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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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 冷たい雨が降りしきる中、三人は対峙していく。
 本多はもうまともに見えないようだった。
 だから歩み寄ってくる相手の顔も確認出来なかった。
 それでも縋るような思いで声を掛けていく。

『其処にいる誰か…お願いだ…。克哉を守ってやってくれ…』

 本多からすれば、其れが何処の誰かは判らなかった。
 だが直感で、克哉の味方だと感じたから…男は、最も大切な人間の
力になってくれるように頼んでいった。
 もう声も弱々しかったが、それでもちゃんと相手に聞こえるように
切なる想いを込めて語りかけていく。

「…ああ、約束しよう。俺がそいつを守ってやる…だから、安心しろ…」

 そして眼鏡もまた、其処に込められた思いを強く感じたから…はっきり
した声で頷いていった。

「良かった…」

 その言葉で、本多は安心したのだろう。
 瞼を閉じて…そして繋いでいる手からも一気に力が抜けていく。

「本多! 本多…! やだ、目を開けてくれよ! オレを…置いていかないで!
やだ! やだぁ!!」

 克哉は本多の意識が失われた事でパニックになっていった。
 半狂乱になっている克哉の背中を…もう一人の自分が包み込むように
抱きしめながら、包み込んでいく。

「…大丈夫だ、こいつは簡単に死にはしない…。今は少し休ませてやれ…」

「あっ…うっ…」

 二人はすでにびしょ濡れの状態だった。
 けれど抱きしめられる事で少しだけでも相手の鼓動と体温を感じていく。
 フっと神経が緩んでいくのを感じていって…克哉はまたポロポロと涙を零した。
 涙腺が本当に、崩壊してしまったんじゃないかってぐらいさっきから涙が
溢れて止まらない。
 不安で、怖くて、気が狂いそうだった。
 それが僅かに伝わる人肌の温度によって辛うじて理性が繋ぎ止められていく。

「ふっ…うううっ…本多、本多ぁ…!」

 片手では本多の手を強く握りしめながら、もう一方で自分の胸元で交差している
眼鏡の手を必死に掴んで縋っていく。
 その背後に存在する温もりと、愛しい男の手を握りしめている感触だけが
辛うじて克哉の意識を現実に繋ぎ止めていた。

「お願いだよ…本多を、本多を助けて…誰か、神様…」

「…今はただ祈れ…。神になんて縋るよりもお前の真っすぐな気持ちの
方が遥かに重要だ…」

「う、うん…本多、本多ぁ…」

 ヒクヒクと必死に胸を喘がせていきながら克哉は必死に本多の手を
握って己の気持ちを伝えようとしていた。
 まだ逝かないで欲しいと。
 自分一人だけ置いて先に死なないで欲しい。
 どうか助かって欲しいと切なる想いを込めていく。
 克哉は振り向かず、ただ本多の方だけを見つめていた。
 眼鏡はそれで今は構わないと思った。
 だから背後から己の温もりを与える為に抱き締めていき…
そしていつしか、幻のように眼鏡の姿は消えていた。

「あ、れ…?」

 唐突にもう一人の自分の姿が…その気配が消えた事に克哉は
訝しく思っていくと…遠くから救急車のサイレンの音が聞こえていった。
 そして慌ただしく救急隊員達が現場に到着していく。

「いたぞ! あそこだ!」

 30代から40代程度の年代の救急隊員達が一斉にこちらに駆けよってくる。

「患者は低体温と出血多量に陥っている可能性があります! 早く搬送先の
病院に届けないと…!」

「おい! 早くそっちを持て! 急がないと助からないぞ!」

 そして男たちは本多を担架に乗せる為の準備を始めていく。
 
「そちらが通報してくれた人かい…? あの、この人とはどんな関係ですか…?」

 30代前後の救急隊員がこちらに声を掛けてくる。
 それによってギリギリ、克哉の意識は現実に引き戻されていった。

「あ、あの…会社の同僚で、友人です」

「なら同乗して下さい。患者がこの状態ではまともに話も聞けないので…
状況説明をして貰いたいので…」

「は、はい…! 判りました!」

 隊員はどのような状況で負傷したかを知る為に克哉に救急車に同乗
する事を要請し、克哉も其れに答えていった。
 それにより一気に意識が現実に引き戻されていく。

(本多…どうか、どうか…死なないで!)

