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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方
どうもありがとうございます(ペコリ)
 やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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  ―御堂孝典が思い詰めて佐伯克哉を刺し、その一件が『無かった事』に
されてから一年余りの月日が流れようとしていた

 当初の内は関係者の中に多少の記憶の混乱等が起こっていたが…
それも日々を過ごす内に次第に収束していき、一か月もした頃には
記憶を思い出した者が出ても…当の刺された克哉が、普通の態度で
御堂のサポートをしている姿を見ている内に…例の事件の目撃証言は
デマや、見間違い、勘違いと纏められ、忘れ去られていった。
 そして克哉は…あの事件を忘れた御堂と、一から仕事仲間としての
関係を築き上げていった。

 元々、眼鏡を掛けて覚醒した克哉の能力はズバ抜けたものだった。
 そして真剣にさえなれば…多くの顧客や取引先、そして革新的な
プロジェクトの発足など造作もない事だった。
 そうしている内にMGNから声が掛かり、御堂とは上司と部下の関係で
あったが共に仕事をする機会や一緒に過ごす時間は多くなっていった。
 それは償いの為なのか…彼は一度も、御堂に性的な意味で触れることはなく…
あくまで部下として、献身的に彼を支え続けた。
 そうしている間に、御堂の信頼も厚くなり…肩書上は御堂が上司であったが
いつしか対等な目線で語り合える存在に徐々になっていった。
 そしてあの事件があった日から、明日で一年になろうとしたある夜。
 もうじき、重要なプロジェクトが本格的に軌道に乗る為に…その準備の
為に二人で夜遅くまで働いていた。
 ふと、克哉が書類から目を離して壁に掛けられた時計を眺めていくと…その短針は
もうじき23時を指そうとしていた。

(後、もう少しで…一年、か…)

 彼が今夜行うべき仕事の大半が、やっと片付いたおかげだろうか。
 ふと…その時刻を見て、克哉は遠い目を浮かべていった。
 後一時間が経過すれば、あの事件があった日から丁度一年になる。
 その事を思い出すと…チクリ、と胸が刺す想いがした。

(あんたを、失った日から…『オレ』と別れた日から…一年、か…)

 この世界に投げ出され、密かに御堂に対して贖罪をすると誓った日が
随分と遠く感じられた。
 その癖、瞼を閉じればすぐに我を失うぐらいにこちらに怒りをぶつけていた…
御堂の顔が、声が…鮮明に思い出されていく。
 まずはあの人の信頼を得ることから始めようと、がむしゃらに仕事を
こなし続けた。だから感傷的な気持ちに浸る暇などずっとなかったのだが…
今日だけは、そうもいかなくなっていた。
 彼が仕事をしている部屋の、扉の向こうには御堂の私室が続いている。
 扉を開けば、必死になって仕事をこなしている相手の姿を見ることが
出来るだろう。
 ふいに、御堂の顔が見たくなった。帰る…と相手に告げることを口実に
向こうに赴こうか…少し悩んでいった。

(…そんな下らないことで、あいつの仕事を邪魔しては悪いな…)

 しかし考えた末に出た結論は、以前の自分だったら絶対に考えない
ぐらいに殊勝なものであった。
 克哉の中には今も、御堂に対しての想いは変わらず存在している。
 だが…自分がしたことを思えば、こうして傍にいられるだけでも僥倖なのだ。
 欲しいとか、抱きたいとか…そんな事を到底口に出来る訳がなく。
 …本当にプラトニックな状態のまま、一年が過ぎてしまった。
 しかし相手の顔が見たいとか、触れたいという感情は変わらずに胸の中に
在り続けているので…本当にさりげなく御堂の肩に触れたり、口実を
作っては御堂に会いに行ったりと…自分らしくない純愛を貫いていた。
 
