鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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こんにちは、香坂です。
とりあえず本日は6月28日の新刊の
序盤を、試し読み用としてアップさせて
頂きます。
一応、今回のカップリングは克克ですが…
眼鏡とRしか最初は出て来ていません…あれ?
まあ、序盤である程度…話の雰囲気は
掴めるかと思います。
良ければ読んでやって下さいませ。
とりあえず現在、次の連載準備中。
明日までに、もうちょい構想纏めます。
テーマは「酒」にする予定。
…もう少しだけ付け焼刃でも、知識を集めた上で
書き始めますです。はい。
とりあえず本日は6月28日の新刊の
序盤を、試し読み用としてアップさせて
頂きます。
一応、今回のカップリングは克克ですが…
眼鏡とRしか最初は出て来ていません…あれ?
まあ、序盤である程度…話の雰囲気は
掴めるかと思います。
良ければ読んでやって下さいませ。
とりあえず現在、次の連載準備中。
明日までに、もうちょい構想纏めます。
テーマは「酒」にする予定。
…もう少しだけ付け焼刃でも、知識を集めた上で
書き始めますです。はい。
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とりあえず新刊の入稿無事に終わらせて、
咎人の最終話書き上がりました!
さて、オリジナルの原稿仕上げるか(締め切り23日11時まで)
…という感じで3時間ぐらい睡眠とったら、多分限界ぎりぎりまで
そっちを完成させる為に粘っていると思われます。
…この三日間、ちょっと1日平均でパソコン10~12時間は
触れていますね(汗)
とりあえず次の連載は、それを完成させたら考える。
場合によっては暫く止まっていた書きかけの話を多少、書き進める
方に行くかもです。
泣いても笑っても、今日を超えれば真の修羅場は越えられる。
…頑張りまっす。
…本当、書くのがよっぽど好きか…もしくは、マゾなんだろうな自分。
けど修羅場はキツイけど、超えた時の達成感はやっぱり癖になる。
だから同人や、執筆活動やっているんだろうなってつくづく実感しました。
んじゃ、最後の修羅場行って来ます。
ではでは~。
追記
とりあえずオリジナルの原稿も完成して、印刷し終えました。
これからちょいと旅立ちます。
行ってきま~す!
咎人の最終話書き上がりました!
さて、オリジナルの原稿仕上げるか(締め切り23日11時まで)
…という感じで3時間ぐらい睡眠とったら、多分限界ぎりぎりまで
そっちを完成させる為に粘っていると思われます。
…この三日間、ちょっと1日平均でパソコン10~12時間は
触れていますね(汗)
とりあえず次の連載は、それを完成させたら考える。
場合によっては暫く止まっていた書きかけの話を多少、書き進める
方に行くかもです。
泣いても笑っても、今日を超えれば真の修羅場は越えられる。
…頑張りまっす。
…本当、書くのがよっぽど好きか…もしくは、マゾなんだろうな自分。
けど修羅場はキツイけど、超えた時の達成感はやっぱり癖になる。
だから同人や、執筆活動やっているんだろうなってつくづく実感しました。
んじゃ、最後の修羅場行って来ます。
ではでは~。
追記
とりあえずオリジナルの原稿も完成して、印刷し終えました。
これからちょいと旅立ちます。
行ってきま~す!
※原稿の関係で予定より掲載遅れましたが、ここまで
この話に付き合って下さった方…ありがとうございます。
二か月余り掛かりましたが、どうにか完結です。
ここまで読んで下さった方に対して感謝の気持ちをここに
記しておきますね。
それでは最終話。どうぞ読んでやって下さいませ。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28 29
―克哉ともう一人の自分が、別々の肉体を持って隔てられた日から
今日で一年が経過しようとしていた。
幽霊となった御堂と肉体を共有して生きることにも慣れて来て…
奇妙な日常も、ごく自然に受け入れられるようになった頃。
…克哉は鏡を通して、向こう側の自分と…御堂が抱き合っている光景を
目撃する形となった。
「…もしかして、これは…俺と、御堂さん…」
鏡とは本来、本来あるべきものを真逆の状態にしてそっくりと
そのまま映し出すもの。
だが…今、克哉の部屋の壁に掛けられている鏡にはどうやら病室
らしい風景が映し出されている。
そしてベッドの上から上半身を起こしている御堂と、スーツ姿をした
眼鏡を掛けた自分がきつく抱き合っていた。
声までは聞こえない。けれど二人の様子から、想いが通じ合って抱擁しあって
いるように見えた。
(あぁ…お前は、御堂さんと…両想いに、なれたんだな…)
その事に、喜びと安堵をおぼえていく。
けれど…胸の中に、何かチリリとしたものを覚えたのも確かだった。
幸せそうに寄り添い、口づけを交わす二人。
この一年で…彼らがどんな風に時を過ごして来たのか詳細は知らない。
それでも…見ているだけで、今の二人の間には温かな心が通っている
ことだけは伝わってきた。
「…そうか、お前も…ちゃんと御堂さんと…結ばれることが、出来たんだな…」
結局は、自分も彼も…人格は違うとは言え同じ人間で。
…だから、きっと同じ御堂孝典という人に惹かれるのは当然の事だ。
自分だって霊体であっても、厳しくも優しいあの人に接している内に次第に
好きになってしまったのだから。
彼がちゃんと幸せになってくれることを願って、一年前のあの日…自分は彼の背中を
押したのだから。
だから心から喜ぶべきなのに…口元に笑みが浮かぶのと同時に…うっすらと
涙が頬を伝い始めていった。
「…何で、オレ…涙が…?」
もう一人の自分が幸せをちゃんと掴んでいたことに対して…嬉しさを
覚えている筈なのに、それ以外の感情が胸の中にゆっくりと競り上がってくる。
認めたくなかった。この光景を見て、喜び以外の感情が…自分の中に
生まれてしまっているのが。
どれだけ克哉がその感情を押しとどめようとしても…後から、後から
溢れてくる。
実体を伴った御堂と、しっかりと抱き合っているもう一人の自分を見て…
克哉はこの一年間、ずっと目を逸らし続けていた自分の本心に気づいていく。
「…幸せに、なれて…本当に、良かったね…『俺』…」
自分が鏡を通して、相手が見えているように…その逆もあり得るかも知れない。
そう思って、精一杯の笑みをどうにか浮かべていった。
オレは、幸せだよ…と相手に伝えるように。
けれど…涙が静かに伝ってしまっているせいでどこかぎこちない笑みに
なってしまっていた。
けれど、それでも克哉は微笑む。
どんな力が働いてこうして鏡を通して、お互いの姿が映されているかまでは
彼には判らない。
しかしもう一人の自分が、最後に見るこちらの顔がクシャクシャの泣き顔に
なるのだけは…気持ち的に嫌だったから。
―オレは、幸せだよ…
そう、相手がこちらに伝えるように…御堂を強く抱きしめているのに応える
ように…笑い続けていく。
そうしている間に、午前0時が訪れていく。
そして日付が変わったのとほぼ同時に…鏡の向こうの景色はゆっくりと
歪んでいき、そして…普段通りの佇まいを取り戻していった。
今のは恐らく、Mr.R辺りが気まぐれで起こした奇跡の類だったのだろうか。
もう二度と会えないと、様子を知ることも叶わないと諦めていたもう一人の
自分と御堂のその後を、十分程度という短い時間であったけれど確かに
克哉に伝えてくれていた。
だが、もう一人の自分の姿が見えなくなった瞬間…自分の目元から
溢れんばかりの涙が流れ始めた。
克哉は無意識のうちに…自分の口元を押さえていく。
「はっ…うぅ…」
その瞬間に…克哉は、自分の本心を知ってしまった。
すでに肉体を失ってしまった御堂と…それでも恋に落ちてしまった時から
決して気づかないようにしていた。
けれど…もう一人の自分が向こうの世界の御堂と、生身を持っている彼と
抱き合っている姿を見た時についに隠せなくなってしまった。
―自分も、生身のあの人に一度でも良いから抱かれたかった事を…
あんな風に、抱き合いたかったのだと…
その本心に気づいた時、小さな罪悪感を覚えた。
例え魂だけになっても、好きな人と両想いになれただけ幸せだと
そう思っていた。満たされていると信じていた。
だが、もうその誤魔化しも聴かない。
自分の中には、それ以上を確かに望んでいる気持ちが潜んでいた。
現状では、足りないと…浅ましい心が、叫んでいる。
その荒れ狂う、胸に秘めた激情こそが…涙の正体だ。
御堂を愛しているからこそ、現状では埋められない飢餓が自分の中に
存在している。
望んだって、叶えられることではないのならば…あの人を苦しめるだけ
ならばそれは言ってはいけない言葉だった。
…肉体を共有して、相手にこちらの感情が伝わってしまうこともあるのだから
考えることも禁じていた。
けど、もうダメだ。自分は知ってしまった。
自分の中の、醜い心を。赤裸々な欲望を…。
そうして泣き続けていると…ふいに、フワリと大気に包み込まれているような
そんな感覚がしていった。
「御堂、さん…?」
それで気づく。彼の魂が今…自分を包み込んでくれている事に。
決して叶えられない願いを、今の御堂の負担にしかならない事を
望んでいる自分を労わるように…温かいものを感じていく。
相手の方から、何も言わない。
けれど…こちらを気遣ってくれているのだというその感情だけは
確かに伝わってくる。
だが、今は…そんな優しさが逆に痛かった。
「御堂、さん…止めて、下さい…。オレは…貴方を困らせることを…
考えている、のに…」
―構わない。それでも…私は君を抱きしめたいんだ…。我が身が
ないことが本当に歯痒いがな…
「…お願いです、こんなオレに…優しくなんて、しないで下さい…」
懇願するように、克哉は訴えていく。
けれど相手の気配は…どこまでも包み込むような雰囲気は
決して離れる気配はない。
大好きで、誰よりも尊敬をしている人。
何度、こういう形でしか出会えなかったことを心の奥底では本当は
悲しく思っていたことだろう。
同じ身体を共有して生きている以上、しっかりと考えてしまったことに
関しては御堂に伝わってしまう。
良くも悪くも嘘や偽りが出来ない環境だった。
だから相手にどうしても知られたくないことは…意識の底に沈める他
なかったのだ。
「…オレは、貴方に…何度も『今のままでも充分幸せだ』と言っていた癖に…
心の底では、御堂さんの負担にしかならないことばかりを強く
願っていたんです…。そんなオレに、貴方に優しくされる資格なんて…
ないです、から…」
何度も、自分は幸せだと…今のままでも満ちていると御堂に
伝えて来た。
けれど…向こうの世界の二人を見て、克哉はずっとこの一年…
覆い隠していた本心を、ついに意識に登らせてしまった。
本心から言っているつもりだった。この人に…身体がないことを引け目を
与えたくなかったから。
肉体がなくても、それでもこの人を愛している…その気持ちだけは
自分にとっては真実だったから。
けれど…本心を覆い隠せば隠すだけ、心の中に澱んだものが
広がってジワリジワリと広がって侵食していくようだった。
だから、気づいた時…堰を切ったように自分は涙を零してしまったのだ。
ずっと覆い隠していた感情が、ようやく出口を見出して…溢れだして
しまっていた。
(こんな事で泣いたら…御堂さんを、困らせるだけなのに…)
なのに、止めようと頑張ってみても涙線は完全に壊れてしまったみたいで
熱い涙が零れ続けていく。
―貴方を凄い、好きです…御堂、さん…
好きだから、困らせたくない。
けれど好き過ぎるが故に…一度でもこの人の熱を、愛情をこの身で…
しっかりと感じ取りたかった。
お互いに愛情を確認し合う為に…抱き合いたかった。
この人と生身の身体を持って、愛し合いたかったのだ…自分は!
「御堂さん、御堂さん…御免、なさい…!」
こんな事を望んでしまって御免なさい。
絶対に叶えることが出来ない願いなど、相手にとっては負担にしか
ならないだろう。
だから一生、覆い隠すつもりだった。
もう一人の自分の事だって、あちらの御堂と上手くいったのならば心から
祝福するつもりだった。
いや、祝う気持ちに嘘はない。幸せになって欲しいと心から願っていた。
けれどその感情と同じ強さで…嫉妬をしてしまった。
御堂が生きていること、触れあって確認できること。強く抱き合いながら
しっかりとキスを交わせること。
それは…自分にとっては叶わないことだから。
だからみっともないぐらいに…相手を羨んでしまったのに…こんな自分を
それでも愛しい人が気遣ってくれるのが余計に辛く感じられてしまった。
―謝る事じゃない。それに…私だって同じ気持ちだ…。君をいつしか
想うようになってから、君をしっかりと一度でも抱いて感じ取りたかったと…
だから、あんな形であっても…私は君を抱き続けたのだから…
自分たちには、あんな形でしか一つになれない。
セックスに近くても、御堂に生身の肉体が存在しない以上…あくまで
あの行為は疑似的なものでしかない。
だから、一時的に満たされて誤魔化せても…胸の奥では、何かが
足りないと少しずつ何かが積もって来ていた。
魂を重ねて、相手の身体を乗っ取って…脳を弄って快感を引き出して…
セックスに近づけても、熱い肉体を持って抱き合うことには決して叶わないのだ。
―そもそも死者が、生きている人間に執着して愛してしまうこと自体が…
罪だったのかも知れない。君の献身的な気持ちに惹かれて、いつしか
想うようになってしまった。けれど…私は本当に君と肉体を共有してこれから
長い人生を共に生きて良いのだろうかな…?
「そんな、事は言わないで下さい…。幽霊であっても…俺は、貴方が必要なんです!
どんな形でも、これから先も…貴方といたいんです!」
―克、哉…
克哉は泣きながら、叫んでいた。
御堂と生きる限り、克哉は他者と…生きている人間と抱き合えない。
今までは眼を逸らして触れないようにしていたが…この恋は、克哉をその
深い業へと落としていく。
温もりを与えることも、抱いて本当の意味でのセックスの快楽を与えられる
訳ではない。
死者と生者との恋は、お互いに目を逸らしていたから…この一年はぬるま湯に
浸かっているように穏やかに過ぎていた。
だがどうしても埋められないもの、満たせないものにお互いが気づいた時…
その欺瞞が明かされていく。
克哉は其れが暴かれた瞬間、心の限りに叫んで訴えた。
この恋は手を離したらそれで終わりなのだ。別れはイコール、御堂の成仏を
意味するのだから。
眼鏡を掛けた方の佐伯克哉への憎しみは、今の克哉が献身的に仕えることに
よって晴れていった。
本来、克哉と恋に落ちさえしなければ…御堂を現世に留めている未練はすでに
なくなっている筈なのだ。
―私がいる限り、君は…誰とも温もりを共有出来ない…。私のもので
ある限り、私は決して…君が他の誰かと抱き合うことなど許せないからな…
「えぇ、構いません。オレはその覚悟で、貴方に傍にいて欲しいんです…!」
泣き晴らしながら、それでも克哉ははっきりと言い切っていく。
愚かだと誰に詰られても良い。自分が馬鹿だという自覚もある。
一生、自分の願いが果たされることは望めない。
時に、それで悲しくても切なくなっても、愛しい人とは離れたくない。
それが克哉の真実だった。
その覚悟に充ちた言葉を聞いて…御堂が苦笑したのを感じていった。
お互いに何度、もう少し早く出会えていればと思った事だろう。
克哉があの眼鏡に頼らず、自分の足で生きて…御堂と接していたのならば
真っ当な幸せが自分たちにも訪れていたのだろうか。
過去を振り返って、もしも…と考えても仕方ないことだと判っている。
それでも自分たちは、こんな状態でも恋をしてしまったのだ。
ならば…この人が自分の傍にいてくれる限りは克哉から決して
手を放したくなどなかった。
―君には敵わないな。その真っ直ぐな気持ちが…私の心をこんなにも
変えてしまったんだな…
「…すみません、我儘で。けど…オレは、それでも…」
―判っている。君の気持ちは…共に生きている私が誰よりも知っている…
「御堂、さん…」
そして、唇にキスを落とされていく。
フワリ、と何かが触れたようなあやふやな感触だけど…それでもこちらに
口づけてくれている事は気配で感じ取っていた。
そして泣きながら…克哉は告げた。精一杯の想いを。気持ちを…
この人を罪だと知っていても、自分の傍で…この地上に縛りつける一言を。
『貴方を愛しています…。本当なら、貴方を天国に旅立たせるのが…一番
良い方法だって判っていても、俺は一生…傍にいて欲しい。体を伴って
愛し合えなくても…それでも、一緒に…生きたいんです…』
涙をポロポロと零しながら…覚悟を決めて伝えていく。
もう…甘ったるい夢や日常で誤魔化せないなら、相手を縛りつけると
判っていても本心を伝えるしかない。
―克哉、君は本当に…バカだな…
「えぇ、自覚はあります…」
泣きじゃくってクシャクシャの顔で、それでもどうにか笑おうとする。
見ているだけで胸が詰まるような光景だった。
御堂はその時、心から思った。
本当に一度だけで良い。身体を持ってを彼に触れたいと、抱きたいと…
熱い肉を持って繋がりたいと。
生々しいまでの欲望。けれど…心からの願いだった。
『君に触れたい…』
御堂はその時、心からそれを願った。
自分に対して愚かしいまでに一途な想いを向けてくれる存在と
ただ一度でも血の通った身体でもって抱き合えたならば…地獄に
堕ちても構わないとすら思った。
―其処まで望まれるならば…一度だけ貴方の願いを叶えて差し上げましょうか…?
