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※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
それらを了承の上でお読み下さいませ。
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―自分と御堂の間にある壁の全てを壊したかった
御堂を助ける為なら、何も怖くなかった。
例えもう一人の自分でさえもあの人に勝手に触れる事
なんて許せなかった。
だから克哉は、それぞれの部屋の間にあったマジックミラーに盛大に
角に飾ってあった鎧の肩を抱くようか格好になり、己の全体中を掛けて、
遠心力の勢いをつけてぶつけていく。
腕力だけでは動かせない物でも、自重と勢いを持ってすれば
それぐらいは可能になる。
ピシィ!
そしてマジックミラーに大きなヒビ割れが出来れば、克哉は甲冑が
持っていた大剣を手にとっていく。
バスタードソードと呼ばれる形状の物を両手で持って構えて、そのヒビ割れに
向かって勢い良く叩きつけるようにして腕を振りおろしていった。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
克哉の気合いの声が部屋中に木霊した。
同じ部屋にいた本多の方は克哉の様子に毒気を抜かれ、太一の方は
もう一つの甲冑の手にあった槍を持ち…克哉がマジックミラーを破壊
するのを手伝っていく。
「克哉さん!」
「うん、ありがとう…太一!」
「お礼なんていいって! 俺は今…猛烈にそうしたいんだからさ!」
「うんっ!」
つかの間、眼鏡を掛けた方の克哉の支配が解けて…自分が親しくなった方の
彼に対して助力していく。
これは太一を調教してからあまりに日が浅すぎることが原因で起こった事だった。
太一がここに招かれて、支配を受けてから一週間程度しか経っていない事と…
強烈な家で育ってきた事により…太一は元々強い自我を持っていた。
一ヶ月以上も眼鏡を掛けた方の克哉に支配されていた本多の方は克哉の涙を
みても手を止める程度で、愛しい主の事を容易に裏切って手を貸すことは出来ない。
もし眼鏡を掛けた方の克哉にこのゲームの勝利を脅かしてしまう要素があったと
したら、最後のターゲットである御堂に手を出す前に…もう少し太一の心を完全に
支配する為の時間をそれなりに掛けるべきだったのだ。
―この事態を招いた最大の要因は眼鏡の『慢心』だった
彼はこのゲーム、自分が勝利する事を疑わなかった。
だから事態をひっくり返す程の要因を見落としてしまった。
五十嵐太一という存在を。
本来なら眼鏡を掛けた克哉とは結ばれる未来がない人間への支配をあまりに
短い期間で切り上げて、次のターゲットである秋紀に手を伸ばしてしまった事。
ここに連れて来た一週間という期間中に、太一に重点的に時間と情熱を
注いだのが最初のたった三日程度しかなかった為に…決死の想いを抱く
克哉に予定調和を破壊されていく。
完全に太一の中にある、克哉への潜在的な気持ちを消すには…そんな短い
期間では足りなかったのだ。
眼鏡がその事に気づいた時点ではすでに遅かった。
鏡の向こうにいた眼鏡と御堂は、二人の苛烈な勢いに押されて言葉を失い…
その様子を呆然と眺めている。
パリィィィィン!
そして彼らを隔てていた壁は、克哉と太一の手によって打ち砕かれていく。
その瞬間に細かい鏡の破片が周囲に舞い散っていった。
僅かな光を持ってキラキラと輝き、同時に側にいた二人の肌に細かい傷を
幾つか刻んでいく。
だが御堂を助けたいという気持ちが勝っている克哉はそれぐらいのことでは
怯む気配を見せなかった。
克哉をともかく助けたいという想いに駆られた太一もまた同様だった。
盛大な音を立てて、障壁だったものは壊されて一人ぐらいなら身体を屈ませれば
通れる態度の大きさの穴が穿たれていった。
「何故、こんな事になる…?」
眼鏡は正直、もう一人の自分の剣幕に押されていた。
死ぬ物狂いの様子に、本来なら自分の領域に御堂ともう一人の自分を招いて…
こちら側が優位に立っていた筈なのにそれを覆されてしまった気分になった。
御堂もまた、毒気を抜かれたような表情で隣の部屋の様子を眺めていた。
「御堂さん! 大丈夫ですか!」
克哉が慌てて駆けつけて…そして眼鏡から、相手を庇うように立ち塞がる。
両手にはバスタードソードをしっかりと握り締めながら、愛する人を我が身を盾に
して庇うその姿は…まるで古代のコロッセウムで戦う闘士さながらであった。
だが、その瞬間…また更に非現実な出来事が目の前で起こっていく。
サァァァァ…
まるで砂が流れ落ちるような音を立てながら…克哉と太一が鏡を破壊する為に
使用した大剣と槍が砕けていく。
そして砂のようにサラサラと音を立てて…瞬く間に消えていった。
この展開には克哉も言葉を失っていく。
―ここは我が王が支配する場所。この方を目の前にして…そのような物騒な物を
突きつけるような無作法な真似は私が許しません…。そのような物を使わず、我が身と
己の叡智だけでこの状況と向き合って下さい…
「くっ…!」
そして再び、室内に姿こそ見えないが…鮮明にRの声が響き渡っていく。
同時に…もう一つの大きな変化が起こっていく。
「はうっ…」
「うぉ…」
「わっ…」
「くっ…克哉、さん…!」
その場にいた…本多、片桐、秋紀…そして克哉に協力してくれた太一の四人が
一斉にまるで糸が切れたかのように…呻き声を漏らして、その場に崩れ落ちていく。
「っ…!」
残された二人の克哉と、そして御堂の三人はその光景に言葉を失っていく。
予想もしていなかった展開が続いて、誰もが言葉を失っていくと…また、この場所を
仕切るかのようにRの声だけが木霊していく。
―さあ、二人の佐伯克哉さんのゲームの方も佳境に入られたようですね…!
