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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
                    10  
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 ―五十嵐太一のアルバイトしているロイドに、不振な男の集団が
押し寄せてきたのは午後6時を回ったぐらいだった。
 現在、マスターである太一の父親は買い出しに出かけていて
店の中にいるのは太一一人だけだった。
 スーツ姿の男が3人入って来るのを見て、太一は営業スマイルを
浮かべて応対していく。
 
「いらっしゃいませ~。三名様ですか? カウンター席とテーブル席…
どちらをご希望ですか?」
 
 大学も現在、一浪している状態な為…学費を出してもらっている父親に
すっかりと頭が上がらなくなり、今では太一も少しはきっちりした言葉遣いで
客に対応するようになっていた。
 は人間、引け目や弱みがあるとその相手に逆らえなくなる傾向にあるが…
彼にとって今は父親がその対象だった。
 だが、声を掛けたが男たちは何の反応を見せない。
 
「もしもし~お客さ~ん?」
 
「…五十嵐太一だな?」
 
「そうですけど、お客さん達…俺に個人的な用があるんですか? 俺、
まったくそちらには面識がない筈なんですけど…」
 
「答える必要はない。我々と一緒に来てもらおうか…」
 
「げげっ…! もしかしてそれ、スタンガンかよ!」
 
 いきなり、先端の部分に電極のような金属の突起が突き出ている
器具を突きつけられて、太一は面食らっていく。
 紛れもなくそれはスタンガン、高圧の電流を瞬間的に人体に流して
意識を失わせる為の物だった。
 そんな物をいきなり突きつけられるとは尚更穏やかな話ではない。
 
(うっわ~久々にヤバイ場面が訪れたなぁ…。親父が傍にいてくれれば
何て事ないんだろうけど、スタンガンを持っている奴等、三人を相手に
一人ではきっついかも…)
 
 当然、相手が丸腰ならば三人ぐらい同時に相手にしても太一は
逃げる程度の事ならば十分可能だ。
 五十嵐の実家は名の知れた古くからあるやくざの家柄でもある。
 その関係で子供の頃から荒っぽい事にそれなりに免疫があるし…
実家のゴタゴタに巻き込まれて何度か修羅場を体験した事すらあった。
 だから大げさに驚いて見せて、まず相手の出方を伺っていく。
 
「…そうだ。抵抗さえしなければこちらも手荒い真似はするつもりはない。
一緒に来て貰おうか…」
 
「イヤだ、と言ったら…どうするつもり?」
 
「…それ相応の覚悟はして貰おうか…」
 
 そういって淡々とした口調で男はそう告げていく。
 その態度を見て、太一は歯噛みしたくなった。
 素人が慣れない強力な武器を手にしたのなら、もう少し気持ちが
高揚していたり…得意になって頼んでもいないのにベラベラと解説を
始めたりするものだが、男達の態度は落ち着いたものだった。
 それだけで相手はこういった事に対して場数を踏んでいる奴等で
あるのが判明していく。
 
(参ったな…一人で切り抜けられるかな…?)
 
 まず逃げ道を確保しようと、太一はカウンターの裏手にある従業員用の
出入り口の方を見遣っていく。 
 だがこちらの意図を察したかのように、相手が冷然と言い放った。
 
「裏口から逃げようとしても無駄だ…すでに其処はマークしてある…」
 
「ちぇ…こちらの考えはすでにお見通しって訳ね…」
 
 何でもない事のような顔を浮かべて取り繕っていたが、今の一言で
太一は内心、大きく動揺していた。
 大立ち回りを演じれば、太一とてそれなりに腕に覚えはある方だ。
 店の外に逃げ出すだけならば、それでも十分に可能だろう。
 だが、太一にとっては以下に店の内装に損害を出さずにこの場を
切り抜けるか…という算段も意識の中に入っていた。
 
(ここは親父の城だからなぁ…本当にどうしようもない時は仕方ないけど、
ここで大立ち回りを派手にやる訳にはいかないんだよな…)
 
 太一の父がこのちっぽけな自分の店にどれだけ愛情を込めているか…
ここで働いているからこそ、太一は良く理解していた。
 全力で頭を働かせて、この場をどう切り抜けるかを必死になって考えていく。
 
(ちぇ…ちょっとで良い。少しでも隙が出来れば…それを糸口にどうにか
出来そうなのにな…)
 
 現在の太一は三人の男に完全にマークをされている。
 左右正面、どこに動いてもぴったりと張り付かれてとても
逃げ切れそうにない。
 だとすれば後ろに下がって、裏口からがベストかも知れないが…男のさっきの
口振りではすでに其処にも人が置かれているらしかった。
 それが何人程度なのか、情報がない状態では…迂闊に後ろに
逃げるのは早計だった。
 
(さて、どうするかなぁ…。ほんのちょっとでも隙が出来れば其処から
突破口は掴めると思うけど…)
 
 今のこの状況では無駄に睨み合いが続くだけだ。
 空気が硬直しているのを感じていく。
 意識を研ぎすませば連中の息づかいすら鮮明に聞き取れる程だった。
 太一は真剣に、三人の男達の付け入る隙を探していく。だが彼らも
同じようにこちらの隙を伺っているのだろう。
 実力行使に入るとしても一対三では分が悪い。
 全員の体格も、太一よりも一回りは大きかった。
 
(…せめて一対一か、親父を入れて二対三とかだったらまだ勝負になるけど…
俺よりもガタイが良さそうな奴らに真っ正面からぶつかって行っても…返り討ちに
遭うだけっだよな…。あ~防犯グッズは奥の部屋のカバンの中だし。
外出している時ならもうちょい警戒して手元に置いておくけど…まさか店の中で
堂々と拉致してくる輩が出るとは思っていなかったもんなぁ…。うちのじいさんの
事を知っている奴等だったら、少なくともロイドにいる時に親父や俺にチョッカイ
掛けてくるような奴はまずいないからな…)
 
 と、そこまで考えた時に…ふと太一は気づいていった。
 
―この連中は極道絡みの件でこの店に顔を出した奴等でないかも知れないな…
 
 祖父の五十嵐寅一は関西の極道を束ねる存在であるし、父も表向きは
小さな喫茶店のマスターだが、裏社会では痕跡を殆ど残さずに人を殺める、
凄腕の殺し屋として名が知れている人間だった。
 だから裏社会の人間だったら、まず…この店に手を出す愚かな真似はしない。
 父と母、そして寅一を敵に回すことはいわば命がいらない事とイコールになる。
 今では五十嵐組と対立関係にある組とて、安易にこの店で太一にチョッカイ
掛けるような真似はしないだろう。
 なら、この男達はどういったツテでこちらを拉致しようとしているのだろう。
 そこまで考え至った時、太一はカマを掛けにいった。
 
「…ねえ、あんた達さぁ…どこの組の関係者? 俺がさ、関西の極道の元締め、
五十嵐寅一の孫だって知った上で…俺を拉致しに来た訳?」
 
「っ…!」
 
 その瞬間、衝撃が男たちの間に走っていったのを太一は見逃さなかった。
 
(やっぱりそうだ…こいつ等は、俺が…あの厄介なじじぃの跡継ぎと
見込まれているお気に入りの孫だっていう情報を…根本的に知らない…!)
 
