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※この話はバレンタインにちなんだ克克話です。
あまり深いテーマ性もなくイチャついているだけの
ゆる~いお話です。それを了承の上でお読み下さいませ~。
克克が書きたかったんです!
チョコレート・キッス 1
―この二週間我ながら場かな真似をしてしまったと
何度思ったか判らなかった。
誕生日を祝ってくれたお礼だからと言って、もう一人の自分に男である
自分がバレンタインチョコを贈るなんておかしいって事ぐらい
判っていた。
けれど街行く女性達や、同じ会社内にいる人達が好きな男の
ことを語ったり、幸せそうにチョコレートを選んでいる姿を見ていると
自分もふと、そんなお祭り騒ぎに参加してみたいと思ってしまったのだ。
今の自分の感情が、相手が気になる程度のレベルであったと
しても…「お前は本当に馬鹿だな」と言いながら、どこかであいつが
出て来てくれる事を密かに祈っていたのだが…。
玄関からズカズカと入り込んで来た男の姿を見ながら、克哉は
未だに信じられないといった表情を浮かべていた。
もう、会えないままなのかと思っていた分だけ…内心ではこうして
会えた事に少しだけ嬉しさはあったけれど、やはりもう一人の自分で
あるせいか…意地の方が先立って、素直に喜びを表せなかった。
「…よお、久しぶりじゃないか、オレ…。俺に会えなくて寂しかったか…?」
「そ、そんな事…ある訳、ないだろ…! オレはお前に会えなくったって…
別に寂しくはないよ…!」
と、口で言いつつも相手にチョコレートなんて用意してしまった為か
いつ先に気づかれてしまうのか気が気じゃなくて…まともに顔を
見ることが出来ず、頬を赤らめたまま相手から目を逸らすことしか
出来なかった。
しかしきっと、相手はこんなこちらの動揺などお見通しなのだろう。
ククっと喉の奥で笑いを噛み殺しているのが聞こえて、克哉はカっと
なりそうだった。
(うううう…実際にこいつと顔を合わせると、メチャクチャ恥ずかしくて
仕方ない…! 何でオレ、チョコレートなんて用意しちゃったんだろ…!)
しかも相手から真っ直ぐに見つめられているのが判るだけに
ドンドン居たたまれなくなってしまった。
しかしチョコレートの存在を相手から完全に隠してしまったら今度は
本末転倒になってしまうので…どうすれば良いのか判らず、克哉は
内心パニックに陥りかけていた。
「…ほら、どうした…? お前は俺に何か贈り物をしたいから…
強く会いたいと望んでいたんじゃないのか…?」
「…っ! それは…!」
「…ほら、図星だろう…? それならば…少しぐらい素直になった方が
良いんじゃないのか…? 変な意地を張り続けているとロクな事に
ならないもんだからな…」
「そ、んな事…言われたって…」
克哉は困ったように、つい机の上のチョコレートを見つめていくと
相手は目ざとく、その存在を発見していく。
「…おいオレ、それがそうじゃないのか…? お前が何も俺に対して
用がないんだったら…俺はこのまま、大人しく退散するが…どうする?」
「っ…! ちょっと待って! 判った、判ったよ…!お前にこれを渡すから…
帰るのは止めろよ!」
そうして克哉は反射的にチョコレートの箱に飛びついていって、
相手に押し付けるように渡していく。
ムードや情緒のカケラもない渡し方だった。
それに少しだけ後悔しかけたが…二十代半ばの成人男子が
女性のように可愛らしくチョコを贈るなど到底出来る訳がない。
「…これ、受け取って! とりあえず…オレの誕生日に、こっちを祝って
くれたお礼だから! 他意はないから…! た、単なる義理チョコだから!」
恥ずかしさの余りに、本心とは裏腹の言葉ばかりが口から零れていくが…
こっちの思惑に反して、顔は見る見る内に赤くなり耳まで火照り始めていた。
その様子を見て、こっちが意地を張っているだけだと丸判りに
なってしまっているに違いない。
もう一人の自分は相変わらず、ククク…と笑い続けていきながら
意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見つめて来ていた。
(うううう…バレンタインにチョコを相手に贈るのってこんなにも
恥ずかしいことだったのかよ…!)
うっかり魔が差して、どうして自分はコイツにチョコを贈ろうと
などと考えてしまったのかその軽率さに本気で後悔しかけた。
「…ほう、義理なのか。なら…お前の気持ちなど、これにはまったく
込められていないと…そういうんだな…?」
「あっ…」
自分からそう言ったのに、相手に先にそういわれてしまうと…何故か
唐突に寂しくなってしまった。
どうして、眼鏡にそういわれてしまったらこんなにも胸が痛く
なってしまうのだろう。
ふと、寂しくなって縋るように相手を見つめてしまうが…相手は変わらず
意地の悪い光を瞳にたたえるばかりで、特に反応がない。
こちらが何も言わないままでいれば…ただ、義理チョコを贈っただけに
なり…自分の想いも、何も伝わらないままになってしまうと考えた時、
何となく寂しくなった。
「…違う、よ…」
だから、猛烈な羞恥を堪えていきながら…自分から、撤回していく。
せっかく、会いたいと思っていたその願いが叶ったのならば…せめて
素直にならなければ勿体無いと思ったから。
「…ほう? 何が違うというんだ…?」
「…今日、オレはお前に逢いたいと思ったから…チョコを用意したんだ。
こんなの全然オレらしくないって判っていたけど、お前に馬鹿にされるかも
知れないとも考えたけど…贈りたいと思ったのは本当だから…」
縋るように相手を見つめていきながら、そう…精一杯の想いを
搾り出していく。
愛しているとか、好きだとか…臆面もなく言える性格じゃない。
相手に抱いている感情がそういったものなのかもまだ自分では
判らないけれど…。
「…お前に逢いたい、と思ったのは本当だから…お前に馬鹿な奴だな
といわれるだけでも構わないから…顔を、見たかったんだ…」
「…やっと素直になったな」
克哉の口からやっと本心が零れ落ちると同時にもう一人の自分が
満足そうに微笑み、そして間合いを詰めていく。
「えっ…」
克哉が間の抜けた声をつい漏らしてしまった時にはすでに…
相手の顔は、彼のすぐ眼前にまで迫って来ていたのだった―
そして現在連載中のが眼鏡×太一と、眼鏡×片桐なんで
正直に言います。
克克に飢えた!!!!
あたいはやっぱり、他のカップリングを書きたいって欲求あっても
克克を定期的に書かないといられない子なんだよ!
という訳でバレンタインにちなんだ克克ネタをひょこっと。
今回は連載、というより突発的な2~3話程度に纏めたテーマ性が
うっすい、緩い感じのお話です。
あくまでシーズン物なので、フレッシュな感じだけを楽しんで
下さいませ~(ペコリ)
ちなみに元ネタは兄貴が「ゴディバに最近行ったんだけどこの時期は
男はチョコレート専門店に入りづらくて、結局中に入れなかった」という
一言から生まれました。
それと私の妄想が絡んだ内容です。了承の上でお読み下され~!