ふいに、御堂は一人の男の声を聞いた。
聞き覚えがある声だ、確か…妖しいことや、現実とは思わないような
発言ばかりを繰り返していた謎の多い存在だった。
何故、こんな時にそんな男の言葉が聞こえるのだろうか…?
―願いを叶えるだと、どうやって…?
―今宵、一度だけ貴方に肉体を差し上げましょう…。そして身も心も
永遠に捕らえるように…克哉さんを抱いて下さい。地獄の業火に共に
焼き尽くされる日が訪れる日まで…この方を決して離さないようにね…
それはまるで、悪魔の誘いの言葉のようだった。
けれど…今の御堂は、それでも構わなかった。
この男の手を取れば、後でどんな代価を請求されるのか判らない…
そんな得体の知れなさが滲んでいた。
だが、本当にそれで一時でも肉体が持てるなら。
克哉をこの腕に抱けるならば…構わないと思った。
―それが本当に出来るというのならば、すぐにやってみせろ…
―えぇ、滑稽なまでに貴方を思い続ける克哉さんに免じて。そして…
狂おしいまでの情熱に焼き焦がれている貴方に敬意を表して。
ただ一度だけ、貴方達に夢を見せましょう…。その事によって
生じる葛藤や苦しみも、私にとっては極上のスパイスなのです。
…愚かなまでに純粋で、真っ直ぐなその恋の顛末をどうか…貴方達の
生のある限り、眺めさせて下さいませ。
…其処まで愚鈍に求めるというのならば、見守るのもそれなりに
楽しめそうですからね・・・
そう、妖しい男は其れによって克哉が葛藤することを。
ただの一度でも感じ取れば生ある限り、御堂の元を離れることがないと…
その鎖を与える為に気まぐれに力を貸すことを提案したのだ。
純粋な好意だけではない、あくまで…見届けるのが楽しそうだと判断して、
その見世物に深みを与える為だけににこう切り出していったのだ。
それを承知の上で…御堂は頷いていく。
―あぁ、好きにすれば良い…。早く、身体を与えてくれ…
そう願った瞬間…ゆっくりと御堂の身体は具現し始めた。
久しぶりに感じる五感が、身体の感覚が…最初は信じられなかった。
しかしそれがはっきりと実感できるようになると同時に、克哉の顔がみるみる
内に驚愕に見開いていく。
「御堂、さん…嘘、で、しょう…?」
「…良いや、現実だ。…今夜だけ、だがな…一度だけでも、こうして…
君と確かに、触れあえるんだ…」
「本当、ですか…? 本当に、貴方と…」
「あぁ、そうだ。君を、身体を伴って…抱けるんだ…」
「あぁ…! 御堂、さん…御堂さん…!」
それが現実だと、最初は信じられなかった。けれど克哉は…
御堂が身体を持って存在しているのはMr.Rが気まぐれを見せてくれたからと
いうことをすぐに察していった。
あの男性が絡めば、そんな奇跡や魔法めいたことも実行に移せる筈だから。
もう一人の自分と実際に顔を合わせたことがあったり、二つの世界を
交差させたり…そんな事が出来る存在なのだ。
けれど最後に顔を合わせた時、自分はすでに相手に見切られてしまった様子
だったから期待しなかった。
けれど…この瞬間ほど、あの男性が気まぐれを起こして…こうして御堂に
実体を与えてくれた事を心から感謝していった。
「凄く、嬉しいです…貴方と、こうして抱き合えるなんて…!」
「私、もだ…ずっと、君をこうして…抱き締めたかった…」
それはいつ覚めるか判らない、束の間の夢。
けれどこの夜だけで良い。
身体を伴って、御堂と一度でも熱く抱き合えるならば…その願いが叶えられるならば
どんな代価を支払っても構わないとさえ思えた。
初めて、想いを交わした状態で深く御堂と口づけていった。
そのまま背骨が軋みそうなぐらいに激しく、腕の中に掻き抱かれていった。
「凄く、嬉しいです…御堂さん…御堂、さん…」
克哉はその温もりを感触を、一生覚えておこうと思った。
いつかまたこの恋に迷った時、この奇跡のような一日をはっきり
思い出しておけるようにする為に。
愛する人とただ一度でも想いを交わし合い、深く繋がることが出来たなら
その人生は幸運なのだ。
克哉は、その記憶だけで…これから先も迷いなく生きていける。
彼の想いは、御堂の魂を、地上に縛りつける罪と繋がっていた。
御堂の気持ちは、克哉を他の生者と抱き合う事を許さない罪へと
繋がっていた。
恋をする事自体が、罪へと繋がっているのは事実だった。
だが…その罪を含めた上で、お互いに納得ずくでその道を選ぶならば…
それは二人にとっては至上の夢へと繋がっていく。
罪を犯しても共にいたいと願うぐらいに愛し合っているのならば…
全うしてこれから先も生きていけば良い。
―この夜の記憶さえあれば、きっと長い人生も…笑顔で歩んで
いけると…克哉はそう確信していたから…
そうして克哉は、己の身を御堂に完全に委ねていく。
そして…一度だけ、肉体を伴って…二人の心と体は深く繋がり合った。
これが罪だと判っていても、離すことが出来ないならば…
これから先もずっと生きて行こう。
狂気と正気の狭間のような危うい恋を。
幾つもの咎の上に成立している自分たちの夢を。
それでも、誰も愛さずに生きるよりは…例え苦しくて泣きたくても、
壊れそうになっても…誰も愛さないで生を終えるよりかはきっと
豊かな人生を送れると思うから―
―オレを一生、離さないで下さい…御堂さん…
そして、達する寸前…克哉は心から祈りながら、御堂に告げていく
―あぁ、これからもずっと一緒だ…絶対に、君を離すものか…
それは呪詛にも等しい、克哉の魂を縛りつける一言。
けれどそれをやっと聞くことが出来て、克哉はどこまでも妖艶に…
そして美しく微笑んでいく。
―死者の魂すらも、地上に留めるぐらいに美しく…一つの儚い
夢のような花が咲いていく
其れは咎という土壌の上に咲いた、どこまでも艶やかで…
華やかな幻想(ユメ)
そして彼らの夢はこれからも続いていく。
―お互いに罪を犯し続けて、恋に苦しみ葛藤して生き続ける限り、ずっと―
この話に付き合って下さった方…ありがとうございます。
二か月余り掛かりましたが、どうにか完結です。
ここまで読んで下さった方に対して感謝の気持ちをここに
記しておきますね。
それでは最終話。どうぞ読んでやって下さいませ。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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―克哉ともう一人の自分が、別々の肉体を持って隔てられた日から
今日で一年が経過しようとしていた。
幽霊となった御堂と肉体を共有して生きることにも慣れて来て…
奇妙な日常も、ごく自然に受け入れられるようになった頃。
…克哉は鏡を通して、向こう側の自分と…御堂が抱き合っている光景を
目撃する形となった。
「…もしかして、これは…俺と、御堂さん…」
鏡とは本来、本来あるべきものを真逆の状態にしてそっくりと
そのまま映し出すもの。
だが…今、克哉の部屋の壁に掛けられている鏡にはどうやら病室
らしい風景が映し出されている。
そしてベッドの上から上半身を起こしている御堂と、スーツ姿をした
眼鏡を掛けた自分がきつく抱き合っていた。
声までは聞こえない。けれど二人の様子から、想いが通じ合って抱擁しあって
いるように見えた。
(あぁ…お前は、御堂さんと…両想いに、なれたんだな…)
その事に、喜びと安堵をおぼえていく。
けれど…胸の中に、何かチリリとしたものを覚えたのも確かだった。
幸せそうに寄り添い、口づけを交わす二人。
この一年で…彼らがどんな風に時を過ごして来たのか詳細は知らない。
それでも…見ているだけで、今の二人の間には温かな心が通っている
ことだけは伝わってきた。
「…そうか、お前も…ちゃんと御堂さんと…結ばれることが、出来たんだな…」
結局は、自分も彼も…人格は違うとは言え同じ人間で。
…だから、きっと同じ御堂孝典という人に惹かれるのは当然の事だ。
自分だって霊体であっても、厳しくも優しいあの人に接している内に次第に
好きになってしまったのだから。
彼がちゃんと幸せになってくれることを願って、一年前のあの日…自分は彼の背中を
押したのだから。
だから心から喜ぶべきなのに…口元に笑みが浮かぶのと同時に…うっすらと
涙が頬を伝い始めていった。
「…何で、オレ…涙が…?」
もう一人の自分が幸せをちゃんと掴んでいたことに対して…嬉しさを
覚えている筈なのに、それ以外の感情が胸の中にゆっくりと競り上がってくる。
認めたくなかった。この光景を見て、喜び以外の感情が…自分の中に
生まれてしまっているのが。
どれだけ克哉がその感情を押しとどめようとしても…後から、後から
溢れてくる。
実体を伴った御堂と、しっかりと抱き合っているもう一人の自分を見て…
克哉はこの一年間、ずっと目を逸らし続けていた自分の本心に気づいていく。
「…幸せに、なれて…本当に、良かったね…『俺』…」
自分が鏡を通して、相手が見えているように…その逆もあり得るかも知れない。
そう思って、精一杯の笑みをどうにか浮かべていった。
オレは、幸せだよ…と相手に伝えるように。
けれど…涙が静かに伝ってしまっているせいでどこかぎこちない笑みに
なってしまっていた。
けれど、それでも克哉は微笑む。
どんな力が働いてこうして鏡を通して、お互いの姿が映されているかまでは
彼には判らない。
しかしもう一人の自分が、最後に見るこちらの顔がクシャクシャの泣き顔に
なるのだけは…気持ち的に嫌だったから。
―オレは、幸せだよ…
そう、相手がこちらに伝えるように…御堂を強く抱きしめているのに応える
ように…笑い続けていく。
そうしている間に、午前0時が訪れていく。
そして日付が変わったのとほぼ同時に…鏡の向こうの景色はゆっくりと
歪んでいき、そして…普段通りの佇まいを取り戻していった。
今のは恐らく、Mr.R辺りが気まぐれで起こした奇跡の類だったのだろうか。
もう二度と会えないと、様子を知ることも叶わないと諦めていたもう一人の
自分と御堂のその後を、十分程度という短い時間であったけれど確かに
克哉に伝えてくれていた。
だが、もう一人の自分の姿が見えなくなった瞬間…自分の目元から
溢れんばかりの涙が流れ始めた。
克哉は無意識のうちに…自分の口元を押さえていく。
「はっ…うぅ…」
その瞬間に…克哉は、自分の本心を知ってしまった。
すでに肉体を失ってしまった御堂と…それでも恋に落ちてしまった時から
決して気づかないようにしていた。
けれど…もう一人の自分が向こうの世界の御堂と、生身を持っている彼と
抱き合っている姿を見た時についに隠せなくなってしまった。
―自分も、生身のあの人に一度でも良いから抱かれたかった事を…
あんな風に、抱き合いたかったのだと…
その本心に気づいた時、小さな罪悪感を覚えた。
例え魂だけになっても、好きな人と両想いになれただけ幸せだと
そう思っていた。満たされていると信じていた。
だが、もうその誤魔化しも聴かない。
自分の中には、それ以上を確かに望んでいる気持ちが潜んでいた。
現状では、足りないと…浅ましい心が、叫んでいる。
その荒れ狂う、胸に秘めた激情こそが…涙の正体だ。
御堂を愛しているからこそ、現状では埋められない飢餓が自分の中に
存在している。
望んだって、叶えられることではないのならば…あの人を苦しめるだけ
ならばそれは言ってはいけない言葉だった。
…肉体を共有して、相手にこちらの感情が伝わってしまうこともあるのだから
考えることも禁じていた。
けど、もうダメだ。自分は知ってしまった。
自分の中の、醜い心を。赤裸々な欲望を…。
そうして泣き続けていると…ふいに、フワリと大気に包み込まれているような
そんな感覚がしていった。
「御堂、さん…?」
それで気づく。彼の魂が今…自分を包み込んでくれている事に。
決して叶えられない願いを、今の御堂の負担にしかならない事を
望んでいる自分を労わるように…温かいものを感じていく。
相手の方から、何も言わない。
けれど…こちらを気遣ってくれているのだというその感情だけは
確かに伝わってくる。
だが、今は…そんな優しさが逆に痛かった。
「御堂、さん…止めて、下さい…。オレは…貴方を困らせることを…
考えている、のに…」
―構わない。それでも…私は君を抱きしめたいんだ…。我が身が
ないことが本当に歯痒いがな…
「…お願いです、こんなオレに…優しくなんて、しないで下さい…」
懇願するように、克哉は訴えていく。
けれど相手の気配は…どこまでも包み込むような雰囲気は
決して離れる気配はない。
大好きで、誰よりも尊敬をしている人。
何度、こういう形でしか出会えなかったことを心の奥底では本当は
悲しく思っていたことだろう。
同じ身体を共有して生きている以上、しっかりと考えてしまったことに
関しては御堂に伝わってしまう。
良くも悪くも嘘や偽りが出来ない環境だった。
だから相手にどうしても知られたくないことは…意識の底に沈める他
なかったのだ。
「…オレは、貴方に…何度も『今のままでも充分幸せだ』と言っていた癖に…
心の底では、御堂さんの負担にしかならないことばかりを強く
願っていたんです…。そんなオレに、貴方に優しくされる資格なんて…
ないです、から…」
何度も、自分は幸せだと…今のままでも満ちていると御堂に
伝えて来た。
けれど…向こうの世界の二人を見て、克哉はずっとこの一年…
覆い隠していた本心を、ついに意識に登らせてしまった。
本心から言っているつもりだった。この人に…身体がないことを引け目を
与えたくなかったから。
肉体がなくても、それでもこの人を愛している…その気持ちだけは
自分にとっては真実だったから。
けれど…本心を覆い隠せば隠すだけ、心の中に澱んだものが
広がってジワリジワリと広がって侵食していくようだった。
だから、気づいた時…堰を切ったように自分は涙を零してしまったのだ。
ずっと覆い隠していた感情が、ようやく出口を見出して…溢れだして
しまっていた。
(こんな事で泣いたら…御堂さんを、困らせるだけなのに…)
なのに、止めようと頑張ってみても涙線は完全に壊れてしまったみたいで
熱い涙が零れ続けていく。
―貴方を凄い、好きです…御堂、さん…
好きだから、困らせたくない。
けれど好き過ぎるが故に…一度でもこの人の熱を、愛情をこの身で…
しっかりと感じ取りたかった。
お互いに愛情を確認し合う為に…抱き合いたかった。
この人と生身の身体を持って、愛し合いたかったのだ…自分は!
