鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
オレは嫌だよ! …どうして、こんな処にいるんだよ…!」
「…会社近くに…来、た時、お前に電話しても…繋がらなくて…そう、したら、
遠くの方で…お前が、必死に…走って、いる姿が…見え、たから…追い
掛け、たんだ…。」
本多の声は弱々しく、途切れがちだった。
腹部にはナイフが刺さったままで緩やかに彼の血が溢れ出ているのが
判って…それだけで気が触れてしまいそうだった。
一刻も早くそのナイフを抜きたい衝動に駆られたが、恐らく冷たい雨が
降り注いでいる中で其れをやってしまっては本多は体温と血液を一気に
奪われて命を落とす可能性がある…そう判断してギリギリの処で留まっていった。
(もしかして…さっきの電話は…本多から、だったのか…?)
電話掛けても繋がらない、と聞かされてふと思い出されたのが…
さっきの呼び出しの事だった。
滑稽だった、もしあの時に電話を出ていれば…本多は無事だという事が
すぐに判った筈だ。
そうしたらこんな卑劣な罠に自分は掛からないで済んでいた。
自分を庇って本多がこんな風に傷つく事もなかった筈なのに。
克哉は己の愚かさを心から後悔して、呆れたくなった。
電話に出てさえいれば…こんな最悪の現実は訪れないで済んだ。
あんな脅迫の言葉に踊らされてここに来なければ…そんなもしも、の考えが
頭の中を支配して…克哉は本当に消えてしまいたくなった。
自分が傷つく事の方が、大切な人間が倒れて傷つく姿を見るよりもずっとマシで。
「本多、本多…! ごめん、本当にゴメン…!」
「…謝る、なよ…俺は…お前を、守れて…良かったと…思っている、んだ…ぜ…?」
本当に苦しそうに胸を上下に喘がせていきながら本多がそう告げていく。
どうしてこの男はこんな時にでも優しいのか。
普段なら嬉しくて胸が暖かくなるのに…自分の行動が原因でこんな事態が招かれて
しまった今となったら…むしろ詰ってくれた方がどれだけ良いかと少し恨みたい気分に
さえなっていく。
「けど…オレの、せいで…オレなんか、を庇ったから…!」
「…オレ、なんか…っていうなよ…。俺にとっては克哉は…一番、大事な…
奴、なんだ、ぜ…? そいつを、守れたのなら…むしろ、本望、だ…」
「バカ! …お前って…本当に、バカだよ…!」
克哉は泣いた。
身体中の水分がなくなってしまうのではないかって思うくらいの勢いで
両目から涙が溢れ続けていく。
どうしてこの男はこんなに優しいのか…いっそ恨みたいぐらいの
心境になっていく。
目の端で黒いフードつきのレインコートを纏った犯人が茫然自失状態に
なって少し離れた位置で立ちつくしているのが見えた。
けれど今は…克哉には本多の存在しか見えていない。
だから必死にその手を握り締めて、気持ちを伝えようと試みていった。
「やだ…! 本多が死んでしまったら…オレは耐えられない…! だからお願い…だよ!
どうか死なないで…嫌だ、嫌だ…!」
そうして泣きじゃくっていく。
克哉も犯人も、目の前の現実に打ちのめされてまともな判断が出来なくなっていた。
一刻も早く救急車を手配して…病院に搬送しなければならない。
その判断を下す事も出来なくなり…刻一刻と、本多から血液と体温が冷たい雨に
よって奪われていく。
―お前は本当に馬鹿だな…!
