さな
ミニチュアサイズのもの、スノーマンなどの飾りが添えられているものなど…
多種多少なものが存在していた。
 そういうものとあまり縁がなさそうな御堂がまさか、こんな処に連れて来た事に
対して驚きを隠せないでいると…御堂は、非常に照れくさそうに咳払いを
一つしながら答えていった。
 
「…君の、今年のクリスマスの予定が空いているようなら…その日の為に、
ここで私の自宅に飾るツリーを一緒に、選んで欲しい。良いか…?」
 
 まさか御堂の口からこんな言葉が出るなんて予想もしていなかっただけに、
一瞬驚きの余りに即答出来なかった。
 けれど数秒経ってようやく言われた言葉を理解して心に染み込んでいくと…
克哉は本当に嬉しそうに笑みを浮かべていった。
 
「ええ、オレで良ければ…喜んで…」
 
 ぶっきらぼうに見せて来た御堂の本心みたいなのを感じて、口元が
ほころんでいくのを感じていった。
 そうして二人であれこれ言葉を交わしながら意見を述べた上で…
光ファイバー製の、30センチ程度の大きさのツリーを選んで、
購入していったのだった―

この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス  

―御堂と最初のクリスマスを迎えたのは、二人が付き合い
初めて間もない頃だった

 出会った時のお互いの印象は最悪。
 そして関係もまた、今思い返すと御堂のこちらに対しての
嫌がらせという意味合いがかなり強い形で始まっていた。
 当時の克哉は、御堂に対しては敵愾心と反発心しか抱いておらず…
強要される性的な行為には猛烈な嫌悪感を覚えていた。
 それでも関係を続けていたのは…自分が三年余り一緒に働いてきた
営業八課の仲間達を、あまりに高すぎるノルマから解放する為だった。
 だが、初めてセックスをした日から…少しずつ、冷徹だった御堂が
態度を軟化させていって、たまにこちらに対して優しさを見せるようになった。

―其処から二人の関係は確かに変化していったのだろう

 気づけば、克哉の胸には御堂に対しての想いがいっぱいになり…
其れに耐えきれなくなった頃に、玉砕覚悟で告白した。
 御堂を好きだと自覚して、彼の事で心がいっぱいに満たされてしまってから
捨てられるよりも…自分の手で覚悟して終わらせた方がマシだと思ったから。
 甘い望みなど、一切抱かないで叩きつけるように自分の想いを
御堂にぶつけていった。
 そしてその日をキッカケに、御堂もまた自分を憎からず想ってくれていた
という事実を知り…二人は結ばれ、そして恋人関係になった。
 けれどお互いに誰かにその事を打ち明ける訳でもなく、ただ密やかに…
少しずつ一緒に過ごす時間を増やしていきながら、彼らはそれまでと
関係を変化させていった。

 そして、二年前のクリスマス間際のある冬の日。
 克哉は御堂にメールで呼びだされた。

『本日、迎えに行く。君の退社予定時間を教えてほしい』

 あまりに簡潔で、用件のみしか書かれていないので…最初、素直に
答えていいものか迷ったものだ。
 だが御堂がわざわざ迎えに来てくれるというのだから無下にする訳にも
いかないと考え、メールを読み終えた直後に速攻で返信していった。
 そして就業時間を迎えると…相手から指定されたキクチ・コーポーレーションの
本社の裏口に立って、御堂が訪れるのを待ち構えていった。

(うう…緊張するなぁ…。まだ付き合い始めて三週間近くしか過ぎていないから…
御堂さんと顔を合わせるのにまだ慣れてないよな…)
 
 御堂との関係自体は三カ月前からあるが、正式に恋人になったのは
先月末からの話だ。
 だからまだまだ初心者マークがついていて、お互いに手探りの状態だった。
 克哉とて、こうして御堂が迎えに来てくれる事はとても嬉しい。
 優しくしてもらえたり、気遣って貰えれば心がフワっと暖かくなるからだ。
 しかしそれ以上に密かに頭を悩ましているのが…御堂との会話が仕事以外の
話題に関しては続かないという事だった。

(まだまだお互いに変化した関係についていけてないんだろうけどね…。
本当に、御堂さんとこうして恋人同士になれるなんて…予想もしていなかった
だけに、どうして良いのか…判らないよな…)