「御堂さん、御堂さん…御免、なさい…!」
こんな事を望んでしまって御免なさい。
絶対に叶えることが出来ない願いなど、相手にとっては負担にしか
ならないだろう。
だから一生、覆い隠すつもりだった。
もう一人の自分の事だって、あちらの御堂と上手くいったのならば心から
祝福するつもりだった。
いや、祝う気持ちに嘘はない。幸せになって欲しいと心から願っていた。
けれどその感情と同じ強さで…嫉妬をしてしまった。
御堂が生きていること、触れあって確認できること。強く抱き合いながら
しっかりとキスを交わせること。
それは…自分にとっては叶わないことだから。
だからみっともないぐらいに…相手を羨んでしまったのに…こんな自分を
それでも愛しい人が気遣ってくれるのが余計に辛く感じられてしまった。
―謝る事じゃない。それに…私だって同じ気持ちだ…。君をいつしか
想うようになってから、君をしっかりと一度でも抱いて感じ取りたかったと…
だから、あんな形であっても…私は君を抱き続けたのだから…
自分たちには、あんな形でしか一つになれない。
セックスに近くても、御堂に生身の肉体が存在しない以上…あくまで
あの行為は疑似的なものでしかない。
だから、一時的に満たされて誤魔化せても…胸の奥では、何かが
足りないと少しずつ何かが積もって来ていた。
魂を重ねて、相手の身体を乗っ取って…脳を弄って快感を引き出して…
セックスに近づけても、熱い肉体を持って抱き合うことには決して叶わないのだ。
―そもそも死者が、生きている人間に執着して愛してしまうこと自体が…
罪だったのかも知れない。君の献身的な気持ちに惹かれて、いつしか
想うようになってしまった。けれど…私は本当に君と肉体を共有してこれから
長い人生を共に生きて良いのだろうかな…?
「そんな、事は言わないで下さい…。幽霊であっても…俺は、貴方が必要なんです!
どんな形でも、これから先も…貴方といたいんです!」
―克、哉…
克哉は泣きながら、叫んでいた。
御堂と生きる限り、克哉は他者と…生きている人間と抱き合えない。
今までは眼を逸らして触れないようにしていたが…この恋は、克哉をその
深い業へと落としていく。
温もりを与えることも、抱いて本当の意味でのセックスの快楽を与えられる
訳ではない。
死者と生者との恋は、お互いに目を逸らしていたから…この一年はぬるま湯に
浸かっているように穏やかに過ぎていた。
だがどうしても埋められないもの、満たせないものにお互いが気づいた時…
その欺瞞が明かされていく。
克哉は其れが暴かれた瞬間、心の限りに叫んで訴えた。
この恋は手を離したらそれで終わりなのだ。別れはイコール、御堂の成仏を
意味するのだから。
眼鏡を掛けた方の佐伯克哉への憎しみは、今の克哉が献身的に仕えることに
よって晴れていった。
本来、克哉と恋に落ちさえしなければ…御堂を現世に留めている未練はすでに
なくなっている筈なのだ。
―私がいる限り、君は…誰とも温もりを共有出来ない…。私のもので
ある限り、私は決して…君が他の誰かと抱き合うことなど許せないからな…
「えぇ、構いません。オレはその覚悟で、貴方に傍にいて欲しいんです…!」
泣き晴らしながら、それでも克哉ははっきりと言い切っていく。
愚かだと誰に詰られても良い。自分が馬鹿だという自覚もある。
一生、自分の願いが果たされることは望めない。
時に、それで悲しくても切なくなっても、愛しい人とは離れたくない。
それが克哉の真実だった。
その覚悟に充ちた言葉を聞いて…御堂が苦笑したのを感じていった。
お互いに何度、もう少し早く出会えていればと思った事だろう。
克哉があの眼鏡に頼らず、自分の足で生きて…御堂と接していたのならば
真っ当な幸せが自分たちにも訪れていたのだろうか。
過去を振り返って、もしも…と考えても仕方ないことだと判っている。
それでも自分たちは、こんな状態でも恋をしてしまったのだ。
ならば…この人が自分の傍にいてくれる限りは克哉から決して
手を放したくなどなかった。
―君には敵わないな。その真っ直ぐな気持ちが…私の心をこんなにも
変えてしまったんだな…
「…すみません、我儘で。けど…オレは、それでも…」
―判っている。君の気持ちは…共に生きている私が誰よりも知っている…
「御堂、さん…」
そして、唇にキスを落とされていく。
フワリ、と何かが触れたようなあやふやな感触だけど…それでもこちらに
口づけてくれている事は気配で感じ取っていた。
そして泣きながら…克哉は告げた。精一杯の想いを。気持ちを…
この人を罪だと知っていても、自分の傍で…この地上に縛りつける一言を。
『貴方を愛しています…。本当なら、貴方を天国に旅立たせるのが…一番
良い方法だって判っていても、俺は一生…傍にいて欲しい。体を伴って
愛し合えなくても…それでも、一緒に…生きたいんです…』
涙をポロポロと零しながら…覚悟を決めて伝えていく。
もう…甘ったるい夢や日常で誤魔化せないなら、相手を縛りつけると
判っていても本心を伝えるしかない。
―克哉、君は本当に…バカだな…
「えぇ、自覚はあります…」
泣きじゃくってクシャクシャの顔で、それでもどうにか笑おうとする。
見ているだけで胸が詰まるような光景だった。
御堂はその時、心から思った。
本当に一度だけで良い。身体を持ってを彼に触れたいと、抱きたいと…
熱い肉を持って繋がりたいと。
生々しいまでの欲望。けれど…心からの願いだった。
『君に触れたい…』
御堂はその時、心からそれを願った。
自分に対して愚かしいまでに一途な想いを向けてくれる存在と
ただ一度でも血の通った身体でもって抱き合えたならば…地獄に
堕ちても構わないとすら思った。
―其処まで望まれるならば…一度だけ貴方の願いを叶えて差し上げましょうか…?
ふいに、御堂は一人の男の声を聞いた。
聞き覚えがある声だ、確か…妖しいことや、現実とは思わないような
発言ばかりを繰り返していた謎の多い存在だった。
何故、こんな時にそんな男の言葉が聞こえるのだろうか…?
―願いを叶えるだと、どうやって…?
―今宵、一度だけ貴方に肉体を差し上げましょう…。そして身も心も
永遠に捕らえるように…克哉さんを抱いて下さい。地獄の業火に共に
焼き尽くされる日が訪れる日まで…この方を決して離さないようにね…
それはまるで、悪魔の誘いの言葉のようだった。
けれど…今の御堂は、それでも構わなかった。
この男の手を取れば、後でどんな代価を請求されるのか判らない…
そんな得体の知れなさが滲んでいた。
だが、本当にそれで一時でも肉体が持てるなら。
克哉をこの腕に抱けるならば…構わないと思った。
―それが本当に出来るというのならば、すぐにやってみせろ…
―えぇ、滑稽なまでに貴方を思い続ける克哉さんに免じて。そして…
狂おしいまでの情熱に焼き焦がれている貴方に敬意を表して。
ただ一度だけ、貴方達に夢を見せましょう…。その事によって
生じる葛藤や苦しみも、私にとっては極上のスパイスなのです。
…愚かなまでに純粋で、真っ直ぐなその恋の顛末をどうか…貴方達の
生のある限り、眺めさせて下さいませ。
…其処まで愚鈍に求めるというのならば、見守るのもそれなりに
楽しめそうですからね・・・
そう、妖しい男は其れによって克哉が葛藤することを。
ただの一度でも感じ取れば生ある限り、御堂の元を離れることがないと…
その鎖を与える為に気まぐれに力を貸すことを提案したのだ。
純粋な好意だけではない、あくまで…見届けるのが楽しそうだと判断して、
その見世物に深みを与える為だけににこう切り出していったのだ。
それを承知の上で…御堂は頷いていく。
―あぁ、好きにすれば良い…。早く、身体を与えてくれ…
そう願った瞬間…ゆっくりと御堂の身体は具現し始めた。
久しぶりに感じる五感が、身体の感覚が…最初は信じられなかった。
しかしそれがはっきりと実感できるようになると同時に、克哉の顔がみるみる
内に驚愕に見開いていく。
「御堂、さん…嘘、で、しょう…?」
「…良いや、現実だ。…今夜だけ、だがな…一度だけでも、こうして…
君と確かに、触れあえるんだ…」
「本当、ですか…? 本当に、貴方と…」
「あぁ、そうだ。君を、身体を伴って…抱けるんだ…」
「あぁ…! 御堂、さん…御堂さん…!」
それが現実だと、最初は信じられなかった。けれど克哉は…
御堂が身体を持って存在しているのはMr.Rが気まぐれを見せてくれたからと
いうことをすぐに察していった。
あの男性が絡めば、そんな奇跡や魔法めいたことも実行に移せる筈だから。
もう一人の自分と実際に顔を合わせたことがあったり、二つの世界を
交差させたり…そんな事が出来る存在なのだ。
けれど最後に顔を合わせた時、自分はすでに相手に見切られてしまった様子
だったから期待しなかった。
けれど…この瞬間ほど、あの男性が気まぐれを起こして…こうして御堂に
実体を与えてくれた事を心から感謝していった。
「凄く、嬉しいです…貴方と、こうして抱き合えるなんて…!」
「私、もだ…ずっと、君をこうして…抱き締めたかった…」
それはいつ覚めるか判らない、束の間の夢。
けれどこの夜だけで良い。
身体を伴って、御堂と一度でも熱く抱き合えるならば…その願いが叶えられるならば
どんな代価を支払っても構わないとさえ思えた。
初めて、想いを交わした状態で深く御堂と口づけていった。
そのまま背骨が軋みそうなぐらいに激しく、腕の中に掻き抱かれていった。
「凄く、嬉しいです…御堂さん…御堂、さん…」
克哉はその温もりを感触を、一生覚えておこうと思った。
いつかまたこの恋に迷った時、この奇跡のような一日をはっきり
思い出しておけるようにする為に。
愛する人とただ一度でも想いを交わし合い、深く繋がることが出来たなら
その人生は幸運なのだ。
克哉は、その記憶だけで…これから先も迷いなく生きていける。
彼の想いは、御堂の魂を、地上に縛りつける罪と繋がっていた。
御堂の気持ちは、克哉を他の生者と抱き合う事を許さない罪へと
繋がっていた。
恋をする事自体が、罪へと繋がっているのは事実だった。
だが…その罪を含めた上で、お互いに納得ずくでその道を選ぶならば…
それは二人にとっては至上の夢へと繋がっていく。
罪を犯しても共にいたいと願うぐらいに愛し合っているのならば…
全うしてこれから先も生きていけば良い。
―この夜の記憶さえあれば、きっと長い人生も…笑顔で歩んで
いけると…克哉はそう確信していたから…
そうして克哉は、己の身を御堂に完全に委ねていく。
そして…一度だけ、肉体を伴って…二人の心と体は深く繋がり合った。
これが罪だと判っていても、離すことが出来ないならば…
これから先もずっと生きて行こう。
狂気と正気の狭間のような危うい恋を。
幾つもの咎の上に成立している自分たちの夢を。
それでも、誰も愛さずに生きるよりは…例え苦しくて泣きたくても、
壊れそうになっても…誰も愛さないで生を終えるよりかはきっと
豊かな人生を送れると思うから―
―オレを一生、離さないで下さい…御堂さん…
そして、達する寸前…克哉は心から祈りながら、御堂に告げていく
―あぁ、これからもずっと一緒だ…絶対に、君を離すものか…
それは呪詛にも等しい、克哉の魂を縛りつける一言。
けれどそれをやっと聞くことが出来て、克哉はどこまでも妖艶に…
そして美しく微笑んでいく。
―死者の魂すらも、地上に留めるぐらいに美しく…一つの儚い
夢のような花が咲いていく
其れは咎という土壌の上に咲いた、どこまでも艶やかで…
華やかな幻想(ユメ)
そして彼らの夢はこれからも続いていく。
―お互いに罪を犯し続けて、恋に苦しみ葛藤して生き続ける限り、ずっと―
本日の昼時点で想定していたよりもP数が
若干増えてしまったので、新刊原稿完成まで若干手間取りました。
けど、やっと二十二日になった直後辺りに本文打ち終わりました。
後は編集して一度打ち出してチェックしてから、入稿出来るように
色々とやります。
とりあえずこっちの原稿を一度打ち出す段階まで行ったら
連載取りかかります。
今週中って言っていましたけど、ちょっと遅れます。
けど月曜日の昼までには最終話アップ出来るように
頑張ります。
勢いに乗っている内に、マジで色々片付けておきたい…。
今回の新刊内容は、1P36行×40文字設定で37P分ぐらいです。
これをA5サイズの二段組みで編集しますので結構なボリュームかと。
夜明けまで色々と今晩は頑張っているかと思います。
現在ラストスパート中です。えいえいおー!
追記 22日 22:30現在
無事、全ページを確認した上で印刷所にデーター送信完了。
これから執筆します。
若干増えてしまったので、新刊原稿完成まで若干手間取りました。
けど、やっと二十二日になった直後辺りに本文打ち終わりました。
後は編集して一度打ち出してチェックしてから、入稿出来るように
色々とやります。
とりあえずこっちの原稿を一度打ち出す段階まで行ったら
連載取りかかります。
今週中って言っていましたけど、ちょっと遅れます。
けど月曜日の昼までには最終話アップ出来るように
頑張ります。
勢いに乗っている内に、マジで色々片付けておきたい…。
今回の新刊内容は、1P36行×40文字設定で37P分ぐらいです。
これをA5サイズの二段組みで編集しますので結構なボリュームかと。
夜明けまで色々と今晩は頑張っているかと思います。
現在ラストスパート中です。えいえいおー!
追記 22日 22:30現在
無事、全ページを確認した上で印刷所にデーター送信完了。
これから執筆します。
こんにちは香坂です。
現在修羅場の海を思いっきり漂っております。ゲフ。
ただここ数日で頭の中で熟成発酵が程良く進んでくれて
現在、オフの原稿せっせと進めております。
…現在21日昼時点で、70~80%完成。本日は幸いにも
両親がいないので一日集中して原稿に専念出来そうなので
今日中には本文打ち終えられそうなペースです。
という訳で、本日日中はそちらに専念。完成したら咎人の
最終話の執筆に掛かります。
若干、また日付を超えるかも知れませんがオフの原稿も
連載のラストも、自分の中にしっかりとイメージが湧いている内に
書き上げてしまいたいので頑張ります。
後、オフラインの新刊原稿の方は…気づいたら、以前に
サイト上で連載したある克克の話にリンクした作品に仕上がりました。
話の雰囲気的に切ない系&泣き系です。
私、本当に甘いだけの話って書けないよな~と思いつつ…
あぁ、もうこういうのが自分の趣味なんだよ! と半ば開き直っております。
現在の進行状況、そんな感じ。
後は本文の中に一枚、ラフとかでも良いから絵を入れるか何かを
してみたいです。時間に猶予あるようだったら、何か描き下ろす予定です。
あとあと~3月の通販のお礼に、ちょっとした気持としてSSをアップした
URLを送信するお話。
今回のイベントで配布する無料配布と内容は同じもので心苦しいですが、
それを3月に通販利用して下さった方に送らせて頂こうかと。
通販利用する人は遠方に住んでいらっしゃる方が多いから…ノマ受け
来れない人とかいるかも~と思ったのでそう考えたのでどうでしょうか?
…ここ2~3か月、結構酷いスランプだったので(ちょっと本気でサイト
閉めようかと悩むぐらい実は深刻だった)サイトにアップする話を
捻り出すのがやっとの状態だったので、そっちまで手が回らなくて延び延びに
なっていたのですが…そういう形で処理させて頂こうかと。
もう一つ、やっと在庫が置いてあった倉庫の工事が終わって既刊を取り出せる
状況になったので…6月のオンリー後は、久しぶりに通販取り扱います。
もしノマ受けに来れないけど、新刊には興味あるので…という方がいましたら
そちらを利用して頂ければと思います。
やっと気力等が戻って来たので、ちょっと疎かになりがちだった事にボチボチ
取りかかっていきます。
後、こちらに拍手でメッセージ下さったり、メール、コメントをしてくれた方。
これも修羅場終わったら、改めて返信させて頂きます。
本当に色々貯め込んで、待たせてしまってすみません。
もう少しお待ちして頂けたら、と思います。(本気で要領が良くないもので…)
んじゃ、再び修羅場の海に潜って参ります。
また後で皆様、どうぞお会いしましょう。
現在修羅場の海を思いっきり漂っております。ゲフ。
ただここ数日で頭の中で熟成発酵が程良く進んでくれて
現在、オフの原稿せっせと進めております。
…現在21日昼時点で、70~80%完成。本日は幸いにも
両親がいないので一日集中して原稿に専念出来そうなので
今日中には本文打ち終えられそうなペースです。
という訳で、本日日中はそちらに専念。完成したら咎人の
最終話の執筆に掛かります。
若干、また日付を超えるかも知れませんがオフの原稿も
連載のラストも、自分の中にしっかりとイメージが湧いている内に
書き上げてしまいたいので頑張ります。
後、オフラインの新刊原稿の方は…気づいたら、以前に
サイト上で連載したある克克の話にリンクした作品に仕上がりました。
話の雰囲気的に切ない系&泣き系です。
私、本当に甘いだけの話って書けないよな~と思いつつ…
あぁ、もうこういうのが自分の趣味なんだよ! と半ば開き直っております。
現在の進行状況、そんな感じ。
後は本文の中に一枚、ラフとかでも良いから絵を入れるか何かを
してみたいです。時間に猶予あるようだったら、何か描き下ろす予定です。
あとあと~3月の通販のお礼に、ちょっとした気持としてSSをアップした
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今回のイベントで配布する無料配布と内容は同じもので心苦しいですが、
それを3月に通販利用して下さった方に送らせて頂こうかと。
通販利用する人は遠方に住んでいらっしゃる方が多いから…ノマ受け
来れない人とかいるかも~と思ったのでそう考えたのでどうでしょうか?
