忍者ブログ
鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
[65]  [66]  [67]  [68]  [69]  [70]  [71]  [72]  [73]  [74]  [75
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  こんにちは、香坂です。
  イベントまでもう二週間を切りましたね!
  という訳で本日は早めにイベントのインフォメーションを
アップしておきます!!

 当日新刊は以下になります。

タイトル 『胡蝶の夢』(克克)

(ある程度本文書いてこっちのタイトルの方が
良いなと思って改題しました)
 現時点ではまだ表紙未完成ですが、出来あがっている画像は
こちらです!!→ 新刊表紙用画像(完成版)
 オフ本で作れるように頑張ります!!
 後、作れたら御堂×克哉の無料配布も作成予定です。
 こちらは30~40部程、当日持ちこむ予定ですので良ければ
受け取ってやって下さいませ(ペコリ)
 

 当日のスペース№は「東2ホール ネ―07a」
  サークル名は「三日月水晶」になります。
 既刊の、在庫がある本を全種類持って行きますので
良ければ御手に取って見て下さいませ。

 既刊

 オフ本

 INNOCENT BLUE(克克新婚本1 おまけ本有 100P)  1000円
 LUNA SOLEIL(克克新婚本2 116P)             1000円
 幻花繚乱(澤村本 CPは御克前提 シリアス)            500円

 コピー本 

 可愛いヤキモチ(克克  甘々 残部 極小)            300円
 未来予想図(太克 残部小)                      300円
 月と銀剣(克克 シリアス)                       300円
 夜桜幻想(眼鏡×御堂 甘々)                     300円
 聖痕(眼鏡×御堂 ややシリアス)                   300円

 コピー本の方は残部が少ないものもあるので、売り切れの時には
ご了承下さいませ(ペコリ)

 後、今回はスケッチブックを承ります。

 イベント開催後、30分後から香坂自身が席に座って店番を
しますので・・・それ以後に気軽に声を掛けて下さいませ。
 私の絵で宜しいのでしたら、喜んで描かせて頂きます(^^)
 最初の30分は、友人のHりねさんにスペースを守って貰うので
その間に頼みたい方は、スケブに予めどのキャラが希望なのか
リクエストを鉛筆で隅に描いておいて下さると助かります。

 だ、誰か頼んでくれると良いな!! という感じで勇気を振り絞って
告知させて頂きました(ドキドキ)
 皆様が立ち寄って下さるのを、心よりお待ちしております(ペコリ)

 
PR
 お待たせしました。ようやくアップです。
 …この内容、読む人を選ぶ内容だと思うので…咎人~の27話は、
本文部分を隠して掲載させて頂きます。
 アップし終えたら、記事の後ろに「つづきはこちら」と
出ますのでそれをクリックしてくださいませ。

 香坂自身は書きたい、と思って書くけれど…客観的に見て
人によっては理解出来ない。受け入れなれないかも…という内容なので
多少変えるか、自分の中で浮かんだままで掲載するかすっごい
ここ暫く…凄く悩んだんですよ。
 考えた末にこういう形で、掲載させて頂くことにしました。

 …香坂は大切な人が死んだ時点で終わりだとは思わないです。
 幽霊だろうが何だろうが、大切だった人の気配が感じられるなら…
其処にいてくれるなら、周りの人間が何と言おうが…それは
幸せだと、私は思う。
 けどあくまでこれは私の考えなので、この考えが後ろ向きと思ったり
幽霊となった相手と恋をして真剣になる。向き合う。
 そういうのに共感出来ない、拒絶反応示しそうだと感じられる方は…
この話を読み飛ばして下さるようにお願い致します。
 興味ある方だけ、どうぞです(ペコリ)
 今回の連載に限って、相当に間が空きまくりですみません。
 けど…26&27話は書きたいんだけど、本当にこれ書いて良いのかなって
ギリギリまで迷ったんで。

 …27話は人によっては受け付けないかもです。
 けどね、この設定じゃないと書けないものがあるだろ! って
開き直ることにしました。
 幽霊となった御堂さんと、克哉がどうやって想いを交わし合っているのか。
 ある意味、禁断の扉を開くようなシーンです。
 …覚悟の上で読んで下さいね。
 予め断っておきます。

 嫌な方、抵抗ある方は逃げて下さいませ(ペコリ)
 ここに警報残しておきます。
 13日夜には書くので宜しく~。
4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方
どうもありがとうございます(ペコリ)
 やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
                                                        11  12  13  14  15 16  17 18 19 20
                     21 22  23   24   25