 そうして白い息を吐きながら、克哉はひたすら御堂の車が訪れるのを
待っていった。
 つい最近まで冬になった割に暖かい日が続いていたが…12月下旬に差し掛かると
同時にグっと気温が下がったので、こうして立っているだけでは酷く寒く感じてしまう。
 けれど暖かい飲み物を買っている間に御堂の車が来てしまったら待たせる
事になるので克哉は暫く耐えていった。
 すると…何気なく街の方を眺めていくと、遠くの方で沢山のネオンが灯って
いるのに気づいていく。

「ああ…もうクリスマスだもんな…。何となく街の明かりがいつもよりも
華やかな気がする…」

 冬になると、17時を過ぎれば辺りは真っ暗になる。
 そうなると街に灯るネオンはどこか暖かくこちらを迎えてくれているような…
そんな風に感じられてしまった。

(クリスマス、か…。御堂さんは俺なんかと一緒に過ごしてくれるのかな…?)
 
 ふと、そんな不安が克哉の脳裏をよぎっていく。
 御堂はこちらの想いを受け入れてくれた。
 だからあの日、克哉を抱いてくれたし…週末も、一緒に過ごすように配慮して
身体もすでに何度か重ねていた。
 けれど…克哉はまだ、不安を拭う事が出来なかった。
 この日々が自分が見ている、都合の良い夢に過ぎないのではないかという
漠然とした思いが…少しずつ、待っている間に克哉の胸に降り積もって
いくようだった。

「まさか…この恋が…成就するなんて、予想もしていなかったからな…」

 そう、克哉はしみじみと呟いていった。
 その瞬間、こちらに一台の車が近づいてくるのを感じていった。
 間違いない、御堂の愛車だった…そう確信すると同時に、気づけば
無意識の内に笑みを浮かべてしまっていた。
 そうして克哉の前でその車は停車し、窓を少し開いていきながら
運転席から御堂はこちらに声を掛けていった。

「…佐伯君、すまないな。少々待たせてしまった…。さあ、助手席に
乗ってくれないか…?」

「あ、はい…わざわざ迎えに来て下さってありがとうございます。
それじゃあ隣に失礼させて貰いますね…」

「うむ…」

 お互いにどこかぎこちなさを感じさせていきながら、克哉は薦められるままに
助手席へと座っていく。
 そうして…克哉がシートベルトを装着したのを見届けていくと同時に
行き先を説明しないまま、御堂は車を発進させていったのだった―

 
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

貴方と一緒に過ごすようになってすでに二年余りが
あっという間に過ぎました
 けれど毎年、クリスマスが来る度に思い出すんです
 最初の頃の、あのぎこちなかった頃のオレ達の
ささやかなクリスマスを

 御堂と付き合い始めて現在では同棲するようになって
克哉は幸せの絶頂を迎えていた。
 本日は残業も程々に切り上げて現在では自分達の正式な
自宅となっている御堂のマンションで二人きりでクリスマスを
祝っていた。
 部屋の中心には30センチ程度の大きさの光ファイバーで様々な
色合いに輝くクリスマスツリーを飾り、食卓には買って来た
ローストチキンや2人で食べるのに丁度良い小さめのケーキや、
ワインに合う何種類かのチーズを用いたオードブルやサラダの類が
並べられていた。
 今夜食べる予定の料理はすでに出揃っている。
 御堂は現在、今夜飲むワインを何にしようかミニガーヴの中の
コレクションと向き合って選んでいる事だろう。

(今夜は一体、どんなワインが飲めるのかな

 密かに、其れを楽しみにしていきながら克哉はふと、ツリーを
眺めていった。
 毎年、これを見る度に思い出す。
 自宅で祝う用に自分達が付き合い始めて間もない頃に買った
ささやかなクリスマス飾りを見る度、不器用ですれ違ってばかりだった
頃の記憶が蘇ってくる。

