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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                       10 
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―どんな苦しみを感じても、眠っていれば良かった。親友に裏切られた
痛みも自分なんていなくなってしまえば良いという絶望の感情も…
もう一人の自分に押し付けて自分は寝ていれば、それで良かったのだから…

 本多の家を出てから、眼鏡は己の胸を押さえていた。
 感情に任せて、相手を痛めつけてしまった苦い思いが胸の中に
広がっていく。
 気が向くままに歩いている内に二駅分ぐらいの距離を気づいたら
歩いてしまっていた。
 何かに導かれるように、蟻が蜜の匂いに誘われてしまうかのように…
見えない何かに、引き寄せられている事をまだ知らずに…。

「くそっ…俺は一体、何をしているんだ…。どうして、あんな真似を…」

 自分でも先程の本多への振る舞いは、理不尽極まりない事を
理解していた。
 けれどあの時は、どうしても抑える事が出来なくなっていた。
 もう一人の自分に…克哉に、二日前に本多が激しく迫っていた事を
思いだした途端、どうしても…耐えられなくなった。

(俺はおかしくなってしまったのか…?)

 そう自問自答しながら、深い溜息を吐いていった。
 あんな風に感情のタガが外れてしまうなど…滅多にない事だったので
自分でも混乱せざる得なかった。
 彼は、知らなかった。
 人の感情は無理に抑え込んでしまえば、暴走してしまう事を。
 抱いている内に…克哉の想いを感じ取っている度に、少しずつ…
もう一人の自分への気持ちは無意識の領域で蓄積していた。
 それが昼間に克哉を抱いた時に、発芽してしまっていた事を…
彼は薄々気づきながら、直視しようとしなかった。
 その自分の気持ちに嘘をついた結果、本多は被害者になって
しまった。

(せめてあいつに、謝らなければ…。先程のはあまりに…幾ら
本多だからと言っても…酷過ぎたからな…)

 人に頭を下げるなど基本的に自尊心が邪魔をしてなかなか出来ない
性分の眼鏡でも、自分側にあまりに非がある時は例外もある。
 一言だけ相当に迷いながら…『先程はすまない』という実に簡潔な
メールを送信していくと、溜息を吐いていった。
 どういう理屈かは知らないが、いつの間には自分が着ているスーツの
内側に克哉が使っている物と全く同じデザインの携帯電話が入っていた。
 だが、微妙に番号とメールアドレスが違う。
 普段克哉が使っているものとほぼ同一なのだが…どちらのアドレスも
最後の数字が違っていたり、文末に『・』が追加されていたり…微妙に
異なっていた。
 いつの間にこんな物が存在していたのか判らないが、この十日間…
現実を生きるなら、これはあった方がいざという時に助かるものだ。
 そうして…メールだけでも本多に謝っていくと、深い溜息を吐いた。

(…俺はいつから、こんな風に甘い思考回路を持つようになったんだ…?)

 謝った後、ふとそんな事を思った。
 自分は本来…もっとひどい、欲望に忠実で迷いのない人間の筈では
なかったのか。
 本多だって、何度かこちらの方からチョッカイを掛けている。
 これよりも酷い仕打ちをした事だってあった筈だ。
 あの時は…胸の痛みなど、覚えなかったのに…こんな風に相手に謝ろうなどと
考えた事もなかったのに、一体自分は何をやっているのだと思った。

「変わってしまったのか…俺は…。あのお人好しで弱い、もう一人の
オレに接している内に…」

 ようやく、眼鏡はその事実に気づいていく。
 もう一人の自分と…克哉と過ごしている内に、暖かいモヤのようなものが
心の中に広がっているのを何となく感じていた。
 それが知らない間に彼の心を変質させて、少しずつ影響を受けていたのだろう。
 そうして迷っている内に夜空は曇天に覆われて、雨の気配を感じさせていった。

「これから…俺は…何処に行けば、良いんだ…?」

 惑いながら、小さく呟いていく。
 本来なら、本当にお金を節約したいなら…拠点となる場所を求めるなら
『佐伯克哉』の自宅が一番最適な事は判っていた。
 だが、薄々と気づいてしまった感情にまだ戸惑いを覚えて…今は
克哉に顔を会わせたくなかった。
 肌に湿気を感じて、雨の気配が徐々に濃厚になっていく。

「…っ!」

 何処に行こうか考えている内に…眼鏡は一人の人物の影を
発見して、目を瞠っていった。
 見えざる意図に動かされて、その場所に彼は招かれていた。

「どうして、あいつが此処に…?」

 そう呟きながらも、眼鏡は…知らず、相手の追跡を始めてしまっていた。
 克哉への、強い感情に無自覚に突き動かされてしまいながら―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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