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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                            10
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 ―たった今、起こった出来事の全てが夢のように感じられてしまった

 御堂の身体が倒れたことを音で知ると、暫く呆然としてから…ようやく克哉は
目隠しを自ら解いて、目の前の惨状を眺めていった。
 御堂は意識を失い、Rは珍しく苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて…
そしてもう一人の自分は、絶対なる王者のように舞台の上に立っていた。

「あっ…」

 其処には、蒼白の状態でベッドで眠り続けていた姿の面影はない。
 強い意志を込めて、その場に立っている雄々しい姿だった。
 彼は鋭い眼差しで、ただ御堂だけを見つめている。
 そうして観客の視線も、自分たちの視線も完全に釘付けにしながら
御堂の元へと歩みよっていって。

「御堂…」

 心からの愛しさを込めながら、上半身だけを起こさせて…そして
強く掻き抱いていった。

―ズキン

 その瞬間、何故か胸が痛んだ。
 心の中に吹き荒れる感情は、どちらに対しての嫉妬なのか自分でも
良く判らなかった。
 けれど…心からの愛しさを込めて、御堂を抱きしめているその姿を
直視するのは克哉には辛かった。
 だが目を逸らしても現実は変わらないのだ。
 そう覚悟して…克哉は心が軋むような想いを抱きながら、二人の姿を
見つめていった。

(オレは一体…どっちが好きなんだろう…?)

 今の克哉は、裸だった。
 あんな狂気じみたショーに出演したのも、御堂と彼を救う為だった。
 だが…結局、もう一人の自分が目覚めたことで自分がやろうとしていた事の
根本が崩れてしまった。
 御堂を罪人にするのを逃れる為に自分がMr.Rに縋って、頼ってまで
作りあげた筋書き。
 けれどそんなものは結局儚い幻想に過ぎなかったのかも知れない。

「オレが、間違っていたのかな…」

 強く抱きしめる、もう一人の自分の姿を見て…克哉は己の罪を
思い知る。
 彼は御堂に対して、決して許されぬ事をしてしまった。
 その結果が二つの悲劇を生みだし、結果…御堂はどちらの未来でも
救われない結末しか辿れなくなった。
 一人の人間の人生を壊してしまったという事実は、克哉の心に重く
圧し掛かり続けた。
 だから我が身を犠牲にしても、何をしても御堂を救いたかった。助けたかった。
 それは佐伯克哉の最後の良心でもあった。
 眼鏡を掛けた日から、もう一人の自分がしたことを認めたくなくて…目を逸らし続けて
結果、最悪の結末を導いてしまった罪を、この手で贖いたかった。

「オレは…ただ、貴方を…救いたかった…だけ、なのに…」

 なのに、自分の存在そのものが…この二人にとって邪魔なものでしかない。
 そんな錯覚に襲われていく。
 あんなショーに出演させられて、弄られて。
 大勢の前で辱められて…けれど、それらは全て無駄なことでしかなかった。
 その事実が、悔しいし悲しい…。
 胸の中がグチャグチャして、訳がわからなくなる。
 何一つ、満足に思考がまとまってくれなかった。
 けれど…強く御堂を無心に抱きしめ続けているもう一人の自分の姿に強く
心を掻き乱されて…気づけば、克哉は泣いてしまっていた。

(どうして、涙なんて出るんだよ…!)

 自分の心が、判らなかった。
 何で彼らのこの姿を見て、こんなに心が痛いのか苦しいのが…
息がつまりそうになっているのか、本心が見えない状態だった。
 空気が凍り続けていく。誰もが身動きが取れない中…その重苦しい
沈黙を破ったのは、眼鏡だった。

「おい…『オレ』…手を貸せ。御堂を奥の部屋に連れていく」

「えっ…あっ…」

「お待ち下さい! まだショーの途中なんですが…」

「お前の都合など、俺の知った事か。こんな場所にいつまでも御堂を
放っておく訳にはいかない。俺は退散させて貰うぞ」

「嗚呼…貴方様は何と傲慢で酷い方なのでしょう…!! 私にとってとても
大事なショーをそんなにバッサリと切り捨てろと申すのですか!」

 Rがそれなりに悲壮感を持って訴えかけていくが…眼鏡は冷たい
表情をしながらきっぱり言い切っていった。

『俺には関係ない!』

「ああああああああ~!」

 あまりにも眼鏡に言い切られてしまったので、男の中のマゾ的な欲求が
刺激されてしまったらしい。
 ステージ上でRが嘆きと歓喜が入り混じったような様子で大声で叫んでいった。
 …何か、見てはいけないものを見てしまったような心境に克哉は陥った。

(…何であんな風に冷たくされて…悶絶しているんだろう…あの人…)

