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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 眼鏡×秋紀    愛妻弁当           

 眼鏡を掛けた克哉に脅されて、本多が売店に別の弁当を買いに
走っているのと同じ頃…秋紀は、屋上で一人克哉を想いながら弁当を
食べていた。
 いつもは一緒に食べてくれる友人ぐらいはいるのだが、今日は何となく
照れくさくて…校舎の屋上で一人で食べる事を選んだのだ。
 そして恐る恐るフタを開けて、失敗作の方の弁当を改めて見て行くと
恥ずかしくて顔を赤らめてしまう。

「…うっわ…こうして見ると凄く恥ずかしいよね。ちょっと大胆過ぎたかな…」

 そう呟いていくと、さっさと箸をつけて食べ始めていった。
 こっちの弁当は、克哉に渡した弁当と一緒に作った予備みたいなものだ。
 そして克哉に渡した物の方が良く出来たので…微妙に失敗した個所がある
弁当の方は秋紀が食べる事になったのだが、食べている内に何となく
甘酸っぱいようなくすぐったい気持になった。

「あ~あ、克哉さんがどんな顔をして食べてくれたか…見たかったなぁ」

 その事を心底、残念そうに思いながら…少しは照れたり、喜んでくれたり
しているのだろうか…と想像すると自然と笑みがこぼれてきた。
 この辺は自分と克哉の年齢差を考えると仕方ない。
 克哉は立派な大人であり社会人で…秋紀はまだ未成年で、学生という
身分である以上…平日は一緒にご飯を食べる事は出来ない。
 だからせめて一緒に食べている気分を味わいたくて、勇気を振り絞って
弁当を作ってこうして今日は一人で食べている訳だが…この同じ空の下で
克哉も今、昼食を食べようとしているのだろうか。

「…帰ったら絶対に、克哉さんに感想を聞こうっと…今から、ちょっと
楽しみだな…」

 そうして青空を仰ぎ見ながら…脳裏に愛しい人の顔を思い浮かべて、
秋紀は満面の微笑みを浮かべていきながら爽やかな風を受けていき…
屋上でのランチタイムをそれなりに楽しんでいたのだった―

                         *

 売店から全力疾走してきた本多の様子は、一見して哀れみを誘う程
切ないものだった。
 昼間の売店と食堂程、稼ぎ時を迎えて人が密集している処はない。
 克哉とご飯を一緒に食べる為とは言え、全力でその人ごみの中に立ち向かい…
戦利品を得た頃にはセットした髪は大幅に乱れて、服装もどこか
乱れてしまっていて…ついでに身体のアチコチに打ち身とうっすらとした
青痣が見て取れる事から…昼食合戦の激しさを如実に現れていた。
 だが、そこまでして新しい昼ごはんを猛スピードで調達してきた心意気を
評価して…克哉は仕方なく、本多と一緒に食べていた。
 空は晴れ渡るような快晴なのに、この暑苦しい男がいるだけで何となく
不快指数が上がっているように感じられるのは果たして気のせいだろうか。
 軽くイライラしていきながら、克哉は本多と食事にありついていった。
 本多がやっとの思いで購入出来たのはカレーパンとメロンパンの
二つだった。
 当然のことながらこの大食漢の男が、それっぽっちで足りる訳がない。
 だからこちらに訴えかけるように視線を向けている事が克哉の神経に
大いに触ってしまっていた。 

(本当にこの男はうざいな…。何をそんなに物欲しそうに見ている。
これだけは絶対にコイツにやらんぞ…。初めて秋紀が俺の為に頑張って
作って貴重な弁当だからな…)

 秋紀が今朝、必死の様子でこの弁当を作ってくれていた姿を
思い出して克哉はつい微笑みを浮かべてしまっていた。 
 果たしてどんな物を作ってくれたのだろうかという期待感が
高まっていくのを感じていく。
 そうして水色の包みを解いて、弁当の蓋を開いていくと…其処に
込められているメッセージが真っ先に目に飛び込んできた。

『大好き』

 それが弁当のご飯の上に、海苔を使って描かれていた。
 予想もしていなかったストレートな言葉だっただけに克哉も最初は
びっくりしたが…次第に、声を立てて笑い始めていった。

「まったく…あいつは。こんなに可愛い事を仕掛けるとはな…」

「って、待てよ! 克哉…これってもしかして愛妻弁当とか、彼女に作って
貰ったとかそういう物だったのかよ!」

「…そんなの見れば判るだろう。俺は自分で食べる弁当に『大好き』などと
文字を描くなんて寒い真似をする趣味はないからな」

「い、いつの間に…一体いつからの付き合いなんだよ! ちくしょう…何か
羨ましいぜ!」

 克哉は本多に対して、秋紀の事はいつも「俺の可愛い飼い猫」とか
「猫」という言い回しで伝えていた。
 だから友人は猫=恋人という図式を知らなかったのだ。

「ああ、存分に羨ましがれ。せめてお前に対して見せびらかすぐらいは
させて貰わないともったいないからな」

「ぐおおおお! 恋人がいない奴に対して宛てつけのような真似を
しやがって! ちくしょう! それならそのタコさんウインナーを俺が
食べてやるぅぅ!」

「何っ!」

 本多が悔しさのあまり、克哉からおかずを奪おうと指を伸ばしてくるが…
即座にその不穏な空気を察し、弁当を後ろに逃がしていった。
 その一撃は結果、空振りに終わり…本多の顔により一層切ないものが
滲み始めていく。

「貴様ごとぎに俺の可愛い猫が作ってくれた初めての弁当をくれてやる
気は毛頭ない。せいぜい空腹をどうにか誤魔化す手段を見つける事だな…」

「ううううっ…今日の克哉の冷たさっぷりは本気で泣きたくなるぜ…!
いつからお前はそんなに冷たい奴になっちまったんだぁぁぁ!」

「うるさい、そんな湿っぽい顔をしてグチグチ言っているだけなら…
昼食がまずくなるだけだから、他の処に行ってくれ。お前が傍にいたら
弁当の味に集中出来なくなりそうだからな…」

「ひでぇ! ひでぇよ克哉! さっきからどうしてそんなに冷たい事ばかり
言うんだよぉぉぉ!」

 本多が本気で嘆いているのを尻目に、克哉は弁当を一口…食べていく。

「うむ、旨いな…」

「…ごくり」

 克哉の満足そうな笑みを見て、本多の食欲がそそられていく。
 だがにじり寄ろうとしたが…克哉に目線で制されていった。
 まさか弁当を作った秋紀も、こんな邪魔が入っている事など予想もして
いなかったに違いない。
 
(…本気で今日ほど、こいつの空気の読めなさぶりとうざさに…殺意すら
覚えた日はないな…)

 虎視耽々とこちらの弁当を狙っているのが明白な眼差しを浮かべている
友人に向かって、心の底からこの場から消えてくれと克哉は祈った。
 普通に昼食を食べているだけならここまで反発を覚えなかったが…
今日は秋紀が精一杯作ってくれた弁当を味わうのに集中したかった。

―早くこいつをどうにかしてくれ…!