 克哉は今は、祈るしかなかった。
 そして救急車に乗り込んでいくと…隊員の人に通り魔によって
一緒にいる時に突然襲われ、本多はとっさに庇って負傷したという
形で状況を説明していった。
 松浦の名前は一言も出さなかった。
 其れを話したらきっと松浦に捜査の手が及ぶだろうと判断したから。
 犯人を克哉は知っている。
 けれど本多にとって松浦は大事な友人なのだ。
 自分の独断でそれを話す訳にはいかない…と判断して、架空の
事情を伝えて克哉は必死に祈っていく。

(早く目を覚ましてくれ…。そうしたらいっぱい話したい事も相談したい事も
あるんだから…。どうか、助かって! 本多…!)

 そして本多は病院に運ばれると同時に緊急手術を受ける事になった。
 その手術は幸いには成功し、本多は一命を取り留めた。

―だが、その日以降一度も目覚める事なく…そして、毎日目覚める事を
切に祈りながら…気づけば、二年という月日が無常にも流れていったのだった―



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 とりあえず一日ゆっくりしたら、鼻風邪の方は治りました!
 もうこれからは暖かい格好をして現場に行くしかない。
 すぐに暑くなる時期なのでその辺の服装のバランスが
難しい処…むむむむ!

 後、ちょこっと近況。
 うちの現在の飼い猫アカチャン(♂)の母親猫、トラが
今年の春も子猫を産みました。
 土曜日の夕方ころ、コロコロ丸っこい子猫4匹が
うちの裏庭でチマチマ動き回っておりました。
 か、可愛すぎる…!

 と、子猫は本当に可愛いんですが浮かれてばかりも
いられないんですよね…。
 多分、離乳してから数カ月の間はその子猫達はうちで
ご飯をせっせと食べるだろうから。
 流石にすでに一匹飼っているので、4匹全部は面倒見切れないし。
 果たして今年はその内、何匹家に居ついて何匹、野生に帰るのかは
現在の時点では未知数。
 まあ、4匹中…2匹ミケ猫がいるから、その内一匹は長年飼っていた
ミ―たんもいなくなってしまったし、メス猫一匹ぐらいうちの猫に
なってくれないかなとか密かに考えておりますけど…。

 けど、毎年3~4匹のペースで子猫を生まれるとちょっと大変なので
子育ての時期が終わった辺りに真剣に一回、トラを捕獲して不妊手術を
させるのを考えた方が良いかなと…。
 ねずみ算式に子猫が増えるのは流石にいい加減食い止めないと
あかんだろ…。
 もう今年は生まれてしまったので仕方ないけど。

 猫は可愛いけど、面倒見るとなったらそれなりに責任を
持たないとアカン訳だし。
 可愛いけど、その辺は悩み処です。はふ…。

 忘却の彼方はぼちぼち書いています。
 現在はクライマックスに向かっている最中なので今月中には
完結出来るように頑張りますね。
 もうちょい時間下さいませ。ではでは!
 暖かくなりました。
 しかし気温が20度を超えると、私がやっている作業では
常にエアコンをつけなくては行けなくて…連日、4時間ばかり
冷房に晒され続けているので軽く風邪引きました(汗)

 とりあえず喉は痛くて鼻ズルズルです。
 体はギリギリ動かせるけど、頭がまともに働きません。
 …つ~訳で昨日と今朝は文章書けるコンディションじゃないので
潔く休ませて貰います。

 明日には少しは改善していますように…。
 湿気が出てくるので、カビが生えるの防止する為に作業中は
ずっと消すなと命じられているので身体が冷房に慣れるまでは
しんどいのですよ…。
 湿気なんて大嫌いだ~~~!(雄叫び)

 しかし風邪引いても、せいぜい鼻風邪で止まって毎回寝込むまで
いかない私も頑丈だな~とは思いますけどね(苦笑)
 という訳で今日も仕事は行って来ます。では…!
※この話はラブプラスを遊んでいて、眼鏡キャラとかでこういうの
やったら面白そうだな…という妄想から生まれています。
 基本、完全にギャグでアホな話なので流せる方だけ宜しくお願いします。
(一話掲載時とはタイトル変更しました)
 
