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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

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 ―御堂をその背に庇いながらもう一人の自分と対峙して睨み合っている最中、
克哉は脳裏に…本来いた世界の眼鏡を掛けた佐伯克哉を鮮明に思い出していく
 
 それは時間にすれば本当に僅かなもの、走馬燈と呼ばれる類の
ものに近かった。 
 猛烈な勢いを伴って…かつての世界の記憶と、様々な想いが喚起されていった。
 
 
(そう…あいつだって、最初はロクな奴じゃなかった…! 自分の思い通りに
ならないからといって終いには御堂さんを監禁して、廃人寸前まで追い込んだ…。
そういう、どうしようもない奴だった…)
 
 鮮明に想い描くのは目の前にいる男と同一の存在、元の世界にいた眼鏡を
掛けた佐伯克哉の事ばかりだった。
 克哉は最初、御堂を犯した辺りからそれが自分の別人格がやった事だと
認めたくなかった。突き詰めれば自分の罪である事を受け入れたくなかった。
 その想いが…克哉から徐々に肉体の主導権を奪っていく事となった。
 御堂を監禁してから、筆舌しがたい行為を繰り返している時は見てられなかった。
 否、見たくなかったし…あまりに御堂に対して申し訳が無さすぎて…克哉は、
罪の意識に押しつぶされ…そんな日々が続いている内に、いつの間にか克哉は
肉体の主導権を失い…ただ世界を傍観しているだけの存在となった。
 
―やめろ、やめろ…もうやめてくれぇ!!!
 
 どれだけ克哉が叫んでも、眼鏡を掛けた克哉の御堂への陵辱行為は止まらなかった。
 克哉には止めることも出来なかった。
 己の無力感を思い知り、そんな奴と同じ肉体を共有していることに耐えられなくなった。
 現実から目を背けたい一心でいた。
 
―ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい御堂さん!! 御堂さぁん!!
 
 どれだけ詫びても、御堂に届かない。
 そうして嘆けば嘆くだけ、御堂に対しての罪悪感が増せば増すだけ…自分の存在が
弱々しく儚いものになっていくのを感じていった。
 苦しくて苦しくて、毎日のように繰り返される御堂への酷い行為に、
申し訳なさだけが降り積もっていく。
 そうして…眼鏡はついに、御堂を廃人寸前にまで追い込んでしまった。
 
―そしていつしか、克哉は亡霊になっていた
 
 誰からも必要とされず、何一つ出来ず…存在を知覚されることすらないただ
其処にいるだけ。
 心だけが消えずに残り続けているだけの儚いものに成り果てていた。
 だがある日、もう一人の自分は過ちに気づいて自ら御堂を解放して…
彼の前から姿を消した。
 心の中で御堂を想いながら、相手の為にならないと思って己の想いを
かみ殺して生きていた。
 そんな彼が御堂と再び再会して、別人のように変わっていくのを克哉は
静かに見守っていた。
 どれだけ彼が、御堂を愛しているのか。
 そして御堂も同じ気持ちを抱き…いつしか彼らは信頼出来るパートナー同士
となって堅い絆で結ばれるようになった。
 そしてもう一人の自分は…御堂の愛を得てから、別人のように輝くようになった。
 そうなってから…克哉は彼の存在を眩しく、同時に憧憬と尊敬の気持ちすら
抱くように変わっていった。
 
―そんな彼らを羨ましいと思う反面、克哉の中にはいつだって自分も御堂に
愛されたいという願いが渦巻いていた
 
 その事実を思い出し、克哉は鋭い眼差しで…自分の敵となるもう一人の
自分を睨みつけていった。
 そして…絶対に負けないとばかりに、決意を込めて口にしていく。
 
「…この人を一途に、真摯に見つめないお前なんかに…絶対に御堂さんを
渡さない! 渡すものかっ!」
 
 克哉が明確な意志を持って宣言すればするだけ、眼鏡の双眸は冷たく冴え渡り…
こちらの心を凍てつかせるようだった。

(これは…そうだ! 御堂さんの愛を得る前のあいつの目も…こんな風に
冷たく、人を物かなにかのようにすら見ていなかった…!)