※この話はCDドラマ 眼鏡非装着版の「特別な日」を経た設定で
書いているので予めご了承下さい~。
『チョコレート・キッス』
本日はセントバレンタイン。
その始まりとなった一件を皆様は果たしてご存知ですか?
嗚呼、その様子では知らないようですね。
それならば僭越ながら、私からお話して差し上げましょう…。
昔々、ある国でこれから戦争に向かう者は未亡人を作らない為に
結婚するなというお触れが出されたことが始まりでした。
戦争は激しさを増し、若い命が沢山失われてしまっていたから
でしょうね。それによって未亡人や子供への保証だの、そんなものを
考えたくない…人の気持ちや想いなどまったく考えない統治者が
出した、身勝手な命令でもありました。
だが、ある若者がどうしても愛している女性と挙式をしてから戦場に
向かいたいと願い…ある司教がその情熱に打たれて、国の通達を
破って結婚式を挙げたことが由来となったのです。
その司教―バレンタイン氏はその事によって処刑されて残念ながら
命を落とされてしまいましたが…多くの人間がその勇気ある行動を称えて、
その司教を称える意味でバレンタインデーは生まれたと言われています。
この日は女性から男性にチョコレートを贈る日ではなく、想う人間に
気持ちを伝える日だというのをご存知ですか?
外国では恋人同士がお互いにプレゼントを贈る日として定着
しているんですよ。何とも幸せそうな様子が想像出来ますね。
しかしその風習は…起源となったバレンタイン司教が亡くなった後に
後世の人間が勝手に作り出したものでもあります。
―命を賭しても、本気で愛し合っている二人に祝福を与えた
その行為の尊さが…今でもその名を残して語り継がれている
最大の理由かも知れませんがね。
嗚呼、でも…人というのは長い年月が過ぎればそのように崇高な想いで
殉死した人の意思や存在を忘れて、ただチョコが貰える、貰えないと
騒ぐだけになっているような気がします。
まあ、私はそんな人間の愚かしさが愛おしく思えますけどね…。
さて、ここに…チョコレートを抱えて頭を悩ませている一人の男性がいます。
…なら、ほんの気まぐれに私からちょっとしたサプライズを用意させて
頂くとしましょうか…。
―私なら、その方が望むものを与えて差し上げるのはたやすい事
なのですから…
*
その夜、自分の住んでいるマンションに戻ると同時に佐伯克哉は真剣に
頭を抱えることになった。
(オ、オレってば…一体何を考えているんだろう…)
自室に戻り、机の上に綺麗にラッピングされた箱を眺めていきながら
つくづくとツッコミたくなる。
ついに当日の…しかも夜遅くを迎えてしまっていたのに、結局どうしようも
なかった事に本気で溜息を突きたくなる。
(幾ら先月の時点だったとはいえ…何でオレ、チョコレートなんて
この時期に購入してしまったんだろう…はあ…)
一月の終わりからずっと克哉のベッドの傍にある透明な机の上に置かれ
続けていた箱を眺める度に、つくづく自分はバカな真似をしてしまった
ものだと自己嫌悪に陥っていく。
(誕生日に一応…オレの処に来てくれたお礼のつもりだったけど…
冷静に考えてみたら、あいつへの連絡手段とか一切オレは持って
いない訳だし…。嗚呼、このままじゃバレンタインが終わってしまうよな…)
先月末、あの除夜の夜から一ヶ月が過ぎようとした頃。
克哉は街の至る処でバレンタインのキャンペーンや特集をやって
いるのを見かけて、つい…もう一人の自分用にチョコレートを購入を
してしまったのだ。
動機としては至極単純に、大晦日の夜に何だかんだ言いつつも
自分を祝いに来てくれた彼にお礼をしたいだけだったのだが…買った後に
一切彼に対しての連絡手段を何も持っていないことに気づいて
結局この二週間を悶々と過ごすことになってしまったのだ。
「はあ…このチョコレート。本当にどうしよう…。オレ、甘いものとか
そんなに好きじゃ…あああ、良く考えたらあいつもオレと同じ好みかも。
なら、贈っても迷惑がられるだけだったかも…」
自分の心情を口に出せば出すだけ、次第に何でそんな基本的な
ことにさえ気づかなかったのか余計にヘコんで来ていた。
ブランデーやウイスキーなどの辛口や、アルコール度数の高い酒を
自分が好むように…どれだけ性格が違って見えても、自分達はあくまで
同一人物な訳だから…好みだけ見れば、相手にチョコレートを贈った
処で喜んで貰える訳がない。
そんな当然の事に気づかなかった自分のマヌケさ具合に本気で
克哉は項垂れていった。
(…本当、何か空回りばっかしている気がする…。男なのに、バレンタイン
チョコをあいつに買おうなんてつい考えてしまったり…。一体オレ、何を
やっているんだろ…バカみたいだ…)
そうして、克哉は再び机の上へと視線を向けていく。
会いたい、と思ったから購入した。
そうすれば渡す時ぐらいまた会えると思ったから。
最後に会ってから一ヶ月以上が経過しているからこそ…次第に克哉の
中の寂しさもピークを迎えて、そんな馬鹿なことを考えてしまったのだろう。
「会いたい…」
自嘲するついでに、その行動の奥に隠された自分の本心に気づいて…
克哉はつい、呟いてしまっていた。
―なら、会わせて差し上げましょうか…?
「っ…!」
いきなり鮮明にMr.Rの声が響き渡って、克哉は言葉を失いかける。
周囲を慌てて見渡していくが…やはり誰もいる気配がない。
何故、それなのにこんなにも鮮明にあの謎の男性の声が頭の
中に響いたのか判らなくて…克哉が首をかしげていると。
―貴方が望むなら、私からのささやかな贈り物として…あの方に
会わせて差し上げても構いませんよ…?
それはまさに、克哉が望んでいる内容をピタリと言い当てていた。
だが、とっさに頷くことが出来ずにその場に固まっている。
まるでこちらをずっと影から監視でもしていたのかというぐらいに…
タイミング良く声が聞こえて、こちらの望みを叶えようとするものだから
嬉しさよりも先に警戒心の方が強く現れてしまう。
だから克哉が無言のままでいると…。
―ふふ、素直に答えられませんか。ですが…私は貴方の望みを良く
知っています。だから…叶えてあげますよ。この二週間、貴方が望み
続けていた方を…ここにね…!
