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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 このややこしい設定をどうやったら読み手に判りやすく伝えられるだろうって
試行錯誤していたら予定より大幅に遅くなりました(汗)
 待たせてしまって申し訳ありません~。

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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 ―二人の佐伯克哉は、同時に予想だにしていなかった光景を
間の当たりにすることになった

「御堂……?」

「御堂、さん……?」

 もう一人の自分と御堂の身体がうっすらと透明になり始めているだけでも
驚愕したというのに、更に横たわっている御堂の傍らには完全に透き通り
輪郭だけが浮かび上がっている、もう一人の御堂の姿が存在していた。
 映画などで、幽霊や精神体がホログラフのように揺らめいている
演出が良くされるが、もう一人の御堂はまさにそんな感じであった。

「…………」

 さっきまで激しくもがき苦しんでいたのが嘘のように…ベッドの上に
寝そべる御堂の容態は安定し始めていた。
 だが、もう一人の御堂は怒りに瞳を爛々(ランラン)と輝かせながら
二人の克哉を睨みつけている。
 言葉には出さないが、その眼差しだけでどれだけ深く…不当に
命を奪われた方の彼が、こちらを憎んでいるのか判ってしまった。

「御堂、さん…」

 それでも、克哉は御堂に向かって問いかける。
 この人の痛みが、苦しみが判る気がしたから。
 案じるように手を伸ばし語りかけていくが…それを相手は安っぽい
同情を向けられたと判断したようだ。
 カッと鋭く幽体の御堂の瞳が見開き、恫喝していった。
 
―どうして、お前のために…私が死ななければならなかったんだ!!

「っ…!」

 その一言を放った瞬間、眼鏡の方は苦しげに眉を潜めていった。
 すまない、ともごめんなさいとも最早…安易に謝罪の言葉を掛けられる
ような雰囲気ではなくなっていた。

―その顔を見るだけで、どれだけ眼鏡が御堂の死に関して苦しんでいるか
後悔しているのか克哉には充分に見て取れた

 だが、憎悪の感情に囚われてしまっている今の御堂には…眼鏡の
顔に浮かんでいる悔恨の想いに気づけずにいる。

―私が、私がどれだけ苦労をして…若くして、これだけのものを築き上げたと
思っているんだ! 周りの者が遊び回ろうとも、どれだけ嫉妬されようとも
自分の信じる道を進み続けて、道を作り続けて来た! なのに…ずっと
努力して作りあげたものを、お前に全て壊されて無にされた!
やり直す機会すらも与えられずに…私は、命すらも奪われた!!
 お前だけは、絶対に許さない!

「っ…!!」

 その瞬間、もう一人の自分が顔を背けた。
 まるで心臓病の患者が激しい発作を起こしてしまった時のように
強く胸を抑えて、不規則に喘ぎ続ける。
 その反応を見て、克哉は判ってしまった。
 もう一人の自分は…御堂を、やはり好きなのだと。
 だからこそ、彼からの一言一言が鋭い刃となって深く心を切り裂いていく。

「…す、ま……」

 眼鏡が、そこまで言い掛けて…口を閉ざしていく。
 そして自分の顔を決して誰にも見られまいと…顔を俯かせていった。
 たったそれだけの言葉、けれど…今では完全に分断されてしまっているのに…
否、完全に分たれたからこそ客観性を持って観察出来てしまった。
 克哉はそれで気づいてしまったのだ。

―彼は本当に御堂に対して心から「すまない…」と告げようとした事を…

 言外の想い。
 御堂程の理性的なはずの人間を、殺人という行為に走らせるまで追い詰めてしまった
根底にあるのは…眼鏡の、御堂に対しての強い執着のせいだった。
 彼は御堂への想いを、相手を屈服させて自分に服従をさせようという間違った
方向に向かってしまった。
 それ故に罪を犯し…取り返しのつかない結果を招いてしまった。
 克哉は、その想いを知っている。
 この肉体は、元々…今、目の前にいる方の彼の物でもあった。
 御堂に対して言葉を詰まらせて何も言えないままでいる彼に強い
共鳴を示していく。
 その瞬間、この脳内に一度は刻み込まれた彼の記憶が…鮮明に再生されて
走馬灯のように勢いよく走り抜けていく。

(『俺』の…心が、叫びが…オレの中に流れ込んでくる…!!)

―御堂ぉぉぉぉぉ!!

 そして克哉の心の中に、怒涛のように…御堂を目の前で失った時の
眼鏡の魂の叫びが響き渡っていった。
 何て悲劇なんだろう。
 どれくらい彼らはすれ違ってしまっているのだろう。
 御堂の方の心までは克哉は知らない。
 けれど…もう一人の自分の心に宿っていたこの強烈な執着心は、
想いは…恐らく、「恋」と言い換えられるものだったのだ。
 御堂という存在に彼は惹かれたからこそ、近づきたかった。 
 手に入れて、自分の傍に繋ぎとめたかった。
 その手段を間違えて…愛する人間を殺してしまった人間の叫びと苦しみは
克哉の心をも、容赦なく切り裂いていく。

(お前は、どれだけ馬鹿なんだよ…!! もっと早く気づいていれば…
それで正しい手段で、想いを告げていれば良かったのに!!)

