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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                        10 
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 少しずつ克哉の表情から迷いが消えていく。
 もう一人の自分への想いを、確かなものにしていったからだ。
 御堂に強引に抱かれた時点では、迷いがあった。
 本当にもう一人の自分を好きでいて良いのか、そういう気持ちがあったからこそ
その手を振り切る事が出来なかった。
 
(けど、今なら判る…。さっきの、あいつとの時間は嘘じゃないって。オレの都合の
良い夢なんかじゃなかったんだって…だから、もう迷っちゃいけないんだ…。
あんな風にオレの元にどんな形でも来てくれたのに、オレがフラフラし続けて
いたら…あいつにもう顔向け出来なくなってしまうのだから…!)
 
 それは人の顔色ばかりを伺っていた頃の克哉には決して出来ない
事だっただろう。
 これから本多に対しても、御堂に対しても頭を下げていかないと考えると
気が滅入りそうだったけれど…今はまず、目の前にいる太一と向き合っていった。
 無言のまま、火花が散るような勢いで両者の眼差しがぶつかりあっていく。
 太一の方とて、簡単に克哉をあきらめるつもりはないのだと…その鮮烈な
視線から伺える。
 けれど…泣きながらでも、みっともない顔を晒す事になっても克哉もまた一歩も
譲らない気配を見せていた。
 
「克哉さん、好きだよ…。貴方に受け入れて貰えないんだったらもう二度と
恋なんてしない…! それくらいの勢いで好きなんだ…!それでも、ダメなのかよ…!」
 
 太一が最後の攻撃に踏み切っていく。
 言ってみれば其れはある種の背水の陣に等しいものであった。
 それぐらいの真剣さで、太一は決してこちらを諦めてなるものかと
食いついて来ていた。
 しかし克哉は土下座の体制から緩やかに顔を上げていき、どこか達観
したような表情で首を横に振っていった。
 
「…ダメだよ太一。これからの人生、長いんだから…もう二度と恋をしない
なんて言っちゃダメだよ。本当に好きな人が出来た時の喜びは…何物にも
変えられないものなんだから…」
 
「それならどうして、俺の事を拒絶するんだよ克哉さん! 俺がこんなに
好きだって言っているのにどうして…!俺、マジなのに! 克哉さん以外、
他の人間なんていらないって思えるくらいなのに…!」
 
 太一の感情が高ぶっていけばいくだけ、逆に克哉は頭が冷えて
いくような思いがした。
 目からは静かに涙が零れ続けている。
 しかし泣くという行為は、感情を整理して冷静に処理をさせていく冷却水の
ような役割がある。
 さっきまでは克哉も激しく泣きながら、太一と応対していった。
 けれどそれでは決して、太一には通じないと…判って貰えないと悟った
克哉は淡々とした口調で、今度は呟いていった。
 
「…うん、太一の気持ちは良く判るよ。けどね…オレも同じなんだよ…。
決して譲りたくない気持ちがあるからこそ、そいつ以外目に入らない状態
だからこそ…オレはね、太一の想いを受け入れる訳にいかないんだ…。
ねえ、良く考えてみて。太一は今…オレの事をそんなに好きでいてくれている。
けれど…もし、他の誰かが太一を想って付き合ってほしいって言われたら、
受け入れられるかな? 其れが今のオレの心境だっていうのをどうか…
判って欲しいんだ…」
 
「っ…!」
 
 その一言に太一の顔がハっと跳ね上がっていった。
 冷や水を頭からぶっかけられたような反応になって、青年は言葉を失っていく。
 今の克哉の言葉で、どうしてこんなにも相手が頑なにならざるを得ないか…
ようやく心中を悟る事が出来たからだった。

(今、他の人間に想いを寄せられてしまったら…俺は、断るしかない。
こんなにも克哉さんを好きなのに、受け入れる事なんて出来ないから。
嗚呼、そうか…克哉さんがこんなに言っても受け入れてくれないのは、
好きな人をこの人は…今の俺と同じぐらいか、それ以上の強さで
思っているから、なんだ…)