…ここ2~3か月、結構酷いスランプだったので(ちょっと本気でサイト
閉めようかと悩むぐらい実は深刻だった)サイトにアップする話を
捻り出すのがやっとの状態だったので、そっちまで手が回らなくて延び延びに
なっていたのですが…そういう形で処理させて頂こうかと。
もう一つ、やっと在庫が置いてあった倉庫の工事が終わって既刊を取り出せる
状況になったので…6月のオンリー後は、久しぶりに通販取り扱います。
もしノマ受けに来れないけど、新刊には興味あるので…という方がいましたら
そちらを利用して頂ければと思います。
やっと気力等が戻って来たので、ちょっと疎かになりがちだった事にボチボチ
取りかかっていきます。
後、こちらに拍手でメッセージ下さったり、メール、コメントをしてくれた方。
これも修羅場終わったら、改めて返信させて頂きます。
本当に色々貯め込んで、待たせてしまってすみません。
もう少しお待ちして頂けたら、と思います。(本気で要領が良くないもので…)
んじゃ、再び修羅場の海に潜って参ります。
また後で皆様、どうぞお会いしましょう。
※4月24日からの新連載です。
無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28
―御堂が事故に遭った日は奇しくも、もう一つの世界から彼らが
帰還した日と同じだった
その朝に、御堂が自動車事故に遭って意識不明状態になっていると
報を聞かされた時…克哉はその場で卒倒し兼ねない程のショックを受けていた。
だが自分の上司である御堂が抜けた穴を、自分が埋めなければいけない。
幸いにも命に関わる怪我はしていない。
その事実だけを頼りに、彼はその日…御堂の元に駆けつけたい衝動を
必死に抑えつけて、普段の二倍も三倍も働き続けた。
そして…彼が朝から無我夢中で昼食すら返上して働き続けて…
全てが落ち着いたのは夜八時を過ぎてからだった。
病院を面会出来る時間はとっくの昔に過ぎている。だが…日中に
藤田に使いを出したおかげで、克哉は御堂が現在…どこの病室に入っているか
その情報を知っていた。
意識不明状態であるが、大きな怪我はないので…今は個室に
移されて様子を見ている段階らしい。
午後七時の時点で、面会時間ギリギリに駆けつけた藤田の情報から…
彼は其処までは把握して、そして…病院に忍び込んでいった。
―深夜の病院は薄暗く、異様に重苦しい雰囲気を纏っていた
それでも病院内を定期的に巡回している夜勤の職員に見つからない
ように気を付けていきながら、彼は車椅子を使用している人間用の
避難スロープを用いて、忍び込んでいった。
病院の裏手という隠された位置にあるせいか、もしくは職員が
こっそりと抜け出すように使っているせいか不明だが…人目につきにくそうな
場所で、入口が開かれている扉があるのは幸運だった。
それでも…藤田から聞かされた情報だけでは、不安でこのままでは
眠れそうになかった。
よりにもよって1年前、自分たちが帰ってきた日に御堂が事故に遭った。
それは…向こうの世界で、御堂を目の前で失ってしまった経験を持つ
克哉にとっては耐え難い程に衝撃的な出来事だったのだ。
(御堂、あんたが無事なのを確認するまでは…今夜は、寝れそうにない…)
自分がやっている事が褒められたことでないという自覚はあった。
けれど…胸の中がざわめいて、どうしても止まらなかった。
足音を忍ばせていきながらどうにか目的の病室へと辿りつき、
慎重に扉を開けて中に滑り込んでいく。
窓際からは透明な月光が注いでいて…ベッドの上に横たわっている
御堂の怜悧な寝顔を、そっと照らし出していた。
その硬質な美貌を確認して、やっと克哉は安堵の息を吐いていく。
「…無事、だったか…」
藤田から、外傷は殆どないとすでに報告は受けていた。
本来ならここまで不安を感じる必要はないと知っていても、やはり…
この人を一度失った体験は自分にとって大きなトラウマになっていたのだ。
だからこの目で見るまで、どうしても…安心出来なかった。
愚かな心配だという自覚はあった。けれど…この人が、大きな外傷もなく
こうして生きていてくれた事…それだけでも、泣きそうなぐらいに嬉しかった。
まるで夢遊病者のように、眠っている御堂に引き寄せられて彼は枕元へと
歩み寄っていった。
自分が近づいても、傍らに立っても相手が目覚める気配はない。
(…そういえば藤田の報告だと、朝に事故に遭って…強く全身を打ちつけてから
ずっと…御堂は意識がないままだと言っていたな…)
朝から一度も、御堂は目覚めていない。
昏睡状態が続いていると思いだして…ふと、邪な想いが湧きだしていった。
…藤田も傍らに立って何度か呼びかけたが、まったく御堂が目覚める気配は
なかったという。それならば…自分が口づけても、この場限りのこととして終わるのでは
ないかと…卑怯な考えが過ぎっていく。
無防備な寝顔を見て…普段は押し込めている想いが溢れてくる。
…想いを自覚してから、二度とこの人を傷つけまいと殺し続けてきた欲望が…
ゆっくりと競り上がって来る。
それ以上は望まない。せめて…一度だけでもキスをしたい。
意識のない相手に向かって望んではいけない筈の想いが、彼の心の中に
満ちていった。
「…一度だけ、許してくれ…御堂…」
そして、散々葛藤した上で…決断を下して相手の傍らに立ち…ベッドの上に
手をついていきながら顔を伏せて…相手の唇に、己のそれを重ねていった。
触れるだけの口づけでも、脳髄が痺れそうになるぐらいに甘美に感じられた。
かつて欲望を満たすためだけに…何度も深く口づけた。
けれど…今、こうして触れるだけのキスをしている方が心は何倍も満ちていた。
「御堂…」
そして、愛しげに相手の名を呟いていく。
そう…自分にとって、この人が生きているだけで良いのだ。それを感じられれば
充分なのだ。触れるだけの口づけでも、相手の温もりと吐息を強く感じられる。
彼は生きているのだと、そう強く実感して幸福で眩暈がしそうだった。
月光が静かに差し込む室内で…暫く二人のシルエットは重なり続けていく。
名残惜しげに唇を離して…そっと相手の顔を覗き込む。
しかしその時、予想もしていなかった反応が相手の顔に現われる。
「…………」
ゆっくりとその長い睫毛が揺れて…相手の意識が覚醒していく。
最初は焦点が合わない、虚ろな眼差しだったが…すぐに力強いものへと
変化していく。
「さ、えき…か…?」
そして相手はどこか困惑した様子で…声を掛けていく。
一体これはどんなおとぎ話なんだ、と思った。
恐らく彼が昏睡状態になって…多くの人間が目覚めてくれることを願って
声を掛け続けていた事だろう。
それが…よりにもよって、彼をかつて廃人寸前まで追い詰めた自分のキスが
この人を目覚めさせるなんて、一体どんな性質の悪い冗談なのだろうか。
お互いに驚愕の表情を浮かべていきながら、無言のまま見つめ合っていく。
(どうして、今…あんたが、目覚めるんだ…)
たった一度きりの、自分だけが知っていれば良い。
そういう意図のキスの筈だった。
なのにその間に相手が目覚めてしまったのならば…それで通らなくなってしまう。
けれどこちらを見つめる御堂の瞳は、真摯で力強いものだった。
その輝きからは恐れていた嫌悪や憎しみの感情は感じられない。
それが余計に、彼の混乱を強めていく一番の理由となっていった。
「怒らない、のか…?」
「…どうして、君を怒る必要が…あるんだ…?」
「…俺は今、あんたの意識がない間に…勝手に…」
それ以上は、言いづらくて口に出来なかった。
けれど御堂は微かに微笑みながら、続きを言葉にしていく。
「…君が私に、キスをした事か…?」
「っ…!」
相手にストレートに言われて、何も言えなくなる。
だが予想していた反応は、御堂からは返って来なかった。
克哉の表情に、怯えたような色が滲む。腫れものに触れたような口づけは
相手の意識がないからこそ出来た行為だった。
それを相手に知られてしまったら、居たたまれなくて仕方なく…身の置き場すら
なくなってしまいそうだ。
そしてまた、二人とも沈黙していく。何を言えば、問いかければ良いのか
まったく判らない。頭の中がグルグルして、混乱していた。
どれくらいの長い間、自分たちはそうして口を閉ざしたまま睨み合って
いったのだろうか。重い沈黙を破ったのは御堂の方からだった。
「…佐伯、私は…君との事を全て…思い出した…」
「…っ! 何、だって…」
それは、この一年間…佐伯克哉が恐れつづけていた出来事だった。
失っていた記憶を彼が取り戻せば、二度と自分はこの人の傍には
いられなくなるから。
「…君に凌辱された事、その場面を撮影されて脅迫された事…MGNで
長年掛けて積み重ねていったことを全て打ち砕かれそうになった事…
全てを、思い出した…そして、君をこの手に掛けようとした事もな…」
「そ、んな…嘘、だろう…?」
克哉は認めたくなくて、否定の言葉を口にする。
しかしその時、猛烈な違和感を覚えた。
その事を告げる御堂の表情は何故か…優しかったのだ。
どうしてこの人はこんな顔をしているのか判らなかった。
自分のした事を考えれば、憎らしげに睨まれる方が相応しいのに…
何故かベッドに横たわり続ける御堂の瞳は、驚くほど穏やかだった。
「…事実だ。私は、君を刺した日の事を鮮明に思い出せる。この手が
真っ赤に染まり…鈍い感触を掌に感じた事を…」
「は、ははは…」
その言葉を聞いた途端、全てが終わりだと思った。
もう…自分はこの人の傍にいられる資格を永遠に失ってしまったのだと
実感していった。
まるで壊れた人形のように力なく笑いが零れ続ける。
いっそ正気など完全に失ってしまった方が楽だった。
けれど…この日はいつ訪れても本来おかしくなかったのだ。だから
どうにかギリギリの処で踏みとどまって、その日が訪れたら言おうと
考え続けていた一言を口に登らせていった。
「…なら、俺はもう…貴方の傍にいられませんね…。仕事の引き継ぎが
出来次第…退職します。それまで、我慢して下さるよう…お願いします」
「…退職、だと。どうして…そんな事を君は言うんだ?」
「どうしてって…俺はあんたに、許されないことをしたんだ…。それなのに、
何故これ以上…傍にいることが出来るんだ…?」
「…なら、逆に問おう。それならどうして…私に刺されて重傷を負っていながら…
君は私の傍に居続けた。私は君を一度は殺そうとした人間だぞ…」
「それ、は…俺があんたを追い詰めて、その原因を作ったからだろう…」
そう、あの事件の発端は全て自分が作った。
その自覚があったからはっきりと彼は答えていく。
だが…次の瞬間、御堂はきっぱりと言い切っていった。
「なら、逆に…言い返そう。追い詰められた果てに、そこから逃げる為に
殺人を犯そうとしたのいうのならば…脅迫よりも凌辱よりも、人を殺める方が
罪は重い。何故なら…殺したら、死んだらもうやり直せないからだ」
「っ…」
御堂がその一言を放った瞬間、自分が殺してしまった向こうの世界の
彼の事を思い出していった。
そうして竦んでいると、御堂の手がこちらの方に伸ばされていく。
そして…ぎこちない動きで身体を起こし、克哉の頬に触れていった。
指先は温かくて優しくて、それだけで涙が零れてしまいそうだった。
「…私は、君を殺そうとした。…なら、君も…私を詰り、その罪を
糾弾する資格はある…。自分ばかりが加害者だと思うな。
私も、君の前では…咎人、だ…」
「…そんな、事はない。俺は…あんたを…」
そうして、脳裏に…ずっとこの一年間消えることがなかった向こうの世界の
御堂の死に顔が蘇っていく。
けれどこの世界では御堂は生きている。
こちら側で起こった、自分の刺殺未遂事件だって…今ではなかった事に
なっている。
けれどどれだけなかった事になっても、記憶に刻まれたお互いの罪は
決して消えることはない。
御堂に頬を撫ぜられてそれ以上、何も言えなかった。
そんな克哉の方へ彼はそっと顔を寄せて…唇を重ねていった。
「っ…な、ぜ…?」
「…これ以上…自分を、責めるな…君がどれだけ…この一年、私に対して…
償おうとしてくれていたか…もう、知っているから…」
その瞬間、克哉は耐え切れず…涙を零していった。
こんなの不意打ち以外の何物でもなかった。
ずっと誰にも言えなかった胸の底に秘めていた想いが溢れて来る。
それが泪の結晶となって、彼の頬を濡らし続ける。
「嘘、だ…こんなのは、俺の…都合の良い…夢…だ…」
「違う。…私は、君を許したんだ。…この一年間、君は…誰よりも私の仕事を支えて
必死に働いてくれた。…そう、思い出すまで私は…君を心から信頼していた。
だから…思い出して腸が煮えくりかえるような想いだってある。…だが、それ以上に
今の私は…君を、失いたくないんだ…。どんな形でもな…」
「あんたが、俺を信頼…それこそ、何の冗談なんだ…?」
「事実だ。私は君以上に有能で…こちらの意図を的確に読み取って
動き続けてくれた部下…いや、仕事上のパートナーは存在しなかった」
真っ直ぐに清冽に見つめられて、魂まで捉えられそうだった。
だが相手は真剣な顔で、こちらに伝えてくる。
心臓が破裂しそうなぐらい暴れ始めているような気がした。
この誰よりも全てに厳しくて、有能で輝いていた人に認められる言葉を
告げられるだけで昇天してそのまま逝ってしまいそうなくらいだ。
「…むしろ、全てを思い出して…怯えているのは私の方だ。私は…
君を右腕として失いたくないんだ…。例え君が、かつて私に対して
非道な行いをした人間だと判ってもな…」
「嘘、だろ…。そんな都合の良い話が…ある訳が、ない…」
御堂の唇から零れる言葉の一つ一つが、信じられないものだった。
紡がれる度に彼はショックで茫然となっていく。
嬉しさよりも信じられないという想いの方が強く、克哉は動揺の色を
どんどん濃くしていった。
「…私は本心を言っている。これは全て事実だ。信じてくれ…」
そういって御堂がこちらの背中に腕を回していく。
強い力で抱き締められて、目頭が再び熱くなるようだった。
けれどこうしてこちらを抱きしめる御堂の腕は熱くて…これは夢ではないと
はっきり克哉に教えてくれていた。
その瞬間、堰を切ったように克哉はその身体を抱きしめ返していく。
「御堂…!」
「佐伯…許して、くれ…」
「違う、それは…俺の方こそ、あんたに言わなければいけない…事だ…」
お互いに後悔の気持ちを持ちながら、強く抱きあい…謝罪の言葉を
口にしていく。
そう、どちらが加害者で被害者という関係ではない。
…両者とも、相手に対して罪を犯しているのは事実なのだ。
後一歩で取り返しがつかない事態を招きかねなかった罪であり、咎。
そう…記憶を失った上で、御堂に献身的に尽くして支えたことが…再び記憶が
蘇った時、克哉を許す最大の理由となったのだ。
そして元来、公正な性格をした御堂は…己の咎をも認めた。
自分ばかりが被害者ではないのだと、過ちを犯しているのだと自覚して…その上で
克哉だけを責めるのは筋違いだと考え、相殺する事に決めたのだ。
人は誰でも過ちを犯す。人を傷つけて泣かせたり、どうしようもなく追い詰めて
取り返しのつかない事態を招いてしまうこともなる。
生きている限り、時に加害者となることは決して避けられない。
罪を犯さずに生きられる存在など、生きてきた年数を何十年と重ねていたら
決して不可能なのだから。
罪悪感は人を縛って、人を過去に雁字搦めにしていく。
けれど…罪を自らが長い年月を掛けて認めて受け入れていくか、傷つけた相手に
許されるかした時…人はようやく解放されるのだ。
長らく自分を縛りつけていた罪から解き放たれるには…酷く困難で、償うのは
並大抵のことではない。
けれど…この一年の、克哉の何も望まない献身的な行為こそが…御堂にとって
彼を許すキッカケとなった。
だから全てを思い出した御堂の瞳に、憎しみの色がなかったのは…この一年を
共に過ごした信頼が生まれていたからだったのだ。
「…私が事故を起こしたのは…一年前のことを全て思いだして、その頭痛で
運転中に数秒…意識を失ってしまったからだ。そして意識を失っている間…
私は怒涛のように、忘れていた記憶の奔流を感じていた。
それで君に対しての怒りと憎しみを、そして…君を刺してしまった罪を
ようやく思い出したんだ…」
「そう、か…やっぱり数日前のあの頭痛は…その予兆、だったんだな…」
「あぁ、その通りだ…」
「けれど…俺を刺したことは気にしなくて良い。俺はそうされるだけの事を
あんたに対してしたんだ。だからあれは自業自得で…あんたを
責めることじゃない…」
その言葉を心から信じて、男は口にしていく。
御堂は彼の一言を聞いて、はっきりと告げていった。
「君は…強いな。殺されかけても…私を責めもせずに…
許す、とはな…」
「…そんな、大したことじゃない」
「良いや、大した事だ。だから…君が私の罪を責めないのならば…
私だけが恨みに思う道理はない。それが私の出した…結論だ…」
「そう、か…」
全てが信じられなかった。
けれどこうやって触れ合っているのは事実で。
本当にこれは現実に起こった事なのかと頬を抓りたくさえなった。
けれど静かな瞳でこちらを見つめて、そっと抱き締めてくれている
御堂の温もりは現実だった。