 はっきり言うと、太一はあの祖父が好きではない。
 豪快な性格とかイザっていう時は筋を通す部分があることは認めている。
 だが、自分は跡継ぎになどまったくなる気がないのに唯一の男孫だからと
いう理由で事あるごとに…跡目は太一だと周囲に触れ回っているのは嫌だった。
 だが、この状況を打破出来るなら幾らでもそのネタを振ってやろうと思った。
 そういった切り替えの早さと割り切りの良さこそが、太一の武器でもあった。
 
―あのじじぃの事をダシに使うのは気が進まないけど…このネタを使って
こいつらに圧力を掛けるのを成功すれば、絶対隙は作れる筈だ…!
 
 太一はそう考えて、思考をフル回転させていく。
 まずはったりとして余裕のある、不適な笑みを浮かべていった。
 笑顔は時に、相手を精神的に追い詰める最大の武器となりうる。
 出来るだけ自信ありげに、ふてぶてしく笑う事を目標としていった。
 
「…俺さぁ、五十嵐組の血族の中でさ…唯一の男孫な訳ね。だからじじぃがさ…
ガキの頃から自分の跡継ぎは俺だって言って譲る気ないんだよ…。
あんたらが誰に頼まれて、俺を拉致しようとしているのか知らないけどさぁ…
俺に何かあったとしたら、五十嵐組を始め…関西のヤクザ達が黙っちゃいないよ…。
あんたらにはその覚悟があるのかな…?」
 
「で、デタラメはそこまでにして貰おうか…そんな嘘に我々が
引くとでも思っているのか…?」
 
「はは、声が震えているよ…。それにちょっと調べれば俺のことなんて
すぐに判るよ。人の話を嘘だって決め付ける前にさ…調べれば良いじゃん。
じじぃに太一って名前の男孫がいるかどうかさ…。それを調べれば俺が
本当のことを話しているって絶対に伝わる筈だよ」
 
 太一が余裕を取り戻していくのと対照的に、男たちはドンドン青ざめていく。
 もし…太一が言っていることが事実だったら、とんでもない事を
引き起こすキッカケにすらなりうるのだ。
 彼等が慎重になるのは、むしろ当然の事だった。
 
(ようしっ…! この手はイケる…この調子で少しずつ前に出て
間合いを詰めていけば…抜けられる…!)
 
 そうして男たちが惑い、視線を彷徨わせている僅かな隙を狙って…
ジワジワっと間合いを詰めていく。
 精神的な動揺が、彼らの包囲網に穴を作り始める。
 太一はそれを的確に突いて、それを打破しようとしていた。
 
―良し、もう少し奴らに気づかれないように近づけるなら…こいつらの隙を突ける!
 
 そう確信した瞬間だった。
 ロイドの扉はバァン!! と盛大な音を立てて開かれ…立派な体格を
した青いスーツ姿の青年がいきなり中に飛び込んで来た。
 
「太一! 無事かぁぁぁ!」
 
「げげげっ…!」
 
 その瞬間、太一はあまりの想定外のことが起こって一瞬フリーズを
仕掛けてしまった。
 相手の心理を微細な所まで読み上げて、心理戦に持ち込もうとしている
太一にとってはまさにKYを絵に描いたような男が乱入してきた事は
邪魔以外の何者でもなかった。
 
―何でこんな時に本多さんがやってくるんだよぉ…
 
 太一はその瞬間、本気で泣きたくなったが…どうにか気を取り直して、
切り替えていった。
 
「太一、助太刀するぞ! 俺が来たからには泥舟に乗ったつもりでいてくれ!」
 
「…本多さん、それを言うなら…大舟だってば! 泥船だと確実に沈むから!」
 
 太一は力いっぱい叫んで、突っ込み返していった。
 決して相性が良いとも、仲良いとも言えない本多がどうして今日に
限っては太一を助けに来たのか真意を計りかねようとしていた。
 だが、本多が来たことでまた場の空気が大幅に変わったのも事実だった。
 
(あっちゃ~この人のKYっぷり…健在かよ。せっかく良い流れになって
きたのに…何もかもが台無しだっつーの。…けど、この人強そうだし…
実力行使でも平気か…?)
 
 本多は標準的な男性の体系よりも遥かに優れている。
 最近、バレーを再開したみたいだと克哉が少し話していたし…スポーツマンなら
体力も人並み以上にある筈だ。
 とっさに作戦を切り替えて、太一は叫んでいく。
 
「本多さん、この人たちを片付けるの手伝って! こいつら、営業妨害
しているからさ…出来るだけ店の内装を壊さないように配慮しながら…宜しく!」
 
「おいおい…難しい注文をつけるなよ! まあ良い…気絶させりゃあ良いんだな?」
 
「うん! 宜しく!」
 
 二人が男たちを挟みながら、実に物騒な会話を交わしている間…男たちの
全身から殺気のようなものが発生し始めていたが…太一は敢えてスルーしていった。
  喧嘩慣れしている彼は、本多が来てくれた事でこの状況をひっくり
返せると確信をしていた。
 一対三なら直接相手にするのは無謀でも、体格的に勝っている本多と
一緒ならば…認めるのは癪だが、勝負にキチンとなってくれるのだ。
 
―悔しいけど、本多さんが来てくれた事で…勝負になる。とりあえず今は
この男たちを片付けさせてもらおう…!
 
