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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 21日にちょっとショックな事があり、色々とここ数日
考えていたり、部屋を整理して心の整理をつけて過ごして
おりました。
 ちょっと数日、音沙汰がなかった事はすみません。

 けど結論言うと…それで色々と吹っ切れた部分あります。
 ここ最近の自分、言いたいことを我慢して…能面みたいになって
しまっていたんですよ。
 喜怒哀楽がなくなってしまっているというか、人と会話するのが
凄い苦手になってしまって上手くしゃべれなくなってしまっていたというか。
 本当にそんな感じで。
 結局はそれ…自分に自信失くしてしまっていたからなんですけど(苦笑)

 ただ、何ていうのかな。
 確かに本音を垂れ流しにすれば良い訳じゃない。
 やっぱりある程度は建前というかオブラートに包んで伝えないと
周囲の人と摩擦起こしてしまうものだけど。
 本心を隠しすぎて何も言わないでいるのも極端だったな~とちょっと
反省している今日この頃。

 結局は自然体でいるのが一番良いんじゃないかな~って思った。
 肩肘を張りすぎず、適度にリラックスしている方が自分にとっても
傍にいる人にとっても心地良い気がする。
 何か最近の自分、意地を張りすぎてしまって…自然体で過ごすというのを
忘れてしまったな、と厳しい一件があったけどそれで気づけた気がします(トホホ)
 とりあえずこの連休でちょっと気持ち切り替えられましたのでまたボチボチ
更新再開しますわ。

 とりあえず目標は今月中に桜の回想終わらせます。
 まったりペースになっててすみませんが、更新は今の自分で出来る範囲で
無理なくやっていきますです。はい(ペコリ)
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  今回の冬コミ、ちょっと絵が書き慣れている
前ジャンルの方での新刊で7~8年ぶりに漫画を描いてみることに
致しました。
 友人に何人か告知して、発破掛ける為にゲスト原稿まで
頼んだからさあ逃げられないぞ!

 今回のはリハビリなので、長く活動してて絵も書き慣れている
ものの方が良いだろうっていうのでこちらのジャンルに序盤に
6P程度のプロローグ部分だけ漫画で描くという形に
決めました。
 本当は全部漫画で描いてみたいって気持ちありましたが、
これから会社忙しくなるし、久しぶりに漫画描くのにそんな高い
ハードル掲げたらまず挫折するな、というので妥当なラインから
挑戦してみることにしました。

 んで昨日、6P分のネームをまず書いてみたんですが…
何か描いたら活動したばっかりの事を思い出しましたわ…。
 香坂は同人暦は今年で丁度十年です。(前ジャンルの王レベは
八年やっております)

 活動したばっかの頃は香坂…実は小説書きがメインではなく。

 実は漫画&絵描きだったんだよ!!

 …ん~と一番最初はペルソナ2と幻想水滸伝1&2を扱っていて
オリジナルのグッズをちょっと手がけているような感じで運営している
サークルでした。
 ペーパーを発行したり、友人に相当手伝って貰ってどうにか活動
しているひよっこでした。
 んで、手先は不器用で…漫画描きの癖に定規使っても線が真っ直ぐ引けないわ、
売り子は出来ないわ、トーン貼らせると原稿貫通するわ…紙を二つ折りさせれば
根本的に曲がっているわ…で、漫画と小説は書くけどそれ以外はな~んも出来ないって
感じのダメダメな子でした。

 ん~周りが過保護で、こっちを完全に子ども扱いしていたので…ちょっとでも
危なっかしいことやそういう事はすぐ止めさせられて、おとなしく待っていなさいと
そんな感じだったんですよね(汗)
 んで、やらせて貰えないからな~んも出来ないまま。
 王レベで活動するまではそんな感じでした。
 その時代はちょっとBLっぽい話を書いていたけどせいぜい抱き合うか
チューする程度のレベルだったし、健全なものだったり男女ものを書いていたり
そんな感じで、今みたく男同士のエロをがっつり! 何て執筆しませんでしたね。
 
 何か高校時代の友人や従妹に手伝って貰っていたんですが…彼女達が
それ以上濃いのを書くと製本手伝ってくれそうにない空気だったので…
顔色伺いながら活動していましたね(苦笑)
 けど王レベに出会って、自分の書きたいものを書きたいって想いが暴走して
そっから自分一人で製本するようになったり、漫画も一人で描けない上に
(何せ当時マジでワク線が自力で引けないっていう致命的な弱点あった)
右手腱鞘炎になったから本気で数年はまともに漫画描けなくなって。
 それで小説の方をメインにしたら、そっちの方に客がついてしまったという
切ない経緯で小説書きになった訳ですが…(遠い目)

 漫画描いていると十年前のダメダメすぎる自分の事が思い出されて
微妙に頭が痛くなるんですが。
 久しぶりに漫画描きたいって思ったのって、私は元々絵描きでして。
 アナログでも画材見ると、これ試してみたいってワクワクするし。
 デジタルも独力ながらある程度は使えるようになった。
 それに知り合いが漫画や絵を描いている時の話とか聞かされると…
オイラも試してみたい!! ってウズウズするんですよ。
 
 自分は漫画描きより、小説書きの方がメインだし…他の人もそっちの
方を求めているって判っているんですが、一人でな~んも出来なかった
頃の事をちょっと乗り越えたいんですよ。
 一人でも漫画描けるようになったよって。
 人に頼ってばかりの頃の甘ったれな自分からは少しは変わったんだよって
自分に言い聞かせたいっていうか。

 何かそんな動機からです。
 多分別ジャンルの話ですし、このサイトを見ている大部分の人には
関係ない話だって承知の上なんですけどね。
 私は絵がそんなに上手くないって自覚あります。
 けど、絵を描くのが好きだから上手くなりたい。
 そして出来ることをもっと増やしたい。
 今回、漫画を描こうって決めたのはそんな気持ちからです。がお。

 とりあえず、桜の回想…以前に全35話と言いましたが、
36話に伸びそうです。本当、このシリーズだけでどれだけ時間を
掛けているだって突っ込まれそうですが、それでも地道に
アップしてやっとゴール間際までこぎつけました。

 香坂的に、澤村はノマルートの方で出て来て欲しかった!って
想いと、もうちょい掘り下げて描いて欲しかった…というのと、
友人の裏切りという出来事に対しての痛みとか、そういうのをキチンと
描いておきたかったという色んな思い入れから初めて、七月から
始めて完結まで四ヶ月ぐらい掛かっていますが、それでも
どうにかここまで来れました。

