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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 …六月に入ったら、まだ五日なのに結構
色んな事が起こりました。
 つか、たった五日で色んな事が動いているので
まだ思考ついていけてないのが本当な処。

一個目 一応出版社から連絡来た件。
これはちょっと慎重になって自分でその出版社の事を
調べたら、まあ良い噂も悪い噂もそれなりに調べて
ちょいと慎重に考えることにした。
 ただ、とりあえず第三者に見て貰える機会は貴重だと判断
したので一応、前回持ち込んだ作品を完結させるまでは果たすつもり。

 二個目 ん~と、人生って予想外の事が起こりますね。
      正直に言います。

  車で事故りました(実話)

  …え~と狭い道で電信柱にぶつかり思いっきり車、破損させてしまいました。
 まあ被害は乗っていた車の前面部のみで、私自身は軽傷で済みましたが。
 ぶつけた際に強い衝撃を全身に受けたぐらいです。あたた…。
 ただ怪我人や死傷者もなかったのと、どっかの家や建物とかを壊しては
いなかったのでその点だけは救いでした。

 親の車だったので、今回…保険を使って修理という形になったんで、親に
その分来年と再来年跳ねあがる自動車保険の差額は私の方で仕事が見つかったら
確実に払う、とこっちから切り出して約束しました。
 …修理に30万くらい掛かるレベルの破損だったので、20万超えるなら保険を
使った方が得だそうなので…そういう形に落ち着いた訳です。はい。
 それであまり再就職するまで間を空けられないな~という事態に。
 だって自分がやった過失なら、それで出た損害は自分が払うのは当たり前。
 …それで車を修理に出して、親に不便な思いをさせてしまったんだし。
 早くそれで真剣に仕事見つけないとな~と考え始めました。

 三つ目 そんな矢先に、本気でやれば正社員で雇ってくれる可能性が
ある処の話が舞い込んだこと。
 けどそこで真剣に働く場合、香坂は…同人活動とか、サイト運営を縮小
しなければならないです。
 条件は良いんですが遠いし、毎日夜遅くに帰宅って形になります。
 しかも慣れない業種で一からって形になるので…多分働き始めたら
慣れるまではそっちに専念しないと厳しそうなので。
 それでもちょっとここ数日悩んでおりました。

 けど、自分の中で数日悩んである程度まとまったので、六日分からキチンと
連載書きます。
 答えを出すのはもうちょい掛かりますが、まずは当面の連載を終わらせること。
 後はノマオンリーの新刊を出すことを考えますです。
 ではでは~軽い近況報告でした(ペコリ)
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
 
 
 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
                                                        11  12  13  14  15 16  17 18 19 20
                     21 22
 

 ―彼を愛していると、惹かれていると気づいたのは愚かにも
御堂を失った後だった

 目の前で、相手が物言わぬ骸(ムクロ)となってしまった瞬間を
今でも眼鏡は忘れない。
 あの時の喪失感を、絶望を、慟哭はたった二日しか経過していないせいで
今でも生々しく彼の中で息づき、血を流しているかのように疼き続けている。

『お前の好きにすれば良い…』

 心から、そう思いながら彼は己の首元を相手の前に晒していった。
 御堂に生身の肉体があったのならば、憎くて堪らない相手をくびり殺す
千載一遇のチャンスだ。
 なのに、御堂も…克哉も、Mr.Rも…その場にいた誰もが彼の行動と
態度に驚き、言葉を失っていく。
 傲慢で身勝手な筈の男が、何もかも観念して罪を認めているような
その姿は…全員に、激しい衝撃を与えていた。

「あ、貴方という方は…一体、何というみっともない姿を曝して
いらっしゃるのですか! 貴方こそ、鬼畜王と呼ばれる程の素質を
秘めているお方! 何者にも屈せず、欲望のままに他者を踏み躙り
快楽の限りを尽くす…それこそが貴方に何よりも相応しいお姿でしょう!
何で、そのような愚かな行動を…」

 Mr.Rは心から嘆きながら、眼鏡に訴えかける。
 だが彼はつまらなそうに黒衣の男を見つめていくと…呆れた顔を
浮かべていった。

「…お前が俺をどう見ようが、何を望もうが勝手だがそれを俺に
押し付けるな。何故、俺がお前の望む者にならなくてはならない
義務があるんだ…?」

 静かな声、だが…その瞳に浮かんでいるあまりに冷酷な輝きに克哉と
Mr.Rは言葉を失っていく。
 殉教者のようにしおらしくなったかと思えば…やはり、傲慢な男と
しての姿も垣間見せる。
 だが…幽体となった御堂をみる度に切なく…悲しげな瞳を浮かべていく。
 御堂は、何も言わず…ただ、彼を見つめ続けているだけだった。
 禍々しい光を宿していた鋭い眼差しが、あまりの驚愕の為に和らいでいった。

―どうして、お前は私をそんな目で見るんだ…?

 透明な御堂は、憤りを含んだ様子でそう呟いていく。
 
「…俺は、あんたという存在を失って…気づいたからだ。…バカ、だよな…。
御堂孝典…あんたは、俺が殺してしまったようなものだ…。そうなってから
この気持ちに…気づくなんて、マヌケ以外の何者でもない…」

 さっきまで、プライドが先立って己の顔を決して上げようとしなかった
男が素顔を曝していく。
 目に熱い涙が伝っていく。
 それが頬を辿り…リノリウムの冷たい床の上に雫となって落ちていく。
 御堂にとって佐伯克哉という存在は自分の全てを奪った憎き略奪者以外の
何者でもなかった。
 血も涙もない。鬼とも獣とも思っていた存在が…涙を流して、こちらに
こんな声で語りかけてくるなど…御堂の想定外の反応だった。
 
―お前は、一体…何を、言っている…?

 恐らく、眼鏡のこんな顔を見ることになるなど彼にとっては考えたことも
なかったのだろう。
 ついさっき、相手を決して許さないと怒号した御堂は毒気を抜かれて
戸惑いの顔をようやく浮かべていった。
 怒りに怒りを、憎しみに憎しみを返すことは火に油を勢いよく注ぎ込む
ようなものだ。
 だが、目の前で流される涙に…御堂は、怒りを一瞬忘れてしまった。

―どうして、お前が…私の前で、泣いて…いる、んだ…? どうして…

 御堂の声を聞いて、どこまでも眼鏡は透明な表情を浮かべていく。
 喜怒哀楽の四つの中に当てはめるなら、それは「哀」を感じさせる
顔つきだった。
 瞳の奥に、今まで見たことがないくらいに優しい色が宿っていく。

「…あんたを永遠に失ってしまった事。追い詰めて殺してしまったことは
きっと俺の中で決して消えることがない…罪であり、咎だ…」

「…『俺』…」

 少し離れた位置から、二人のやり取りを見守る克哉が切なげに
呟いていく。
 これは罪を犯してしまった人間の、最後の言葉。
 もうじき永遠に、「自らが殺してしまった御堂」には手が届かなくなる。
 そう悟ったから、男は何もかもかなぐり捨てた。
 Mr.Rが語ったあの挑発的な言葉が、彼に最後の意地を捨てさせたのだ。
 腹が立ったし、プライドが許さないと最初は思った。
 けれど…彼に謝罪することも、想いを告げることもこれ以後は決して
二度と出来ないのだ。
 ならば…悔しいが、Rの言う通りだ。ここで想いを告げなかったら生涯
消えることのない後悔を残すことになるだろう。
 だからこそ、男は…初めて己の弱さを隠す為に纏っていた傲慢や
強気の仮面を外していく。

「あんたが、俺を許せないというのなら…殺しても、構わない。けど…
これだけは言わせてくれ…。こうなって、初めて気づいた。俺は…あんたに
知らない間に惹かれて、思うようになっていた。だから…欲しくて、欲しくて
堪らなくて、間違った方法で手に入れようとしてしまった…。
俺は、あんたを…」

―言うな!! そんな戯言で、許せると…思っているのかっ!!

 次の瞬間、遮るように御堂は吠えた。
 そして再び怒りで瞳が爛々と輝き始める。
 それはまるで眼鏡からの言葉など聞きたくないと激しく拒絶するような
そんな反応だった。

「戯言じゃない!! 俺は、あんたを愛している!! 言う資格など俺に
ないって判っている!! だが…俺が殺してしまったあんたには、もう…
元の世界に戻ったら二度と言葉は届かない!! エゴだって判っていても…
それでも、俺はあんたに伝えたかったんだ!」

  形振り構わない、本気の告白。
 いつだって臆病で、傲慢の仮面で己を鎧続けて来た男の…みっともないまでの
魂の叫び。
 傍から見たらそれは愚かな行動にしか見えないのかも知れない。
 けれど時に真実の、剥き出しの想いは…頑なだった憎しみを、怒りを打ち砕く
力すら込められている。

―そんな、一方的にぶつけられて…私に、どうしろっていうんだ!!
殺したいぐらいにお前が憎くて憎くて堪らないのに…!! そんな目で、
顔で…想い、など告げられてしまったら…私は…!!