 太一は目配せして、本多にもうこちらが動くことを伝えていく。
 そうして数分後…即興のタッグを組んだことでどうにか男たちを撃退して
追い払い…太一はどうしてこのタイミングで本多がこの店にやってきたのか
その事情を聞き出していったのだった―
 
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 こんにちは…金曜日から、音沙汰なかった管理人です。
 ん~とまた、PCにエラー起こってワードやメモ帳が
開けなくなったり金曜日から、調子悪くなって支障
出まくっていたので…二日間、復旧に駆けずり回って
おりました。

 PC修理の店に持ち込んだり、エラー表示のメッセージを
参考にしてネットで調べたりして幾つかの方法を試して
やっとどうにか27日の21時半に復旧してくれました。
 やれやれ、本当に良く調子の悪くなる子です。
 前回の故障で色々と懲りたのでリカバリィディスクを念の為に
取っておいてそれでどうにか今回は命拾いしましたけどね。
 
 今回ばかりは、本気で肝冷えた。
 別ジャンルのアンソロジーの原稿、本来の締め切りだったら
ワードが使用出来なくなった時点でコピーペーストして他の
ツールに移すことも編集も不可能になっていたから
後もうちょいで初めて、こっち側の事情で原稿を落とす
ことになる処でした。
 今度ばかりは運に助けられた部分ありますねぇ。

 メモ帳も何故か使用不可能になってしまっていたので
POMERAで作成した23話もアップ不可能になっていたのですば
これで復旧したので今夜から明日に掛けてアップ出来ます。
 本当にこちら側の事情で遅れてしまってすみません。

 後、やっぱり今使っている子は一度修理に出して辛うじて動いて
いる不安定なPCだと実感したので、新品のサブPC購入するのに
踏み切りました。
 と言っても今の自分に出せる予算はギリギリ7万といった処なので
条件に合うのあるのかしら…と思ったら。

 マイクロソフトオフィス入り
 CDの書き込み&CDとDVDの再生可能
 USB3つ付き
 250G
 1G→4Gにメモリ増設(オプション)
 リカバリィソフト付き

 …で新品で7万以内でありました。
 …パソコン、本当に今…価格破壊起こっていますね。
 多分性能的に言えば今、使用しているXPの子…今時メモリ256MBなんで
一気に16倍の処理能力ですよ。
 OSもVISTAの次の奴に当たりますし…それだけちょっと不安が
ありますが、まあHDとメモリを見る限りでは今まで買ったノーパソの
中では最大性能のになります。

 …まあ新品の子は使える準備は整えて、いざって時の控え選手にして
まだXPをメインで使う気ありますけど。
 今年に入ってPCトラブルが多発しているので、外付けのHDに
バックアップを取るようにして本当に良かったな~と噛み締めていますよ…。
 二日ばかり、このトラブルの復旧に大部分の時間取られてしまったので
これからボチボチ、本来の流れに戻していきます。

 もうちょっとだけお待ちください。
 明日の朝までには桜の回想23話だけでもアップさせて
頂きます~。ではでは!
 
 こんにちは、本来なら今日…参加するアンソロジーの
原稿締め切り日で、下手すれば徹夜する羽目になっていた
香坂です。
 締め切り前日に、主催者様の方から…一週間の延長を
言い渡されたので命拾いしておりました。

 …いや、別ジャンルの原稿なんですけどね。
 主催の人が開催するか迷っていた時に「私は絶対に参加
しますからやって下さい!」と言って背中を思いっきり押しましたので。
 …自分の言ったことの責任を果たす為に今週、サークルを取って
申込用紙書いたり…アンソロジーの原稿やったりしていましたよ。
 来月の鬼畜眼鏡の新刊の原稿と平行して…ンな事をバタバタ
やっているから今週はサイトの連載、毎日は出来なかったんです
けどね(トホホ)

 とりあえずギリギリで一週間伸びたので首の皮一枚で
繋がった感じです…。
 けど、一週間延長して参加者の追加を集っていたので…
別ジャンルの方の知り合いに片っ端から声を掛けて、どうにか
二人ばかり…アンソロジーに1Pだけでも描いてもらえるように
頼み込んでおりました。
 主催の人が必死に頑張っているなら…手助けしたいしね。
 OKしてくれた相手の一人はPCを持っておらず、もう一人は
フォトショップを持っていないので…香坂が文字入れを
担当するという形で約束取り付けられました…。

 サイトに別ジャンルの事情も語って良いのかしら…と
迷っていたのでギリギリまで悩んでいたんですが、香坂は
そっちのジャンルでは…八年活動しているんですよ。
 だから、今のメインは鬼畜眼鏡であっても…長年付き合っていた
古巣を疎かにしたくないんですね。

 そちらのジャンルははっきり言って廃れていますし…
書き手も読み手も随分と少なくなってしまっています。 
 それでも根強く残って、イベント参加したり…主催する人達が
いるので…その人達に協力する形でこっちのジャンルで活動している
合間でも平行してずっとやっていたんですね。
 この二年間で鬼畜眼鏡で無料配布含めて本14~5冊出している合間に、
別ジャンルの方でも10冊近くは発行しています。(殆ど薄い無料配布だけど)

 10月11日のスプレーオンリーも参加しますけど、11月1日のスパーク4も
別ジャンルのプチオンリーが開催されるので、久しぶりにそちらで
スペース取って参加します。
 …で、今…平行して色々と準備したり、知り合いと連絡取ったりしてアワアワ
しております。
 本当に一日が今、短く感じられてしまいますよ…(汗)

 …おかげで色んなことが抜け落ちてしまっています。
 それでもチョクチョク、サイトを覗いてくださっている方がいるから
どうにか続けておりますけどね。
 今日は本来、締め切りだったので…日中はそちらの原稿を優先してしまったので
24日は掲載分はありません。
 とりあえず現在、桜の回想23話も途中までは書きあがっているので…
明日か明後日までには完成させて掲載する予定です。

 それでは現状報告までに。
 今回はこの辺で失礼致しますね(ペコリ)
※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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―やあ、僕のことは覚えているかい?
 
 本多との会話終了直後に掛かって来た電話を取ると、聞き覚えのある
声の主が…そう声を掛けて来た。
 
「…澤村、さん…?」
 
 故郷の地に戻り、もう一人の自分と彼の写真を見た際にぼんやりと
思い出した名字を、確かめるように呟いていく。
 前回、接触を持った際にはまったく手応えがなく、「思い出せない」を
繰り返していた克哉が…恐々とした様子でも自分の名を口にした事で…男は
電話の向こうで愉快そうに喉の奥で笑っていった。
 
―へえ、僕の事…やっと思い出してくれたんだ…嬉しいなぁ…。かつての親友に
忘れ去られてしまって、僕は本当に寂しかったからねぇ…
 
「一体、何の用ですか? どうしてここの番号を…?」
 
―君がMGNで働いている事はとっくの昔に調べはついているよ。我が

クリスタル・トラストの情報調査員は優秀だからね…。克哉君、君についての
情報はかなり詳しい処まで知っているよ…。例えば、君の直属の上司との
親密な関係とかもね…?
 