 心の底から克哉が祈って行った次の瞬間、彼の強い願いが叶ったのか…
屋上の入り口の方からバタンと大きな音が聞こえていき…その場に克哉に
とっての救い主が颯爽と現れてくれたのだった―
 



 
 
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 この記事は新しいポメラが壊れたけど、代わりに古い方が
復活したぜ! という内容と私の近況とかゴーストトリックの
感想とか、明日の予定?とかがツラツラ書かれています。
 興味ない方はスルーして下さい。
 見てやっても良いぞ、という方だけ「つづきはこちら」を
クリックして下さい。

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

眼鏡×秋紀    愛妻弁当        

―社内でどうして、かつての同僚と追走劇などやる羽目になっているんだろうか

 心の底からそうツッコミを入れたくなりながら…克哉は秋紀の
お弁当を持って逃げた本多を全力で追いかけていった。
 しかし何だかんだ言いつつ、毎日トレーニングと走り込みを欠かして
いないというのは伊達ではないらしい。
 最近はひょんなことから再会した松浦とどうにか和解して、同じチームで
バレーボールをすることになり…一層特訓にも身が入るようになったと
言っていた本多の足の速さは並ではなかった。

(俺としたことが…こんなに全力で走らなければ、こいつを見失って
しまいそうになるとは…屈辱だ!)

 確かにそういえば運動らしいことをしていなかったことをこの時、
心底後悔していきながら克哉は屋上に降り立っていった。
 その瞬間、本多は突然足を止めて…爽やかに笑いながらこう
のたまっていった。

「よしっ! 良い天気だし今日はここで一緒に飯を食おうぜ!」

「っ…!」

 どの瞬間、眼鏡は自分の何かがぷっつりと切れていくのを感じ取り…
衝動のままに行動に移していった。

 ドスッ!

 少し鈍い音が辺りに響き渡り、ついでに本多もうめき声を上げていった。

「ぐほっ!」

「貴様は…! 人の大切な弁当をいきなり持って逃走した挙句に…何だその
こちらの神経を逆撫でにするような爽やかな笑顔は。盗人猛々しいとはまさに
今のお前のような人間の事を言うんだな、よ~く判った」

「うぅ…今のパンチはマジで効いたぜ…克哉。けどなぁ、幾らなんでもあの断り方は
ないだろ。仮にも俺達、大学時代からのダチだろ? なのに…あんな冷たい言い方は
酷いと思うぜ…。確かに弁当を盗みだすような真似をしたのは悪かったけど、
勝手に食う気はさらさらなかったし。…だから、飯一緒に食おうぜ。それでチャラに…」

 バシッ!

 だが、本多の言葉が終わるよりも先に…次なる克哉の鉄拳が炸裂していった。

「…どの面を下げて、そんなことが言えるんだ…? 人の大事な弁当を
盗んだ癖に偉そうなことを言うな。とりあえずそれは返して貰うぞ。俺の大事な
愛猫が初めて作ってくれたものなんでな…」

「へっ…? 愛猫って…お前が飼っているって言ってた奴か? 猫がどうやって
弁当なんて作るんだよ…」

「…お前は本当にバカか? 愛猫というのは比喩に決まっているだろう? これは
俺の可愛い恋人が初めて持たせてくれた大切な愛妻弁当だ。それを見られたく
なかったから今日は断っただけだ。照れくさかったんでな…」

「えええええっ…!」

 長年の付き合いである友人に恋人がいたなんて全く知らなかった本多は
大声を挙げていき…同時に自分がしたことを大いに後悔していった。
 事情を聞いてみれば、今日は一緒に昼食を食べる事を断ったのに納得を
していき…猛烈に申し訳ない気持ちになってしまった。

「あ、それは悪かったな。確かに…そりゃ、人に照れくさくて見せたくないって
気持ちは判るかも。けど…それならそうといえよな。それなら俺だって
無理にとは言わなかったのに…」

「…だが、今は気が変わった。大いにお前に見せびらかすことにさせて貰おう。
その代わり一口たりとてお前にくれてやる気はないがな」

「うえっ…! 今日のお前は本当に冷たい奴だな。一口ぐらいくれたって
良いだろ! 代わりに新発売の海鮮カレー丼をお前にも分けて
やるから! 旨そうだろ!」

 そうしていきなり、手に提げていたビニール袋から…何やらビジュアル面
だけでドン引きしてしまいそうな代物を取り出していった。
 どうやらドンブリ物であるらしいことは一目でわかった。
 だが…海鮮丼の上にめいっぱい具が大きくてゴロゴロしているカレーが
乗っかっているだけで一種の視覚の暴力になることを克哉はこの日、
初めて思い知らされたのだった。

バシッ!

 そしてつい、反射的に叩いていってしまう。
 ビニールの袋は綺麗な弧を描いて宙に舞っていき。

「わぁぁぁ! 何するんだよ克哉! これは今日の俺の大事な
昼食なんだぞ! 食べ物を粗末にするんじゃねえよ!」

「うるさい、そんな気持ちが悪い物体は俺は食い物とは認めない。
そんな物を隣で食う気なら、お前と昼食を食うのは却下だ!」

「…ううっ、そこまで言わなくなって良いじゃねえかよ…! 俺は
旨そうだって思ったんだから…!」

 だが、本多のその声は聞き遂げられることはなかった。
 絶対零度とも言えるぐらいに冷たい眼差しが克哉から向けられていく。
 決して逆らうことなど許さないという威圧感に満ちた視線に本多は言葉を
失い…背中に冷や汗が伝っていくのを感じ取っていった。

(これ以上ゴネたら、この視線で殺されかねない…!)

 キクチ社内においてはMr.KY…キング・オブ・空気読めないと評される
本多でも今の克哉をこれ以上怒らせたら命が危ないことを悟っていく。
 海鮮カレー丼は食べたい、だが…このままでは克哉と一緒に昼食を
食べる事は困難であることを察した本多は決断していった。

「…判った!今から別のをここの売店で大急ぎで買ってくる! だから
俺と一緒に飯を食ってくれ!」

 そしてそう叫んでいくと同時に「うぉぉぉぉ!」と叫びながら…本多は売店に
向かって全力で走っていった。
 まさに電光石火と呼ぶにふさわしい速度だったのだが…克哉は呆れた
ように呟いていった。

「…トコトン、邪魔な奴だな。仕方ない…待ってやるか。あんなのでも一応
友人だしな…。せいぜい見せびらかして食うことにしよう…」
 
 そう溜息まじりに呟きながら、克哉は水色の弁当の包みを眺めていって…
今頃、秋紀はどうしているだろうかと考えて…晴れ渡るような青空を
眺めていったのだった―



 
 

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
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 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
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 ―克哉さん、いってらっしゃい! 今日もお仕事、頑張って下さいね!

