鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24
本多の意識と重なり合った事で、暫し眼鏡の方もまた…この世界での
輪郭を失っていく。
夢の中を彷徨っているような気分になりながら、幾つかの場面を断片的に
見る形になっていった。
この不思議な世界で本多と顔を合わせ、眼鏡は今まで知らなかった…
昏睡状態になってからの彼の記憶を垣間見る形となっていた。
それはバラバラのピースだったが、本多がどうして…克哉に選択肢を与える
決断をしたのか、それを察する事が出来る材料に充分になりえる内容だった。
本多が倒れた当初は、多くの人間が見舞いの為に足を運んだ。
けれど長期化してから、それでも頻繁に訪れたのは本多の家族達と…
克哉と、それと松浦だけになっていった。
(これが、お前が…あいつを手放す結果になっても構わないという…理由か…)
その記憶を垣間見て、眼鏡はそっと目を伏せていった。
病室に仕事帰りに訪れる克哉も、そして松浦も…眠っている本多の頬に
そっと触れ、帰り際に口づけを毎回…落とすようになっていた。
克哉はいつだって苦しそうに、おとぎ話の中に出てくるお姫様のように…
愛情を込めて口づける事で、いつか恋人が目覚めてくれるのを祈っているようだった。
そして松浦の方は…一見、無表情に。
けれど自分の犯した罪の重さに耐えかねて、切ない表情を浮かべていた。
二人の人間が、交互に口づけてくるのに対して…本多は何も出来ない事を
心から歯がゆく思っているようだった。
同時に、少しずつ…克哉に対しても、松浦に対しても案じる気持ちが募っていく。
―それが、理由だ…。俺は、克哉の恋人なのに…宏明に対して、憎む事が
出来なくなってしまった…。それ処か、情まで湧き始めてしまっている。
あいつを一途に見れない癖に…縛り付ける資格なんて、俺にはないだろう…?
「…お前は、松浦を好きになったのか…?」
―判らねぇ…。俺は男をそんな風に恋愛対象として見たのは…そもそも克哉が
初めてだった訳だし。キスしたいとか、セックスしたいとかそういう欲望を覚えたのも
克哉だけだ。だから…宏明の事を、恋愛対象として好きなのかどうかは判らないが…
気には掛けているのは事実だ…
「なら、気にしなければ良いだろう…。お前がはっきりと、松浦の方を愛したというなら
遠慮なく奪うが…まだ、あいつの事を愛しているんだろう…?」
―ああ、愛しているよ。世界中で誰よりもな…
「そう、か…」
その言葉を聞き、眼鏡はまた惑う心が生まれていくのを感じた。
いっそ、この男が救いようのない悪人なら良かったのにと心底思った。
決別する場合、相手がロクでもない人間の方が変な未練を抱く事なく
すっぱりと断ち切れるものだからだ。
良い奴だから、善人だからこそ…簡単に断ち切る訳にいかなくなる。
(お前が良い奴だからこそ…俺も、あいつも苦しまずにはいられない…。
そういう意味では、罪な男だなお前は…)
心の中でそう思い浮かべると、それでも伝わってしまったのか…何となく
本多が照れくさそうな様子になっているのを感じていった。
水中や大気の中に、自分という人間が溶けているような不思議な
感覚を味わいながら…彼らの奇妙な会話は続いていく。
―けどな、愛しているからこそ…俺はあいつに笑っていて欲しいという気持ちを
強く感じているんだ…。俺は、あのままじゃ…あいつを抱きしめてやる事も、
落ちこんだ時に胸を貸してやる事も…助けになってやる事も出来ずに
苦しめるだけだったから…。病室に来るたびに、苦しそうな顔をさせちまって。
俺が目覚める事を祈って、けど病室に訪れる度に現実を突きつけられて
絶望させちまって…。その繰り返しに、俺も少しずつ心を痛めていったからな…
「………そう、か…」
本多が感じている痛みは本当の意味で理解してやる事は出来ない。
自分がなった事がない事に対しては、あくまで想像して推測する事しか
出来ないからだ。
けれど、笑っていて欲しい存在が自分の為に苦しみ…傷ついている姿を