 最近、週に2~4回程度の頻度になっておりますが、それでも
まったりペースで続けていくと思います。

 次は書き欠けになっているバーニングか、太克の悲恋のどっちかを
年内中に終わらせたいです。
 後二回、どうぞ付き合ってやって下さいませ(ペコリ) 
  御克前提の澤村話。テーマは桜です。
  桜の花が舞い散る中、自分という心が生まれる前のことを
探り始める克哉がメインの話です。後、鬼畜眼鏡Rではあまりに
澤村が不憫だったのでちょっと救済の為に執筆しました。

 桜の回想                      10  
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 ―御堂との激しい行為がようやく終わったのは、奇しくも眼鏡と澤村が和解して、
彼の方の人格が消えたのとほぼ同時ぐらいだった。
 
 その間、克哉は長い時間…猛烈な快楽に苛まれ続けて、キングサイズの
ベッドの真っ白いシーツの上でぐったりと倒れ込んでいた。
 御堂に様々な体位で貫かれ、翻弄され続けた。
 今でも愛しい人間の一部は彼の身体の中に収められた状態のまま…背後から
しっかりと抱きしめられている。
 正面から抱かれているとこの人の顔がしっかりと確認出来るので嬉しいが、
こうして背後から抱きすくめられると背中を丸ごと包み込まれているような
安心感を覚えていく。
 何度、御堂の精が身体の奥に注ぎ込まれたのかすでに数え切れないぐらいだった。
 それぐらい激しく、何度も熱い塊でこの身を貫かれ続けていた。
 もう、どれぐらい喘がされたのかも判らない。
 
「克哉…水だ…」
 
「はい…頂きます…」
 
 ベッドサイドにいつの間にか魔法のように冷たい水で満たされたグラスが現れていて、
背後から御堂が手を伸ばして克哉の胸元にそっと運んでいく。
 彼はそれを静かに受け止めていきながら、水を零さないように慎重にグラスの
縁を口元に運んでいった。
 ほんのりとレモンの風味がする冷たい水は克哉の疲弊した身体に沁み入るようだった。
 それは他愛ない一幕であったが、克哉にとってはこの人が愛しいと…実感
するには十分であった。
 ジワリとこの人への想いが心の中に広がっていくのを自覚していく。
 
「孝典、さん…」
 
 そしてこの世で一番愛しい人の名を確認するように克哉は呟いていった。
 この人と離れて生きる事など考えられない。
 
―楽園の扉
 
 そう思った瞬間に先程、Mr.Rが囁いたその単語が頭の中に浮かんで
大きくなっていく。
 
(御堂さんと二人きりで…ただ愛し合うことだけを考えて生きることが出来る、か…)
 
 それはどれだけの幸せなのだろうか。
 克哉は少し想像しただけでブルっと肩を震わせていった。
 こうして御堂と抱き合い、その強烈な快楽を改めて感じたからこそ…先程は
とんでもないと感じていた、その誘惑にグラリと心が傾きかけていく。
 
(大好き、です…)
 
 克哉はその想いを噛みしめていきながら相手の指をそっと甘く噛んでいく。
 相手の指先を丁寧に舐めあげて、チュっと吸い上げていくと背後の御堂が
軽く喉で笑った気配を感じていく。
 
―貴方と二人で生きられるなら…
 
 そして、甘美な願いに心を馳せていってしまう。
 現実なら決して叶わない夢想が、今…この時ならば叶えられる可能性があるという。
 正常な状態の克哉なら決して頷かない。
 だが、今は愛しいという感情に満たされていて冷静な判断が出来なくなっていた。
 
「孝典、さん…」
 
 今なら先程の夢物語にも近い御堂からの提案を受け入れられると確信して
いきながら、言葉を紡いでいく。
 その瞬間…鮮明に一つの声が聞こえていった。
 
―ダメだ! 二度と戻れなくなるぞ…!
 
 その声が聞こえた瞬間、克哉は電流で打たれたように身体を跳ねさせていった。
 
「『俺』の、声が…? どうして…?」
 
 暫く自分の中からまったく気配すら感じられなかったもう一人の自分の声が聞こえる。
 しかも、急速に自分の心と重なり…一つになっていくようなそんな感覚がした。
 
「克哉…? どうしたんだ…?」
 
 愛しい人が背後からそっと声を掛けてくる。
 その甘やかなで気だるそうな声を聞くだけで背筋にゾクっと悪寒が走っていった。
 
「何でも、ありません…」
 
 そうして克哉は背後から回されている御堂の手に、己の指先を重ねて
いきながら呟いていく。
 
―俺の声が聞こえていないのか…? その誘惑はあの男の…Rの罠だ。
一度でも流されて頷いてしまったら現実に二度と戻れないぞ…!
 
―うるさいな。オレは御堂さんと一緒に二人きりで生きたいんだ…! 
本当に愛しくて大切な人だけを見つめてずっとそうして永遠に一緒にいられる…!
 その幸せを手にしたらいけないのかよ…!
 
 克哉の心は大きくその誘惑に傾き掛けていただけに…今はもう一人の自分の
忠告すらもうるさく聞こえてしまっていた。
 
―お前はそれで後悔、しないのか…?
 
―しないよ! 孝典さんと一緒だから…
 
―そう、か…。お前が納得ずくでその誘惑に乗るというのならば…俺も強固には
止めはしない。だが、御堂と二人きりで永遠に生きる選択をしたならば…お前は
友人と思っている存在たちに…本多や片桐さん、太一や…お前の両親やMGNに
いる藤田や川出やその同僚達にも二度と会えなくなるんだぞ…
 
―それ、は…!
 