 昼休みを告げるチャイムがMGN本社内に鳴り響く頃…克哉はふと今朝、
朗らかな笑顔を浮かべて、秋紀が今朝は見送ってくれた時のことを
思い出していった。
 彼の脳裏にはクリーム色のシンプルなデザインのエプロンをつけてそうやって
出ていく直前に声を掛けられていく直前の光景が鮮明に再生されていった。
 克哉の部屋に秋紀が宿泊した日はこうやって朝、見送ってくれることは
珍しいことではなかったが…今朝は一つだけ思い返すと違う点があった。
 午前中いっぱい仕事に集中して、一区切りがついた頃に昼食を取ろうと思い立ち…
自分のディスクの上に弁当箱を並べていくと小さく微笑みを浮かべていった。

「まったく…まるで愛妻弁当だな…。それに俺に対してこんな風に弁当を
作れるぐらいまで成長を遂げるとは感慨深いものがあるな…」

 この水色の包みは、今朝出ていく直前に渡された。
 ずっしりとした重さとこの大きさと形状を見て、秋紀が作ってくれた物に
間違いないだろう。
 最初、克哉のペット…というか関係を持ったばかりの頃は家事の類は
殆ど出来なかったことを思い返すと、恋人の成長ぶりに目を細めていく。
 だが克哉はこれが手作り弁当であることは察していたがまだ蓋を開けて
中身は確認していない。
 果たして秋紀は自分に対して、どんな物を作ってくれたのか初めての事
なので全く予想がつかない。
 自分よりも一回りは年下の少年が、妙に可愛い代物をもし作ってくれて
いたのなら人に見られるのは抵抗がある。
 食べるなら屋上で一人が無難だろう、そう考えた瞬間に克哉が働いている
オフィスに、ズカズカと一人の立派な体格の男が入り込んできた。
 手には何やらずっしりとした物が入っているスーパーのビニール袋が
下げられていた。

「オース! 克哉…そろそろ昼飯だよなっ! 良かったらこれから一緒に
屋上で飯でも食おうぜ!」

「本多か、ここに来ていたのか」

「ああ、これからMGN本社が新発売するビオレードの販売もまたキクチが
担当する事になったからな。その打ち合わせの為に一時間前ぐらいに
こっちに来ていたんだが…それなら久しぶりにお前と昼飯くらい食べようと思ってな」

「断る、今日は一人でゆっくりと食べたい気分だ。他を当たってくれ」

「ええええええっ! おい、克哉なんだよその態度は! せっかく誘いを
掛けたっていうのにその一刀両断ぶりはないだろ! 仮にも俺、元同僚で
お前の友達だっていうのに!」

「ああ、お前が友人である事は認めている。だが、今日はどうしても一人で屋上で
食べたいんだ。そういう気分の時だってある。そんなに駄々をこねられても
迷惑なだけだ。さあ、回れ右をして他に食べられそうな場所を探すんだな…」

 眼鏡とて、本多の事はそれなりに大切な友人だとは認識している。
 だが、秋紀の作った弁当を見られたくないという照れくささから厳しい言葉を
つい浴びせてしまっていた。
 それが予想以上に本多には堪えてしまったらしく、今にも泣きそうな
表情を浮かべていった。

「…お前、それが久しぶりに一緒に飯を食べようって誘いを掛けた友人に対して
言うセリフかよ! お前がMGNに引き抜かれて以来、働く場所が同じじゃなくなって
から俺がどんなに寂しい想いをしているかお前は考えた事があるのかよ!」

「っ…!」

 本多の予想外の剣幕に克哉は言葉を失っていく。
 それでつい、毒舌も止まってしまった。
 その瞬間…本多はようやく、水色の弁当の包みの存在に気づいていった。
 克哉のディスクの上にある事から見ても…これが恐らく、彼の本日の昼食で
ある事に間違いないと確信した途端、本多は暴挙とも言える行動を
取っていった。

「…お前がそんな風に言うのなら、この弁当俺が食べてやる! 昼飯抜きになって
冷たい言葉を吐いたの少しは後悔しろよ。このバカっ!」

「貴様、何をする!」

 克哉が叫んだ時にはすでに遅かった。
 本多はその巨体からは想像もつかないぐらいに俊敏な動きで間合いを詰めて
友人の机の上から弁当の包みを奪取していった。
 
「はっ…! 少しは反省しろっ! 俺はなぁ…久しぶりにMGNに来てお前と一緒に
飯を食うの本当に楽しみにしていたんだからな! 離れちまったからと行って
大事なダチと思っている奴に冷たい態度を取られたら俺だって辛いんだからな!
だからお前の弁当、食ってやる! ハラペコ状態で午後から克哉なんて
働けば良いんだ!」

「お前な、言っている事とやっている事が支離滅裂だぞ!」

 人間、好意を抱いている相手に対してはささいな事で心が乱されて冷静に
判断出来なくなるものだ。
 本多という男は今の克哉には恋愛感情の類は抱いていないが…大学時代から
相当に強い好意を抱いているのは間違いなかった。
 それゆえに照れから来ていたとは言え容赦ない言葉でそのハートは大いに
傷つきまくっていた。
 だから子供っぽいと判っていても、本多はつい衝動のままに動いてしまっていた。

「どうしても取り返したいなら、追いかけて来な! じゃあな!」

 そうして自分が持っていたスーパーの袋と水色の弁当の包みを抱えて、
本多が突然オフィス内で全力疾走を開始していく。
 周囲の人間の目がさっきから何事かと、突き刺さるようだった。
 本多のKY…周囲の空気の読めなさりはあまりに健在すぎて、涙さえ
出てきてしまいそうだった。
 さっきまで秋紀の愛情を感じてくすぐったいような甘酸っぱい嬉しさを覚えていたのに
本多の暴挙のせいで何もかもがぶち壊されそうになってしまって…
克哉は苦々しく呟いていった。

「あのバカが…! しかしあの弁当だけは絶対に返して貰うぞ!」

 そうして周囲の人間の目を振りきって克哉も全力で弁当を持って逃走した
本多を追いかけ始めていったのだった―


 
 