 ラブ眼鏡+   2

 想いを寄せている相手と24時間一緒にいる事が出来る。
 普通に考えればそれは幸せな状況の筈だが、今の佐伯克哉にとっては
それは素直に喜べない状況に陥っていた。
 とりあえず昨晩、Mr.Rからゲーム機を受け取った。
 そして画面上に表示されているもう一人の自分をソノ気にさせる事が
出来れば実際に現れて一晩過ごす事が出来るとも聞かされた。
 しかしとてもそんな非現実な話を頭から信じる事は克哉にとっては
不可能で。

―結果、一番最初の夜は充電したままのゲーム機そのものを
放置するという結果に陥ってしまった

 そして翌朝、、蓋が閉じられたままのゲーム機本体を前に非常に
気まずい思いをして頭を抱えている克哉の姿があった。

(どうしよう…結局、思いっきり一晩あいつを放置してしまった…)

 期限は三カ月と伝えられている。
 その一日を結果的に自分は棒に振ってしまった形になった。
 けれどそれ以上に突如起こったこの事態に混乱して現実逃避を望んでいる
自分が確かに存在していた。
 いっそ昨日の一連の出来ごとが全て夢オチで終わってくれたらどれだけ楽
なのだろうか。
 もう一人の自分に会いたい、と望んでいる自分の願望が見せた一夜の夢
だったのだと…そうであって欲しいと望みながら恐る恐る二つ折りのゲーム機を
開いていくと…。

『貴様、記念すべき初夜だったのに、思いっきり俺を一晩放置するとは
良い度胸だな…』

「わああああ! ごめん! ど、どうしても昨夜の事が現実とは信じられなくて…。
も、もしかしてメチャクチャ怒っている…?」

『…怒らない訳があるか。こんなせまっくるしいゲーム機の中に押し込められた
だけでもそれなりにストレスが溜まっているのに、それでお前に最初から
思いっきり無視されたら腹が立たない訳がないだろう…』

「だ、だからごめんってば…。もう、長時間お前を放置したりしないように出来るだけ
気をつけるから許して欲しいんだけど…ダメかな?」

『…ほう、その言葉にウソはないな?』

「う、うん…そのつもりだけど…」

 画面上の眼鏡が実に愉快そうに…悪く言えば、何かを企んでいるかのような
実に不穏な表情を浮かべていったので、克哉の背筋にヒヤリとしたものが
伝っていく。

『なら最低でも起きている間は1~2時間おきに俺に多少は構うように配慮
するんだな。こうしてゲーム機を開けばいつでも俺とこうして会話する事が
出来るなんて良い話だろう? 仕事中は数分程度で構わないから出来るだけ
俺に気を配るようにしろ。お前が蓋をしている間はこっちは退屈で仕方ない
んだから…それぐらいの配慮はしてもらわなければな…』

「う、うん…判ったよ…」

『うむ、じゃあ…まず、俺にキスしてみろ…』

「えっ…この状態で…?」

『そうだ。早くしろ…』

 もう一人の自分にキスを要求されて克哉は正直固まってしまった。
 其れはゲーム機に向かってキスをしろという事なのだろうか?
 それは他の人間から見たら確実に奇異に見られる事間違いなしの光景である。
 正直葛藤したが、意を決してゲーム機の下画面に顔を寄せていくと…。

『…違う、今の段階でのキスはゲーム機の本体の裏側に収納されているタッチペンを
使って俺の唇にタッチするんだ。本当のキスは俺をその気にさせて実体化した時の
楽しみにしていろ…』

「ええっ! そ、そうなの…?」

 と驚いたが確かにこの小さなゲーム画面にキスした場合、相手の顔全体に
こっちの唇がサイズ的にベチャっと当たる可能性がある。
 しかしそういう説明を聞かされると本当にゲームをプレイしているかのような
錯覚を受けていく。

(本当になんかDSで恋愛ゲームでもやっているような気分だな…)

 心の中で突っ込んでいきながら恐る恐るタッチペンを引き抜いていき、
相手の唇にタッチさせようとしたが緊張していたのでタン! とかなり
強くタッチした途端、もう一人の自分が画面上でのけぞっていった。

『貴様! 今のは痛かったぞ! もう少しソフトにタッチしろ! この下手くそ!』

「うわわわ! ゴメン、次は気をつけるから…! こ、こうかな…!」

 相手の反応を聞いて半分パニックになりかけたがどうにか気を取り直して…
相手の唇にそっと優しくタッチペンをタッチさせていった。
 瞬間、眼鏡の顔が酷く色気のあるものに変わっていく。

