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ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。
桜の回想 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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澤村紀次もまた突然室内で大量の白い煙に包み込まれていた。
スモークを発生させない限りは起こり得ない事だった。
手を伸ばして周囲を探り始めていった。
開かれる演目のもう一人の主役である貴方を…お迎えに上がっただけですよ…?
事実に怒りと畏れの感情を同時に覚えていった。
Mr.Rと申します。どうか以後、お見知り置きを…」
僕に与えられた執務室だ。部外者が無断で入って来れる訳がないだろうう!」
ありません。それよりも澤村様…貴方の親友であった佐伯克哉さんが
お待ちですよ。一足先にあの方には現地に行って貰っています…」
それで、僕に何の用? それにこの白い煙もそちらのせいかな…?
視界が利かなくなって非常に迷惑だからさっさとどうにかして欲しいんだけど…」
私が作った世界に貴方を招く為にはどうしても発生してしまうものですからね…。
現実と、仮初めの世界を繋ぐための触媒のようなものですし…
呆然となるしかなかった。
動じる気配すら見せなかった。
主役の一人として、私が作り出した舞台の上に貴方を招く。その事だけ
理解して下されば結構ですから…
伝うのを感じ取っていった。
危険を感じ取っていく。
いけないんだか…! 僕には招かれる義理も必要性もまったく感じて
いないんだ! 断らせて貰うよ!」
その反応を見て黒衣の男は愉快そうに喉の奥で笑っていく。
とでも申しておきましょうか…?」
僕が把握している。彼の幼なじみで…長い付き合いだった僕が言うんだから
間違いはない。デタラメを言うのはそれくらいまでにしてくれるかな?」
澤村は目の前の男を見つめていった。
白い煙に満たされている。
したのならば…十分に『小学校の時の知り合い』や、『友人』に数えられるでしょう…?」
一日で…心に強く引っかかり続けている事でもあった。
それが私と克哉さんが初めて出会った日ですよ…
はっきりと把握しているのか不気味で仕方なかった。
関心を持って注意深く見守っていたからかも知れませんね…。ですから
私は貴方の事も良く存しておりますよ…。ニコニコと笑いながら、少年だった
克哉さんを裏切り続けた…元親友の方としてね…
対して何をされますか? 直接面向かって本心を言う事すら出来なかった
臆病な性格の貴方がね…
いるような様だった。
見つめてくるのみだった。
小学校の卒業の日。貴方があの人に裏切りの事実を告げた直後だと…
出来事を…一部始終、ね…』
時には…絶対に、周囲に誰も…いなかった、筈だ…」
知り合いと同じ地元の中学に進学するのだ。
されては堪ったものではないと思って…克哉に告げた瞬間、周囲に人が
いないかは特に気を配っていた記憶がある。
ぐらいに近くにいた筈ならば気づかない筈がない。
小心者である彼は願い続けていく。
一層濃くなっていき…自分たち二人を激しくうねりながら包み込み始めていく。
仮初の世界へとお連れさせて頂きますね…。それは貴方たち二人が決着を
つけるのに相応しい場所…。あの出来事が起こった小学校を再現させて頂きましたから…
もてなして差し上げましょう…
意識は完全に途切れていき、その場から静かに連れさらわれていったのであった―
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。
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ほぼ同じ頃、御堂孝典もまた自らの執務室にいる時に突然男たちに
囲まれる処だった。
よってだ。
微笑みながらこちらに声を掛けていった。
素直に歓迎する訳にはいかないだろう。
男たちに絡ませて自由を奪っている。
彼らの意識も同時に奪っていた。
取り囲んでいた男たちはぐったりとしていて、完全に意識を失って
いるようだった。
胸元が上下している様子から意識を失っているだけだと判断していった。
見ているのか…?)
停止しかけてしまっていた。
現実に起こる訳のない出来事を体験している最中は凍り付いてしまうものである。
身の危険が迫っていたから…私のペットに頑張ってもらっているだけです
からお気になさらずに…
鵜呑みにして、気にせずにいるなどという芸当は出来なかった。
何かあれば、克哉さんが悲しみますからね…
する輩とは決して私は関わっていてもらいたくないのだが…」
なければ…今はしなやかで強くなられた克哉さんに相応しいパートナーとは
言えませんからね…
相手がそんな顔をしようとも胡散臭くしか見えなかった。
当てはめてもしっくりいかないような気がした。
首を傾げているようだった。
いい加減止めてもらおう…」
古い友人と言った処ですね…」
御堂は言葉を軽く失い掛ける。
浮かべて言葉を続けていった。
小学校を卒業した日の事です。大切な人間に裏切られて傷ついた瞳を
浮かべていた彼を…つい放っておけず、その苦しみから逃れさせる為に
手を貸してしまいました。
克哉の口からも、何度も出ているキーワードだった。
放っておけなかっただと…?」
願うほど夢中になり、自分から同棲しようとまで切り出した相手は
彼一人だけだった。
いうのなら、聞き捨てならなかった。
告げられました。心からその相手を信じていたからこそ…少年だった頃の
彼にはその体験は耐え難く、それまでの自分の全てを否定する程の
出来事となってしまわれたのですよ…
二週間前、自分のマンションの入り口に立っていた克哉の親友だと名乗る男と、
相手を覚えてないと必死に言い張る克哉の姿。
その裏切りのショックで記憶が欠落して、思い出せなくなったとしたら…。
起こりうるものなのだろうか…?)