 克哉サイド エピローグ1


 ―あの一件から半年余りの時が過ぎて、季節はいつの間にか春になろうとしていた

 佐伯克哉は、毎月…御堂孝典の月命日が来ると、見晴らしが良く…遠方に
海が望める丘に設えられた墓へ欠かさずお参りに来ていた。
 其処に辿りつくと同時に、克哉は周辺を丁寧に掃き…墓石を綺麗に
布で拭いてから花を添え…線香に火を付けていく。
 黒光りする見事な墓石に、玉石が敷き詰めらられ…隅にはツツジや椿の
花が植えられている。
 その敷地内を見事なぐらいに綺麗に掃除していくと…佐伯克哉は
汗を拭って一息突いていった。

―まったく…君も飽きずに良く…毎月、ここを訪れるな…

 その瞬間、自分の傍らに…御堂の気配を感じた。
 振り返っていくと…其処には彼の魂が存在している気配を
感じていった。

―えぇ、だって…貴方の墓ですから…やっぱり出来るだけ
気を配ったり…綺麗に保ちたいですから…

 克哉は微笑みながら、心の中でそう答えていくと…相手が呆れたように
溜息を吐いていったのが感じれた。
 実際に幽霊である御堂が呼吸をしている訳ではないが、霊体と言えど
元は人間である。
 感情表現や仕草の類は、生前と変わる処は殆どない。
 彼を視覚という形で克哉は常に据えられる訳ではないが…一つの肉体を
共有する同士として、今の克哉は御堂の声をほぼ確実に聞きとることは
可能になっていた。
 皐月の、気持の良い風が周囲に軽やかに吹きぬけていく。

―まったく、君はお人好し過ぎるな。ここに来れば…せっかくの休日の
半分が潰れてしまうのは判っているだろう。ここにあるのはすでに
私の亡骸でしかない…。魂は今は、君と共にある。
 それなのに…どうして、墓参りをする事に君は拘るんだ…?

―逆ですよ、貴方とこうして…常に共に生きるようになったからこそ…
オレは貴方の身体が収められている場所を蔑ろにしたくないんですよ…

 そういって、克哉は墓の前で手を合わせていきながら黙祷を
捧げていく。
 その時の彼は…酷く清廉な気配を身に纏う。
 御堂は、克哉のこの姿を見る度に酷く神妙な感情をいつしか
抱くようになった。
 感慨深い表情を浮かべながら…彼は、自分の為に祈る青年を
どこか切ない眼差しで見つめていった。

(生前は…いつまでも死者に囚われたり…死者を供養する事など
真剣に考えたりしなかった…。むしろ、いつまでもそういうことに時間や
気を取られる事を良しとしていなかったな…私は…)

 合理主義であり、常に新しい仕事に追われている御堂にとって…
30年も生きていれば、世話になっている相手や取引先が亡くなる事に
直面した事は何度もあった。
 けれど…生きていた頃、彼はどんな相手の死も長くは引きずらなかった。
 本当に恩を受けた相手を亡くした時は涙を浮かべる時もあった。
 だが、彼は長くそれを引きずらなかったし…其処まで墓参りとか、法事の類を
重要になど思わなかった。
 しかし、自分がそれを捧げられる立場になって初めて、彼は墓参りや
祈りに…価値を見出すようになった。
 
 死者への黙祷は、相手への敬意であり想いでもある。
 毎月繰り返されるこの行動が…この半年の間に、佐伯克哉という
人間に対して抱いていた全ての憎しみを洗い流していった。
 同じ肉体を共有する形だからこそ、御堂と克哉の間には一切の誤魔化しは
効かない。
 克哉が彼を軽んじたり、欺こうとすれば御堂にはすぐに判ってしまう。
 だからこそ…真剣に彼がこちらを今でも愛し、想いやる気持ちから
この行為を繰り返していることが伝わってくるのだ。

(…本当に、あいつとは…別人のようだな…)

 二重人格だの、憑依だの…そんな単語が、まさか自分の人生の中に
絡んでくるなど生きていた頃はまったく考えたことがなかった。
 御堂は今でも、眼鏡を掛けた方の佐伯克哉を時々思い出す。
 彼に対しての怒りは、まだ燻り続けている。どこかで…最後に顔を合した時の
激情に引きずられた時の感情は整理がついていない。
 けれど…同じ佐伯克哉でありながら、今の克哉と…眼鏡を掛けた彼とは
いつしか完全に区別して考えるようになった。
 例え肉体は同じでも、宿っている魂は異なるのだと。
 されど、自分を想ってくれているその気持ちだけは…どちらの彼であっても
本当のものだったと今は理解していた。