「っ…!」
 
 その一言を言われた瞬間、克哉の表情は強ばっていく。
 男が言っているのは間違いなく自分と御堂との恋人関係の事だ。
 だが、すでに本城の時に学習をしている。
 一切、動揺を見せる訳にはいかない。それは相手に付け入る隙を
与えてしまうだけだ。
 だから克哉はすぐに気持ちの体制を直して、出来るだけ平静な声で
言葉を返していった。
 
「…そちらが何を言っているのか、理解出来ないんですけど…」
 
―ふうん、とぼけるんだ。まあ良いよ…今の間が肯定してくれた
ようなものだからね
 
「どうぞご自由に解釈して下さい。根も葉もない噂に左右されるような
愚かな社員はMGNにはいませんから」
 
 御堂に決してこの件で迷惑を掛ける訳にはいかない。
 彼と交際してから二年、一緒に暮らすようになってからは
一年が経過している。
 その事で一部の社員にはすでに、自分たちの関係は薄々とは
気づかれているが…御堂と克哉のスタンスはもし発覚したとしても
胸を張っていようと決めていた。
 言いたければ言うが良い。
 男と女じゃなければ生涯のパートナーになれない訳ではない。
   男同士であったとしても心が深く繋がれば…共に生きていけるし、
寄り添っていける。
 御堂と交際した直後はそれでも自分が男である事に迷う事があった。
 だが、今はあの素晴らしい人に選んでもらえて本当に良かったと思っている。
 だから…自分たちの関係を、かつてもう一人の自分を陰で騙して貶める
ような真似をした奴に決して踏みにじられたくない。
 だから克哉は毅然とした態度で応対した。
 それが相手には面白くなかったのだろう…チッ、と舌打ちする音が
小さく聞こえていった。
 
―まあ良い。そちらはささいな事に過ぎないから。随分と脇道に
逸れてしまったからそろそろ本題に移ろうか…。ねえ、克哉君…君は
今でも前の会社の人達と親しく付き合っていて…時々飲み会をしたり
懇意にしているみたいじゃないか。特に片桐課長と…大学時代の同級生の
本多憲二…この二人は特に君にとって大切な存在みたいだね…
 
「嗚呼、そうだよ。それが何か…?」
 
―ならこの二人はいわば君にとってはアキレス腱に等しいよね。今…僕が
片桐部長を拉致しに、部下を向かわせていると聞いたら…君は一体どんな
顔をするのかな…?
 
「何だと!」
 
 その瞬間、克哉は平静を取り繕う事が出来なくなり、大声を挙げてしまった。
 今の澤村の発言と、先程の本多が電話で言っていた内容が重なっていく。
 正午過ぎから音沙汰なく、姿を消してしまった片桐。
 そして部下を使って拉致しに行ったという澤村の発言が
最悪の形でもって重なっていく。
 
「…片桐さんをどうするつもりだ!」
 
―おいおい、そんなに怒るなよ…。今の処、何もするつもりはないよ…。
だって危害を加えたり怪我をさせてしまったら僕達の方に非が出来てしまう…。
丁重に扱っているから無傷だよ。『今の処』はね…
 
 澤村は現時点では、というのを強調して伝えて来た。
 それはこちらの返答や、行動次第によってはどうなるか判らないというのを
遠回しに伝えて、こちらに脅しを掛けているのと同義語だった。
 克哉はその事実に強い憤りを覚えていった。
 
(こいつ、全然変わっていないし…反省もしていない…! こんな卑怯な真似を
平然と取るなんて許せない…。それに、迂闊な対応を取れば片桐さんが
どうなるか判らないなんて…!)
 
 本多の電話の内容を聞いた時点から、何となくイヤな予感はしていた。
 だが、こんなにも早くそれが的中していた事を思い知る羽目になる
なんて考えてもみなかった。
 克哉は無意識の内に、こう呟いてしまっていた。
 
「…卑怯者、貴方は全然…小学生の頃から、変わっていないんですね…」
 
 その一言が知らず、口から零れた瞬間…澤村が息を飲む
気配を感じていった。
 暫しの間が生じていく。そして…怒りを必死に押し殺した相手の
声が聞こえていった。
 
―黙れ、お前はこちらの事を忘れていたんじゃなかったのか…? 人の
小学校時代の事をどうこう言えた義理じゃないだろうが…
 
 その時、嫌みったらしいぐらいに余裕に満ちていた相手の様子が
大きく変わりつつあった。
 だが、そんな事に今更克哉も動揺する訳がなかった。
 
「…聞こえていなかったんですか? 優位に立つ為にこちらの事を調べて…
こちらの親しい人を拉致する。この行動のどこか卑怯じゃないんだよ…」
 
―うるさい。黙れ…君が目障りな事をしなければ良かったんだ…。
知っているかい? 今…君たちが新しく開発しようとしている新商品は、
クリスタル・トラストが現在提携している会社が新しく開発している商品と
酷く似通っている部分がある。このままそっちに先に発売されたらうちは
大打撃を喰らうんだ…。それを放置する訳にはいかないだろう…!
 
 その時、男の口から初めて聞く情報が漏れた。
 克哉の中で、再びパズルのピースが埋まっていく。
 今、語られた内容…それこそが、この男性が自分の前に突然顔を
出してきた一番の理由のような気がした。
 
(今の一言で、どうしてこの人がオレの前に現れたのか…
ようやく、繋がった…)
 
 克哉は断片的にしか、相手に関しての情報を持っていない。
 ただ、あのような酷い裏切り行為をした相手が何の理由もなしに
自分の前に現れる訳がない。
 もう一人の自分と、澤村との間に起こった事を考えれば旧交を
取り戻す為に…という理由で現れたとしたなら、相手がその事に関して悔いて、
改心している事が前提となる。
 しかし片桐が拉致された事を考えれば、その可能性は完全に
否定されたようなものだ。
 だが、会社の利益の為なら…何らかの圧力なり、裏取引を持ちかける為に
接触しようとしたなら、全ての事例が納得いく形で纏まっていく。
 だが、恐らくこの男にとっての最大の予想外の出来事は…『今の克哉』は
まったく澤村の事を知らなかった事だろう。
 だからあの日、男は動揺して取り乱したのだ。
 自分の事を覚えてもいない相手に、付け入って優位な方向に話を
持っていける訳がない。
 かつて信じきっていた頃のように、その情で…相手は再び自分の良いように
こちらを操作しようとしたのだろう。
 そう考え至った瞬間、沸々とした憤りが胸の奥から湧き上がっていく。
 
(ねえ『俺』…お前はこんな男を親友と信じて、裏切られた訳なんだね…)
 
 奇妙な感覚だった。
 それはまぎれもなく自分の体験した出来事なのに、人事のように
感じられてしまった。
 けれど紛れもなく克哉は怒っていた。
 もう一人の自分を味方面して裏切り、今も自分の利益の為にこちらを
脅そうと片桐を拉致しようとしている。
 そんな理不尽な真似をしている相手に、本気で腹が立った。
 様々な考えが巡っていく。相手もさっきの発言はまずいと思ったのだろう、
 両者の間に重い沈黙が落ちていく。
 