 眼鏡に、今自分の周りにいて関わりあっている人達の名前を挙げられて
一瞬にして現実へと意識が傾いていく。 
 激しく愛され続けて、御堂さえ自分の傍にいてくれれば全てを捨てても
構わないとさえ思っていた。
 だが、眼鏡が友人や家族、同僚達の存在を口にしたことでその人達の
顔が鮮明に脳裏に浮かんで…涙さえ、滲んで来た。
 
「皆、に…二度と会えなくなる…」
 
 その事を考えただけで胸の中に大きな空洞が生まれていくようだった。
 確かに今の克哉にとって御堂はもっとも大きな割合を占めている。
 けれど今、自分の周りにいる人達を大切に思う気持ちはあるのだ。
 最愛のパートナーの存在だけが、今の克哉の幸せを構成しているのではない。
 周囲に取り巻く人と良好な関係を築いて、時に一緒に泣いたり笑ったり
騒いだりして過ごしているからこそ成り立っているものなのだ。
 その一言で、冷や水に全身を打たれたように衝撃を受けて…甘い夢想は
消えて、あっという間に冷静さを取り戻していく。
 
「克哉…どうしたんだ? 私と共に…永遠に一緒に生きてくれないのか…?」
 
「孝典、さん…オレ、は…」
 
 それでも愛している人に口づけながらそんな言葉を吐かれてしまえば
心はグラっと揺れていく。
 けど、正気を取り戻しつつあるからこそやっと克哉は気づいてしまったのだ。
 今の御堂の瞳はガラス玉のように空虚で、あの鋭くて強烈な意志が感じられない事を。
 
(孝典さんの目が…濁って、まるで生気が感じられない…さっきまで、
まったく気づかなかった…)
 
 どうして、あの清冽な人の双眸がこんなにも濁って別人のようになっている
事が判らなかったのだろう。
 自分が愛した御堂はいつだって厳しくて苛烈な一面を持っている。
 だが、克哉は御堂のそんな一面をも愛しいのだ。
 自分達を取り巻く重い責任やプレッシャーに時に潰されそうに感じられる時がある。
 御堂の厳しさや責任感は、そういった環境から派生している。
 もし全ての重圧から逃れて、ただ御堂とイチャつきながら欲望のままに
求め合う…それだけをしていれば良い世界。
 御堂の目がこんな風に濁ったままで、ただこちらに甘い言葉を囁いたり
こちらを抱いたり…そんな日々だけがいつまでも続いていく。だが…。
 
―こんなにも目の濁った御堂と自分は本当に永遠に一緒にいたいだろうか…?
 
 自分の中にその想いが生まれた瞬間、ドックン…と心臓が大きく
跳ねていくのが判った。
 御堂の事は心の底から愛しい。
 だが、今の御堂の目がこんなにも淀んでいた事に克哉は気づいてしまった。
 目の前にいる御堂は、操られているか…偽物のどちらかである事を。
 そして自分が良く知っている御堂であるならば、こんな愚かしい事は言わないと
最初に感じた違和感が正しかった事を克哉は改めて実感していく。
 
(オレは貴方を心から愛している…。けれど、やはりその他の人全てを
切り捨てて二人だけの楽園を築くことなど間違っているんだ…)
 
 ようやくその考えに至った瞬間、背後から御堂に息が詰まりそうになる
ぐらいに強く抱きしめられていく。
 その仕草だけで克哉の心臓は早鐘を打ち始めて、動揺を覚えていく。
 
「克哉…私と一緒に楽園の扉を開く覚悟は出来たか…?」
 
「いい、え…」
 
「…何だと?」
 
 勇気を振り絞って断っていくと、顔が見えない状態でも断ったことで
御堂が不快そうにしているのが伝わってくる。
 
「克哉、今…何と言った…?」
 
「ですから、楽園になんてオレは行く事を望んでいません…帰りましょう
孝典さん。オレ達が生きている現実へ…」
 
 克哉のその言葉は御堂にとっては予想外らしく、いきなり首筋に噛みついて
その身体に己の痕跡を刻みつけていく。
 
「うあっ…! い、痛い…! 止めてください! 孝典さん!」
 
「…君にはまだ足りなかったようだな…。楽園の扉が目の前にあるのにこの後に
及んで強情を張るとは…。まだお仕置きが必要なようだな…!」
 
「そん、な…やめ、て…ああああっ!」
 
 そして問答無用で再び四つん這いにされて、背後から深く御堂の
ペニスに貫かれていった。 
 これは克哉の意志を容赦なくねじ曲げようとする甘い拷問そのものだ。
 快楽を与えられて、再び抗えなくなりそうだった。
 
―流されるな…『オレ』…。お前がここで屈したら、誰とも会えなくなるんだぞ…!
 
 だが、その瞬間…もう一人の自分の声がはっきりと頭の中に響いていった。
 それが克哉の正気を再び蘇られて、現実へと意識を引き戻していく。
 誰かを心から愛しいと想った事があるならば、その人間とずっと一緒にいたいとか、
二人で生きたいと望むのはむしろ自然な事だろう。
 だが、この世に生きている限り…文明社会に身を置いてその恩恵に
預かっている限り、その願いはまず叶えられる事はない。
 何より、一人の人間としか関わらない事は人の心をひどくイビツな
ものに変えていく。
 生きていく上で人体に多様な栄養素を必要とするのと一緒だ。
 ある程度の人数と接触し、交流していく事で人の心は健全に保たれるのだ。
 そして一定の重圧が掛かっている事で人生にまた張りも出てくるのだ。
 何もせずに良い世界は人の精神を堕落させていく。
 セックスは快楽を与えてくれる行為だが、それだけをしていて良いという状況は
そう遠くない内に飽きを生んでいくだろう。
 忙しく仕事をこなしている中に、時に触れ合う時間を持つからこそ愛し合って
いる時間は深くなり、より輝くのだ。
 こうして強く激しく求められていると、御堂以外との繋がりが再びどうでも
良いものになっていきそうだった。
 だが、その強烈な快楽を唇を噛みしめて耐えていき、やや苦しい体制で
御堂の方を向き直っていく。
 
「孝典、さん…オレ、言いたい事、が…」
 
「何だ、克哉…。ようやく頷く気になったのか…?」
 
「いい、え…。オレは絶対に、その提案だけは受け入れる気はありません…」
 
「…っ! 何だと!」
 
「ふぁっ…あ、はあ…!」
 
 御堂が激昂して眉を大きく跳ね上げていく。
 瞬間、相手のペニスが更に奥深くを突き上げていった。
 克哉の前立腺を、その熱い塊が容赦なく抉って、追いつめてくる。
 背後から両方の胸の突起をいじられると、鋭い電流が全身に
駆け巡っていくようだった。
 
「どうして、だ…克哉! 私とずっと一緒に生きてはくれないのか…!」
 
「いいえ、オレは貴方と…生涯、あぅ…添い遂げます…! これからもずっと
貴方以上に愛せる人なんて存在しない、ですから…!」
 
 しっかりと相手の目を見据えていきながら、本心から克哉はそう叫んでいった。
 そう、この世で一番この人を愛しているというその言葉は克哉にとっては
何よりの真実だからだ。
 だからたたみかけていくように更にはっきりと宣言していく。
 誓うように、相手の心に訴え駆けるように真摯な顔を浮かべていった。
 
―貴方をオレは心から愛しています。楽園に行く事は同意出来ないですが、
オレは貴方の傍を決して離れません。だから、現実を捨てて夢の世界に逃避
しようなんて…そんな考えを、捨てて下さい…!
 
