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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 諸事情により、若干間が空いてしまって申し訳ございません(ペコリ)

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                            10
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 ―自分の馬鹿さ加減に、ほとほと呆れたくなってしまった

 血の気のない様子で…ベッドの上に横たわる御堂を眺めながら…
克哉は心底、己の愚かさを呪った。
 あの怪しい店内の奥に、こんな部屋があったことなど…今まで知らなかった。
 いや…Mr.Rが運営しているこの場所に、克哉が足を踏み入れた事自体が
初めてだった訳だが。
 何が何だか、訳が判らない。
 Mr.Rの言っていた「代価」を支払う為だけにこの場に来たというのに…
目まぐるしく、予想外の事ばかり起こって…まともについていけてなかった。
 もう一人の自分は、ガサゴソと部屋の奥に設置されている衣装箱の中を
探っているので…ベッドの傍には、自分しかいない。

(……何もかもなかった事にしてしまおうなんて考えたことが、そもそものの
間違いだったのかもな……)

 意識を失って、眠り続けている御堂の顔を見つめながら…ふとそんな
考えに陥っていく。
 もう一人の自分の犠牲となったこの人を助けたいだけだった。
 その一心で、あの謎の男の手を取ってしまった。
 なのに…平穏な日常にこの人を戻したいと願う心とは裏腹に、事態は
徐々に思ってもみなかった方に…それも悪い方ばかりに進んでいるような
気持になった。

(あの夜…『俺』の内側から…異常な笑い方をしている貴方の姿を見て…
憎むよりも怒りを覚えるよりも…貴方を救いたいなど、そんな事を考えたオレは
おかしいかも知れませんね…)

 無意識の内に、御堂の頬に触れていた。
 …もし、あのままもう一人の自分に乱入されなかったらどうなっていたのだろう?
 どうして舞台袖に御堂がた立っていたのかその理由は未だに判らない。
 けれどもし…御堂に、さっきのRのように自分に触れたりしていたら…とそんな
考えが過ぎってしまった瞬間、顔を真っ赤に染めていく。

「な、何を考えているんだよ…オレってば…」

 何でそんな事を考えてしまったのか、自分でも訳が判らない。
 御堂の顔を見ていられなくなって…思わず俯いて目を逸らしていく。
 
―ドクドクドクドク…

 自分の心臓の鼓動が忙しく動き続けているのが判る。
 次の瞬間…ベッドの上の御堂が、うなされ始めていく。

「うっ…ぁ…くっ…」

「御堂さんっ?」

 突然、御堂の容態が急変した事に動揺を隠せなくなった。
 反射的にこの人の傍に身体を近づけていく。
 途端に、強く顔を叩かれていった。痛みで一瞬…怯みかけるが
それでも夢中で、克哉の方から御堂の身体を抱きしめていった。

「御堂さん、落ち着いて下さい…! ここに、貴方に危害を加えるものは
何一つ…存在していません、から…!」

「はっ……あぁ……! 来るなぁ! 私に、触るなぁー!」

 だが、克哉が必死になってベッド上の御堂を抱きしめても…相手の
抵抗は止まる気配を見せなかった。
 こちらに対しての激しい拒絶を見せられて、胸が苦しくなっていく。
 確かにもう一人の自分は、この人に酷いことをした。
 別人格とは言えど、どんな形でも…それは「佐伯克哉」という人間が
犯してしまった罪だ。

―なのにどうして、自分の胸はこんなにもこの人に拒絶されて…
苦しくなってしまっているのだろう…!

「御堂さん! 大丈夫です! 大丈夫ですから…!」

 懸命にこの人に追いすがっていくと…ふいに、カッと御堂の方から深く
口づけられていく。
 凶暴な…奪い尽すような、自分の方が遥かに上の立場だとこちらに
思い知らせていくような…激しいキスだった。
 相手の中に渦巻く憤りも憎悪も何もかも、こちらに叩きつけて来ているようだ。

「はっ…! うぅ…!」

 まともに呼吸出来なくて、酸欠になりそうだった。
 苦しくて苦しくて…そのまま窒息死しそうなぐらいに乱暴な接吻。
 息次ぎをする為に、全力で逃れていく寸前…克哉は確かに見た。
 相手の目の奥に宿る、激しいまでの憎悪の瞳を…その瞳に射竦められて
いきながら、言葉を失っていく。

(貴方は…其処まで、オレを…そしてあいつを、憎んでいるんですね…)