 克哉は鏡を通して、何度かしか元の世界にいた頃のもう一人の
自分の眼差しを見たことがない。
 だが、猛烈な懐かしさと…嫌悪感を覚えていく。
 元にいた世界の記憶をこんなにも鮮明に思い出してしまったのは…もしかしたら
御堂を陵辱して、自分に屈服させようとしていた頃の半身と同じ目の
輝きをしているからかも知れなかった。
 それでも克哉は一歩も引かず、キッと強い眼差しでその目を見つめ返していった。
 口元に凶悪な笑みが刻まれていく。
 それを見るだけでこちらの心は凍り付いてしまいそうなぐらいに底知れぬ
恐ろしさを感じさせる表情だった。
 だが、克哉はこれがこの男との最終ステージというのなら決して怯む
訳にはいかなかった。
 まさに火花が散りそうなぐらいに激しい視線での攻防が無言のまま
繰り広げられていく。
 背後に庇われている御堂もまた…無言のまま二人の様子を見届ける事
しか出来なかった。
 一度は、この男に克哉は一方的に犯されてしまっている。
 その時の惨めさや悔しい気持ちが、弱気な心を呼び起こしそうになる。
 その度に克哉は唇を強く噛みしめて耐えていく。
 
(ここで負ける訳にはいかない…!)
 
 そう思ったからこそ、克哉は禁句を放ってしまった。
 本来いた御堂だけを愛して高みに上り詰めようとする克哉に憧れたからこそ、
その彼を押し退けてまで自分が生きる事を選択出来なかった。
 だが、この世界のもう一人の自分は違う。
 そう感じたからこそ、相手を激高させるには充分な一言を克哉は不用意に放ってしまった。
 
『一人の人間を愛してその想いを貫く強さがないお前の為なんかに…絶対に
身を引いてやるものか! オレは本来いた世界ではもう一人の俺が心から
御堂さんを一途に愛しているのが判ったからこそ亡霊の立場を享受したんだからな…!』
 
 其れは、克哉の世界での眼鏡を掛けた佐伯克哉と…目の前にいる彼を比較して、
明らかに劣っていると言っているに等しい発言だった。
 その言葉が放たれると同時に眼鏡は電光石火の勢いで一歩踏みだし、風を
切る音を響かせていった。
 
 ヒュッ…!
 
 何かが鋭く空を切る音が確かに聞こえていく。
 
「あうっ…!」
 
 いつの間にか、もう一人の自分の手には乗馬鞭が握られていた。
 その顔には酷薄な表情が刻まれている。
 冷酷な眼差しにゾッとするものを感じつつも、克哉は背後の御堂に鞭の一撃が
決して及ばないように、一歩も引く気配を見せなかった。
 彼の気丈な態度が、逆に眼鏡の心を余計に苛立たせていく。

「其処をどけ…!」

「…っ! 絶対に、嫌だ!」

 ビリリ、と相手の怒号で空気が震えたのを感じた。
 同時に鋭い一撃がまた克哉の胸元に浴びせられていく。
 電撃に打たれたように、克哉の体が大きく跳ねてよろめきそうになるが…
唇を噛み締めて、踏ん張ってどうにか耐えていった。

「御堂さんは、傷つけさせない! お前なんかには絶対に…!」

「何を…!」

 克哉の口からそう放たれた瞬間、再び鋭く鞭がしなり始めた。

「危ない…!」

 だが、三度目の攻撃は…とっさに克哉を突き飛ばし…代わりに
御堂が受けていった。

「くあっ…!」

「御堂さん!」

 跳ね飛ばされた克哉はすぐに体制を戻して、御堂のすぐ傍へと
駆け寄っていく。
 そして二人はお互いに相手を庇うようにして抱き合って…眼鏡に
向き合い始めていく。
 二人とも裸で何の武器も持ち合わせていない状態だった。
 だが御堂の方から強く手を握られていく。
 痛いぐらいに強く握り締められていることが…逆に克哉の心に
勇気を与えてくれていた。

(この人を…絶対にあいつに何か渡したくない…!)

 心の底から、そう思った。
 其れは祈るような真摯さすら感じさせる切実な願い。
 同時にドロリ、と黒い染みのような独占欲すら覚える。

―この人を誰にも触れさせたくない…!

 その想いが更に増していく。
 だからこそ心の底から…この状況を打開する為にはどうすれば良いのか
考えていく。

(此処はいわば…Mr.Rとこいつのフィールドだ…! どうにかしてこの場所から
脱出しないと…いや、御堂さんだけでも…!)