決して珍しくない。
物語に出演させられる便利な設定だからだ。もはや『お約束』とすら
言って良いものだ。
妖しい男に聞かされて少なからず御堂はショックを受けていた。
御堂孝典さん…貴方が今、推測された通りですよ…。今の佐伯克哉さんは
『記憶喪失』された事で引き起こされたペルソナ…。貴方が愛している
克哉さんは、本当の克哉さんが眠っている間…身体を守っているだけの存在。
本質の方が目覚めれば消える筈の儚い存在でした…。なのに貴方との出会いが
その本来辿るべき運命を変えてしまった…。影の方が表に立ち、光が押し込められる
形となった…。私は、その間違った道筋を正したいのですよ…
決して許せる訳がないからだ。
言うつもりなのか…?」
瞬間…彼との出会いの場面を思い出していく。
克哉はそういえば別人みたいになっていなかったか…?)
掛けている間…別人のような行動と言動を取っていたその記憶も遠くなっていた。
言わないのでしたら、続きは私の方から言わせて頂きましょうか…?
佐伯克哉さんがまるで二重人格者みたいな言い方ではないか、
貴方はそう言いかけたのではありませんか…?
宿している。光と影のように、もしくは黒と白のように…相対していながら、
正反対の性質を持った二つの心を同時に宿しています…
存在しそうにないものだ。
御堂を打ちのめしていった。
けどそれを目を逸らしていただけに過ぎない…。違いませんか? 御堂孝典さん…?
突きつけられて…適当なことを言ってやり過ごす事は御堂には出来なかった。
黒衣の男は満足そうに微笑み…片手を挙げて、唐突に御堂を己の作った
仮初の空間にゆっくりと誘い始めていったのだった―
※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や
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都内の某所。
夕方過ぎになると殆ど人通りがなくなる住宅街の傍の、
とある施設の近く。
眼鏡を掛けた方の佐伯克哉は、車に肘をついて軽くもたれ掛かっていきながら、
たった今…かつて親友だった男に電話を掛けて幾つかの連絡事項を告げていくと
静かに携帯の電源を落としていった。
Mr.Rに手配してもらったメタルグリーンに塗装されたカローラの車内に入り
運転席に腰をかけていくと、彼は溜息を吐いていった。
(…澤村、お前はあのお人好しの『オレ』の事を出し抜くつもりだったのだろうが…
お前の筋書き通りにはさせてやらない。また卑怯な手段で俺に勝ろうとして
いる限りはな…)
瞳の奥に強い憤りを秘めていきながら、彼は助手席に座っている片桐を
見遣って行った。
相手が安らかな寝息を立てて眠っている姿を見て、眼鏡は安堵の表情を
浮かべていく。
片桐に関しては間一髪だった。
自分が駆けつけるのがもう少し遅かったら澤村の部下の男たちに
拉致されてしまっていただろう。
「…少し癪だがな…今回ばかりはあの胡散臭い男に助けられてしまったな…」
片桐は本日の正午過ぎにキクチ本社から、そう遠くない位置にある
取引先に一人で出向いていた。
その帰り道…日中でも殆ど人通りのない公園の敷地内を歩いている最中に、
三人の男達に囲まれたのだ。
その公園は今の時期ぐらいから緑が生い茂り始めて、外部からは草木に
覆われて見通しが悪くなる。
片桐自身は日常で良く通っていたから自覚はなかっただろうが…張り込んで
誰かを拉致するには絶好のポイントだったのだ。
Mr.Rが周囲に妖しい香を炊き込める事で…自分以外のその場にいた
全員が深く眠り込んでしまい、特に片桐に関しては効果が絶大で結局6時間
あまりも眠り続けてしまっていた。
自分に対して殆ど効果が出なかったのは…どうやら任意で効果が出る者と
出ない者をあの男には分ける事が出来るらしい。
以前から謎が多い男だと思っていたが…其処まで人間離れした事を平然と
やられてしまうと最早何も言えなくなってしまう。
このカローラも足がつかない手段で確保してきた盗難車だという。
今日一日使用するだけなら問題ないと言ってキーを渡された訳だが…
こう言ったことを可能にするツテがあるのが本当に謎で仕方なかった。
(まあ、そんな事はどうでも良いか…。あの男がどれだけ常識はずれの事を
しようが、人外だろうが役にさえ立ってくれるならそれで良い。…だが、
片桐さんをどうするかだな…)
澤村側にこの車の事はまずバレていないだろうが、意識を失っている
相手を一人この車内に残して離れるのは気が引けてしまった。
本多や太一、そして御堂にももう一人の自分が会社で使っている携帯を
使用して警告文や、指示の類を出してある。だから…彼らを人質にして交渉を
有利に進めようとする澤村の野望は阻止出来ている筈だ。
(まったく…お前は本当に変わっていないな…澤村。また卑怯な手段を
使って俺を叩き潰して…お前は何を得るというんだ…?)