「わぁっ…!」
相手の声が大音量で頭の中で響き渡ったものだから克哉が
驚いて声を挙げていくと同時に、いきなり勢い良く玄関の方から
扉が開く音が聞こえて、克哉は大声を挙げていったのだった―
2009度のクリスマス小説。
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
悪夢から目覚めると、いつの間にか赤い天幕で覆われた部屋から
自分の部屋に移動していた。
全身にびっしょりと汗を掻いて、呼吸が乱れていた。
先程見た夢の光景のせいだろうか。
起き抜け早々、心臓がバクバク言っているのが判った。
「夢、夢…だったのか…?」
小さく呟いていくと、克哉は周囲を見渡していった。
いつものように身体には情事の痕が色濃く残されていて…腰がだるかった。
もう一人の自分に抱かれた証。
そして目覚めたら自分だけしかいない状況。
予想していたこととはいえ、少し切なかった。
「はは…まあ、いつもの事だよな…」
無理に笑おうとしたが、引きつって乾いた声が零れていく。
心の中でどれだけ願おうと…自分のささやかな願いすら叶えられることはない。
クリスマスの発祥とされる話では聖者が身売りされる娘を救おうと…煙突から
金貨を投げ入れたのが始まりとされている。
だが、どれだけ豪華な金銀宝石が投げ入れられても、今の克哉は
幸せを感じることなどないだろう。
目覚めたら自分の傍らにいて欲しかった。
たったそれだけの…ささやかな願いすら、得られない。
その事実に少しだけ落胆していった。
「…何で、お前ってオレの前に現れるんだよ…」
力なく呟いていく。
だが、答える声はない。
ベッドの上で身体を起こして…もうじき明けようとする空を見つめていく。
今日は12月25日…クリスマス当日だ。
プレゼントなんていらない。
克哉が今、望んでいるのは自分だけのサンタクロースだ。
さっきまで対となる服をまとって、自分を好き放題していったあの身勝手な男の
顔を見たいと強く願った。
「…せめて、顔ぐらいは見せろよ。こっちを散々抱いておいて…やり逃げ
するなんて、ズルイだろ…」
そんな悪態をつきながら、それでも窓から相手が来ることなどないと
半分諦めていきながら…ゆっくりと明けていこうとする紺碧の夜空を
眺めていたその時。
「…ほう、なかなか生意気なことをほざくじゃないか。それが…せっかくお前の
元に顔を出してやった人間に対して言うことか…?」
「えっ…?」
その瞬間、窓が開け放たれて…其処には克哉が愛用しているダークスーツと
赤いネクタイを纏ったもう一人の自分が立っていた。
予想外の出来事に克哉は一瞬、息すら出来なくなった。
絶対に今日もまた…一人で夜明けを迎えると思っていた。
なのに…どんな形であれ自分の密かに願っていたことが叶った瞬間…嬉しくて
涙が滲みそうになってしまった。
「…どう、して…?」
「…お前が望んだんだろう? 朝、目覚めた時に俺に傍にいて欲しいと…。
普段なら面倒だが、それがお前の望んだプレゼントなら…今日ぐらいは叶えてやるさ。
まあ、単なる気まぐれに過ぎないがな…」
相手の物言いは相変わらず可愛くなくてひねくれていた。
それでも今は全然気にならない。
こみ上げてくる喜びの方が遥かに勝ったからだ。
「…そっか。…ありがとう。嬉しいよ…」
「…しかしお前も欲のない奴だな。あの男に望めば、もう少し豪華なプレゼントぐらいは
用意してもらえたというのにな…。俺が朝、一緒にいるだけで本当に良いのか…?」
「うん、それが…オレがずっと望んでいたことだから…」
そういって、克哉は心から嬉しそうに微笑んだ。
ささいな願いでも、それはずっと叶えられることはなかった。
もう一人の自分に抱いている感情が何と呼ばれるものか、今はまだはっきりと
自覚したくなかったけれど…毎回、抱かれる度に目覚めたら相手の姿はない事に
寂しさを覚えていたから。
初めて…その望みを満たされて、克哉の顔には喜びだけが存在していた。
「…そうか」
その顔を見て相手も毒気を抜かれたのだろう。
それ以上の言葉もなく、無言でそっと克哉の横たわっているベッドの方へと
歩み寄っていく。
お互いのアイスブルーの瞳がぶつかりあっていく。
真摯に瞳を覗き込みあって、顔がゆっくりと寄せられていき。
「…今日ぐらいはお前の望みを叶えてやるよ…」
そういって、克哉だけのサンタクロースから…どこまでも優しい口付けが
与えられていった。
それがきっと、克哉にとっては最高のクリスマスプレゼント。
触れるだけのキスを交し合っている間に…ゆっくりと空が白く染まり始めて…
太陽が静かに浮かび始めていく。
朝日が輝いている中で、強気な笑みを浮かべているもう一人の自分に
克哉はうっかり見とれていきながら…ギュっと確認するように相手の
身体に抱きついていく。
「…ありがとう…『俺』…」
そして自分の下に来てくれたサンタクロースに向かって、克哉は
感謝の言葉を投げかけていった。
そう、完全な佐伯克哉になんてもう戻れなくて良い。
お互いに別個の心と身体を持っているなら、それぞれがこうして
存在しあって…こうして時折会話して、身体を重ねられる方がずっと良い。
―お前がこれからも、こうして…オレの傍にいてくれますように…
そうして克哉は白と黒のサンタクロースの悲しい逸話を頭の隅へと
追いやり…強く願いながら、相手の身体に抱きついていったのだった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
―クラブRの店内でもう一人の自分に抱かれて、克哉は意識を
手放し…少し経ってから、目覚めていった。
気づくといつの間にか自分は銀世界の中に立っていた。
シンシンと雪が降り積もる中…自分は泣いていた。
「何で、オレ…泣いて…」
涙腺が壊れてしまったかのように、とめどなく泪が溢れてくる。
ポロポロポロポロと、涙が溢れて…キラキラ輝く結晶となった。
それはまるで、自分の涙が宝石になる魔法でも掛けられてしまった
ような光景だった。
―だが自分の手のひらも身体も血で真っ赤に染まっていた
傍に倒れているのは黒い衣装を着たもう一人の自分。
真っ白な世界に、目にも鮮やかな『赤』が浮かび上がっていく。
相手の身体から…胸元から、血が溢れて…周囲の雪が染め上げられていた。
「あっ…あっ…な、んで…?」
何故、こんな光景が広がっているのだろうか?
克哉はさっきまで彼に抱かれて、幸せな気持ちに浸っていた筈なのに…
どうして目覚めたら、こんな悪夢のような光景が広がっているのだろうか?
「何で、こんな事になって…いるん、だよ…?」
信じたくなくて、克哉は必死に首を振っていく。
こんなの認めたくない。
誰か悪い夢だといって即座に指定して欲しかった。
しかし暫くの間…誰の声も聞こえることなく、耳に届くのは
時折強く吹きぬける風の音だけだった。
―それが貴方達が完全な一人の人間…本来の佐伯克哉に戻る為に
必要な過程だからですよ…
「Mr.R!」
頭の中に唐突に聞き覚えのある男性の声が木霊して、即座に
克哉は反応していった。
―貴方達はある出来事をキッカケに己の魂を二つに分けられておられます。
それぞれの佐伯克哉さんはとても魅力的で…私はどちらも素敵だと思って
おりますが…本来は一つだったものが二つに分かれているので…
片方が持つものを片方は持っていない、という非常にアンバランスな状態に
なってしまっている訳です…。
しかし本来の貴方は万能な存在。それこそ全ての力を覚醒させて…強い欲望を
持てば大抵のことは叶えてしまえるでしょう。
それだけの力が貴方には備わっている…ですから、これは私からの
クリスマスプレゼントです…。
貴方に一つに機会を与えましょう…。
この白と黒のサンタクロースの逸話のように…もう一人のご自分をクリスマスの
夜の間に手に掛ければ…貴方は万能の力を得られることでしょう。
その力を欲するのなら…この夢の通りになさって下さい…。
『完璧』な佐伯克哉に戻る為の…これが唯一の手段ですよ…それは
肝に銘じておいて下さいね…。
「あ、なたは…一体、何を言っているんですか…?」
それはまるで、呪いの言葉のように克哉の頭の中で鮮明に
響き渡っていった。
こんな事を自分は一切、望んでいない。
さっきだってもう一人の自分にはっきりとその意志を告げたのに…。
(なのに、こんな光景を見たら…まるで予知夢のようにすら…
これから本当に起こることのように感じられて、しまう…!)