 克哉と御堂は相手をジっと見つめて、眼鏡もそれに鋭い視線で
睨み返して応えている。
 息が詰まるような膠着状態が延々と続いていく。
 色々と考えを巡らしてこの状況を覆す為の手段を模索していくが…
簡単には思い浮かばない。
 時間の感覚が次第に判らなくなっていく。
 不用意な行動は、致命的になりかねないと…眼鏡の隙のない様子から
本能的に察していく。
 当然、御堂と協力して挑めば…一対二という状況ならばこちらが
勝つことは充分可能だ。
 しかし同じ室内に…今は強制的に眠らされていると言っても
本多、片桐、太一、秋紀の四人が倒れている。
 そして何より…彼を主と称えている…Rの存在がある。

(単純な腕力だけだったら…例えあいつが乗馬鞭を…武器の類を
持っていても御堂さんと協力すればどうにかなる…。けど、Rは…
あの人だけはどう出るか判らない…)

 御堂も、同じ事を考えているのだろう。
 それぞれの顔には真剣なものが浮かんでいる。
 暫く睨み合った後に、眼鏡がゆっくりと口を開いていく。

「…先程の発言を訂正しろ。お前の物言いは…お前がいた世界の『俺』に…
この俺が劣っていると…そういう風にしか聞こえなかった。そんなふざけた
発言を認めてやる気はない…」

「…訂正はしない。実際にオレは…共にあった向こうの世界の『俺』の
為なら消えても仕方ないと思うけど…お前の為に消えてやろうとは
絶対に思わないから…」

「何だと…!」

「…お前は、この四人を捨てられない。それ処か…俺や御堂さんまで
同時に手に入れようとしている。それは逆に…一人の人間を一途に見つめて
向き合うことを放棄しているようなもの。対等な人間関係を築き上げずに…
力で屈服させて無理やり心を服従させる…そんな形でしか相手を得られないのだと
自ら証明しているようなものだ。そんな奴に…オレの大切な人は絶対に渡さない、
渡したくない…!」

「ほほう、なら…貴様に何が出来るというんだ。丸腰で何も服一枚
纏っていないようなみずぼらしい奴に…どんな抵抗が出来るのか
俺に見せてみろ…!」

「…その必要はない!」

 二人の克哉の口論がヒートアップしていく中、御堂はそれを
さえぎるように叫んでいく。
 その剣幕に二人は一瞬、言葉の応酬を止めて御堂に注目していく。

「私は、彼を…眼鏡を掛けていない、この十一日間傍にいた方の
彼を選ぶ! 傲慢で四人もすでに手に入れている誠実じゃない男のモノに
強引にさせられるなど冗談ではない! それで君らのゲームは終わりだ!
さあ、とっとと幕を下ろして…私と彼を元の世界に返したまえ!」
 
 それは御堂らしい、実にきっぱりとした物言いだった。
 その発言は彼らがやっているゲームを強制的に終わらせることが出来る
ほどの威力を持った鶴の一声に等しいものがあった。
 眼鏡はその一言に、衝撃と怒りを覚えてワナワナ震えていく。

―だが、そんな展開を許さないのは…この空間の支配者であり、
ゲームマスターでもある…Rだった

『その一言は…ルール違反ですよ御堂孝典様…。この方と
ろくすっぽ会話することもなく…良く知りもしない状態で勝手に
独断で決めてせっかくのゲームを一方的に終わらせるのは
身勝手ではありませんか…!』

「…うるさい。人に断りなく勝手にそんなゲームを開始している方が
無礼だし、私は身勝手だと考える。そして私には…これ以上、
そんなゲームを続ける義理はない。早く私と彼を…元の世界に返してくれ!」

 御堂は一歩も引く様子を見せなかった。
 その気丈さこそ、この人が本来持っている意思の強さの現われだった。
 だが…このゲームを仕切る男はそんな彼の行動と発言を決して
許しはしなかった。
 だからこそ…全てをひっくり返す、残酷な言葉を放っていく。

―ええ、なら…あなたがここでゲームセットだと言い張り、これ以上の
ゲームを放棄するというならば…その行動のペナルティはあなた方に
払って頂きます。現実に返して差し上げるのは…どちらか一人。
そして片方は…この場に残って、我が主と全力で戦って頂きます…。
どれくらいの時間が掛かるか判りませんが…その残された方の心が
決して揺るがなかったら、あなた方の勝利となります…。
さあ、どちらが残るのを選択されますか…?

「なっ…!」

「えっ…!」

「ほほう…?」

 突然、切り出された提案に御堂と克哉は叫び始めていく。
 代わりに眼鏡の方が面白がって、愉快そうに微笑んでいった。
 Rから提示された内容は…彼らにとっては残酷極まりない内容だった。
 そうして…部屋の奥の扉がゆっくりと開け放たれる。

―扉の奥は白く輝き、其処を潜れば現実に戻れることを示していく

 だが戻れるのは一人という事実が、二人を打ちのめしていく。
 片方だけが帰り、残り一人は…ここに残らなければならない。
 そうして彼らはお互いの顔を見つめあい、言葉を失って立ち尽くしていった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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