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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                       10 11 12 13   14 15
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―克哉の元にMr.Rが訪れているのとほぼ同じ頃…眼鏡は
平原を煙草を燻らせながら歩いていた

 相変わらず、様々な色彩を内包する不思議な色の空が続いている。
 けれど吹き抜ける風はどこまでも爽やかで、まるで春風のような
印象すらある。
 どこか暖かで、済みきった風は…心の中まで清浄にしてくれるような
そんな錯覚を覚えながら、眼鏡は深く紫煙を吸い込んでいく。
 風が吹く度に、周囲の草と煙草の煙が大きく宙に舞っていく様子が
目に飛び込んで来た。

(やはり煙草は旨いな…。ほんの少しだけでも、気分が紛れる…)

 ここが夢の世界だと判っていても、煙草の味までここまで忠実に
再現されている事に少しだけ感謝を覚えていった。
 料理の味も、嗜好品の味も何もかもが現実と変わらない。
 その度に此処は現実なのか夢なのか迷った事は何度もあった。

「だが…この空を見る度、やはり現実とは違う事を思い知らされるな…」

 しみじみと、胸の中に溜まった重苦しい気持ちを紫煙と共に吐き出して
いきながら…そう呟いていく。
 この場所に青い海と空が存在していたら。
 きっと自分達はここが夢である認識を失くしてしまっていたように思う。
 現実と強烈に違う部分が存在するからこそ、いつか此処が終わりを迎える
世界だという事実も受け入れられるように思う。

―克哉を助けてやってくれ…

 そして、いつか本多が自分に向かって訴えた言葉が脳裏によみがえっていく。
 あの時の彼は、大量に出血していた事で意識も視界もまともに機能を
していなかったのだろう。
 きっと必死になって頼んだ相手が、最愛の恋人と同じ顔をしている事実を
知ったらあの男はきっとショックを受けるだろう。
 どうしてあの日、突然自分は現実に実体を伴って存在したのか。
 その理由は今でも正直、判らない。
 恐らくMr.Rが気まぐれが何かでも起こしたのが原因だとは思うが…
自分の気持ちすら満足に把握出来ない状況では、あの謎めいた男が何を
考えて自分を実体化させたのかすら良く判らないままだった。

「なあ、オレ…お前は一体、これからどうしたいんだ…?」

 風が吹くと同時に、そう自然と言葉が零れていった。
 これから先の自分の運命は、克哉の決断が大きく左右する。
 自分自身ではなく、他の人間が自分の命運を握っているのだと
思うと正直、あの時の自分は何てトチ狂った決断をしたのだと
自嘲的な想いが湧きあがってくる。
 だが、何かを犠牲にしなければ奇跡は起こらないと…男は告げた。 
 本多は克哉と永遠に決別する事になる運命を。
 そして自分は、克哉が本多の手を取って生きる事を選択した場合は…
もう一人の自分から切り離されて、Mr.Rの監視下の元で生きる事になる。
 
(…正直、そうなった場合はゾっとしないな…。あの悪趣味な男が
まともな環境を俺に与えるかどうか保証の限りではないのだから…)

 悪くない環境を与えますよ、と男はあの時言っていたが…どこまで
まともに受け取って良いのか正直悩んだ。
 しかしもし自分が選ばれたとしても…その場合、本多と克哉は二度と
会えなくなる。
 
―そう考えると胸の中にジワリ…と切ない感情が湧き上がる…

 それを自覚して、眼鏡は苦笑していく。
 恋敵を心配したって、何にもならないのに…そんな事を考えるとは
自分はまだまだ悠長な部分を残しているようだ。
 そうして風に吹かれている間に煙草はすっかり短くなり、先端の火先を
携帯灰皿でもみ消していけば…自分達が今、暮らしている小屋に戻る事に
決めていった。

(そろそろあいつも目を覚ましている可能性があるからな…。一先ず、
話してみよう…。これからどうするつもりなのか、まず意思を聞いてみる
事から始めてみるとするか…)

 ただ相手がどうするかを邪推しても何も生まれはしない。
 会話して、まず克哉の意思がどうなっているかを探らない事には
覚悟を決める事すら出来ないだろう。
 そう考えて…自分達が暮らしている建物の方に戻ろうと踵を返した
瞬間…眼鏡は目を見開いていった。

「なっ…嘘だ、ろ…?」

 其処には予想もつかない存在が立っていた。
 まるで亡霊のように…半透明であったが、其れは間違いなく…。

「本多…どうして、お前が此処に…!」

 そう、其処に…一人の男が立っていた。
 この世界には自分達二人と、Mr.Rしか存在しない筈だった。
 けれど確かに今…眼鏡の目の前には、渦中のもう一人の存在が
立っていた。
 彼と対峙していきながら…眼鏡は言葉を失い、暫し睨み合っていく。

―そして暫くしてから、ゆっくりと本多は口を開き始めて…こちらに
何かを語り始めていったのだった―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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