何も、望まないつもりだった。二度とこの人から何も奪わない。
そう決めたつもりだったのに…こんな結末が待っているなんて
予想もしていなかった。
嬉しくて、先程とは違った意味で涙が頬を伝っていく。
その瞬間、彼はもう一人の自分が最後に言った言葉を…何があっても
御堂の傍から離れるなと告げた時の事を思い出していく。
(…あの時、罪悪感に負けて…御堂の元から去るのを選択していたら…
この日を迎えることも、なかったんだな…)
いつだっていつ壊れるか判らない現実に怯えていた。
けれど彼は贖う為に苦しくても、彼の傍に居続けて支え続けた。
そう、憎しみは晴れるのだ。罪を犯した者が、傷つけた者に向き合い
贖う事によって。
けれど大半の人間は己の罪に向き合うよりも…苦痛から逃げる方を
選択するものだ。けれど逃げた人間は一時楽になったとしても…
その罪を浄化するのに長い年月を掛けなければならない。
これだけ早く、相手の心の憎しみが晴れたのは…彼が己の胸の痛みよりも
彼を支える事を迷いなく選んだ…結果なのだ。
暫し様々な複雑な思いを抱きながら、彼らは抱き合い続けた。
そして先に口を開いたのは、克哉の方からだった。
「…なら、お互いの罪を流そう。そして…一から、あんたとの関係を
再びやり直させてくれ…。それが俺の願いだ…」
「本当にそれで、良いのか…?」
「あぁ、それ以上の望みなんて、存在しない…」
一度は彼を失ったことを思えば、必要とされて傍にいることを許される以上の
幸せなど存在しない。
今なら、言えると思った。決して口にすまいと思っていた言葉を。
けれどそれ以上に伝えたくて仕方なかった一言を彼はやっと喉の奥から
絞り出して告げていった。
「俺は…あんたを愛しているんだ。あんたの傍にいることを許される
以上の喜びなんて、存在しない…」
「さ、えき…」
そう伝えた時、御堂は微笑んでくれた。嫌悪しないでくれていた。
それだけで…自分にとっては僥倖なのだ。
嬉しくて彼はもう一度、自分から顔を寄せていく。
御堂はそれを拒まず、静かに瞳を伏せて克哉からの口づけを
受け入れていった。
―この瞬間に全てが一度終わり、そして始まっていった
これから先、自分たちの関係がどうなるかなどまだ判らない。
けれど御堂は、克哉の存在を…想いを否定せずに受け入れた事、それは
紛れもない事実だった。
そして強くその身体を抱きしめながら、克哉は告げていく。
『あんたがこの世界に存在してくれれば、それで良い…』
それは一度、喪失を味わった人間だから零す一言。
御堂はそれを困惑した表情を浮かべながらも…受容していった。
あまりにストレートすぎる一言に、御堂の方は絶句して耳まで赤く
染まっていった。
ついには照れ隠しに、コホンと咳ばらいをして彼の方からも伝えていく。
「…君が、こんなに熱烈な言葉を平然と口にする男だとは思ってもみなかった…」
「俺は、自分が思ったことを正直に口にしただけだぞ…?」
相手の照れた顔がまた可愛くて、克哉は強気に微笑んでみせる。
二人の間に初めて、甘い空気が満ち始める。
そうして頬を染めて俯いている御堂の顎を捉えて、そっとこちらの方を
向かせていくと…彼は決意を伝えるように、はっきりと宣言していった。
「あんたが俺が傍にいることを許してくれている限り、俺からは絶対に…
あんたの傍から、離れない…」
「あぁ、そうして…くれ…。罪悪に囚われて、勝手に離れたりしたら…
本気で怒るからな…」
「その言葉、あんたにそっくり返すよ。…愛しているぞ…御堂…」
「…っ!」
そうして反論しようとした御堂の唇を、克哉は塞いでいく。
そして…口づけている間に、ようやくこの人を腕の中に収めることが出来たのだと
永遠に叶わないと思っていた夢が叶ったことを思い知っていく。
この想いが成就することは、咎を犯した自分にとっては永遠に見果てぬ夢の
筈だった。それが叶うなどどれほどの幸せなのだろうか。
彼はその幸せを噛みしめながら、抱きしめ続ける。この幸福が、儚いもので
終わらないように、一日でも長く続くように願いながら…。
その瞬間、運命の日は終わりを告げていく。
そして一瞬だけ…病室の鏡が眩く輝き、世界に白い光が満ちていった。
「っ!」
その時、彼は束の間…二度と会えないと決別した存在の面影を
鏡の中に見ていく。
だがすぐに気を取り直して、相手に口の動きで判るように短い一言だけ
告げていった。
そして彼はただ強く、御堂の身体を強く抱きしめ続けていった。
―その鏡に映っている存在に、今…自分は幸せだと確かに伝えていく為に…
無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28
―御堂が事故に遭った日は奇しくも、もう一つの世界から彼らが
帰還した日と同じだった
その朝に、御堂が自動車事故に遭って意識不明状態になっていると
報を聞かされた時…克哉はその場で卒倒し兼ねない程のショックを受けていた。
だが自分の上司である御堂が抜けた穴を、自分が埋めなければいけない。
幸いにも命に関わる怪我はしていない。
その事実だけを頼りに、彼はその日…御堂の元に駆けつけたい衝動を
必死に抑えつけて、普段の二倍も三倍も働き続けた。
そして…彼が朝から無我夢中で昼食すら返上して働き続けて…
全てが落ち着いたのは夜八時を過ぎてからだった。
病院を面会出来る時間はとっくの昔に過ぎている。だが…日中に
藤田に使いを出したおかげで、克哉は御堂が現在…どこの病室に入っているか
その情報を知っていた。
意識不明状態であるが、大きな怪我はないので…今は個室に
移されて様子を見ている段階らしい。
午後七時の時点で、面会時間ギリギリに駆けつけた藤田の情報から…
彼は其処までは把握して、そして…病院に忍び込んでいった。
―深夜の病院は薄暗く、異様に重苦しい雰囲気を纏っていた
それでも病院内を定期的に巡回している夜勤の職員に見つからない
ように気を付けていきながら、彼は車椅子を使用している人間用の
避難スロープを用いて、忍び込んでいった。
病院の裏手という隠された位置にあるせいか、もしくは職員が
こっそりと抜け出すように使っているせいか不明だが…人目につきにくそうな
場所で、入口が開かれている扉があるのは幸運だった。
それでも…藤田から聞かされた情報だけでは、不安でこのままでは
眠れそうになかった。
よりにもよって1年前、自分たちが帰ってきた日に御堂が事故に遭った。
それは…向こうの世界で、御堂を目の前で失ってしまった経験を持つ
克哉にとっては耐え難い程に衝撃的な出来事だったのだ。
(御堂、あんたが無事なのを確認するまでは…今夜は、寝れそうにない…)
自分がやっている事が褒められたことでないという自覚はあった。
けれど…胸の中がざわめいて、どうしても止まらなかった。
足音を忍ばせていきながらどうにか目的の病室へと辿りつき、
慎重に扉を開けて中に滑り込んでいく。
窓際からは透明な月光が注いでいて…ベッドの上に横たわっている
御堂の怜悧な寝顔を、そっと照らし出していた。
その硬質な美貌を確認して、やっと克哉は安堵の息を吐いていく。
「…無事、だったか…」
藤田から、外傷は殆どないとすでに報告は受けていた。
本来ならここまで不安を感じる必要はないと知っていても、やはり…
この人を一度失った体験は自分にとって大きなトラウマになっていたのだ。
だからこの目で見るまで、どうしても…安心出来なかった。
愚かな心配だという自覚はあった。けれど…この人が、大きな外傷もなく
こうして生きていてくれた事…それだけでも、泣きそうなぐらいに嬉しかった。
まるで夢遊病者のように、眠っている御堂に引き寄せられて彼は枕元へと
歩み寄っていった。
自分が近づいても、傍らに立っても相手が目覚める気配はない。
(…そういえば藤田の報告だと、朝に事故に遭って…強く全身を打ちつけてから
ずっと…御堂は意識がないままだと言っていたな…)
朝から一度も、御堂は目覚めていない。
昏睡状態が続いていると思いだして…ふと、邪な想いが湧きだしていった。
…藤田も傍らに立って何度か呼びかけたが、まったく御堂が目覚める気配は
なかったという。それならば…自分が口づけても、この場限りのこととして終わるのでは
ないかと…卑怯な考えが過ぎっていく。
無防備な寝顔を見て…普段は押し込めている想いが溢れてくる。
…想いを自覚してから、二度とこの人を傷つけまいと殺し続けてきた欲望が…
ゆっくりと競り上がって来る。
それ以上は望まない。せめて…一度だけでもキスをしたい。
意識のない相手に向かって望んではいけない筈の想いが、彼の心の中に
満ちていった。
「…一度だけ、許してくれ…御堂…」
そして、散々葛藤した上で…決断を下して相手の傍らに立ち…ベッドの上に
手をついていきながら顔を伏せて…相手の唇に、己のそれを重ねていった。
触れるだけの口づけでも、脳髄が痺れそうになるぐらいに甘美に感じられた。
かつて欲望を満たすためだけに…何度も深く口づけた。
けれど…今、こうして触れるだけのキスをしている方が心は何倍も満ちていた。
「御堂…」
そして、愛しげに相手の名を呟いていく。
そう…自分にとって、この人が生きているだけで良いのだ。それを感じられれば
充分なのだ。触れるだけの口づけでも、相手の温もりと吐息を強く感じられる。
彼は生きているのだと、そう強く実感して幸福で眩暈がしそうだった。
月光が静かに差し込む室内で…暫く二人のシルエットは重なり続けていく。
名残惜しげに唇を離して…そっと相手の顔を覗き込む。
しかしその時、予想もしていなかった反応が相手の顔に現われる。
「…………」
ゆっくりとその長い睫毛が揺れて…相手の意識が覚醒していく。
最初は焦点が合わない、虚ろな眼差しだったが…すぐに力強いものへと
変化していく。
「さ、えき…か…?」
そして相手はどこか困惑した様子で…声を掛けていく。
一体これはどんなおとぎ話なんだ、と思った。
恐らく彼が昏睡状態になって…多くの人間が目覚めてくれることを願って
声を掛け続けていた事だろう。
それが…よりにもよって、彼をかつて廃人寸前まで追い詰めた自分のキスが
この人を目覚めさせるなんて、一体どんな性質の悪い冗談なのだろうか。
お互いに驚愕の表情を浮かべていきながら、無言のまま見つめ合っていく。
(どうして、今…あんたが、目覚めるんだ…)
たった一度きりの、自分だけが知っていれば良い。
そういう意図のキスの筈だった。
なのにその間に相手が目覚めてしまったのならば…それで通らなくなってしまう。
けれどこちらを見つめる御堂の瞳は、真摯で力強いものだった。
その輝きからは恐れていた嫌悪や憎しみの感情は感じられない。
それが余計に、彼の混乱を強めていく一番の理由となっていった。
「怒らない、のか…?」
「…どうして、君を怒る必要が…あるんだ…?」
「…俺は今、あんたの意識がない間に…勝手に…」
それ以上は、言いづらくて口に出来なかった。
けれど御堂は微かに微笑みながら、続きを言葉にしていく。
「…君が私に、キスをした事か…?」
「っ…!」
相手にストレートに言われて、何も言えなくなる。
だが予想していた反応は、御堂からは返って来なかった。
克哉の表情に、怯えたような色が滲む。腫れものに触れたような口づけは
相手の意識がないからこそ出来た行為だった。
それを相手に知られてしまったら、居たたまれなくて仕方なく…身の置き場すら
なくなってしまいそうだ。
そしてまた、二人とも沈黙していく。何を言えば、問いかければ良いのか
まったく判らない。頭の中がグルグルして、混乱していた。
どれくらいの長い間、自分たちはそうして口を閉ざしたまま睨み合って
いったのだろうか。重い沈黙を破ったのは御堂の方からだった。
「…佐伯、私は…君との事を全て…思い出した…」
「…っ! 何、だって…」
それは、この一年間…佐伯克哉が恐れつづけていた出来事だった。
失っていた記憶を彼が取り戻せば、二度と自分はこの人の傍には
いられなくなるから。
「…君に凌辱された事、その場面を撮影されて脅迫された事…MGNで
長年掛けて積み重ねていったことを全て打ち砕かれそうになった事…
全てを、思い出した…そして、君をこの手に掛けようとした事もな…」
「そ、んな…嘘、だろう…?」
克哉は認めたくなくて、否定の言葉を口にする。
しかしその時、猛烈な違和感を覚えた。
その事を告げる御堂の表情は何故か…優しかったのだ。
どうしてこの人はこんな顔をしているのか判らなかった。
自分のした事を考えれば、憎らしげに睨まれる方が相応しいのに…
何故かベッドに横たわり続ける御堂の瞳は、驚くほど穏やかだった。
「…事実だ。私は、君を刺した日の事を鮮明に思い出せる。この手が
真っ赤に染まり…鈍い感触を掌に感じた事を…」
「は、ははは…」
その言葉を聞いた途端、全てが終わりだと思った。
もう…自分はこの人の傍にいられる資格を永遠に失ってしまったのだと
実感していった。
まるで壊れた人形のように力なく笑いが零れ続ける。
いっそ正気など完全に失ってしまった方が楽だった。
けれど…この日はいつ訪れても本来おかしくなかったのだ。だから
どうにかギリギリの処で踏みとどまって、その日が訪れたら言おうと
考え続けていた一言を口に登らせていった。
「…なら、俺はもう…貴方の傍にいられませんね…。仕事の引き継ぎが
出来次第…退職します。それまで、我慢して下さるよう…お願いします」
「…退職、だと。どうして…そんな事を君は言うんだ?」
「どうしてって…俺はあんたに、許されないことをしたんだ…。それなのに、
何故これ以上…傍にいることが出来るんだ…?」
「…なら、逆に問おう。それならどうして…私に刺されて重傷を負っていながら…
君は私の傍に居続けた。私は君を一度は殺そうとした人間だぞ…」
「それ、は…俺があんたを追い詰めて、その原因を作ったからだろう…」
そう、あの事件の発端は全て自分が作った。
その自覚があったからはっきりと彼は答えていく。
だが…次の瞬間、御堂はきっぱりと言い切っていった。
「なら、逆に…言い返そう。追い詰められた果てに、そこから逃げる為に
殺人を犯そうとしたのいうのならば…脅迫よりも凌辱よりも、人を殺める方が
罪は重い。何故なら…殺したら、死んだらもうやり直せないからだ」
「っ…」
御堂がその一言を放った瞬間、自分が殺してしまった向こうの世界の
彼の事を思い出していった。
そうして竦んでいると、御堂の手がこちらの方に伸ばされていく。
そして…ぎこちない動きで身体を起こし、克哉の頬に触れていった。
指先は温かくて優しくて、それだけで涙が零れてしまいそうだった。
「…私は、君を殺そうとした。…なら、君も…私を詰り、その罪を
糾弾する資格はある…。自分ばかりが加害者だと思うな。
私も、君の前では…咎人、だ…」
「…そんな、事はない。俺は…あんたを…」
そうして、脳裏に…ずっとこの一年間消えることがなかった向こうの世界の
御堂の死に顔が蘇っていく。
けれどこの世界では御堂は生きている。
こちら側で起こった、自分の刺殺未遂事件だって…今ではなかった事に
なっている。
けれどどれだけなかった事になっても、記憶に刻まれたお互いの罪は
決して消えることはない。
御堂に頬を撫ぜられてそれ以上、何も言えなかった。
そんな克哉の方へ彼はそっと顔を寄せて…唇を重ねていった。
「っ…な、ぜ…?」
「…これ以上…自分を、責めるな…君がどれだけ…この一年、私に対して…
償おうとしてくれていたか…もう、知っているから…」
その瞬間、克哉は耐え切れず…涙を零していった。
こんなの不意打ち以外の何物でもなかった。
ずっと誰にも言えなかった胸の底に秘めていた想いが溢れて来る。
それが泪の結晶となって、彼の頬を濡らし続ける。
「嘘、だ…こんなのは、俺の…都合の良い…夢…だ…」
「違う。…私は、君を許したんだ。…この一年間、君は…誰よりも私の仕事を支えて
必死に働いてくれた。…そう、思い出すまで私は…君を心から信頼していた。
だから…思い出して腸が煮えくりかえるような想いだってある。…だが、それ以上に
今の私は…君を、失いたくないんだ…。どんな形でもな…」
「あんたが、俺を信頼…それこそ、何の冗談なんだ…?」
「事実だ。私は君以上に有能で…こちらの意図を的確に読み取って
動き続けてくれた部下…いや、仕事上のパートナーは存在しなかった」
真っ直ぐに清冽に見つめられて、魂まで捉えられそうだった。
だが相手は真剣な顔で、こちらに伝えてくる。
心臓が破裂しそうなぐらい暴れ始めているような気がした。
この誰よりも全てに厳しくて、有能で輝いていた人に認められる言葉を
告げられるだけで昇天してそのまま逝ってしまいそうなくらいだ。
「…むしろ、全てを思い出して…怯えているのは私の方だ。私は…
君を右腕として失いたくないんだ…。例え君が、かつて私に対して
非道な行いをした人間だと判ってもな…」
「嘘、だろ…。そんな都合の良い話が…ある訳が、ない…」
御堂の唇から零れる言葉の一つ一つが、信じられないものだった。
紡がれる度に彼はショックで茫然となっていく。
嬉しさよりも信じられないという想いの方が強く、克哉は動揺の色を
どんどん濃くしていった。
「…私は本心を言っている。これは全て事実だ。信じてくれ…」