―これは自分の為だけに捧げられる祈り

 そう、死者を心から悼む行為には意味がある。
 …本当に自分の死に対して涙を流してくれる者。
 亡くなった後も心を砕き、想いやってくれる家族や克哉の存在が
あったからこそ…憎しみはいつしか晴れ、自分は本来あるべき心の
在り方を取り戻していった。
 一部の隙も見せないぐらいに真剣に…自分の墓の前で黙祷を
捧げてくれている姿を見ると…胸が苦しくなってくるようだ。
 そして、御堂は…この瞬間いつも克哉が涙ぐんでいることに
気づいている。
 だから…終わると同時に、そっと背後から包み込むように
抱きしめていく。

「あっ…」

 その瞬間、克哉は…こちらの気配に気づいたように小さく声を
漏らしていく。
 御堂からはこの瞬間、克哉の身体から温かな空気を感じて。
 克哉の方は、実体はなくても…御堂を、大気を通じて存在を
感じとっていく。
 切なくも、心が温まる一時。
 彼が墓参りをする度に…どうして自分が生きていた時に
巡り合えなかったのかと思う反面…この時間を重ねる度に、確実に
眼鏡を掛けていない佐伯克哉との間に絆のようなものが生まれてくる。

「御堂、さん…其処に、いるんですね…」

―あぁ…私は、ここにいる…

 今の御堂にとって、この世界に留まれている拠り所は…彼の肉体だ。
 完全に憑依している間は、御堂が彼の肉体を使えるし。
 こうして…幽体の状態で、大気に溶け込んだり…周囲を見回したり
通じ合っているものなら微かに存在を知覚して貰うことも出来る。
 穏やかで静謐な時間。
 そうしてお互いに無言のまま…そっと目を閉じて過ごしていく。

―黙祷は終わったのか…克哉…?

―はい、終わりました。そろそろ…帰りましょうか…御堂さん…

―あぁ、そうすることにしよう…

 そうして、御堂が歩き始めていくと…克哉は、ゆっくりと彼の方に
向かって手を伸ばしていった。
 実際に手を握り合える訳ではない。けれど…御堂の気配を感じる方へと
指先を差し出していく。
 まるで恋人のように、けれど…生身を持って触れ合えることはない。
 けれどその度に克哉は…あの二日間の間に、何度か御堂に触れあったり
口づけたりした体験を鮮明に再生していく。
 それだけで頬が熱くなり…顔が真っ赤になった。

―まったく君は本当に…可愛らしい反応をするな…

 ふと、御堂の声が鮮明に聞こえていった。
 フワリと優しく微笑まれた気配がして…一瞬だけ、端正な御堂の面立ちを
はっきりと思いだしていく。

―からかわないで下さい…恥ずかしくなります、から…

 最初の頃は、自分たちの関係はぎこちなかった。
 けれど同じ物を見て、同じ体験を…同一の肉体を拠点として共有していく内に
この半年間で、最大の理解者となった。
 お互いの温もりを感じあうことは出来ない。
 けれど…肉体という壁がないからこそ、心も近く感じ合えるし…何もかも
共有することが出来る。
 道が続いていく。これから何度も、自分たちはこの風景を眺めるだろう。

 御堂孝典という人間の亡骸がこの地に収められている限り…
佐伯克哉にとって、ここは特別な意味を持つ。
 彼の家族に、正式に認めて貰える訳ではない。
 御堂の魂が、彼の身体を介してこの世界に存在している事実を
告げられる訳ではない。
 けれど、彼の死を今も悼んでいる。偲んでいる存在がいるのだと…
そう伝えるように彼は月命日に、都合がつく日はここに訪れ…
献花と黙祷を捧げていく。
 だからこれからも…自分たちは何度も、移ろいゆく季節と共に
この周辺の景色を眺めながら、こうして共に帰路についていくのを
繰り返していく事だろう。
 心に温かなものが満ちていく。
 そして微かに存在を知覚出来る御堂が、こちらを振り向いたような
そんな気がすると…克哉は静かに目を伏せていく。

―そして、静かに口づけを交わしていく

 実際に触覚として感じている訳ではない。
 けれど唇に何かが掠めていったような感覚をふわりと
遠まわしに感じていく。
 そして…自分の身体の中に、御堂の魂が入り込んでくる。
 まるで己の一部であるかのように…違和感なく、彼の魂を
その身に感じて…克哉は温かい笑みを浮かべていく。

―ありがとう

 その感謝の気持ちだけが、静かに伝わってくる。
 あまり多くを語らない人だから、簡潔にまとめられてしまっているけれど…
御堂の声が聞こえて、克哉はジィンと胸が熱くなっていく。
 出来るなら、貴方の身体があった時に恋に落ちたかった。
 熱い抱擁を、口づけを交わしてみたかった。
 ここに来るたびに…御堂と、心が通じ合う度にその願いが頭をよぎって
時に泣きたくなる時もあるけれど、今の克哉は以前のように空虚ではない。
 この身は、自分のものであり…御堂のものでもある。
 彼が世界に関わる為に必要な器なのだと。
 だからやっと、克哉は自分を大切にしなければと思うようになった。

