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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
 
 
 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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 ―彼を愛していると、惹かれていると気づいたのは愚かにも
御堂を失った後だった

 目の前で、相手が物言わぬ骸(ムクロ)となってしまった瞬間を
今でも眼鏡は忘れない。
 あの時の喪失感を、絶望を、慟哭はたった二日しか経過していないせいで
今でも生々しく彼の中で息づき、血を流しているかのように疼き続けている。

『お前の好きにすれば良い…』

 心から、そう思いながら彼は己の首元を相手の前に晒していった。
 御堂に生身の肉体があったのならば、憎くて堪らない相手をくびり殺す
千載一遇のチャンスだ。
 なのに、御堂も…克哉も、Mr.Rも…その場にいた誰もが彼の行動と
態度に驚き、言葉を失っていく。
 傲慢で身勝手な筈の男が、何もかも観念して罪を認めているような
その姿は…全員に、激しい衝撃を与えていた。

「あ、貴方という方は…一体、何というみっともない姿を曝して
いらっしゃるのですか! 貴方こそ、鬼畜王と呼ばれる程の素質を
秘めているお方! 何者にも屈せず、欲望のままに他者を踏み躙り
快楽の限りを尽くす…それこそが貴方に何よりも相応しいお姿でしょう!
何で、そのような愚かな行動を…」

 Mr.Rは心から嘆きながら、眼鏡に訴えかける。
 だが彼はつまらなそうに黒衣の男を見つめていくと…呆れた顔を
浮かべていった。

「…お前が俺をどう見ようが、何を望もうが勝手だがそれを俺に
押し付けるな。何故、俺がお前の望む者にならなくてはならない
義務があるんだ…?」

 静かな声、だが…その瞳に浮かんでいるあまりに冷酷な輝きに克哉と
Mr.Rは言葉を失っていく。
 殉教者のようにしおらしくなったかと思えば…やはり、傲慢な男と
しての姿も垣間見せる。
 だが…幽体となった御堂をみる度に切なく…悲しげな瞳を浮かべていく。
 御堂は、何も言わず…ただ、彼を見つめ続けているだけだった。
 禍々しい光を宿していた鋭い眼差しが、あまりの驚愕の為に和らいでいった。

―どうして、お前は私をそんな目で見るんだ…?

 透明な御堂は、憤りを含んだ様子でそう呟いていく。
 
「…俺は、あんたという存在を失って…気づいたからだ。…バカ、だよな…。
御堂孝典…あんたは、俺が殺してしまったようなものだ…。そうなってから
この気持ちに…気づくなんて、マヌケ以外の何者でもない…」

 さっきまで、プライドが先立って己の顔を決して上げようとしなかった
男が素顔を曝していく。
 目に熱い涙が伝っていく。
 それが頬を辿り…リノリウムの冷たい床の上に雫となって落ちていく。
 御堂にとって佐伯克哉という存在は自分の全てを奪った憎き略奪者以外の
何者でもなかった。
 血も涙もない。鬼とも獣とも思っていた存在が…涙を流して、こちらに
こんな声で語りかけてくるなど…御堂の想定外の反応だった。
 
―お前は、一体…何を、言っている…?

 恐らく、眼鏡のこんな顔を見ることになるなど彼にとっては考えたことも
なかったのだろう。
 ついさっき、相手を決して許さないと怒号した御堂は毒気を抜かれて
戸惑いの顔をようやく浮かべていった。
 怒りに怒りを、憎しみに憎しみを返すことは火に油を勢いよく注ぎ込む
ようなものだ。
 だが、目の前で流される涙に…御堂は、怒りを一瞬忘れてしまった。

―どうして、お前が…私の前で、泣いて…いる、んだ…? どうして…

 御堂の声を聞いて、どこまでも眼鏡は透明な表情を浮かべていく。
 喜怒哀楽の四つの中に当てはめるなら、それは「哀」を感じさせる
顔つきだった。
 瞳の奥に、今まで見たことがないくらいに優しい色が宿っていく。