「…気を少し、沈めておくか…」

 そう呟きながら、彼は上着のポケットから煙草とライターを取り出して
紫煙を燻らせていく。
 ほろ苦い煙草の煙が、彼の穏やかでなくなった心をゆっくりと慰めて
くれていた。
 かつては欲望のままに行動して、思うがままに御堂を犯した。
 …その結果が、御堂の手を汚させて…自分自身の命もあと一歩で
失い掛けることとなった。
 けれどほんの少し歯車が狂っていれば…御堂は殺人者として社会的な
地位の全てを失って失墜していたし、自分も命を失っていてもおかしくはなかった。
 無意識の内に服の上から腹部に触れて…ゾっとなっていった。
 克哉があの日、負わされた傷は本来は致命傷で病院に素早く搬送されていたと
しても…助かる見込みはかなり低く、命を落とす可能性のが高いものだった。
 あの男が手を貸してくれたから…数日で傷は塞がり、殆ど仕事上に穴を空ける
事無く過ごすことは出来た。

 …本来の、この世界の佐伯克哉の記憶。それは断片だけでも今の
彼の中に確かに存在している。
 二つの世界がたった二日間の間だけ交差し、混じり合った一件。
 それによって…奇跡的に、自分たちはこうして共に過ごす時間を得ることが
出来た。けれど…その記憶があるおかげで、克哉は以前に比べて
酷く臆病になっていった。

(まるで…別人のようだな。以前は、すぐに怯えて…何で出来ないままでいた
あいつの事を馬鹿にして見下していたが…今の俺は、それと何の違いがあると
いうのだろうか…?)

 自嘲的に笑いながら、ふっと顔を顰めていく。
 …もう一人の自分と、自分が殺してしまった御堂はあの後…どうなったの
だろうかとふと気がかりになった。
 あちらの世界の御堂は迷わずに、天に召されたのだろうか? それともあいつの
方と仲良くやっているのだろうか…と、ふとそれを考えた瞬間、胸の中にモヤモヤと
どす黒い感情が生まれていく。

―あの二人の幸せを願う心と同じぐらいの強さで、嫉妬が生まれていく。

 最後の瞬間、判り合えた気がした。けれどそれから間もなく、自分が殺してしまった
方の御堂とは永遠に決別することとなってしまった。
 会えない人間の事ばかり考えて、『今』を生きれなくなるのは愚かだと思った。
 だから…努めて考えないようにしていた。なのに…今夜に限ってはそんな事ばかりが
頭の中に浮かび続けていた。

(なあ、お前は…一体、どうしているんだ…?)

 あの後、どうなったかなど…あの奇妙な事件の舞台を構成したMr.Rと
交流を途絶えさせてしまった以上、今の克哉には知る術はない。
 …この一年、もう一人の自分の事など殆ど考えなかった。なのに
今夜に限ってどうしてこんなにも気がかりを覚えているのだろうか。
 煙草の煙を肺いっぱいに吸い込んで、深く吐きだしていった。
 そして…向こうの世界の御堂はどうなったのか。考えても意味のない
事の筈なのに、何故か…そんな考えばかりが頭の中に溢れていった。
 そうしている内に、15分はあっという間に過ぎていく。
 この扉の向こうにいる御堂も、そろそろ帰宅準備を始めていたとしても
おかしくはない時刻。
 この一本を吸い終えたら、自分も退社しなければ明日にそろそろ差し支えが
出てしまいそうだ。
 そう考えて、半分程の長さになった煙草を深く吸い込んでいくと…その
途端に、御堂の執務室の方からドサ、と何か大きな音が聞こえていった。

「っ…? 何だ、今の音は…?」

 それは大きな何かが倒れる時に生じる音のような気がした。
 気がかりになって克哉は慌てて、隣の部屋へと駆けていった。
 勢い良く扉が開くと…其処には苦しそうに頭を押さえこんで、床の上で
もがいている御堂の姿が目に入っていった。

「御堂部長! どうしたんですか!」

 尋常ではない相手の様子にぎょっとなって克哉は慌てて相手に声を
掛けていった。
 だが、御堂はこちらの言葉など耳に入っていないかのように…苦悶の
表情を浮かべて、うめき声を漏らすのみだった。

