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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  御克前提の澤村話。テーマは桜です。
  桜の花が舞い散る中、自分という心が生まれる前のことを
探り始める克哉がメインの話です。後、鬼畜眼鏡Rではあまりに
澤村が不憫だったのでちょっと救済の為に執筆しました。

 桜の回想                      10  
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 ―御堂との激しい行為がようやく終わったのは、奇しくも眼鏡と澤村が和解して、
彼の方の人格が消えたのとほぼ同時ぐらいだった。
 
 その間、克哉は長い時間…猛烈な快楽に苛まれ続けて、キングサイズの
ベッドの真っ白いシーツの上でぐったりと倒れ込んでいた。
 御堂に様々な体位で貫かれ、翻弄され続けた。
 今でも愛しい人間の一部は彼の身体の中に収められた状態のまま…背後から
しっかりと抱きしめられている。
 正面から抱かれているとこの人の顔がしっかりと確認出来るので嬉しいが、
こうして背後から抱きすくめられると背中を丸ごと包み込まれているような
安心感を覚えていく。
 何度、御堂の精が身体の奥に注ぎ込まれたのかすでに数え切れないぐらいだった。
 それぐらい激しく、何度も熱い塊でこの身を貫かれ続けていた。
 もう、どれぐらい喘がされたのかも判らない。
 
「克哉…水だ…」
 
「はい…頂きます…」
 
 ベッドサイドにいつの間にか魔法のように冷たい水で満たされたグラスが現れていて、
背後から御堂が手を伸ばして克哉の胸元にそっと運んでいく。
 彼はそれを静かに受け止めていきながら、水を零さないように慎重にグラスの
縁を口元に運んでいった。
 ほんのりとレモンの風味がする冷たい水は克哉の疲弊した身体に沁み入るようだった。
 それは他愛ない一幕であったが、克哉にとってはこの人が愛しいと…実感
するには十分であった。
 ジワリとこの人への想いが心の中に広がっていくのを自覚していく。
 
「孝典、さん…」
 
 そしてこの世で一番愛しい人の名を確認するように克哉は呟いていった。
 この人と離れて生きる事など考えられない。
 
―楽園の扉
 
 そう思った瞬間に先程、Mr.Rが囁いたその単語が頭の中に浮かんで
大きくなっていく。
 
(御堂さんと二人きりで…ただ愛し合うことだけを考えて生きることが出来る、か…)
 
 それはどれだけの幸せなのだろうか。
 克哉は少し想像しただけでブルっと肩を震わせていった。
 こうして御堂と抱き合い、その強烈な快楽を改めて感じたからこそ…先程は
とんでもないと感じていた、その誘惑にグラリと心が傾きかけていく。
 
(大好き、です…)
 
 克哉はその想いを噛みしめていきながら相手の指をそっと甘く噛んでいく。
 相手の指先を丁寧に舐めあげて、チュっと吸い上げていくと背後の御堂が
軽く喉で笑った気配を感じていく。
 
―貴方と二人で生きられるなら…
 
 そして、甘美な願いに心を馳せていってしまう。
 現実なら決して叶わない夢想が、今…この時ならば叶えられる可能性があるという。
 正常な状態の克哉なら決して頷かない。
 だが、今は愛しいという感情に満たされていて冷静な判断が出来なくなっていた。
 
「孝典、さん…」
 
 今なら先程の夢物語にも近い御堂からの提案を受け入れられると確信して
いきながら、言葉を紡いでいく。
 その瞬間…鮮明に一つの声が聞こえていった。
 
―ダメだ! 二度と戻れなくなるぞ…!
 