 その瞬間に、御堂は…嫌でも気付かざるを得なかった。
 相手を憎む心の奥底に潜む、隠された感情を。
 目を背けて決してありえないと頑なに拒み続けて逸らして来た
感情が、一体何といわれるものだったのかを察していく。

―こうして、命を失ってしまった後で…そんな事を告げられて、私に
一体どうしろというんだ! どうして、私に血の通った身体のある内に
そう言わなかった! お前は、もう…私の前から、消えるというのに―!

「す、まない…けど、俺は…」

 愚かで、身勝手で自分の感情をぶつけるだけの行動でしかなかった。
 目の前にいる眼鏡は、恋に悩み…迷い、臆病になっている一人の男でしか
なかった。
 だんだんと透明になり、この世界から消え失せようとする姿を目の当たりに
して…御堂もまた、泣きそうな顔になっていった。

―二人とも、結局は良く似た同士だったのだ

 プライドが高く、人の上に立つ事に秀でる事に歓びを覚え…己を
磨く為にあらゆる努力を惜しまない人種。
 どこまでも高みを目指していける輝ける魂同士。
 だからこそ、自尊心が邪魔をして本心に気づけないままだった。
 手を伸ばせば、其処にあったのに。
 凌辱や強姦という間違った形であっても、何度も身体を繋げたことさえ
あったというのに…結局、本当の終わりを迎えるまで、彼らは心を
通わす事すら出来なかった。
 けれど…剥き出しの心をぶつけあったことで、もう一人の自分は
別れの間際に、御堂から…憎しみ以外の感情を引き出していった。

―お前を、憎むぞ…佐伯…私は、いつまでも…

 きっと肉体があれば、御堂は涙を流していただろう。
 それぐらいに悲痛な表情を浮かべながら力なく呟いていく。
 眼鏡の身体が、御堂と同じぐらいに透け始める。
 もうじき、完全に消えてしまう。そう悟った瞬間…二人は無意識の
内に互いに指を伸ばしていた。
 その光景を眺めていた克哉が、泣いているのが目に入った。
 だがすぐにただ…眼鏡は真っ直ぐ、自分が憧れて止まなかった
孤高の存在だけを見つめていった。

『すまな、かった…』

 そして染みいるような声で眼鏡はただ、心からの謝罪をもう一度
告げていく。
 相手の心の中にある憎しみを溶かす、ただ一つの鍵を…自分の
中の意地も自尊心も、何もかも捨て去って告げていく。

―貴方ほどの人が俺みたいな人間の為に、いつまでも憎しみに
囚われないように…

 もう貴方の肉体が永遠に失われてしまったのならば、せめて
安らかにこれからは眠れるように…。
 咎人は最後にただ、それだけを願って…相手に伝えていく。
 許してくれなど、自分からは決して乞えない。
 だから許せないなら、それで構わない。
 
―貴方が俺を心から憎んでいようと、俺は貴方を愛している…

 そう祈りを込めて、心の中で思った瞬間…彼がこの世界に
留まれるリミットは訪れようとしていた。
 ベッドの上の御堂の姿も、眼鏡に連動するように…徐々に
輪郭を失って透明になっていく。
 
―佐伯、佐伯ー!!

 そうして、憎しみではなく…愛しみの感情を込めて初めて、
幽体となってしまった御堂が眼鏡の名を呼んでいく。
 その瞬間、眼鏡は嬉しそうに笑った。
 
―あんたに、そんなに必死になって…呼んで貰える日が…
来る、なんてな…

 そんな言葉を、本当に幸せそうに呟いていく。
 見る見る内に彼の姿が遠くなる。
 幻のように、陽炎のように…そして儚いもののように
徐々に消えていって、そして…。

―眩い光が走り抜け、眼鏡と…ベッドの上に横たわっていた
御堂は本来の世界へと戻っていく

 この世界に残される側の二人は、黙ってそれを
見送るしかなかった。
 結局、こういう時…人は無力だ。
 目の前から誰かがすり抜けていく間際でも、何も出来ることが
ない時…やりきれない気持ちだけが胸の中に広がっていく。

―その間際、最後に克哉の声が…道を分つ二人にせめてもの
救いを与えようと…大きく響き渡っていったのだった―
 

4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 このややこしい設定をどうやったら読み手に判りやすく伝えられるだろうって
試行錯誤していたら予定より大幅に遅くなりました(汗)
 待たせてしまって申し訳ありません~。

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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                     21

 ―二人の佐伯克哉は、同時に予想だにしていなかった光景を
間の当たりにすることになった

「御堂……?」

「御堂、さん……?」

 もう一人の自分と御堂の身体がうっすらと透明になり始めているだけでも
驚愕したというのに、更に横たわっている御堂の傍らには完全に透き通り
輪郭だけが浮かび上がっている、もう一人の御堂の姿が存在していた。
 映画などで、幽霊や精神体がホログラフのように揺らめいている
演出が良くされるが、もう一人の御堂はまさにそんな感じであった。

「…………」

 さっきまで激しくもがき苦しんでいたのが嘘のように…ベッドの上に
寝そべる御堂の容態は安定し始めていた。
 だが、もう一人の御堂は怒りに瞳を爛々(ランラン)と輝かせながら
二人の克哉を睨みつけている。
 言葉には出さないが、その眼差しだけでどれだけ深く…不当に
命を奪われた方の彼が、こちらを憎んでいるのか判ってしまった。

「御堂、さん…」

 それでも、克哉は御堂に向かって問いかける。
 この人の痛みが、苦しみが判る気がしたから。
 案じるように手を伸ばし語りかけていくが…それを相手は安っぽい
同情を向けられたと判断したようだ。
 カッと鋭く幽体の御堂の瞳が見開き、恫喝していった。
 
―どうして、お前のために…私が死ななければならなかったんだ!!

「っ…!」

 その一言を放った瞬間、眼鏡の方は苦しげに眉を潜めていった。
 すまない、ともごめんなさいとも最早…安易に謝罪の言葉を掛けられる
ような雰囲気ではなくなっていた。

―その顔を見るだけで、どれだけ眼鏡が御堂の死に関して苦しんでいるか
後悔しているのか克哉には充分に見て取れた

 だが、憎悪の感情に囚われてしまっている今の御堂には…眼鏡の
顔に浮かんでいる悔恨の想いに気づけずにいる。

―私が、私がどれだけ苦労をして…若くして、これだけのものを築き上げたと
思っているんだ! 周りの者が遊び回ろうとも、どれだけ嫉妬されようとも
自分の信じる道を進み続けて、道を作り続けて来た! なのに…ずっと
努力して作りあげたものを、お前に全て壊されて無にされた!
やり直す機会すらも与えられずに…私は、命すらも奪われた!!
 お前だけは、絶対に許さない!

「っ…!!」

 その瞬間、もう一人の自分が顔を背けた。
 まるで心臓病の患者が激しい発作を起こしてしまった時のように
強く胸を抑えて、不規則に喘ぎ続ける。
 その反応を見て、克哉は判ってしまった。
 もう一人の自分は…御堂を、やはり好きなのだと。
 だからこそ、彼からの一言一言が鋭い刃となって深く心を切り裂いていく。

「…す、ま……」

 眼鏡が、そこまで言い掛けて…口を閉ざしていく。
 そして自分の顔を決して誰にも見られまいと…顔を俯かせていった。
 たったそれだけの言葉、けれど…今では完全に分断されてしまっているのに…
否、完全に分たれたからこそ客観性を持って観察出来てしまった。
 克哉はそれで気づいてしまったのだ。

―彼は本当に御堂に対して心から「すまない…」と告げようとした事を…

 言外の想い。
 御堂程の理性的なはずの人間を、殺人という行為に走らせるまで追い詰めてしまった
根底にあるのは…眼鏡の、御堂に対しての強い執着のせいだった。
 彼は御堂への想いを、相手を屈服させて自分に服従をさせようという間違った
方向に向かってしまった。
 それ故に罪を犯し…取り返しのつかない結果を招いてしまった。
 克哉は、その想いを知っている。
 この肉体は、元々…今、目の前にいる方の彼の物でもあった。
 御堂に対して言葉を詰まらせて何も言えないままでいる彼に強い
共鳴を示していく。
 その瞬間、この脳内に一度は刻み込まれた彼の記憶が…鮮明に再生されて
走馬灯のように勢いよく走り抜けていく。

(『俺』の…心が、叫びが…オレの中に流れ込んでくる…!!)

―御堂ぉぉぉぉぉ!!