 かつての彼は、自分などどうでも良いと思っていた。
 この世に存在していても何にもならず、人を傷つけるばかりで助けることすら
出来ない。
 そんな自分に絶望に似た諦めすら覚えていた。
 けれど今は違った。
 誰かの為に祈ること、愛すること。そして必要とされて相手に何か出来ることがあることは…
人を強くして、心を満たしていく。

「御堂さん…大好き、です…」

 そう告げて、克哉は微笑んでいく。
 誰にも祝福されない不毛の恋かも知れない。
 その人が亡くなった後に、恋に落ちて…こういう形で共に生きていくことに
なった事など人に話しても決して理解されないし…頭がおかしくなったと
思われるのがオチだろう。
 それでも構わなかった。
 例えこの世界に、克哉にだけしか見えなくても…御堂は確かに、こうして
自分の傍にいてくれるのだから。

―私、もだ…

 そして、いつの頃からか…御堂もまたこうして返してくれるようになった。
 お互いの中に、向こう側の世界へと隔てられたもう一人の克哉の存在が
よぎってチクリ、と胸が痛むこともある。
 けれど…彼とは、自分たちは世界を隔てられた以上二度と会えない。
 ならそれは過ぎ去りし過去と同じもの。
 それならば、今…こうして傍にいる存在だけを見つめて…誰にも
理解されなくても想いを交わし合えば良い。

―そして克哉は、御堂から赤面するような一言を告げられていく

 伝わってきた瞬間、克哉の顔は真紅に染まって俯いていく。
 だが決して嫌な気持ちではない。
 特に今日は週末の夜だ。遅くなっても全然問題ない。
 だから拒む理由はないのだが…けれど、やはりまだ…自分と御堂との
愛し合い方に戸惑いと違和感を覚えているのも事実だった。

―良いな、克哉…
 
 意志の確認ではなく、すでに確定事項のような口調で御堂が
告げていく。
 恥ずかしいし…半ば混乱していく。
 まだ二回しか経験していないから…怖くもあった。
 けれど…求められるのは、嬉しいから。
 だから克哉は悩んで暫く黙った末に…小さく告げていった。

『はい…貴方が、望むのでしたら…』

 そう答えた瞬間、我身に受け入れている御堂が…実に愉しそうに
笑ったような気がしたのだった―
 

 

 本日一日が、あっという間に終わっておりました(汗)
 今週、小説の更新ほっとんどなくて済みません。
 けど、そろそろ咎人のエピソードをどの場面から書くか
自分の中で決まったので…ガーと書き進めていきます。
 今晩、23時過ぎからの執筆になりますが12日分として
アップします。
 …また日付、超えますけどね(苦笑)

 ちなみに現時点の成果。
 色塗り等&合成する予定の素材の作成は本日一日掛けて
完成させました。
 何年ぶりかにライトボックスを押入れから取り出して
作業しました。
 …いや~本当に、何年ぶりだろ、ここまで丁寧に絵を描いたのって
いう感じです。
 おかげで時間、食いまくっております。
 ただ香坂の場合、表紙が一番ネックなのでここを超えれば
後は楽になると思うので頑張ります。

 興味ある方だけ、昨日アップした線画がどのように色塗られたか
見てやって下さい。
 今回はフィルターとか色々使用して頑張ってみたっす。
 これから合成&文字入れ作業予定。
 …これが一番大変な気するけど、表紙だけでも今週中に
仕上げたいっす。がお~。

 
 
 とりあえず、ちょっと落ち着いて来たので今週辺りから
就職活動と並行して、ノマ受けオンリー用の新刊作業を
ボチボチと始めております。

 現時点では概要のみ。
 6月11日時点ではCPは克克もの。
 P数は36~44P程度。
 タイトルは「アゲハ蝶」 ん~とポルノグラフティのこの曲が以前から
すっごい好きで香坂、良く聞いているんだけど…それに触発されて
出来たお話。
 切ない&幻想的な話になる予定です。
 それでせっせかと今回は表紙(出来れば1~2Pぐらい、イメージ
イラストっぽい挿絵も自分で描きたい)を描いたので本日は
その線画だけ晒させて頂きます。
 興味ある方だけ、「つづきはこちら」をクリックして
見てやって下さいませ。

 後、現在連載中の咎人~は一応25話で一区切りがついたので
残りはそれぞれのエピローグみたいな流れになります。
 …えっと、24話は大きなミスした状態で数日晒していて見苦しい
状態にしてしまっていてすみませんでした(ペコリ)
  