 その声が聞こえた瞬間、克哉は電流で打たれたように身体を跳ねさせていった。
 
「『俺』の、声が…? どうして…?」
 
 暫く自分の中からまったく気配すら感じられなかったもう一人の自分の声が聞こえる。
 しかも、急速に自分の心と重なり…一つになっていくようなそんな感覚がした。
 
「克哉…? どうしたんだ…?」
 
 愛しい人が背後からそっと声を掛けてくる。
 その甘やかなで気だるそうな声を聞くだけで背筋にゾクっと悪寒が走っていった。
 
「何でも、ありません…」
 
 そうして克哉は背後から回されている御堂の手に、己の指先を重ねて
いきながら呟いていく。
 
―俺の声が聞こえていないのか…? その誘惑はあの男の…Rの罠だ。
一度でも流されて頷いてしまったら現実に二度と戻れないぞ…!
 
―うるさいな。オレは御堂さんと一緒に二人きりで生きたいんだ…! 
本当に愛しくて大切な人だけを見つめてずっとそうして永遠に一緒にいられる…!
 その幸せを手にしたらいけないのかよ…!
 
 克哉の心は大きくその誘惑に傾き掛けていただけに…今はもう一人の自分の
忠告すらもうるさく聞こえてしまっていた。
 
―お前はそれで後悔、しないのか…?
 
―しないよ! 孝典さんと一緒だから…
 
―そう、か…。お前が納得ずくでその誘惑に乗るというのならば…俺も強固には
止めはしない。だが、御堂と二人きりで永遠に生きる選択をしたならば…お前は
友人と思っている存在たちに…本多や片桐さん、太一や…お前の両親やMGNに
いる藤田や川出やその同僚達にも二度と会えなくなるんだぞ…
 
―それ、は…!
 
 眼鏡に、今自分の周りにいて関わりあっている人達の名前を挙げられて
一瞬にして現実へと意識が傾いていく。 
 激しく愛され続けて、御堂さえ自分の傍にいてくれれば全てを捨てても
構わないとさえ思っていた。
 だが、眼鏡が友人や家族、同僚達の存在を口にしたことでその人達の
顔が鮮明に脳裏に浮かんで…涙さえ、滲んで来た。
 
「皆、に…二度と会えなくなる…」
 
 その事を考えただけで胸の中に大きな空洞が生まれていくようだった。
 確かに今の克哉にとって御堂はもっとも大きな割合を占めている。
 けれど今、自分の周りにいる人達を大切に思う気持ちはあるのだ。
 最愛のパートナーの存在だけが、今の克哉の幸せを構成しているのではない。
 周囲に取り巻く人と良好な関係を築いて、時に一緒に泣いたり笑ったり
騒いだりして過ごしているからこそ成り立っているものなのだ。
 その一言で、冷や水に全身を打たれたように衝撃を受けて…甘い夢想は
消えて、あっという間に冷静さを取り戻していく。
 
「克哉…どうしたんだ? 私と共に…永遠に一緒に生きてくれないのか…?」
 
「孝典、さん…オレ、は…」
 
 それでも愛している人に口づけながらそんな言葉を吐かれてしまえば
心はグラっと揺れていく。
 けど、正気を取り戻しつつあるからこそやっと克哉は気づいてしまったのだ。
 今の御堂の瞳はガラス玉のように空虚で、あの鋭くて強烈な意志が感じられない事を。
 
(孝典さんの目が…濁って、まるで生気が感じられない…さっきまで、
まったく気づかなかった…)
 
 どうして、あの清冽な人の双眸がこんなにも濁って別人のようになっている
事が判らなかったのだろう。
 自分が愛した御堂はいつだって厳しくて苛烈な一面を持っている。
 だが、克哉は御堂のそんな一面をも愛しいのだ。
 自分達を取り巻く重い責任やプレッシャーに時に潰されそうに感じられる時がある。
 御堂の厳しさや責任感は、そういった環境から派生している。
 もし全ての重圧から逃れて、ただ御堂とイチャつきながら欲望のままに
求め合う…それだけをしていれば良い世界。
 御堂の目がこんな風に濁ったままで、ただこちらに甘い言葉を囁いたり
こちらを抱いたり…そんな日々だけがいつまでも続いていく。だが…。
 
―こんなにも目の濁った御堂と自分は本当に永遠に一緒にいたいだろうか…?
 
