鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
31 32
冷たい雨が降りしきる中、三人は対峙していく。
本多はもうまともに見えないようだった。
だから歩み寄ってくる相手の顔も確認出来なかった。
それでも縋るような思いで声を掛けていく。
『其処にいる誰か…お願いだ…。克哉を守ってやってくれ…』
本多からすれば、其れが何処の誰かは判らなかった。
だが直感で、克哉の味方だと感じたから…男は、最も大切な人間の
力になってくれるように頼んでいった。
もう声も弱々しかったが、それでもちゃんと相手に聞こえるように
切なる想いを込めて語りかけていく。
「…ああ、約束しよう。俺がそいつを守ってやる…だから、安心しろ…」
そして眼鏡もまた、其処に込められた思いを強く感じたから…はっきり
した声で頷いていった。
「良かった…」
その言葉で、本多は安心したのだろう。
瞼を閉じて…そして繋いでいる手からも一気に力が抜けていく。
「本多! 本多…! やだ、目を開けてくれよ! オレを…置いていかないで!
やだ! やだぁ!!」
克哉は本多の意識が失われた事でパニックになっていった。
半狂乱になっている克哉の背中を…もう一人の自分が包み込むように
抱きしめながら、包み込んでいく。
「…大丈夫だ、こいつは簡単に死にはしない…。今は少し休ませてやれ…」
「あっ…うっ…」
二人はすでにびしょ濡れの状態だった。
けれど抱きしめられる事で少しだけでも相手の鼓動と体温を感じていく。
フっと神経が緩んでいくのを感じていって…克哉はまたポロポロと涙を零した。
涙腺が本当に、崩壊してしまったんじゃないかってぐらいさっきから涙が
溢れて止まらない。
不安で、怖くて、気が狂いそうだった。
それが僅かに伝わる人肌の温度によって辛うじて理性が繋ぎ止められていく。
「ふっ…うううっ…本多、本多ぁ…!」
片手では本多の手を強く握りしめながら、もう一方で自分の胸元で交差している
眼鏡の手を必死に掴んで縋っていく。
その背後に存在する温もりと、愛しい男の手を握りしめている感触だけが
辛うじて克哉の意識を現実に繋ぎ止めていた。
「お願いだよ…本多を、本多を助けて…誰か、神様…」
「…今はただ祈れ…。神になんて縋るよりもお前の真っすぐな気持ちの
方が遥かに重要だ…」
「う、うん…本多、本多ぁ…」
ヒクヒクと必死に胸を喘がせていきながら克哉は必死に本多の手を
握って己の気持ちを伝えようとしていた。
まだ逝かないで欲しいと。
自分一人だけ置いて先に死なないで欲しい。
どうか助かって欲しいと切なる想いを込めていく。
克哉は振り向かず、ただ本多の方だけを見つめていた。
眼鏡はそれで今は構わないと思った。
だから背後から己の温もりを与える為に抱き締めていき…
そしていつしか、幻のように眼鏡の姿は消えていた。
「あ、れ…?」
唐突にもう一人の自分の姿が…その気配が消えた事に克哉は
訝しく思っていくと…遠くから救急車のサイレンの音が聞こえていった。
そして慌ただしく救急隊員達が現場に到着していく。
「いたぞ! あそこだ!」
30代から40代程度の年代の救急隊員達が一斉にこちらに駆けよってくる。
「患者は低体温と出血多量に陥っている可能性があります! 早く搬送先の
病院に届けないと…!」
「おい! 早くそっちを持て! 急がないと助からないぞ!」
そして男たちは本多を担架に乗せる為の準備を始めていく。
「そちらが通報してくれた人かい…? あの、この人とはどんな関係ですか…?」
30代前後の救急隊員がこちらに声を掛けてくる。
それによってギリギリ、克哉の意識は現実に引き戻されていった。
「あ、あの…会社の同僚で、友人です」
「なら同乗して下さい。患者がこの状態ではまともに話も聞けないので…
状況説明をして貰いたいので…」
「は、はい…! 判りました!」
隊員はどのような状況で負傷したかを知る為に克哉に救急車に同乗
する事を要請し、克哉も其れに答えていった。
それにより一気に意識が現実に引き戻されていく。
(本多…どうか、どうか…死なないで!)
克哉は今は、祈るしかなかった。
そして救急車に乗り込んでいくと…隊員の人に通り魔によって
一緒にいる時に突然襲われ、本多はとっさに庇って負傷したという
形で状況を説明していった。
松浦の名前は一言も出さなかった。
其れを話したらきっと松浦に捜査の手が及ぶだろうと判断したから。
犯人を克哉は知っている。
けれど本多にとって松浦は大事な友人なのだ。
自分の独断でそれを話す訳にはいかない…と判断して、架空の
事情を伝えて克哉は必死に祈っていく。
(早く目を覚ましてくれ…。そうしたらいっぱい話したい事も相談したい事も
あるんだから…。どうか、助かって! 本多…!)
