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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                         10 11  12 13   14 15
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 克哉がどちらを選ぶか、決断した事によって…夢の世界は崩壊していく。
 罪の記憶を忘れる事によって、一時の癒しを与えてくれていた場所が…
真っ白く、眩いばかりの光に満たされてゆっくりと消えていった。
 眼鏡はとっさに克哉の身体を必死になって抱き締めた。
 克哉もまた…其れに応えていく。
 そして…抱きあった状態のまま、足場すら消えて…二人の意識は…
ゆっくりと光に飲み込まれて、一時…輪郭を失っていった。

―そして…克哉は、発端となる出来ごとの記憶を想い浮かべていく

 二人はそうして…束の間、一つに意識が重なりあい…一連の出来事の
記憶を辿っていく事となった―

                      *

 本多と松浦が、毎週のように金曜日の夜に飲みに行くようになって
三カ月余りが経過した時、克哉は耐えきれずに其れを知っていながら
本多を呼びだした。
 すでにその頃には金曜日に松浦と飲みに行く事は当たり前になっていて、
その日は…克哉に対して、一言断りもしなかった。
 其れがどうしても許せなくて、衝動的に行動してしまった。
 そして二人が良く使用している居酒屋が立ち並んでいる歓楽街に
近い場所にある公園に先に訪れて、悶々としながら待っていた。
 
(…早く来てくれよ。オレに行って来る、と一言言ってくれている内はまだ…
我慢する事が出来たけど、松浦と過ごすのが当たり前になってきているのだけは…
どうしても、許せないんだ…。凄くみっともないって判っているけど…)

 時刻は20時を少し過ぎた辺り。
 いつも通りの流れなら、予約しているのは19時からで…まだ、始まってから
一時間弱と言った処だ。
 こんな時間帯に本多を呼びだすのはマナー違反だって判っている。
 みっともない嫉妬に駆られた行動だっていう自覚はある。
 けれど…松浦と再会してから、金曜日の夜から日曜日の夜まではずっと
一緒に過ごす事は出来なくなって。
 日曜日だって、バレーボールの練習や試合が入れば…克哉と過ごすよりも
本多はそっちに行ってしまう事が徐々に多くなり、耐える事が出来なくなった。
 本多の気持ちが、自分以外のものに注がれている事が許せなくなり。
 そのキッカケとなった松浦に対しても、敵意のようなものが日増しに
強まっていく。

「何、やっているんだろ…オレ…」

 待っている間、ふと正気になって克哉はそう呟いていくのと同時に…
本多の声が聞こえた。

「克哉! 其処にいたのか!」

「…本多、良かった…」

 ようやく本多が来てくれた事で、胸の中のどす黒い気持ちが収まって…
安堵を覚える事が出来た。
 そして、脇目も振らずにこちらからも駆け寄って…強い力でしがみついていく。

「…来て、くれた…。本当に、良かった…」

「お、おい…克哉…一体、どうしたんだ…? 何か、あったのか…・」

「…急に、呼びだしてゴメン。今日だって…いつものように松浦と一緒に飲んでいるのは
薄々知っていたけれど。今夜の事は、オレに一言の断りもなく…当たり前の顔をして
飲みに行こうとしていただろ? それが凄くモヤモヤしちゃって…耐えられなくなっちゃった…。
本当に、ゴメンな…」

「えっ…?」

 克哉が弱々しい表情をしながら謝っていくと、本多は面喰ったような
顔になっていった。
 そんな事、今まで考えもしなかったというのが見て取れた。
 其れが余計に…克哉の心を暗いもにに変えていく。
 その顔を見られたくなくて、とっさに…街灯の下に煌々と照らされているにも
関わらず、本多に深い口づけをして…強い力でしがみついてしまった。

「…ゴメン、これがみっともないヤキモチだって判っているんだ…。
けど、松浦と再会してから…本多、オレと一緒に過ごしてくれる時間が激減したし、
話す内容もバレーボールと松浦と、今のチームの仲間たちの事ばかりで…
そういったものに、本多を取られてしまうような気がして…寂しかったんだ。
其れで衝動的にこんな真似してしまった。…こんな情けない奴で、
本当に…ゴメン、な…」

 薄らと涙を浮かべていきながら、切々と胸の内を語っていく。
 今まで物判りの良い顔をして、何も文句を言わないようにしていた。
 バレーボールの事も仲間の事も、松浦の事も本多にとってはとても大切なものだと
判っていたから…それらに時間を取られる事になっても仕方ないんだって、
納得しようとしていた。
 けれど…日曜日を試合や練習で取られてしまう事は我慢できる。
 だが、自分以外の男と毎週のように二人で会って飲む事だけは…もう
我慢できそうになかった。
 男同士の恋愛が特殊なものだって判っている。
 こんな邪推をしている自分がおかしいんじゃないかって思う部分もある。
 けれど三カ月、ずっと我慢して…克哉はもう限界を迎えていた。
 だから泣きながら、急に呼びだしてしまった事を謝っていった。

「…こっちこそ、ゴメンな。俺が宏明と過ごしたり…バレーに熱中する事で
克哉をそんな風に傷ついていたなんて…今まで、気づいてなかったよ…」

「ううん、本多が謝る事じゃない。オレが…悪いんだよ…」

 そうしてお互いに謝りあっていきながら、抱きあっていく。
 街灯に自分達の姿がくっきりと映し出されている事に気づかぬまま…
二人の世界を作り出して、周りのものは見えなくなっていった。
 其れが…大きな災厄を後に招く結果になるとは気づかずに…。

「いや、俺はお前の恋人だからな…。可愛い恋人をこんな風に寂しい思いを
させちまったのは反省しないといけないな…。今夜、これから時間あるか?」

「うん、あるよ…。だってオレにとっては…本多よりも優先する事なんて
ないからさ…」

「全く、可愛い事を言うな。判ったよ…。それじゃあ今から俺の家に来いよ…。
久しぶりに金曜日の夜を一緒に過ごそうぜ…」

「うん、ありがとう…」

 そうしてようやく、克哉は心からの笑顔を浮かべていき…本多はそんな
恋人の肩をしっかりと抱きしめながら、自宅の方に向かっていた。
 この時、二人はお互いしか見えない状態になっていた。
 だから…物陰に、本多を全力で追いかけていた松浦がいた事も…
自分達のこの日のやりとりを一部始終見ていた事も全然気付かなかった。

 そしてこの日以降、本多は松浦と二人で一緒に飲みに行く事もなく…
日曜日も、克哉と過ごす事を優先するようになった。
 水面下で、大きな流れが生まれていた事に気づかず…克哉はただ、
本多の目がまた自分だけを映すようになった事に満足して、
それ以外の事から目を逸らそうとしていた。

―そしてその日から一カ月後、あの大事件が起こったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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