 そして克哉の心の中に、怒涛のように…御堂を目の前で失った時の
眼鏡の魂の叫びが響き渡っていった。
 何て悲劇なんだろう。
 どれくらい彼らはすれ違ってしまっているのだろう。
 御堂の方の心までは克哉は知らない。
 けれど…もう一人の自分の心に宿っていたこの強烈な執着心は、
想いは…恐らく、「恋」と言い換えられるものだったのだ。
 御堂という存在に彼は惹かれたからこそ、近づきたかった。 
 手に入れて、自分の傍に繋ぎとめたかった。
 その手段を間違えて…愛する人間を殺してしまった人間の叫びと苦しみは
克哉の心をも、容赦なく切り裂いていく。

(お前は、どれだけ馬鹿なんだよ…!! もっと早く気づいていれば…
それで正しい手段で、想いを告げていれば良かったのに!!)

 まるで容赦なく押し寄せてくる巨大な津波のように、彼の後悔と
胸の痛みが伝わってくる。
 克哉は気づけば泣いていた。
 自分は素直に涙を流せるのに、絶対に感情を表に出せない不器用な
もう一人の自分の事が、哀しかった。

―お前も、泣ければ良いのに…

 なのに、もう一人の自分は顔を俯かせるだけで何も言えない。
 自分には言う資格などないというように、ただ黙って御堂からの
憤りの言葉と憎悪の視線を受け続けるだけだ。
 御堂の火花を散らすような容赦ない視線が、彼だけに注がれる。
 その瞬間Mr.Rは高らかに、嘲笑うように言い放った。

「ほら、どう為されたんですか! お二人とも!! 貴方達はもうじき
引き離されて二度と顔を合わすことなどない!! 言わばこれが…
殺された者と、殺した者の最後の邂逅となる訳なのです!!
 どうせこれっきりの事。それならば己の中にある憤りを! 怒りを!!
憎しみを!! 本音を思う存分に相手に叩きつけたらどうです!!
 せっかく最後の時間と機会をこうして差し上げたのですから…
精一杯活用して下さいませ!!」

 そして黒衣の男はいつまでも睨み合いを続けて硬直し続けている
二人を焚きつけるように言葉を吐いていった。
 それはまるで、芝居の中の悪役が悲劇に向かうための引き金を
引くようなそんな光景だった。

「貴方は、何を! あの二人をいがみ合わせてそんなに
楽しいんですか!!」

 その瞬間、傍観者に過ぎなかった克哉が目を見開いて…Mr.Rに
飛び掛かって鋭い一撃を食らわしていく。

「っ!!」

 だが、この男なら容易にかわせる筈だった克哉の攻撃は…見事に
Rの鳩尾に吸い込まれていく。

「…くっ! 良いパンチですね…」

「うるさい!! これ以上…あの二人を焚きつけるような事は…言うなぁ!!」

 克哉は泣きじゃくりながら、もう一回パンチを繰り広げていく。
 どうしてもこの男の今の行動を許すことが出来なかった。
 あんな悲劇を辿った二人を焚きつけて、嘲笑うようなそんな真似をしたことが…
眼鏡の心を知ってしまったが故に…どうしても許せなくて、悔しくて。
 ポロポロと涙を零しながら、がむしゃらにRに殴りかかっていくが…
命中したのは最初だけで、それ以後の攻撃は全て相手の掌に阻まれていった。

「…やれやれ、まるで駄々っ子ですね。私に八つ当たりをしてそんなに
愉しいですか…?」

「なっ…!」

 Rが呆れたように肩を落としていくと…克哉の顔色は一気に変わっていく。
 その時、すぐ目の前の御堂が呟いた。

―…くそ、こんな状態じゃゃなければ…お前をくびり殺してやるものを…!!
肉体がないことをこんなにも恨めしく思ったことはないぞ…!!
 
 そうして、ベッドの上で意識を失っているAの世界の方の御堂を
見て憎々しく呟いていった。
 そう…こちらの御堂は、肉体の意識がない状態でもすぐ傍で聞いていた
為に二つの世界のからくりを知ってしまっていた。
 その為に綻びが生まれて…彼は身体から追い出されてしまったのだ。
 本来の世界に戻ろうとしている肉体の中に、本来この世界の存在である
彼は留まる事が出来ない。
 束の間でも、さっきまでのように肉体を使うことが出来たならば御堂は
躊躇いなくこの男への復讐を果たしていただろう。
 それが出来ないからこそ、御堂は本当に悔しそうに怒号していった。
 彼がそう叫んだ瞬間…予想もしないことが起こった。
 
―本当にそう思うなら、あんたの好きにしろ…。御堂孝典、あんたには…
俺に復讐をする…その、権利がある…

 そうして、観念したように…その場に膝をつき…己の顔を高く上げて
無防備な首元を御堂の幽体に向かって曝け出していく。
 傲慢な筈の男のその行動に、御堂は言葉を失っていく。

(どうしたんだよ…「俺」…それは、まるで…自分を殺してくれ、と御堂さんに
向かって言っているような…もんじゃないか…!)

 眼鏡のその行動に、その場にいた誰もが騒然となって言葉を失って
立ち尽くしていく。
 その中心で…男は、殉教者のように瞳を閉じて…己の身を差し出すような
態度を取っていった。

―そうしている間にも、ベッドの上の御堂と…眼鏡の身体はゆっくりと
実体を失いつつあったのだった―

 こんにちは、香坂です。
 投稿してみるので、ちょっとサイトの更新頻度を落とすと
宣言してから温かい言葉を掛けて下さった方、どうも
ありがとうございます。

 メールフォームで送って下さった方、拍手でこそっと
応援して下さったこと…非常に嬉しかったです。
 ええっ、物凄い励まされましたよ(^^)

 サイトの方はちょっと就職活動兼、情報収集(読書とか
諸々)とか、絵の基礎の練習とか…自分がこれからどうしたいのか
考えている方に割いているので反応鈍いですが、2~3日に
一回は記事なり、連載を掲載していけるよう心がけます。
 ペースは落ちますが、良ければ付き合ってやって下さいませ。

 後、報告遅くなりましたが六月のノマオンリー参加します。
 現在諸事情により…三月の新刊の巻末に予告していた本(P100超えるようなのは)今は
発行するのが厳しいので、30~40P前後のP数のオフ本かコピー本のどちらかを
新刊として発行する予定です。
 良ければ顔出してやって下さい。

 6月は、最初の買い物さえ終われば香坂自身が店番をキチンとする
予定なので…スケブ承ります。
 一応、昔は絵描きだったんだから…イベントで初チャレンジしても良いだろ、と
勇気出して告知してみました(ドキドキ)
 良ければ、気軽に声掛けてやって下さい。

 6月1日追記

 6月1日の昼間の話。
 先月、講座に出た時に作品持って行ったんですが…
その出版社の方から連絡来ました。

 ・過去のオリジナル作品を何点か見せてほしい
 ・5月に持って行った時点では途中になっている作品を
まずは完成させて見せて欲しい

 と言って貰えて、編集者のアドレスを教えてもらった。
 とりあえず今の自分の実力は、読んだ人の興味を引ける程度の
物は書けるのだと判明して、ちょっと一安心。
 …いきなり作家になれる程、世の中甘くはないって判って
いるけれどね。
 まったく私という人間を予め知らない方に「読みたい」と言って
貰えて嬉しい自分がいます。

 …現時点ではデビューとか本発行ではなく、どういったものを
私が書くのかをまずは知りたいとはっきり言われました。
 私がどういう素材なのかを判断したい、みたいな感じ。
 …とりあえず人の興味を惹けたという点では一歩前進しました。

 …多分作家になれるまでの道のりはまだ長いでしょうけどね。
 最初の一歩は踏み出せたかな、と思います。はい。

4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 このややこしい設定をどうやったら読み手に判りやすく伝えられるだろうって
試行錯誤していたら予定より大幅に遅くなりました(汗)
 待たせてしまって申し訳ありません~。

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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―もう一人の自分相手に隠された事情の全てを話す覚悟をしたは良いが、佐伯克哉は
それでどうやって相手に判りやすく伝えられるかどうかを迷っていた

(…グダグダと話すと、却って混乱させたり…誤解させてしまいそうだからな。
どこから切り出せば良いんだろう…?)

 相手の方も大雑把な事情を把握している。
 だが口でだけ説明すると非常にややこしいし、長くなるのは確かだった。
 誤解させないようにこのからくりを相手に伝えるにはどうしたらいいか。
 まずその方向に思考を巡らせていく。

(何か…小道具があった方が判りやすくなるかな…?)