 アイスブルーの瞳を決意に輝かせながら、克哉ははっきりと告げていく。
 そう、自分の愛した御堂は「己の考えをしっかりと伝えろ。変な遠慮はしなくて良い」と
散々言っていた。
 自分の考えを一方的に押しつけて、こちらがそれに応えないからと言って
無理矢理叩きつぶしたりする人じゃない。
 否、そんな真似をする人物だったらここまで深く敬愛する事はなかっただろう。
 だから克哉はある種の確信を持ちながら、そう伝えていった。瞬間、御堂は
稲妻に打たれたかのように激しい反応を示していった。
 
「っ…!」
 
「孝典さんっ?」
 
 克哉は目を見開いて驚いていく。
 いきなり御堂の身体が透明に透け始めていったからだ。
 そしてゆっくりとその身体は薄くなっていって…瞬く間に夢のように消えていく。
 同時に白亜の豪奢な部屋もまた、ひび割れて崩壊し始めていく。
 視界が大きく歪んでいくようだった。
 まるで長い夢から醒めたかのように、目の前に存在していた全てが消え失せていった。
 その光景を眺めながら、克哉は意識が遠ざかるのを感じていった。
 
(ああ、全ては夢で…恐らく、これはMr.Rが仕掛けた罠だったんだ。あいつが…
もう一人の俺があの一言を言ってくれなかったら、オレはきっと陥落してしまっていた…)
 
 儚く消失していくその様を眺めていきながら、克哉はゾッとなった。
 同時にもう一人の自分に深く感謝していった。
 キラキラと光の粒子が周囲に舞い散る。
 まるでクリスタルガラスが砕けて光を反射しているような危うく壮美な光景だった。
 長かった夢が散っていく光景はひどく幻想的で、そして物悲しささえ覚えていった。
 
―楽園の扉はこうして閉ざされ、克哉の前に二度と現れる事はないだろう。
だが、それで良いと克哉は思っていた
 
 昔の自分だったら、御堂と知り合う以前であったならもしかしたら甘い誘惑に
靡いてしまっていたかも知れなかった。
 だが、今の克哉は自分の周囲にいる人達を大切に思っている。
 かけがえのないものだと思っている。
 どれだけ御堂が愛しくても、やはり全てを引き替えにして二人だけで
生きるというのは歪んでいて病んでいる考えだと思うから。
 だからそっと目を伏せて、これで良いと自分に言い聞かせた瞬間…
フワリと水中から浮上するような感覚を覚えていった。
 瞬間、御堂の鋭い声が脳裏に響きわたっていった。
 
「克哉!!」
 
 そして、最後に克哉は「本物」の御堂の呼び声をぼんやりと聞いていった。
 克哉はその方向に手を必死になって差し延ばし、指先に愛しい人の
温もりを感じていきながら再び、意識を落としていった。
 
―今度は、本物の御堂の腕の中に包み込まれていきながら…
 
 

  とりあえず本日辺りを目標にカタカタと水面下で
桜の回想の克哉側のクライマックスシーンを執筆して
いましたが…今週、会社の方がドタバタしているのでちょっと
余裕持って書く事にします。
 もう少しお待ち下さいませ。

 七人しかおらへん会社で、今週一人新型インフルエンザで
休んでおられる方がいるので、ちょっと皆でその穴を必死に
埋めている状態なのでヘロヘロ~です。
 本当は18日中にアップしたかったですが今夜はダウンです。
 19日の夜辺りにアップ出来れば、と思っております。
 おやすみなさいませ(ペコリ)

 ちょっと近況。
 最近、語彙を少し増やそうとDSiのDSiウァアの「ちょっと文学全集20」を
ダウンロードして、合間にチョコチョコ読み進めております。
 最近、シャーロック・ホームズシリーズ三作ぐらい読破した。
 結構面白いですv
 そして文章の言い回しとかが結構勉強になるので意識して覚えるようにして
表現方法を増やそうとしています。
 後、フォトショップの使い方もある程度慣れたので漫画を7年ぶりぐらいに
描いてみたいかな~とか考え中です。
(元々、香坂は同人活動スタートした当初は絵描き&漫画描きでした。
一年ぐらいで右腕腱鞘炎になって、文章書きに転じてそのままになったけど)
 右腕がやっと二時間ぐらい続けて描いても大丈夫な段階まで回復したから
これなら描けるかな~と思って、ちょっとデジタルでの原稿の作成の仕方も
勉強中です。

 最近はこんな感じです。
 では失礼しますね~。

  2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
      


魔法の鍵 5
 
無数の鍵穴が存在する回廊で、お互いに何個かの扉を開いていって…最終的に
深海を思わせる部屋を二人は選んで、其処を使用することに決めていった。
 室内に足を踏み入れればまさに別世界に迷い込んだような錯覚さえ覚えていく。
 どうやら部屋の天井や壁は巨大な水槽の一部のようだった。
 藍色の水の中を無数の魚達が泳いでいる姿は幻想的でもあり、実際に
深い海の底を歩いているような気分になっていく。
 照明は淡く灯されていて…部屋の真ん中には巨大なウォーターベッドが置かれていた。
 これはMr.Rが作り出した空間だという認識があるから克哉も敢えて
突っ込まなかったが…現実でこんな部屋を作ろうとすれば一体どれくらいの
費用が掛かるのかまともに考えるだけバカらしくなりそうな造りだった。
 
「…何というか、凄いな…」
 
「嗚呼、そうだな。こんな部屋で一晩を過ごすなんて滅多に体験出来ることじゃない。
現実で再現しようとすれば莫大な金が掛かりそうだからな…」
 
 そう呆れたように呟きながら克哉は御堂の腕を引いて巨大なウォーターベッドの
方へと歩み寄り、その上に腰を降ろしていく。
 それは生まれて初めての感触だった。
 水に満たされているそのベッドの感触は人間の皮膚をごく自然に受け止めてくれる
ような柔らかさと暖かさがあった。
 ほんのりと冷たい感触は心地良く、夏場とかにこのベッドの上に横たわったら
安眠出来そうな感じだ。
 
「…ほう、普通のベッドとは随分感触が違うな…。もしかしてこれはウォーター
ベッドか。…実際に使ってみたのは今夜が初めてだが…意外に悪くないものだな。
スプリングが効いたベッドとはまた違った感覚で新鮮だ」
 