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 その日、佐伯克哉は皆にガムを配っていた。
 最近発売したガムレターという…ガムに文字を刻印する形で
メッセージをつけるという道具を取引先から貰った為だ。
  ただ…現状では9種類しか規定のメッセージが用意されていないので…
ネット上で手続きをして比較的安価な値段で新しいメッセージプレートを
受注して作るという試みをしていると聞かされて、克哉は試してみませんか?
と取引先から声を掛けられていた。
 それで一種類、オリジナルの物が作れますよ…と言われて克哉は
大いに関心を持ったようだった。
 ようするにそういう形式で発表する前に、モニターとして実際に
やってみてそれが実際に出来るか試してみたいと…そういう意図で
声を掛けられたのだ。
 そしてその作って貰った三種類の文字を加えて、10枚入りのミント味の
ガムを購入し、メッセージを刻印して…日頃お世話になっている八課の
仲間たちに手渡しで配っていた。
 こういう心遣いは結構、嬉しいものである。
 克哉の手からガムを渡された人々の顔には皆、笑顔が浮かんでいる。
 ただ…その中で本多だけが酷く緊張した面持ちで、どんなメッセージが
刻まれているのか渡された品を凝視していた。

「これ、片桐さんどうぞ…。ガムレターといって、文字を刻んであるので
食べる時にちょっと見てやって下さい」

「ああ、これが先日佐伯君がモニターとして声を掛けられたといっていた
製品のですか…。ちょっと気をつけて触って見ると確かに少しボコボコ
していますよね。果たして…どんなメッセ―ジなんでしょうか?」

「…ふふ、それは見てのお楽しみです。恥ずかしいですから出来れば
あまり人に見せないで下さいね」

「えっ…そんな事はないですけど。あ、そろそろ外回りに出ないといけない
時間になったので失礼しますね」

「ああ、行ってらっしゃい佐伯君。暖かい心遣いをありがとう…」

「…先に言われてしまいましたね。はい、でも…行って来ます」

 そうして本多が座っている席からそう離れていない距離で、片桐と克哉の
暖かい言葉のやりとりが交わされていく。
 だが、本多としては克哉からどんな言葉が贈られるのか気が気ではなかった。

(克哉…俺には一体、どんな言葉を贈ったんだ…?)

 数ヶ月前、本多は克哉に本気で惚れている事を自覚して…熱烈な
アタックを続けたが結局、両想いになる事は出来なかった。
 彼的に今でもトラウマになるような一言を笑顔で言われてしまい…
そして今の友人以上、恋人未満という微妙な関係を続けることに
なってしまっていた。

(…ちょっとでも期待が持てるようなメッセージを渡されていますように…!)

 そういって自分の携帯でネット機能を立ち上げて…さっき克哉が言っていた
ガムレターというのを検索していく。
 すると三種類のセットが用意されていて…一つのセットに三つのメッセージ
プレートが付属しているようだ。
 ブルーの本体はベーシックレターで「おつかれさま」「ありがとう」「がんばってね」が。
 レッドの本体にはアシストメッセージ「ファイト」「リラックス」「よろしくね」が。
 イエローの本体はハッピーレターとして「祝\(^o^)/」「ごめんね」「こんや☆どう?」
の三つのメッセージが付属されているようだ。
 そしてその時…本多が希望を見出したのが「こんや☆どう?」だった。

(もし…この言葉が刻印されているのならば、少しは期待しても良い筈だ…!
それが飲みに誘う程度の意味であったとしてもな…)

 そして本多はガムの包み紙を取るだけとは思えないぐらいに緊張
しながら…メッセージを確認する勇気を出した。
 心拍数は上昇し、何というか汗がジワっと指先から溢れてくるようだ。
 だがどうしても克哉の気持ちを今、確かめたかった。

―果たして彼にとって自分はどういう存在なのか…

 そして本多は包み紙を取っていく。
 其処には本来用意されている9種類とはまったく違い、同時に彼の
心を大きく打ちのめす一言が刻印されていた。

「そんなぁぁぁぁ!」

 その時、本多は大いにオフィス内で雄叫びを挙げてしまった。
 彼の魂の叫びとも言える、切なく…同時に滑稽な声だった。
 本多はその場で机の上に突っ伏して、シクシクシクと心の中で
泣き始めていく。
 この悪夢のような一言を告げられるぐらいなら、単なる同僚宛てとして
ベーシックな「ファイト」や「ありがとう」「よろしくね」などの言葉が贈られた
方が絶対に良かったと心底思った。

「…おや、本多君。どうしましたか…。何か凄い声を挙げていましたけど…」

「いや、克哉から渡されたガムの文字を見て…ちょっと悲しくなってしまったので」

「えっ…何て書かれていたんですか?」

「これですよ…」

 そうしてゾンビのようにカクカクしたぎこちない動きをしながら…自分に渡された
ガムを片桐に見せていく。
 其処にはくっきりとこう書かれていた。

『本多は親友だよ』

 それはあの日、克哉に告げられた残酷すぎる言葉だった。
 本多は克哉に対して本気で想いを寄せている。
 なのに惚れている相手にこんな言葉をぶつけられて打ちのめされない男は
存在しないだろう。
 だが片桐はそれを見て微笑ましそうに呟いていった。

「…おや、とても良い言葉ではありませんか。それだけ佐伯君にとって…
本多君は大切な親友なんでしょう。充分に佐伯君の想いが伝わって
くるようですよ…。規定のものではなく、一種類だけのオリジナルプレートを
わざわざこの言葉を刻んで渡すなんて…充分特別ですし」

「…えっ、そうなんすか?」

「はい、モニターを持ちかけられた時…規定の奴にないメッセージを一個だけ
作ってもらえる事になったそうですが…これがきっと、そうなんですね。
それだけでどれだけ佐伯君が本多君を頼りにしているか伝わってきます」

「そ、そうですね…! そう、前向きに考えることにします…!」

 さっきまで打ちのめされていた本多だが、八課きっての癒し系である片桐に
そう言われて再び希望を取り戻していった。
 そうして本多は惚れてやまない相手の笑顔を脳裏に浮かべていくと…
次の瞬間に、あれ…と思った。

「おや、どうしました?」

「いや、何でもないっす…! そういえば片桐さんはどんなメッセージを
克哉から貰ったんすか?」

「ああ、僕は「ありがとう」でしたよ。ふふ…こういう形で感謝を伝えられると
何かくすぐったい気分になって…嬉しいですよね」

「そう、ですね。励まして下さってありがとうございます。俺もそろそろ
仕事に戻りますね…!」

 そういっていつもの元気ハツラツの態度に戻して、片桐を心配かけまいと
カラ元気を出して話を終わりにしていく。
 だが、仕事に戻った瞬間…さっき浮かんだ克哉の笑顔がまるで
ある歌の一小節のようだったので猛烈な違和感を覚えていった。

(確か昔…あったよな。天使のような~悪魔の笑顔って…フレーズが
どっかの歌で…。何故かこのガムを見ていると…脳裏に浮かぶ克哉の
顔が…そんなふうに思えるのはどうしてだろう…)

 そうして、本多は溜息を吐いていく。
 きっと特別な想いを抱く前だったら心から嬉しかった一言も、恋する男と
なってしまった彼にとっては…其れはあまりに残酷すぎる、克哉からの
本音のように思えてならなかったのだった―
 
 


 

 こんにちは香坂です。
 何か色々終盤は苦戦して予定より期間が延長してしまいましたが
どうにかGHOST完結まで持ち込みました。
 いや、最近…長い連載書くのが色々としんどくなってきたのう(年寄りくさっ!)