無意識の内に彼は銀縁眼鏡を押し上げる仕草をしていきながら…
溜息を吐いていった。
本当はもう一人の自分が、あいつに狙われていようがどうでも
良いはずだった。
あいつはこちらの踏み込んで欲しくない領域までズカズカと
入り込もうとしていた。
そんな奴を本当なら助ける道義などこちらにはない。
けれど澤村に、例えもう一人の自分が良いようにされて打ち負かされるのは
不快だと感じてしまった。
だから仕方なく手を貸すことにしたのだが…やはり気持ちがモヤモヤしていく。
その瞬間、携帯に一通のメールが着信していった。
「…澤村からの返事だろうな」
そう確信して、メールの文面に眼を通した瞬間…彼は驚きを隠せなかった。
「あのバカ…どこまでお人好しなんだ…」
差出人とタイトルを見ただけで彼は苦々しく舌打ちしていった。
『ありがとう』と、そのメールには書かれていた。
ー片桐さんの件は本当にありがとう。お前がオレを助けてくれるなんて
思ってもみなかったから、嬉しかったよ
そう短く締めくくられた文面を見て、複雑な想いが湧き上がっていく。
それともあいつは、昨晩こちらが部屋を荒らしたことに気づいて
いないのだろうか。
そんな筈はない、無くなった物を参照すればこちらが昨晩…写真を
回収する為に忍び込んだことくらいはすぐに判ることだろう。
それでも、こちらに対して平然と『ありがとう』と告げてくるもう一人の自分の
神経が信じられなかった。
どこまでお人好しなら気が済むのだろうか…。
「ん、んんっ…」
もう一人の自分からのメールを読んで考えて込んでいる間に…助手席で
眠ったままだった片桐がゆっくりと眼を覚ましていく。
「…ふぁ…あれ、もしかして…佐伯君、ですか…?」
「…やっと目覚めたみたいですね。片桐さん」
どうやら、今のメールの着信音をキッカケに長らく意識を失ったままだった
片桐が目覚めたようだった。
うっすらと開かれた眼差しはまたトロンとしていて、夢の世界を漂っているようだ。
「…あの、ここはどこ、ですか…? それに僕はどうしていたんでしょうか…。
何故、こうなっているのか状況が良く掴めないのですが…」
「それは…」
眼鏡にしては珍しく、どう答えようかと言葉に詰まっていった。
直前に起こった出来事を伝えるか否か、とっさに迷ってしまったせいで
暫しの沈黙が降りていく。
(適当に誤魔化すか…? 問題のない範囲でだけ正直に答えておくか…
どちらにすれば良いんだ…?)
こちらが架空の事情を伝えてやり過ごすか否かで考え込んでいる間、
片桐も必死に記憶を探っていた。
「あっ…思い出し、ました…。そういえばさっき…見知らぬ男の人たちに
囲まれてしまって、本当に困ってしまって…後、もう少しで車に押し込められて
浚われる直前に、妙に甘くて不思議な香りがして…意識がスゥーと遠くなった…
其処までは、思い出しました…」
「…………」
片桐が直前の記憶を詳しく思い出してしまった事で彼は言葉を
閉ざすしかなかった。
ここまで思い出されてしまったら付け焼き刃の嘘は通用しなくなる。
だから覚悟して、事情の一部を相手に説明することにした。もう少し考える
時間があるならともかく、口からでまかせを言うくらいなら多少は事情を話した方が
良いと判断していった。
「…片桐さん、すみません。今…俺の方は少し厄介な奴に逆恨みを
されていましてね…。それで、恐らくこちらに睨みを効かせる為に貴方を
拉致しようとしたのでしょう…。面倒な事に巻き込んでしまって申し訳ない…」
「逆恨み…ですか? 佐伯君は一体何をしたんでしょうか…?」
「…俺も詳しい事は知りませんですけどね。去年手がけたビオレードの
パッケージを、御堂部長に提案を持ちかけて俺が材質とデザインを変えるように
提案し、それが通った事が引き金みたいですけどね…。人づてに聞いた話
なのでどこまで信憑性があるのか判りませんですけどね…」
眼鏡の方は、Mr.Rが頼んでもいないのにベラベラと澤村の事を語って
聞かせてくれる為にある程度の所までは把握していた。
そう、澤村がしようとしている事は脅迫であり…決して正当とは
言えない行為だ。
それを阻止する為に、今回だけはこうして自分が現実に現れて色々と
動いた訳である。
「…そう、なんですか…。佐伯君、大変だったんですね…。精一杯仕事を
したのに、それで恨まれてしまうなんて…。パッケージの件は本多君から
以前聞いた事があるんですけど、御堂部長に提案されて全力で取り組んで
必死に考案したから直前で採用されて…其れが通ったと聞きました。
それだけ、君は真剣に仕事をしただけなのに…」
「いや、俺は…」
と言いかけて、それ以上何も言えなくなった。
その採用された一件は自分は関わっていない。
『オレ』が御堂の期待に応えようと努力しただけの話で…こちらがこんな風に
片桐に労られる謂われはない。