「あぁ、私も使うのは初めてだが…自然な感じで体が受け止められているような
感触で良いものだな。癖になってしまいそうだ…」
 
 そうして思いがけず御堂が無防備な顔を浮かべていきながらそう言って
いったので…克哉の心臓は小さく跳ねていった。
 Mr.Rの甘言になど乗っかってしまったせいでこんな奇妙な空間に
連れて来られてしまった訳だが…ジタバタした所ですぐに現実に戻れる訳ではない。
 溜息を吐きながらもようやく彼はその事実を受け入れ始めていった。
 
(もう一度こうなってしまったのならば仕方ない…。割り切って、状況を
楽しむことにするか…)
 
 そう思考を切り替えて、そのベッドの上に二人で一緒に横たわっていった。
 お互いに身を寄せ合いながら仰向けの体制になって天井を眺めていくと…
大きな何らかの魚の影がユラリ、と揺らめいてヒレを蠢かしてゆったりと泳ぎ続けていく。
 室内は静まり返っていて、お互いの息遣いくらいしか聞こえない程だ。
 
「…まるで、本当に深海に二人でいるみたいだな…克哉…」
 
「嗚呼、そうだな…こんな風にあんたと穏やかな時間を過ごすのは…もしかしたら
初めての事かも知れないな…」
 
 ウォーターベッドはその構造上、横たわっていると浮力が働いて水に
浮かんでいるのに近い感触が得られる。
 元々、寝たきりの患者の床ずれ対策の為に生み出されただけあって人体に
自然な形でフィットしていった。
 内臓のヒーターでほんのりとマットの中が暖められていると…本当に水に
包み込まれているような気分になっていく。
 再会してからアクワイヤ・アソシエーションを設立するまで毎日が戦争の
ような忙しさであったし。
 一緒に働くようになってからもかつて憧れた相手と肩を並べたいという想いが
強くなりすぎてなかなか寛ぐことが出来なかったかも知れない。
 横に寝そべっている相手の方を向き直りながらそう呟いていくと…御堂は
苦笑しながらその言葉に頷いていった。
 
「そう、だな…。君と再会して恋人同士になってから何度も抱き合ったけれど…
こんな風に心の底から寛いで接しているのは初めてかも知れないな…」
 
 海の底を思わせる部屋には、人の心を安らげる力があるのかも知れない。
 藍色の深い闇と静寂。
 それはあまりに日常からかけ離れているせいで…そして海は母親の羊水にも
繋がっているという。
 女性の胎内を海、と例えるケースも多い。もしかしたらこんな風に寛げているのは
その効能かも知れなかった。
 
「…あんた、そういう顔も出来たんだな…。今、凄く優しい顔をしている…」
 
「何を言う。私だって…優しい顔を浮かべる時だってある。そういう君こそ…
目がいつもよりも柔らかくて、まるで別人みたいだ…」
 
 お互いに相手の顔を覗き込んでいきながら、そっと頬に触れ合っていく。
 相手の指先は温かくて、撫ぜられると心地良かった。
 
「くすぐったいぞ…克哉」
 
「俺だってそうだ…。だが、こんな風にあんたと過ごすのは…悪くない」
 
「ああ、そうだな…。もしかしたら、ここが夢の中だと割り切っているから…
少しだけ素直になっているのかもな…」
 
 そうしてフっと目を細めて笑っていく御堂の表情が愛しくて、克哉はそっと
顔を寄せていくと唇にキスを落としていく。
 ほんのりと湿っていて柔らかいその感触に欲望を刺激されていく。
 
「…孝典…」
 
「克哉…」
 
 淡い光にお互いの姿が浮かび上がっていきながら…見つめ合っていく。
 横を向いて抱き合う格好から、克哉が相手の体を組み敷いていく
体制にごく自然に変わっていく。
 ここがあの得体の知れない男が用意した空間であっても、もうどうでも
良いと思い始めていく。
 今、目の前にいる御堂の顔は優しく…寛いでいて、滅多に見れないその表情を
目の当たりにして克哉の心の中には相手を愛しいという想いだけで満たされていく。
 それだけで充分だ、と思った。
 
「ここであんたに、触れて良いか…?」
 
「愚問、だな…。今夜は私の誕生日だ…それならば、君と共に過ごしたいと…
こうして触れ合いと望むのが自然だろう…? 今の私にとって、君だけが公私共に
パートナーであり…こうして抱き合いたいと望む存在なのだから…」
 
「…っ! 最大の、殺し文句だな…。本当に最高だよ…。あんたは…」
 
 喉の奥で笑いを噛み殺して、克哉は不適に微笑んでいく。
 そうして貪るように深く唇を奪っていきながら…克哉は本格的な愛撫を、
御堂の体に施し始めたのだった―
 


 友人と話している最中に「小さな頃、人魚姫の話が大好きで~」と
いう話題が出まして…それで何度も頭の中で思い浮かべて
いる内に頭の中で組みあがった人魚姫の話を聞かせたら、
「それ読んでみたい!」と言ってもらえたので今日から明日に
掛けてちょいとカタカタ打っておりました。

 鬼畜眼鏡の話じゃなくて申し訳ないですが…香坂って子供の頃から
人魚姫のお話って凄い思い入れがあるんですよ。
 子供の頃に、人魚が海の中で泳いでいる絵をずっと
飾り続けていたぐらいあの海の底に人魚達が住む風景って
凄く大好きで。
 それで今から10年くらい前から頭の中に存在していた
自分のオリジナルの人魚姫のお話、ちょっとだけ書き出してみました。
 興味ない方はスルーして下さいませ。

 けど、ちょっと小さな頃に思い描いていた物語を書いて
楽しかったです。
 興味ある方だけ目を通して頂ければと思います。

 小さな王子様と、人魚姫の出会いのお話です。

 最近、ちょっと運営スタイルを変更してどんな風に
変えていこうか考え中だったりします。

 このブログ…最初は一日一話ってペースで話を書いて
いましたけれど…今は正直、2~3日で一話書くのが精一杯
の状態です。
 一応香坂、大体一時間で4~5Pぐらいのスピードで書けるんですが
毎日書いていた頃は出勤する時間の一時間半~二時間前には起床して
それでやっていたんですよね。
 クライマックスのシーンとか10Pぐらい掛かりますから…その時は
二時間ぐらい執筆時間確保して、それで早起きした勢いでガガガーと
書いていて、それを一年三ヶ月ぐらいは必死に続けていたんですが。