 とりあえず明日から、新連載開始します。
 が、予め断っておいた方が良いと判断してこの記事を書いております。

 正直言うと、明日以降は一言で言うなら…。

「何が出るかな?」

 という状況に陥ります。
 人によっては地雷な場合もあるので苦手なCPが出た時は
回れ右をして下さい。
 いや、基本的に本編にあるCPを中心に扱いますけどね。

 どんな連載かというと、基本は一話完結。場合によっては2話から3話程度の
長さで色んなカップリングの小ネタが掲載されていきます。
 テーマは、『メッセージ』

 あるキャラが、意中の相手に色んな手段を用いて自分の気持ちを伝えて
いこうとするオムニバス形式の話です。

 一つ一つの話とカップリングは独立した話扱いですが、一応…
テーマの「メッセージ」というのだけ共通しています。
 そしてその上で予め言っておきます。

 当サイトで扱っている克克、眼鏡×御堂、御堂×克哉、太一×克哉
以外のカップリングのネタも扱っていきます!←(ここ需要)

 …何でこんな事を思いついたのか理由は一つあります。
 
 1.長編を書くのに疲れてきた

 2.重いテーマの大半は自分の中で吐きだして昇華されてしまった

 3.香坂、職場で色々あってかなりウツ傾向が酷くなってきている。
よって今後も続けていくなら一旦肩の荷を抜いた方が良いと判断した

 4.昨日の夕方のニュースでガムに文字を刻んでメッセージを送るアイテムと
いうのが紹介されてて、ああこれは良いと思ったら何か幾つかアイディアが浮かんだから

5.オムニバス形式の連載はやった事ないから、トライしてみれば良いと
思ったし…気分転換には良いと判断したから
 
 以上の通りです。
 つー訳で暫くの期間、肩の力を抜いて色んなカップリングのネタを
書いていくと思います。
 
 その辺だけ頭の片隅に置いて、明日以降は閲覧するようにお願い
申し上げます。ではでは~!

 

 

 
 

 ※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

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―そして御堂と克哉が結ばれてから三ヶ月はあっという間に過ぎていった

 そして現在の彼はMGNに再び在籍して、まだ日が浅いながら周囲の
人間に早くも御堂の右腕として信任されるようになっていた。
 御堂は克哉が姿を消していた一ヶ月間は、古くからの友人である四条を
抱き込んで突然の事故に巻き込まれた事により出勤できなくなっていたという
形にしておいてくれた。
 不慮の事故に巻き込まれたことによる休職ならば、一ヶ月姿が見えなくても
風当たりはそんなに強くはない。
 その事実を知った時、御堂は自分が帰ってくるのを心から信じて待ってくれて
いたことを実感し、泣きそうなぐらいに嬉しかった。
 ただし御堂はそのような犯罪スレスレの無茶な行為を友人に強要した代償に
半端じゃなく高いワインを何本か四条に進呈することになってしまった訳だが。
 その為にMGNへの復帰は容易で、帰宅した日から二週間ほど経過した日から
再び職場復帰する事が出来た。
 名実ともに公私共に御堂のパートナーとなってからの日々は充実していて、
まるで夢か何かのように瞬く間に過ぎていった。
 
(あの人と結ばれた日から今日で三ヶ月か…)

 ふと、ある日の帰り道に克哉はしみじみとその幸福を実感していった。
 かつて元いた世界では誰にも存在を認識されず、ただ静かに
消えゆく存在だった
頃の面影はすでに彼にはない。
 御堂に愛され、職場でもすでに必要な人材と認められている彼は…現在は
自信に満ち溢れた顔をするようになった。
 今日は午後から取引先の会社に出向して克哉一人で担当に当たっていた為に
久しぶりに徒歩で帰路についていた。
 最寄り駅から歩き、御堂のマンションに向かう道筋は大半が住宅街であるせいか
夜は静まり返っている。
 落ち着いた街灯と微かな生活音ぐらいしか存在しない夜道を克哉は早足で進んでいた。

(思ったよりも遅くなってしまったな…。きっと今日は孝典さんが夕飯の準備を
してくれているだろうから早く帰らないと…)

 今日の出先は都内の外れに位置するので、御堂はこちらを気遣って本日の
夕飯当番はこちらがやると申し出てくれて、克哉も素直にそれに頷いていた。
 だがせっかく大切な人が作ってくれたというのならば出来るだけ暖かい内に
一緒に食べたい。
 その想いが克哉の足を早めていき、少しでも近道をしようと大きな公園の敷地を
抜けて出ようとしていった。
 其処はかつて克哉がMGNの営業担当をしていてもう一人の自分について
悩んでいた頃、何度か立ち寄ったことのある場所だった。
 この公園だけはまるであの時から時間が止まってしまったかのように…
佇まいを変えていなかった。

「ここ、変わっていないな…」

 そしてMr.Rに出会ったベンチの前を通りかかると、つい懐かしくなって
足を止めていった。
 もうあの銀縁眼鏡を受け取った日からどれぐらいの月日が流れたのか正確に
計る事は不可能になっていた。
 そう…本来いた世界ではプロトファイバーの営業を担当した時から克哉が
こっちの世界に移動するまで二年半程度経過しているが…今、身を置いている
世界は来た当初は営業担当してから大体三ヶ月程度が過ぎていて、それから
四ヶ月ちょっとが経過しているので…あの眼鏡を受け取った日から十ヶ月あまりが
過ぎている事になる。
 二つの世界で過ごした時間を考慮すれば克哉にとっては三ヶ月程度、だが実際に
この世界では十ヶ月あまりが経過している事を考えるとつい頭がこんがらがって
しまいそうだ。

「あれから、オレにとっては三年以上過ぎた訳か…」

 そうしてつい遠い目を浮かべた途端に、辺りの木々が激しくざわめき始めていく。

(…ここで、あの人と出会ってあの眼鏡を渡されたことが全ての発端なんだよな…。
その事で本気で苦しんだり、悩んだこともあった。けど…其れがなかったら、
今のオレの存在も幸せも何もかもを否定する事になる…)

 克哉がそう考えた瞬間、急に強い風が吹き抜けて周囲の木々を
ざわめかせていった。
 一瞬にして不穏な気配が辺りに漂い始めていく。
 ゾワっと悪寒めいたものを感じ、周囲の気配が一瞬にして濃密なものへ