 それに気付いた時、太一は目の前が真っ暗になるような気さえしていった。
 残酷すぎる悟らせ方だった。
 けれどようやく…自分の気持ちだけでなく、相手の想いにも気を回す
事が出来るようになった。
 人は好きになると自分の気持ちだけで精一杯になってしまう。
 其れが恋愛の怖い一面でもある。
 自分の想いが強すぎれば強すぎるだけ周りが見えなくなってしまう。
 そして相手の想いを、つい蔑ろにしてしまう愚も犯してしまうのだ。
 途端に…さっきまでの自分が恥ずかしくなっていった。
 太一もまた克哉に想いを受け入れて貰えなかった事で…落胆を覚えて
いたが…それでも、想いをぶつける事しか考えられなかった時に
比べれば徐々に冷静さを取り戻しつつあった。

「ねえ、克哉さん…一つ聞いて良いかな?」

「…うん、良いよ」

「克哉さんは…そいつの事、メチャクチャ好きでしょうがないの…?」

「うん、そうだよ。そいつが得られるなら…何もいらないってぐらい…
今は、大好きだよ…」

 小さな子供に淡々と言い聞かせるような優しい声音で、ごく自然に
克哉はそう返していく。
 其れを聞いて…太一は、また一つ涙を零していった。
 けれどそのすぐ後に、顔をクシャクシャにしながら…笑っていく。

「はは、酷いな…克哉さん。そんな風に言われたら…俺、引きさがるしか
なくなっちゃうじゃんか…。マジで、残酷だね…」

 だが、太一の口調からもどこか笑みが混ざり始めていく。
 もう笑うしかなかった。
 潔いくらい、きっぱりと相手に断られてしまった訳なんだから。
 けれど同時に、深く感謝もしていた。
 克哉はどんな形であれ、振られてしまったとはいえ…こちらの想いに
真正面から向き合ってくれた訳だから。
 これが曖昧に濁されてしまったり、思わせぶりな態度を取られてしまった
方がきっと太一の傷は深くなってしまっただろう。
 言ってみれば指にトゲが刺さった時の対処に似ているかも知れない。
 内側にこもった恋愛感情は、どれだけ押し込めようとしても自分の中から
突き破って表に現れてしまう。
 其れを対処しないでいれば延々と疼くような痛みからは逃れられない。
 心に刺さったトゲを、痛みから解放されるには思い切ってメスを入れて
原因を取り除くしかないのだ。
 その時はドバっと血が溢れて傷を負っても…迷いなくスパっとやられた方が
短時間で傷も癒えるし…いつまでもその痛みに苦しめられる事がない。
 克哉のその対応は、そんな感じだな…と何となく思った。

(スッパリ、克哉さんにやられてしまったな…けど、これぐらいきっぱりと
言われた方が…諦めがつけられるわ…)

 そう思ったら、ガクっと身体中の力が抜けていくような気がした。
 そして…克哉がいる方と反対側にゴロン、と転がっていく。
 自分の足先だけが相手の身体の一部に触れているようなそんな体制で…
一つだけ、我儘を言っていった。

「…判った、克哉さん。凄くきっついけど…この気持ちは諦めるよ。けど…
今は立ち上がれないから、少しだけこうして此処で休んでいって良いかな…?」

「うん、良いよ。この体制のままで良いなら…少し休んでいって」

 抱きあってしまったら、きっと変な気持ちになってしまう。
 けれど…少しだけでも良いから、克哉に甘えたかった。
 もうちょっとだけで良いから一緒に過ごしたかったから太一はそう我儘を言い…
間接的に克哉の温もりを感じていく。
 そうすると克哉は身体をズラしていって、背中合わせに太一の横に
寝そべっていった。
 お互いに顔は見ない、向き合わない体制で…体温だけが伝わってくる。
 これは太一にとってはある種の拷問に近かったが、同時に克哉の労わりも
感じられてまた苦笑したくなった。

(貴方は本当に優しくて…残酷だね克哉さん。けど…ありがとう…)

 そうして太一は克哉の体温を背中に感じていきながら、静かにむせび
泣いていく。
 泣いている顔を決して見られないように嗚咽を殺していきながら…自分の
恋を諦める為に、感情にケリをつける為に…シーツを強く掴んでいきながら
彼は涙を暫く流し続けて…二人の間に、どこかせつないような…優しい
時間が流れていったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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