不意に、鮮明にもう一人の自分の声がした。
「えっ…? 今、どうして…?」
克哉はその声によって、若干の正気を取り戻していった。
慌てて周囲を見回していくと其処には…。
「嘘、どうして…お前が、此処に…?」
「…そんな事はどうでも良い…早く、携帯を貸せ…。お前はこいつを
死なせたいのか…?」
其処にはいつの間にか…眼鏡を掛けたもう一人の自分が立っていた。
其れがどういう理屈なのか、現象なのか判らない。
だが…紛れもなく其処に自分と同じスーツを纏った、もう一人の佐伯克哉は
唐突に現れていた。
相手の言葉にハっとなって、慌てて克哉はスーツのポケットを探って携帯電話を
探し出して…もう一人の自分に渡していく。
「借りるぞ…」
「え、う…うん…」
そしてどうしてこんな事態になっているのかついていけず半ばパニックになりかけながら
克哉は成り行きを見守っていく。
だが、克哉以上に犯人の方がその事実に耐えられなかったようだった。
「これは、一体なんだ…! どうして、お前が…もう一人いるんだ…?」
犯人は混乱しきった様子で大声で叫んでいく。
その時、感情に任せて思いっきり立ち上がっていくと…目元まで覆っていた黒いフードが
落ちて犯人の顔が晒されていった。
其れを見て…克哉は自分の予想が正しかったのを想い知っていった。
「やっぱり…そうだったんだ…」
其処に立っていたのは…予想通り、松浦宏明その人で。
眼鏡を掛けた自分が病院の手配をしている最中、克哉は静かに…
本多を手を掛けた人物と雨の中、向き合っていったのだった―
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
―何が起こったのか、最初は理解したくなかった
一瞬にして、克哉にとっての日常は崩壊してしまった。
普通に働いて、自分の傍らにはいつだって愛しい恋人がいて支えてくれている…
そんな当たり前の日々が、唐突に終焉を迎えてしまった。
冷たい雨が勢い良く降り注ぐ中、克哉は目の前の現実に打ちしがれた。
「ほ、本多…どうして…! 何で、お前がここに…?」
克哉は、理解出来なかった。
あの電話のおかげで本多はすでに犯人の手の中に落ちてしまっていると
思い込んでいたから。
何故、彼が自分の背後から現れて…突き飛ばし、代わりに犯人の凶刃を
受けて倒れなければならないのかそれが判らなかった。
「…克哉、マジで…良かっ、た…お、前が、無…事で…」
「全然良くない! オレが無事でも…本多が、こんな風になってしまったら…「ほ、本多…どうして…! 何で、お前がここに…?」
克哉は、理解出来なかった。
あの電話のおかげで本多はすでに犯人の手の中に落ちてしまっていると
思い込んでいたから。
何故、彼が自分の背後から現れて…突き飛ばし、代わりに犯人の凶刃を
受けて倒れなければならないのかそれが判らなかった。
「…克哉、マジで…良かっ、た…お、前が、無…事で…」
オレは嫌だよ! …どうして、こんな処にいるんだよ…!」
「…会社近くに…来、た時、お前に電話しても…繋がらなくて…そう、したら、
遠くの方で…お前が、必死に…走って、いる姿が…見え、たから…追い
掛け、たんだ…。」
本多の声は弱々しく、途切れがちだった。
腹部にはナイフが刺さったままで緩やかに彼の血が溢れ出ているのが
判って…それだけで気が触れてしまいそうだった。
一刻も早くそのナイフを抜きたい衝動に駆られたが、恐らく冷たい雨が
降り注いでいる中で其れをやってしまっては本多は体温と血液を一気に
奪われて命を落とす可能性がある…そう判断してギリギリの処で留まっていった。
(もしかして…さっきの電話は…本多から、だったのか…?)
