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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

   GHOST                             10    11    12    13     14    15
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―そして御堂と克哉が結ばれてから三ヶ月はあっという間に過ぎていった

 そして現在の彼はMGNに再び在籍して、まだ日が浅いながら周囲の
人間に早くも御堂の右腕として信任されるようになっていた。
 御堂は克哉が姿を消していた一ヶ月間は、古くからの友人である四条を
抱き込んで突然の事故に巻き込まれた事により出勤できなくなっていたという
形にしておいてくれた。
 不慮の事故に巻き込まれたことによる休職ならば、一ヶ月姿が見えなくても
風当たりはそんなに強くはない。
 その事実を知った時、御堂は自分が帰ってくるのを心から信じて待ってくれて
いたことを実感し、泣きそうなぐらいに嬉しかった。
 ただし御堂はそのような犯罪スレスレの無茶な行為を友人に強要した代償に
半端じゃなく高いワインを何本か四条に進呈することになってしまった訳だが。
 その為にMGNへの復帰は容易で、帰宅した日から二週間ほど経過した日から
再び職場復帰する事が出来た。
 名実ともに公私共に御堂のパートナーとなってからの日々は充実していて、
まるで夢か何かのように瞬く間に過ぎていった。
 
(あの人と結ばれた日から今日で三ヶ月か…)

 ふと、ある日の帰り道に克哉はしみじみとその幸福を実感していった。
 かつて元いた世界では誰にも存在を認識されず、ただ静かに
消えゆく存在だった
頃の面影はすでに彼にはない。
 御堂に愛され、職場でもすでに必要な人材と認められている彼は…現在は
自信に満ち溢れた顔をするようになった。
 今日は午後から取引先の会社に出向して克哉一人で担当に当たっていた為に
久しぶりに徒歩で帰路についていた。
 最寄り駅から歩き、御堂のマンションに向かう道筋は大半が住宅街であるせいか
夜は静まり返っている。
 落ち着いた街灯と微かな生活音ぐらいしか存在しない夜道を克哉は早足で進んでいた。

(思ったよりも遅くなってしまったな…。きっと今日は孝典さんが夕飯の準備を
してくれているだろうから早く帰らないと…)

 今日の出先は都内の外れに位置するので、御堂はこちらを気遣って本日の
夕飯当番はこちらがやると申し出てくれて、克哉も素直にそれに頷いていた。
 だがせっかく大切な人が作ってくれたというのならば出来るだけ暖かい内に
一緒に食べたい。
 その想いが克哉の足を早めていき、少しでも近道をしようと大きな公園の敷地を
抜けて出ようとしていった。
 其処はかつて克哉がMGNの営業担当をしていてもう一人の自分について
悩んでいた頃、何度か立ち寄ったことのある場所だった。
 この公園だけはまるであの時から時間が止まってしまったかのように…
佇まいを変えていなかった。

「ここ、変わっていないな…」

 そしてMr.Rに出会ったベンチの前を通りかかると、つい懐かしくなって
足を止めていった。
 もうあの銀縁眼鏡を受け取った日からどれぐらいの月日が流れたのか正確に
計る事は不可能になっていた。
 そう…本来いた世界ではプロトファイバーの営業を担当した時から克哉が
こっちの世界に移動するまで二年半程度経過しているが…今、身を置いている
世界は来た当初は営業担当してから大体三ヶ月程度が過ぎていて、それから
四ヶ月ちょっとが経過しているので…あの眼鏡を受け取った日から十ヶ月あまりが
過ぎている事になる。
 二つの世界で過ごした時間を考慮すれば克哉にとっては三ヶ月程度、だが実際に
この世界では十ヶ月あまりが経過している事を考えるとつい頭がこんがらがって
しまいそうだ。

「あれから、オレにとっては三年以上過ぎた訳か…」

 そうしてつい遠い目を浮かべた途端に、辺りの木々が激しくざわめき始めていく。

(…ここで、あの人と出会ってあの眼鏡を渡されたことが全ての発端なんだよな…。
その事で本気で苦しんだり、悩んだこともあった。けど…其れがなかったら、
今のオレの存在も幸せも何もかもを否定する事になる…)

 克哉がそう考えた瞬間、急に強い風が吹き抜けて周囲の木々を
ざわめかせていった。
 一瞬にして不穏な気配が辺りに漂い始めていく。
 ゾワっと悪寒めいたものを感じ、周囲の気配が一瞬にして濃密なものへ

