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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                         10 11  12 13   14 15
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 そして本多に対して、不満を訴えて泣き縋った夜から一カ月後。
 克哉は就業時間の間際に、携帯電話に直接…公衆電話からの発信で
一通の電話を受け取った。

(公衆電話から…? 一体誰からだろう…?)

 一瞬、訝しげに思ったが、携帯電話を一人一台持つのが当たり前に
なっているご時世でも、時々充電が切れて公衆電話や自宅電話を使用して…
というケースは少ないが確かに存在している。
 誰からか判らない…という不安は多少なりともあったが、それを押し殺して
克哉が応対していくと…。

「はい、もしもし…佐伯ですが…」

『…お前の大事な人間を守りたかったら、お前の会社の付近にある大きな
公園の中心の街灯の下まで一人で来い…』

「えっ…?」

 全く予想もしていなかった事をいきなり切り出されて克哉の頭は
真っ白になりかけた。
 だが相手は押し殺した声で…こちらの都合など一切構わずに
こう告げていった。

『…決してこの事は誰かに言うな。言った場合はお前の大事な人間の
無事は保証しない…良いな、必ず一人で来い…』

「ちょっと待て…! お前は、一体…!」

 此処が職場である事も忘れて、克哉は声を張り上げていった。
 大事な人間、という言い回しをされたら克哉にとって該当するのは
恋人である本多しかいない。
 今日、彼は外回りで遅くなると言っていた。
 だから今、営業八課のオフィス内にその姿は見えない。
 其れが余計に克哉の不安を煽っていく。

『俺が誰かなど、どうでも良い事だ…。良いな、こちらの言った事を
忘れるな。破った場合は保証しないぞ…』

「待って、待ってくれ…! くっ…!」

 そして克哉の叫びも虚しく、無常にも通話は一方的に断ち切られていった。
 胸の中にどす黒い不安が、急速に広がっていくのを感じていった。

(もしかして…本多に何かあったのか…?)

 たった今、電話の主から告げられた言葉が克哉の頭の中で
グルグルと回り始めていく。
 もしかして本多は、今の電話をしてきた相手に拉致でもされて
しまったのだろうか?
 そう考えた途端、克哉はいてもたってもいられなくなった。

(本多…お前に、何かあったらオレは…! オレは…!)

 もうそれしか考えられなくなった。
 頭の中が、本多が無事でいるかどうか…それだけでいっぱいになってしまう。

「佐伯君…一体、どうしたんですか。今…電話で叫んでいたみたいですし、
それに顔色も…」

「あ、片桐さん…す、すみません! ちょっと…今日、早退させて貰って
良いですか? ちょっと大変な事が起こってしまったみたいで…」

「や、やっぱり緊急事態か何かを告げる電話だったんですか?」

「は、はい…そうなんです。それで取り乱してしまって…其れでちょっと
向かわないといけない場所が出来たので…申し訳ないですが…」

「ええ、そういう事情なら構いません。早く行って下さい…」

「はい、ありがとうございます…!」

 克哉は、電話の内容はあくまでぼかして…片桐が言った緊急事態、という
言葉に乗っかって会話を続けていった。
 そう…今の電話の詳細を告げたらきっとパニックになって余計な
心配を煽るだけだし、それに電話の主には『誰にも告げず一人で来い』と
念を押された以上…誰にも言う訳にいかなかった。
 守った処で安全が保証される、という確信はない。
 けれどもし誰かに話したのが脅迫犯にバレたら…どういう事が起こるか
予測出来ない以上…迂闊な事は出来なかった。
 克哉は強烈な不安を抱えながらも大急ぎで自分の机の上を片付けていくと
荷物を纏めて、オフィスを飛びだしていった。
 電話の主から言われた公園には一つしか心当たりがなかった。

―其れはMr.Rと出会って、あの銀縁眼鏡を渡された公園だった

 その事に奇妙な因果を感じていきながら、克哉は全力疾走で公園まで
向かっていく。
 その頃、都内の空は曇天に覆われて灰色に染まり始め…緩やかに雨の気配が
漂い始めていったのだった―

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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