 今、自分たちがいる部屋は…サイドテーブルとベッド、そして奥の方にある
クローゼット以外の物は置かれていないようだった。
 …物置兼衣装部屋に使っている部屋に、急遽ベッドとサイドテーブルを置いたような
感じだった。
 そう考えて、何か手頃な物はないかと無意識の内にさっき強引に眼鏡に羽織わされた
Mr.Rの黒いコートのポケットを探る仕草をしていった。
 その時…何が手応えを感じて取り出していくと…其処にはクラブRと印字された
マッチが二つ、掌に乗せられていた。

(…ここ、店名が書かれたマッチなんであったんだ…。一体誰に配っているんだろ…?)

 あの怪しい風貌の男が、マッチを配って店の宣伝などやっている姿など
本気で想像出来ない。
 つい思い浮かべてしまって克哉は複雑な表情を浮かべていった。

「…おい、俺にちゃんと説明してくれるんじゃなかったのか…?」

「わわっ! ごめん! 今すぐ簡潔に説明するから…『俺』!!」

 あまりにも間が空きすぎてしまったので…もう一人の自分の額に青筋が
くっきりと浮かんでしまっていた。
 克哉は慌てて弁明していくと…ベッドの傍に置かれていたサイドテーブルの上に
二個のマッチの箱と、その箱の前に三本ずつマッチ棒を並べていく。
 箱一つに対して、三本のマッチ。それを左右にくっきりと分けていく。

「…お前は一体、何をしているんだ…?」

「お前に今の状況を判りやすく説明するには…こうやって視覚的な部分も交えた方が
良いと思ったからな。だから時間を取らせて貰った」

「…これが一体、何を指しているというんだ…?」

「…これからちゃんと説明するよ。そうだな…まずはマッチ箱は「世界」を。
マッチ棒は…オレとお前、御堂さんを指していると思ってくれ」

「…マッチ箱が二つ、ということは世界が二つという意味で正しいのか?」

「あぁ、そうだ。そして…マッチ棒は三つ。正式には御堂さんと佐伯克哉の
二人の問題だが…意志は三人分、絡んでいる。だから三本とした方が
判りやすいと思った。ここまでは良いか?」

「あぁ、理解した」

 そこまで説明すると、克哉はまず右側の方を指さしながら言った。

「…そして、もう一つ判りやすく説明する為に…右側をAの世界とする。
こちら側は…御堂さんが佐伯克哉を刺して、その命を奪おうとした事実が
存在している。MGNの女子社員が、御堂さんの凶行の現場を見て社内を
騒がしたのも…こちら側の世界だ」

「…そっちがもう一人の…いや、この身体の本来の持主である『俺』が生きていた
世界に当たる訳か…?」

 恐る恐る、眼鏡が尋ねていくと…克哉は小さく頷いていった。
 そう…今の彼が纏っている佐伯克哉の肉体はAの世界の彼のものだ。
 
「あぁ、その証明が…お前の腹部の大きな傷跡だ。それがAの世界の佐伯克哉の
肉体に刻みこまれている筈だ…」

「…なら、お前はB…ようするに、こっち側の世界の佐伯克哉の肉体を使って
いるということか…?」

 眼鏡が左側のマッチ箱の方を指さしていく。
 その問いに関して、克哉は小さく頷いていった。

「…そう、それがBの世界。…お前が御堂さんの凶刃をかわして結果…御堂さんの
方が車に跳ねられて即死してしまった世界の方だ。こちらの世界では佐伯克哉は
腕に怪我を負ったが命に別条はなく…代わりに、御堂孝典が死んでしまっている。
そして…今の「オレ」は、AとBの両方の「オレ」の心をBの世界の佐伯克哉の中に
入れた結果だ…」

「…なら、今の『俺』は…Aの世界の佐伯克哉の身体の中に入れらせられた…
Bの世界の佐伯克哉の心ということか…?」

「…うん、多分…そういう事になるんだと思う…」

 克哉が正しく説明出来るのは、ここまでだ。
 この問いに関しては歯切れが悪くなってしまうが…もう一人の自分がここまでは
正しく理解してくれたことにほっとしていく。

「…ここまでは大体理解出来た。なら次の質問に行かせて貰おう。どうして…
二つの世界が混ざるなんて事態になった? それで今現在…俺達は、どっちの世界に
いて…どういう状況になっているんだ? お前が答えを知っているというのならば…
それをキチンと説明して貰おうか?」

「あぁ、キチンと答えるよ。…まず、今現在の状況を説明すると…こうなってる」

 そういって克哉はAの世界側にあったマッチ棒を三本とも、Bの世界側に
移していく。
 そして…Bの世界にあったマッチ棒を一本だけ、AとBの箱の真ん中に位置
させていった。
 その状況に、眼鏡は眼を丸くさせていった。

「…何だ、これは…? Aの世界には何も残っていないじゃないか…!」

「そう、それがAの世界に関しての答え。こちらでは…目撃者がいたせいで…
御堂さんが犯した罪を、よりにもよってMGNの多くの社員に知られる形に
なってしまった。最初の時点では…御堂さんから、昨晩の出来事と…お前に
凌辱された日々の記憶を奪って、Mr.Rに仮初の肉体を与えられたオレが
普通に生きてあの人に接することで…昨晩の事件を、御堂さんがお前を
刺した事実自体をなかったことにする予定だったんだ…」

「それがどうして、全員がこっちに移動する結果になっているんだ?」

「…目撃者が多すぎて、R自身にも他人の記憶の修正がどれぐらいまで
効くか判らない事態になってしまった。その為に…御堂さんの記憶は早くも
不安定な状態になって、綻びが出来てしまった。だからMr.Rはその事態が
発生した時に、とんでもない提案を出して来たんだ…」

「それが、Bの世界に…全員を移すということなのか?」

「…あぁ、このBの世界は昨晩の事件が起こる直前までまったく同じ道筋を
辿っているらしい。ようするに、Aの世界の御堂さんの記憶の綻びが起きないように
「御堂さんが死んだ」ことになっている世界に、御堂さんを放り込んだ。
そして…御堂さんが人を殺した事になっている世界に、御堂さんの亡骸を時期を
見て出現させることで…今日の昼前後を境に…それぞれの事件を「なかった」事に
して…それ以上の綻びを喰い止めようとしたんだ。
 どちらの世界でも記憶操作を行っている。だが…その世界で起こった本当に起こった
「事件」に関しては、当人たちの世界が入れ替わっていることでそれ以上、追求しようと
する人間は本来なら発生しない筈だった。
例えるなら、舞台と役者の一斉取り換えみたいなものだね…」

「…そんな事が、本当に出来るというのか…?」

 克哉の説明を聞いていた眼鏡は、今の話を信じられないという話をする。
 …無理もないことだと思った。自分がもし、誰かから同じ話を聞かされたというのなら
きっと同じ反応をするだろう。
 そう思うと…彼の反応も仕方ないかな、という気がした。

「…オレも、Mr.Rにこの提案を持ちかけられた時は本当にそんな事が出来るのか
信じられなかった。けど…オレは、Aの世界の事を覚えているんだけど…MGNに
最初に顔を出した時、まるで幽霊を見ているようなそんな眼差しを向けられた。
 けど…こっちの世界に来た時は、心配そうに…「佐伯さん、昨日は何かあった
みたいですけど…どうしたんですか?」という反応にその例の事件の目撃者で
ある女性社員の反応が大きく変わっていた。
 その時点で、信じるしかなかったよ。本当にあの人は…そんな信じられない
事を実際に行ってしまったんだって…!」

「………」

 御堂をどうにかして助けたい一心だった。
 その為なら悪魔の誘いであっても克哉は迷わず乗っていただろう。
 本来なら起こり得る筈がない出来事。
 けれどそれが実際に起こったからこそ、この目の前に示されているような
状態になってしまっている訳だった。
 あまりの事に、眼鏡は言葉を失い掛ける。だが…まだまだ、気にかかることは
何個かあった。
 そう、今…目の前で示されている通り…Bの世界に五本のマッチ棒が置かれて
いる状態。
 これの謎が明かされないことには、彼の気分も晴れることはなかった。

「大体の事は判った。だが…この中心の御堂の状態と、この五本のマッチ棒が
こっち側の世界にある事を説明して貰おうか」

「うん、その前に…もう少し御堂さんの状況を判りやすくする為に、真ん中の御堂さんは
こうさせて貰うね」

「あっ…!」

 そうして、克哉は仲間外れになっていたBの世界の御堂を差す一本をパキっと
半分に折って、片方をAの世界に。もう一方を…Bの世界にある一本の上に
乗せて重ねるように置いていった。
 そして、残り四本を二本ずつ重ねて置いて…纏めていく。
 すると…五本のマッチは二本ずつ上下にまとめられたのが二組。
 半分だけのマッチを乗せたマッチが一本置かれていく。
 一見すると5→3になったように見える光景。
 マッチ棒で例えられて、ビジュアルで見せつけられたことによって…
眼鏡はようやく、今の状況を理解して納得していった。