(どうしよう…迂闊な事を言って刺激して、片桐さんの身に何かあったら…)
 
 相手を怒鳴りつけたい衝動に駆られた瞬間、克哉のプライベートで使用
している方の携帯が上着のポケットの中で振動していった。
 
「うわっ…?」
 
 と驚きつつも、慌てて克哉は着信画面を確認していった。今朝紛失して
しまった仕事で使用してある方は、多くの取引先が登録してある。
 逆にプライベートの方はごく限られた人間にしか教えていない。
 逆を言えばこちらに掛かってくる電話や送信されたメールは克哉にとって親しい、
もしくは大事な人間からの連絡であるのと同義語である。
 時間的に御堂からだろうかと推測してメールの文面を確認していくと…
克哉はその場で固まった。
 
『オレへ 片桐さんは無事だ。その件は心配しなくて良い』
 
 たった一言、それだけしか書かれていない素っ気ない内容だった。
 そして送信アドレスは…何と、会社用に使っている携帯からだった。
 一応、念の為に会社から支給された携帯のアドレスもこれに登録して
あったが、今までに必要なメールを転送する以外でメールを送受信
した事はない筈だった。
 だが、実際に…無くなった筈の携帯から、明らかにもう一人の自分が送って
来たと思われる内容が送られて来た。
 それで、もう一つの疑問が解けていく。
 
(…俺の会社の携帯を持っていったのは…お前、だったのか…)
 
 そう、この携帯さえあれば…会社や御堂のマンションのセキュリティを
越えたり、片桐を呼び出す事は容易だろう。
 他の人間だったら携帯一つ取得しただけでは其処までするのは不可能だ。
 だが、もう一人の自分が手にしたならば…佐伯克哉として、合い鍵借りたり、
扉を開けてもらったり…ありとあらゆる事が可能となる。
 
「…ありがとう、『俺』…」
 
 昨日、彼に自分達の部屋に侵入されて荒らされたのはショックだった。
 だがその事よりも、彼が自ら動いて…片桐を助けてくれたことの
喜びが大きかった。
 これで相手が不当な要求をしてきても、心おきなく突っぱねられる。
 そして、克哉は決意を固めて…電話の相手との長い沈黙を破り、戦いの
口火を切る為に…ゆっくりと言葉を語り始めたのだったー
 
 
 本日の日中は、ちょっとゴチャゴチャと雑事をこなして
さて、夜には昨晩書き上がらなかった分、一話だけでも
アップするぞ~と意気込んでいたら…どうやら食べ物に
当たったらしく、軽く食あたりで倒れている香坂です。

 まあ、ちょっと眩暈がして軽く戻して冷や汗が出ている
程度で、症状も今は落ち着いて来ていますが…何か
胸ヤケして気分が悪いので…とりあえず今晩は
早く寝ることにしますわ。
 明日からまた仕事ですしね(トホホ)

 風呂から上がった途端に、バッタンと倒れて自分でも
ちょっとびっくりです。
 という訳で…一話分を丸々書き下ろすのはちょっとしんどい
コンディションなので…おとなしく静養します。
 明日、体調が整っていたらまた日中に書いてアップ
するので宜しくです。
 …後、何かこの連休期間…あんまり作品掲載できなくて
何かすっきりしないので…昨晩分として、これから5~10分
程度作業して…オリジナルの続き掲載させて頂きます。
(これはすでに書きあがっている作品なので改行して
見直せばアップ出来ますので…)
 鬼畜眼鏡の方に関しては、本当にストックなくて
申し訳ありませぬ(汗)

 では今宵はこの辺で失礼します~。
 ※シルバーウィーク中、色々条件重なってあまり
作品アップが出来なかったので…オリジナルの方で
すみませんが、ストックから掲載させて頂きます。

 これは香坂自身の高校時代から頭の中にある
オリジナルの話なので…興味ない方はスルーして
やって下さい。
 一応、ファンタジーものです。
 ちょっとだけ出版社に持ち込んだ時よりも加筆
修正を施してあるので宜しくです(ペコリ)

 興味ある方のみ「つづきはこちら」をクリックして
読んでやって下さいませ。
 こんにちは、香坂です。
 この二日間はちょっとタイミングが色々悪かったり…
墓参りとか、敬老の日とかで親戚の処に顔出したりと…
休みなんだけど、ヤボ用が色々入ったのであんまり
連載書けませんでした(汗)

 とりあえず22日分は本日から、明日に掛けて辺りまでに
書き上げてアップするぐらいの気持ちで行きます。
 
 んで、先日…兄上と話していた時にこういわれたんですよ。

「今、僕のブログの方で最近始めた中堅ブロガーの連載。
あれ、お前さん宛てのメッセージでもあるから。まあ…ようするに
ここで言ってしまえば『無理するな』。それ、直接言っておくな」

 と言われて…更新速度は以前のように無理をして毎日書くのは
止めようと思います。
 平均週3~5程度、時々休みも入れる。
 それで気分が乗らなかったり、疲れ果てている時は身体を休める
方を優先するようにします。
 
 …特に香坂、今は勤め始めで覚えなきゃいけない事がいっぱい
あるからそちらを疎かにする訳にもいかないしね。
 入社してから最初の三ヶ月でどれくらい学ぶか、教えて貰えるうちに
吸収するかが大事だって…色んな職場を体験しているからこそ
肌身に沁みて実感している訳なので。
 先週辺りからビシバシと新しいことを教えられ続けて、創作よりも
新しい作業のポイントや要点をPOMERAで打ち込んで頭に叩き込む方が
先週は優先になったので、正直言うとストック今ないです(汗)

 ただ以前に書いた通り、通勤時間&休み時間等で一日に2~3時間は
打ち込む時間は取ろうと思えば取れるんで…覚えることが一段落
つけばまたボチボチ更新速度も上がってくるし、一定の頻度でアップ
していくと思います。

 他にこちらの近況を語ると…。
 今年の六月ぐらいから週間少年ジャンプを毎号購入するようになって
ここ1~2年で連載始まっている漫画の単行本をボチボチ集め始めております。
 バクマンとぬらりひょんの孫は連載当初から良いな~と思っていて
定期購読する以前から単行本買っていましたが…最近、スケット・ダンス
リボーンとトリコ、黒子のバスケとサイレンとか集め始めました。
 毎号読むようになっている内にそれ以前のが知りたくなって…つい手を出して
しまいましたよ…。
 それでも銀魂とかワンピースとかナルトとか長編のに手を出す勇気は
なかなか持てないけれど…(汗) 
 ワンピースとナルトは最初は買っていたけど、引越しの際に大量に本を
捨てなきゃいけなくなった時に一度手放してしまったからねぇ。
 もう一回買うには厳しい…二つ合わせれば100巻近く行くしねぇ。