「…あんたを永遠に失ってしまった事。追い詰めて殺してしまったことは
きっと俺の中で決して消えることがない…罪であり、咎だ…」

「…『俺』…」

 少し離れた位置から、二人のやり取りを見守る克哉が切なげに
呟いていく。
 これは罪を犯してしまった人間の、最後の言葉。
 もうじき永遠に、「自らが殺してしまった御堂」には手が届かなくなる。
 そう悟ったから、男は何もかもかなぐり捨てた。
 Mr.Rが語ったあの挑発的な言葉が、彼に最後の意地を捨てさせたのだ。
 腹が立ったし、プライドが許さないと最初は思った。
 けれど…彼に謝罪することも、想いを告げることもこれ以後は決して
二度と出来ないのだ。
 ならば…悔しいが、Rの言う通りだ。ここで想いを告げなかったら生涯
消えることのない後悔を残すことになるだろう。
 だからこそ、男は…初めて己の弱さを隠す為に纏っていた傲慢や
強気の仮面を外していく。

「あんたが、俺を許せないというのなら…殺しても、構わない。けど…
これだけは言わせてくれ…。こうなって、初めて気づいた。俺は…あんたに
知らない間に惹かれて、思うようになっていた。だから…欲しくて、欲しくて
堪らなくて、間違った方法で手に入れようとしてしまった…。
俺は、あんたを…」

―言うな!! そんな戯言で、許せると…思っているのかっ!!

 次の瞬間、遮るように御堂は吠えた。
 そして再び怒りで瞳が爛々と輝き始める。
 それはまるで眼鏡からの言葉など聞きたくないと激しく拒絶するような
そんな反応だった。

「戯言じゃない!! 俺は、あんたを愛している!! 言う資格など俺に
ないって判っている!! だが…俺が殺してしまったあんたには、もう…
元の世界に戻ったら二度と言葉は届かない!! エゴだって判っていても…
それでも、俺はあんたに伝えたかったんだ!」

  形振り構わない、本気の告白。
 いつだって臆病で、傲慢の仮面で己を鎧続けて来た男の…みっともないまでの
魂の叫び。
 傍から見たらそれは愚かな行動にしか見えないのかも知れない。
 けれど時に真実の、剥き出しの想いは…頑なだった憎しみを、怒りを打ち砕く
力すら込められている。

―そんな、一方的にぶつけられて…私に、どうしろっていうんだ!!
殺したいぐらいにお前が憎くて憎くて堪らないのに…!! そんな目で、
顔で…想い、など告げられてしまったら…私は…!!

 その瞬間に、御堂は…嫌でも気付かざるを得なかった。
 相手を憎む心の奥底に潜む、隠された感情を。
 目を背けて決してありえないと頑なに拒み続けて逸らして来た
感情が、一体何といわれるものだったのかを察していく。

―こうして、命を失ってしまった後で…そんな事を告げられて、私に
一体どうしろというんだ! どうして、私に血の通った身体のある内に
そう言わなかった! お前は、もう…私の前から、消えるというのに―!

「す、まない…けど、俺は…」

 愚かで、身勝手で自分の感情をぶつけるだけの行動でしかなかった。
 目の前にいる眼鏡は、恋に悩み…迷い、臆病になっている一人の男でしか
なかった。
 だんだんと透明になり、この世界から消え失せようとする姿を目の当たりに
して…御堂もまた、泣きそうな顔になっていった。

―二人とも、結局は良く似た同士だったのだ

 プライドが高く、人の上に立つ事に秀でる事に歓びを覚え…己を
磨く為にあらゆる努力を惜しまない人種。
 どこまでも高みを目指していける輝ける魂同士。
 だからこそ、自尊心が邪魔をして本心に気づけないままだった。
 手を伸ばせば、其処にあったのに。
 凌辱や強姦という間違った形であっても、何度も身体を繋げたことさえ
あったというのに…結局、本当の終わりを迎えるまで、彼らは心を
通わす事すら出来なかった。
 けれど…剥き出しの心をぶつけあったことで、もう一人の自分は
別れの間際に、御堂から…憎しみ以外の感情を引き出していった。