 自分の中にその想いが生まれた瞬間、ドックン…と心臓が大きく
跳ねていくのが判った。
 御堂の事は心の底から愛しい。
 だが、今の御堂の目がこんなにも淀んでいた事に克哉は気づいてしまった。
 目の前にいる御堂は、操られているか…偽物のどちらかである事を。
 そして自分が良く知っている御堂であるならば、こんな愚かしい事は言わないと
最初に感じた違和感が正しかった事を克哉は改めて実感していく。
 
(オレは貴方を心から愛している…。けれど、やはりその他の人全てを
切り捨てて二人だけの楽園を築くことなど間違っているんだ…)
 
 ようやくその考えに至った瞬間、背後から御堂に息が詰まりそうになる
ぐらいに強く抱きしめられていく。
 その仕草だけで克哉の心臓は早鐘を打ち始めて、動揺を覚えていく。
 
「克哉…私と一緒に楽園の扉を開く覚悟は出来たか…?」
 
「いい、え…」
 
「…何だと?」
 
 勇気を振り絞って断っていくと、顔が見えない状態でも断ったことで
御堂が不快そうにしているのが伝わってくる。
 
「克哉、今…何と言った…?」
 
「ですから、楽園になんてオレは行く事を望んでいません…帰りましょう
孝典さん。オレ達が生きている現実へ…」
 
 克哉のその言葉は御堂にとっては予想外らしく、いきなり首筋に噛みついて
その身体に己の痕跡を刻みつけていく。
 
「うあっ…! い、痛い…! 止めてください! 孝典さん!」
 
「…君にはまだ足りなかったようだな…。楽園の扉が目の前にあるのにこの後に
及んで強情を張るとは…。まだお仕置きが必要なようだな…!」
 
「そん、な…やめ、て…ああああっ!」
 
 そして問答無用で再び四つん這いにされて、背後から深く御堂の
ペニスに貫かれていった。 
 これは克哉の意志を容赦なくねじ曲げようとする甘い拷問そのものだ。
 快楽を与えられて、再び抗えなくなりそうだった。
 
―流されるな…『オレ』…。お前がここで屈したら、誰とも会えなくなるんだぞ…!
 
 だが、その瞬間…もう一人の自分の声がはっきりと頭の中に響いていった。
 それが克哉の正気を再び蘇られて、現実へと意識を引き戻していく。
 誰かを心から愛しいと想った事があるならば、その人間とずっと一緒にいたいとか、
二人で生きたいと望むのはむしろ自然な事だろう。
 だが、この世に生きている限り…文明社会に身を置いてその恩恵に
預かっている限り、その願いはまず叶えられる事はない。
 何より、一人の人間としか関わらない事は人の心をひどくイビツな
ものに変えていく。
 生きていく上で人体に多様な栄養素を必要とするのと一緒だ。
 ある程度の人数と接触し、交流していく事で人の心は健全に保たれるのだ。
 そして一定の重圧が掛かっている事で人生にまた張りも出てくるのだ。
 何もせずに良い世界は人の精神を堕落させていく。
 セックスは快楽を与えてくれる行為だが、それだけをしていて良いという状況は
そう遠くない内に飽きを生んでいくだろう。
 忙しく仕事をこなしている中に、時に触れ合う時間を持つからこそ愛し合って
いる時間は深くなり、より輝くのだ。
 こうして強く激しく求められていると、御堂以外との繋がりが再びどうでも
良いものになっていきそうだった。
 だが、その強烈な快楽を唇を噛みしめて耐えていき、やや苦しい体制で
御堂の方を向き直っていく。
 
「孝典、さん…オレ、言いたい事、が…」
 
「何だ、克哉…。ようやく頷く気になったのか…?」
 
「いい、え…。オレは絶対に、その提案だけは受け入れる気はありません…」
 
「…っ! 何だと!」
 
「ふぁっ…あ、はあ…!」
 
 御堂が激昂して眉を大きく跳ね上げていく。
 瞬間、相手のペニスが更に奥深くを突き上げていった。
 克哉の前立腺を、その熱い塊が容赦なく抉って、追いつめてくる。
 背後から両方の胸の突起をいじられると、鋭い電流が全身に
駆け巡っていくようだった。
 