と変わり始めていく。
 この気配には何度か覚えがあった。
 その事を自覚した途端、そっと背後から声を掛けられていく。

ーこんばんは、お元気に過ごされているようで何よりです…佐伯克哉さん

 そして歌うように言葉を紡ぐ、黒衣の男がゆっくりと藍色の闇の中から
浮かび上がっていく。
 さっきまでそこには確かに人などいなかった筈なのに…瞬く間に姿を現し、
悠然とした笑みを浮かべていた。
 そのことに軽く驚きもしたが、だがすぐに気を取り直して対峙していく。
 何となくここに来た以上、この男性と顔を合わせる事は必然のようにすら
感じられたから…

「えぇ久しぶりですね。三ヶ月前に貴方の店から解放されて以来ですから…」

「はい、それ以後…貴方は実に充実した日々を送られているようですね。
御堂様との生活はどうでしょうか?」

「とても幸せですよ。色々なことがああったけれど…今となってはあのゲームの話を
持ちかけてくれた貴方に心から感謝したいです。そのゲーム盤の上に乗る事が
なければ、こうして御堂さんと一緒に暮らす未来もなかったでしょうから…」

 克哉はあくまでもにこやかに微笑みながら相手と応対していく。
 その様子に少しだけ溜息を付いていきながら、Rは返答していった。

「…やれやれ、貴方はあのゲームを経てとても強くなられたみたいですね…。
本来ならば我が王に充実に従う者を手に入れる狩りの過程を楽しんで貰うために
やった事が、貴方の幸福に結びついて…あの方を打ちのめす結果に終わるとは
予想もしておりませんでした…」

「はい、オレも当初はとても勝てるとは思いませんでした。だってゲームマスターで
ある貴方は完全にもう一人の俺寄りに傾いていましたから。だからオレには油断する
余裕なんて一欠片もなかった。…今、思い返すとオレはがむしゃらにならざるを
得なかったから…だから奢りによって生じる隙をついて勝つことが出来た
のだと思います…」

「…ご謙遜を。私があの時に出したどちらか一人しか抜け出せないように仕向けた時…
本来なら貴方たち二人を足止めして攪乱させる為に用意したルールの穴を即座に
見つけだして…貴方は結果的に御堂様の心を得ることに成功させた。その判断力と
冷静さは素直に賞賛するに値することですよ…」

 そう告げながら、Rはいつものように心中を察するのが困難になる妖しげな
微笑みを浮かべていく。
 この世界に訪れたばかりの頃、ゲーム開始当初の頃はこの心中を読みとれない笑顔で
すらどこか怖かった。
 だが今の克哉には臆することなく接することが出来るようになっていた。

「…オレは、どうしてもこのゲームに勝利して…御堂さんと一緒に生きる未来を掴み
とりたかったから。恐らくその真剣さが、あいつと俺の違いであり…そしてこの結果に
結びついたんだと思います…」

「えぇ、貴方は本当に真摯といえる程ひたむきで…あの方よりも真剣にゲームに
当たっていた。驕りこそ、我が主が負けてしまった原因に結びついていると私は
良く存じております…。ですから、一度出たゲームの結果に物言いをつけるような
真似は致しません。貴方はその幸運をしっかりと噛みしめて、味わいながら生きて
いかれれば良いと思います…。恐らくそんな貴方の前に今後私が姿を現すことは
二度とないと思いますからね…」

「えっ…」

 にこやかに微笑みながらRはサラリと決別の言葉を口にしていった。
 その発言に克哉は軽く目を見開いていく。

「…私が関心を持ち、関与するのはまだ可能性が固まっておらず…様々な未来を
選び其れを予想するのが困難な貴方だけです。今の貴方の未来はすでに御堂様の
手を取るという形で定まってしまっております。すでに未来が確定している貴方には
私には用がありませんから…。ですから、私は他の世界でまだ様々な可能性を持つ
貴方を観察しに向かいたいと思います…。ですから、この世界に生きている貴方と
顔を合わすのは今夜以降、二度とありませんよ…」

「そうですか。なら最後に…オレに最後の可能性を与えて下さって感謝します。
ありがとう…どうかお元気で」
  
 相手から決別を伝えられても一切動揺することなく、心からの感謝の気持ちを
伝えていくと…男は瞠目していった。

「…やれやれ、本当に貴方はお人好しな方ですね。たまにこちらの毒気を
抜かれてしまいますよ…。ですが、どうかお忘れなきよう…。私は貴方の
傍に常に存在する影…。関与する事がなくなっても貴方の行く末を
静かに見守っておりますよ…。貴方を観察する事が、私にとっては…
唯一、この退屈という猛毒から救ってくれる最大の薬なのですから…」

「えっ、それはどういう意味、ですか…?」

「…今の言葉の意味は、ご自分で考えて下さい。では…御機嫌よう…」

「ああっ…!」

 そして一瞬の内に、黒衣の男の姿はあっという間に闇に溶けて…
完全に消えてしまっていた。
 まるで本物の幽霊か何かのように…その存在の痕跡を一切残すことなく…
Mr.Rはこの世界の克哉の前から永遠に姿を消していった。