今年も、この飾りを見れて良かったな。こうして、このツリーを
眺めて孝典さんと一緒に祝うようになってから三度目のクリスマスが
無事に訪れてくれたって事だもんな

 ふと克哉は懐かしげに瞳を細めながら、ツリーの近くまで歩み寄って
青、緑、紫、赤、白、黄色と点滅しながら色合いが変わっていく様子を
眺めていった。
 
(あの頃のオレ達は本当に不器用で、どうして良いのか判らないで
手探りで歩み寄ろうとしていましたよね

 自分と御堂との付き合いは、最初はあまり良い形で始まっていなかった。
 強引にプロトファイバーの営業権を得て、共に仕事をするようになったばかりの
頃は散々イヤミめいた事や嫌がらせもされていた。
 御堂と肉体関係を持つに至った経緯も、到底達成出来るとは思えない
とんでもない目標数を設定されて、それに異を唱えた事から始まっている。
 結局、振り返ってみればその数字は期間内に達成する事が出来たから
あの当時、克哉が身体を張って止めなくても良かった訳なのだが。
 あの時、御堂に接待をするように強要されていなかったら自分が応えて
なかったら、こうして恋人関係になる事もなかったと思うとあれも今の
幸福を得る為に必要なプロセスだったのだと、しみじみ実感した。

ふふ、本当に今、思い返してみると微笑ましいものすら感じますよね
あの頃のオレ達の不器用さって

 二年前、恋人同士になった頃のぎこちなかった頃の御堂を
思い出して自然と笑みが漏れていった。
 ビクビクとあの頃の自分も御堂の前では緊張してしまってガチガチに
硬くなってしまっていた。
 今では空気のように、一緒にいるのが当たり前になっている。
 だからこそかつての自分達のそんな不器用さが今では愛おしくすら
感じられた。
 いつかのメリークリスマス。
 それは最初に共に過ごした、イブの夜の記憶。
 
(孝典さんきっと、今夜飲むワインを必死に吟味しているみたいだから
もう少し時間が掛かりそうだな。それなら、ちょっと昔の事を思い出して
みるのも悪くないかも知れない

 すでに5分程度、御堂が来るのを待っているがまだ暫くこちらの
部屋に顔を出す気配はなかった。
 きっとワインにうるさい御堂の事だ。
 選んだら選んだで、そのワインが最良の状態になるように温度とかを
調整したり古い年代物の品を選んだりしたら、デキャンタなどをして
澱を取り除いたり、そういう作業をしているに違いない。
 その辺は御堂と二年余り付き合っているのですぐに来ないという
事実からすぐに察していった。

(それに気持ち的には手伝いたいけどきっと、こういう日は孝典さんは
オレを喜ばせる為に全身全霊を注いでくれているのを知っているからな
下手に手を出さない方が良いし。それにあの人との思い出を振り返る方が
今日という一日と特別なワインをより有り難く感じられるだろうから

 だから、克哉は一旦席に着いて気長に待つ事にしていった。
 そうして淡い光を放つツリーを穏やかな眼差しで見つめていきながら
御堂とまだぎこちなかった頃の自分達の思い出をゆっくりと振りかえって
いったのだった
 
                     

※2010年度の九月、月見を題材にして思いついた
御堂と克哉のイチャイチャ話です。
 浴衣着て乱れるノマを書きたいっていうのが動機なので
それを承知の上でお読みください。

月夜の恋人      

 情事が終わってお互いの欲が満たされていくと…布団の上で
二人で寝そべりながら藍色の夜空に浮かぶ銀月を眺めていた。
 終わった後、軽く互いの身体を清拭してから…新しい浴衣に
袖を通した状態で、寄り添い合っていく。
 九月の下旬に差し掛かり、急激に気温が下がった事もあって…
こうしてお互いの体温を感じられると、酷く心地良かった。

「…やっと、こうして…ゆったりと月見が出来た気がするな…」

「ええ、そうですね。さっきは月をゆっくりと眺める間もなく…その、
お互いに求めあってしまいましたから…」

「…まあ、な。だが…こうして君と一緒に月を眺めていると…何ていうか
凄く穏やかな気持ちになれるな。…普段、仕事をしている時には絶対に
得られない感覚だな…」

「…どんな気持ちなんですか、孝典さん…?」

 克哉が瞳を細めていきながら問いかけていくと…御堂もまたフっと
瞳を眇めて恋人と軽く見つめ合っていく。
 そうして小さく溜めの時間を作ってから、ボソっと呟いていった。