なのに片桐は慈愛に満ちた表情を浮かべながら…予想してもいなかった
言葉を向けてくる。
―けど、君がどんな状況になっていようとも…僕も本多君も佐伯君を大切に
想っています。巻き込まれたとしても迷惑だなんて想っていませんから…。
むしろ、そんな人に負けないで欲しいですから気にしなくて大丈夫ですよ…
さっき、自分と澤村との確執に巻き込む形になって…でこの人は複数の男に
囲まれて拉致されそうになった。
それがどれだけこの人は不安に思ったのか、怖かったのか想像すれば
容易に判る筈だ。
なのに…そんな状況に陥ってもこの人はこちらに「気にしなくて良い」と
微笑みながら伝えてくる。
その瞬間、チリリと胸の奥に痛みが走った。
(これが、仲間…か…)
そう、実感した瞬間に認めたくないが…もう一人の自分に強い
嫉妬を覚えてしまった。
小学校時代、自分が孤立した時…誰も味方になどなってくれなかった。
唯一の仲間だと信じていた人間にさえも陰で裏切られていた。
なのにもう一人の自分は…自分が侮って見下している方の人格は
とばっちりを食らう事になっても離れる事のない人間関係を築き上げている。
それを今の片桐の言葉で実感していった。
何と言えば良いのか、判らなくなってしまった。
これ以上、片桐の顔をまともに見ていられなくなり…彼はそっと
ドアを開けて外に出ていく。
「佐伯君…? もしかして、今の言葉…君の気分を害してしまった
のでしょうか…?」
「…関係ありませんよ。ちょっと外の空気を吸いたくなっただけですから…」
そうして、眼鏡は目の前に広がる光景を眼を細めて見遣っていった。
(まったく…あの男は。本当に皮肉に満ちているな…。良くこんな所を
見つけだしたものだ…)
そうして、彼はフェンスの向こうに広がる敷地内を眺めていく。
初めて来た筈なのに、妙に懐かしささえ感じられた。
そう…彼が車を停めているのはとある小学校の裏手の道路だった。
―ここならば貴方が過去と決別するのに絶好のロケーションとなる筈です…
そういってこの車にはナビが設置されていて、片桐を救出した後に真っ直ぐに
ここに向かった訳だが…ここに訪れた時、言葉を失いそうになった。
―ここはあまりに、彼が通っていた小学校に似ていたからだ
建物の外観も、体育館やプールなどの配置も…何もかもが
思い出したくもないあの学校とまったく一緒だった。
確かに小学校なら、児童が帰った後なら身を隠すには絶好の場所になる。
目の前の風景を眺めていきながら…彼は逡巡していった。
(いい加減、過去を吹っ切るべきなんだろうな…)
忌まわしい地に良く似た場所を見つめていきながら…彼は
ごく自然にそう思っていく。
少しずつ、彼が過去と決別する為の舞台が整い始めていることを
感じていきながら…彼は煙草の先に火を灯して、肺の中を紫煙で
満たしていったのだったー
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失いかける。
落ち着かなくなる。
僕は桜が咲くと、こんな不快な思いをし続けるのだろう…)
執務室の中で一人で待機していた。
役職の人間に宛がわれるのに比べれば随分と慎ましいものだ。
力し続けてきたのだ。この部屋こそ…彼がこの会社内でそれなりの功績を
挙げてきたという証でもあった。
社内でも評価が下がりつつある。
いるのかもしれなかった。
しまうんだろう…。僕らは小さい頃からずっといたのに。その他の記憶は
遠く霞んだようになって…いつだって思い出すのは、あの決別の日のことばかりだ…)
叩く仕草をしていった。苛立っている人間特有の癖だ。
向かわせていた。
進めるつもりだった。
出来れば、こちらの勝利は揺るぎないものになる筈だ。
手掛けた仕事は全て失敗か、パっとしない結果に終わっているんだ…。
君が関わっている限り…常にMGNと対抗商品ばかり作っている会社は
さんざんな結果に終わるだろう…。ここで巻き返しをしなければ…
会社での僕の立場も危うくなってしまう…)
部下たちからの連絡を待った。
深呼吸をしていく。
本当に目障りなんだよ…!」
溜息を吐いていった。
MGNと対立している会社にその情報を流すことと…対立している会社に
手を貸して、MGNの現在の地位から引きずり下ろすことだった。
息が掛かった会社に非常に似た商品を先に発売させてMGNの方に
痛手を与える筈だった。 だが澤村が直前に得た情報は、佐伯克哉のせいで
全て無駄になってしまったのだ。
商品が…佐伯克哉が考案したペットボトルでの容器で発売することと
なってしまったのだ。
MGNの新商品を潰すというプランが根本から崩されてしまったのだ。
特に社内でも扱いが非常に軽くなってしまった事を実感していた。
君がいる限り、絶対に僕は上手くいかない…。去年、僕が味わった
苦渋を今度は君が味わう番だよ…!)