と変わり始めていく。
 この気配には何度か覚えがあった。
 その事を自覚した途端、そっと背後から声を掛けられていく。

ーこんばんは、お元気に過ごされているようで何よりです…佐伯克哉さん

 そして歌うように言葉を紡ぐ、黒衣の男がゆっくりと藍色の闇の中から
浮かび上がっていく。
 さっきまでそこには確かに人などいなかった筈なのに…瞬く間に姿を現し、
悠然とした笑みを浮かべていた。
 そのことに軽く驚きもしたが、だがすぐに気を取り直して対峙していく。
 何となくここに来た以上、この男性と顔を合わせる事は必然のようにすら
感じられたから…

「えぇ久しぶりですね。三ヶ月前に貴方の店から解放されて以来ですから…」

「はい、それ以後…貴方は実に充実した日々を送られているようですね。
御堂様との生活はどうでしょうか?」

「とても幸せですよ。色々なことがああったけれど…今となってはあのゲームの話を
持ちかけてくれた貴方に心から感謝したいです。そのゲーム盤の上に乗る事が
なければ、こうして御堂さんと一緒に暮らす未来もなかったでしょうから…」

 克哉はあくまでもにこやかに微笑みながら相手と応対していく。
 その様子に少しだけ溜息を付いていきながら、Rは返答していった。

「…やれやれ、貴方はあのゲームを経てとても強くなられたみたいですね…。
本来ならば我が王に充実に従う者を手に入れる狩りの過程を楽しんで貰うために
やった事が、貴方の幸福に結びついて…あの方を打ちのめす結果に終わるとは
予想もしておりませんでした…」

「はい、オレも当初はとても勝てるとは思いませんでした。だってゲームマスターで
ある貴方は完全にもう一人の俺寄りに傾いていましたから。だからオレには油断する
余裕なんて一欠片もなかった。…今、思い返すとオレはがむしゃらにならざるを
得なかったから…だから奢りによって生じる隙をついて勝つことが出来た
のだと思います…」

「…ご謙遜を。私があの時に出したどちらか一人しか抜け出せないように仕向けた時…
本来なら貴方たち二人を足止めして攪乱させる為に用意したルールの穴を即座に
見つけだして…貴方は結果的に御堂様の心を得ることに成功させた。その判断力と
冷静さは素直に賞賛するに値することですよ…」

 そう告げながら、Rはいつものように心中を察するのが困難になる妖しげな
微笑みを浮かべていく。
 この世界に訪れたばかりの頃、ゲーム開始当初の頃はこの心中を読みとれない笑顔で
すらどこか怖かった。
 だが今の克哉には臆することなく接することが出来るようになっていた。

「…オレは、どうしてもこのゲームに勝利して…御堂さんと一緒に生きる未来を掴み
とりたかったから。恐らくその真剣さが、あいつと俺の違いであり…そしてこの結果に
結びついたんだと思います…」

「えぇ、貴方は本当に真摯といえる程ひたむきで…あの方よりも真剣にゲームに
当たっていた。驕りこそ、我が主が負けてしまった原因に結びついていると私は
良く存じております…。ですから、一度出たゲームの結果に物言いをつけるような
真似は致しません。貴方はその幸運をしっかりと噛みしめて、味わいながら生きて
いかれれば良いと思います…。恐らくそんな貴方の前に今後私が姿を現すことは
二度とないと思いますからね…」

「えっ…」

 にこやかに微笑みながらRはサラリと決別の言葉を口にしていった。
 その発言に克哉は軽く目を見開いていく。

「…私が関心を持ち、関与するのはまだ可能性が固まっておらず…様々な未来を
選び其れを予想するのが困難な貴方だけです。今の貴方の未来はすでに御堂様の
手を取るという形で定まってしまっております。すでに未来が確定している貴方には
私には用がありませんから…。ですから、私は他の世界でまだ様々な可能性を持つ
貴方を観察しに向かいたいと思います…。ですから、この世界に生きている貴方と
顔を合わすのは今夜以降、二度とありませんよ…」

「そうですか。なら最後に…オレに最後の可能性を与えて下さって感謝します。
ありがとう…どうかお元気で」
  
 相手から決別を伝えられても一切動揺することなく、心からの感謝の気持ちを
伝えていくと…男は瞠目していった。

「…やれやれ、本当に貴方はお人好しな方ですね。たまにこちらの毒気を
抜かれてしまいますよ…。ですが、どうかお忘れなきよう…。私は貴方の
傍に常に存在する影…。関与する事がなくなっても貴方の行く末を
静かに見守っておりますよ…。貴方を観察する事が、私にとっては…
唯一、この退屈という猛毒から救ってくれる最大の薬なのですから…」

「えっ、それはどういう意味、ですか…?」

「…今の言葉の意味は、ご自分で考えて下さい。では…御機嫌よう…」

「ああっ…!」

 そして一瞬の内に、黒衣の男の姿はあっという間に闇に溶けて…
完全に消えてしまっていた。
 まるで本物の幽霊か何かのように…その存在の痕跡を一切残すことなく…
Mr.Rはこの世界の克哉の前から永遠に姿を消していった。

「…いなくなっちゃった…。あの人の神出鬼没はいつもの事なんだけど…
本当に人間なのか疑うよな…。よっぽどあの人の方が亡霊だよ…。
…オレという佐伯克哉という人間に取り憑いたね…」

 そう、彼の方が本当の意味でのGHOSTなのかも知れない。
 克哉は何となくそう感じていった。
 未来の確定した貴方に興味がないと言いつつ、それでも自分の行く末を
静かに観察しているとも言った。
 それにゾワっと悪寒めいたものを感じていったが、すぐに克哉は気を取り直して…
再び帰路についていく。

(…もしかしたら、誰かと幸福な未来を紡ぐ事だけが…あの人の関与から
抜けられる唯一の方法なのかも知れない。そして本来この世界にいた
鬼畜王として覚醒した眼鏡を掛けた俺はクモの巣に掛かった獲物のように
あの人に絡め取られて…オレと共に生きていた、御堂さんとの未来を
得た『俺』は…今のオレのようにあの人の魔の手から逃れられたかも知れないな…)

 まるでそれは、エデンの園でアダムとイブをそそのかして知恵の実を
食べさせて、二人を追放させる原因を作った蛇のようだ。
 甘い誘惑で人を堕落させ、そして道を踏み外させる。
 その存在に軽く戦慄を覚えていきながらも…克哉は気を取り直して御堂が
待つ彼の部屋へと急いでいった。

「帰ろう、オレの家に…あの人の待つ処に。もう…どんな誘惑が来ても
オレの気持ちは変わる事はないから…」

 そう自分に言い聞かせて駆けながら御堂のマンションに急いでいった。
 Rと立ち話をしている内に結構な時間が過ぎてしまっていたらしく…ふと
時計を見てぎょっとなった。