「そうか…この二本ずつ一組になっているのが俺とお前で…
この欠けたマッチを指しているのが、御堂と言いたい訳だな…?」

「あぁ、きっと恐らく…今はこういう状況になっているんだと思う。
そして…それぞれの世界には本来ならば、「オレ」と「お前」がワンセットで
一つの身体に収まっている筈だった。けれど…これはオレの推測なんだけど
どちらの世界の「俺」もショックで心が弱ってしまっている状態だった。
 そしてオレの心には、強い願いが宿っていた為にそのままでは…きっと
両方の佐伯克哉の肉体の主導権は…「オレ」が握ってしまう状態に
なっていたんだと思う。けど、Mr.Rは…お前の心をどうにかして残す
事に執着していた…」

「だから、Aの世界の佐伯克哉に…二つの「俺」の心を。Bの世界の
佐伯克哉には…二つのお前の方の心を宿させたと。そういう事か…?」

「あぁ…それでほぼ、間違いないと思う…」

「…っ!」

 そう、恐らく…この現状はその為によって引き起こされたものだ。
 そして…きっと、自然淘汰が知らないうちに行われて…自分たちは
知らないうちに統合してしまっていた。
 矛盾するそれぞれの世界の記憶を同時に抱き…もう一つの心と
肉体という壁を持って永遠に阻まれてしまった二人の佐伯克哉という
存在がこうして生まれてしまった訳だ。

「…なら、俺が目覚める直前に夢に見た…もう一人の狂った目をした御堂が…
もう一人の御堂を襲っているあれは…やはり…」

「あぁ、恐らく…突然命を奪われて、憎しみと無念の虜になったBの方の御堂さんが…
Aの方の御堂さんの身体に宿ってしまっているんだと思う…だから…」

 克哉はそうして、半分に割れたマッチ棒を…御堂を意味しているマッチ棒の
束をそっと指さしていく。
 だからこそ、御堂は今…苦しめられてしまっている。
 そして…記憶を奪ってしまった御堂よりも、憎悪の感情を抱いて…眼鏡に
されたことも生々しく覚えている方のが優勢になってしまっているのだろう。
 先程、息苦しくなるような…乱暴で荒いキスをこちらにしてきた御堂の…
狂気に満ちた眼差しを思い出して、胸が引き絞られそうだった。

「…二人の御堂が、一つの身体の主導権を奪い合って…争っている
状況になっている訳か…」

「うん…」

 其処まで、全てを暴かれて相手に伝えた瞬間…克哉は泣きそうになった。
 何でこんな事になってしまったんだろうと呪いたくなった。
 あらかた、説明し終えて…二人の間に重い沈黙が落ちていく。
 語るべきことがなくなれば…自分の心と向き合うしかなくなる。
 己の心に宿る、強い想いを再び思い出して克哉は唇を必死に
噛みしめるしか出来なくなった。 

―オレ『オレ』はただ、御堂さんを救いたかっただけなのに―

 二つの世界の克哉の心がその瞬間、重なり合って同時に叫んでいた。
 Rが言っていた。二つの世界を繋げてしまったのは…克哉のせいだと。
 直前まで同じ道筋を辿っていた世界。
 分岐した後も、克哉の立場はどちらも変わらず「傍観者」であり…もう一人の
自分のせいで道を大きく踏み外してしまったあの人に深く同情してしまった。
 その想いを、ほぼ同じ時間帯に願ったことが…異なる分岐をした筈の
世界を繋げる「大きな因子」となってしまった。

 だからこそ…Mr.Rはこんな大がかりな舞台を用意して彼の願いを
叶えようとしたのだ。
 なのに、自分(自分)が思い描いていた道筋は全然上手くいかなくて。
 せめて生きている方の世界の御堂だけでも平穏な日常に戻したかった。
 その一心で、身代わりだろうと…Rの言いなりだろうと、何でもやるつもり
だったのに…どうして、ここまで大きく予定は狂い続けてしまっているのだろうか…?
 そこまで考えて、克哉は嗚咽を殺しながら…知らず、ベッドの上で苦しみ続けている
御堂に向かって呟いてしまっていた。

「ごめん、なさい…」

「………」

 御堂に対して、謝った瞬間…もう一人の自分が何か言いたげに唇を動かしかけた。
 けれど彼は…何も言わずに、口を噤み続けていく。

「…オレ『オレ』はどうしたら…貴方に贖(あがな)えますか…?」

 

 苦しんで、額に脂汗を浮かべて悶え続ける御堂の元に歩み寄っていくと…
鋭い一撃で、顔を勢いよく引っかかれていく。
 頬に一筋の爪痕が刻まれ、程無くして赤い血が滴り落ちる。
 それでも克哉は…御堂の傍を離れない。
 眼鏡はその状況を見せつけられてイライラした様子で叫んでいった。

「…もう、止めろ…! 何でそんな光景を、俺に見せつける…!」

 必死になって御堂に対して謝り…罪を償おうとしている克哉の姿を見て
耐えきれないぐらいの苛立ちを覚えていった。
 御堂を欲しがって犯し続けたのも、彼から社会的な地位を奪い去ってやろうと
幾つも画策して、実際に追い詰めたのは自分の方だ。
 なのに克哉は…まるで自分が犯した罪であるかのように、謝り続けるのが…
酷く、眼鏡の心を逆撫でしていった。
 けれど…それでも、克哉の謝罪は止まらなかった。
 御堂の心がそれで済むならと…殉教者のように、身を守ろうともせずに…
焦点を失った空虚な眼差しを浮かべた御堂の攻撃をその身で受けようとする。

「止めろぉぉぉー!!」

 何かが耐えられなくなって、眼鏡は吠えていく。
 瞬間…とんでもない事が起こった。

「おい! 『俺』…! 身体が…! お前、透けて…」

「なっ…!」

 そう、彼が叫んだ瞬間…蒸気のようなものが眼鏡と御堂の身体から
立ち昇り始めて…その度に、彼らの身体が透け始めていく。
 あまりの予想外の出来事に、二人は言葉を失い掛けて混乱していく。

「何で、お前の身体がそんな、事に…っ?」

「知るか! 一体これは…何なんだっ?」

 二人がパニックに陥り掛けると、唐突に扉が開かれていった。
 そして其処に立っていたのはMr.Rだった。
 どうやら眼鏡に先程、黒いコートを剥ぎ取られてしまっていたが予備のコートを
引っぱり出して来たらしい。
 見覚えのある服装のまま入口で佇んでいる。
 ただ一つだけいつもと違う処があるとすれば、ゾっとするぐらいに
冷たい冷笑を口元に湛えて不敵に笑っているだった。
 そして克哉が困惑している間に、一方的に最終通牒を突きつけていった。

「それは…当然の結果ですよ。二つの世界を隔てる因子は…あちらの世界の
佐伯克哉さんに、全てを説明してしまった為に失ってしまった。このまま…
お二人を同じ世界に置いておけば、世界の修正は起こり…どちらかの佐伯克哉
さんが死ななければ収まらなくなる。
 だから…私は、佐伯克哉さんと御堂孝典さんの身体をあるべき世界に戻す
事にさせて頂きました。
 …そうしなければ、こちらの世界の御堂さんが…あちらの世界の御堂さんの
心を食いつぶして乗っ取りかねませんし…何より、私の主となる方が修正されて
再び命を落とされることになりますからね…」

「そんな、約束が違うじゃないですか! そんな、事って…!」

「…どんな形であれ、貴方は私との契約を…今夜の舞台に出て、当店のお客様を
存分に楽しませるという約束に不履行を出されました。そして…決してあの方には
舞台裏の事を話すな、と言っておいた筈なのに…懇切丁寧に話してしまった。
 そんな貴方に対して、私が…どうして約束を守る義務があるというのですか?
 勝手にそちらがなさるのならば、私も自由にやらせてもらうだけですよ…!」

 この男にしては珍しく、怒ったような口調で冷たく言い放っていった。
 その瞬間…克哉は背筋に冷たいものが走っていくのを感じていった。

「『俺』…御堂、さん!」

 そして克哉は必死に二人の名前を呼んだ瞬間…とんでもないものを
目の当たりにしていく。

「そ、んな…」

 そして、克哉は…御堂の方を見ながら…茫然として、言葉を失っていったのだった―
 

 
4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 諸事情により、若干間が空いてしまって申し訳ございません(ペコリ)

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                            10
                                                        11  12  13  14  15 16  17 18 19