例えそれが夢の中の事でも、自分は見たくなかった。
こんなに血の気のない顔で…己と同じ顔の男が息絶えて
しまっている処なんて。
「いやだぁぁぁ~~!」
胸の中に耐え切れない程の悲しさと切なさと、何と形容すれば良いのか
思えない感情がゴチャゴチャになって交じり合っていく。
その瞬間、全ての光景がかすみ始めていった。
それは夢の終わりを告げる予兆でもあった。
―オレは…お前をこの手に掛けるなんて、絶対に嫌だ…。
自分がそれで不完全な存在になったとしても…自分は、あいつの事を…
口には出せないけれど、心憎からず想っているからだ。
『オレはお前が…好きなんだ! だから、こんな夢はもう見たくない!
お前が消えるなんて真っ平ごめんだ!』
克哉は勢い良くそう叫んでいくと同時に…再び、世界はホワイトアウトして…
ゆっくりと彼の意識は覚醒していったのだった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6 7 8 9
現在の日本では、赤い衣装のサンタクロースのイメージが
強く定着している。
だが、そのイメージは近年になって世界中に広がったもので…
サンタクロースの逸話、もしくは原型になったと思われるものは
無数に存在している。
一番有名であり、有力なのが四世紀の司教…聖ニコラスの
話である。
莫大な財産を持っていた彼はある日、貧しい家で娘が身売りに
される話を聞いた。
ある晩、それを助ける為にその家の煙突から金貨を投げ入れて
それが暖炉に下げられていた靴下に入った…という逸話から
靴下にプレゼントを入れたり、煙突から中に入るというイメージが
生まれたとされている。
他にもサンタクロースは司教や、魔法使いの話が原型に
なっているパターンもある。
ドイツの方では双子の魔法使いで片方は優しい魔法使いで、
良い子にプレゼントを配る存在、もう片方は悪い子にしていると悪戯して
お仕置きにやってくる西洋版のなまはげのような一面もあるし。
ロシアの方ではサンタクロースと双璧を担う存在として「ジェドマロース」と
いうのがいる。
ジェドマロースは「邪悪な魔法使い」であり…冬の神の象徴であった。
そして大きな袋を担いでその中に子供を詰めて、子供を返して欲しかったら
彼に供物を捧げなければならない。
地方によって様々な伝承があり、良いイメージと共に…邪悪な印象もまた
存在していた。
善と悪。白と黒…それらが一つに交じり合って、今のサンタクロースの
像は生まれている。
白と黒のサンタクロースの逸話もそう。
発祥の元ははっきりしないけれど…ドイツやロシアのサンタの双璧を成す
「悪い魔法使い」が元で生まれたのかも知れない。
―けれど自分の対となる存在を打ち消すという事は悲しいと克哉は思った
悪戯っ子でも意地悪でも、それでも…自分はきっともう一人の『俺』の事を…
快楽の熱に浮かされた頭で、その本心にぼんやりと気づいていく。
視界に広がるのはともかく鮮やかなまでの真紅。
目の前には黒い衣装を纏った、自分と同じ顔の男。
相手に深々と串刺しにされながら…克哉は容赦なく揺さぶられて快感を
引きずり出されていた。
「はっ…あっ…あっ…ああっ!」
克哉の口から漏れるのは、絶え間ない嬌声だった。
こんなあられもない声など恥ずかしくて出したくない。
けれど、相手が的確にこちらの弱いところを擦り上げていけば…
反射的に零れていってしまう。
―傍にいてくれよ…
心に願うのは、たった一つ。
そんなシンプルな答えだけだった。
―お前が消えるのは嫌だよ。オレは…自分が不完全な存在になっても
良いから、お前に存在していて欲しい
相手の灼熱をその身に収めていきながら…克哉は必死になって
その背中にすがり付いていく。
深く口付けられて、眼鏡だけで全てが満たされていく。
熱い舌先も…ペニスも、今は克哉の理性を蕩かすだけだ。
グチャヌチャ…と互いに腰を蠢かす度に接合部から水音が響き続けて
快楽を追う以外何も考えられなくなる。
「ひっ…ああっ…ん、あっ…あっ…も、ダメだ…よ…! おかしく、なる…!」
「あぁ、せいぜい快楽に狂うと良い…。お前の乱れる姿を見ててやろう…」
「や、だ…そんな、目で…オレを、見るな…よぉ…」
相手の瞳が鋭く、熱っぽいものへと変わっていく。
視線でも犯されていくようで…もう限界と思っていたのに更に身体の熱が
高まっていくのを感じていった。
もう何も考えられない。
日常の中で渦巻いている余計な考えが、一切消えうせていく。
残った答えはただ…今は相手が欲しくて仕方なくて、そして…消えてなど
欲しくないという単純明快なものだった。
―傍に、いてくれよ…
滅多に会えない存在。
だから…どんな形でもこうして目の前にいてくれる事自体が
克哉にとっては何よりのプレゼントであり、サプライズだった。
―今だけでも、お前を…感じていたい、から…
身体をつなげても…相手を引き止められる訳ではない。
きっと目覚めればいつものように眼鏡は消えているだろう。
毎度の事だから判りきっている。
けれど…なら、せめて意識が落ちるまでで良いから…その存在を
自分に刻み付けて欲しいと…そう願いながら、克哉は夢中で腰を振って
相手の快楽を引き出していく。
行為を続けている内にお互いに余裕がなくなって…相手の性器が己の中で
大きく張り詰めていくのが判った。
「んっ…はぁ…! も、ダメだ…『俺』…!」
「はっ…俺も、もう…イクぞ…」
そうして…お互いに余裕ない顔を浮かべていきながら絶頂へと
登り詰めていく。
その瞬間だけは何も考えられなくなった。
「あっ…あああー!!」
そして一際高い嬌声を上げて、克哉は意識を手放していく。
気が遠くなっていく。
それでも…少しでも相手の事を脳裏に刻み付けておこうと…力の
入らない腕でしっかりと抱きついていった。
―オレが目覚めた時に、お前の存在がいてくれる事が…きっと
一番のプレゼントなんだけどな…けど、それは叶わないんだろうな…
そう心の中で思いながら…克哉の意識が完全に閉ざされる間際…
もう一人の自分は強気に、そして意味深な笑みを浮かべていたのが
うっすらと見えたのだった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6 7 8
―相手の舌先がこちらの口腔を蹂躙するような勢いで
滑り込んできて、官能を引きずり出していく
その感覚に早くも克哉は腰砕けになりかける。
頭の芯がボウっとして、満足に考えることすら出来なくなりそうだった。
「はっ…あっ…ぁ…」
甘い声が唇の端から漏れていく。
相手の袖にギュっと捕まり、辛うじてすがり付いていった。
キスだけで全てが蕩かされてしまいそうだった。
早くもうっすらと快楽の涙が潤んだ双眸を相手に向けていくと…
もう一人の自分は愉快そうに微笑んでいくだけだった。
―どうして、赤い衣装じゃないんだろう…?