「…酷く満ち足りて、優しい気持ちだな…。君と出会う前の私には…
最も縁遠かった感情だ…」

「えっ…」

 克哉が軽く瞠目していくと、フワっと御堂の唇が目元に落とされて…
軽く頬を染めていく。
 御堂の手が優しく、こちらの髪を…頬を撫ぜていく。
 大切なものに触れるかのように、確認するかのように…労わるかのように。
 それは確かに…出会ったばかりの御堂の事を思い出せば、縁遠く…
別人のようにさえ見える姿だった。

「…君と出会ったばかりの頃の私は成果を得る事ばかりを考えて…
他者の事を思い遣る事など決してなかった。自分にとって役に立つか、
それとも役に立たないかで人を判断していたし…害になるようならばっさりと
立ち切って寄せ付けないようにしていた部分もあった。だから…気持ちも
今思い返せば…随分、殺伐としていたように思う。…きっと、君と出会った
ばかりの頃の私だったら…ただ何をする訳でもなく、月見をする事が目的の
今夜のような誘いは一蹴して乗る事はなかっただろうな…」

「えぇ、そうですね…。以前の孝典さんのままだったら…オレも、貴方を
今夜のように月見に誘う事はなかったと思いますから…」

 二年余りの月日を得て、自分たちの関係は大きく変わった。
 そしてその間に御堂も大きく…様変わりをしていった。
 恋人関係になり、一緒に過ごすようになり…仕事だけでなく、日常もまた
一緒に過ごす時間が増えたからこそ…何気ない時間が、とても大切なのだと
判った今だからこそ…何もせず、ただ月を一緒に眺める。
 そんな時間すらとても愛おしいものに感じられるのだ。
 それは合理的で無駄な時間を厭い、極力排除していただろう頃の御堂には
とても意味を見いだせない時だっただろう。
 其れは克哉にも容易に想像が出来た。
 だが、今は…。

「…けれど、今の孝典さんはとても穏やかになったと思います。
貴方と過ごす何気ない時間がとても愛おしく感じられますし…オレにとっては
大切なものだから。こうして…貴方と月を眺める一時が、永遠であれば良いと。
そんな馬鹿な事さえ…ふと、考えてしまう自分がいます…」

「永遠か…。確かに、そんな事を私も願う事があるな。君がいつまでも…
私の傍にいてくれれば良いと。冷静に考えればありえない…幻想に近い
願いを、私も時に願う事はある…」

「…ふふ、一緒ですね孝典さん…。何だか、嬉しいです…」

 そうしてくすぐったい想いを抱いていきながら二人はそっと唇を
重ね合っていく。
 先程の情事の時は、乱れた姿を月に見られているようなそんな気分になって
凄く恥ずかしかったのに…今は、優しく包み込まれて見守られているような
そんな風に感じられていった。

「…貴方と、こうして一緒に月見が出来て…本当に良かった…」

「あぁ、私も同じ気持ちだ…克哉。これからもこうして…一緒に何気ない時間を
君と過ごしていけたら…と思っている…」

「はい…オレも、そう思っていますよ…孝典さん…」

 そうして愛しい人の腕に包み込まれて、克哉はそっと目を伏せていく。
 綺麗な月と、お互いの息遣いと鼓動がくっきりと感じ取る事が出来る静寂と…
微かに聞こえるススキが擦り合うささやかな音と、鈴虫の音色。
 秋の夜長を実感出来る一時の中…克哉はギュっと御堂の身体に抱きついていって
その贅沢な瞬間を味わっていく。

(…孝典さん…大好きです…。こうして貴方の腕の中に抱かれているだけで…
本当に眩暈すら覚えるぐらいに…オレは満たされて、幸せな気分になれる…)

 そうしてその幸福を噛みしめていきながら…克哉は御堂を眺めていく。
 月の淡い光に照らされて、優しく照らされている自分にとって愛しい人の…
優しい顔を。
 御堂がまた…克哉を抱いていた時に月光に照らされたその姿に
酷く心を煽られたように。
 克哉もまた…月下の恋人の、普段見られる姿に…愛しさがこみ上げてきて…
そっと囁いていく。

「…愛しています、孝典さん…。これからも、ずっと貴方の傍に…」

「あぁ、君が私の傍を離れる事など許さない。…克哉、ずっと私の傍から
離れるな…」

「…はい」

 殆ど命令にも近い、強い口調で…御堂から必要とされているのだと実感
出来る言葉を与えられて克哉は嬉しそうに微笑んでいく。
 そして祈りにも近い気持ちを込めて、そっと呟いていった。