 ちなみに今、ジャンプでの好きな漫画のトップ3は…バクマン、スケット・ダンス、
トリコの三本です。次点リボーンとぬらりひょんの孫。
 密かにTO LOVEるも好きだったので…最近、打ち切りっぽく終わってしまった
のが悲しひ…(ルルルルル~)

 後、子猫が迷い込んで来て以来…うちの三匹の猫さん達の猫関係が
なかなか複雑な事になっております。
 元々うちに10年くらい居ついているミー(メス)がボーイフレンドのシッポ(オス)と
赤ちゃん猫(クロ)をヤキモチ焼いて、追い出しに掛かっていて…残り二匹が
殆ど野良猫に近い状態に戻ってしまいました。
 …まあ、ご飯時にはまず顔出すから問題ないんですけど。
 クロは次第に身体大きくなって来ているし…後もう少ししたらミーの身体の
大きさを追い越すかもなので…その時、しっぺ返しを食らうんだろうな~と
思うとちょっと心配です。

 人間でも猫でも、相手に悪意持って攻撃したりすれば…どっかでその
ツケを払うもんですからねぇ(しみじみ)
 しかしクロちゃんは飼い猫なのか、たまにうちに顔を出す野良猫さんなのか…
現時点では判別つきません。
 たまに抱き上げると全力でじゃれ付かれて引っ掛かれたり甘噛みされまくったり
大変です。それでもうちのオカンは毎日、「良い子良い子~」と言いながら
抱っこして頭撫でるのを決して止めませんが(可愛いしね)

 香坂の近況はこんな感じですかね。
 それでは連載に着手して来ますね。ではん…。
 
※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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御堂と克哉が桜を二人で見に行き、帰宅した時に派手に部屋を
荒らされてしまったその翌日。
 就業時間を迎えて、これから残業時間に差し掛かる頃くらいに
克哉の元に一通の電話が鳴り響いた。
 ついさっきまで御堂と一緒に本日の業務をこなしていたのだが…
商品開発部の方に直接打ち合わせに行くと一言残して、ついさっき御堂は
部屋の外に出た直後のことだった
 昨晩の出来事に対して、まだショックが尾を引いていないといったら
嘘になるが…私事で業務に支障を出すのは社会人として失格なので、
勤務中は悩み事は頭の隅に追いやって目の前のことをこなすのに
専念していた。
 だが、そんな彼を嘲笑うかのような驚愕の事実が電話の主から
告げられようとしていた。
 
 ツゥルルルルル…ツゥルルルル…
 
 定時を迎えているせいか、会社全体がどこか静かで…その分、
電話のベルの音が大きく感じられる。
 十回程度、呼し出し音を聞いてから克哉が受話器を取ると…
相手は、本多だった。
 
「はい、もしもし…こちらMGNの製品企画開発室ですが
どういったご用件でしょうか…?」
 
「……克哉か?」
 
「…えっ、もしかして本多か?」
 
「ああ、そうだよ。さっきからずっとお前の携帯の方に呼び出していたのに…
通じないからよ。本気で焦ったぞ…。仕方ないかた
 
「あ、うん…ちょっと事情があって…今日は、会社で使っている方の携帯は
繋がらないんだ。その…バッテリーの部分がおかしくなっちゃってさ。まだ
代替え機も用意されていないから…」
 
「えっ…? 嗚呼、そうだったのか…? なら仕方ないな。何かあったのかと
思っちまったよ。バッテリーがイカれちまっているなら通じなくても
不思議はないよな…」
 
「う、うん…」
 
 と頷きつつも克哉の様子は歯切れが悪かった。
 本多に今、説明したのは半分事実だが…残り半分は嘘だったからだ。
 実際にMGN本社内で働いている時は会社から支給されている方の
携帯を克哉はメインに使用している。
 だが、部屋から写真が消えてしまったように…本日、出社してから
気づいたのだが…克哉のそちらの方の携帯はロッカーから
紛失していたのだ。
 だからそちらの携帯を克哉が今、使うことは出来ないというのは事実
だったが…誰かに取られたと言うよりもバッテリー云々で使用不可能
という方が人を心配させないので、御堂に対しても本日…そう言い訳した。
 だが、一体誰が自分の携帯を盗んだのか見当がつかない。
 写真に関してはもう一人の自分が犯人であることはまず間違いない。
 だが、携帯に関しては…まったく判らない。どういった意図で克哉の
携帯を盗んだのか…それが読めなかった。
 
「あれ? けど…おかしいな。今日の昼頃…片桐さん、その会社の方での
お前の携帯から着信があったって言っていたぜ…?」
 
「えっ…?」
 
 その一言に克哉はぎょっとなった。
 今朝の時点でその携帯に関しては朝の時点で紛失を確認している。
 だから、その電話は自分以外の人間が掛けたものである事は間違いなかった。
 だがここですぐに事実を明かしてしまうのは早計過ぎる気がした。
 
「…嗚呼、オレ…プライベートで使っている方の電話で片桐さんに昼、
電話を掛けたから…間違いじゃないのか?」
 
「…何だと?」
 
 その一言を言った途端、本多の声のトーンが一気に低くなった。
 何かを押し殺しているような、そんな響きだった。
 
(しまった…本多はこの発言が嘘である事を察してしまったみたいだ…)
           
「…克哉、俺に嘘をつくんじゃねえよ…。片桐さんは間違いなくお前の
会社の方の携帯から掛かって来た電話を取って…それで出掛けていったんだ。
たまたま、着信している時に番号は俺…傍に立っていたから見ていたんだ。
それは間違いないからな…」
 
「あっ…」
 
 なら、今の自分は致命的な間違いを犯してしまったことになる。
 それなら克哉の発言が事実でないことの裏づけを最初から本多は
知っていたことになる。
 冷や汗がジワっと背筋に伝っていく感覚がしていった。
 だが…ここで適当な事を言って電話を切ったりしたら、余計に本多の
疑惑を深めてしまうだけだろう。
 それは判っていたが…克哉は半ばパニックになりかけていた。
 何も言えないまま、克哉は黙っていく。電話を通してお互いの間に
重い空気が流れていくのを感じていった。
 
「……ちぇっ、お前…何か事情ありそうだな。良いよ…今はお前の嘘は
置いておくことにする。それより本題にそろそろ行かせて貰うぜ…。
お前、片桐さんの行方を知らないか…?」
 
