忍者ブログ
鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
[1584]  [1583]  [1582]  [1581]  [1580]  [1579]  [1578]  [1577]  [1576]  [1575]  [1573
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                       10 11 12 13   14 15
                            16   17   18   19   20   21

 眠っている克哉の枕元に立っていたのはMr.Rだった。
 漆黒の衣装に、長い金髪を波立たせていきながら…深い眠りに浸っている
克哉の事を見つめていた。
 
(貴方には、きっと届かなかったのでしょうね…。本多様の叫びは…)

 男は、何も言葉を発さずに回想していく。
 この世界が生まれた発端となった日の出来事を。

―目覚めて! お願いだよ…! もう、オレはこれ以上待てない…!
お前の声が、聞きたいんだよ…!

 そう切羽詰まった声で叫んだ克哉の声を思い出す。
 あの日、もう克哉の精神は限界にまで達して…凶行に及びそうに
なっていた。
 そのまま放置していれば、この男好みの展開になる可能性が
高かったけれど…けれど、あの日男は介入する事に決めた。
 本多の切実な叫びが、男の心に気まぐれな想いを呼び起こしたから。

―ほんの少しだけ、彼らが救われる可能性を与えても良いと思ったから…

 きっとあの日、克哉を止めなければ…二人はそのまま死んでいただろう。
 思いつめた克哉は、心中する事を考えていたから。
 嫉妬に狂って、目覚めぬ恋人を自分が見ていない間に誰かに触れられ続ける
ぐらいなら…と考えてしまっていたから。
 独占欲によって、どれほどの恋人たちが狂ってしまうのだろう。
 愛しているからこそ、他の人間が自分達の間に入り込んでくるのを
人は容易に許す事が出来なくなる。
 其れは限りなく滑稽にも見える光景。
 けれどその愛という感情によって…人は、男には予想も出来ない行動を
取る事だってある。
 そういうものを見せて貰った時だけ、男は気まぐれに自分の力を使って…
その人間の心がけ次第では救われる道を用意してやろうという気を
起こすのだ。

(そして、あの日の本多様の崇高な想いは…私のその気まぐれを
起こさせるには充分なものだった。その事実を…貴方はまだ、
知らないままなのですね…)

 そういって、サラリと克哉の髪を撫ぜていく。
 慈しみを込めて、優しく。
 そして同時にほんの少しの憐れみの感情を込めていきながら…。

「あれ程までに本多様は眠り続けた後でも、貴方の事を大切に想い続けた。
けれど肉体との連結を断たれてしまったあの人には…心は存在しても、
貴方にもう気持ちを伝える術を失ってしまった…。両思いのままであっても
それはどれほどの悲劇なのでしょうか…」

 歌うように、克哉に真実の断片を告げていく。
 そして男は思い出す。

―克哉をどうか、救ってやってくれ…誰か! 誰か!

 そして本多は願った。
 どんな形でも克哉の心を救って欲しいと。
 自分と克哉の関係が終わってでも良いから、新しい道を歩んで欲しいと…
恋人が幸せになって欲しいと切に願っていた。
 独占欲を越えた、愛が其処に確かに存在していたから。
 だからRは手を貸した。
 当然、それなりの代価は要求したけれど…其れは、克哉がどちらの選択を
選んでも『本多は目覚める』、その奇跡を起こす為に必要なものだったから。

「貴方は…どちらの道を選んでも構わないのです…。貴方がどちらを選んでも、
本多様は目覚めます。そして再生し、新しい道を歩むことが可能となります…。
けれどその横に貴方がいるかどうか…。別の誰かが隣にいる事を許せるなら
もう一人の自分の手を取れば良いだけなのですよ…」

 そして、柔らかい声で残酷な…優しいヒントを与えてあげる。

―どちらを選んでも、本多は目覚める…

 其れは今の克哉にとっては救い。
 けれど同時に…本多と過ごした思い出がよみがえってしまった後では
限りなく痛みの伴う内容でもあった。

「ほ、んとう…に?」

 その言葉を聞いた途端、うっすらと克哉は瞼を開いていく。

「ええ、本当ですよ…」

「よ、かった…」

 それだけが、今の克哉にとっては救いでもあった。
 泣きながらそれを悲しみ、同時に喜びも覚えていく。

「ですから…貴方の思うままになさって下さい…。それを、本多様も
望まれていますから…」

「………うん…」

 そして、克哉はすぐに意識を手放していく。
 その様子を眺めて、黒衣の男はそっと呟いていった。

「…今は眠りなさい…貴方が心からの答えを出す日まで…この世界を
紡ぎ上げて差し上げましょう…」

 そう、微笑みながら告げていくと…Rの姿もまた幻のように
その場から消えていったのだった―
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
この記事のURL:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[03/16 ほのぼな]
[02/25 みかん]
[11/11 らんか]
[08/09 mgn]
[08/09 mgn]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

 当ブログサイトへのリンク方法


URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/

リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ * [PR]