―いつまでもこうして貴方の傍にいます…。貴方がオレを必要としてくれる限り…
ずっと…この手は離しません…

 それは誓いにも似た、真摯な克哉の想い。
 御堂はその言葉を聞いて…思わず見惚れるぐらいに綺麗な笑みを浮かべて…
愛しい恋人を、強く抱きしめて…腕の中に閉じ込めて独占していったのだった―


 
 

2010年度の九月、月見を題材にして思いついた
御堂と克哉のイチャイチャ話です。
 浴衣着て乱れるノマを書きたいっていうのが動機なので
それを承知の上でお読みください。

月夜の恋人   

 旅館の窓ガラスに乱れた身体を押しつけている克哉の姿
は酷く扇情的だった。
 夜空には満月から少し欠けた白い月が浮かび、欲情して朱に染まった穏やかな
風貌の青年の裸身を淡く輝かせているようだった。
 その美しさに御堂は思わず息を呑み、言葉すらも失いかけていく。
 
嗚呼月に照らし出された君は何て綺麗なんだ
 
 心の中でそう感嘆していくと、剥き出しになった克哉の白い臀部に手を這わせて
淫猥な手つきで揉みしだいていった。
 
「はっあっダメ、ですダメ
 
「何がダメなんだ? こんなに乱れて、私の手に敏感に反応している癖に
 
「やっ言わないで、下さい。そんな事、言われたらオレ
 
 御堂の手が弾力に富んだ尻肉をこねくり回して、その奥に隠された秘所を
間接的に刺激していけば、もう堪らないといった風に克哉はしきりに
身体を捩らせていった。
 そんな無意識の仕草と反応の一つ一つが、御堂の心を大きく揺さぶっている事
などこの年下の恋人はきっと自覚していないに違いなかった。
 
「何を今更、イヤだというんだ? 散々私の下で喘いで快楽を教え込まれている癖に
今更、私の手を拒んでじらすような真似をする必要なんて全くないんだぞ?」

「や、焦らして、なんかあうっ!」

 グイ、と尻肉を割り開かれて浅ましく息づいている蕾が暴かれていってしまうと
それだけで呼吸が大きく乱れて、興奮が高まっていった。
 御堂の視線が、其処に注がれているのが判ると羞恥で本気で死にたくなっていく。
 なのにその想いと裏腹に身体の熱は一層高まり、御堂が欲しいと全力で
身体が訴えているようだった。
 克哉はガラス戸を掻き毟るようにして、不安定な身体をどうにか支えようしていく。
 縋るように天を仰ぎみれば其処にはまるで、宝石のように白く輝く
欠けた月が浮かんでいる。

「綺麗、だ

 相手が欲しくて、身体は淫らに反応しているのに月を見て、素直にそう
感じて自然とそう呟いていく。

克哉、今の君も凄く、綺麗だぞ

「えっふっああっ!」

 そして、月を見て一瞬気が緩んでしまったタイミングを見計らって、御堂の
熱いペニスが挿入されていった。
 熱い楔に、己の身体が一気に割り開かれていく鮮烈な感覚に克哉は
大きく全身を震わせて耐えていった。

「ひっイッあああっ!」

「相変わらず君は、イイ声で啼くな。聞いているだけでそそるな。なら
こうしたら、他の人間に聞かれてしまうんじゃないのか?」

「ひっ!」

 御堂がガラス戸の鍵を開けて、ほんの少しだけ端の部分を開けていった。
 其れは本当に数センチの僅かな隙間。
 だがぴっちりと閉まっている状態に比べて、こうなってしまえば外に自分の
声が大きく漏れてしまう事は明白だった。

「やっ孝典、さん止めて、くだふぁ!」

 消え入りそうな声で懇願していくが、それが聞き遂げられる事はなかった。
 声が外に漏れて誰かに聞かれてしまうのではないかというスリルが、
克哉の身体を一層熱く燃えさせていった。
 月が、まるでこちらの痴態を静かに眺めているようにふと感じられていく。