「はっ…ぐっ…ぁ…」

「御堂部長! しっかりして下さい! そんなに…苦しいなら、救急車を
今から手配します!」

 一年が経過して信頼関係が出来ているおかげか、プライベートの時は
もう少し彼に対して砕けた口調で接しているが、今は会社内であり…
今の自分たちは上司と部下の関係だ。
 だからあくまで、部下としての分を弁えた状態で声を掛けていく。

「頭が、痛い…割れ、そうだ…」

「頭痛、ですか…それなら…」

 相手が、そう苦しげに訴えかけていくのを聞いて…克哉は慌てて常備
されている救急箱のある部屋まで向かって、頭痛薬を取りに行こうと
立ちあがっていった。
 しかし、それを…御堂自身に袖を掴まれる形で阻まれていく。

「…御堂、さん…?」

「だ、い…じょうぶ…だ。今は、行く…な…」

「ですが、貴方がそんなに…苦しそうにしているのに…何もしないで
なんて…いられません、から…。薬を取りに行くだけ、です…。
ですから、離してくれませんか…?」

 あまりにも強い力で御堂がこちらの袖を掴んでいるので…
克哉は困った顔を浮かべながらそう告げていく。
 これでは御堂が、こちらに縋っているようではないか。そんな事は
この人に限っては似合わないし、らしくないと思ったから。
 だから出来るだけ動揺を悟られないようにして…穏やかな口調で
相手に伝えていった。

「行く、な…何か、を…思い出し、そうなんだ…。君に、関わる…
何かを…」

「っ!!」

 その瞬間、克哉の顔は一気に青ざめていった。
 …ついさっきまで、一年前の出来事を思い出していたからだろう。
 御堂のその一言に、戦慄を覚えていく。

(今の、言葉は…もしかして、御堂は…俺との間に起こった事を…
思い出しつつある、のか…?)

 そう思い至った瞬間、彼は怖くなった。
 傍にいられるだけで幸せだと思った。なのに…もし、彼が一年前の
出来事を、自分がかつて犯してしまった事を思い出してしまったら…
それは夢から御堂が覚めてしまうことを意味する。
 一からやり直して、この一年で築き上げた信頼関係。
 それがなくなって…御堂が再び、自分に対して憎しみの眼差しを向けて
しまったら、そう考えたら怖くて…その場から逃げ出したくなった。
 自分が傍にいる事で、彼があの事件を思い出すのならば…全力で
目の前から立ち去りたかった。
 けれど…愛しくて、尊敬して止まない存在がこんな風に苦しんでいる
姿を見て、どうしてそんな真似が出来るというのだろうか。
 御堂が、苦しげに頭を押さえて…苦しげな呼吸を繰り返していく。
 思い出さないでくれ、という願いと…早くこの人の苦しみが立ち去ってくれと
いう気持ちが心の中でせめぎあっていた。

「思い出さないで、くれ…」

 本当にごく小さな声で、そんな事を無意識のうちに呟いてしまっていた。
 あんたが思い出してしまったら、俺はもう傍にいられない。
 二度と欲しいとも、無理やり抱こうとも思わない。
 それならせめて…そのささやかな幸せだけでも、守りたかったのに…
現実は、その儚い願いは無残にも壊れようとしていた。
 あんたがいつか、他の誰かを選ぶ日が来ても…笑って見送るから。
 だからせめて、彼の傍らにいる事だけでも許して欲しかった。
 なのに…御堂は、思い出すことを選択しているように感じた。
 自分との間に起こった空白の出来事。
 克哉にとっては決して拭い去れない、自分自身が犯した罪を…。

「思い、出さなくて…良い…このまま、どうか…」

 懇願するように、彼は声を絞り出していた。
 だが御堂は苦しげな息を漏らすだけで…何も言ってくれない。
 気づけば一筋の涙が、頬に伝っていた。
 この夢がまだ続いて欲しいと願う気持ちが…浅ましくも彼の瞳に
涙を浮かべさせていた。
 例え触れ合えなくても、恋人になれなくても…嗚呼、そうだ。
 自分はこの一年、この人から信頼されて幸せだったのだ。
 だからどうか、それだけは壊したくなかった。
 失いたくなかったのだ。
 その激情が…本気で苦しんでいる御堂の身体を衝動的に
掻き抱くという行為に結びついていく。