与えたその事実を知らないだろう。
気持ちが収まりそうになかった。
自分の前を歩いていた。
努力した時期もあった。
彼は常に自分よりも好成績を叩き出していた。
黒い染みが広がっていった。
誇らしかっのに、ある時期からは…彼の存在が自分の劣等感を酷く
刺激している事に気づいた。
ずっと抑え続けていた。
傍にいることなど出来ないから…
結局、無自覚でこちらの心を痛めつけてくれた相手に対しての静かな
報復を開始していったのだ。
追い抜くか、もしくは相手を貶めて失墜させるか。
深く付き合わないようにしてきた。
しなければ自分の実力はいつまで経っても伸びてくれず…貶めて人に
勝っていても、必ず限界が来ることを。
のではなく…観察して、影で反復練習を繰り返し続けて…『すぐに出来るように
する努力』を欠かさなかった事に彼は気づいていなかったし、
見えてもいなかったのだ。
直視しようとしなかった。
苦しみを訴えていた
幾度も幾度も、澤村の心を抉り続ける。
どうしてあの日の自分は泣いてしまっていたのか、どうしても自分で
理解出来なかった。
部下を持つと苦労する…!」
この場からは動けない。
早く佐伯克哉を打ち負かして、こんなものから解放されたかった。
青ざめるようなものばかりで、特に最後の電話を取った時、彼は怒りのあまりに
蒼白になり…全身を大きく震わせていったのだった―
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押し寄せてきたのは午後6時を回ったぐらいだった。
店の中にいるのは太一一人だけだった。
浮かべて応対していく。
どちらをご希望ですか?」
すっかりと頭が上がらなくなり、今では太一も少しはきっちりした言葉遣いで
客に対応するようになっていた。
彼にとって今は父親がその対象だった。
まったくそちらには面識がない筈なんですけど…」
器具を突きつけられて、太一は面食らっていく。
意識を失わせる為の物だった。
何て事ないんだろうけど、スタンガンを持っている奴等、三人を相手に
一人ではきっついかも…)
逃げる程度の事ならば十分可能だ。
実家のゴタゴタに巻き込まれて何度か修羅場を体験した事すらあった。
一緒に来て貰おうか…」
高揚していたり…得意になって頼んでもいないのにベラベラと解説を
始めたりするものだが、男達の態度は落ち着いたものだった。
あるのが判明していく。
出入り口の方を見遣っていく。
太一は内心、大きく動揺していた。
切り抜けるか…という算段も意識の中に入っていた。
ここで大立ち回りを派手にやる訳にはいかないんだよな…)
ここで働いているからこそ、太一は良く理解していた。
出来そうなのにな…)
逃げ切れそうにない。
口振りではすでに其処にも人が置かれているらしかった。
逃げるのは早計だった。
突破口は掴めると思うけど…)
同じようにこちらの隙を伺っているのだろう。
俺よりもガタイが良さそうな奴らに真っ正面からぶつかって行っても…返り討ちに
遭うだけっだよな…。あ~防犯グッズは奥の部屋のカバンの中だし。
外出している時ならもうちょい警戒して手元に置いておくけど…まさか店の中で
堂々と拉致してくる輩が出るとは思っていなかったもんなぁ…。うちのじいさんの
事を知っている奴等だったら、少なくともロイドにいる時に親父や俺にチョッカイ
掛けてくるような奴はまずいないからな…)
小さな喫茶店のマスターだが、裏社会では痕跡を殆ど残さずに人を殺める、
凄腕の殺し屋として名が知れている人間だった。
掛けるような真似はしないだろう。
五十嵐寅一の孫だって知った上で…俺を拉致しに来た訳?」
見込まれているお気に入りの孫だっていう情報を…根本的に知らない…!)
いう理由で事あるごとに…跡目は太一だと周囲に触れ回っているのは嫌だった。
こいつらに圧力を掛けるのを成功すれば、絶対隙は作れる筈だ…!
ガキの頃から自分の跡継ぎは俺だって言って譲る気ないんだよ…。
あんたらが誰に頼まれて、俺を拉致しようとしているのか知らないけどさぁ…
俺に何かあったとしたら、五十嵐組を始め…関西のヤクザ達が黙っちゃいないよ…。
あんたらにはその覚悟があるのかな…?」
引くとでも思っているのか…?」
すぐに判るよ。人の話を嘘だって決め付ける前にさ…調べれば良いじゃん。
じじぃに太一って名前の男孫がいるかどうかさ…。それを調べれば俺が
本当のことを話しているって絶対に伝わる筈だよ」
引き起こすキッカケにすらなりうるのだ。
間合いを詰めていけば…抜けられる…!)
ジワジワっと間合いを詰めていく。
した青いスーツ姿の青年がいきなり中に飛び込んで来た。
仕掛けてしまった。
太一にとってはまさにKYを絵に描いたような男が乱入してきた事は
邪魔以外の何者でもなかった。
切り替えていった。
限っては太一を助けに来たのか真意を計りかねようとしていた。
きたのに…何もかもが台無しだっつーの。…けど、この人強そうだし…
実力行使でも平気か…?)
体力も人並み以上にある筈だ。
しているからさ…出来るだけ店の内装を壊さないように配慮しながら…宜しく!」
全身から殺気のようなものが発生し始めていたが…太一は敢えてスルーしていった。
返せると確信をしていた。
一対三なら直接相手にするのは無謀でも、体格的に勝っている本多と
一緒ならば…認めるのは癪だが、勝負にキチンとなってくれるのだ。
この男たちを片付けさせてもらおう…!
追い払い…太一はどうしてこのタイミングで本多がこの店にやってきたのか
その事情を聞き出していったのだった―
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声の主が…そう声を掛けて来た。
思い出した名字を、確かめるように呟いていく。
繰り返していた克哉が…恐々とした様子でも自分の名を口にした事で…男は
電話の向こうで愉快そうに喉の奥で笑っていった。
忘れ去られてしまって、僕は本当に寂しかったからねぇ…
クリスタル・トラストの情報調査員は優秀だからね…。克哉君、君についての
情報はかなり詳しい処まで知っているよ…。例えば、君の直属の上司との
親密な関係とかもね…?