見るのが忍びない。
本多はそう考えて、決断した事だけは確かに伝わってきた。
(お前は本当に…お人好しだな…)
本多という人間の人の良さを、佐伯克哉は大学時代からずっと近くにいた分だけ
良く知っていた。
克哉が彼からの猛烈アタックに押され、交際するに至ったのも…その優しさと
懐の広さが要因になっているのだろう。
自分にはきっと、出来ない。
眼鏡はこの世界に来た時に、もし克哉がもう一つの道を選んだ時は…という
其れ相応の覚悟はしていたつもりだった。
けれど実際にその可能性が間近になってくると、尻ごみして恐れているのに…
本多の方は達観しているようで、其れが無性に腹立たしく…嫉妬すら覚えざるえなかった。
―あいつが、笑ってくれているのが一番だからな…
そういって、本多が笑っているのを感じていった。
其れはきっと見る事が出来たら、切ないものが滲んでいるだろうなと
薄々察した。
だから眼鏡もまた、こう答えていった。
『其れは俺も同じ考えだ…』
そう口にした途端、本多は破顔したようだった。
ようやく、朗らかな太陽のような笑顔を浮かべているような気配を感じた。
『嗚呼、だから良いんだ…。あいつが笑っていてくれるならどんな結末を
迎えても、な…』
其れは一人の男の切ないまでの覚悟だった。
眼鏡はしっかりとその想いを胸に刻んでいくと…緩やかに現実に戻っていく。
気がつけば、元の草原で一人…佇む形になっていた。
「…今のは、白昼夢なのか…? それとも…」
けれど、確かに本多の想いのようなものを強く感じた。
いきなり現実に引き戻された事に対して…違和感はあったけれど、
何かを決意したような表情を眼鏡は浮かべていく。
「…いつまでもウダウダ考えていても仕方ない。…もうじき、この世界は終わる。
それなら…少しでもマシな運命を引き寄せるしかないな…」
恋敵の覚悟のようなものを感じ取って、眼鏡もまた腹を括っていく。
そして…眼鏡は、迷いない足取りで克哉の元へと真っすぐに向かい
始めていったのだった―
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
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本多の意識と重なり合った事で、暫し眼鏡の方もまた…この世界での
輪郭を失っていく。
夢の中を彷徨っているような気分になりながら、幾つかの場面を断片的に
見る形になっていった。
この不思議な世界で本多と顔を合わせ、眼鏡は今まで知らなかった…
昏睡状態になってからの彼の記憶を垣間見る形となっていた。
それはバラバラのピースだったが、本多がどうして…克哉に選択肢を与える
決断をしたのか、それを察する事が出来る材料に充分になりえる内容だった。
本多が倒れた当初は、多くの人間が見舞いの為に足を運んだ。
けれど長期化してから、それでも頻繁に訪れたのは本多の家族達と…
克哉と、それと松浦だけになっていった。
(これが、お前が…あいつを手放す結果になっても構わないという…理由か…)
その記憶を垣間見て、眼鏡はそっと目を伏せていった。
病室に仕事帰りに訪れる克哉も、そして松浦も…眠っている本多の頬に
そっと触れ、帰り際に口づけを毎回…落とすようになっていた。
克哉はいつだって苦しそうに、おとぎ話の中に出てくるお姫様のように…
愛情を込めて口づける事で、いつか恋人が目覚めてくれるのを祈っているようだった。
そして松浦の方は…一見、無表情に。
けれど自分の犯した罪の重さに耐えかねて、切ない表情を浮かべていた。
二人の人間が、交互に口づけてくるのに対して…本多は何も出来ない事を
心から歯がゆく思っているようだった。
同時に、少しずつ…克哉に対しても、松浦に対しても案じる気持ちが募っていく。
―それが、理由だ…。俺は、克哉の恋人なのに…宏明に対して、憎む事が
出来なくなってしまった…。それ処か、情まで湧き始めてしまっている。
あいつを一途に見れない癖に…縛り付ける資格なんて、俺にはないだろう…?