 ―自分の馬鹿さ加減に、ほとほと呆れたくなってしまった

 血の気のない様子で…ベッドの上に横たわる御堂を眺めながら…
克哉は心底、己の愚かさを呪った。
 あの怪しい店内の奥に、こんな部屋があったことなど…今まで知らなかった。
 いや…Mr.Rが運営しているこの場所に、克哉が足を踏み入れた事自体が
初めてだった訳だが。
 何が何だか、訳が判らない。
 Mr.Rの言っていた「代価」を支払う為だけにこの場に来たというのに…
目まぐるしく、予想外の事ばかり起こって…まともについていけてなかった。
 もう一人の自分は、ガサゴソと部屋の奥に設置されている衣装箱の中を
探っているので…ベッドの傍には、自分しかいない。

(……何もかもなかった事にしてしまおうなんて考えたことが、そもそものの
間違いだったのかもな……)

 意識を失って、眠り続けている御堂の顔を見つめながら…ふとそんな
考えに陥っていく。
 もう一人の自分の犠牲となったこの人を助けたいだけだった。
 その一心で、あの謎の男の手を取ってしまった。
 なのに…平穏な日常にこの人を戻したいと願う心とは裏腹に、事態は
徐々に思ってもみなかった方に…それも悪い方ばかりに進んでいるような
気持になった。

(あの夜…『俺』の内側から…異常な笑い方をしている貴方の姿を見て…
憎むよりも怒りを覚えるよりも…貴方を救いたいなど、そんな事を考えたオレは
おかしいかも知れませんね…)

 無意識の内に、御堂の頬に触れていた。
 …もし、あのままもう一人の自分に乱入されなかったらどうなっていたのだろう?
 どうして舞台袖に御堂がた立っていたのかその理由は未だに判らない。
 けれどもし…御堂に、さっきのRのように自分に触れたりしていたら…とそんな
考えが過ぎってしまった瞬間、顔を真っ赤に染めていく。

「な、何を考えているんだよ…オレってば…」

 何でそんな事を考えてしまったのか、自分でも訳が判らない。
 御堂の顔を見ていられなくなって…思わず俯いて目を逸らしていく。
 
―ドクドクドクドク…

 自分の心臓の鼓動が忙しく動き続けているのが判る。
 次の瞬間…ベッドの上の御堂が、うなされ始めていく。

「うっ…ぁ…くっ…」

「御堂さんっ?」

 突然、御堂の容態が急変した事に動揺を隠せなくなった。
 反射的にこの人の傍に身体を近づけていく。
 途端に、強く顔を叩かれていった。痛みで一瞬…怯みかけるが
それでも夢中で、克哉の方から御堂の身体を抱きしめていった。

「御堂さん、落ち着いて下さい…! ここに、貴方に危害を加えるものは
何一つ…存在していません、から…!」

「はっ……あぁ……! 来るなぁ! 私に、触るなぁー!」

 だが、克哉が必死になってベッド上の御堂を抱きしめても…相手の
抵抗は止まる気配を見せなかった。
 こちらに対しての激しい拒絶を見せられて、胸が苦しくなっていく。
 確かにもう一人の自分は、この人に酷いことをした。
 別人格とは言えど、どんな形でも…それは「佐伯克哉」という人間が
犯してしまった罪だ。

―なのにどうして、自分の胸はこんなにもこの人に拒絶されて…
苦しくなってしまっているのだろう…!

「御堂さん! 大丈夫です! 大丈夫ですから…!」

 懸命にこの人に追いすがっていくと…ふいに、カッと御堂の方から深く
口づけられていく。
 凶暴な…奪い尽すような、自分の方が遥かに上の立場だとこちらに
思い知らせていくような…激しいキスだった。
 相手の中に渦巻く憤りも憎悪も何もかも、こちらに叩きつけて来ているようだ。

「はっ…! うぅ…!」

 まともに呼吸出来なくて、酸欠になりそうだった。
 苦しくて苦しくて…そのまま窒息死しそうなぐらいに乱暴な接吻。
 息次ぎをする為に、全力で逃れていく寸前…克哉は確かに見た。
 相手の目の奥に宿る、激しいまでの憎悪の瞳を…その瞳に射竦められて
いきながら、言葉を失っていく。

(貴方は…其処まで、オレを…そしてあいつを、憎んでいるんですね…)

 そして…相手の指がこちらの腕に痕がつくぐらいに強く食い込んでいくのと
同時に…糸が切れたみたいに、御堂の身体が崩れ落ちていく。

「御堂、さん…? 御堂さん、起きて下さい!」

 とっさに心配して、相手の身体を揺さぶっていく。
 その瞬間、少し離れた位置からいつの間にか自分たちを見つめていた
もう一人の自分が声を張り上げていく。

「…余計な事をするな! お前が何を言おうと…今の御堂には届かない!」

「『俺』…っ」

「…恐らく、せめぎ合っている。もう…御堂の身体は一つしかないから。
こちら側の世界に属している、この肉体しか存在しないから…二つの世界の御堂が
主導権を争って…衝突しあっているんだろう…」

「…何で、その事を…?」

 彼はついさっきまで意識を失って眠り続けていた筈だ。
 Mr.Rと自分の取引を、彼が知っている筈がない。

「…答えは単純だ。お前が…俺がいつ目覚めても良いという名目の元、
『この世界の佐伯克哉』の肉体に宿り、向こうの世界の俺の身体に『俺』の
心を移された時に…同じ現象が起こったからだ…。
 そのせいで、俺は…死にかけの『俺』と争う羽目になった。…今の御堂と
同じようにな…」

「な、んで…そんな事が…? オレにはそんな現象、起こらなかったのに…。
不思議なぐらい、オレの方は…こちらの世界のオレとは馴染んで…何の
問題も起らなかったのに…」

「…あぁ、お前に関しては…何の問題も起らなかったんだろう。
何せお前はどちらの世界でも「傍観者」であり…心に「死」という強烈な
傷跡を刻まれることはなかった。…御堂の事より、まずは答えろ…。
お前は一体、あの男に何を頼んだんだ…?」

「全て、知っているんじゃ…ない、のか…?」

 彼の口ぶりでは、自分が望んだことまですでに悟っているように
思えただけに…今の言葉は意外だった。

「…俺は薄々と、感じているだけだ。お前とは…すでに完全に今の俺は
切り離されてしまっている。だからお前が何を望み、あの男に頼んだかまでは
知らない。俺が辛うじて知っているのは…お前が御堂を救う為に、あの男に
最後の瞬間に縋って「何か」を頼んでいったことだけだ…!」

 そうして、もう一人の自分に黒いコートの襟元を強く握られていく。
 相手の目には…逃げることや、誤魔化しは許せないという強い感情が
宿っているのを感じていった。
 そう、全ては自分が望んだことがキッカケで起こっている。
 寸前まで、同じ道筋を辿っていた世界。
 それが…二つに枝別れをしてしまった原因は…。
 自分の中には、全ての答えが存在している。
 「この世界」の自分の方が何を最後に目撃したか、克哉は覚えているから。
 その上で…せめて、命を失わないで済んだ向こうの世界の御堂が…
咎人として追われることなく、平穏な暮らしを変わりなく続けていけるそんな世界を
紡ごうとしたのは、紛れもなく自分だから…。

「…判った、話すよ…。結局…オレが望んだことが…儚い砂上の楼閣のような…
脆い願いだったと…理解出来たから…」

「あぁ…そうして貰う」

 そうして、もう一人の自分が襟元を離して食い入るように見据えてくる。
 恐らく、視点を変えれば入り組んでいて複雑に見える話も…たった一つ、
何を目的にしたのかさえ判れば、実にシンプルな解答だけが残る。
 きっと…相手が知りたいのは、その要となった事だ。
 それを察して…自分の知っている情報と、「こちらの世界」の自分が
持っている情報を意識を集中して、纏めていく。
 頭の中に、色んな情景が浮かぶ。
 二つの悲劇と結末。
 それを覆したくて自分なりに足掻き続けた。

―けれど、罪をなかった事にすることなど…ただの人の身には
そもそも傲慢な願いだったのだ

 それが叶うと思って、願ってしまった。
 事件が起こるまで何もしようとせず、起こってしまったら都合良く
悪魔の誘いに乗って運命を捻じ曲げようとした事。
 きっと…それが、自分の罪だったのだ。
 やっと、怒りに燃えたもう一人の自分の目を見て…己の鏡を改めて
見つめて思い至る。

(嗚呼…どれだけ違っても、存在を否定したって…お前はやはり…オレ自身でも
あるんだな…)

 だからようやく、咎人の一人は…己の愚かさを思い知って…半身と
対峙していく。

「…話すよ、お前に…全てを…」

 そうして、暫くの沈黙の後に勇気を振り絞ってそう告げていく。
 …その瞬間、眼鏡の瞳は…静かな怒りを湛えながら…克哉の次の
告白を待っていったのだった―


 
 こんにちは香坂です。
 26日分は…普段と毛色変えて、初めて
出版社の講座に顔出した時に教えてもらったことや
講師の先生から聞いた貴重な話とかを記させて貰います。