『そうだ…上手いじゃないか。その調子で日中俺に構って欲情ゲージを
少しずつ上げていけ…。達成すればご褒美が待っている。楽しみに
しているんだな…』

「欲情ゲージ…? あ、本当だ。画面の右端の下に確かにそれらしきものが…
キスした瞬間に表示されたな…」

 ようやく多少、このゲームのルールみたいなのを理解して克哉は安堵の
息を漏らしていく。
 しかしその瞬間、目覚まし代わりにセットしている携帯がけたたましく
鳴り響いていった。

「うわ! 気づいたらもうこんな時間なのか?」

 その音に一気に現実に引き戻されて克哉は慌ててゲーム機の蓋を閉じて
出勤する準備に取り掛かっていった。
 そうして…まだまだ前途多難な感じを匂わせているが、克哉の奇妙な
生活は幕を開けていったのだった―


 
 これは今の自分の心境をつらつら書いています。
 結構暗い内容も書かれていますので…興味ない方は
スル―して下さいませ(ペコリ)
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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―フードが落ちて現れた顔は、克哉にとっては見知った人物のものだった

 否、薄々と予想はしていた。
 だが…まさかという気持ちも同時に存在していたが、茫然とした様子で
雨に濡れた地面に膝をついている様子を見て…克哉は胸の奥にチリリと
した痛みが走るのを感じていった。

(やはり…オレをここに呼び出したのは松浦だったんだ…)

 恐らく、今の状況下で其処まで人に憎まれていると心当たりがあるのは
彼ぐらいしか存在しなかったから。
 かつて大学に在籍していた頃、本多の傍らにずっと松浦は存在していた。
 当時の二人は克哉にとっては眩しく見える事すらあった。
 好きなものに全力で打ちこんでいる当時のバレーボール部のメンバー達と
接していると、温度が違う事を嫌って程実感させられた。
 バレーボール自体は、克哉は好きだった。
 けれど…高校時代と変わらず、自分はどうしても人に対して深入りを避けて
しまう傾向にあったから誰とも打ち解ける事はなかった。
 其れが結局…大学のバレーボール部のメンバー達とも大きな壁を作る
原因になってしまい…結局、二年の始めぐらいで克哉は退部して…
松浦と接点を持つ事はなかった。

(オレ、のせいだ…。一か月前、きっとオレがあんな事をしたから…)

 自分と松浦は、友人ですらない。
 顔見知りではあったが、親しく会話した事も腹を割って話した事もない。
 だから相手がどんな考えをしているか知らなかった。
 知らないからこそ…不安が強まり、本多を取られてしまっているような
気持ちが拭えなくて…結果、感情的にあのような行動に出て…松浦を
追い詰めてしまったのだろう。
 松浦は今、冷たい雨に打たれて…放心状態になっていた。
 そうする事で目の前の現実を信じたくないと、必死に否定している風でもあった。

「ど、うして…こんな、事に…」

 そしてもう一人の自分が電話を掛けて救急車を手配している最中…
ようやく松浦が口を開いていった。

「何で、本多が…こんな場所に…。俺は…佐伯しか呼び出していない
筈だったのに、どうして…」

「………」

 松浦の目は危うく揺れて焦点が定まっていなかった。
 必死に目の前の現実を否定しようと心の中であがいているのが
見てるだけで判ってしまった。

「どうして、どうして…こんな事に、なってしまったんだ…! 俺は、佐伯さえ
いなくなってくれればと思っただけなのに…どうして…!」

「………っ!」

 例え親しくない間柄の人間であったとしても、誰かに「いなくなってくれれば」と
言われれば胸の奥に痛みが走る。
 自分も、同じ事を二人が飲みに言っている間に何度も思っていた。
 松浦なんかいなくなってしまえ、自分が本多と一緒に過ごす時間を取らないでくれ、
これ以上…仲良くなんてならないでくれ、と嫌な感情はいつだって胸の中に
グルグルと渦巻いていた。
 だから…松浦の事を責められない。
 自分だって、ずっと…同じような想いを胸に抱いていたのだから。
 だから本音を打ち明けた時、本多が…自分を優先して一緒にいる時間を
多く取るように配慮してくれた事で満足していた。
 それによって…踏みにじられる気持ちがある事から目をそらして…
そして幸せに溺れていた。
 克哉は今、その罪を突きつけられているような気分だった。

「やっと大学時代のように…こいつの一番傍にいられる…その状態に
戻ったと思っていたのに…。いつの間にか佐伯がその場所にいるように
なっていたのが許せなかった…! 一緒に過ごせる時間すら奪った事が
許せなかった…だから、俺は…」

「………」

 それはまるで、一か月前の自分を見ているような気分だった。
 同じ想いを克哉は松浦に対して抱いた。
 自分が本多の恋人で、一番傍にいる存在の筈なのに…例え過去の
仲間であったとしてもそれを奪われるのは許せなかった。
 あの夜はそれが爆発して、訴えて…本多から友人と一緒に過ごす時間を
奪ってしまった。

―自分の気持ちしか見えなかったせいで…!