与えてしまうだけだ。
言葉を返していった。
ようなものだからね
愚かな社員はMGNにはいませんから」
一年が経過している。
気づかれているが…御堂と克哉のスタンスはもし発覚したとしても
胸を張っていようと決めていた。
男同士であったとしても心が深く繋がれば…共に生きていけるし、
寄り添っていける。
ような真似をした奴に決して踏みにじられたくない。
小さく聞こえていった。
逸れてしまったからそろそろ本題に移ろうか…。ねえ、克哉君…君は
今でも前の会社の人達と親しく付き合っていて…時々飲み会をしたり
懇意にしているみたいじゃないか。特に片桐課長と…大学時代の同級生の
本多憲二…この二人は特に君にとって大切な存在みたいだね…
片桐部長を拉致しに、部下を向かわせていると聞いたら…君は一体どんな
顔をするのかな…?
最悪の形でもって重なっていく。
だって危害を加えたり怪我をさせてしまったら僕達の方に非が出来てしまう…。
丁重に扱っているから無傷だよ。『今の処』はね…
遠回しに伝えて、こちらに脅しを掛けているのと同義語だった。
平然と取るなんて許せない…。それに、迂闊な対応を取れば片桐さんが
どうなるか判らないなんて…!)
なんて考えてもみなかった。
気配を感じていった。
声が聞こえていった。
小学校時代の事をどうこう言えた義理じゃないだろうが…
大きく変わりつつあった。
こちらの親しい人を拉致する。この行動のどこか卑怯じゃないんだよ…」
知っているかい? 今…君たちが新しく開発しようとしている新商品は、
クリスタル・トラストが現在提携している会社が新しく開発している商品と
酷く似通っている部分がある。このままそっちに先に発売されたらうちは
大打撃を喰らうんだ…。それを放置する訳にはいかないだろう…!
出してきた一番の理由のような気がした。
ようやく、繋がった…)
ただ、あのような酷い裏切り行為をした相手が何の理由もなしに
自分の前に現れる訳がない。
取り戻す為に…という理由で現れたとしたなら、相手がその事に関して悔いて、
改心している事が前提となる。
否定されたようなものだ。
接触しようとしたなら、全ての事例が納得いく形で纏まっていく。
まったく澤村の事を知らなかった事だろう。
持っていける訳がない。
こちらを操作しようとしたのだろう。
感じられてしまった。
脅そうと片桐を拉致しようとしている。
している方の携帯が上着のポケットの中で振動していった。
しまった仕事で使用してある方は、多くの取引先が登録してある。
もしくは大事な人間からの連絡であるのと同義語である。
克哉はその場で固まった。
あったが、今までに必要なメールを転送する以外でメールを送受信
した事はない筈だった。
来たと思われる内容が送られて来た。
越えたり、片桐を呼び出す事は容易だろう。
扉を開けてもらったり…ありとあらゆる事が可能となる。
喜びが大きかった。
口火を切る為に…ゆっくりと言葉を語り始めたのだったー
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。
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荒らされてしまったその翌日。
克哉の元に一通の電話が鳴り響いた。
商品開発部の方に直接打ち合わせに行くと一言残して、ついさっき御堂は
部屋の外に出た直後のことだった
嘘になるが…私事で業務に支障を出すのは社会人として失格なので、
勤務中は悩み事は頭の隅に追いやって目の前のことをこなすのに
専念していた。
告げられようとしていた。
電話のベルの音が大きく感じられる。
相手は、本多だった。
どういったご用件でしょうか…?」
通じないからよ。本気で焦ったぞ…。仕方ないかた
繋がらないんだ。その…バッテリーの部分がおかしくなっちゃってさ。まだ
代替え機も用意されていないから…」
思っちまったよ。バッテリーがイカれちまっているなら通じなくても
不思議はないよな…」
携帯を克哉はメインに使用している。
気づいたのだが…克哉のそちらの方の携帯はロッカーから
紛失していたのだ。
だったが…誰かに取られたと言うよりもバッテリー云々で使用不可能
という方が人を心配させないので、御堂に対しても本日…そう言い訳した。
携帯を盗んだのか…それが読めなかった。
お前の携帯から着信があったって言っていたぜ…?」
だがここですぐに事実を明かしてしまうのは早計過ぎる気がした。
電話を掛けたから…間違いじゃないのか?」
会社の方の携帯から掛かって来た電話を取って…それで出掛けていったんだ。
たまたま、着信している時に番号は俺…傍に立っていたから見ていたんだ。
それは間違いないからな…」
知っていたことになる。
疑惑を深めてしまうだけだろう。
重い空気が流れていくのを感じていった。
置いておくことにする。それより本題にそろそろ行かせて貰うぜ…。
お前、片桐さんの行方を知らないか…?」
電話を取ってすぐに俺達に出掛けると告げていってから…オフィスを出てな。
それから行方不明なんだよ。連絡しても一向に出る様子もないし…就業時間を
迎えたのに戻って来てもいない。あの律儀な人が連絡もなしに…直帰する
訳ないし、他の人に片桐さんの家の方にも向かって確認してもらったけど…
自宅にもまだ帰ってないんだとよ…」
元同僚という位置づけでしかない。
大切な存在であることは間違いなかった。
たまに相談に乗って貰っている存在だった。
言葉を失いかけて、顔が青ざめ始めていった。
お前が関わっているんじゃないかって一瞬疑っちまった。けど…お前も
本当に驚いていたみたいだからな。そんな事…ある訳ないよな…」
しまっていて。それで…本多に心配掛けたくなかったからとっさに嘘を
ついてしまっただけなんだ…。だからその件に関してはオレも、知らない…」
ちょっと疑心暗鬼になっちまっていた…御免な」
嘘ついたわけじゃないって事は判ったから…。けど、片桐さんの足取りが
判らなくて…八課の全員が心配しているし…不安に思っている。もし手がかり
らしきものでも掴んだらすぐにこちらに連絡して貰えるか?」