そういって御堂がこちらの背中に腕を回していく。
強い力で抱き締められて、目頭が再び熱くなるようだった。
けれどこうしてこちらを抱きしめる御堂の腕は熱くて…これは夢ではないと
はっきり克哉に教えてくれていた。
その瞬間、堰を切ったように克哉はその身体を抱きしめ返していく。
「御堂…!」
「佐伯…許して、くれ…」
「違う、それは…俺の方こそ、あんたに言わなければいけない…事だ…」
お互いに後悔の気持ちを持ちながら、強く抱きあい…謝罪の言葉を
口にしていく。
そう、どちらが加害者で被害者という関係ではない。
…両者とも、相手に対して罪を犯しているのは事実なのだ。
後一歩で取り返しがつかない事態を招きかねなかった罪であり、咎。
そう…記憶を失った上で、御堂に献身的に尽くして支えたことが…再び記憶が
蘇った時、克哉を許す最大の理由となったのだ。
そして元来、公正な性格をした御堂は…己の咎をも認めた。
自分ばかりが被害者ではないのだと、過ちを犯しているのだと自覚して…その上で
克哉だけを責めるのは筋違いだと考え、相殺する事に決めたのだ。
人は誰でも過ちを犯す。人を傷つけて泣かせたり、どうしようもなく追い詰めて
取り返しのつかない事態を招いてしまうこともなる。
生きている限り、時に加害者となることは決して避けられない。
罪を犯さずに生きられる存在など、生きてきた年数を何十年と重ねていたら
決して不可能なのだから。
罪悪感は人を縛って、人を過去に雁字搦めにしていく。
けれど…罪を自らが長い年月を掛けて認めて受け入れていくか、傷つけた相手に
許されるかした時…人はようやく解放されるのだ。
長らく自分を縛りつけていた罪から解き放たれるには…酷く困難で、償うのは
並大抵のことではない。
けれど…この一年の、克哉の何も望まない献身的な行為こそが…御堂にとって
彼を許すキッカケとなった。
だから全てを思い出した御堂の瞳に、憎しみの色がなかったのは…この一年を
共に過ごした信頼が生まれていたからだったのだ。
「…私が事故を起こしたのは…一年前のことを全て思いだして、その頭痛で
運転中に数秒…意識を失ってしまったからだ。そして意識を失っている間…
私は怒涛のように、忘れていた記憶の奔流を感じていた。
それで君に対しての怒りと憎しみを、そして…君を刺してしまった罪を
ようやく思い出したんだ…」
「そう、か…やっぱり数日前のあの頭痛は…その予兆、だったんだな…」
「あぁ、その通りだ…」
「けれど…俺を刺したことは気にしなくて良い。俺はそうされるだけの事を
あんたに対してしたんだ。だからあれは自業自得で…あんたを
責めることじゃない…」
その言葉を心から信じて、男は口にしていく。
御堂は彼の一言を聞いて、はっきりと告げていった。
「君は…強いな。殺されかけても…私を責めもせずに…
許す、とはな…」
「…そんな、大したことじゃない」
「良いや、大した事だ。だから…君が私の罪を責めないのならば…
私だけが恨みに思う道理はない。それが私の出した…結論だ…」
「そう、か…」
全てが信じられなかった。
けれどこうやって触れ合っているのは事実で。
本当にこれは現実に起こった事なのかと頬を抓りたくさえなった。
けれど静かな瞳でこちらを見つめて、そっと抱き締めてくれている
御堂の温もりは現実だった。
何も、望まないつもりだった。二度とこの人から何も奪わない。
そう決めたつもりだったのに…こんな結末が待っているなんて
予想もしていなかった。
嬉しくて、先程とは違った意味で涙が頬を伝っていく。
その瞬間、彼はもう一人の自分が最後に言った言葉を…何があっても
御堂の傍から離れるなと告げた時の事を思い出していく。
(…あの時、罪悪感に負けて…御堂の元から去るのを選択していたら…
この日を迎えることも、なかったんだな…)
いつだっていつ壊れるか判らない現実に怯えていた。
けれど彼は贖う為に苦しくても、彼の傍に居続けて支え続けた。
そう、憎しみは晴れるのだ。罪を犯した者が、傷つけた者に向き合い
贖う事によって。
けれど大半の人間は己の罪に向き合うよりも…苦痛から逃げる方を
選択するものだ。けれど逃げた人間は一時楽になったとしても…
その罪を浄化するのに長い年月を掛けなければならない。
これだけ早く、相手の心の憎しみが晴れたのは…彼が己の胸の痛みよりも
彼を支える事を迷いなく選んだ…結果なのだ。
暫し様々な複雑な思いを抱きながら、彼らは抱き合い続けた。
そして先に口を開いたのは、克哉の方からだった。
「…なら、お互いの罪を流そう。そして…一から、あんたとの関係を
再びやり直させてくれ…。それが俺の願いだ…」
「本当にそれで、良いのか…?」
「あぁ、それ以上の望みなんて、存在しない…」
一度は彼を失ったことを思えば、必要とされて傍にいることを許される以上の
幸せなど存在しない。
今なら、言えると思った。決して口にすまいと思っていた言葉を。
けれどそれ以上に伝えたくて仕方なかった一言を彼はやっと喉の奥から
絞り出して告げていった。
「俺は…あんたを愛しているんだ。あんたの傍にいることを許される
以上の喜びなんて、存在しない…」
「さ、えき…」
そう伝えた時、御堂は微笑んでくれた。嫌悪しないでくれていた。
それだけで…自分にとっては僥倖なのだ。
嬉しくて彼はもう一度、自分から顔を寄せていく。
御堂はそれを拒まず、静かに瞳を伏せて克哉からの口づけを
受け入れていった。
―この瞬間に全てが一度終わり、そして始まっていった
これから先、自分たちの関係がどうなるかなどまだ判らない。
けれど御堂は、克哉の存在を…想いを否定せずに受け入れた事、それは
紛れもない事実だった。
そして強くその身体を抱きしめながら、克哉は告げていく。
『あんたがこの世界に存在してくれれば、それで良い…』
それは一度、喪失を味わった人間だから零す一言。
御堂はそれを困惑した表情を浮かべながらも…受容していった。
あまりにストレートすぎる一言に、御堂の方は絶句して耳まで赤く
染まっていった。
ついには照れ隠しに、コホンと咳ばらいをして彼の方からも伝えていく。
「…君が、こんなに熱烈な言葉を平然と口にする男だとは思ってもみなかった…」
「俺は、自分が思ったことを正直に口にしただけだぞ…?」
相手の照れた顔がまた可愛くて、克哉は強気に微笑んでみせる。
二人の間に初めて、甘い空気が満ち始める。
そうして頬を染めて俯いている御堂の顎を捉えて、そっとこちらの方を
向かせていくと…彼は決意を伝えるように、はっきりと宣言していった。
「あんたが俺が傍にいることを許してくれている限り、俺からは絶対に…
あんたの傍から、離れない…」
「あぁ、そうして…くれ…。罪悪に囚われて、勝手に離れたりしたら…
本気で怒るからな…」
「その言葉、あんたにそっくり返すよ。…愛しているぞ…御堂…」
「…っ!」
そうして反論しようとした御堂の唇を、克哉は塞いでいく。
そして…口づけている間に、ようやくこの人を腕の中に収めることが出来たのだと
永遠に叶わないと思っていた夢が叶ったことを思い知っていく。
この想いが成就することは、咎を犯した自分にとっては永遠に見果てぬ夢の
筈だった。それが叶うなどどれほどの幸せなのだろうか。
彼はその幸せを噛みしめながら、抱きしめ続ける。この幸福が、儚いもので
終わらないように、一日でも長く続くように願いながら…。
その瞬間、運命の日は終わりを告げていく。
そして一瞬だけ…病室の鏡が眩く輝き、世界に白い光が満ちていった。
「っ!」
その時、彼は束の間…二度と会えないと決別した存在の面影を
鏡の中に見ていく。
だがすぐに気を取り直して、相手に口の動きで判るように短い一言だけ
告げていった。
そして彼はただ強く、御堂の身体を強く抱きしめ続けていった。
―その鏡に映っている存在に、今…自分は幸せだと確かに伝えていく為に…
19日の夜から20日の朝に掛けて、咎人の夢の29話を
執筆予定です。
もう少しお待ち頂けるとありがたいです。
後、GENOウイルスが流行っていたので…落ち着くまでリンクページ等を
まったく触っていなかったですが、本日…移転されてURLを変更されていた方
全員の修正を遅くなりましたがさせて頂きました。
(移転の報告して下さった方がいたのでリンク集削除ではなく
こうする事にしました)
6月19日現在…リンク集を弄った後、念の為ウイルスチェックをしてみましたが
当方のPC、及びブログは感染しておりませんので報告しておきます。
現在の制作状況
印刷所に表紙は先に入稿しました。
本文は現在、50~60%くらい出来あがっております。
とりあえず締切が23日の1時までなので、21日までには
本文を仕上げて一度紙に打ち出して、一日掛けて誤字脱字の
チェックをする予定で進めております。
パソコン上で入念にチェックしても、過去のオフ本では幾つか
残念な見落としがあったので、今回はそれを少しでも無くそうと
思っております。
23日までに一本、先月持ち込んだオリジナルの第一話を
完成させて一応、持ち込んだ出版社の人に読むだけ読んでもらう
予定なので今はヒーヒーです。
けど23日終われば、ちょっと楽になる筈なので頑張るです。
19日の日中は、ちょっとオフ本の原稿を優先して進めているので
ご了承下さい。
今週末の日曜日に、咎人~の最終話を掲載する予定です。
…一応、現在の予定はこんな感じです。
…何か一気に来たな、という感じですが…さぼり過ぎないで
こなせばどうにか出来るでしょう、という感じですね(汗)
近況としては…五月末から、一か月に1~2キロのペースで体重を
落とすのを目標にして、一か月半で大体3.5~4キロぐらい無事に
落とせました。
とりあえず次の目標は、洋服のサイズをワンサイズ落とす事です。
太っちょなのはすぐに治らないだろうけど、これからの健康の為に
徐々に改善していきたいので。
一応、ダイエットはまったり。原稿の方はヒーヒー言いながら進めて
おりますです。
それでは、また今宵に上がって来ますね。ではでは~。
執筆予定です。
もう少しお待ち頂けるとありがたいです。
後、GENOウイルスが流行っていたので…落ち着くまでリンクページ等を
まったく触っていなかったですが、本日…移転されてURLを変更されていた方
全員の修正を遅くなりましたがさせて頂きました。
(移転の報告して下さった方がいたのでリンク集削除ではなく
こうする事にしました)
6月19日現在…リンク集を弄った後、念の為ウイルスチェックをしてみましたが
当方のPC、及びブログは感染しておりませんので報告しておきます。
現在の制作状況
印刷所に表紙は先に入稿しました。
本文は現在、50~60%くらい出来あがっております。
とりあえず締切が23日の1時までなので、21日までには
本文を仕上げて一度紙に打ち出して、一日掛けて誤字脱字の
チェックをする予定で進めております。
パソコン上で入念にチェックしても、過去のオフ本では幾つか
残念な見落としがあったので、今回はそれを少しでも無くそうと
思っております。
23日までに一本、先月持ち込んだオリジナルの第一話を
完成させて一応、持ち込んだ出版社の人に読むだけ読んでもらう
予定なので今はヒーヒーです。
けど23日終われば、ちょっと楽になる筈なので頑張るです。
19日の日中は、ちょっとオフ本の原稿を優先して進めているので
ご了承下さい。
今週末の日曜日に、咎人~の最終話を掲載する予定です。
…一応、現在の予定はこんな感じです。
…何か一気に来たな、という感じですが…さぼり過ぎないで
こなせばどうにか出来るでしょう、という感じですね(汗)
近況としては…五月末から、一か月に1~2キロのペースで体重を
落とすのを目標にして、一か月半で大体3.5~4キロぐらい無事に
落とせました。
とりあえず次の目標は、洋服のサイズをワンサイズ落とす事です。
太っちょなのはすぐに治らないだろうけど、これからの健康の為に
徐々に改善していきたいので。
一応、ダイエットはまったり。原稿の方はヒーヒー言いながら進めて
おりますです。
それでは、また今宵に上がって来ますね。ではでは~。
※4月24日からの新連載です。
無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
―御堂孝典が思い詰めて佐伯克哉を刺し、その一件が『無かった事』に
されてから一年余りの月日が流れようとしていた
当初の内は関係者の中に多少の記憶の混乱等が起こっていたが…
それも日々を過ごす内に次第に収束していき、一か月もした頃には
記憶を思い出した者が出ても…当の刺された克哉が、普通の態度で
御堂のサポートをしている姿を見ている内に…例の事件の目撃証言は
デマや、見間違い、勘違いと纏められ、忘れ去られていった。
そして克哉は…あの事件を忘れた御堂と、一から仕事仲間としての
関係を築き上げていった。
元々、眼鏡を掛けて覚醒した克哉の能力はズバ抜けたものだった。
そして真剣にさえなれば…多くの顧客や取引先、そして革新的な
プロジェクトの発足など造作もない事だった。
そうしている内にMGNから声が掛かり、御堂とは上司と部下の関係で
あったが共に仕事をする機会や一緒に過ごす時間は多くなっていった。
それは償いの為なのか…彼は一度も、御堂に性的な意味で触れることはなく…
あくまで部下として、献身的に彼を支え続けた。
そうしている間に、御堂の信頼も厚くなり…肩書上は御堂が上司であったが
いつしか対等な目線で語り合える存在に徐々になっていった。
そしてあの事件があった日から、明日で一年になろうとしたある夜。
もうじき、重要なプロジェクトが本格的に軌道に乗る為に…その準備の
為に二人で夜遅くまで働いていた。
ふと、克哉が書類から目を離して壁に掛けられた時計を眺めていくと…その短針は
もうじき23時を指そうとしていた。
(後、もう少しで…一年、か…)
彼が今夜行うべき仕事の大半が、やっと片付いたおかげだろうか。
ふと…その時刻を見て、克哉は遠い目を浮かべていった。
後一時間が経過すれば、あの事件があった日から丁度一年になる。
その事を思い出すと…チクリ、と胸が刺す想いがした。
(あんたを、失った日から…『オレ』と別れた日から…一年、か…)
この世界に投げ出され、密かに御堂に対して贖罪をすると誓った日が
随分と遠く感じられた。
その癖、瞼を閉じればすぐに我を失うぐらいにこちらに怒りをぶつけていた…
御堂の顔が、声が…鮮明に思い出されていく。
まずはあの人の信頼を得ることから始めようと、がむしゃらに仕事を
こなし続けた。だから感傷的な気持ちに浸る暇などずっとなかったのだが…
今日だけは、そうもいかなくなっていた。
彼が仕事をしている部屋の、扉の向こうには御堂の私室が続いている。
扉を開けば、必死になって仕事をこなしている相手の姿を見ることが
出来るだろう。
ふいに、御堂の顔が見たくなった。帰る…と相手に告げることを口実に
向こうに赴こうか…少し悩んでいった。
(…そんな下らないことで、あいつの仕事を邪魔しては悪いな…)
しかし考えた末に出た結論は、以前の自分だったら絶対に考えない
ぐらいに殊勝なものであった。
克哉の中には今も、御堂に対しての想いは変わらず存在している。
だが…自分がしたことを思えば、こうして傍にいられるだけでも僥倖なのだ。
欲しいとか、抱きたいとか…そんな事を到底口に出来る訳がなく。
…本当にプラトニックな状態のまま、一年が過ぎてしまった。
しかし相手の顔が見たいとか、触れたいという感情は変わらずに胸の中に
在り続けているので…本当にさりげなく御堂の肩に触れたり、口実を
作っては御堂に会いに行ったりと…自分らしくない純愛を貫いていた。
「…気を少し、沈めておくか…」
そう呟きながら、彼は上着のポケットから煙草とライターを取り出して
紫煙を燻らせていく。
ほろ苦い煙草の煙が、彼の穏やかでなくなった心をゆっくりと慰めて
くれていた。
かつては欲望のままに行動して、思うがままに御堂を犯した。
…その結果が、御堂の手を汚させて…自分自身の命もあと一歩で
失い掛けることとなった。
けれどほんの少し歯車が狂っていれば…御堂は殺人者として社会的な
地位の全てを失って失墜していたし、自分も命を失っていてもおかしくはなかった。
無意識の内に服の上から腹部に触れて…ゾっとなっていった。
克哉があの日、負わされた傷は本来は致命傷で病院に素早く搬送されていたと
しても…助かる見込みはかなり低く、命を落とす可能性のが高いものだった。
あの男が手を貸してくれたから…数日で傷は塞がり、殆ど仕事上に穴を空ける
事無く過ごすことは出来た。
…本来の、この世界の佐伯克哉の記憶。それは断片だけでも今の
彼の中に確かに存在している。
二つの世界がたった二日間の間だけ交差し、混じり合った一件。
それによって…奇跡的に、自分たちはこうして共に過ごす時間を得ることが
出来た。けれど…その記憶があるおかげで、克哉は以前に比べて
酷く臆病になっていった。
(まるで…別人のようだな。以前は、すぐに怯えて…何で出来ないままでいた
あいつの事を馬鹿にして見下していたが…今の俺は、それと何の違いがあると
いうのだろうか…?)