 元々一日一話は、「三ヶ月で止める」つもりだったから始めただけで。
 二年とか三年運営することを視野に入れているなら、これは短距離の
ペースでマラソンを続けているようなもんです。
 毎日、40分から一時間以上執筆時間を確保して…そして携帯電話の
メール機能で10分間で400~500文字以上の速度で文章を打ち込んで
オフ原稿を作る。
 …それがまあ、去年の香坂の毎日やっていたことで一日に2~3時間
以上は何かしら打ち込んでおりました。
 今は平均、30分から1時間ちょい…と言った処です。
 冷静に考えてみるとムチャクチャだよなおい! と自分で突っ込みたいっす。

 多分、現時点での自分が無理しないで続けられるペースは一日に1時間~
一時間半程度。
 今は早起きは一時間までにして、通勤時間にPOMERAで打ち込んで作成
していますが…POMERAだとパソコンで打ち込むのの70~80%程度の速度に
なっているので毎日「SS」なり「連載」を投下するには厳しい現状です。

 けど、サービス精神があるので…出来る範囲で読み手を愉しませい想いも
あるんですよね。
 んで、今考えている方向性は「絵」も組み合わせていくか…私の体験の中で
面白いネタになりそうな話を語っていくかっていうのを考え中なんですよ。
 もしくは兄上が重度のゲーマーなので物心をついた時には香坂、ゲームに
触れ続けているんですよね。
 兄上はゲームを購入しては、それをどういうユーザーにとってはオススメかというのを
紹介しているブログを運営しているので…うち、月に2~5本ぐらいは何かしらの
ソフトが増え続けている環境なんですよ。
 それをちょこっと僕もたまにやらせてもらうか。
 20~30分程度で書けそうな分量で続けていく、というかそういう方向性で
ちょっと色々考え続けてはいます。

 何か実際、公開していないだけで絵は結構描いている奴なので。
 後は、ちょっとフォトショップの練習の為に漫画を少しそれで描いて
みようかなというのも検討中。
 組み合わせて、今の自分にとって無理なく出来そうなことって何かな~と
ちょっと探しています。

 今の自分には「物語」は週に3~4本書くのが精一杯ですわ。
 自分の限界を理解した上で、「何か」を考えてみますね。
 ではでは…。
 

※御克前提の澤村話。テーマは桜です。
 桜の花が舞い散る中、自分という心が生まれる前のことを
探り始める克哉がメインの話です。後、鬼畜眼鏡Rではあまりに
澤村が不憫だったのでちょっと救済の為に執筆しました。
 この話は渾身の力を込めて書いたので間が空いてすみません。
 とりあえず、これが現段階での香坂の目一杯です。

 桜の回想                      10  
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         31  32

 ―目の前にあの日と同じように泣いている一人の男がいた
 
「僕を、忘れないでよ…克哉、君…!」
 
 そして相手が15年間も自分の心の奥底に隠していた想いを
衝動的に口にしていく。
 許されたら、憎まれることすらなくなったら自分という人間が相手の中から
消えると思ったのだろう。
 其処で初めて、本音が漏れていくのを聞いて…眼鏡は深く溜息を突いていた。
 
(その一言を15年前のあの日に聞いていたのならば…俺たちの関係はきっと、
途切れなかったんだろうな…)
 
 その発言を聞いてやっと佐伯克哉は親友だった少年があの日泣きながら
裏側の事情を打ち明けたことに納得がいった。
 全ては、好意の裏返しだったのだ。
 澤村紀次は本当ならずっと佐伯克哉の傍にいたかったのだ。
 だが実力が及ばず、克哉がこれから進学しようとする学校は彼の手の届く
レベルではなかった。
 
「言いたい、事はそれだけか…?」
 
 そう問い返した瞬間、目の前に立っていた青年はゆっくりと12歳の頃の
姿へと変わっていく。
 赤いオシャレ眼鏡も、ブランドもののスーツも纏っていない小学校高学年の少年。
 
「どうして、僕を置いて行ったんだよ! どうしてみんなと一緒にあの中学に
進学してくれなかったんだよ! 遠くの学校に行くなんて、どうして…!」
 
「紀次…」
 
 その時、眼鏡の脳裏にその時の出来事が鮮明に蘇っていく。
 それは佐伯克哉側にとっては些細な、大した事のない思い出に過ぎなかった。
 
―紀次、俺…母さんが望んでいるから遠くの学校に行く事になるかも知れない…
 
 そうだ、最高学年に進級する前に母から私立の中学校に進学しないか、
と言われて…少し迷っていたから、澤村に自分は相談した事があった。
 その時点ではまだいじめは始まっておらず、迷っている部分があった。
 あの当時の佐伯克哉はクラスの中心人物だった。
 成績優秀、そして運動神経も優れている彼に多くの人間が頼ってきていた。
 澤村もその一人だった。
 
―克哉君、遠くに行ってしまうの…?
 
 そういえば相談ごとを口にした時、澤村はこんな風に泣きそうな顔を浮かべていた。
 
―あぁ、母さんが望んでいるからな。親の希望は出来れば叶えたいから
どうしようかって迷っているんだ…
 
―そう、なんだ…
 
 その瞬間、澤村の顔が一瞬だけ大きく歪んだ気がした。
 酷くひきつっていて、強い敵意をその視線から感じていった。
 それは時間にすれば本当に僅かな、瞬く間だけ現れた相手の本心。
 その時は気づかずに見逃していた兆候が、もう一度振り返る事で眼鏡の
頭の中で組み上がって一つの回答を導き出していく。
 少年は泣いている。
 その時は笑顔を浮かべて押し殺した本心を、やっと解放して相手に叩きつけていった。
 
「君を追いかけたくても、あの当時の僕には絶対に受かる見込みのない
場所だった。そんな場所に…君は当然のように進学すると口にして
『自分が落ちる可能性』なんてこれっぽっちも考えていなかった! 
それがどれだけ…僕にとっては悔しくて辛い事だったのか、君は
考えた事もなかったんだろう!」
 
 小学生の時の澤村は、この本音をずっと佐伯克哉に伝えずにいた。
 口にしたら自分があまりにみじめになるって事が初めから判っていたからだ。
 
「ちっちゃい頃から、君は僕の憧れだったのに…! 傍にさえいられれば
それで良かったのに…! 君は自らの意志で僕が追いかける事が出来ない
場所に行こうとしていた。だから、僕は…僕は…!」
 