 …結構面白い話が聞けたんでね。
 自分の中で忘れないようにしたいって気持ちで…
26日分はこういう形にしました。
(実際の執筆は当日超えての形ですが)

 香坂の事情で、ここ数日は鬼畜眼鏡の方の連載を
思い切って数日休ませて貰いましたが27日分から
普通にやらせて頂きます。

 書き方について、26日の講座で教えてもらったことに関しては
SSや文章を実際に書いている方には有益な内容だと思います。
 興味ある方は以下をお読み下さい。

 …後、もう何か最近…自分が立派な変人だっていうの隠したり、取りつくろって
人と付き合っても却って人と上手くいかないって諦めの極地に入りましたので
香坂がどんな感じで講師の方に質問しまくったのとか、もう潔く正直に
書いてあります。

 ブログ上で皆様が抱いているイメージ、ぶっ壊れること間違いなし! 
まあ一回でもイベントで本物と接しているお方は免疫あるでしょうから
平気でしょうけど(マテ)
 多分、そんな内容の活動日記。
 たま~に大きく動いた日だけ、忘れない為に記していく香坂の覚書きの
ようなものです。

 読んでやっても良いという方だけ「つづきはこちら」でどうぞ~。
 現在、明日持って行く原稿執筆中です。
 一応、某出版社の「書き方講座」に持って行く用なんですが…。
 完成原稿あればそれを…と案内には書いてあるんですが、香坂の場合…
最後にオリジナル作品書いたの七年前で…ここ7~8年は二次創作
ばっかり書いていたので、ひーこら言いながら書いております。

 …二次創作作品、150~200本ぐらい書いていたってこういう時には
持って行けないだろ、やっぱり(汗)
 とりあえず…現在書いているのは、12年前…高校時代に書いた
自分のオリジナルファンタジー作品の第一話に当たる話かな。
 先日、人様に語ったら…読みたいと言って貰えたのでそれでこれを
今の自分の文章に直して持って行くことにしました。
 …といっても当時はワープロで打ったものだから元原稿のデーターは
PCの中に存在していないので、記憶を頼りに一から書き直して
いる最中なんですけどね。

 当時で全部で17Pぐらいのボリュームの作品だからすぐに
書けるだろとタカくくっていたら、やっぱりあの頃とは表現力が違うので
P数がかさむかさむ(滝汗)
 一応、完成原稿を持っていきたいので今晩、頑張ります!

 …10年以上前に必死になって書いた設定資料とか、自分で描いた
キャラクターのイラストを見て、懐かしいなと思いながら書いております。
 後、こっちの背中押してくれたHよさん。
 そして早速こちらに励ましメールを送ってくれたAさん、拍手の方にメッセージを
くれたMさん、どうもありがとうございます。
 ここにこっそり、お礼の言葉を記しておきます。
 非常に勇気づけられましたです(^^)

 もう一本…この原稿終わったら、六月初旬までに仕上げて持ち込む
予定の物があるし、ノマ受けオンリーにも参加する予定なので…サイトの
方はその間、更新速度下がりますが良ければ付き合ってやって下さいませ。
 ではでは、作業に戻ります。

 
 
 こんにちは、香坂です。
 最近、連載のペースが遅くなっててすみませんが。
 事情をこの場で記すべきか、記すべきじゃないかでここ
暫くずっと悩んでいたんですが…決心した事があるので
書かせて貰います。

 結論言うと、毎日何かしらを掲載するという方式に拘るのではなく
今後は週2~4程度のペースでまったりやっていこうかと。
 それで現在香坂、失業保険を貰っている身なんですが…
就職活動と並行して、ちょっと…何か所かに自分の小説を
投稿してみようかと考えています。

 鬼畜眼鏡、今でも好きだし…楽しみにしてくれている人がいるから
出来るだけ続けていこう、と思ってこの一年半頑張って来たけれど…
現在の自分では、週2~4回程度のペースが妥当だなと、素直に
そう認めましたので。

 キッカケは鬼畜眼鏡Rをプレイした事なんですけどね。
 一つ目は、何か登場人物の発言の幾つかが過去に実際に似たようなことを
言われたことがあって、何年か前に文章を2年ほど、書けなくなった時期の事を
思い出して…自分自身のトラウマとそれで向き合ったこと。
 二つ目は、それで…客観的にね、ファンとして大好き~! とか萌え~とか
騒ぐんじゃなくて、創作やっている人間として凄い触発されたんですよ。
 人をこれだけ愉しませる力のある作品を作れる人たちって凄いな、と。

 そうしたらザワザワザワ…と何か心の中から良いモンも悪いモンも湧き上がって来て。
 それで自分の中の答えを見出したら…鬼畜眼鏡も、前ジャンルも好き。
 けどそれ以上に…「自分」の作品を書きたい!! って猛烈な欲求が湧き上がって
来て堪らなくなったんですよ。
 何か鬼畜眼鏡の…新作が自分にとって、心に響く作品だったからこそ…いつまでも
トラウマ引きずってるんじゃなくて、それを振り切りたい。
 そんな心境になってしまった訳でございます。はい。

 後は自分と同じ年の人が転職した際に「30歳になる前よりも二十代の内に
自分を売った方が良い」という一言を聞いて、真剣に将来考えてしまって。
 …20代の内に、一回ぐらいトライしてみても良いだろう! という感じで
現在…何本か、投稿用の作品のプロットを考えて並行して書いています。

 …そっちにエネルギー費やしているから、こちらが毎日書けなくなって
しまっているのは本当に申し訳ないのですが…(汗)
 四月の時点では、両親ともまだ仕事見つかっていない状況だったから
どうしても失業保険を貰って2~3か月時間を取って、小説を投稿したり
何だりをしようっていうのに迷いが出てしまってウダウダしていたんですが。
 今は親の方はどうにか二人とも仕事見つかったから、なら我儘言わせて
貰おうと決心して、色んな本を読み漁ったり、辞書を引いたりして言葉の
引出しを多くしようと足掻いております。

 一応七月が締切の奴と、九月締切の奴に一本ずつ出すだけ出して
見ようと思っています。
 …いきなりその業界に飛び込める程、正直言うと自信が持てなくて。
 それで何年も同人活動やっていれば良いやと思っていたけど。
 二次創作じゃなくて、自分の中に息づいている物語を書きたい。
 やっと小説書けなくなったトラウマを書きまくることで克服出来たので
(ぶっちゃけこのブログはその為に設置したのです…)次のステップを
行きたいな、と。

 自分の中でめっさ、悩んでいたので…色んな物事が後手後手に回って
いたんですが、5月に別ジャンルと、キチメガの人とそれぞれ一対一で
じっくり会話する機会あって。
 その会話の中に、オリジナルの話を幾つかかいつまんで相手に話して
「それ読んでみたい、書いてみて」と言って貰えたおかげで…正直に
ここに足を運んで下さっている方々に今の心境を伝えよう、と決意
出来ました。

 迷っていた為に…色んな事が滞っていて本気ですみません。
 けど、これが今の自分の正直な気持ちなので。
 香坂の家庭環境自体は、今年の3月ぐらいで一応…それなりの落ち着いて
おります。ヘバっていたのは、ここ二年ぐらい本気で母方の親戚のお家騒動に
一家で巻き込まれてドタバタしていたからです。
 やっと気を張り続けなくても良い状況になったのでその点は安心して下さい。
 
 …とりあえず明日中までに、オリジナルの短編を一本仕上げて…とりあえず
ある出版社がやっている「書き方講座」っていうのに持って行く作品を
完成させないとあかんので…23~25日の分は連載休ませて下さい。
 並行しながら隠してやっていると、どっちも中途半端になるんで。

 一応、こちらの作品を楽しみに通って下さっている方もいらっしゃるので…
多少ペースを落としても、これからも運営はつづけさせて頂きます。
 ここまで長いお知らせを眼を通して頂き、ありがとうございました。
 では失礼致します(ペコリ) 
 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。

 

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                            10
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 ―たった今、起こった出来事の全てが夢のように感じられてしまった

 御堂の身体が倒れたことを音で知ると、暫く呆然としてから…ようやく克哉は
目隠しを自ら解いて、目の前の惨状を眺めていった。
 御堂は意識を失い、Rは珍しく苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて…
そしてもう一人の自分は、絶対なる王者のように舞台の上に立っていた。

「あっ…」

 其処には、蒼白の状態でベッドで眠り続けていた姿の面影はない。
 強い意志を込めて、その場に立っている雄々しい姿だった。
 彼は鋭い眼差しで、ただ御堂だけを見つめている。
 そうして観客の視線も、自分たちの視線も完全に釘付けにしながら
御堂の元へと歩みよっていって。

「御堂…」

 心からの愛しさを込めながら、上半身だけを起こさせて…そして
強く掻き抱いていった。

―ズキン

 その瞬間、何故か胸が痛んだ。
 心の中に吹き荒れる感情は、どちらに対しての嫉妬なのか自分でも
良く判らなかった。
 けれど…心からの愛しさを込めて、御堂を抱きしめているその姿を
直視するのは克哉には辛かった。
 だが目を逸らしても現実は変わらないのだ。
 そう覚悟して…克哉は心が軋むような想いを抱きながら、二人の姿を
見つめていった。

(オレは一体…どっちが好きなんだろう…?)