「な、何…? どうして片桐さんの事が出てくるんだ…?」
 
「…そんなの俺の方が聞きてぇよ。だから片桐さん、お前の携帯からの
電話を取ってすぐに俺達に出掛けると告げていってから…オフィスを出てな。
それから行方不明なんだよ。連絡しても一向に出る様子もないし…就業時間を
迎えたのに戻って来てもいない。あの律儀な人が連絡もなしに…直帰する
訳ないし、他の人に片桐さんの家の方にも向かって確認してもらったけど…
自宅にもまだ帰ってないんだとよ…」
 
「…嘘、だろ…?」
 
 あまりにショッキングな事を聞かされて、克哉は驚愕を隠せなかった。
 どうして片桐が前触れもなく失踪してしまったのか…理解が出来なかった。
 今では克哉はMGNに所属している身で…キクチ時代の仲間たちは
元同僚という位置づけでしかない。
 だが…今でも飲み会や忘年会の類は呼ばれるので参加させて貰っているし、
大切な存在であることは間違いなかった。 
 特に片桐は今では結構親しくなって、何かあった時に話を聞いてもらったり…
たまに相談に乗って貰っている存在だった。
 その人が忽然と足取りを消してしまっている事実を聞かされて…克哉は
言葉を失いかけて、顔が青ざめ始めていった。
 
「…わりぃ、さっきお前が嘘をついた事で…片桐さんの件、もしかしたら
お前が関わっているんじゃないかって一瞬疑っちまった。けど…お前も
本当に驚いていたみたいだからな。そんな事…ある訳ないよな…」
 
「嘘、ついたことに関しては御免…。実はオレ、そっちの携帯…盗まれて
しまっていて。それで…本多に心配掛けたくなかったからとっさに嘘を
ついてしまっただけなんだ…。だからその件に関してはオレも、知らない…」
 
 克哉は仕方なく、その事情を正直に打ち明けることにした。
 本多は長い付き合いである…大切な友人だ。
 こんな事で亀裂や溝を作りたくなかったから…嘘偽りなく事実を伝えていく。
 その説明を聞いて本多は納得がいったが…どこかさびしそうに答えていった。
 
「…そう、だったのか。なら克哉は無関係だな…。悪いな、俺も心配だから
ちょっと疑心暗鬼になっちまっていた…御免な」
 
「ううん、オレも嘘をついてしまって御免…」
 
「いや、気にしなくて良いぜ。少なくともお前が悪意や、俺を騙そうとして
嘘ついたわけじゃないって事は判ったから…。けど、片桐さんの足取りが
判らなくて…八課の全員が心配しているし…不安に思っている。もし手がかり
らしきものでも掴んだらすぐにこちらに連絡して貰えるか?」
 
「う、うん…判った。何か判ったらすぐに連絡するよ!」
 
「嗚呼、頼むぜ。それじゃあ…俺なりに今から色々と動いてみることにする。
ジっとして黙って待っていたって事態は好転しねぇだろうしな…。それじゃ
克哉、そろそろ切るぜ?」
 
「うん、本多も気をつけてな…」
 
 最後に克哉がそう告げると、電話は静かに切れていった。
 あまりに予想外の事が昨晩から起こり続けて、克哉は
混乱しかけていた。
 明らかに自分の周りが大きく動き始めている。
 だがその全貌を未だに掴むことが出来なくて…克哉はどうすれば
良いのか迷い始めていった。
 その直後、もう一度…電話がけたたましくなり響いていった。
 
「あっ…また、電話が鳴ってる…?」
 
 その瞬間、克哉の背筋に猛烈な悪寒が走り抜けていく。
 そして散々迷った末に、受話器を取っていき…そして克哉は衝撃的な
事実を再びその電話口の相手から突きつけられることになったのだった―
 
 
※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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克哉が御堂と寄り添いながら、部屋のある階までエレベーターに乗り、
其処から出た時…隣のエレベーターに乗り込んだ人物の後ろ姿を見て、
驚愕を隠せなかった。
 マンションの入り口でMr.Rに遭遇しただけで相当に驚いたのに、まさか
彼までがこうして現れるだなんて予想してもいなかったからだ。
 
「えっ…?」
 
「…克哉、どうしたんだ?」
 
「い、いえ…今、入っていった人がもしかしたら知り合いかなと思って
少し驚いただけです…」
 
「…? そうか…」
 
 御堂は怪訝そうに眉を寄せていったが…克哉が言いづらそうにして
いるのを察して、それ以上の詮索はしてこなかった。
 それが克哉にはありがたかった。
 
(良かった…孝典さんがそれ以上、尋ねて来なくて…。まかさ言える訳が
ないよな…。もしかしたら今、オレたちと入れ違いに隣のエレベーターに
乗り込んだ人物が…もう一人の』俺』かも知れないなんて…)
 
 ただでさえもう一つの人格があるだの、しかもその人物と対面して
抱かれた経験すらあるなど、決して口に出して言える事ではない。
 御堂に例の眼鏡の事を打ち明けた時ですら、信じている様子は
なかったのだ。
 そんな事を口に出したら…絶対に正気を疑われることは
目に見えていた。
 自分が誰かからこの体験を打ち明けられたとしても…
恐らく信じられないだろう。
 それぐらいMr.Rと…もう一人の自分の存在については
非現実すぎる体験なのだ。
 だが、このフロアは自分と御堂の部屋がある。
 どうしてその階層にもう一人の自分が具現して現れていたのか…
腑に落ちない気がして克哉は首を傾げていった。
 
(…どうしてあいつはこの階にいたんだろう…?)
 
 何となくそれが納得いかない。
 用もなく、あいつがこうして現実に存在しているなどとても
思えなかったからだ。
 グルグルと思考が回り始めていく。
 出口のない迷路にまた迷い込んでしまったような気分だった。
 
(判らない…Mr.Rも、あいつも…何を考えて行動しているのか、
その理由が…)
 
 ただ一つ言える事はこの一年…安定していた筈の自分の環境が
あの男性が目の前に現れた二週間前から崩れてしまったという事だ。
 自分が動揺する度に、御堂はいつだって心配そうな…どこか
苦しそうな顔を浮かべていく。
 その表情を見る度に克哉は申し訳ない気持ちでいっぱいに
なってしまう。
 けど、もし逆の立場なら自分だって御堂を心から案じるし…少しでも
手助けしたいと思うだろう。
 
(いちいち、小さな事に動揺するな…孝典さんにこれ以上、心配を
掛けてはいけない…)
 
 そうして気をしっかり持とうと覚悟したのと同時に、自分たちの
部屋へと辿り着いていった。
 そしてカードキーを使用して中に入り、リビングに向かって
二人は愕然とした。
 