 それを思い知らされて、耐えようのない痛みを覚えた瞬間…誰かが
自分の肩に手を置いた。
 もう一人の自分のものだった。

「…甘ったれた事を言うな。それで刃物まで持ち出した事が正当化されると
思っているのか…?」

「っ…!」

 松浦は目の前の光景に言葉を失っていった。
 印象こそ全く違うが…其処には佐伯克哉が確かに二人同時に存在
していた事を…眼鏡を掛けた方が言葉を発した事でようやく気付いたからだ。

「…何で、お前が二人…?」

「そんなのどうだって良いだろう…。それで何か? 俺を呼びだして殺して…
そして完全犯罪でもして、それで何食わぬ顔をして本多の一番として
ちゃっかり居座るつもりだったのか…? 本多が<オレ>をどれだけ大切に
思っているのかも判らずに…? そんな浅はかな考えを実際に実行に移す
つもりだったのか…?」

「うるさい…! お前に何が判る…!」

「…何も理解するつもりはない。少なくとも…人を殺してまで排除しようとする
考えそのものについてはな…」

「くっ…!」

 茫然としている克哉をよそに、松浦と眼鏡は言葉のやりとりを続けていく。
 その間…克哉は幽鬼のように頼りない足取りで、フラフラと本多の元に
向かっていた。
 冷たい雨が、本多から体温と血を容赦なく奪っていく。
 救急車はもう一人の自分が手配してくれた。
 けれど間に合わなかったら…その不安が猛烈に胸に広がって
いても立ってもいられなくなる。
 もう一人の自分と松浦の言い争いは尚続いていたが…本多の元に
近づき、その大きな手を必死になって握る頃には克哉の耳には殆ど
届かなくなっていた。
 松浦が、胸の中に溜まっていた毒を吐き出し続ける。
 どれだけ佐伯克哉を恨んでいるか、疎ましく思っていたか怨嗟の言葉が
紡がれ続ける。
 けれど今…愛する人間が死にそうになっている現実だけで心は
充分に壊れそうになっているのに、これ以上…自分の心を痛めつける
言葉など耳に入れたくなかった。
 だから、もう…本多の事だけに意識を集中して、嫌な言葉は全て
無意識のうちにシャットアウトし続けた。

「本多…お願いだよ、どうか…死なないで。…本多が死んだら、嫌だよ…!
オレだけ残されるなんて…お前のいない世界なんかで生きていたくないよ…!」

「…バカ、野郎…! そ、んな…よ、わ…きな…事…言う…ん、じゃ
ね…ぇ…よ…」

「そんな事、言われたって…本多が、死ぬなんて…嫌だ…嫌だよ…!
オレ、なんか…を庇った、せいで…ゴメン…本当に…ゴメンな…」

「…オレ、なん、か…なんて、言うなよ…俺に…と、って…克哉、は…
世界で…一番、大、切…な…存…在な、ん、だ…ぜ…」

 雨に混じって涙が目から溢れ続ける。
 神様、どうかどうか…この優しく愛しい男の命を奪うような真似だけは
しないでくださいと…切に克哉は祈り続ける。

(オレなんてどうなっても良いから…だから、本多を助けて下さい…!)

 ポロポロと泣きつづけながら、克哉は必死に祈り続ける。
 本多はこちらに視線を向けていたが…まともに見えていないようだった。
 焦点がうつろになって、視線が確かに泳いでいる。
 克哉の事をまともに見えていない可能性があるのは明白だった。
 その瞬間、ドサっという音とバシャン…という何かが倒れて水が跳ねる音が
耳に届いていった。
 あの二人から目をそらしていたので…克哉にはどちらが倒れたのか
とっさに判らなかった。
 そして一人がこちらの方角に歩いてくるような気配がした。

(どっちが、近づいてきているんだ…?)