 今の克哉は、裸だった。
 あんな狂気じみたショーに出演したのも、御堂と彼を救う為だった。
 だが…結局、もう一人の自分が目覚めたことで自分がやろうとしていた事の
根本が崩れてしまった。
 御堂を罪人にするのを逃れる為に自分がMr.Rに縋って、頼ってまで
作りあげた筋書き。
 けれどそんなものは結局儚い幻想に過ぎなかったのかも知れない。

「オレが、間違っていたのかな…」

 強く抱きしめる、もう一人の自分の姿を見て…克哉は己の罪を
思い知る。
 彼は御堂に対して、決して許されぬ事をしてしまった。
 その結果が二つの悲劇を生みだし、結果…御堂はどちらの未来でも
救われない結末しか辿れなくなった。
 一人の人間の人生を壊してしまったという事実は、克哉の心に重く
圧し掛かり続けた。
 だから我が身を犠牲にしても、何をしても御堂を救いたかった。助けたかった。
 それは佐伯克哉の最後の良心でもあった。
 眼鏡を掛けた日から、もう一人の自分がしたことを認めたくなくて…目を逸らし続けて
結果、最悪の結末を導いてしまった罪を、この手で贖いたかった。

「オレは…ただ、貴方を…救いたかった…だけ、なのに…」

 なのに、自分の存在そのものが…この二人にとって邪魔なものでしかない。
 そんな錯覚に襲われていく。
 あんなショーに出演させられて、弄られて。
 大勢の前で辱められて…けれど、それらは全て無駄なことでしかなかった。
 その事実が、悔しいし悲しい…。
 胸の中がグチャグチャして、訳がわからなくなる。
 何一つ、満足に思考がまとまってくれなかった。
 けれど…強く御堂を無心に抱きしめ続けているもう一人の自分の姿に強く
心を掻き乱されて…気づけば、克哉は泣いてしまっていた。

(どうして、涙なんて出るんだよ…!)

 自分の心が、判らなかった。
 何で彼らのこの姿を見て、こんなに心が痛いのか苦しいのが…
息がつまりそうになっているのか、本心が見えない状態だった。
 空気が凍り続けていく。誰もが身動きが取れない中…その重苦しい
沈黙を破ったのは、眼鏡だった。

「おい…『オレ』…手を貸せ。御堂を奥の部屋に連れていく」

「えっ…あっ…」

「お待ち下さい! まだショーの途中なんですが…」

「お前の都合など、俺の知った事か。こんな場所にいつまでも御堂を
放っておく訳にはいかない。俺は退散させて貰うぞ」

「嗚呼…貴方様は何と傲慢で酷い方なのでしょう…!! 私にとってとても
大事なショーをそんなにバッサリと切り捨てろと申すのですか!」

 Rがそれなりに悲壮感を持って訴えかけていくが…眼鏡は冷たい
表情をしながらきっぱり言い切っていった。

『俺には関係ない!』

「ああああああああ~!」

 あまりにも眼鏡に言い切られてしまったので、男の中のマゾ的な欲求が
刺激されてしまったらしい。
 ステージ上でRが嘆きと歓喜が入り混じったような様子で大声で叫んでいった。
 …何か、見てはいけないものを見てしまったような心境に克哉は陥った。

(…何であんな風に冷たくされて…悶絶しているんだろう…あの人…)

 やっぱりRは理解出来ないと、心底思い知った瞬間でもあった。

「おい…早く、手を貸せ…」

「あっ…うん!」

 と返事して立ち上がった瞬間、克哉は羞恥で死にたくなった。
 目隠ししている間は意識しなくて済んだが…自分は今、何一つ身に纏っていない
状態…ようするに、裸なのだ。
 舞台の下には、多くの人間の視線が存在している。
 それを自覚した瞬間、克哉は竦みそうになってしまった。

「こら! 何をモタついている…!」

「えっ…だって…」

 克哉がつい、下半身を隠すような仕草をしていくと…眼鏡は非常に面倒くさそうに
舌打ちしていった。
 そして次の行動が信じられなかった。

「ちい! 貴様、これを借りていくぞ!」

「嗚呼! 我が君よ! 無体です! 無体すぎます!!」

 …何と、もう一人の自分はよりにもよってMr.Rの胸元に手を掛けて…
勢い良く、男からその漆黒のコートを剥ぎ取っていったのだ。

「うわっ!」

 その行動には克哉も驚きを隠せなかった。
 しかし眼鏡は何でもない顔をして…黒いコートを克哉の方に投げていった。

「ほら、それでもさっさと着ろ。それでそのお粗末な肉体を晒さなくても済むだろうが…」

「そ、粗末な身体って! お前だってまったく同じ体格をしている筈だろう!」

 克哉は顔を真っ赤にしつつも…大慌てでその黒いコートを羽織っていく。
 おかげで確かに…足元はやっぱりスースーするが…裸のままで壇上に立って
いた頃に比べて、地に足がついた感じになっていった。

「黙れ。お前とこれ以上…口論を続けるつもりはない。御堂をともかく…
安静に出来る場所に連れていくのが先決だ。早くしないと…手遅れになる…」

「えっ…今、何て…?」

「…死を誘う夢が、御堂に近づいている…。だから俺は、目覚めた…」

「…な、にを…?」

―やはり、小手先の細工では…運命というものは覆せないものですね…

 眼鏡がそう口にした瞬間、Mr.Rは唐突に…真剣な顔になった。

―この世界の御堂孝典は亡くなっている。その事実を覆す存在を…別の
場所から持って来たとしても…事象が修正に掛かって…本来あるべき形へと
戻そうとする…。貴方様のいう死を誘う夢とは…もしかして、その事ではないのですか…?

「そう、だ…。『ここ』に御堂がいる限り、あいつは…恐らく死ぬ。無念の内に
死んだ御堂の存在が、この御堂の心を喰い尽してな…」

「ね、え…何を、二人とも…言っているの…?」

 二人の会話に、克哉はついていけなくなる。
 訳が判らない。自分は確かに今回の幕劇についての舞台裏をある程度は
知っている筈なのに…彼らが何を話しているのか、判らなかった。

―貴方がそれを悟ったということは…恐らく、向こうの克哉さんの心を…
貴方が食い尽してしまったんですね…

 そう問いかけた瞬間、眼鏡は小さく頷いていった。
 そして切ない瞳を浮かべながら…答えていく。

「ああ、そうだ…だから、俺は…もう二度と、戻れない。今…こいつが
使っている方の身体にはな…」

 そうして、苦渋の表情を浮かべながら…もう一人の自分が答えていく。
 瞬間に悟った。自分が望んだことを叶える為に…思いもよらない結末を
招いてしまった事に。

「嘘、だろ…まさか…ねえ、あいつは…!? オレがいた世界にいた方の…
もう一人の、俺は…!」

 必死になって相手の足元に縋りながら、問いかけていく。
 眼鏡は切なそうに顔を横に振って…目を伏せていく。
 それ以上は何も言わなかった。
 けれどそれでも克哉には何となく判ってしまった。

「そ、んな…」

 本来あるべき形を捻じ曲げて、幸せな未来を一つ紡ぎ出そうとした。
 けれど…その為に、また大きな悲劇を招いてしまっていたのだ。
 自分たちは…同じ願いを抱いていた。
 だから違和感なく統合していったから…見落としてしまっていた。
 自分と、彼らは違ったのだ。
 その罪に気づかされて…克哉は、言葉を失った。

「…いつまでも、ここで立ち止まっても仕方ない。何をしないで嘆いていても
事態は何も変わらない。ただ何もせずに泣いているだけなら…せめて御堂をこんな
イカれた場所から運ぶのを手伝え。それぐらいの役に立ったらどうだ?」

 冷たく、もう一人の自分が言い放つのが耳に届いて…克哉は正気に戻っていく。

「そ、うだね…。いくら悔んだって、泣いたって結果は変わらない…ものな…」

 そうしてどこか達観したような表情を浮かべて、克哉は御堂を奥の部屋に
運ぶのを手伝っていく。
 眼鏡が御堂を運んだ場所は…彼自身が二日間、寝込み続けていた
一室だった。

―其処まで無言で御堂の身体を、二人で運んでいる間…克哉の表情はまるで
人形のように無表情で、血の気が感じられないものに変わっていったのだった―

 

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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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