―お前を、憎むぞ…佐伯…私は、いつまでも…

 きっと肉体があれば、御堂は涙を流していただろう。
 それぐらいに悲痛な表情を浮かべながら力なく呟いていく。
 眼鏡の身体が、御堂と同じぐらいに透け始める。
 もうじき、完全に消えてしまう。そう悟った瞬間…二人は無意識の
内に互いに指を伸ばしていた。
 その光景を眺めていた克哉が、泣いているのが目に入った。
 だがすぐにただ…眼鏡は真っ直ぐ、自分が憧れて止まなかった
孤高の存在だけを見つめていった。

『すまな、かった…』

 そして染みいるような声で眼鏡はただ、心からの謝罪をもう一度
告げていく。
 相手の心の中にある憎しみを溶かす、ただ一つの鍵を…自分の
中の意地も自尊心も、何もかも捨て去って告げていく。

―貴方ほどの人が俺みたいな人間の為に、いつまでも憎しみに
囚われないように…

 もう貴方の肉体が永遠に失われてしまったのならば、せめて
安らかにこれからは眠れるように…。
 咎人は最後にただ、それだけを願って…相手に伝えていく。
 許してくれなど、自分からは決して乞えない。
 だから許せないなら、それで構わない。
 
―貴方が俺を心から憎んでいようと、俺は貴方を愛している…

 そう祈りを込めて、心の中で思った瞬間…彼がこの世界に
留まれるリミットは訪れようとしていた。
 ベッドの上の御堂の姿も、眼鏡に連動するように…徐々に
輪郭を失って透明になっていく。
 
―佐伯、佐伯ー!!

 そうして、憎しみではなく…愛しみの感情を込めて初めて、
幽体となってしまった御堂が眼鏡の名を呼んでいく。
 その瞬間、眼鏡は嬉しそうに笑った。
 
―あんたに、そんなに必死になって…呼んで貰える日が…
来る、なんてな…

 そんな言葉を、本当に幸せそうに呟いていく。
 見る見る内に彼の姿が遠くなる。
 幻のように、陽炎のように…そして儚いもののように
徐々に消えていって、そして…。

―眩い光が走り抜け、眼鏡と…ベッドの上に横たわっていた
御堂は本来の世界へと戻っていく

 この世界に残される側の二人は、黙ってそれを
見送るしかなかった。
 結局、こういう時…人は無力だ。
 目の前から誰かがすり抜けていく間際でも、何も出来ることが
ない時…やりきれない気持ちだけが胸の中に広がっていく。

―その間際、最後に克哉の声が…道を分つ二人にせめてもの
救いを与えようと…大きく響き渡っていったのだった―
 

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克哉と御堂とMr.R
眼鏡×御堂のコミックが始まりでした。とにかく眼鏡好きの私。すっかり鬼畜眼鏡の虜です。ゲームはしていないのですがこちらへお邪魔するようになってから、ファンブックを買いました。
ここ一週間位毎日読ませて頂いてました。すっごく楽しいです。何度涙を流した事か…。これからも頑張ってください。応援してます。
2009/06/05(Fri)19:28:51 編集
お言葉ありがとうございましたv
こんにちは遥さん。返信が遅れてしまいましたが、メッセージを下さってどうもありがとうございます。
 ゲームは未プレイのようですが、コミックだけでも充分にハマる要素は鬼畜眼鏡にはあると思います。
 そしてファンブックを見るだけでも、大まかなストーリーや設定は把握出来ますしね。
 けど、うちのブログがファンブックを買うキッカケになっているのなら…光栄でございます。
 一応、私は…「原作を好きな方が楽しめる穴ザーストーリーを」をモットーに二次創作を書いているので…少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
 そしてそれをキッカケにゲームの方も、金銭に余裕あれば購入するのオススメします。
やっぱりゲーム版は声も入っていますし…何よりおまけ要素も満載ですので。
 これからも気軽に来てやって下さいませ。おまちしております。
 そしてこちらの作品に涙を流して下さってどうもでした。非常に励みになりました。
ではでは~!
香坂 2009/07/06(Mon)23:23:40 編集
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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