自嘲的に笑いながら、ふっと顔を顰めていく。
…もう一人の自分と、自分が殺してしまった御堂はあの後…どうなったの
だろうかとふと気がかりになった。
あちらの世界の御堂は迷わずに、天に召されたのだろうか? それともあいつの
方と仲良くやっているのだろうか…と、ふとそれを考えた瞬間、胸の中にモヤモヤと
どす黒い感情が生まれていく。
―あの二人の幸せを願う心と同じぐらいの強さで、嫉妬が生まれていく。
最後の瞬間、判り合えた気がした。けれどそれから間もなく、自分が殺してしまった
方の御堂とは永遠に決別することとなってしまった。
会えない人間の事ばかり考えて、『今』を生きれなくなるのは愚かだと思った。
だから…努めて考えないようにしていた。なのに…今夜に限ってはそんな事ばかりが
頭の中に浮かび続けていた。
(なあ、お前は…一体、どうしているんだ…?)
あの後、どうなったかなど…あの奇妙な事件の舞台を構成したMr.Rと
交流を途絶えさせてしまった以上、今の克哉には知る術はない。
…この一年、もう一人の自分の事など殆ど考えなかった。なのに
今夜に限ってどうしてこんなにも気がかりを覚えているのだろうか。
煙草の煙を肺いっぱいに吸い込んで、深く吐きだしていった。
そして…向こうの世界の御堂はどうなったのか。考えても意味のない
事の筈なのに、何故か…そんな考えばかりが頭の中に溢れていった。
そうしている内に、15分はあっという間に過ぎていく。
この扉の向こうにいる御堂も、そろそろ帰宅準備を始めていたとしても
おかしくはない時刻。
この一本を吸い終えたら、自分も退社しなければ明日にそろそろ差し支えが
出てしまいそうだ。
そう考えて、半分程の長さになった煙草を深く吸い込んでいくと…その
途端に、御堂の執務室の方からドサ、と何か大きな音が聞こえていった。
「っ…? 何だ、今の音は…?」
それは大きな何かが倒れる時に生じる音のような気がした。
気がかりになって克哉は慌てて、隣の部屋へと駆けていった。
勢い良く扉が開くと…其処には苦しそうに頭を押さえこんで、床の上で
もがいている御堂の姿が目に入っていった。
「御堂部長! どうしたんですか!」
尋常ではない相手の様子にぎょっとなって克哉は慌てて相手に声を
掛けていった。
だが、御堂はこちらの言葉など耳に入っていないかのように…苦悶の
表情を浮かべて、うめき声を漏らすのみだった。
「はっ…ぐっ…ぁ…」
「御堂部長! しっかりして下さい! そんなに…苦しいなら、救急車を
今から手配します!」
一年が経過して信頼関係が出来ているおかげか、プライベートの時は
もう少し彼に対して砕けた口調で接しているが、今は会社内であり…
今の自分たちは上司と部下の関係だ。
だからあくまで、部下としての分を弁えた状態で声を掛けていく。
「頭が、痛い…割れ、そうだ…」
「頭痛、ですか…それなら…」
相手が、そう苦しげに訴えかけていくのを聞いて…克哉は慌てて常備
されている救急箱のある部屋まで向かって、頭痛薬を取りに行こうと
立ちあがっていった。
しかし、それを…御堂自身に袖を掴まれる形で阻まれていく。
「…御堂、さん…?」
「だ、い…じょうぶ…だ。今は、行く…な…」
「ですが、貴方がそんなに…苦しそうにしているのに…何もしないで
なんて…いられません、から…。薬を取りに行くだけ、です…。
ですから、離してくれませんか…?」
あまりにも強い力で御堂がこちらの袖を掴んでいるので…
克哉は困った顔を浮かべながらそう告げていく。
これでは御堂が、こちらに縋っているようではないか。そんな事は
この人に限っては似合わないし、らしくないと思ったから。
だから出来るだけ動揺を悟られないようにして…穏やかな口調で
相手に伝えていった。
「行く、な…何か、を…思い出し、そうなんだ…。君に、関わる…
何かを…」
「っ!!」
その瞬間、克哉の顔は一気に青ざめていった。
…ついさっきまで、一年前の出来事を思い出していたからだろう。
御堂のその一言に、戦慄を覚えていく。
(今の、言葉は…もしかして、御堂は…俺との間に起こった事を…
思い出しつつある、のか…?)
そう思い至った瞬間、彼は怖くなった。
傍にいられるだけで幸せだと思った。なのに…もし、彼が一年前の
出来事を、自分がかつて犯してしまった事を思い出してしまったら…
それは夢から御堂が覚めてしまうことを意味する。
一からやり直して、この一年で築き上げた信頼関係。
それがなくなって…御堂が再び、自分に対して憎しみの眼差しを向けて
しまったら、そう考えたら怖くて…その場から逃げ出したくなった。
自分が傍にいる事で、彼があの事件を思い出すのならば…全力で
目の前から立ち去りたかった。
けれど…愛しくて、尊敬して止まない存在がこんな風に苦しんでいる
姿を見て、どうしてそんな真似が出来るというのだろうか。
御堂が、苦しげに頭を押さえて…苦しげな呼吸を繰り返していく。
思い出さないでくれ、という願いと…早くこの人の苦しみが立ち去ってくれと
いう気持ちが心の中でせめぎあっていた。
「思い出さないで、くれ…」
本当にごく小さな声で、そんな事を無意識のうちに呟いてしまっていた。
あんたが思い出してしまったら、俺はもう傍にいられない。
二度と欲しいとも、無理やり抱こうとも思わない。
それならせめて…そのささやかな幸せだけでも、守りたかったのに…
現実は、その儚い願いは無残にも壊れようとしていた。
あんたがいつか、他の誰かを選ぶ日が来ても…笑って見送るから。
だからせめて、彼の傍らにいる事だけでも許して欲しかった。
なのに…御堂は、思い出すことを選択しているように感じた。
自分との間に起こった空白の出来事。
克哉にとっては決して拭い去れない、自分自身が犯した罪を…。
「思い、出さなくて…良い…このまま、どうか…」
懇願するように、彼は声を絞り出していた。
だが御堂は苦しげな息を漏らすだけで…何も言ってくれない。
気づけば一筋の涙が、頬に伝っていた。
この夢がまだ続いて欲しいと願う気持ちが…浅ましくも彼の瞳に
涙を浮かべさせていた。
例え触れ合えなくても、恋人になれなくても…嗚呼、そうだ。
自分はこの一年、この人から信頼されて幸せだったのだ。
だからどうか、それだけは壊したくなかった。
失いたくなかったのだ。
その激情が…本気で苦しんでいる御堂の身体を衝動的に
掻き抱くという行為に結びついていく。
「このまま、あんたの傍に…俺は、いたいんだ…!」
そして、感情のままに…想いを吐露してしまっていた。
瞬間…御堂の腕がきつく、こちらの身体を抱きしめ返した。
途端に言葉を失って、克哉は瞳を見開いていく。
何が起こったのか、とっさに理解出来なかった。
だが…そうして、抱きあったまま…凍ったような時間が静かに
二人の間に流れていった。
そして…御堂はポツリと小さく呟いていった。
「…佐伯、もう…大丈夫だ…。離して、くれないか…?」
そして酷く弱々しい声で、御堂が告げて来る。
「…頭痛は、もう…平気、なのか…?」
「嗚呼…まだ多少は痛むが、我慢が出来ない程ではない。
この状態なら帰れそうだ…」
「本当ですか? まだ辛いようなら…タクシーの方を手配しますから
今夜はそれで帰られた方が…」
「…大丈夫だ、と私が言っているんだ。自分の体調ぐらいはこちらで
把握出来る。さしでがましい事はあまり言わないでくれ…」
と強気な口調で言っているが、御堂の顔色はやはり…客観的に
見ても相当に悪かった。
今にも倒れてしまいそうな危うい雰囲気を纏っている。
きっぱりと拒絶する気丈な御堂の様子を眺めていると…もうすでに
過去の出来事を思い出してしまっているんじゃないかと猛烈に
不安な気持ちが湧き上がっていく。
だが、「思い出したのか?」と問いかけるのが今は怖かった。
本当に相手を案じるなら、それでもついていくと言い張るべきだったのだろう。
しかし…今の克哉は、大きく怯んでしまっていた。
「…判りました。それなら、気を付けて帰って…下さい…」
頭の中が混乱して、それ以上食い下がることが出来なかった。
唐突に突きつけられた、自分とこの人の夢の終わり。
そもそも…本気で憎まれた相手と、信頼関係を一から築き上げようなどと
いう願いがそもそも…厚かましかったのかも知れない。
「あぁ…君もな。おやすみ…」
そう告げて、おぼつかない足取りで御堂はどうにか帰り支度を
整えて…自分の執務室を出て行こうとしていった。
やはり相当に苦しそうなその様子を見て、克哉は胸が引き絞られていく。
だが、御堂の背中はきっぱりと…克哉の手助けを拒んでいるようだった。
(…御堂、あんたにとって…俺はやはり、いらない存在に過ぎないのか…?)
どれだけ努力をしても、贖おうとしてもやはり自分が犯した罪が
消えることもなければ、許されることもないのだろうか?
その事に打ちひがれていきながらも…先程、無我夢中で抱き締めた
相手の体温と匂いを思い出していく。
あんな風に彼の体温をしっかりと腕の中で感じたのは一年ぶりだった。
たったそれだけで…確かに相手に劣情を覚えて、男としての本能を
強く刺激されている自分がいる。
「浅ましいな、俺は…」
傍にいられるだけで満足だと願っていたのに、たったあれだけの事で
大きく揺らいでしまっている。
こんな自分が、あの輝かしい人の傍にいること自体がおこがましい
事だったのかも知れない。
覚悟をするべき時なのかも知れない。
一年前のあの日、夢が覚めるまでで良いと自分は確かに願ったのだから。
本当にその日が来てしまったのなら…それは潮時なのかも知れなかった。
なのに、いざ訪れようとしていることを知ってしまったら動揺を隠せず、
怯んでしまうだけだった。
情けなくて…そんな自分に苦笑しながら、彼は携帯でタクシーを会社の前に
呼びだして、帰宅する準備を整えていく。
―覚悟するしかないと、彼は決心をしていった
考え方を変えれば、この一年間だけでも…自分はあの人の傍に
いる事を許されたのだから。
そう思考を切り替えて、彼は自分の想いを振り切るように踵を返していく。
―そうして克哉が悲痛な覚悟を決めてから数日後、彼の元に
御堂が交通事故に遭ったという報が届いていったのだった―
無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方…
どうもありがとうございます(ペコリ)
やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。
咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
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―御堂孝典が思い詰めて佐伯克哉を刺し、その一件が『無かった事』に
されてから一年余りの月日が流れようとしていた
当初の内は関係者の中に多少の記憶の混乱等が起こっていたが…
それも日々を過ごす内に次第に収束していき、一か月もした頃には
記憶を思い出した者が出ても…当の刺された克哉が、普通の態度で
御堂のサポートをしている姿を見ている内に…例の事件の目撃証言は
デマや、見間違い、勘違いと纏められ、忘れ去られていった。
そして克哉は…あの事件を忘れた御堂と、一から仕事仲間としての
関係を築き上げていった。
元々、眼鏡を掛けて覚醒した克哉の能力はズバ抜けたものだった。
そして真剣にさえなれば…多くの顧客や取引先、そして革新的な
プロジェクトの発足など造作もない事だった。
そうしている内にMGNから声が掛かり、御堂とは上司と部下の関係で
あったが共に仕事をする機会や一緒に過ごす時間は多くなっていった。
それは償いの為なのか…彼は一度も、御堂に性的な意味で触れることはなく…
あくまで部下として、献身的に彼を支え続けた。
そうしている間に、御堂の信頼も厚くなり…肩書上は御堂が上司であったが
いつしか対等な目線で語り合える存在に徐々になっていった。
そしてあの事件があった日から、明日で一年になろうとしたある夜。
もうじき、重要なプロジェクトが本格的に軌道に乗る為に…その準備の
為に二人で夜遅くまで働いていた。
ふと、克哉が書類から目を離して壁に掛けられた時計を眺めていくと…その短針は
もうじき23時を指そうとしていた。
(後、もう少しで…一年、か…)
彼が今夜行うべき仕事の大半が、やっと片付いたおかげだろうか。
ふと…その時刻を見て、克哉は遠い目を浮かべていった。
後一時間が経過すれば、あの事件があった日から丁度一年になる。
その事を思い出すと…チクリ、と胸が刺す想いがした。
(あんたを、失った日から…『オレ』と別れた日から…一年、か…)
この世界に投げ出され、密かに御堂に対して贖罪をすると誓った日が
随分と遠く感じられた。
その癖、瞼を閉じればすぐに我を失うぐらいにこちらに怒りをぶつけていた…
御堂の顔が、声が…鮮明に思い出されていく。
まずはあの人の信頼を得ることから始めようと、がむしゃらに仕事を
こなし続けた。だから感傷的な気持ちに浸る暇などずっとなかったのだが…
今日だけは、そうもいかなくなっていた。
彼が仕事をしている部屋の、扉の向こうには御堂の私室が続いている。
扉を開けば、必死になって仕事をこなしている相手の姿を見ることが
出来るだろう。
ふいに、御堂の顔が見たくなった。帰る…と相手に告げることを口実に
向こうに赴こうか…少し悩んでいった。
(…そんな下らないことで、あいつの仕事を邪魔しては悪いな…)
しかし考えた末に出た結論は、以前の自分だったら絶対に考えない
ぐらいに殊勝なものであった。
克哉の中には今も、御堂に対しての想いは変わらず存在している。
だが…自分がしたことを思えば、こうして傍にいられるだけでも僥倖なのだ。
欲しいとか、抱きたいとか…そんな事を到底口に出来る訳がなく。
…本当にプラトニックな状態のまま、一年が過ぎてしまった。
しかし相手の顔が見たいとか、触れたいという感情は変わらずに胸の中に
在り続けているので…本当にさりげなく御堂の肩に触れたり、口実を
作っては御堂に会いに行ったりと…自分らしくない純愛を貫いていた。
「…気を少し、沈めておくか…」
そう呟きながら、彼は上着のポケットから煙草とライターを取り出して
紫煙を燻らせていく。
ほろ苦い煙草の煙が、彼の穏やかでなくなった心をゆっくりと慰めて
くれていた。
かつては欲望のままに行動して、思うがままに御堂を犯した。
…その結果が、御堂の手を汚させて…自分自身の命もあと一歩で
失い掛けることとなった。
けれどほんの少し歯車が狂っていれば…御堂は殺人者として社会的な
地位の全てを失って失墜していたし、自分も命を失っていてもおかしくはなかった。
無意識の内に服の上から腹部に触れて…ゾっとなっていった。
克哉があの日、負わされた傷は本来は致命傷で病院に素早く搬送されていたと
しても…助かる見込みはかなり低く、命を落とす可能性のが高いものだった。
あの男が手を貸してくれたから…数日で傷は塞がり、殆ど仕事上に穴を空ける
事無く過ごすことは出来た。
…本来の、この世界の佐伯克哉の記憶。それは断片だけでも今の
彼の中に確かに存在している。
二つの世界がたった二日間の間だけ交差し、混じり合った一件。
それによって…奇跡的に、自分たちはこうして共に過ごす時間を得ることが
出来た。けれど…その記憶があるおかげで、克哉は以前に比べて
酷く臆病になっていった。
(まるで…別人のようだな。以前は、すぐに怯えて…何で出来ないままでいた
あいつの事を馬鹿にして見下していたが…今の俺は、それと何の違いがあると
いうのだろうか…?)