その瞬間に猛烈な違和感を覚えた。
真紅の色彩で染め上げられた室内。
きっと相手がサンタクロースの衣装の基本である赤い服を
着ていたならこの部屋の色彩に馴染んでいただろう。
だが、相手の着ている服は黒で…克哉の方は白。
白と黒のサンタクロースの衣装なんて、克哉は聞いたことがない。
どうしてだろうか…?
キスに反応して、相手が欲しいと思う気持ちがゆっくりと湧き上がって
くる中で…克哉はその色に猛烈な疑問を覚えてしまった。
「なあ…どうして、オレ達の服は…赤く、ないんだ…?」
それはこの衣装を渡されて袖を通すように言い渡された時から
ずっと感じていたことだった。
その瞬間、眼鏡の顔は微かに歪んでいく。
「…サンタクロースの逸話をお前は知らないみたいだな。なら…良い。
教えてやろう…。最初、サンタクロースは二人いたって話を聞いた
事があるか…?」
「そう、なの…? まったく聞いた事ないけど…」
「白いサンタクロースと黒のサンタクロース。白い方は真面目に
プレゼントを配送していたが、黒い方はいたずらばかり。
そして業を煮やした白いサンタクロースは…黒いサンタをついに
自らの手で殺してしまった。そして…その返り血を浴びた為に…
サンタの衣装は赤くなったという逸話だ。ゾっとするような話だろう…?」
「っ…!」
そう語ったもう一人の自分の目は怖くて、一瞬克哉は竦んでしまいそうになった。
だが、相手の言葉は更に続いていく。
「…この辺の逸話を嬉々として俺に聞かせたのはRの奴だがな。奴の話では
ドイツの方ではサンタクロースは双子で、片方は良い子にしているとプレゼントを
配って…もう一人は悪い子にお仕置きを与えるんだそうだ。
双子っていう設定がなかなか面白いと思ったらしくてな…それでこの衣装を
あいつは用意して、こう言った訳だ。「伝承の通りにされるのもなかなか
面白いのではありませんか…?」とな…」
「そん、なの…どこが面白いんだよ! それじゃあオレがお前を刺し殺すって…
そういう話じゃないか!」
「…くくっ…! 引っかかったな。確かに最初に刺し殺す方の話をしたから
お前は勘違いしたようだが…俺はあくまで、白い方は真面目にプレゼントを
配って、黒い方はいたずらばかりという感じで贈り物をするのも一興と
思って承諾しただけだ。ま…その悪戯は真面目なサンタクロースの方に
阻まれてしまった訳だがな…」
「あっ…!」
会話をしている間に、相手の下肢がこちらの足の間に割り込んで…
直接的な熱を押し付けてくる。
その瞬間、ソファが大きく軋んで相手の体重が掛かってくるのを感じた。
服の生地越しとは言えその生々しい熱を感じ取って…克哉の顔は真っ赤に
染まっていく。
「…そ、ういう…意図でお前が承諾したとしても…オレは、この衣装にはそういう
逸話が込められているって聞かされて…嫌な気分になったよ。
オレは、赤い衣装になんてしたくないよ…そんな話、久しぶりにこうして会ったのに…
聞かせる、なよ…バカ…」
実際にお互いにその衣装を着ているからだろう。
何となく聞き流すことが出来なくて、怖い気持ちがジワっと競りあがってきて…
相手に克哉のほうからすがり付いていく。
そんな逸話の通りになんて、なりたくない。
白と黒のサンタは、自分の双子を…もう一人の自分を殺すことで完成されたと
いうのなら…自分は、一人の人間になんてなりたくない。
不完全でも…自分は、こいつと…。
「オレは、お前と、一緒にいたいのに…」
懇願するように、気づけば呟いて…涙を零していた。
自分と同じ顔をした男に、強く抱きついていった。
いなくならないで、消えないで…。
プレゼントなんていらない。
怖い話を聞かされて背筋が凍ったからこそ嫌でも気づかされる。
―自分はこの男と一緒にいたいのだという気持ちを…
相手の首元に腕を回してきつく抱きついていった。
泣き顔を見られたくなくて眼鏡の胸元に顔を擦り付けていく。
双子のサンタクロース。
自分達は双子じゃない、けど…同じ顔をした存在なのは確かで。
嗚呼、頭の中がグチャグチャだった。
クリスマスの夜に…こんな衣装を実際に着ていなければ、
そして自分達の顔が同じでなかったらこんな恐怖を覚えなかったかも知れない。
けど、このシチュエーションで…その話を聞かされるのはゾっと
してしまったのだ。
「…もう二度とその話はするなよ…。聞いてて愉快じゃないから…」
「どうして、だ…?」
意地が悪い笑みが相手の顔に浮かんでいるのに気づいて…
克哉は拗ねたような表情を浮かべていった。
「…その話じゃまるで、オレがお前の存在を殺すみたいで嫌だ。
困った奴だと思うけど…お前の事をオレは嫌いじゃないんだ…。
だから、もう聞きたくない…」
「…くく、お前は本当に素直じゃないな…」
「何だって、んんっ…!」
克哉の言葉を聞き終わると同時にもう一人の自分に強い力で
引き寄せられて唇を塞がれていった。
濃厚で、脊髄が蕩けるような甘い口付け。
相手と自分の舌先が絡まりあい、強烈な快感が走り抜けていく。
たっぷりと口内を蹂躙され、腰砕けになると…強気な笑みを浮かべて
いきながら、眼鏡が告げていった。
「…素直に俺の事を好きだと口に出したらどうだ…? そんな風にすがり付いて
怖がっている癖に…言い方が遠回しで可愛くないぞ…」
「そんな、事は…ひぃあ!」
いきなり相手に下肢の衣類を強引に剥ぎ取られて、足を大きく開かされた。
反動で、克哉の下肢に息づいていたペニスがプルンと大きく震えて…
相手の眼前にアヌスと一緒に晒されてしまう。
相手の目線が己の下半身に注がれていることに気づいて、克哉の顔は
真紅に染まりきっていく。
だが相手は心底愉快そうに微笑みながら、こちらを凝視してくるだけだ。
(う、うううっ! どうしてコイツはいつだってこんなに意地悪なんだよ~!!)