 その事に一瞬、ヒヤリと背筋が冷たくなったが…すぐにどうでも良くなった。
 松浦がこちらに歩み寄って、またこちらに危害を加えようとしているのなら
好きにすれば良いと自暴自棄な心が湧き上がってくる。
 けれど…その人物が傍らに立った瞬間…こちらの肩にそっと手を
置いていった。
 それだけで一瞬、また涙ぐみそうになる。
 顔が見えなくてもそれだけで、どちらが倒れて…どちらがこちらの元に
来たのか充分に判ってしまったから。

「な、あ…其処…に、克哉、の他に…誰、か…いる…の、か…?」

 そして本多は危うい眼差しをしながら、背後にいる人物の気配を
感じてそう声を掛けていく。
 勢い良く冷たい雨が降り注ぐ中…そうして、三人は確かに対峙の
瞬間を迎えようとしていたのだった―


  ちょっと迷いましたが、ペルソナ2 罪のPSP版を
買って現在プレイ中。
 …香坂はペルソナシリーズはほぼ全部プレイしていて
十年ぐらい前にPS版の罪と罰、両方クリアしているんですが…
愛着あるゲームだし、PSPなら気軽に遊べるので
購入を踏み切りました。

 何ていうかまだ序盤の段階なんですが本当に懐かしいです。
 後、何気に今回の移植で戦闘とかが少し快適になっていて
その辺は良いな~と。
 …そういえばペルソナ2って、私にとっては同人活動を始めた
最初のジャンルなので結構思い入れがあったりします。

 ええ、当時は達哉と淳の二人の関係にドキドキとときめいていたさ…。
 罪の時にはあれだけ妖しい雰囲気を匂わせていた癖に、罰では
達哉って舞姉を想っていて淳の事をほったらかしな感じになって
いたのでか~な~り切なくなっていたんですが。
 …十数年前からすっかり腐女子だったんだな自分とツッコミ
入れたいんですけど。

 何て言うか丁度十年ぐらい前にハマっていたゲームが
ペルソナシリーズ、ガンパレードマーチ、FF7、俺の屍を越えていけ
その辺りなんですが(実際は当時はもっと沢山のゲームやっていますが
程々で割愛)この辺はどれも未だに根強いファンもいるし…俺の屍に至っては
今年、PSP版で改めて発売するのが決定しているし。
 ガンパレも未だに小説という形で出ていたりするし。
 FF7なんてクライシス・コアなんてザックスが主役の新作まで
出ているくらいだし。
 当時好きだったものが、こうやって改めてリメイクされて出てくれるのって
やっぱり嬉しいです。

 罰の方の結末が判っていたとしても…やっぱり自分は、淳が仲間に
なったら二人の関係に萌えるんだろうなぁ…。
 良いの、好きなものはどれだけ年月が過ぎても変わらないのは
充分判っているから。
 多分、ボチボチ遊んでいると思います。
 ん~ちょっとSSとかも書いてみたいな。
 当時は漫画で活動していたから…冷静に考えたら、ペルソナ2を
SSで書いた事って一回もなかったしな…(汗)

 心から懐かしいな~という気持ちを噛みしめて現在プレイ中です。
 
 
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
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―何が起こったのか、最初は理解したくなかった
 
 一瞬にして、克哉にとっての日常は崩壊してしまった。
 普通に働いて、自分の傍らにはいつだって愛しい恋人がいて支えてくれている…
そんな当たり前の日々が、唐突に終焉を迎えてしまった。
 冷たい雨が勢い良く降り注ぐ中、克哉は目の前の現実に打ちしがれた。

「ほ、本多…どうして…! 何で、お前がここに…?」

 克哉は、理解出来なかった。
 あの電話のおかげで本多はすでに犯人の手の中に落ちてしまっていると
思い込んでいたから。
 何故、彼が自分の背後から現れて…突き飛ばし、代わりに犯人の凶刃を
受けて倒れなければならないのかそれが判らなかった。

「…克哉、マジで…良かっ、た…お、前が、無…事で…」
 
「全然良くない! オレが無事でも…本多が、こんな風になってしまったら…
オレは嫌だよ! …どうして、こんな処にいるんだよ…!」

「…会社近くに…来、た時、お前に電話しても…繋がらなくて…そう、したら、
遠くの方で…お前が、必死に…走って、いる姿が…見え、たから…追い
掛け、たんだ…。」

 本多の声は弱々しく、途切れがちだった。
 腹部にはナイフが刺さったままで緩やかに彼の血が溢れ出ているのが
判って…それだけで気が触れてしまいそうだった。
 一刻も早くそのナイフを抜きたい衝動に駆られたが、恐らく冷たい雨が
降り注いでいる中で其れをやってしまっては本多は体温と血液を一気に
奪われて命を落とす可能性がある…そう判断してギリギリの処で留まっていった。

(もしかして…さっきの電話は…本多から、だったのか…?)