4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方
どうもありがとうございます(ペコリ)

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
                                                        11  12  13  14  15 16  17 18 19 20
                     21 22  23   24

 ―彼が目覚めた場所は、例の公園の外れにある草むらの中だった

 強制的に元の世界に帰らされて、眼鏡と御堂が横たわっていたのは…
例の事件が起こった地点の程近い場所だった。
 周囲を見回すと、大きな街灯が見える。
 それを見て…あの街灯の光が届く位置で、最初の事件が起こったことを
思い出して…佐伯克哉は、遠い目になっていった。
 
「…俺は、戻って来た…のか…?」

 時間にすれば二日間足らずの間に起こった出来事だった。
 彼は意識を失っている時間の方が長かったせいで、その30時間の間に
起こった出来事の終盤しか知らない。
 けれどそれだけでも…始めと終わりしか体験しない状態でも、十分に
それは密度の濃いものだった。

(昨晩に…俺は、御堂にこの公園で刺された。そして…この世界では
午後辺りから、俺と御堂は失踪していることになっている…あいつの
話を総合すると、確かそういう事になっていた筈だな…)

 まだ、目覚めたばかりで身体の自由はあまり効かなかった。
 頭の中も混乱していて、情報が整理し切れていない。
 そして眼鏡が倒れているすぐ傍らには、御堂が草むらの中で仰向けで
横たわっていた。
 時々苦しそうな表情を浮かべる時もあるが、微かな寝息を立てながら
目の前で意識を失っている御堂を見て…克哉は泣きそうになった。

「生きて、いる…」

 そう、その事実だけでも…目の前で御堂を失ってしまった体験を
すでにしている彼には…涙が出るくらいに、嬉しいことだった。
 当然、先程の…向こうの世界の御堂とのやりとりを忘れた訳ではない。
 だが、あの人の亡骸を目の当たりにした時の衝撃。
 それが生々しく脳裏に刻まれてしまった彼からしたら…こうして、生きている
御堂の姿を見るだけでも…充分な救いだったのだ。

「あんたが、生きている…」

 目の前に倒れているのは、この世界の御堂。
 こちらの世界では…御堂の方が佐伯克哉を刺してしまっているという。
 そしてその事件の目撃者が多く存在しているからこそ、このような事態に
なってしまったのだと…もう一人の自分から聞いた。
 丁寧に説明された今も、ややこしくて…本気で混乱しそうな話だった。
 しかしその結果、彼の目の前には…「自分が犯した過ちを全てを忘れた御堂」が
存在する事となった。
 御堂が生きていることを確認するように、頬にそっと手を伸ばしていく。
 温かくて滑らかなその肌触りを指先で感じるだけで、この世の全てに
感謝したくなるような心境など…今まで味わったことがなかった。

(…好きだの、愛しているだの…そんな言葉は下らないと今まで思っていたが…
今のこの心境は、恐らくそういった類の感情なんだろうな…)

 そう考えると苦笑したくなったが、それでも…御堂に確認するように
触れることは止められなかった。
 この手触りが、愛おしくて仕方なかった。
 ただ触れているだけで満たされるようなこんな感情など知らなかった。
 けれどその幸せを感じれば感じるだけ、この人に本当に自分は惹かれていたのだと
自覚すればするだけ…かつて、自分がやった行為の愚かさを気づかされた。

「…俺は、こうなって…初めて、気づけたんだな…」

 力なく呟きながら、彼は…瞼を閉じていった。
 人は間違えなくては、気づけない時もある。
 己の力を過信している時、万能だと思い込んで人を思う通りに操作
しようとする時、優位に立とうと躍起になっている時…大抵は踏み躙られる
側の心の痛みに気づかない。
 一方的に相手の心をこちらに従うしかないように追い詰めれば、それは
いつか自分の身に跳ねかえってくるものだ。
 誰にだって心がある。自分の意思というものがある。
 それを無視して、己の欲望や欲求を叶えることしか考えなくなった時…
人はそう遠くない内に、そのしっぺ返しを食らうものなのだと…。

―結局、自分が御堂に待ち伏せされて刺されたのは彼の心を
踏み躙り続けた結果に過ぎなかった

 過ちに気付いた時には、向こうの世界では手遅れだった。
 この人を愛しているのだと気づいた時には、本来ならば
永遠に失ってその想いは二度と届かない筈だった。
 それでも、言えた。そして謝罪の言葉を辛うじて言えた。
 そして…目の前に、御堂がいてくれる。全てを忘れた御堂が…。

(俺は…あんたの傍にいて…良いのか…? あんたを
追い詰めて向こうの世界ではあんたを殺し…この世界では、
あんたを殺人者にさせてしまった俺が…本当に…)