 そして…相手の指がこちらの腕に痕がつくぐらいに強く食い込んでいくのと
同時に…糸が切れたみたいに、御堂の身体が崩れ落ちていく。

「御堂、さん…? 御堂さん、起きて下さい!」

 とっさに心配して、相手の身体を揺さぶっていく。
 その瞬間、少し離れた位置からいつの間にか自分たちを見つめていた
もう一人の自分が声を張り上げていく。

「…余計な事をするな! お前が何を言おうと…今の御堂には届かない!」

「『俺』…っ」

「…恐らく、せめぎ合っている。もう…御堂の身体は一つしかないから。
こちら側の世界に属している、この肉体しか存在しないから…二つの世界の御堂が
主導権を争って…衝突しあっているんだろう…」

「…何で、その事を…?」

 彼はついさっきまで意識を失って眠り続けていた筈だ。
 Mr.Rと自分の取引を、彼が知っている筈がない。

「…答えは単純だ。お前が…俺がいつ目覚めても良いという名目の元、
『この世界の佐伯克哉』の肉体に宿り、向こうの世界の俺の身体に『俺』の
心を移された時に…同じ現象が起こったからだ…。
 そのせいで、俺は…死にかけの『俺』と争う羽目になった。…今の御堂と
同じようにな…」

「な、んで…そんな事が…? オレにはそんな現象、起こらなかったのに…。
不思議なぐらい、オレの方は…こちらの世界のオレとは馴染んで…何の
問題も起らなかったのに…」

「…あぁ、お前に関しては…何の問題も起らなかったんだろう。
何せお前はどちらの世界でも「傍観者」であり…心に「死」という強烈な
傷跡を刻まれることはなかった。…御堂の事より、まずは答えろ…。
お前は一体、あの男に何を頼んだんだ…?」

「全て、知っているんじゃ…ない、のか…?」

 彼の口ぶりでは、自分が望んだことまですでに悟っているように
思えただけに…今の言葉は意外だった。

「…俺は薄々と、感じているだけだ。お前とは…すでに完全に今の俺は
切り離されてしまっている。だからお前が何を望み、あの男に頼んだかまでは
知らない。俺が辛うじて知っているのは…お前が御堂を救う為に、あの男に
最後の瞬間に縋って「何か」を頼んでいったことだけだ…!」

 そうして、もう一人の自分に黒いコートの襟元を強く握られていく。
 相手の目には…逃げることや、誤魔化しは許せないという強い感情が
宿っているのを感じていった。
 そう、全ては自分が望んだことがキッカケで起こっている。
 寸前まで、同じ道筋を辿っていた世界。
 それが…二つに枝別れをしてしまった原因は…。
 自分の中には、全ての答えが存在している。
 「この世界」の自分の方が何を最後に目撃したか、克哉は覚えているから。
 その上で…せめて、命を失わないで済んだ向こうの世界の御堂が…
咎人として追われることなく、平穏な暮らしを変わりなく続けていけるそんな世界を
紡ごうとしたのは、紛れもなく自分だから…。

「…判った、話すよ…。結局…オレが望んだことが…儚い砂上の楼閣のような…
脆い願いだったと…理解出来たから…」

「あぁ…そうして貰う」

 そうして、もう一人の自分が襟元を離して食い入るように見据えてくる。
 恐らく、視点を変えれば入り組んでいて複雑に見える話も…たった一つ、
何を目的にしたのかさえ判れば、実にシンプルな解答だけが残る。
 きっと…相手が知りたいのは、その要となった事だ。
 それを察して…自分の知っている情報と、「こちらの世界」の自分が
持っている情報を意識を集中して、纏めていく。
 頭の中に、色んな情景が浮かぶ。
 二つの悲劇と結末。
 それを覆したくて自分なりに足掻き続けた。

―けれど、罪をなかった事にすることなど…ただの人の身には
そもそも傲慢な願いだったのだ

 それが叶うと思って、願ってしまった。
 事件が起こるまで何もしようとせず、起こってしまったら都合良く
悪魔の誘いに乗って運命を捻じ曲げようとした事。
 きっと…それが、自分の罪だったのだ。
 やっと、怒りに燃えたもう一人の自分の目を見て…己の鏡を改めて
見つめて思い至る。

(嗚呼…どれだけ違っても、存在を否定したって…お前はやはり…オレ自身でも
あるんだな…)

 だからようやく、咎人の一人は…己の愚かさを思い知って…半身と
対峙していく。

「…話すよ、お前に…全てを…」

 そうして、暫くの沈黙の後に勇気を振り絞ってそう告げていく。
 …その瞬間、眼鏡の瞳は…静かな怒りを湛えながら…克哉の次の
告白を待っていったのだった―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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