「…いなくなっちゃった…。あの人の神出鬼没はいつもの事なんだけど…
本当に人間なのか疑うよな…。よっぽどあの人の方が亡霊だよ…。
…オレという佐伯克哉という人間に取り憑いたね…」

 そう、彼の方が本当の意味でのGHOSTなのかも知れない。
 克哉は何となくそう感じていった。
 未来の確定した貴方に興味がないと言いつつ、それでも自分の行く末を
静かに観察しているとも言った。
 それにゾワっと悪寒めいたものを感じていったが、すぐに克哉は気を取り直して…
再び帰路についていく。

(…もしかしたら、誰かと幸福な未来を紡ぐ事だけが…あの人の関与から
抜けられる唯一の方法なのかも知れない。そして本来この世界にいた
鬼畜王として覚醒した眼鏡を掛けた俺はクモの巣に掛かった獲物のように
あの人に絡め取られて…オレと共に生きていた、御堂さんとの未来を
得た『俺』は…今のオレのようにあの人の魔の手から逃れられたかも知れないな…)

 まるでそれは、エデンの園でアダムとイブをそそのかして知恵の実を
食べさせて、二人を追放させる原因を作った蛇のようだ。
 甘い誘惑で人を堕落させ、そして道を踏み外させる。
 その存在に軽く戦慄を覚えていきながらも…克哉は気を取り直して御堂が
待つ彼の部屋へと急いでいった。

「帰ろう、オレの家に…あの人の待つ処に。もう…どんな誘惑が来ても
オレの気持ちは変わる事はないから…」

 そう自分に言い聞かせて駆けながら御堂のマンションに急いでいった。
 Rと立ち話をしている内に結構な時間が過ぎてしまっていたらしく…ふと
時計を見てぎょっとなった。

「うわっ…! もうこんな時間だ! 御堂さんをこれ以上待たせる訳には
いかない! 早く帰らないと!」

 そうして大慌てで全力疾走を始めて帰宅していった。
 全身がびしょ濡れになるぐらいに汗まみれになりながら…帰宅していくと
すでに夕食を用意されていて食卓に座って待っていてくれた御堂に深い感謝を
覚えていった。

「遅かったな。夕食が冷めてしまったぞ。まあ…君がちゃんと無事に帰ってきたのなら
それで良いが。おかえり、克哉」

「ああああ、本当に遅れてしまってすみません! せっかく貴方が夕食を
手づから作ってくれたのに! 本当にごめんなさい!」

「いや、良い。君がこうしてちゃんと私の元に帰って来てくれるだけで…
充分だからな。ほら、早くスーツを脱いでくると良い。その間に温め直しておくから」

「は、はい…ありがとうございます…!」

 そういって慌てて自分の部屋に向かって着替えていこうと思った。
 だが、それよりも先に今はどうしても御堂に言いたい言葉が浮かんできたので
ピタリ、と足を止めていく。
 
「…どうした、克哉。着替えに行かないのか…?」

「いえ、貴方に今…伝えたい言葉がありまして…」

 先程、Rと話したせいだろう。
 胸の中に湧き上がる不安に負けない為に、どうしても伝えたかった。
 だから突然その場に立ち止まった克哉に怪訝そうな視線を御堂が向けていくと…
克哉は朗らかに笑いながら、こう告げていった。

『オレの想いを受け入れて下さってありがとうございます。愛してくれて
ありがとうございます。貴方がオレの気持ちを受け入れてくれたから…
今、オレはこんなに幸せになれました。本当にありがとうございます』

「っ…!」

 それは克哉の胸の中にずっと在りながら、照れくさくて伝える事が
出来なかった感謝の気持ち。
 率直な想いを突然ぶつけられて御堂は驚いていったが、すぐに参ったと
いうように苦笑していく。

「…まったく、君という奴は。そんな事を言われたら…これだけ空腹だと
いうのに抑えが効かなくなりそうだな…」

「えっ…!」

 そして瞬く間に御堂から間合いを詰められて、腕の中にきつく抱きしめられていく。
 この腕の熱さに心も熱くなっていきながら…二人はごく自然に唇を
重ね合っていった。

―この人の腕の中が、今の克哉の大切な居場所だった

 その幸福を決して忘れないように。
 失う事がないように…祈るような気持ちを込めていきながら…
克哉の方からも愛しい人の身体をしっかりと抱きしめ返して、
深い口づけに答え始めていく。

『愛しています…孝典さん…』

 そう心から実感しながら、克哉は腕に力を更に込めてしがみついていった。

―己の肉体と、心をしっかりとこの世界に根ざしていきながら…
彼は亡霊から、人間に戻れたその幸福な今をしっかりと噛みしめて
いったのだった―

 





 

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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