 …こんな事を迷っているなんて、自分らしくないと思う。
 けれど彼の心は、確かに今…弱ってしまっていた。
 人をもっとも苦しめる感情は、後悔と罪悪感だ。
 強い罪の意識は、時にその人間の本性すら大きく歪めてしまう。
 今の眼鏡はまさに…その状態だった。
 問いかけるように、眠り続ける御堂に触れ続けて…迷い続ける。
 その刹那、相手の目がほんの短い間だけ…ゆっくりと開かれた。

「さ、えき…?」

 それは、何の感情も含まれていない…誰何の言葉に等しい
呼びかけだった。
 意識が覚醒したばかりで、現状を把握していない無防備な表情。
 それから徐々に相手の瞳に力が戻り…短い間だけ、こちらをはっきりと
視界に捉えていく。
 そしてすぐに惑いの色を帯びて…彼は問いかけて来た。

「…どうして、私は…こんな処で、寝ていたんだ…? 君は…何かを、
知っているのか…?」

 惑う彼の瞳には、克哉に対しての嫌悪も憎しみも含まれていない。
 知人や、仕事仲間の一人に対して…質問を投げかけているだけに
過ぎない反応だった。
 けれど…彼に一生憎まれても仕方ないとすら思っている眼鏡からしたら…
その反応こそ、救いだった。

「…あぁ、あんたは悪い夢を見ていただけだ。それで…やっと、ここで
目覚めただけ…ただ、それだけの事だ…」

「…何だか、要領を得ない答え…だな…。だが、そうか…あれは…
悪い…夢…だったの、だろうか…?」

 そうして、彼らしくない困惑した表情を浮かべていく。
 そういえばこちらの世界の御堂は、記憶を操作されている筈だった。
 昨晩の記憶と今まで彼がやってきた行為の数々は、辛うじて封じられている。
 そんな彼を見て、ふと…眼鏡は思った。

―もう一人のオレが最後に言っていたように、こちらの世界の御堂と…
自分は一から、やり直せるだろうかと…

 彼に対して自分がしてしまった事を考えれば、虫の良過ぎる考えだった。
 けれど彼がこちらの罪を忘れているのならば。
 この30時間余りの出来事を夢で済まして、それ以前の自分との間にあった
出来事を忘れてくれているのならば…。

(一から…御堂と、関係をやり直せる…チャンスなのか…?)

 その事に気づいた時、どうしてあいつがあそこまで必死になって
自分に対して、「御堂から離れるな」と訴えたのかやっと理解していく。
 それは大きな罪を犯してしまった、咎人の都合の良い夢なのかも知れない。
 けれど…この人の夢が覚めるまでの間で良い。
 傍にいたいと思った。一緒にいる時間を重ねたいと思った。
 いつか夢から醒めて、御堂は自分の罪を思い出してしまうかも知れない。
 もしくは昨晩の佐伯克哉という人間を殺そうとした忌わしい記憶が
いつか蘇ってしまう可能性もあるかも知れない。
 その危険を考えたら、自分はこの人の傍から離れた方が絶対に良い。
 そう考えて、深く葛藤した瞬間…何故か、もう一人の自分の声が
脳裏に響いていった。

―過去ばかり振り返って、悔やんでいたって仕方ないだろ…?
罪の意識に囚われて、本当に大切なものを手放してしまったら…
一生、後悔するよ…ねえ、俺…

 その声だけは嫌になるぐらいにはっきりと聞こえた。
 罪の意識に竦んでいる自分を、その声が背中を押していく。
 これはチャンスなのだ、と。
 一つの世界で、自分が殺されて御堂が犯罪者となる結末が起こった。
 片方の世界では自分が御堂を結果的に殺してしまった。
 どちらにしても救いようのない筈の結末を辿るしかない筈の自分たちの
前に…今、一つのか細い可能性が示されている。
 それはまさにクモの糸のように儚く脆い希望なのかも知れない。
 それでも…。

(俺は…あんたの傍に、それでもいたいんだ…)
 
 目の前の御堂は、無防備な寝顔を自分の前に晒して意識を
失っていた。
 Mr.Rのせいで、この30時間余りは翻弄され通しだったのだから
無理もない話だった。
 克哉は、彼の頬を撫ぜていく。
 今度は眠りも深くなっているらしく、その程度の刺激では目覚める気配がなかった。
 
「…この夢が覚めるまでで良い…どうか、あんたの傍にいさせてくれ…」

 彼は心からの祈りを込めていきながら、御堂の唇に口づけていく。
 奪うような、服従を強いるようなキスなら今まで何度もしてきた。
 けれど…こんな触れるだけの儚い接吻を相手にしたのは、これが初めての
ような気がした。
 懇願するように口づけながら、祈っていく。