「なっ…! これは…!」
 
「そんな…どうして、こんな、事が…?」
 
 御堂と克哉は驚きを隠せない様子で、部屋の中の惨状を
目の当たりにした。
 定期的にハウスキーパーを入れて清掃も行ってもらい…自分たちが
生活している時でも整理整頓に出来るだけ気を配って整えている筈の
室内が、まるで空き巣か何かに入られたかのように荒らされていたからだ。
 このマンションのセキュリティは都内でもかなり上ランクの方に入る。
 住人と一緒に入るか、もしくは住人が許可した人間が入れないように
工夫されている。
 関係ない人間が…入り口より先に入るのはそれなりに骨が折れる筈だ。
 
「何故、こんな事が…? この部屋のカードキーは君と私、後は管理人
しか持っていない筈だ…! 何故、こんな事が起こりうる…?」
 
 このマンションではカードキーを使用する以外でドアを開いた場合、
例えばピッキングなどで強引に開錠した場合は盛大にアラームが
鳴り響いて強盗など出来る状態ではなくなる。
 もし、この高級マンションでそれでも何かを盗みたかったら、住人と
一緒に入るか…もしくは住人になりすまして入り口を越えるのと、
カードキーを何らかの手段で手に入れなければならない。
 その二つのハードルを越えなければ、到底こんな事態になりようがない。
 
(まさか…?)
 
 克哉は慌てて、スーツの上着のポケットに手を差し入れて
カードキーを探っていった。
 其処には確かに肌身離さずに大切に持っているこの部屋の
鍵が入っていた。
 そう…自分が起きている限り、外出する時は常に克哉はこれを
無くさないように意識している。
 これは自分の住んでいる部屋のキーである以上に、御堂から
初めて御堂から貰った…強い想いが込められた品だったからだ。
 合い鍵を渡しても構わないと想うぐらいに、自分を好きになって
くれた事が嬉しくて…だから克哉はこれだけは絶対に無くさないように
気をつけ続けた。
 
「克哉…君のカードキーは…?」
 
「…キチンとここにあります。これは貴方からもらった大切な
思い出の品でもあります…。これを無くすような事はしていません…」
 
 そうして自分の言葉が事実だと相手に伝える為に、ポケットから
キーを取り出して見せていく。
 
「嗚呼、そうだな。君がそんな不注意を簡単にする筈がないし…万が一
やってしまったのなら、黙ってそのままにしておくような愚かしい真似を
する筈がないからな…」
 
「えぇ…」
 
 克哉は小さく頷きながらその言葉に同意していく。
 本当に酷い有様だった。
 
「…克哉、何を取られたのか確認しておこう。金銭に関わる物が
盗み出された場合は早急に対処しなければならないからな。私は
書斎を見てくる。君は寝室の方を確認して来てくれ…」
 
「はい、判りました!」
 
 そうして力強く頷いていくと克哉は早足で寝室の方へと
向かっていった。
 二人はそれぞれ自分が確認を担当した部屋を30分くらい
掛けて入念に調べていった。
 特に金品や高価な物に掛けてはしっかりと無くなった物は
ないか確認していった。
 だが全ての確認が終わった後、お互いに唸るしかなくなってしまった。
 そう、これだけ派手に部屋の中が荒らされているにも関わらず…
お金に繋がりそうなものは何一つ、家の中から無くなっていなかったのだ。
 一度区切りをつけて御堂にその事を報告したが、やはり納得が行かなくて…
二人は今度は金品以外の物でなくなった物がないかを確認する事にした。
 その時、たった一つだけ消えている物をようやく克哉は発見した。
 
―それは帰省する時に持って帰って来た…もう一人の自分と
あの男性の、小学校時代の写真だった
 
 それは今度、あの男性が現れた時の為に自分の会社用のカバンの中に
潜ませていた物だが…其れが全て無くなっていた。
 その事実に気づいた時、どうしてもう一人の自分が隣のエレベーターに
入れ違いで乗り込んでいたのか…全ての符号が克哉の中に一致していく。
 
―どうやら、真実の近くまで辿り着いた事で…オレはお前を敵に
回してしまったみたいだな…
 
 他者を理解したい、知りたいと思う気持ち自体は決して
悪いものではない。
 時に自分を知ってしまい、共感したり労られたりする事で人はどん底から
救われて、立ち上がる気力を得られる時だってあるのだから。
 だが、まだ人に語れるまで昇華されていない出来事や体験を無理矢理
踏み込んだり、知ろうとする事は…される側にとっては暴力に等しい。
 今の克哉の人格は、それ以前の自分を消したいと…変わりたいという、
少年時代の眼鏡が願った事で生まれた心だ。
 例え自分と同じ身体を共有している存在であっても、その事を
知られたくないと頑なになっている事実を目の当たりにして…克哉は
歯噛みしたくなった。
 
「…そんなに、お前を知ろうと…理解しようと思う事が悪いのかよ…! 
何でそこまでお前は、一人で傷を抱えようとしているんだよ…バカ…!」
 
 克哉はこの部屋を荒らした犯人が、もう一人の自分であった事実を
悟ってしまったとき…泣きたくなった。
 それは彼からの拒絶に等しかったから。
 克哉はその時、頬に一筋だけ涙を伝らせていった。
 
「克哉…」
 
 だが部屋の入り口から愛しい人がこちらに対して呼びかけていた事に
気づくと、これ以上愛しい人を心配かけまいと…どうにか笑顔を浮かべて
『はい』と小さく返答していったのだったー
 
             
 
             
 本日分は、現時点ではストックないので素直に休みます。
 一言で言えば、今週は新しい作業ばかりやっているので
身体がヘバっているので執筆時間も減少気味なので。

 毎日、それでも最低一時間ぐらいは移動時間&休み時間に
POMERAで打ち込んでいるんですが、仕事メモ(教えてもらった事や
注意されたことを書いているメモ)も平行して打っていて、
そっちに書き込むことが多い時は創作の方の時間も減少
してしまうので…今日はお休みです。

 でも、再開宣言した以上は出来るだけ書いて、掲載していく
ようにしますので宜しく。
 桜の回想も、ようやく回想シーンが終わって…最初の時間軸に
話が戻って来ました。
 全部で30話ぐらいのボリュームになる予定です。
 これから終盤に向けて、話が展開していきます。

 この話は本編の澤村の扱いが酷いというか、軽い気がするので
彼と眼鏡の関係を、ノマ視点でもう少し掘り下げたいという意図で
書き始めたシリーズです。
 多分、予想を裏切る展開ばかりが続くでしょうがよければ
付き合ってやって下さいませ(ペコリ)
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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