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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

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―もうじき御堂に、もう一人の自分の魔の手が伸ばされる

 御堂の執務室、もうじき昼食の時間が訪れようとしている頃…佐伯克哉の
頭の中はそのことだけでいっぱいいっぱいになっていた。
 その事実を告げられたことで翌日、仕事中に克哉は上の空になりがちだった。
 ようやく本日で一週間目を迎えて、全体の流れを大体把握できるように
なったというのに。
 御堂と自分との関係もやっと今までのものより少し変化している兆しを
昨晩感じることが出来たというのに。
 そういったプラス面の全てを打ち砕くぐらい、秋紀がもう一人の自分の手を
取ってしまったことは克哉にショックを与えていた。

(確かに…あの子はあいつの方を求めていたから、きっと太一とか本多、
片桐さんと違って必死に抵抗しないだろうという事は予想がついたけれど…
まさか十日しか経たない内に二人も…!)

 片桐、本多の調教が終了するまではそれなりの時間が掛かったと
聞いていた。
 だから太一が完全に陥落するまでは猶予が残されているのだと
克哉は信じていた。
 だが現実は其処まで甘くなく、太一らしき人物が失踪したと報じられているのを
偶然見かけてから一週間程度で、秋紀の方まで手が伸ばされてきた。
 
―もう自分たちに与えられた自由時間は僅かしかない…!

 御堂の元に転がり込んでから、毎日ずっと頭の隅からそのことが離れない。
 心の中で葛藤する。
 仕事に集中しなきゃいけない。
 せっかく御堂がこっちを信頼してくれるようになったのだから、せめて仕事中は
それに全力で応えたいのに…頭の中にグルグルと考えが渦巻いていて、
まともに考えることすら出来なくなっていた。

「…本当、情けないよ…オレは。このままで本当に…勝負に勝てるのかよ…」

 つい、資料ファイルが収められた棚の前に立ち尽くして悔しそうに呟いていく。
 己の無力が、今はともかく歯がゆかった。情けなかった。

「…一体君は誰と競っているというんだ…?」

「ええっ…御堂さん! ど、どうして…いつの間に其処に!」

「…さっきからずっと君の後ろにいたんだが。声を掛けようと思ったがどうも
君が葛藤して一人芝居を続けていたからな。果たして邪魔をして良いのか
どうか迷っていたんだが…もう大丈夫なのか?」

「そそそそ…! そんなの御堂さんが気にしなくても良いんです!
オレが勝手に考え込んでいるだけだったんですから! すみません、仕事中に
関係ないことを考え込んでしまって!」

 まさか今のやりとりを見られているとは思っていなかった分…克哉は
狼狽しまくっていた。
 顔は真っ赤に紅潮して呂律すら満足に回っていない有様だったが、
御堂はそれを面白そうに眺めているだけだった。

(御堂さんの反応が…以前よりも優しくなっている気がする…)

 そのことに気づいた瞬間、昨晩一瞬だけ重ねられたキスのことが
脳裏をよぎって、更に克哉は顔を赤くしていく。
 そんなに優しい目で見られてしまったら、厚かましいと判っていても
変な風に期待してしまう。
 初めから負ける可能性が高い賭けのようなものだった。
 なのに…こんな風にこの人に優しくされると、どうしても甘い考えが
湧いてしまう。

(貴方も…オレを、好きでいてくれているんですか…?)

 この十一日間で、最初の頃よりも御堂との距離は狭まっていることを
感じていた。
 最初は頑なだった御堂が、徐々に警戒心を解いていろんな顔を見せて
くれるようになった事で…克哉は今、自分が生きているのだという
実感を強めていった。
 だから、望んでしまう。もう…自分は亡霊なんかに戻りたくないと。
 実体を持ってこの世界に…御堂の傍でこれから先もずっと生きていきたいと
切に願っていく。
 二人の間に沈黙が落ちていく。
 御堂の仕事場で…こんな、張り詰めた空気になってしまうなんて…もし他の
人間が来てしまったら何と言い訳すれば良いのだろう。
 お互いに口を開けぬまま…無言の刻が流れていく。
 御堂がこちらを見つめていると自覚するだけで身体が熱くなり…頭の中が
混乱して、まともに考えられなくなっていった。

「…昼食に行くのは止めよう。その代わり、今夜は早く切り上げて夕食を
自宅で一緒に食べないか…?」

「えっ…?」

 顔を真っ赤にして俯いていた克哉に向かって、御堂はいきなりそう
提案していった。
 突然の展開に頭がついていかなかった。
 何を言われたのかすらとっさに理解が出来なかった。

「…今日、君に聞きたいことが幾つかあるから聞かせてもらう。それには
昼食では短すぎると気づいたからな。だから仕事が明けてからにさせて貰おう…。
 だから定時で上がれるように仕事をがんばってこなしておいてくれ。
中途半端な状態で上がったら、私は本気で怒るからそのつもりでな…」

「ああ、はい! 判りました! 定時までには絶対区切りがつけられる処までは
片付けておきます…!」

「そうか、良い子だ…」

「っ…!」

 唐突に、御堂の指先がこちらの右耳の裏から首筋のラインをツウっと
なぞりあげたせいで克哉は息を詰めていく。
 たったそれだけの刺激に過敏に反応してしまっている自分が情けないと
思った頃には、御堂の姿は扉の方に消えていこうとしていた。
 相手の一挙一足に…一言一言に翻弄されている自分が確かにいる。

「御堂さん、オレ…まだ、希望が残っていると解釈して良いんですか…?」

 自分たちの関係など、せいぜい酔った勢いで一瞬だけキスをして…意味深に
触れられている程度のものでしかない。
 だが、何もないままよりも…それだけのことでも進展があっただけ
まだ希望が持てると自分に言い聞かせていった。

(もう形振り構っていられない…。きっと、オレに残された時間は本当に
僅かしか存在しないのなら…今夜、勝負を掛けるしかない…!)

 克哉の心は気づけば焦りで満たされていた。
 ジワリジワリと追い詰められているのを日々、実感させられたら平常心で
望む方が難しいだろう。
 時間が残されているのならば…もっとじっくりと御堂と関係を築きたかった。
 けれどもういつ…もう一人の自分が再び自分の下に訪れてもおかしくない
状況になっていることを思い知らされている分だけ、克哉は迷っても仕方ないと
開き直っていく。

「…今夜、オレは貴方に…!」

 そう呟き、決意を固めて呟いていく。
 そうして…暫く考えを纏めてから、再び思考を切り替えて仕事に没頭していく。
 だが克哉はこの時、気づかなかった。

―平穏な日常というのは、今日いっぱいで終わりを迎えてしまっていた事実を…

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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