 電話掛けても繋がらない、と聞かされてふと思い出されたのが…
さっきの呼び出しの事だった。
 滑稽だった、もしあの時に電話を出ていれば…本多は無事だという事が
すぐに判った筈だ。
 そうしたらこんな卑劣な罠に自分は掛からないで済んでいた。
 自分を庇って本多がこんな風に傷つく事もなかった筈なのに。
 克哉は己の愚かさを心から後悔して、呆れたくなった。
 電話に出てさえいれば…こんな最悪の現実は訪れないで済んだ。
 あんな脅迫の言葉に踊らされてここに来なければ…そんなもしも、の考えが
頭の中を支配して…克哉は本当に消えてしまいたくなった。
 自分が傷つく事の方が、大切な人間が倒れて傷つく姿を見るよりもずっとマシで。

「本多、本多…! ごめん、本当にゴメン…!」

「…謝る、なよ…俺は…お前を、守れて…良かったと…思っている、んだ…ぜ…?」

 本当に苦しそうに胸を上下に喘がせていきながら本多がそう告げていく。
 どうしてこの男はこんな時にでも優しいのか。
 普段なら嬉しくて胸が暖かくなるのに…自分の行動が原因でこんな事態が招かれて
しまった今となったら…むしろ詰ってくれた方がどれだけ良いかと少し恨みたい気分に
さえなっていく。

「けど…オレの、せいで…オレなんか、を庇ったから…!」

「…オレ、なんか…っていうなよ…。俺にとっては克哉は…一番、大事な…
奴、なんだ、ぜ…? そいつを、守れたのなら…むしろ、本望、だ…」

「バカ! …お前って…本当に、バカだよ…!」

 克哉は泣いた。
 身体中の水分がなくなってしまうのではないかって思うくらいの勢いで
両目から涙が溢れ続けていく。
 どうしてこの男はこんなに優しいのか…いっそ恨みたいぐらいの
心境になっていく。
 目の端で黒いフードつきのレインコートを纏った犯人が茫然自失状態に
なって少し離れた位置で立ちつくしているのが見えた。
 けれど今は…克哉には本多の存在しか見えていない。
 だから必死にその手を握り締めて、気持ちを伝えようと試みていった。

「やだ…! 本多が死んでしまったら…オレは耐えられない…! だからお願い…だよ!
どうか死なないで…嫌だ、嫌だ…!」

 そうして泣きじゃくっていく。
 克哉も犯人も、目の前の現実に打ちのめされてまともな判断が出来なくなっていた。
 一刻も早く救急車を手配して…病院に搬送しなければならない。
 その判断を下す事も出来なくなり…刻一刻と、本多から血液と体温が冷たい雨に
よって奪われていく。

―お前は本当に馬鹿だな…!

 不意に、鮮明にもう一人の自分の声がした。

「えっ…? 今、どうして…?」

 克哉はその声によって、若干の正気を取り戻していった。
 慌てて周囲を見回していくと其処には…。

「嘘、どうして…お前が、此処に…?」

「…そんな事はどうでも良い…早く、携帯を貸せ…。お前はこいつを
死なせたいのか…?」

 其処にはいつの間にか…眼鏡を掛けたもう一人の自分が立っていた。
 其れがどういう理屈なのか、現象なのか判らない。
 だが…紛れもなく其処に自分と同じスーツを纏った、もう一人の佐伯克哉は
唐突に現れていた。
 相手の言葉にハっとなって、慌てて克哉はスーツのポケットを探って携帯電話を
探し出して…もう一人の自分に渡していく。

「借りるぞ…」

「え、う…うん…」

 そしてどうしてこんな事態になっているのかついていけず半ばパニックになりかけながら
克哉は成り行きを見守っていく。
 だが、克哉以上に犯人の方がその事実に耐えられなかったようだった。