「どうして、だ…克哉! 私とずっと一緒に生きてはくれないのか…!」
 
「いいえ、オレは貴方と…生涯、あぅ…添い遂げます…! これからもずっと
貴方以上に愛せる人なんて存在しない、ですから…!」
 
 しっかりと相手の目を見据えていきながら、本心から克哉はそう叫んでいった。
 そう、この世で一番この人を愛しているというその言葉は克哉にとっては
何よりの真実だからだ。
 だからたたみかけていくように更にはっきりと宣言していく。
 誓うように、相手の心に訴え駆けるように真摯な顔を浮かべていった。
 
―貴方をオレは心から愛しています。楽園に行く事は同意出来ないですが、
オレは貴方の傍を決して離れません。だから、現実を捨てて夢の世界に逃避
しようなんて…そんな考えを、捨てて下さい…!
 
 アイスブルーの瞳を決意に輝かせながら、克哉ははっきりと告げていく。
 そう、自分の愛した御堂は「己の考えをしっかりと伝えろ。変な遠慮はしなくて良い」と
散々言っていた。
 自分の考えを一方的に押しつけて、こちらがそれに応えないからと言って
無理矢理叩きつぶしたりする人じゃない。
 否、そんな真似をする人物だったらここまで深く敬愛する事はなかっただろう。
 だから克哉はある種の確信を持ちながら、そう伝えていった。瞬間、御堂は
稲妻に打たれたかのように激しい反応を示していった。
 
「っ…!」
 
「孝典さんっ?」
 
 克哉は目を見開いて驚いていく。
 いきなり御堂の身体が透明に透け始めていったからだ。
 そしてゆっくりとその身体は薄くなっていって…瞬く間に夢のように消えていく。
 同時に白亜の豪奢な部屋もまた、ひび割れて崩壊し始めていく。
 視界が大きく歪んでいくようだった。
 まるで長い夢から醒めたかのように、目の前に存在していた全てが消え失せていった。
 その光景を眺めながら、克哉は意識が遠ざかるのを感じていった。
 
(ああ、全ては夢で…恐らく、これはMr.Rが仕掛けた罠だったんだ。あいつが…
もう一人の俺があの一言を言ってくれなかったら、オレはきっと陥落してしまっていた…)
 
 儚く消失していくその様を眺めていきながら、克哉はゾッとなった。
 同時にもう一人の自分に深く感謝していった。
 キラキラと光の粒子が周囲に舞い散る。
 まるでクリスタルガラスが砕けて光を反射しているような危うく壮美な光景だった。
 長かった夢が散っていく光景はひどく幻想的で、そして物悲しささえ覚えていった。
 
―楽園の扉はこうして閉ざされ、克哉の前に二度と現れる事はないだろう。
だが、それで良いと克哉は思っていた
 
 昔の自分だったら、御堂と知り合う以前であったならもしかしたら甘い誘惑に
靡いてしまっていたかも知れなかった。
 だが、今の克哉は自分の周囲にいる人達を大切に思っている。
 かけがえのないものだと思っている。
 どれだけ御堂が愛しくても、やはり全てを引き替えにして二人だけで
生きるというのは歪んでいて病んでいる考えだと思うから。
 だからそっと目を伏せて、これで良いと自分に言い聞かせた瞬間…
フワリと水中から浮上するような感覚を覚えていった。
 瞬間、御堂の鋭い声が脳裏に響きわたっていった。
 
「克哉!!」
 
 そして、最後に克哉は「本物」の御堂の呼び声をぼんやりと聞いていった。
 克哉はその方向に手を必死になって差し延ばし、指先に愛しい人の
温もりを感じていきながら再び、意識を落としていった。
 
―今度は、本物の御堂の腕の中に包み込まれていきながら…
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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