電話掛けても繋がらない、と聞かされてふと思い出されたのが…
さっきの呼び出しの事だった。
滑稽だった、もしあの時に電話を出ていれば…本多は無事だという事が
すぐに判った筈だ。
そうしたらこんな卑劣な罠に自分は掛からないで済んでいた。
自分を庇って本多がこんな風に傷つく事もなかった筈なのに。
克哉は己の愚かさを心から後悔して、呆れたくなった。
電話に出てさえいれば…こんな最悪の現実は訪れないで済んだ。
あんな脅迫の言葉に踊らされてここに来なければ…そんなもしも、の考えが
頭の中を支配して…克哉は本当に消えてしまいたくなった。
自分が傷つく事の方が、大切な人間が倒れて傷つく姿を見るよりもずっとマシで。
「本多、本多…! ごめん、本当にゴメン…!」
「…謝る、なよ…俺は…お前を、守れて…良かったと…思っている、んだ…ぜ…?」
本当に苦しそうに胸を上下に喘がせていきながら本多がそう告げていく。
どうしてこの男はこんな時にでも優しいのか。
普段なら嬉しくて胸が暖かくなるのに…自分の行動が原因でこんな事態が招かれて
しまった今となったら…むしろ詰ってくれた方がどれだけ良いかと少し恨みたい気分に
さえなっていく。
「けど…オレの、せいで…オレなんか、を庇ったから…!」
「…オレ、なんか…っていうなよ…。俺にとっては克哉は…一番、大事な…
奴、なんだ、ぜ…? そいつを、守れたのなら…むしろ、本望、だ…」
「バカ! …お前って…本当に、バカだよ…!」
克哉は泣いた。
身体中の水分がなくなってしまうのではないかって思うくらいの勢いで
両目から涙が溢れ続けていく。
どうしてこの男はこんなに優しいのか…いっそ恨みたいぐらいの
心境になっていく。
目の端で黒いフードつきのレインコートを纏った犯人が茫然自失状態に
なって少し離れた位置で立ちつくしているのが見えた。
けれど今は…克哉には本多の存在しか見えていない。
だから必死にその手を握り締めて、気持ちを伝えようと試みていった。
「やだ…! 本多が死んでしまったら…オレは耐えられない…! だからお願い…だよ!
どうか死なないで…嫌だ、嫌だ…!」
そうして泣きじゃくっていく。
克哉も犯人も、目の前の現実に打ちのめされてまともな判断が出来なくなっていた。
一刻も早く救急車を手配して…病院に搬送しなければならない。
その判断を下す事も出来なくなり…刻一刻と、本多から血液と体温が冷たい雨に
よって奪われていく。
―お前は本当に馬鹿だな…!
不意に、鮮明にもう一人の自分の声がした。
「えっ…? 今、どうして…?」
克哉はその声によって、若干の正気を取り戻していった。
慌てて周囲を見回していくと其処には…。
「嘘、どうして…お前が、此処に…?」
「…そんな事はどうでも良い…早く、携帯を貸せ…。お前はこいつを
死なせたいのか…?」
其処にはいつの間にか…眼鏡を掛けたもう一人の自分が立っていた。
其れがどういう理屈なのか、現象なのか判らない。
だが…紛れもなく其処に自分と同じスーツを纏った、もう一人の佐伯克哉は
唐突に現れていた。
相手の言葉にハっとなって、慌てて克哉はスーツのポケットを探って携帯電話を
探し出して…もう一人の自分に渡していく。
「借りるぞ…」
「え、う…うん…」
そしてどうしてこんな事態になっているのかついていけず半ばパニックになりかけながら
克哉は成り行きを見守っていく。
だが、克哉以上に犯人の方がその事実に耐えられなかったようだった。
「これは、一体なんだ…! どうして、お前が…もう一人いるんだ…?」
犯人は混乱しきった様子で大声で叫んでいく。
その時、感情に任せて思いっきり立ち上がっていくと…目元まで覆っていた黒いフードが
落ちて犯人の顔が晒されていった。
其れを見て…克哉は自分の予想が正しかったのを想い知っていった。
「やっぱり…そうだったんだ…」
其処に立っていたのは…予想通り、松浦宏明その人で。
眼鏡を掛けた自分が病院の手配をしている最中、克哉は静かに…
本多を手を掛けた人物と雨の中、向き合っていったのだった―
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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