 桜の花びらが舞い散る中で、ずっと過去に囚われ続けていた少年が慟哭していく。
 それは彼の中で眠り続けていた本心。
 プライドや意地が邪魔をして、口にすることもなく秘められ続けて…
いつの間にか澱んでしまった想い。
 それを聞いた瞬間、眼鏡は…相手への憎しみがゆっくりと
消えていくのを感じていった。
 
「お前は、俺の事を…好きで、いてくれたんだな…」
 
 当時、気づかなかった。
 彼のそんな本心を。
 母が望んだ私立の中学に進学する、そう打ち明けた事がこんなにも
親友を追いつめる事になるなんて考えもしなかった。
 彼の涙をみて、ゆっくりとかつて信じていた頃の想いを…彼を誰よりも
大切だったと、そう思っていた頃の自分の感情が蘇っていく。
 
「…そう、だよ。僕は…君を、好き…だった。追いつくことが出来なくて、悔しくて…
歯がゆかったけれど…それでも僕にとって、君は…憧れだったんだ…。
一緒に…いたかったんだよ…」
 
 ポロポロポロ、と少年の目元から涙が溢れ続ける。
 心の壁が、自分たち二人を大きく隔てていた障壁がゆっくりと
消えていくのを感じていく。
 もしその本心を先に伝えてくれていたのならば、自分たちは一緒に
歩めていたかも知れなかった。
 人と人との関わりあいの中では、良くそういう事がある。
 お互いに両想いであったとしても、その気持ち故に真実を時に歪めて
受け取ってしまったり、ささいなすれ違いが重なって決別をしてしまう事がある。
 
「なら、どうしてそれをあの時…言わなかったんだ…?」
 
「言って何になるんだよ…! 君の気持ちはもう決まっていたんだろう!」
 
 澤村が激昂して叫んでいく。
 だが、その瞬間…眼鏡はそっと目を伏せていって静かな声で呟いていった。
 
「いいや、お前にその事を告げた時には…迷っていた。母の望みを叶えたいって
気持ちと…お前と一緒にいたいという願いが、交差してな…」
 
「えっ…」
 
 その瞬間、信じられないという目でこちらを見つめていく。長いすれ違いと
平行線が再び交わった瞬間だった。
 
「…俺は、お前と一緒にいたかった。だから…引き留めてくれれば私立中学に
進学するのは止めようと、そう思って…お前に真っ先に、相談したんだ…」
 
「う、そだ…そんな、の…。けど、結局…君は私立中学を受験して
そっちに進学したじゃないか!」
 
「あぁ…お前が影で裏切ってくれたおかげでな。いきなりクラスで孤立して
いじめを食らうようになって…心が決まったんだ。それでも…卒業式の日までは、
お前とだけは別れるのは寂しいと…それだけが唯一の心残りだった」
 
「そ、んな…じゃあ、僕がした事は…」
 
「そうだ。本当に願っている事と逆の現実を招く事を…お前はやって
しまっていたんだ…」
 
「う、うぁぁぁぁ!」
 
 澤村は佐伯克哉に本当に傍にいて欲しかったならば…私立中学に
進学して欲しくないと己の本心を訴えるか、もしくは彼と同じ学校に進学する
為に死ぬもの狂いで勉強をするかどちらかをするべきだったのだ。
 だが、彼は自分と袂を分かつ選択をしようとしている相手に報復
するような行動しか取らなかった。
 そして間違った方法で自分の存在を相手の中に刻みつける事を
選択してしまっていたのだ。
 その愚かさを、過ちを十五年の年月を経て改めて突きつけられてしまったのだ。
 その瞬間に、堰を切ったように叫んで号泣していった。 
(そう、か…俺たちはただ、すれ違っていただけだったんだな…。こんなにも
長い年月が過ぎて、やっと判るなんてどれだけ皮肉なんだ…)
 
 世の中にはどれだけ本当は両想いであったにも関わらず些細な出来事が
キッカケで壊れてしまう関係があるのだろうか。
 伝え損ねていた言葉や気持ち。
 ほんの少し素直になったり、意地を捨てる事さえ出来れば残っていた筈の
関係が存在するのだろうか。
 恐らくあの一件も、佐伯克哉側が親友だった少年に「一緒にいたい」という
想いをキチンと伝える事が出来ていたならば澤村紀次は必死になって努力して
彼に追いつこうと努力するか、もしくは他の学校に進学しようとする克哉を
説得していたかも知れない。
 澤村紀次も、いじめという手段で自分の胸の痛みを相手にぶつける行為
ではなく、必死になって努力して親友に追いついていればこんなにも長い期間…
自分たちは離れて生きずに済んだのかも知れなかった。
 
―崩壊のキッカケは本当に些末な事で、見落としてしまうぐらいに当たり前の
日常の中に紛れていた
 
 だからこんなのも長い期間、気づかなかった。
 だが相手の言葉を聞いてやっと佐伯克哉は真実に辿り着いていった。
 
「何で、そういってくれなかったんだよ…! その一言を君の口から聞いていたら、
僕は…僕はあんな事、しなかったのに…」
 
「そう、だな…お前に本心を口にして伝えようと努力しなかった。それこそが…
俺の犯した罪、だったのかもな…」
 
 呟きながら、彼はごく自然に…自分が知らない間に犯していた
もう一つの罪状を察していく。
 無条件に相手を盲目的に信じているだけだった。
 一緒にいる間、澤村が何を想い考えているのか聞き出す努力も、理解
しようという努力を怠っていた。
 自分が好きなのだから、相手も好きでいてくれると思い込んでいたのだ。
 その姿勢があの出来事を引き起こしていったのだろう。
 相手を信じることは決して悪いことではない。
 疑う気持ちが強すぎれば、どんな人間関係でも亀裂が生じていく。
 けれど100%常に相手を信じて、一片も疑うことのない姿勢もまた大きな
歪みを生み出してしまうのだ。
 6~7割は相手を信じて肯定し、2~3割程度は相手が本当に
「自分が思っているように」感じているのか疑う心を持つようにすることが
一番良いバランスなのかも知れない。
 もしあの時の自分に彼の心を知ろうとする姿勢があったのならばもしかしたら
ずっと親友のままでいられたのかも知れない。
 だが、そう甘い夢想を抱いた瞬間…眼鏡の脳裏に再び浮かんでいったのは
もう一人の自分と、その周囲にいる人間たちの事だった。
 
(まさか…この段階になってお前の事が浮かぶなんてな…)
 