「…お前は、松浦を好きになったのか…?」
―判らねぇ…。俺は男をそんな風に恋愛対象として見たのは…そもそも克哉が
初めてだった訳だし。キスしたいとか、セックスしたいとかそういう欲望を覚えたのも
克哉だけだ。だから…宏明の事を、恋愛対象として好きなのかどうかは判らないが…
気には掛けているのは事実だ…
「なら、気にしなければ良いだろう…。お前がはっきりと、松浦の方を愛したというなら
遠慮なく奪うが…まだ、あいつの事を愛しているんだろう…?」
―ああ、愛しているよ。世界中で誰よりもな…
「そう、か…」
その言葉を聞き、眼鏡はまた惑う心が生まれていくのを感じた。
いっそ、この男が救いようのない悪人なら良かったのにと心底思った。
決別する場合、相手がロクでもない人間の方が変な未練を抱く事なく
すっぱりと断ち切れるものだからだ。
良い奴だから、善人だからこそ…簡単に断ち切る訳にいかなくなる。
(お前が良い奴だからこそ…俺も、あいつも苦しまずにはいられない…。
そういう意味では、罪な男だなお前は…)
心の中でそう思い浮かべると、それでも伝わってしまったのか…何となく
本多が照れくさそうな様子になっているのを感じていった。
水中や大気の中に、自分という人間が溶けているような不思議な
感覚を味わいながら…彼らの奇妙な会話は続いていく。
―けどな、愛しているからこそ…俺はあいつに笑っていて欲しいという気持ちを
強く感じているんだ…。俺は、あのままじゃ…あいつを抱きしめてやる事も、
落ちこんだ時に胸を貸してやる事も…助けになってやる事も出来ずに
苦しめるだけだったから…。病室に来るたびに、苦しそうな顔をさせちまって。
俺が目覚める事を祈って、けど病室に訪れる度に現実を突きつけられて
絶望させちまって…。その繰り返しに、俺も少しずつ心を痛めていったからな…
「………そう、か…」
本多が感じている痛みは本当の意味で理解してやる事は出来ない。
自分がなった事がない事に対しては、あくまで想像して推測する事しか
出来ないからだ。
けれど、笑っていて欲しい存在が自分の為に苦しみ…傷ついている姿を
見るのが忍びない。
本多はそう考えて、決断した事だけは確かに伝わってきた。
(お前は本当に…お人好しだな…)
本多という人間の人の良さを、佐伯克哉は大学時代からずっと近くにいた分だけ
良く知っていた。
克哉が彼からの猛烈アタックに押され、交際するに至ったのも…その優しさと
懐の広さが要因になっているのだろう。
自分にはきっと、出来ない。
眼鏡はこの世界に来た時に、もし克哉がもう一つの道を選んだ時は…という
其れ相応の覚悟はしていたつもりだった。
けれど実際にその可能性が間近になってくると、尻ごみして恐れているのに…
本多の方は達観しているようで、其れが無性に腹立たしく…嫉妬すら覚えざるえなかった。
―あいつが、笑ってくれているのが一番だからな…
そういって、本多が笑っているのを感じていった。
其れはきっと見る事が出来たら、切ないものが滲んでいるだろうなと
薄々察した。
だから眼鏡もまた、こう答えていった。
『其れは俺も同じ考えだ…』
そう口にした途端、本多は破顔したようだった。
ようやく、朗らかな太陽のような笑顔を浮かべているような気配を感じた。
『嗚呼、だから良いんだ…。あいつが笑っていてくれるならどんな結末を
迎えても、な…』
其れは一人の男の切ないまでの覚悟だった。
眼鏡はしっかりとその想いを胸に刻んでいくと…緩やかに現実に戻っていく。
気がつけば、元の草原で一人…佇む形になっていた。
「…今のは、白昼夢なのか…? それとも…」
けれど、確かに本多の想いのようなものを強く感じた。
いきなり現実に引き戻された事に対して…違和感はあったけれど、
何かを決意したような表情を眼鏡は浮かべていく。
「…いつまでもウダウダ考えていても仕方ない。…もうじき、この世界は終わる。
それなら…少しでもマシな運命を引き寄せるしかないな…」
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そして…眼鏡は、迷いない足取りで克哉の元へと真っすぐに向かい
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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