「このまま、あんたの傍に…俺は、いたいんだ…!」

 そして、感情のままに…想いを吐露してしまっていた。
 瞬間…御堂の腕がきつく、こちらの身体を抱きしめ返した。
 途端に言葉を失って、克哉は瞳を見開いていく。
 何が起こったのか、とっさに理解出来なかった。
 だが…そうして、抱きあったまま…凍ったような時間が静かに
二人の間に流れていった。
 そして…御堂はポツリと小さく呟いていった。

「…佐伯、もう…大丈夫だ…。離して、くれないか…?」

 そして酷く弱々しい声で、御堂が告げて来る。

「…頭痛は、もう…平気、なのか…?」

「嗚呼…まだ多少は痛むが、我慢が出来ない程ではない。
この状態なら帰れそうだ…」

「本当ですか? まだ辛いようなら…タクシーの方を手配しますから
今夜はそれで帰られた方が…」

「…大丈夫だ、と私が言っているんだ。自分の体調ぐらいはこちらで
把握出来る。さしでがましい事はあまり言わないでくれ…」

 と強気な口調で言っているが、御堂の顔色はやはり…客観的に
見ても相当に悪かった。
 今にも倒れてしまいそうな危うい雰囲気を纏っている。
 きっぱりと拒絶する気丈な御堂の様子を眺めていると…もうすでに
過去の出来事を思い出してしまっているんじゃないかと猛烈に
不安な気持ちが湧き上がっていく。
 だが、「思い出したのか?」と問いかけるのが今は怖かった。
 本当に相手を案じるなら、それでもついていくと言い張るべきだったのだろう。
 しかし…今の克哉は、大きく怯んでしまっていた。

「…判りました。それなら、気を付けて帰って…下さい…」

 頭の中が混乱して、それ以上食い下がることが出来なかった。
 唐突に突きつけられた、自分とこの人の夢の終わり。
 そもそも…本気で憎まれた相手と、信頼関係を一から築き上げようなどと
いう願いがそもそも…厚かましかったのかも知れない。
 
「あぁ…君もな。おやすみ…」

 そう告げて、おぼつかない足取りで御堂はどうにか帰り支度を
整えて…自分の執務室を出て行こうとしていった。
 やはり相当に苦しそうなその様子を見て、克哉は胸が引き絞られていく。
 だが、御堂の背中はきっぱりと…克哉の手助けを拒んでいるようだった。

(…御堂、あんたにとって…俺はやはり、いらない存在に過ぎないのか…?)

 どれだけ努力をしても、贖おうとしてもやはり自分が犯した罪が
消えることもなければ、許されることもないのだろうか?
 その事に打ちひがれていきながらも…先程、無我夢中で抱き締めた
相手の体温と匂いを思い出していく。
 あんな風に彼の体温をしっかりと腕の中で感じたのは一年ぶりだった。
 たったそれだけで…確かに相手に劣情を覚えて、男としての本能を
強く刺激されている自分がいる。
 
「浅ましいな、俺は…」

 傍にいられるだけで満足だと願っていたのに、たったあれだけの事で
大きく揺らいでしまっている。
 こんな自分が、あの輝かしい人の傍にいること自体がおこがましい
事だったのかも知れない。
 覚悟をするべき時なのかも知れない。
 一年前のあの日、夢が覚めるまでで良いと自分は確かに願ったのだから。
 本当にその日が来てしまったのなら…それは潮時なのかも知れなかった。
 なのに、いざ訪れようとしていることを知ってしまったら動揺を隠せず、
怯んでしまうだけだった。
 情けなくて…そんな自分に苦笑しながら、彼は携帯でタクシーを会社の前に
呼びだして、帰宅する準備を整えていく。

―覚悟するしかないと、彼は決心をしていった

 考え方を変えれば、この一年間だけでも…自分はあの人の傍に
いる事を許されたのだから。
 そう思考を切り替えて、彼は自分の想いを振り切るように踵を返していく。

 ―そうして克哉が悲痛な覚悟を決めてから数日後、彼の元に
御堂が交通事故に遭ったという報が届いていったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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