 ―この夢が覚める日までで良い。この人の傍にいさせてくれと…

 御堂が全ての記憶を取り戻した時。
 それが…この仮初の夢が壊れる時。
 彼がこちらの罪を思い出し、再び憎しみの感情を思い出したら…その時は
逃げもせずに、それは当然の報いと受け止めることとしよう。
 こんな殊勝なことを考える自分が信じられなかった。
 けれど紛れもなく、それは真実の気持ち。
 恋人に、伴侶になりたいなど…そんな我儘は言わない。
 ただ、自分は…あんたと肩を並べられるような、そんな男になりたいと。
 あんたと同じ高みを登れるそうな、そんな存在になりたいと…間違えまくった末に
ようやく本心に気づいていく。
 夢が覚める日までで良い、と。

『咎人はただ、一日でも長く…愛しい人間の傍らにいられる事を願った』
 
 深夜を迎えているせいで、公園の敷地内の空気は冴え渡り
寒いぐらいだった。
 漆黒の闇の中、ただ月だけが静かに輝いている。
 そんな夜に…彼はただ、真摯に願い続ける。
 
―ようやく愛していると気づけた人とやり直して、夢が終わるその日まで
せめて共に過ごせることを…

 そう祈りながら…御堂に肩を貸して、せめて彼の自宅のマンションまで送って
行こうとして…佐伯克哉は公園から後にしていく。
 そんな彼の後姿を、黒衣の男は物陰から眺めて、小さく呟いていく。

「…この世界の貴方も、愛などという惰弱な感情に目覚めて…大いなる
可能性を潰してしまわれましたか…」

 心から残念そうに言いながら、男の姿もまた…闇の中に紛れていく。
 この世界の彼でダメだったら、別の世界の彼の可能性に掛けるしかない。
 今回の一件で示されたように、佐伯克哉には無数の未来が広がっている。
 ならばその中に…真に、男の願望を満たしている彼だっているだろう。
 完成された彼に出会えるその日まで、男もまた…新たな可能性を模索していく。

「…まあ良いでしょう。次の世界で…またお会い出来ることを祈っていますよ…。
佐伯克哉さん…」

 そう呟きながら、彼はゆっくりとその場から立ち去っていった。
 そうして…公園の中には、誰もいなくなり…静寂だけがその場を支配
していったのだった―


 

 先週、仲介業者の人が熱心に薦めてくれた場所…
相手先の方も受けてくれたら、本気で別業種に全力で
飛び込む予定でしたが、8日に残念ですが…という
電話来ました。
 ただ、本日の広告に二か所ぐらい良い処があったので
再度トライ中です。

 …意外に就職活動で時間取られていて色んな事に
手が回り切れていないのが悔しひ…(汗)
 そして、明日面接で早いので連載のアップは9日の帰宅してからに
しますね。
 …現実的なことばっかり最近、考えているので妄想を
なかなか形に出来ないのが非常にもどかしい毎日。
 早くどこか落ち着ける場所に巡り合って、本腰入れて連載とか
力入れてやりたいです。
 とりあえず今は生活を安定させる方、優先ということで(滝汗)
 それでは今晩は早めに寝させて頂きますね。
 ではでは…明日、どうか受かりますように~(なむ~)
 最近、ちょっと近況報告すると大変重くなっているので
ちょっとした小ネタを。
 香坂と、その兄との馬鹿馬鹿しいやりとりです。

 …まあ、こういう時間を兄と持っているから本格的に
落ち込んで沈みきらないでいられているんですが(笑)
 まあ、そんな馬鹿話その1。
 最近、発売した裁判系ゲーム三本の内、関しての話題
(THE! 裁判員or有罪×無罪)の兄上の
評価も同時に語ってありますので、興味
ある方は続きをどうぞ。

 ちなみに香坂の兄は、ゲーム系ブログを四年間運営してて
月に最低2~3本は新しいゲームを買うことを怠らない重度の
ゲーマーです。
 XBOX360、Wii1、ニンテンドウDSi、PS2、PSPと現行で市場シェアを
保っているゲーム機本体は全て購入してて、良作の発掘やプレイ、
そして情報収集に余念がありません。
 ゲームにそれこそ、自分の青春と情熱を捧げている男。
 その分だけ、最近出た注目ゲームとかの情報には非常に
詳しいです。
 その影響もあって、今回の記事はちょっとまねっ子してやってみようかな~
という実験的な記事でもあります。
 興味ある方だけ、続きをどうぞ~。
 
4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方
どうもありがとうございます(ペコリ)

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
                                                        11  12  13  14  15 16  17 18 19 20
                     21 22  23


