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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                       10 
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―克哉を抱いた後も、眼鏡の身体は何故か今回は現実に残り続けていた
 
抱き終わった直後、克哉は力尽きるように意識を失ってしまったので…
眼鏡は簡単に後処理を済ませると、その部屋を出て…マンションの屋上に
足を向けていた。
克哉が現在、住んでいるマンションは屋上は住民の立ち入りが許されている。
其処で一人立ちながら…煙草に火を点けて吸い始めていく。
 
(…一体どうなってしまっているんだ…?何故、俺はいつものように
消えてないんだ…?)
 
自分の存在が仮初めのものである事を彼は自覚している。
だからいつも行為が済めば…ようするに当面の要件が済めば、
彼は眠りについて…静かに消える筈だった。
それが彼にとっての当たり前であり、特に不満がある訳でもなかった。
なのにどうして今夜に限ってはいつもと同じようにならないのか、疑問を
覚えていきながらも眼鏡は一人、黄昏ていた。
視線の先には無数の光が地上に輝いていた。
住宅街であるせいか、夜景の名所とされている処から見える光景に
比べれは控えめな灯りばかりが輝いている。
いつの間にか夕暮れ時を迎えているせいで…空も鮮やかな茜色の部分と、
紺碧の帳が緩やかに混ざり合い…複雑な色合いを生みだしていた。
 其れを見て、眼鏡は自嘲的に笑っていく。
 
―様々な人間の想いが交差して、予想も付かない未来を生み出していく。
この複雑な色合いはまるで…もう一人の自分の心のようだと感じていった
 
その渦中にいるのは紛れもなく自分の半身、佐伯克哉その人だった。
Mr.Rが彼に飲ませた薬は、あくまでキッカケに過ぎなかった。
どれだけ佐伯克哉という人間が無自覚に周囲の人間を惹きつけていたのか…
例の媚薬はそれを明らかにしただけだった。
 はっきりした境界が存在しないから、他の色をも容易く受け入れる。
 そして混ざり合った部分から…予想もしない一面を覗かせ、そしてこの空の
ように様々な色合いを見せていくのだ。
 もう一人の自分は弱く、情けない存在だが…確固とした信念を持たないが故に
…そのような可能性を同時に秘めていた。
 
―お前という存在はタチが悪い…御堂も、太一も、本多も…皆、潜在的に
お前を特別に想っていた。だが…当の本人であるお前はずっとその事実を
認めようとしなかった。だから今のお前の状況は…それを受け入れなかったが
故に起こった事だぞ…
 
眼鏡を掛けた方の克哉は心の中でもう一人の自分を静かな糾弾していきながら…
紫煙を燻らせていった。
一本、二本と立て続けに吸っていく内に少しずつモヤモヤした気持ちが
一時だけでも晴れていくような気がした。
 ほんの気休め程度にしかならない平穏である事など、良く判っている。
 それでも彼は…この心地よい一人の時間に身を委ねていくと唐突に、
その一時は終わりを告げていった。
 
『こんばんは、少しお話させて頂いて宜しいでしょうか…?』
 
 歌うように話す人物の声が、耳の中に滑り込んでくる。
 その方向を何気なく眺めていくと…其処には、黒衣の男が妖しい笑みを
浮かべて立っていた。
 
「…お前か。別に構わない…俺も少々、暇を持て余しているからな…」
 
『おや、それは随分とお優しい言葉ですね。なら少々…貴方と話をさせて
頂く事にしましょうか…』
 
 そうしてMr.Rは愉快そうに微笑みながらまるで幽霊か何かのように
気配を消して…眼鏡の傍らに立っていった。
 軽く目を瞠っていくが、それしきの事で今更眼鏡も驚かなかった。
 そもそも自分をこうやって現実に具現化させるような真似を平然と
やってのける男だ。
 こいつのすることでイチイチ驚いていたら身が持たないと割り切ることにして…
眼鏡の方から切り出していった。

「それで…一体何の用だ? お前が自ら…こうやって俺の前に
現れてくるって事はそれなりに重大なことなのだろう…?」

『ふふ…その通りですよ。貴方にお伝えしたいことは二点あります…。
一つ目は、貴方は暫くの間…己の肉体を伴ってこの世界に存在し続けます。
期日は今日より十日間。その間に…もう一人のご自分との関係を
どうされるか答えを出して下さい…』

「何だと…?」

 だが、切り出された内容は眼鏡の予想を超える代物だったので
一瞬我が耳を疑って凍り付いていく。
 しかし黒衣の男はそんな彼の様子を面白そうに眺めるだけだった。

『いつも用が終われば…幻のように消えて、もう一人のご自分の
中に還ってしまう。そういう風に生きている限り…貴方に責任など
何も発生せず、全てを放棄することが可能になります。
それでは…何も変わらないでしょう? ですから…ここに最低限の
資金はお渡ししますから、十日間をこちらの世界で過ごして下さい。
十万程度あれば、充分それくらの期間は生きられるでしょう…?』

 そうして男は黒革のシンプルなデザインの財布を眼鏡に
手渡してくる。
 眼鏡は其れを手に取って受け取っていった。

「…どうしてこんな真似をする? その意図は何だ?」

『簡単なことですよ。ただ…関係がゆっくりと変化しつつある貴方達
二人の行く末を見届けたいだけですよ…。本来なら、佐伯克哉さんは
貴方に会う資格など失ってしまった。けれど…そんなご自分の半身の前に
現れたのは紛れもなく貴方自身の意思。私の思惑とは違った行動を取って
強引にこの世界に現れたことで…貴方の存在は、それまでとは変質を
してしまいました。…ですから、その十日の間に考えて下さい。
貴方は…どのような在り方を望むのかをね…』

「…俺の、在り方…」

 そう呟いて考え込むと同時に目の前の男の姿がゆっくりと透けていき…
そして瞬きする間に、あっという間に濃くなった闇の中に溶けていった。
 その間際に、男は二つ目の伝えたい事柄を鮮明に声に出していく。

―後、克哉さんに害を成そうとしている男は…かつての貴方の親友だった存在です。
彼はこれから弱みを握って、御堂孝典さんと克哉さんを脅かすことでしょう…。
貴方が望むなら、彼の元にいつでも連れてって差し上げます。それも…
そちらのお心のままに決めて下さい…

 そしてその言葉を残し、完全に黒衣の男の姿は消えていった。
 確かに男の意図を振り切って、自分は克哉の前に現れた。
 其れがこのような事態を招いたのならば…自分は果たして、克哉と
どのような関係を自分は構築するのを望むのだろうか。
 まだ、その答えは彼の中には浮かんでいない。
 だが…とりあえず降りかかる火の粉は払わないといけないと感じていた。

「仕方ない…。あいつの尻拭いなど面倒なことだが、そのまま放置して
おく訳にもいかない…。まずは、火消しに動くとするか…」

 そう深く溜息を吐きながら…彼は頭の中で、今後の方針を
物凄い速さで固めていったのだった―



 
 
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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