ジっとして黙って待っていたって事態は好転しねぇだろうしな…。それじゃ
克哉、そろそろ切るぜ?」
混乱しかけていた。
良いのか迷い始めていった。
事実を再びその電話口の相手から突きつけられることになったのだった―
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
RのED後から一年後の春…という設定の話なので
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其処から出た時…隣のエレベーターに乗り込んだ人物の後ろ姿を見て、
驚愕を隠せなかった。
彼までがこうして現れるだなんて予想してもいなかったからだ。
少し驚いただけです…」
いるのを察して、それ以上の詮索はしてこなかった。
ないよな…。もしかしたら今、オレたちと入れ違いに隣のエレベーターに
乗り込んだ人物が…もう一人の』俺』かも知れないなんて…)
抱かれた経験すらあるなど、決して口に出して言える事ではない。
なかったのだ。
目に見えていた。
恐らく信じられないだろう。
非現実すぎる体験なのだ。
腑に落ちない気がして克哉は首を傾げていった。
思えなかったからだ。
その理由が…)
あの男性が目の前に現れた二週間前から崩れてしまったという事だ。
苦しそうな顔を浮かべていく。
なってしまう。
手助けしたいと思うだろう。
掛けてはいけない…)
部屋へと辿り着いていった。
二人は愕然とした。
目の当たりにした。
生活している時でも整理整頓に出来るだけ気を配って整えている筈の
室内が、まるで空き巣か何かに入られたかのように荒らされていたからだ。
工夫されている。
しか持っていない筈だ…! 何故、こんな事が起こりうる…?」
例えばピッキングなどで強引に開錠した場合は盛大にアラームが
鳴り響いて強盗など出来る状態ではなくなる。
一緒に入るか…もしくは住人になりすまして入り口を越えるのと、
カードキーを何らかの手段で手に入れなければならない。
カードキーを探っていった。
鍵が入っていた。
無くさないように意識している。
初めて御堂から貰った…強い想いが込められた品だったからだ。
くれた事が嬉しくて…だから克哉はこれだけは絶対に無くさないように
気をつけ続けた。
思い出の品でもあります…。これを無くすような事はしていません…」
キーを取り出して見せていく。
やってしまったのなら、黙ってそのままにしておくような愚かしい真似を
する筈がないからな…」
盗み出された場合は早急に対処しなければならないからな。私は
書斎を見てくる。君は寝室の方を確認して来てくれ…」
向かっていった。
掛けて入念に調べていった。
ないか確認していった。
お金に繋がりそうなものは何一つ、家の中から無くなっていなかったのだ。
二人は今度は金品以外の物でなくなった物がないかを確認する事にした。
あの男性の、小学校時代の写真だった
潜ませていた物だが…其れが全て無くなっていた。
入れ違いで乗り込んでいたのか…全ての符号が克哉の中に一致していく。
回してしまったみたいだな…
悪いものではない。
救われて、立ち上がる気力を得られる時だってあるのだから。
踏み込んだり、知ろうとする事は…される側にとっては暴力に等しい。
少年時代の眼鏡が願った事で生まれた心だ。
知られたくないと頑なになっている事実を目の当たりにして…克哉は
歯噛みしたくなった。
何でそこまでお前は、一人で傷を抱えようとしているんだよ…バカ…!」
悟ってしまったとき…泣きたくなった。
気づくと、これ以上愛しい人を心配かけまいと…どうにか笑顔を浮かべて
『はい』と小さく返答していったのだったー
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克哉は御堂と一緒に桜を見に行くことでやっと思い出す事が出来た。
知る事が出来た今なら理解出来る気がした。
そのまま帰ることにしたのだが、その途中…運転に集中している御堂と…
助手席の克哉の間には殆ど会話がないままだった。
人間が多いのだろう。
時間が掛かってしまっていた。
名前までははっきりと思い出せないが-二週間前に澤村紀次と出会ってから、
その間に起こった出来事を回想し、そしてそれも終わろうとしていた。
桜が咲くまでのこの二週間は殆ど…自分探しに費やされたような気がした。
事に着いてはスタート地点に立つ事が出来た来がする…)
寂しくもあり…もうじき自分たちの家に戻れるという安堵感もあった。
そんな気がした。
気持ちの整理がついたのか?」
そういうのは纏められたと思います……」
模索する事も必要だがな。答えも何も出さずに無為に悩んでいることは
褒められた事ではない。少しでも思い出せたなら良かった…」
貴方が隣にいてくれただけでも…凄く心強かったですから…」
なって二年近くが経過するが、きっと直接口に出して言ったら…この人は
凄く照れてしまうだろうから。
見たくなってしまいました」
置いたらすぐに自宅に戻る」
マンションの入り口前の所に降ろして駐車場へと向かっていった。
払うことも、ローンを組む事も不可能な場所だった。
感慨深く感じられてしまった。
マイホームは、あちらの生家ではなく愛しい人と暮らすこの部屋
へとなりつつある。
御堂の事を思い出すだけで…胸がボウっと暖かくなる。
立ちながら、しっかりと噛み締めていった。
周囲の人間との絆…今の克哉には失いたくないものが沢山ある。
自分の足場が不確かに感じられて、存在している事が許せなくて…。その
想いがきっと、『あの人の事を覚えていない』人格を…『オレ』を生み出す
キッカケだったという事か…」
ショッキングな事だった。
克哉にとっては自分の生まれた理由を、ルーツを探すことに繋がっていた。
佐伯克哉さん…。そう、あの出来事こそが貴方の生まれた根元にも関わり、
そして…あの方と私が出会った全ての始まりでもあります…
いつの間にか立っていた。
形容するに相応しかった。
自らの手で禁断の扉を開いてしまわれた。その事により、どのような結果が
起こるか…私は静かに見届けさせてもらいますよ。ねえ…佐伯克哉さん…?