これが最終ステージです。今から…それぞれが全力を持って、御堂孝典さんの心を
捉えて…己の存在をこの人の中に刻み付けて下さい…。そして、その心を完全に
手に入れられた方が…このゲームの勝者となります!
「なっ…!」
先程、眼鏡の口から言われた時は全力で嘘だと突っぱねたゲームという単語が
再び繰り返されていく。
御堂の中に猛烈な不快感が湧き上がり…訴えかけるように克哉を見つめていく。
(嘘だと言ってくれ…佐伯君!)
そう…半ば祈るような気持ちで。
だが克哉は振り返った瞬間、心から申し訳なさそうな顔を浮かべていた。
「…すみません、御堂さん…。オレが…もう一人の俺と貴方を奪い合うゲームを
していたのは事実です…。けど、このゲームの磐上にまず上がらなければ…
オレは貴方と一緒に過ごす時間を持つチャンスすらなかったから…」
「そ、んな…」
克哉と過ごした十一日間が、ゲームに過ぎなかったと言われたようで御堂は
打ちのめされていった。
ショックのあまり、まともに頭が働いてくれない。
聞きたいことはいっぱいあるのに口と舌が上手く回ってくれない。
そうして御堂が口を閉ざしている間に…もう一人の克哉が動き始めていく。
「…お前たちの会話は終わったようだな。そう…これは俺の最後の獲物である御堂、
お前をこいつと取り合うゲームだ。すでにこれは最終ステージといって差し支えない。
まずは俺がどれだけコイツよりも優れて魅力的かというのを身を持ってお前に
教え込んでやる。其処を退け…オレ!」
「嫌だ! お前には指一本だって御堂さんを触れさせない! オレが絶対に守る!」
克哉の顔に、絶対的な意志が宿っていく。
誰にも御堂を傷つけさせない、目の前の傲慢なもう一人の自分にだけは
決して好きにさせないという強固な意志がその表情から感じられた。
その姿に確かに…真摯な想いを御堂は感じていく。
(…そうだ、君の想いだけは…決して、嘘じゃない…!)
十一日間、どれだけ彼がこちらを想っていたか…御堂はずっと見てきた。
いつの間にか、こちらもその気持ちに応えたいと思い始めた。
だからこそ…ついさっき、彼を抱こうとしたのではないか…。
御堂は己のその気持ちに気づいて、水を浴びせられたような心境になった。
「ほほう…本来お前がいた場所では『俺』に負けて…亡霊に過ぎなかった
お前に何が出来るというんだ? お前は所詮負け犬に過ぎず…御堂の
心を完全に手に入れるには役不足というものだ。お前ごときが俺に勝てると
本当に思っているのか…!」
「嗚呼…当然だ! お前には絶対に負けない! この人を…一途に見ることもせずに
奴隷の一人に加えようとしか思っていないお前なんかには絶対に渡すもんか!
オレが、亡霊に成り下がったのは…本来いた世界の『俺』が心から御堂さんを
愛してその為に努力を続け、己を磨く努力を怠らず…そして自分が犯した罪も
心から悔い改めていたからだ。そういう…『俺』だからこそ、オレは亡霊で
ある立場を享受した…! だから、だから…!」
双方の克哉の口から、御堂にとっては理解不能な会話が立て続けに
飛び出していく。
其れを理解するよりも早く、ともかく展開だけが流れていく。
もう事態を把握していない御堂に配慮したり、事実を隠す余裕などない。
全力で眼鏡と向き合い、決して負けないようにする為で精一杯だ。
そして克哉は己の魂から、叫んでいった。
―この人を唯一の愛しい存在と見ないお前なんかには絶対に
オレは負けない! この人は…オレにとって世界で一番、大切な…
愛しい人だから!
そして御堂は…克哉からの体当たりの赤裸々な告白を聞いていく。
だがその次の瞬間、眼鏡を掛けた佐伯克哉の目が…ゾっとするぐらいに
恐ろしく、冷たいものに変わっていくのを…御堂は、克哉の背中を
通して確かに見たのだった―
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。