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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                       10 11 12 13   14 15
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 この三ヶ月間、数えきれないぐらい彼と抱きあい口づけを
交わして来た。
 けれど…自分に恋人がいた事実を思い出した瞬間、甘かったものは
全てどこか苦みと痛みを伴うものに変わっていった。
 
(きっとこれが…罪の味、って奴なんだろうな…)

 今までどうやっても思い出す事が出来なかった記憶。
 其れが…相手に思いを告げた瞬間に、溢れて来て…克哉の胸を
圧迫していく。
 今にも泣きそうな目を浮かべている眼鏡を抱きしめながら…克哉は
その記憶によって耐えようのない痛みを覚えていく。

(…本当に、オレは…本多と恋人同士になっていたんだ…。思い出した
直後は認めたくなかったけれど…この記憶が、肯定している…)

 他の男を抱きしめながら、本当の恋人との幸せな記憶が蘇ってくる。
 目の前の相手の心を少しでも救いたいという想いと。
 かつて愛していた男をずっと裏切り続けていた事実の両方が
克哉を苛んでいった。
 克哉の方から口づけていった後、相手からは何の言葉もなかった。
 ただお互いの顔が見えないように…肩口に顔を埋め合いながら
抱きあうだけだった。
 
(…もしかして、震えているのか…?)

 いつだって、彼はポーカーフェイスだったように思う。
 シニカルな笑みを浮かべて…たまにこちらをからかうような発言をして
翻弄していて。
 自分と比べて、眼鏡はいつだって…自信に満ち溢れているように見えた。
 そんな相手が…小刻みに身体を震わせて、何かに耐えているような反応を
見せている事に、強烈な保護欲を覚えていった。
 きっと、こちらのこんな本心を口にしてしまえば…相手は反発して怒る事は
目に見えているので敢えて言わなかったが、克哉はこの時…どうしようもなく
彼を愛しいと覚え始めていた。
 守られているだけでなく、こちらからも彼を守りたいと…泣くのを必死で
堪えているような切ない顔を見た瞬間に感じてしまった。
 さっきまで取り乱して、泣き喚いていた自分がこんなことを思うのはきっと
滑稽な事なのだろう。
 けど…この世界に来て、初めて…克哉は彼を支えたいと。
 助けたいと痛烈に感じ始めていたのだった。

「…なあ、どうしてお前はそんなに震えているんだ…? オレなんかじゃ
頼りにならないって判っているけど、こうして傍にいる事は出来る…。
その理由を、話して貰えるかな…?」

「…断る。お前が記憶を思い出しただけでもやっかいなことになっているのに、
これ以上余計な事を知られたら…面倒なことになるからな。せめて数日は待て。
酷な現実を同じ日に一気に知る事はないだろう…」

「…判った…」

 相手の気持ちが少しでも軽くなるなら、せめて聞き役だけにでも
なりたいって思って尋ねた事だが…その返答だけで、彼がそんなに悩んでいるのは
自分に関係する事だと判ってしまった。
 ようするに…現時点では克哉に知られては困る事で苦しんでいるのなら、
こちらに出来る事は何もない。
 何も言わずに…ただ相手を抱き締める以上の事が出来ない事に無力感を
覚えていった。

「…だが、今だけで良い…暫く…こうして、いてくれ…」

「うん、判った…。それくらいなら幾らでも…付き合うよ…」

「そうか…」

 そうして、眼鏡は酷く疲れて憔悴しきった表情を浮かべていた。
 抱きあった体制のまま、克哉は彼の身体を支えるようにしてさりげなく
寝室の方まで向かっていく。
 今は、暖かいものに包まれていたかった。
 相手と一緒にこうして一緒にベッドに入って、性的な行為をしていなかった
事など…これが初めての経験で、その事実に少し恥ずかしくなったけれど…
この日、初めて克哉の方から彼を添い寝していった。
 傷ついた顔を浮かべて…そっと眼鏡が目を閉じていく。
 其れをどこか慈しむような顔を浮かべていきながら…見守っていく。
 そして彼が眠りに落ちていったのを見届けていくと…すぐに克哉の方も
強烈な眠気を覚えていった。

(…ショックなことが立て続けに起こったせいか…凄く疲れた…)

 そうして、克哉も意識を手放していく。
 …緩やかに、深海に落ちていくようなそんな感覚を覚えていきながら…
克哉は夢を見始めていった。

―今、取り戻したばかりの…現実にいた頃の自分の思い出に
纏わるものを…




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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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