 やっぱりRは理解出来ないと、心底思い知った瞬間でもあった。

「おい…早く、手を貸せ…」

「あっ…うん!」

 と返事して立ち上がった瞬間、克哉は羞恥で死にたくなった。
 目隠ししている間は意識しなくて済んだが…自分は今、何一つ身に纏っていない
状態…ようするに、裸なのだ。
 舞台の下には、多くの人間の視線が存在している。
 それを自覚した瞬間、克哉は竦みそうになってしまった。

「こら! 何をモタついている…!」

「えっ…だって…」

 克哉がつい、下半身を隠すような仕草をしていくと…眼鏡は非常に面倒くさそうに
舌打ちしていった。
 そして次の行動が信じられなかった。

「ちい! 貴様、これを借りていくぞ!」

「嗚呼! 我が君よ! 無体です! 無体すぎます!!」

 …何と、もう一人の自分はよりにもよってMr.Rの胸元に手を掛けて…
勢い良く、男からその漆黒のコートを剥ぎ取っていったのだ。

「うわっ!」

 その行動には克哉も驚きを隠せなかった。
 しかし眼鏡は何でもない顔をして…黒いコートを克哉の方に投げていった。

「ほら、それでもさっさと着ろ。それでそのお粗末な肉体を晒さなくても済むだろうが…」

「そ、粗末な身体って! お前だってまったく同じ体格をしている筈だろう!」

 克哉は顔を真っ赤にしつつも…大慌てでその黒いコートを羽織っていく。
 おかげで確かに…足元はやっぱりスースーするが…裸のままで壇上に立って
いた頃に比べて、地に足がついた感じになっていった。

「黙れ。お前とこれ以上…口論を続けるつもりはない。御堂をともかく…
安静に出来る場所に連れていくのが先決だ。早くしないと…手遅れになる…」

「えっ…今、何て…?」

「…死を誘う夢が、御堂に近づいている…。だから俺は、目覚めた…」

「…な、にを…?」

―やはり、小手先の細工では…運命というものは覆せないものですね…

 眼鏡がそう口にした瞬間、Mr.Rは唐突に…真剣な顔になった。

―この世界の御堂孝典は亡くなっている。その事実を覆す存在を…別の
場所から持って来たとしても…事象が修正に掛かって…本来あるべき形へと
戻そうとする…。貴方様のいう死を誘う夢とは…もしかして、その事ではないのですか…?

「そう、だ…。『ここ』に御堂がいる限り、あいつは…恐らく死ぬ。無念の内に
死んだ御堂の存在が、この御堂の心を喰い尽してな…」

「ね、え…何を、二人とも…言っているの…?」

 二人の会話に、克哉はついていけなくなる。
 訳が判らない。自分は確かに今回の幕劇についての舞台裏をある程度は
知っている筈なのに…彼らが何を話しているのか、判らなかった。

―貴方がそれを悟ったということは…恐らく、向こうの克哉さんの心を…
貴方が食い尽してしまったんですね…

 そう問いかけた瞬間、眼鏡は小さく頷いていった。
 そして切ない瞳を浮かべながら…答えていく。

「ああ、そうだ…だから、俺は…もう二度と、戻れない。今…こいつが
使っている方の身体にはな…」

 そうして、苦渋の表情を浮かべながら…もう一人の自分が答えていく。
 瞬間に悟った。自分が望んだことを叶える為に…思いもよらない結末を
招いてしまった事に。

「嘘、だろ…まさか…ねえ、あいつは…!? オレがいた世界にいた方の…
もう一人の、俺は…!」

 必死になって相手の足元に縋りながら、問いかけていく。
 眼鏡は切なそうに顔を横に振って…目を伏せていく。
 それ以上は何も言わなかった。
 けれどそれでも克哉には何となく判ってしまった。

「そ、んな…」

 本来あるべき形を捻じ曲げて、幸せな未来を一つ紡ぎ出そうとした。
 けれど…その為に、また大きな悲劇を招いてしまっていたのだ。
 自分たちは…同じ願いを抱いていた。
 だから違和感なく統合していったから…見落としてしまっていた。
 自分と、彼らは違ったのだ。
 その罪に気づかされて…克哉は、言葉を失った。

「…いつまでも、ここで立ち止まっても仕方ない。何をしないで嘆いていても
事態は何も変わらない。ただ何もせずに泣いているだけなら…せめて御堂をこんな
イカれた場所から運ぶのを手伝え。それぐらいの役に立ったらどうだ?」

 冷たく、もう一人の自分が言い放つのが耳に届いて…克哉は正気に戻っていく。

「そ、うだね…。いくら悔んだって、泣いたって結果は変わらない…ものな…」

 そうしてどこか達観したような表情を浮かべて、克哉は御堂を奥の部屋に
運ぶのを手伝っていく。
 眼鏡が御堂を運んだ場所は…彼自身が二日間、寝込み続けていた
一室だった。

―其処まで無言で御堂の身体を、二人で運んでいる間…克哉の表情はまるで
人形のように無表情で、血の気が感じられないものに変わっていったのだった―

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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