その手際のよさに克哉は抵抗すら殺がれてしまう。
せめて相手の身体を押し返して阻もうとするが、それも全ては
無駄なことだった。
「ま、待てよ…まだ、心の準備が…!」
「待つ気はないな…抱くぞ、なあ…『オレ』…」
「あっ…あああっ!」
そして克哉の意思などまったく無視する形で、もう一人の自分は
蕾にペニスを宛がって…強引に侵入を開始していったのだった―
2009度のクリスマス小説。
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6 7
克哉が唐突に意識を失ってから結構な時間が経過していた。
いつの間にか時刻は日付変更を過ぎて、イブからクリスマス当日に
入っていた。
「んっ…はっ…」
克哉は悩ましい声を漏らしていきながら、ゆっくりと意識を覚醒
させていった。
目覚めた途端に視界に飛び込んだのは、鮮やかな真紅の色彩だった。
いつの間にか赤い天幕に覆われた部屋に移動して、其処で眠って
いたらしい。
「ここ…確か、あいつと初めて顔を合わせた場所じゃないのか…?」
この奇妙な感覚は以前にも覚えがあった。
カードがキッカケになったのは今回が初めてだが、確かいつも柘榴の実を
かじるとこういう展開になっていた気がする。
「やっと目覚めたか…随分と待ちくたびれたぞ…」
「えっ…」
すぐ傍でもう一人の自分の声が聞こえて慌てて振り返っていくと…其処には
さっきと同じ黒い色彩のサンタ衣装に身を包んだ、自分と同じ容姿をした
男が座っていた。
どうやら克哉が横たわっていたのと同じソファの上に腰を掛けて、こちらが
目覚めるのを待ってくれていたようだ。
「あの…ここは一体…?」
「おいおい、お前は何度もここに来た事があるだろう? ここはあの男…
Mr.Rの運営する店の中だ。クラブRという名前ぐらいは聞き覚えがあるだろう?」
「えっ…うん、確かにうっすらと聞いた事があるような…気が、する…」
そう、クラブRという名前は何度も黒衣の男性にようこそ、と挨拶された事が
あるから記憶の底に引っかかっていた。
日常を送っている間は意識の其処に沈められていた記憶が…ゆっくりと
浮かび上がってくる。
―そうだ、思い出した…。オレは確か一番最初はここで…あいつに…
初めて、もう一人の自分とそれぞれが個別の肉体を持って対面した場所。
そしてなし崩し的に抱かれて、良いようにされてしまった…その快感を
伴う記憶が思い出されて、克哉の顔は一気に赤く染まっていく。
「あっ…」
耳まで火照って、茹でダコのように自分の顔が真っ赤になっていく
自覚はあるが…こういう反応はそもそもコントロール出来るものではない。
傍らに座っているもう一人の自分が、意地悪そうに微笑んでいるのが
目の端に入ってくる。
(ううっ…きっとこいつは、オレが今何を考えて…赤くなっているかなんて
きっとお見通しなんだ…!)
そう思うと悔しくなってつい唇を軽く噛み締めていくが…相手の腕が
不意にこちらの肩に回されていくと、フっと克哉の身体から力が
抜けていった。
自分と同じ造作をした…整った顔立ちが目の前に存在している。
「…何を一人百面相をやっているんだ…?」
「うる、さいな…。どうだって良いだろう…!」
相手からスルリと頬に手を伸ばされていく。
触れられた箇所の血が沸騰しそうなぐらいに熱くなっているのが
自分でも判る。
どうして、こんな男にときめいているのだろうか…?
(何で、オレ…こんな意地悪でどうしようもない奴に…ドキドキして
しまっているんだろう…。これじゃ、コイツに恋をしているみたいじゃないか…!)
心の中でそう自分自身にツッコミたくなった。
とっさに相手から顔を背けようとして目を逸らそうとした瞬間…。
「…おいおい、つれない反応をするなよ…なあ、『オレ』…」
「っ…はっ…!」
耳元で掠れた声で囁かれて背筋がゾクっと粟立つ。
抵抗を殺がれた途端に、相手の指先がこちらの顎をしっかりと捉えていき…
克哉は強引に唇を塞がれて、荒々しく口付けられていったのだった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6
クリスマスイブの夜にもう一人の自分が唐突に現れ、赤ではなく、
白と黒のサンタクロースの衣装に身を包み…今年、自分と深く関わった
五人の相手にクリスマスプレゼントを一緒に配ることになった。
そして最初の秋紀の家に行った時に意味深な笑みを浮かべて
いきながらもう一人の自分は確かにこういった。
―この埋め合わせはお前自身に取って貰うぞ…
目の前で他の人間を…秋紀をもう一人の自分に抱いて欲しくなくて
阻んでしまった時、確かに彼はこういった。
おかげで本多、片桐、太一、御堂の家にそれぞれ回っている間も
その発言が頭の中でグルグルと回っていて、集中出来なかった。
秋紀の時には積極的に自らチョッカイを掛けようとしていた癖に
他の家を回っている時は眼鏡は非常に大人しかった。
その事に克哉は軽く拍子抜けをした程だった。
むしろ寝ている皆の方がなかなか愉快だったり意外な反応を
見せていたくらいだった。
本多は寝ぼけて眼鏡の方に強く抱きついて、渾身の一撃を喰らって
床に撃沈をする羽目になり。
片桐はメソメソしながら克哉の方にしがみついて…こちらが
全力で肩を叩きながら慰めて寝かしつけることになり。
太一は寝ぼけている間、眼鏡を異常なぐらいに敵視して思いがけない
黒い一面を見せていき。
御堂に至っては二人の克哉に対して非常に威圧的な態度を決して
崩さずに、寝ぼけていても妙に凛々しさを感じさせていた。
それでも基本、全員が眠り薬で眠らされている状態だったので
意識を覚醒させても10分前後で再び寝入ってくれたので…プレゼント
配達自体はスムーズに完了した。
そのおかげで日付変更間際には克哉の自宅のマンションに戻ることが出来て、
克哉はホっと一息をついていった。
「は~これで無事に終わったんだよな~。つっかれた~」
「…あぁ、とりあえず今夜用意してあったプレゼント箱はこれで殆ど
配り終わった。後はゆっくりとするだけだな…」
「…へ? 殆ど…? まだ一つ残っているのか…?」
「ああ、お前宛のが一つ残っている。最後のプレゼントはお前のだ」
「えっ…?」
ただ一方的に手伝わされるだけだと思っていただけに、今の眼鏡の
発言は虚を突かれて驚いてしまった。
しかし嬉しいという気持ちも同時に湧き上がっていった。
「オレに…プレゼント、用意してくれていたんだ…」
「ああ、まあ…用意したのはあの男だがな。良かったら開けてみろ…」
「うん!」
そうして眼鏡は一通の封書を懐から取り出して克哉に手渡していった。
(手紙…? 何かのチケットか何かかな…?)