 克哉の傍にいる人間たち、特に恋人である御堂はスタートは憎しみと
敵意から始まっていた。
 だが、もう一人の自分は彼ととことんまで向き合い、ぶつかりあって…最初は
マイナスのベクトルにあった感情をプラスのものへと転じて、そして今となっては
絆と呼べるものすらその相手と築いていった。
 それに比べて自分は何なのだろうか。
 あいつを認めたくなどなかった。
 今だって反発している部分がある。
 なのに…その気持ちに反して、己の唇は素直な心情が零れていった。
 
「あの時、お前と本音をぶつけあって…ケンカでもしていたら、もしかしたら
今と違う結果が生まれていたかもな…」
 
「そう、だね…。今、思うと…君の本心っていつも見えなかった。それが…
僕には余計に不安だったのかも知れないね…」
 
 長い時間、確かに自分たちは一緒に過ごしていた。
 けれど思い返してみるとケンカをした事があっただろうか。
 本当の気持ちを、感じているままの想いを素直に口にして相手に
接していただろうか。
 御堂と克哉、あの二人を内側で見ていたからこそ自分と澤村の
問題点も見えてくる。
 自分にとって彼は大切な人間だった。
 心から信じるただ一人の存在であった。
 相手に依存しているからこそ、時に意見を違えることがあればあっさり
折れて相手に合わせる事が多くなかっただろうか?
 本音を口にしたら、相手に嫌われると思って言わないで過ごしていた事
ばかりではなかっただろうか?
 そうして顔色を伺って本当の意味で心を触れあわせる事なく上辺だけの
笑顔を浮かべて接している。
 それが自分たちの関係ではなかったのだろうか…と振り返ってようやく
気づいていった。
 気づいたら、眼鏡の目元にも静かに涙が浮かんでいく。
 それは押し殺していた感情が、心が解放された瞬間でもあった。
 
―あぁ、俺は…やっと、泣けたんだな…。この件で、ようやく…素直に…
 
 凍っていた心がゆっくりと氷解していった。
 お互いに泣いて、悔やんで…振り返って、ようやくあの当時は気づけなかった
色んな真実が判ってくる。
 気づいたら眼鏡の姿もまた子供の姿に…12歳の時の容姿に戻っていた。
 
「克哉、君…本当に、ごめんなさい…!」
 
「………………」
 
 心から悔やみながらかつて親友だった少年が必死にしがみついて…眼鏡に
抱きついて謝罪していく。
 嗚咽を必死に噛み殺して、背中を小刻みに震わせているその仕草が
演技だとはとても思えなかった。
 眼鏡はそっと目を伏せてその抱擁を受け入れていくと…自分からも
抱きしめ返していった。
 
「もう、いい…。お前の本心も、それを心から悔いているのも判った。そして
俺は…お前を決して忘れない。だから…もう、前に進め…紀次…」
 
 そして、その状態で相手を赦す言葉をもう一度口にしていく。
 相手が心からの謝罪をするならば、こちらもまた…相手を罪の意識から
解き放つ為にそう告げていった。
 その瞬間、眼鏡の身体がゆっくりと透け始めて…大気へととけ込んでいった。
 淡い花弁が風に舞い散る中、少年の姿は柔らかい光を放ちながらその
輪郭を失っていった。
 光が、満ちる。自分の中の憎しみの感情は消えていくのを感じていった。
 
「克哉君っ…?」
 
「気に、するな…。これは自然な事だからだ…」
 
「け、けど…君の身体が消えて…! 嫌だよ、せっかく分かり合えたのに
どうして消えちゃうんだよ! いなくならないでよ克哉君! 僕には君が
必要なんだ! もう一度…僕は君との関係をやり直したいんだ! 親友として…
君の傍にいたいんだよ!」
 
「あり、がとう…」
 
 そう言われた瞬間、嬉しさが満ちていくのが判った。
 けれどそれはもう果たせない。
 彼と一緒にいられたらどれだけ良かったのだろうか。
 きっともう少し早ければ…もう一人の自分と御堂と出会う前にこうして
澤村と和解することが出来たならきっと自分はこの手を取っていただろう。
 けれど…今はその願いを叶えることは出来なかった。
 今、現実に生きている佐伯克哉はもう一人の自分の方だから。
 自分は結局は光を得られなかった人格に過ぎない。
 澤村と親友としてやり直す為には、克哉の人格を閉じ込めて…自分の
人格を表に出して生きていくしかない。
 その事を考えた瞬間に脳裏を過ぎったのは…御堂の顔だった。
 
(あんたは俺の事など想っていないだろう。あんたにとっては佐伯克哉は
あいつであり…俺ではない。俺が生きることを選択すれば悲しませることに
なるから…だから、俺はこのまま静かに消え去ろうと思う…)
 
 そう、御堂が自分の事など好きじゃなくても…もう一人の自分が愛した
人間ならば、眼鏡にとっても彼は大切な人なのだ。
 違う人格同士と言っても根っこは繋がっている。
 そして意識していない領域でその感情は影響を与えている。
 澤村の事を大切に想う感情に嘘はない。けれどそれ以上に…今の眼鏡は、
あの二人を不幸にしたくなかった。 
 自分の我侭で引き裂きたくなどなかったのだ。
 こんな想いを抱く日が来るなんて考えたこともなかったが…それが
彼の正直な気持ちだったのだ。
 
「さようなら…紀次。次は、もう…間違えるなよ…」
 
「克哉君! いかないで! うあぁぁぁ!!」
 
 透明な笑顔を浮かべていきながら、少年の姿をした佐伯克哉は
ゆっくりと光の中へと溶けていった。
 その瞬間、澤村紀次の絶叫がその場に轟いていく。
 涙を伴う、悲しい別れでもあった。
 けれど人は…本当に大切な人を失った、その痛みを伴わなければ
己を省みて…そして変えていこうとまではなかなか思えないものだ。
 別れは辛くて悲しいけれど、人の意識を変えるキッカケにもなりうるものだ。
 そして…眼鏡は、最後に相手を赦して罪の意識から解放していきながら…
静かに消えていった。
 
―あの日と同じ、桜が舞い散る光景の中で…

 ※本日は香坂のちょっとした近況報告&心境の変化を
記してあります。
 興味ない方はスルー出来るように折りたたんであるので
見てやっても良いという方だけ読んでやって下さい。

 ちなみに本日は休みで、一年ぶりぐらいに大掛かりな
部屋の大掃除やっていました。
 携帯電話を変えました。
 主軸はそれにちなんだ話題です。あしらかず。

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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