走っていくのを実感していった。
起こった事を自分が知るという事は、大きな波紋を呼ぶ行為であった事を…
今更ながらに克哉は察していった。
今のオレ二は守りたいもの、そして失いたくないものが沢山あるから…)
それから、キクチ・マーケティング時代の同僚たちや、今の職場の仲間達、
そして本多や太一、片桐のように自分の事に耳を傾けてくれる友人達…
彼らの顔が次々に浮かんでいき、克哉は決意を固めていく。
方だったのに。あの方が眠っている間…その肉体を守る為の仮初の仮面に、
まさかここまで強固な意志が宿ってしまうなど…あの時は考えても
いなかったですね…
最初の佐伯克哉は、眼鏡を掛けて現れる方の人格だと知ってしまった。
生きているのだという事実を知ってしまった。
もう戻れない。今…手にしているものを手放したくない…)
あるのに、感傷に負けて手放すのは身勝手だと思った。
事が何度かあった。
いても、間違っても彼にこの身体を返すとは言えなかった。
思い知りました。けど、オレだってこの15年間を…特にこの三年ぐらいは
精一杯生きて来ました。だからオレは今更、あいつに人生を返せない。
それが…オレの答えです…!」
頂きましょう…。桜によって狂わされたのは貴方だけではない。貴方と
因縁のある人もまた、この時期は心を乱されて…半ば正気を失って
いるのかも知れませんね…
まるで幻のように一瞬で消え去っていく。
これには流石に驚いた。
もうすでに部屋の中に入っていると思ったんだがな…」
では、そろそろ戻ろうか…?」
マンションの中に入っていく。
克哉はしみじみと思った。
克哉のそばに確実に接近しつつあったのだった―
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銀縁眼鏡の力で持って閉じこめられていた方の克哉の意識は
再び主導権を取り戻した。
(早く行動しないと、火が大きくなって大変な事になってしまう…!)
この家は今は住んでいなくても、克哉の実家である事は変わりない。
こんな事で失ってしまうのは絶対に御免だった。
遠ざけていって、全速力で風呂場へと向かっていく。
水を一杯にしていく。
盛大に水を掛けていった。
あまりなかったのが幸いしていた。
もしかしたら天井にまで火が届いて個人では手に負えない状態に
なっている可能性があったがフローリングは着火するまで
若干の猶予時間がある。
対応したおかげで若干、焦げ痕がついたぐらいの被害で止まってくれた。
自分の膝が少し笑っている事に気づいていく。
一人の自分が呆然と見守っているだけで何もしないだなんて思いも
よらなかった分だけ、克哉も衝撃を隠し切れなかった。
大変な事になっていたかも知れないのに…そんなの、全然
あいつらしくないのに…」
さっきの彼は何もせずに見ているだけだった。
オシャレ眼鏡を掛けた男性と良く似た子供が一緒に写っていた。
撮影されたと思われる物が沢山、アルバムに収められている。
語り合った時から、十中八九間違いないとは確信していた。
ワガママを言って一日休みを貰い…故郷の土を久しぶりに踏んだ訳だが、
通っていた小学校でMr.Rと遭遇して警告を受けた事。
ワンセットであの男性と写っている。
四十人近くにまで達する事がある。
経てば名前を覚えていない人間が出てきてもおかしくはない。
克哉は胸がズキンと痛むようだった。
あいつにとってここまで大事な人間であったのなら、オレが知らないなんて、
おかしくないか…?」
人格、そしてMr.Rのあの警告の言葉…それぞれが頭の中で組み合わさって
真実が全体の輪郭をもって浮かび上がっていく。
二重人格になったのか、その原因となった出来事が…どうしても
思い出せない…)
ものが、まだ欠けているのに克哉は気づいていった。
鍵を得ようと必死になっていく。
得られるものはなかった。
待つしかないのかな…」
収まってくれない。
完成させる糸口を掴む肝心の部分が抜けているような、そんな感じだった。
理解出来るようになるだろう。
磨いてどうにか誤魔化せる程度にまで汚れを落とし、ワックスを掛けて
換気扇も念の為、回して喚起も行っておいた。
いったが、実質の被害は写真一枚程度なので他の家族も気づいず終いだった。
考えながら、今の彼にとっての帰るべき家へと戻っていった。
御堂と共に中央公園に一緒に見に行き…その時に克哉は追い求めていた
最後の記憶のピースを手に入れ、あの男性ともう一人の自分との決別の日
の記憶を手に入れていったのだった―
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S | M | T | W | T | F | S |
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。