「うわっ…! もうこんな時間だ! 御堂さんをこれ以上待たせる訳には
いかない! 早く帰らないと!」

 そうして大慌てで全力疾走を始めて帰宅していった。
 全身がびしょ濡れになるぐらいに汗まみれになりながら…帰宅していくと
すでに夕食を用意されていて食卓に座って待っていてくれた御堂に深い感謝を
覚えていった。

「遅かったな。夕食が冷めてしまったぞ。まあ…君がちゃんと無事に帰ってきたのなら
それで良いが。おかえり、克哉」

「ああああ、本当に遅れてしまってすみません! せっかく貴方が夕食を
手づから作ってくれたのに! 本当にごめんなさい!」

「いや、良い。君がこうしてちゃんと私の元に帰って来てくれるだけで…
充分だからな。ほら、早くスーツを脱いでくると良い。その間に温め直しておくから」

「は、はい…ありがとうございます…!」

 そういって慌てて自分の部屋に向かって着替えていこうと思った。
 だが、それよりも先に今はどうしても御堂に言いたい言葉が浮かんできたので
ピタリ、と足を止めていく。
 
「…どうした、克哉。着替えに行かないのか…?」

「いえ、貴方に今…伝えたい言葉がありまして…」

 先程、Rと話したせいだろう。
 胸の中に湧き上がる不安に負けない為に、どうしても伝えたかった。
 だから突然その場に立ち止まった克哉に怪訝そうな視線を御堂が向けていくと…
克哉は朗らかに笑いながら、こう告げていった。

『オレの想いを受け入れて下さってありがとうございます。愛してくれて
ありがとうございます。貴方がオレの気持ちを受け入れてくれたから…
今、オレはこんなに幸せになれました。本当にありがとうございます』

「っ…!」

 それは克哉の胸の中にずっと在りながら、照れくさくて伝える事が
出来なかった感謝の気持ち。
 率直な想いを突然ぶつけられて御堂は驚いていったが、すぐに参ったと
いうように苦笑していく。

「…まったく、君という奴は。そんな事を言われたら…これだけ空腹だと
いうのに抑えが効かなくなりそうだな…」

「えっ…!」

 そして瞬く間に御堂から間合いを詰められて、腕の中にきつく抱きしめられていく。
 この腕の熱さに心も熱くなっていきながら…二人はごく自然に唇を
重ね合っていった。

―この人の腕の中が、今の克哉の大切な居場所だった

 その幸福を決して忘れないように。
 失う事がないように…祈るような気持ちを込めていきながら…
克哉の方からも愛しい人の身体をしっかりと抱きしめ返して、
深い口づけに答え始めていく。

『愛しています…孝典さん…』

 そう心から実感しながら、克哉は腕に力を更に込めてしがみついていった。

―己の肉体と、心をしっかりとこの世界に根ざしていきながら…
彼は亡霊から、人間に戻れたその幸福な今をしっかりと噛みしめて
いったのだった―

 





 

 

 こんにちは、強打して痛めた右手首の調子もある程度
回復してきました。香坂です。
 GHOSTの最終話、35話は今晩を目標にアップ致します。
 …まあもしかしたら日付直前か、若干超えるかも知れませんが
それを目標に現在執筆中なのでもう少しお待ち下さい。
 …今日も夜、20時か21時には力尽きているようなコンディション
だったら明日の朝になるかもですが…いい加減、完成させたいので
頑張ります!(ムン!)

 後、これを完結させたら次は何をするか現在
少し迷っております。
 残雪を一から焼き直して完結まで持って行ったように
セーラーロイドシリーズ、優しい人、バーニングクリスマスと言った
連載が途中で止まっている話を再開させるか、
または新しい連載を着手するかでちょっと考えています。
 これも今日明日中には結論を出して、次は何をやるのか
自分が一番気が乗りそうなものを開始すると思いますので
もう少し時間を下さいませ。

 

 この記事は本日、香坂の兄上がカプコンに行って来て
「ゴーストトリック」の体験プレイをしてきたという話が
メインになっております。
 聞いてて面白かったのでネタにさせて貰った
程度の話なので…興味ある方だけどうぞ~。

現在連載中のお話のログ

  ※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

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 ―昔の、この世界に来る前の夢を見ていた
 
 御堂の腕の中に抱かれ、安堵したからだろうか。
 それは今まで見たかつての世界の夢の中で一番穏やかで
優しいものだった。
 二人で作った会社のオフィスの上に存在する、もう一人の自分の部屋の中で
彼らは革張りのソファの上でくつろいでいた。
 御堂が端っこに腰を掛けて、眼鏡がその太股の辺りに仰向けで横たわっている。
 そして克哉はそんな二人の様子を少し離れた位置から眺めていた。
 まるで、幽霊のように自分の存在は知覚される事なく…傍観者の立場でその様子を
眺めている形になった。
 
「…疲れているんだな、克哉…」
 
「んっ…」
 
 御堂の膝の上で、もう一人の克哉は穏やかな笑みを浮かべてまどろんでいた。
 そこには無条件の、傍らにいる存在への信頼感が滲んでいた。
 仕事中の彼はいつだって張りつめていて…側に人を寄せ付けない雰囲気を纏っているが、
今…御堂の膝の上で寝そべっている彼は安堵しきっていた。
 無防備な恋人の姿を見て、御堂は呆れたように…けれど優しい笑みを浮かべていく。
 
「…まったく、君にも困ったものだな…。こんなデカい図体をして人の膝の上に堂々と
寝ているものだから…いい加減、足が痺れて来ているんだぞ…」
 
「んっ…うっ…」
 
 まるで動物を撫でてやるように…優しく眼鏡のくせっ毛を梳いていってやる。
 その表情と動作の一つ一つに、慈愛が満ち溢れていた。
 かつては二人のその様子を見てて心が痛んだが…今は、平常心に近い心境で
克哉は眺めていく。
 幸せそうな二人、そこには自分が付け入る隙などこれっぽっちも存在していない。
 かつてその膝に抱いている男の中に、克哉という人格が存在していた事など…きっと
こちらの世界の御堂は知らないままだろう。
 それが以前は途方もなく悲しかったけれど…今は新たな世界の方で御堂に
必要とされている。
 そのおかげで心はひどく穏やかだった。
 
(あ~あ、御堂さんの前で安心しきっちゃって…。本当にこの人の前で無防備な姿を
晒すようになったな…)
 
 これは彼らが恋人同士になってどれくらいの時間が過ぎた頃の光景なのか
克哉には判らない。
 けれど克哉はずっと彼らの様子を傍観者の立場で見守り続けていた。
 澤村と再会したばかりの頃はまだ恋人同士になってから日が浅く…興したばかりの
会社も軌道に乗る以前のことだった。
 あの頃の彼らはまだお互いに遠慮があって、こんな風に過ごせることはなかった。
 御堂は呆れながら、其れでも膨大な仕事をこなしている克哉を自分の膝の上で
休ませていってやる。
 その様子を見届けながら、克哉は心の中でそっと呟いていった。
 