他の人間に配ったプレゼントがそれなりの大きさの物ばかりだったのに
比べて…克哉用に用意されたものはどうみても手紙だった。
だが、どんな形であれ贈り物が用意されていたことに嬉しくて…
克哉は警戒心を怠ってしまった。
其れを素直に受け取って、相手に尋ねていった。
「ねえ…これ、すぐに開けても良いのかな…?」
「ああ、好きにしろ…」
「ん、判った。じゃあ…開けさせてもらうね…」
そうして克哉は丁寧な手つきで手紙を開封していった。
其処には一枚のメッセージカードが入っていた。
そして流暢な文字で簡潔にこう記されていた。
『一仕事、どうもお疲れ様でした。
今宵、私のお店に改めて貴方様を招待させて頂きます。
甘美な一夜をどうか…もう一人のご自分と過ごされて下さい
Mr.Rより愛を込めて』
最後の署名まで目を通した瞬間、ふいに部屋中に甘い香りが
いつの間にか漂っていたことに気づいた。
「っ…! 何だ、この甘い香りは…?」
その匂いは脳内を官能的に蕩かすような…蟲惑的な芳香だった。
あ、と思った時にはすでに遅かった。
猛烈な眠気とだるさを同時に覚えていく。
指先の一本すら満足に動かせない状況に追い込まれていった。
「な、んだよ…これ…」
克哉はようやくこの段階になって危機感を覚えていった。
その瞬間、もう一人の自分の声が鮮明に頭の中に響いていった。
―さあ、もう日付が変わる頃だ…。そしてクリスマス当日を迎える…
お前に忘れられない一夜を俺からプレゼントしてやろう…
その言葉を聞いた瞬間、期待するように…克哉の背中に甘い痺れが
走りぬけていく。
「意識、が…もう、遠く…」
そう力なく克哉が呟いた次の瞬間…重い暗幕に覆われてしまったかのように
克哉の意識は急速に闇の中へと落ちていった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4 5 6
秋紀に抱きつかれた瞬間、克哉は心の底から困り果てていた。
だが、背後にもう一人の自分が立っていることを思い出すと、このまま
相手に投げる訳にはいかないと思った。
(どうしよう…! けど、このまま逃げ出したら、『俺』とこの子のラブシーンや
エッチシーンを見る羽目になるかも知れなくて…うわっ! 何かそれちょっと
嫌だよな…)
克哉が頭の中でパニックになりかけている間も秋紀はグイグイとこちらの
腕の中にしがみついてくる。
その力の込めっぷりから、どれだけこの少年がもう一人の自分と再会を
したいと思っていたのか伝わって来て胸が締め付けられるようだった。
「克哉さん、克哉さん…克哉さん!」
小さな声ながら、眠りの世界に半ば意識が引きずられている状態ながら
秋紀は必死にこちらの名前を呼んでくる。
それがいじらしいと思うと同時に、やはりちょっとチリリと焼け焦げるような
感情を呼び覚ましていって。
(御免ね…目の前に『俺』がいるのに…邪魔しちゃって。けど、オレも…
どっかで会いたいと思っていたから…)
せめて好きなように相手に抱きつかせてあげよう、となどと情け心を
出してしまった。
その瞬間、克哉は少年から思いっきり首元にしがみつかれて…唇を
奪われてしまった。
「っ!」
「ん…ふっ…」
少年はつたないながら必死にこちらの口腔に舌を絡めて来て、
克哉の方は混乱しながらも…抵抗する気力を失い、成すがままになっていく。
久しぶりの官能的な感覚を味わって、背筋にゾクゾクしたものが
這い上がって来そうだった。
それに流されそうになった時、背後からヒヤリとした声が聞こえてきた。
「…お前達、俺を放っておいて…随分と愉しそうな事をしているじゃないか…?
どうせなら俺も混ぜてくれないか…?」
「ん、んんんん~!」
その声で正気に戻って、克哉は慌てて秋紀を引き剥がしていった。
このままではこの少年もろとも、自分も眼鏡の毒牙に掛かるかも知れないと
思ったら自己防衛本能で、全力で濃厚な口付けから逃れていた。
もう一人の自分に抱かれるのが嫌な訳ではないが、この少年と一緒に
可愛がられるのだけは何だか気持ち的に嫌だった。
(…どうせなら、二人きりの状態で抱かれたい…。他の奴と一緒っていうのは
ちょっと…って、何を考えているんだ~!)
自分の本心をうっかり省みてしまって、克哉は顔を真っ赤にしていく。
気分は一人百面相である。
克哉が勝手に浮き沈みを繰り返している間に…もう一人の自分の指先は
秋紀の方に伸ばされていき。
「寂しい想いをさせたな…秋紀。その代わり俺が今夜は存分に可愛がって
やるぞ…目一杯悦べ…」
「だ、ダメだ…一方的にそんな事…!」
「何を言う? コイツの心はこんなにも俺を一途に求めているんだぞ…?
サンタクロースとして願いを叶えてやるのが筋ってものだろうが…? なあ…?」
「ダメったら、ダメだー!」
克哉は必死になって叫んでいく。
だが、肝心の秋紀はどうしているかというと…。
「克哉さんとキッス…幸せ……スウッ……」
と言って、こっちと気が済むまで強く抱きついてキスをたっぷりしたことで
満足したらしく、まさに天使の寝顔といった風で安らかに眠りについていた。
眼鏡が必死になって揺さぶっても、全然起きる気配はない。
幸せそうな寝息を立てて、ぐっすりと眠りこけていた。
「ねえ…『俺』…一言、良いかな……」
「何だ、言ってみろ…」
克哉がおずおずと手を挙げていきながら口を開いていくと相手は
不機嫌そうに応えていく。
それに一瞬怯みそうになったが、それでも負けじと言葉を続けていった。
「もしかしてMr.Rの薬が強すぎたんじゃないかな…? それにこの子、
さっきのキスだけでもう満足してこんなに幸せそうだよ…?」
「チッ…認めたくないが、そうみたいだな…」
「なら起こさないで、このまま寝かしてあげた方が良くないかな…?
幸せな眠りを妨げるのは良くないと思うよ…」
「…そう、だな。寝ている相手をどうこうしても反応がイマイチであまり
愉しくないからな…」
「それ以前に、人の寝込みを襲うっていうのは充分犯罪レベルだろ!
