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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                       10 
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 いきなり、夜遅くに自由の身になったとしても行く場所などすぐに
思いつかなかった。
 当面の軍資金は10万ほど手渡されていたが、普通にしていたら宿泊代と
食費であっと言う間に使い果たしてしまいそうだった。
 眼鏡を掛けた佐伯克哉は都会の雑踏の中を歩き回っていきながら
思案していった。
 
(たった10万程度で何をしろというんだ…。着替え等などを購入する費用も
入れたら、寝る場所と食事代を確保するだけで終わってしまうだろうに…)
 
 普通の人間の感覚だったら、十万もポンと渡されたら驚いて感謝するが、
眼鏡は大いに不満だった。
 質素で地味に生きている克哉に比べて、眼鏡は金に余裕があればブランド
スーツや、高額の費用が掛かるレジャーの類にあっという間に使い果たして
しまう部分がある。
 ようするにもの凄い浪費家の一面を持っているだけに、こうして現実に身を
置くようになったら…この金額程度ではとてもやりたいことをするには
足りないと感じてしまっていた。
 手っとり早く株などで元手を増やしてと考えたが、会社勤めをしていたり自宅
という拠点がある時期ならともかく、自分が自由に使えるPCすら持っていない
状態では情報収集もままならない。
 漫画喫茶等を使えば、ネットをするぐらいは可能だが…十日という
時間がネックとなってしまう。
 下手な事に手を出せば、本来の目的に何も着手出来ないまま…
資金稼ぎだけで期日を迎えてしまいそうだ。
 
(全く、100万ぐらい渡しておけば良いものを…。そうすればこの十日ぐらい
何の不自由もなく過ごせたんだがな…)
 
 そんな身勝手な事を考えていきながら、一度足を止めて雑踏の
流れに身を任せていく。
 これから自分は、どうしたいのか。
 何を望んでいるかを…掘り起こす為に。
 幾つかの見知った顔が脳裏に浮かんでは消えていく。
 そして最後に…もう一人の自分の顔が鮮明に浮かんで、そして幻のように
遠くなっていった。
 もう一人の自分を潜在的に想っている人間たちの顔を浮かべている内に
一つの名案が浮かんでいった。
 
「…ふむ、そうだな。どうせならあいつの所に行こう…」
 
 資金面の不安もあるし、出来るなら衣服等にその予算をある程度つぎこんだら、
とても全てをホテル暮らしにしては賄いきれなくなる。
 それなら、拠点となる場所を快く提供してくれた上に…関係者の一人を牽制する
事が可能な場所に身を移すべきだ。
 
(それにあいつなら…俺なら難なく御する事が可能だからな…)
 
 とそう考えて…眼鏡は、良く知っている人物の自宅へと電車を乗り継いで
向かい始めていったのだった―
 
 
                       *
 
 
 思い立ってから30分後。
 眼鏡は本多の家に顔を出していた。
 一昨日、Mr.Rが克哉に例の媚薬を飲ませた時に真っ先にその影響を
受けた…長年の彼の親友であり、同僚でもある男。
 しかし今現在の眼鏡の顔には、そんな友情や好意の類は全く見受けられず…
険しい顔をして扉の前に立っていた。
 
―ムカムカムカムカ…!
 
 胸の中に訳の判らない苛立ちが広がっている。
 本多の家に厄介になるのが一番、資金面的には最良だと判っているのに…
その件に関して頭を下げるのに対して、非常に腹立たしいものを感じていった。
 
(何で俺はこんなにイライラしているんだ…? ただ、本多を利用しに
来ただけだろう…? それなのにどうして、こんなに俺は憤りを
覚えてしまっているんだ…?)
 
 当の本人は、其れが嫉妬故に起こっている事に気付かない。
 否、本心から必死に目を逸らそうとしていた。
 彼のプライド的に…あんなに自分よりも弱くて、色んな面で劣っている
もう一人の自分に心を寄せ始めている事実は…認められないものだったからだ。
 だが、他の相手にちょっかいを掛けられて腹を立てたり…独占欲を覚えていくのは
むしろ恋愛しているのなら当然の感情だ。
 其れを自覚するのを拒むかのように…荒っぽい動作で本多の家のインターフォンを
鳴らしていくと、相手が部屋の中から開けてくれるのを待つ前に…ドアノブに手を掛けて
眼鏡は家の中に入っていった。
 
ドカドカドカ!
 