「これは、一体なんだ…! どうして、お前が…もう一人いるんだ…?」

 犯人は混乱しきった様子で大声で叫んでいく。
 その時、感情に任せて思いっきり立ち上がっていくと…目元まで覆っていた黒いフードが
落ちて犯人の顔が晒されていった。
 其れを見て…克哉は自分の予想が正しかったのを想い知っていった。

「やっぱり…そうだったんだ…」

 其処に立っていたのは…予想通り、松浦宏明その人で。
 眼鏡を掛けた自分が病院の手配をしている最中、克哉は静かに…
本多を手を掛けた人物と雨の中、向き合っていったのだった―

 四月の下旬辺りから、殆ど帰って来なくなっていた
猫が一昨日辺りから帰って来てくれました。

 もうそろそろ一歳になるから、盛りがついてメス猫でも
追い掛けているのかな…と気楽に構えていたら、どうも
他のオス猫に意地悪されて帰るに帰れない状態に
陥っていた事が判明し…その意地悪しているオス猫の
出入り口の張り込みを追っ払って止めさせたらようやく
うちの猫が戻って来れました。

 長年飼っていた子はメス猫だったのでそんな心配はなかったんですが、
どうもオス猫同士だとたまに縄張り勢力が変わった際にそういう事が
起こる模様。
 うちの猫、どうも猫社会においてはケンカが弱いらしく…強いオスが
やってくると一方的に負けているっぽい(汗)
 とりあえず幾つか対策を立てて、家に誰かがいる時は…その猫の周りに
出来るだけいるようにして、せめて家の中だけでもその意地悪するオス猫の
攻撃から身を守れるように対処したら、やっと家に居ついてくれましたけど…。

 猫の社会も、縄張り争いでなかなかオス猫というのは大変みたい。
 何か一時は撫でたり甘えたりするのを恥ずかしがっていた子なんですが
どうも強いオス猫に追いかけ回されたり、ケンカ吹っかけられている事で
すっかり怯えてしまって…何かまた、子猫の時みたくべったりしている
状態に戻っています。
 …それだけ怖がっていたのに、気づいてあげなくて対処遅れてゴメンよ(汗)

 …ぶっちゃけ猫好きとしては、猫から餌を取り上げたり出入り止めさせるっていうのは
心苦しいんだが、入口に張り付いてうちの猫の出入りを止めちゃうような厄介なのを
放置する訳にもイカンし。
 たまに餌を食べに来る程度だったら黙認してやれても、実害出ている以上は
仕方ないでしょ。
 
 …せめて家の中で安心して寛げる環境を作る為には時に
心を鬼にしないといけないとアカン。
 この子は、猫の世界では弱い方だからこそうちの子になった訳だし。
 猫とはいえ、家族となった子なら全力で守ってあげないとな。
 …けど、香坂的にはすっごいジレンマです。ううう…何であのデカ猫は餌を
食べに来る程度に留めてくれなかったんだろ…(涙)

 オス同士はそういう縄張り争いがあって追い出したり、追い出されたりが
あるらしいけど…メス猫は完全にフリーパスらしい。
 つか、うちのミ―が生きていた頃はミ―が一番偉かったらしいので
この子が許したオス猫以外は出入り出来ない状態だったけど。
 …猫の世界にも色々あるみたいです。

 けど、アカチャンの姿が十日以上姿が見えなかった時は
本気で心配していたから…本当に帰って来てくれて良かったよ。
 ちょっと安心出来ました(ホッ)
 先日、忘却の彼方12のリンクがおかしいと報告を
メールフォームの方で頂いたのでこちらも確認した処、
確かに飛べなかったので全話の修正いたしました。

 これで問題なくトップ&各話の冒頭部分から12話に
飛べるようになっている筈です。
 報告して下さってありがとうございました。
 …自分では気をつけてやっているつもりでもたまに
こういうリンクをミスってそのままという事はありますので
気づいた時に報告頂けると助かります。
 自分の場合だと、過去の話を見直す際には掲載分を書き終わる為に
ワード文書に貼りつけて纏めて読めるようにしておく…とやっているので
あまり冒頭リンクは使用しないもので。
 報告してくれた方、感謝しています。
 …セーラーロイドも、うん…今年は少しは進めるように頑張ります。

 …何故、このシリーズが一番…続き書いてくれって要望が
多いのかマジで不思議なんですけどね(汗)
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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