―さようなら、御堂さん…
 
 本来いた世界の、愛しい人に向かってそう告げていくと少し近づいて…眠りこけている
もう一人の自分の顔を覗き込んでいった。
 かつての半身の安らいだ顔を見て、克哉は愛しさを覚えていく。
 
―今思い返せば、きっと自分は…彼のことも好きだったことを思い出していく
 
 其れは御堂への恋慕の想いとは違う感情だったけど、確かに克哉は…御堂と
再会し愛を育んだ彼をいつしか大切に想うようになった。
 最初は嫌いだったし、自分のもう一つの姿であることを認めたくなかった。
 けれど愛しい人の為に変わり続けていくことを選び、理想に向かって共に
歩んでいる姿を見て…克哉は応援したくなったのだ。
 
(オレが亡霊である立場を受け入れたのは…もしかしたら、オレもお前の事が
好きだったからかも知れないな…)
 
 其れはもしかしたら肉親を想うような感情だったのかも知れない。
 兄弟を案じるような気持ちがもしかしたら一番近いのだろうか。
 彼と御堂と再会するようになってから、克哉は一度も表に出ることはなかった。
 その行動の真意は…今思い返せば、彼の恋の邪魔をしたくないという気持ちが
あったからだろう。
 
―どうか幸せにね、俺…
 
 そして初めて、心からそう想って相手の幸福を願っていく
 
 かつては嫉妬や反発心に駆られて、決して言う事ができなかった一言。
 けれど今の自分には、自分を愛してくれる御堂が傍らにいるから。
 だから克哉は過去を振り切り、憎しみや嫉妬から自分を解き放つ為にそう
祝福していった。
 彼らの幸せそうな顔を見ても、今は胸が痛む事はなかった。
 かつては自分だけが置いてけぼりにされているような、仲間はずれにされて
しまっているような疎外感を覚えていた。
 だから見ているのが辛かったのだが…今は、凄く穏やかな心境でその様子を眺めていく。
 無防備な姿で御堂の傍で寝ている眼鏡を、克哉は愛しげに眺めていった。
 
(お前は…本当に変わったよな…)
 
 其れは自分の半身であり、共に生きていた眼鏡に向かってしみじみと
そう感じていく。
 御堂を廃人寸前まで追い詰めた頃とは本当に別人で…憑き物が取れたかのように、
今の彼は柔らかくなっていた。
 陽だまりの中、二人は優しい時間を紡ぎあっていく。
 今の克哉は其れを見て…心から良かったと、小さく微笑んでいた。
 
(きっとオレがいまいる世界の『俺』と、御堂さんを凌辱していた頃のお前は同じような
ものだったのかも知れない…。けど、お前は其処で過ちに気付いてこの人を
解放した…。それがきっと、大きな違いになったんだ…)

 克哉は、思い出していく。
 クラブRに残る事を選択して、心を潰されるような行為を強要されていた時…
最後に支えたのはきっと御堂への想いと、そして…この世界のもう一人の自分に
憧れる気持ちだったのだと。

―目の前の俺は、こちらの世界の俺とは違うのだ…

 その境界性を引いていた。
 それがギリギリの処で克哉を護る防波堤となった。
 優しくなった眼鏡の為なら自分が消えても良いと思った。
 この二人の恋を邪魔したくなかったから。
 けれど…鬼畜王として君臨して人の心を思いやらなくなった彼の為に
自分は決して消えてやろうとは思えなかった。
 其れを思い出し…克哉はそっと目を伏せていく。
 
「バイバイ…」

 小さくそう呟いた途端に、世界はゆっくりと白く染まり…光の中に
消えていった。
 過去にしがみついても、何も生み出さないから。
 だから祝福を最後に与えて、克哉は彼らと決別していく。
 その時、自分を呼んでくれる声にやっと気づいた。

『克哉…克哉…』

 これは、自分が愛しいと思っている御堂の声だ。
 その声を便りに、克哉はゆっくりと意識を浮上させていった。
 深海の底から海面に上がったような気分を味わいながら、静かに瞼を開けば
其処には先程まで激しく抱き合った御堂の優しい顔が存在していた。

「あっ…」

「おはよう克哉…やっと目覚めたか…?」

「はい…おはようございます、孝典さん…」

 そうして朝の挨拶を交わし合いながら、そっとおはようのキスをお互いに交わし合っていく。
 しみじみとこの人と結ばれる事が出来た喜びを噛みしめて、愛しい人を見つめていった。

「…どうした? そんなに私をジっと見て…」

「いえ、夢みたいだなって思いまして…。こうして、本当に貴方の元に帰って来て…
こんな一時を過ごす事が出来る事がこんなにも幸せなんだって噛みしめているんです…」

「そうか、だが…これは夢じゃない。これは確かに現実で…そして君はこれからも
ずっと私の傍にいるんだ。良いな…」

「はい、孝典さん…」

 そうして力を込めて抱きしめられていく。
 その抱擁にあまりに熱が込められていた為に軽く痛みを覚えたが…今の克哉には
その感覚すら愛おしかった。

(ここが…今のオレの世界。そして…これからもずっとこの人の傍で生きていくんだ…)

 そう実感した途端、かつての頼りなかった頃の自分が凄く遠いものに感じられた。
 もう自分は亡霊なんかなじゃない。
 御堂の傍らで生きる事を許された一人の人間なのだ。
 
「良い返事だ。…だからその言葉を決して忘れるな。…もう二度と、いなくなったり
するんじゃないぞ…」

「はい、約束します…。これからもずっと貴方の傍にいます…。死が二人を分かつ
その時まで…」

 そうして克哉は愛しい人の頬を優しく撫ぜていく。
 お互いの視線がぶつかりあい、吐息すら感じられる距離で…二人は戯れのように
相手の肌に触れ合っていた。
 今、確かに存在している事を…目の前の出来事が夢でない事を確認しあう為に。
 そして克哉は、ずっと言いたくて言えないでいた一言を言う決意を固めていく。
 心から幸せそうな笑みを浮かべていきながら…誓いの言葉のように恭しく…
その言葉をやっと紡いでいく。

『心から貴方を愛しています…孝典さん…』

 その一言を聞いた途端、御堂からきつく抱きしめられる。
 そして同じ言葉を返されていく。

『ああ、私も同じ気持ちだ。君を愛している…克哉…』

 紆余曲折を得て、やっと大切な人からその一言を聞く事が出来た時…克哉は
感涙の余り、涙をこぼしていく。
 この瞬間に命が終わっても悔いがないぐらいの充足感を覚えた。

―そしてこの朝より、彼らの新しい関係は始まっていく

 様々な試練を経た事で、彼らの間には絆と言われるぐらいに強固な関係が
確かに築かれていったのだった―

 
 
 
 
 



 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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