 しかも靴を履いたまま玄関に入り込むと、その靴音がうるさいぐらいの勢いで
中に踏み入れていった。
 
「どわっ! 何だよ克哉! いきなり人の家に押しかけて…! って、
何をするんだ! うわぁぁぁ! ぐお!」
 
 本多が風呂上がりで肩にバスタオル、そして右手にフルーツ牛乳を
持っている状態で玄関に向かっている最中…眼鏡は容赦なく間合いを
詰めて相手に頭突きをくらわしていった。
 殆ど八つ当たりに近い行動だが、やられた方はたまったもんじゃない。
 体格的には本多の方が圧倒的に勝っているが不意打ちされた上に、
勢いで押されたものだから…頭突きを顎に食らって、大きく跳ね飛ばされていった。
 
「克哉ぁ! 何するんだよ! 人の家にこんな時間にいきなり押しかけたかと
思いきや…いきなり頭突きをくらわすなんてひどすぎだろう!」
 
「うるさい、黙れ…。一昨日の夕暮れにお前が…『オレ』に対して何をしたか、
胸に手を当ててよ~く思いだすんだな…」
 
「一昨日の夕方…って、あっ…!」
 
 思いだした瞬間、本多の顔が一気に青ざめていった。
 そう、其れは…薬に感情を煽られて…眼鏡を掛けていない方の佐伯克哉に
対して迫ってしまった時の事を指しているとすぐに気付いて…本多は言葉を失っていく。
 
「あれは、その…御免! けど、俺…お前に本気だから…うごっ!」
 
 熱い想いを語ろうとした瞬間、本多の腹に容赦ない蹴りを
食らわしていった。
 何故、こんなに突き上げられるような怒りを覚えているのか…自分でも
良く判らない。
 だが、眼鏡は克哉の深層意識の中で…普段は眠りについているから、
知っている。
 本多がどんな風に克哉に触れたか、迫ったのかを…其れが、脳裏に断片的に
浮かんでいくせいで…凶暴な感情が、止まらなくなっていく。
 
「うるさい、合意なく…あんな行動を一方的にすればレイプだ。だから…
お前に反論する資格はない!」

「うぐ…!」
 
 眼鏡はこの時、初めて…自分でも制御できないぐらいの激しい感情を…
嫉妬と呼ばれるものを自覚する羽目になった。
 本多が、克哉にとって大切な友人である事など判っている。
 だがそれでも…先程、克哉をこの腕に抱いたせいで…その感触や匂いを
良く覚えているからこそ、許せなくなってしまっている。
 
(この感情は…一体、何なんだ! どうして、俺は…!)
 
 何度かケリを食らわしている内に、一撃ごとに鋭さが増していった。
 だが、眼鏡の剣幕に押されて…本多はただ、黙ってこちらの攻撃を
受け続けていった。
 本来なら自分は、この男に暫く置いてくれと頼み込む筈だった。
 金銭の余裕を作る為にもそれが最良だと判っているのに…理性が、
利かなくなっている。
 理屈も損得も、吹き飛んでしまっている。
 本多が憎くて、怒りをぶつけないと済まないぐらいに激しい感情が胸の奥から
湧き上がってくるのを感じていった。
 
―おやめ下さい! そのまま勢いでご友人に大怪我や後遺症に残るような
傷を負わせてしまうつもりですか…!
 
 眼鏡の中に、殺意にも似た気持ちが宿った瞬間…其れを諭すようにMr.Rの
声が鮮明に脳裏に響き渡っていった。
 其れが聞こえた瞬間、冷や水をいきなり浴びせられたかのように…
冷静な思考が蘇っていく。
 
(俺は一体…何をしているんだ…?)
 
 こんなにも、感情に突き動かされて制御が効かなくなる事は初めてだった。
 本多を、そして問答無用に克哉を一昨日の夜に犯した御堂の顔が浮かんで…
止まらなくなっていった。
 馬鹿げていると、きっと誰もが思うだろう。
 そして冷静さを取り戻すと…口の端を切って、血を口元にうっすらと浮かべている
本多の姿にやっと気付く事が出来た。
 満身創痍と呼ぶに相応しい傷の在り方だった。
 
「なあ…克哉。気が…済んだか…?」
 
「………………」
 
 眼鏡は、答えられなかった。
 無言のまま相手を凝視していく。
 正直な話、顔を見ているだけで相手を壊したくなるような衝動を覚えた。
 己の中に、得体の知れない怪物がいるような気分だった。
 
「…帰る、邪魔をしたな…」
 
 そして暫くの無言の時間が過ぎていく。
 金を取るなら…ここで頭を下げれば良い。
 だが、今の眼鏡にはそれがどうしてもできなかった。
 これは立派に暴力沙汰と呼べるレベルの行動である自覚はあった。
 それでも謝ればお人好しである友人はこちらを許すだろう。
 
―だが、其れが判っても…謝って何もなかった事にして…こちらを泊めて欲しい
など口が裂けても言える訳がなかった
 
 だからそのまま、本多から目を背けていく。
 お互いの間に重苦しい空気が満ち溢れていた。
 バタン、と本多の部屋の扉を閉めて…眼鏡は近くの壁に凭れ掛かって
頭を抱えていった。
 これは意地を無意味に張っただけの意味のない行為に限りなく近かった。
 それでも…其処まで考えた時に、深い溜息を一つ吐いていった。
 
「俺は…一体、どうしてしまったんだ…?」
 
 そしてエレベーターに乗り込んでいきながら苦渋の顔でそう呟き…
眼鏡は、彷徨い人へとなっていったのだった―
 

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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