そして本多は病院に運ばれると同時に緊急手術を受ける事になった。
その手術は幸いには成功し、本多は一命を取り留めた。
―だが、その日以降一度も目覚める事なく…そして、毎日目覚める事を
切に祈りながら…気づけば、二年という月日が無常にも流れていったのだった―
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
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冷たい雨が降りしきる中、三人は対峙していく。
本多はもうまともに見えないようだった。
だから歩み寄ってくる相手の顔も確認出来なかった。
それでも縋るような思いで声を掛けていく。
『其処にいる誰か…お願いだ…。克哉を守ってやってくれ…』
本多からすれば、其れが何処の誰かは判らなかった。
だが直感で、克哉の味方だと感じたから…男は、最も大切な人間の
力になってくれるように頼んでいった。
もう声も弱々しかったが、それでもちゃんと相手に聞こえるように
切なる想いを込めて語りかけていく。
「…ああ、約束しよう。俺がそいつを守ってやる…だから、安心しろ…」
そして眼鏡もまた、其処に込められた思いを強く感じたから…はっきり
した声で頷いていった。
「良かった…」
その言葉で、本多は安心したのだろう。
瞼を閉じて…そして繋いでいる手からも一気に力が抜けていく。
「本多! 本多…! やだ、目を開けてくれよ! オレを…置いていかないで!
やだ! やだぁ!!」
克哉は本多の意識が失われた事でパニックになっていった。
半狂乱になっている克哉の背中を…もう一人の自分が包み込むように
抱きしめながら、包み込んでいく。
「…大丈夫だ、こいつは簡単に死にはしない…。今は少し休ませてやれ…」
「あっ…うっ…」
二人はすでにびしょ濡れの状態だった。
けれど抱きしめられる事で少しだけでも相手の鼓動と体温を感じていく。
フっと神経が緩んでいくのを感じていって…克哉はまたポロポロと涙を零した。
涙腺が本当に、崩壊してしまったんじゃないかってぐらいさっきから涙が
溢れて止まらない。
不安で、怖くて、気が狂いそうだった。
それが僅かに伝わる人肌の温度によって辛うじて理性が繋ぎ止められていく。
「ふっ…うううっ…本多、本多ぁ…!」
片手では本多の手を強く握りしめながら、もう一方で自分の胸元で交差している
眼鏡の手を必死に掴んで縋っていく。
その背後に存在する温もりと、愛しい男の手を握りしめている感触だけが
辛うじて克哉の意識を現実に繋ぎ止めていた。
「お願いだよ…本多を、本多を助けて…誰か、神様…」
「…今はただ祈れ…。神になんて縋るよりもお前の真っすぐな気持ちの
方が遥かに重要だ…」
「う、うん…本多、本多ぁ…」
ヒクヒクと必死に胸を喘がせていきながら克哉は必死に本多の手を
握って己の気持ちを伝えようとしていた。
まだ逝かないで欲しいと。
自分一人だけ置いて先に死なないで欲しい。
どうか助かって欲しいと切なる想いを込めていく。
克哉は振り向かず、ただ本多の方だけを見つめていた。
眼鏡はそれで今は構わないと思った。
だから背後から己の温もりを与える為に抱き締めていき…
そしていつしか、幻のように眼鏡の姿は消えていた。
「あ、れ…?」
唐突にもう一人の自分の姿が…その気配が消えた事に克哉は
訝しく思っていくと…遠くから救急車のサイレンの音が聞こえていった。
そして慌ただしく救急隊員達が現場に到着していく。
「いたぞ! あそこだ!」
30代から40代程度の年代の救急隊員達が一斉にこちらに駆けよってくる。
「患者は低体温と出血多量に陥っている可能性があります! 早く搬送先の
病院に届けないと…!」
「おい! 早くそっちを持て! 急がないと助からないぞ!」
そして男たちは本多を担架に乗せる為の準備を始めていく。
「そちらが通報してくれた人かい…? あの、この人とはどんな関係ですか…?」
30代前後の救急隊員がこちらに声を掛けてくる。
それによってギリギリ、克哉の意識は現実に引き戻されていった。
「あ、あの…会社の同僚で、友人です」
「なら同乗して下さい。患者がこの状態ではまともに話も聞けないので…
状況説明をして貰いたいので…」
「は、はい…! 判りました!」
隊員はどのような状況で負傷したかを知る為に克哉に救急車に同乗
する事を要請し、克哉も其れに答えていった。
それにより一気に意識が現実に引き戻されていく。
(本多…どうか、どうか…死なないで!)
克哉は今は、祈るしかなかった。
そして救急車に乗り込んでいくと…隊員の人に通り魔によって
一緒にいる時に突然襲われ、本多はとっさに庇って負傷したという
形で状況を説明していった。
松浦の名前は一言も出さなかった。
其れを話したらきっと松浦に捜査の手が及ぶだろうと判断したから。
犯人を克哉は知っている。
けれど本多にとって松浦は大事な友人なのだ。
自分の独断でそれを話す訳にはいかない…と判断して、架空の
事情を伝えて克哉は必死に祈っていく。
(早く目を覚ましてくれ…。そうしたらいっぱい話したい事も相談したい事も
あるんだから…。どうか、助かって! 本多…!)
そして本多は病院に運ばれると同時に緊急手術を受ける事になった。
その手術は幸いには成功し、本多は一命を取り留めた。
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切に祈りながら…気づけば、二年という月日が無常にも流れていったのだった―
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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