 まるで容赦なく押し寄せてくる巨大な津波のように、彼の後悔と
胸の痛みが伝わってくる。
 克哉は気づけば泣いていた。
 自分は素直に涙を流せるのに、絶対に感情を表に出せない不器用な
もう一人の自分の事が、哀しかった。

―お前も、泣ければ良いのに…

 なのに、もう一人の自分は顔を俯かせるだけで何も言えない。
 自分には言う資格などないというように、ただ黙って御堂からの
憤りの言葉と憎悪の視線を受け続けるだけだ。
 御堂の火花を散らすような容赦ない視線が、彼だけに注がれる。
 その瞬間Mr.Rは高らかに、嘲笑うように言い放った。

「ほら、どう為されたんですか! お二人とも!! 貴方達はもうじき
引き離されて二度と顔を合わすことなどない!! 言わばこれが…
殺された者と、殺した者の最後の邂逅となる訳なのです!!
 どうせこれっきりの事。それならば己の中にある憤りを! 怒りを!!
憎しみを!! 本音を思う存分に相手に叩きつけたらどうです!!
 せっかく最後の時間と機会をこうして差し上げたのですから…
精一杯活用して下さいませ!!」

 そして黒衣の男はいつまでも睨み合いを続けて硬直し続けている
二人を焚きつけるように言葉を吐いていった。
 それはまるで、芝居の中の悪役が悲劇に向かうための引き金を
引くようなそんな光景だった。

「貴方は、何を! あの二人をいがみ合わせてそんなに
楽しいんですか!!」

 その瞬間、傍観者に過ぎなかった克哉が目を見開いて…Mr.Rに
飛び掛かって鋭い一撃を食らわしていく。

「っ!!」

 だが、この男なら容易にかわせる筈だった克哉の攻撃は…見事に
Rの鳩尾に吸い込まれていく。

「…くっ! 良いパンチですね…」

「うるさい!! これ以上…あの二人を焚きつけるような事は…言うなぁ!!」

 克哉は泣きじゃくりながら、もう一回パンチを繰り広げていく。
 どうしてもこの男の今の行動を許すことが出来なかった。
 あんな悲劇を辿った二人を焚きつけて、嘲笑うようなそんな真似をしたことが…
眼鏡の心を知ってしまったが故に…どうしても許せなくて、悔しくて。
 ポロポロと涙を零しながら、がむしゃらにRに殴りかかっていくが…
命中したのは最初だけで、それ以後の攻撃は全て相手の掌に阻まれていった。

「…やれやれ、まるで駄々っ子ですね。私に八つ当たりをしてそんなに
愉しいですか…?」

「なっ…!」

 Rが呆れたように肩を落としていくと…克哉の顔色は一気に変わっていく。
 その時、すぐ目の前の御堂が呟いた。

―…くそ、こんな状態じゃゃなければ…お前をくびり殺してやるものを…!!
肉体がないことをこんなにも恨めしく思ったことはないぞ…!!
 
 そうして、ベッドの上で意識を失っているAの世界の方の御堂を
見て憎々しく呟いていった。
 そう…こちらの御堂は、肉体の意識がない状態でもすぐ傍で聞いていた
為に二つの世界のからくりを知ってしまっていた。
 その為に綻びが生まれて…彼は身体から追い出されてしまったのだ。
 本来の世界に戻ろうとしている肉体の中に、本来この世界の存在である
彼は留まる事が出来ない。
 束の間でも、さっきまでのように肉体を使うことが出来たならば御堂は
躊躇いなくこの男への復讐を果たしていただろう。
 それが出来ないからこそ、御堂は本当に悔しそうに怒号していった。
 彼がそう叫んだ瞬間…予想もしないことが起こった。
 
―本当にそう思うなら、あんたの好きにしろ…。御堂孝典、あんたには…
俺に復讐をする…その、権利がある…

 そうして、観念したように…その場に膝をつき…己の顔を高く上げて
無防備な首元を御堂の幽体に向かって曝け出していく。
 傲慢な筈の男のその行動に、御堂は言葉を失っていく。

(どうしたんだよ…「俺」…それは、まるで…自分を殺してくれ、と御堂さんに
向かって言っているような…もんじゃないか…!)

 眼鏡のその行動に、その場にいた誰もが騒然となって言葉を失って
立ち尽くしていく。
 その中心で…男は、殉教者のように瞳を閉じて…己の身を差し出すような
態度を取っていった。

―そうしている間にも、ベッドの上の御堂と…眼鏡の身体はゆっくりと
実体を失いつつあったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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