(まるで月に、見られているみたいだ

 ふと、そんな事を考えた瞬間ズン、と最奥を突き上げられて
克哉は崩れ落ちそうになるぐらいに感じていった。
 接合部からは淫靡な水音がグチャヌチャと響いて、聴覚すらも
犯されてしまいそうだった。
 本当は誘いを掛けた時は、ゆったりとした時間を一緒に御堂を
過ごす筈だった。
 なのに風呂に別々に入ろうと言われたのが少し切なくて、自分が
入浴に向かう寸前御堂の瞳の奥に、欲望の色を感じ取ったら気づいたら
下着を履かずに、克哉は浴衣を纏っていた。
 淫乱と罵られてしまっても、仕方ないと思える行動だという自覚はあった。
 けれどきっと、下着をつけずに部屋に戻ったら、いやらしい子だと
言いながら御堂はこうやって自分を抱いてくれるだろうと強く期待して
しまっていたのだ。

「あっ…はっ…んんっ…や、おかしく、なる…!」
 
「おかしく、なれば良い…。私だけを求めて、もっと狂うんだ…克哉…。
君が乱れる姿を、もっと見たい…!」
 
「ひっ…あっ…孝典、さん…やぁ…!」
 
 そうして必死になって強烈な快楽に耐えていくと…ふいにガラス戸に自分と
御堂の姿がくっきりと映し出されていた事実に改めて気付いていく。
 感じて上気しきっている顔と…御堂の淫蕩で…強気な笑みが鮮明に映っていたのを
自覚すると更に身体の熱は上がっていきそうだった。
 月に照らされて、克哉は更に淡く輝いていく。
 背後からこちらを閉じ込めるように抱いている男は…恋人のその艶やかな
姿を見て、一層欲情を高めていた。

「…ガラスに、君の感じている顔が…鮮明に映し出されているぞ…。
凄く、綺麗だ…。見ていて、もっと興奮してくる…」

「やっ…お願い、ですから…見ないで…」

「断る…もっと、見たい…」

「んっ…あっ…! やっ…貴方に、そんな風に見られたら…オレ…」

 ガラス戸を通して、御堂がこちらの感じ切っている表情を熱く
見つめているのが判って、余計に羞恥が煽られていった。
 もう声と快感を抑える事など、出来る訳がなかった。
 身体を揺すられる度にガラス戸が軋みを上げている。
 このまま、この扉ごと外れてしまうのではないかと危惧さえ覚えたが…
もう、悦楽を求めて貪る身体を制御する事は不可能だった。
 克哉の内部は熟れきって食いちぎれそうな勢いで御堂の性器を
強烈に締めつけ続けていた。
 
グチャ…グプ…グチ、グチュ…

 接合部からは、淫靡な水音が響き続けて…それがお互いの荒い
息遣いと相まって、淫らな演奏へと変わっていく。
 それもまた情欲を煽られる大きな要因となり…克哉のペニスもまた
先端からずっと先走りを溢れさせていった。
 それが露となり、幹を伝ってガラス戸や床を濡らし続けているのを
自覚すると…また、羞恥でおかしくなりそうだった。
 腰を掴んでいた御堂の手の片方が…幹に絡んできたのを自覚すると、
克哉はビクン、と背中を震わせていった。
 
「やっ…孝典、さん…もう!」

「あぁ…私も、もう…イキ、そうだ…。克哉、一緒に…!」

「はい…オレも、貴方と…ひっ…あああっ!」

 そうして、間もなく絶頂が訪れていく。
 達する瞬間、窓の向こうに浮かぶ月を鮮明に意識していきながら…
頭が真っ白になりそうな感覚に身を委ねていった。
 ガラスに白濁を勢いよく吐き出し、全身を大きく震わせた瞬間…
御堂もまた熱い精を克哉の中に解放していった。

「あっ…はっ…凄く、熱い…」

 御堂の熱を享受して…克哉はフルっと全身を震わせていく。
 その瞬間、身体が崩れ落ちそうになっていったが…背後から御堂に
支えられて、辛うじて保っていった。

「…今夜の君は…とても、綺麗だったぞ…」

「そんな…でも、ありがとう…ございます…」

 そして顎を軽く掴まれて後ろを振り向かされていくと…御堂の微笑んでいる
顔が飛び込んんで、そう声を掛けられていった。
 それが嬉しくてごく自然に克哉の顔も綻んでいくと…そっと愛しい人から
暖かく優しい口づけを与えられて、満足そうな笑みをたたえていったのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
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女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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