そういうのを強姦っていうんだぞ! 少しはモラルを考えろ~!」
克哉が思いっきり叫んで突っ込んでも相手は何処吹く風である。
…そうだ、こういう男だった。
どうして自分はこんな男にうっかりと心惹かれつつあるのか非常に
疑問に思いつつ…克哉はガックリと肩を落としていった。
(こ、このぐらいでメゲていたらこいつとはこれ以上付き合えない…
頑張るんだ、オレ…)
こっそりと自分を励ましつつ、克哉は気を取り直していった。
「ほら、『俺』…この子をベッドに上げる手伝いをしてよ…」
「…ああ、判ったよ。仕方ないな…」
そうして二人で協力して、優しく相手をベッドの上へと引き上げて横たえていった。
秋紀は相変わらず、幸せそうに微笑みながら眠り続けている。
見ているだけで妙に和んで癒されそうな顔だった。
(赤ちゃんみたいな感じだな…。こういう顔をして寝ているとこの子はまだ…
子供なんだなっていうのが良く判るな…)
好きな相手に会って、抱きしめられてキスされる。
たったそれだけの事でも、この少年にとってはとても幸せなことだったのだろう。
セックスだけで満たされる訳ではない。
求めている方の佐伯克哉じゃなくて悪かったなという想いがあるが…
それでも追い求めていた相手に会えたという事実だけがこの少年を
満たしたのだろう。
本当にそれは…幸福な寝顔だったのだ。
「おやすみ…どうか、良い夢を…」
せめて祈りながら克哉は同じ相手に片思いをしている少年に…
穏やかな声で告げていった。
もう一人の自分も、それにチャチャを入れたり邪魔したりはしなかった。
「…さあ、次のプレゼントを配りに行くぞ。まだ四人ほど残っているからな…。
さっさと行くぞ…」
「えぇ! そんなに配る相手がいるの! すっごく大変そうじゃない?」
「ごたくは良い…。とりあえず最後まで今夜は付き合ってもらうぞ。今やった事の
埋め合わせはお前自身に取ってもらうことに決めた。さあ行くぞ…」
「えっ…?」
その一言に克哉はドキン、と胸が高鳴った。
深く捉えると、それは…もしかしてと思ったからだ。
だが克哉が迷っていると相手から少し怒気を含んだ声で促していった。
「ほら、さっさと行くぞ…」
そういって立ち去る間際、不機嫌そうな黒いサンタは…袋から
一つのプレゼント箱を置いていき、そして二人で秋紀の家を立ち去って
いったのだった―
克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
ネタに使っているので宜しくです。
微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。
白と黒のサンタ 1 2 3 4
あの朝、自分の隣にいた少年―秋紀の自宅は予想以上に立派な
豪邸だった。
気まぐれな猫を思わせる印象の少年の自宅がこんなにも
大きなものであった事に改めて克哉はびっくりしていく。
(結構お金持ちの家の子だったんだな…)
少年の自室に向かっている最中も所々に置かれている調度品の
類もどれも高価そうなものばかりだった。
その家に置かれている家具や調度品を見れば、どれだけの
資産力を持っているのか推測がつくというが…チラっと見ただけでも
この家はかなりの資産家である事が見て取れた。
きっとこんな家だったらセキュリティとかも普通は万全じゃないのか?と
フっと考えた瞬間…克哉は青ざめそうになった。
「な、なあ…この家の防犯システムとかそういうのは大丈夫なのか?」
「…大丈夫だろう。あの男が一応、そういう面倒くさい類のものは
全部予め切っておいたとか言っていたからな…」
「へっ…? あの人…そんな芸当も出来るのか…?」
「…あの神出鬼没の得体の知れない男の事だ。それくらいの事ならば
朝飯前の事だろう。そもそも…俺たち二人をこうやって同時に現実に
存在させるような真似をしでかす男をまともに常識で図るつもりか?」
「…御免、オレが悪かったよ…」
そうだ、目の前に奇跡の産物が当たり前の存在しているからその辺が
麻痺していたが…確かにあの謎だらけの男性だったら豪邸に設置
されているセキュリティ装置を無効にするぐらいは簡単にやってしまいそうだ。
真っ当に常識だの何だのを考えている方がバカを見ると想い…深く
ツッコむ事も考えることを止めた。
(まともに考えたらこっちが負けだ…)
その心理にようやく思い至り、相手と同じデザインの白いサンタ服を
身に纏った状態で廊下を進んでいく。
「…この部屋だな」
「まだ早い時間帯だね…。起きているかも知れないよ…」
現在の時刻は21時半。
あの少年は見た処、高校生ぐらいの年齢だったが…クリスマスイブの日に
それくらいの年齢の子がこの時間に就寝しているとは考えにくかった。
「ああ、心配ない。あの男が今夜俺たちがプレゼントを配る予定の
人間は全員…予め一服を持って寝かしつけてあると言っていたからな。
少しぐらい物音を立てたぐらいじゃ起きることはないそうだ」
「えええ~! そ、それって犯罪じゃ…!」
「…別にそれで悪さをする訳じゃないんだから良いだろう? さあ…行くぞ」
克哉がためらっている間に、相手は迷いない動作で部屋の扉を開けて
中に滑り込んでいった。
自分ばかりが立ち止まっている訳にはいかない。
そう考えて後を追いかけていくと…豪華な内装の室内、キングサイズのベッドの
上にはあの見目麗しい外見をした少年が安らかな顔をして寝入っていた。
(…こうして見るとこの子も年相応な感じだな…。可愛い…)
目を閉じて眠っている秋紀の表情は少し幼く見えてしまって…妙に
庇護欲を掻き立ててきた。
「さて、後に予定が詰まっている。さっさとプレゼントを置いていくぞ…」
そうしてやや小さめのホールケーキでも収まっていそうなサイズのプレゼント箱を
白い袋から取り出していって眼鏡はベッドサイドに其れを置いていく。
その時の相手の目が…普段よりも少しだけ優しい色を帯びているように
見えてしまって克哉の胸は小さく痛んでいった。
(な、何だ…この感情は…。どうしてこんなに…)
無意識のうちに胸を手で押さえていきながら…少年の方へと歩み寄っていく。
まさに天使の寝顔といった風情だった。
あれから数ヶ月が経過して、それ以後一回も顔を合わせていなかったから
記憶が曖昧になっていたが…やはりこの少年の容姿は整っていて、見ていると
妙にドキマギしていく。
だが、次の瞬間…眼鏡が秋紀の額にそっと口付けていった。
「えっ…?」
その行動に、克哉はアッケに取られていく。
だがそうしている間に眼鏡は今度は唇にキスを落としていこうとして…
とっさに叫んでいた。
「な、何をやっているんだよ! お前…人の寝込みを襲うなんて犯罪だろ!」
「…何を言う。これはコイツの望みだぞ? 俺にもう一回会いたい…抱かれたいと
いうのがコイツの願いだ。今夜は俺たちはサンタクロースだと言っただろう?
サンタクロースが願いを叶えなくて何だというんだ?」
「は…?」
予想もしていなかった答えが返ってきて、克哉は間の抜けた声を漏らしていく。
だが、胸の中がモヤモヤして…暗く染まっていきそうだった。
相手がこの少年にキスをしようとして、抱こうとしているのを見て…明らかに
イライラしている自分がいた。
自分が目の前にいるのに、他の人間となんて許したくなかった。
その想いが無意識のうちに眼鏡と少年の間に自らの身体を割り込ませて
さえぎらせるという行動に出ていたのだろう。
己の身体で、相手を阻んで少年にそれ以上触れられないようにしていた。
そして克哉にしては珍しく…不機嫌そうに本音を告げていった。
「…それが…この秋紀って子の願いなら叶えてあげるのが筋だと思うけど…
けど、オレはお前が他の人間を抱く姿を見たくない…」
「ほう? それは嫉妬か?」
「…そうかも、知れないね…」
心の中に黒いものが滲んで広がる。
それ以上、どういえば判らないでいると…いきなり、克哉の手に柔らかい
指先が触れていた。
「えっ…?」
克哉はびっくりしていると、其処にはとても綺麗な二対の緑の瞳が
輝いていた。
「克哉さん…? 本当に、克哉さんなの…?」
その瞳はまだ半分、夢の世界を彷徨っているような感じだった。
現実と夢の狭間、どちらに今…自分がいるのかさえ判っていないような
曖昧な雰囲気だった。
だが声の調子だけで、どれだけこの少年がもう一人の自分に会いたいと
思っていたのか伝わってしまって…どうしても突っぱねるような態度を
取れなかった。
「そ、うだよ…」
だから、克哉が正直に答えていくと…次の瞬間、秋紀は全力で
こちらの胸の中に飛び込んできたのだった―
10 | 2024/11 | 12 |
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
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リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。