自嘲的に笑いながら、ふっと顔を顰めていく。
…もう一人の自分と、自分が殺してしまった御堂はあの後…どうなったの
だろうかとふと気がかりになった。
あちらの世界の御堂は迷わずに、天に召されたのだろうか? それともあいつの
方と仲良くやっているのだろうか…と、ふとそれを考えた瞬間、胸の中にモヤモヤと
どす黒い感情が生まれていく。
―あの二人の幸せを願う心と同じぐらいの強さで、嫉妬が生まれていく。
最後の瞬間、判り合えた気がした。けれどそれから間もなく、自分が殺してしまった
方の御堂とは永遠に決別することとなってしまった。
会えない人間の事ばかり考えて、『今』を生きれなくなるのは愚かだと思った。
だから…努めて考えないようにしていた。なのに…今夜に限ってはそんな事ばかりが
頭の中に浮かび続けていた。
(なあ、お前は…一体、どうしているんだ…?)
あの後、どうなったかなど…あの奇妙な事件の舞台を構成したMr.Rと
交流を途絶えさせてしまった以上、今の克哉には知る術はない。
…この一年、もう一人の自分の事など殆ど考えなかった。なのに
今夜に限ってどうしてこんなにも気がかりを覚えているのだろうか。
煙草の煙を肺いっぱいに吸い込んで、深く吐きだしていった。
そして…向こうの世界の御堂はどうなったのか。考えても意味のない
事の筈なのに、何故か…そんな考えばかりが頭の中に溢れていった。
そうしている内に、15分はあっという間に過ぎていく。
この扉の向こうにいる御堂も、そろそろ帰宅準備を始めていたとしても
おかしくはない時刻。
この一本を吸い終えたら、自分も退社しなければ明日にそろそろ差し支えが
出てしまいそうだ。
そう考えて、半分程の長さになった煙草を深く吸い込んでいくと…その
途端に、御堂の執務室の方からドサ、と何か大きな音が聞こえていった。
「っ…? 何だ、今の音は…?」
それは大きな何かが倒れる時に生じる音のような気がした。
気がかりになって克哉は慌てて、隣の部屋へと駆けていった。
勢い良く扉が開くと…其処には苦しそうに頭を押さえこんで、床の上で
もがいている御堂の姿が目に入っていった。
「御堂部長! どうしたんですか!」
尋常ではない相手の様子にぎょっとなって克哉は慌てて相手に声を
掛けていった。
だが、御堂はこちらの言葉など耳に入っていないかのように…苦悶の
表情を浮かべて、うめき声を漏らすのみだった。
「はっ…ぐっ…ぁ…」
「御堂部長! しっかりして下さい! そんなに…苦しいなら、救急車を
今から手配します!」
一年が経過して信頼関係が出来ているおかげか、プライベートの時は
もう少し彼に対して砕けた口調で接しているが、今は会社内であり…
今の自分たちは上司と部下の関係だ。
だからあくまで、部下としての分を弁えた状態で声を掛けていく。
「頭が、痛い…割れ、そうだ…」
「頭痛、ですか…それなら…」
相手が、そう苦しげに訴えかけていくのを聞いて…克哉は慌てて常備
されている救急箱のある部屋まで向かって、頭痛薬を取りに行こうと
立ちあがっていった。
しかし、それを…御堂自身に袖を掴まれる形で阻まれていく。
「…御堂、さん…?」
「だ、い…じょうぶ…だ。今は、行く…な…」
「ですが、貴方がそんなに…苦しそうにしているのに…何もしないで
なんて…いられません、から…。薬を取りに行くだけ、です…。
ですから、離してくれませんか…?」
あまりにも強い力で御堂がこちらの袖を掴んでいるので…
克哉は困った顔を浮かべながらそう告げていく。
これでは御堂が、こちらに縋っているようではないか。そんな事は
この人に限っては似合わないし、らしくないと思ったから。
だから出来るだけ動揺を悟られないようにして…穏やかな口調で
相手に伝えていった。
「行く、な…何か、を…思い出し、そうなんだ…。君に、関わる…
何かを…」
「っ!!」
その瞬間、克哉の顔は一気に青ざめていった。
…ついさっきまで、一年前の出来事を思い出していたからだろう。
御堂のその一言に、戦慄を覚えていく。
(今の、言葉は…もしかして、御堂は…俺との間に起こった事を…
思い出しつつある、のか…?)
そう思い至った瞬間、彼は怖くなった。
傍にいられるだけで幸せだと思った。なのに…もし、彼が一年前の
出来事を、自分がかつて犯してしまった事を思い出してしまったら…
それは夢から御堂が覚めてしまうことを意味する。
一からやり直して、この一年で築き上げた信頼関係。
それがなくなって…御堂が再び、自分に対して憎しみの眼差しを向けて
しまったら、そう考えたら怖くて…その場から逃げ出したくなった。
自分が傍にいる事で、彼があの事件を思い出すのならば…全力で
目の前から立ち去りたかった。
けれど…愛しくて、尊敬して止まない存在がこんな風に苦しんでいる
姿を見て、どうしてそんな真似が出来るというのだろうか。
御堂が、苦しげに頭を押さえて…苦しげな呼吸を繰り返していく。
思い出さないでくれ、という願いと…早くこの人の苦しみが立ち去ってくれと
いう気持ちが心の中でせめぎあっていた。
「思い出さないで、くれ…」
本当にごく小さな声で、そんな事を無意識のうちに呟いてしまっていた。
あんたが思い出してしまったら、俺はもう傍にいられない。
二度と欲しいとも、無理やり抱こうとも思わない。
それならせめて…そのささやかな幸せだけでも、守りたかったのに…
現実は、その儚い願いは無残にも壊れようとしていた。
あんたがいつか、他の誰かを選ぶ日が来ても…笑って見送るから。
だからせめて、彼の傍らにいる事だけでも許して欲しかった。
なのに…御堂は、思い出すことを選択しているように感じた。
自分との間に起こった空白の出来事。
克哉にとっては決して拭い去れない、自分自身が犯した罪を…。
「思い、出さなくて…良い…このまま、どうか…」
懇願するように、彼は声を絞り出していた。
だが御堂は苦しげな息を漏らすだけで…何も言ってくれない。
気づけば一筋の涙が、頬に伝っていた。
この夢がまだ続いて欲しいと願う気持ちが…浅ましくも彼の瞳に
涙を浮かべさせていた。
例え触れ合えなくても、恋人になれなくても…嗚呼、そうだ。
自分はこの一年、この人から信頼されて幸せだったのだ。
だからどうか、それだけは壊したくなかった。
失いたくなかったのだ。
その激情が…本気で苦しんでいる御堂の身体を衝動的に
掻き抱くという行為に結びついていく。
「このまま、あんたの傍に…俺は、いたいんだ…!」
そして、感情のままに…想いを吐露してしまっていた。
瞬間…御堂の腕がきつく、こちらの身体を抱きしめ返した。
途端に言葉を失って、克哉は瞳を見開いていく。
何が起こったのか、とっさに理解出来なかった。
だが…そうして、抱きあったまま…凍ったような時間が静かに
二人の間に流れていった。
そして…御堂はポツリと小さく呟いていった。
「…佐伯、もう…大丈夫だ…。離して、くれないか…?」
そして酷く弱々しい声で、御堂が告げて来る。
「…頭痛は、もう…平気、なのか…?」
「嗚呼…まだ多少は痛むが、我慢が出来ない程ではない。
この状態なら帰れそうだ…」
「本当ですか? まだ辛いようなら…タクシーの方を手配しますから
今夜はそれで帰られた方が…」
「…大丈夫だ、と私が言っているんだ。自分の体調ぐらいはこちらで
把握出来る。さしでがましい事はあまり言わないでくれ…」
と強気な口調で言っているが、御堂の顔色はやはり…客観的に
見ても相当に悪かった。
今にも倒れてしまいそうな危うい雰囲気を纏っている。
きっぱりと拒絶する気丈な御堂の様子を眺めていると…もうすでに
過去の出来事を思い出してしまっているんじゃないかと猛烈に
不安な気持ちが湧き上がっていく。
だが、「思い出したのか?」と問いかけるのが今は怖かった。
本当に相手を案じるなら、それでもついていくと言い張るべきだったのだろう。
しかし…今の克哉は、大きく怯んでしまっていた。
「…判りました。それなら、気を付けて帰って…下さい…」
頭の中が混乱して、それ以上食い下がることが出来なかった。
唐突に突きつけられた、自分とこの人の夢の終わり。
そもそも…本気で憎まれた相手と、信頼関係を一から築き上げようなどと
いう願いがそもそも…厚かましかったのかも知れない。
「あぁ…君もな。おやすみ…」
そう告げて、おぼつかない足取りで御堂はどうにか帰り支度を
整えて…自分の執務室を出て行こうとしていった。
やはり相当に苦しそうなその様子を見て、克哉は胸が引き絞られていく。
だが、御堂の背中はきっぱりと…克哉の手助けを拒んでいるようだった。
(…御堂、あんたにとって…俺はやはり、いらない存在に過ぎないのか…?)
どれだけ努力をしても、贖おうとしてもやはり自分が犯した罪が
消えることもなければ、許されることもないのだろうか?
その事に打ちひがれていきながらも…先程、無我夢中で抱き締めた
相手の体温と匂いを思い出していく。
あんな風に彼の体温をしっかりと腕の中で感じたのは一年ぶりだった。
たったそれだけで…確かに相手に劣情を覚えて、男としての本能を
強く刺激されている自分がいる。
「浅ましいな、俺は…」
傍にいられるだけで満足だと願っていたのに、たったあれだけの事で
大きく揺らいでしまっている。
こんな自分が、あの輝かしい人の傍にいること自体がおこがましい
事だったのかも知れない。
覚悟をするべき時なのかも知れない。
一年前のあの日、夢が覚めるまでで良いと自分は確かに願ったのだから。
本当にその日が来てしまったのなら…それは潮時なのかも知れなかった。
なのに、いざ訪れようとしていることを知ってしまったら動揺を隠せず、
怯んでしまうだけだった。
情けなくて…そんな自分に苦笑しながら、彼は携帯でタクシーを会社の前に
呼びだして、帰宅する準備を整えていく。
―覚悟するしかないと、彼は決心をしていった
考え方を変えれば、この一年間だけでも…自分はあの人の傍に
いる事を許されたのだから。
そう思考を切り替えて、彼は自分の想いを振り切るように踵を返していく。
―そうして克哉が悲痛な覚悟を決めてから数日後、彼の元に
御堂が交通事故に遭ったという報が届いていったのだった―
昨日の記事で、16日から17日に掛けて連載書きますと
宣言しましたが、サーバーメンテナンスにぶち当たったのと…
手配した印刷所の関係で、先に表紙を仕上げないといけなく
なったので、今晩はそっち優先しました。
…オンリー支援割引使うには、今日中には仕上げて
おかないとスケジュール的に厳しかったもんで(苦笑)
そのおかげで、どうにか表紙仕上がりました。
…そして拘りまくった結果、気づいたら夜明けを
迎えておりました(汗)
その代わり、今の自分の実力からしたら…精一杯の
ものに仕上がりました。
新刊表紙(完成版)
…これ仕上げたら、ちょっと今夜は力尽きましたので
一旦寝て来ます。
…本気でCGやると、かなり時間掛かるんですね。この表紙…トータルで
20~25時間くらい掛かりました…。
おかげで、他の画像の結合して組み合わせるとかフィルターを被せて色を
調整するとか今まで出来なかったことが幾つか出来るようになって
技術力は上がりましたけどね…。
一旦寝て体調整ったら改めて連載書きます。
それではおやすみなさいませ~(今、朝だっつーの!)
おまけ 失敗の産物。
興味ある方だけ、「つづきはこちら」をどうぞ~
(表紙画像の微妙に色違いバージョン)
とりあえず迷走&時間掛かり捲りな「咎人の夢」
やっと本日、自分の中で納得が行くラストまでの道筋が
決まったので宣言します!
27話は抵抗ある人多いだろうな~と思って掲載するまで相当に
迷ったけど、最終話の為には絶対必要だから書いたんだ! と自分の中で
やっと覚悟決まったので宣言します。
今週中に咎人、終わらせます。
とりあえず本日&明日は面接先の下調べとか色々と時間
取られそうなので夜まで時間はなさそうですが…これ以上
間延びさせない為に宣言しておきます。
28日は帰宅後か、16日から17日の間に掛けて掲載しますね。
…少なくとも読むんじゃなかった、という最後にだけはしませんので
良ければ付き合ってやって下さいませ。
とりあえず新刊、「胡蝶の夢」の原稿とシールラリー用のシールも
同時並行で進めております。
イベントに向けて頑張ります。がお!
やっと本日、自分の中で納得が行くラストまでの道筋が
決まったので宣言します!
27話は抵抗ある人多いだろうな~と思って掲載するまで相当に
迷ったけど、最終話の為には絶対必要だから書いたんだ! と自分の中で
やっと覚悟決まったので宣言します。
今週中に咎人、終わらせます。
とりあえず本日&明日は面接先の下調べとか色々と時間
取られそうなので夜まで時間はなさそうですが…これ以上
間延びさせない為に宣言しておきます。
28日は帰宅後か、16日から17日の間に掛けて掲載しますね。
…少なくとも読むんじゃなかった、という最後にだけはしませんので
良ければ付き合ってやって下さいませ。
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派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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