―もう一人の自分と、意識を失って横たわる御堂が刻限を迎えて
向こう側の世界に強制的に返される寸前、克哉は必死になって
訴えかけていった。
 
『俺…!! 最後に言っておく!! 絶対に…絶対に、不幸になんか
なっちゃ駄目だからな!! 自分が御堂さんの傍にいる資格がないだとか、
変な罪悪感に縛られて、絶対に手を離したりなんか…するなよ!!』
 
 克哉は、今の相手が犯してしまいそうな過ちを予測して…それだけは
しないようにと祈りを込めて訴えかけていく。
 亡霊となって幽体となっている方の御堂と、眼鏡はその一言に
驚きを隠せず、目を見開いていく。
 Mr.Rも極めて不機嫌そうな表情を浮かべていたが、それでも克哉は
怯むことなく…もう一人の自分を見据えていく。
 
―そう、それこそが…恐らく、永遠にこの世界の御堂と決別する
事を余儀なくされる…眼鏡の、唯一の救いの方法だと克哉は
確信していたからだ。
 
 彼はこのややこしく交差しあった全ての事例のからくりを深く
理解している。そんな彼だからこそ見えた道。
 本来なら、この御堂と眼鏡が寄り添うのが一番のハッピーエンドで
あったことは判っている。
 だが、もうそれが叶わないのならば…せめて、他の方法を見出したかった。
 その一心で、克哉は懸命に伝えていく。
 
「お前と…そちらの御堂さんが、戻る世界は…極めて不安定だ。
その中で過ごしていたら、いつ…御堂さんの記憶が戻るか、判らない…。
けど、その夢が覚めるまでの間だけでも…お前が犯した罪を、この人が
忘れている間だけでも…支えて、守るんだ…! 本当に、御堂さんに対して
悪いと思っているのなら…そちらの世界の御堂さんだけでも、全力を
掛けてお前は…守るんだ!! それが、この人が夢から覚める前
だけでも…!!」
 
 きっと、戻ればこちらの世界の御堂のこの二日間の記憶は
混乱を極めてしまうだろう。
 傍にいれば、いつか…眼鏡が犯してしまった罪を、そして彼を
この手に掛けようとした記憶をも思い出してしまう日が来るかも知れない。
 きっと克哉が何も言わずに見送れば、きっと眼鏡は…御堂の為だと
言って彼の元から永遠に立ち去ってしまうようなそんな気がしたから。
 だから克哉は訴えかける。それは間違いだと。
 本当に愛しているのならば…どちらの世界の御堂でも、御堂である
事は変わらないのだから。
 そう結論付けて、克哉は…全力で叫んでいった。
 
「どちらの世界の御堂さんだろうと、『御堂孝典』という…佐伯克哉という
人間が心から愛した存在である事は変わらないんだ! だから…絶対に
諦めるなよ! 俺…!!」
 
 
 
 そう克哉が叫んだ瞬間、眼鏡は驚いた表情を浮かべていく。
 そして…どこか儚く笑っていった。
 こんなに切ない表情を浮かべられるなど知らなかった。
 ただ一方的に、克哉の言葉に耳を傾けていく。
 けれどそこに拒絶の色はなく、静かに聞いて…一つだけ、大きく
頷いて…こう告げた。
 
―あぁ…判った…
 
 と、ただ一言だけ告げて…そして、幻のように…もう一人の自分と
御堂は、消えてしまった。
 その場に残された者は、最初…二の句が告げなくなった。
 ただ…これで、もう二度ともう一人の自分に会うことはなくなって
しまったのだと…その事実が、克哉に実感を伴って襲いかかっていく。
 
「はっ…は…」
 
 伝えられる想いは、最後に精一杯伝えた。
 自分がいったことは、亡くなってしまったこの世界の方の御堂にとっては
残酷極まりない一言だったのかも知れない。
 けれど…その事に拘って、彼が目の前の幸せに手を伸ばせずに諦めて
しまうことだけは嫌だと…そう思ったのだ。
 だから、克哉は伝えた。
 亡霊となった御堂に恨まれてしまう事になっても…それでも、自分は
彼に最後の言葉をどうしても言いたかったのだから仕方ないと思ったからだ。
 
(もう…二度と、お前に…オレも、会えないんだな…)
 
 体中から力が抜けて、その場に座り込んでいく。
 同じ身体に存在していたもう一人の自分。 
 あの謎の眼鏡を掛けてから、自分の中にまったく異なる性格をした
もう一つの人格が存在している。
 その事実を知った時は、彼の存在が怖かったし…認めたくなかった。
 けれどもうこの世界のどこにも…彼は存在しない。
 それは克哉に、自分の半分がもげてしまったような喪失感を覚えさせた。
 その場にいる誰もが、何も発せないまま沈黙だけが落ち続ける。
 長い静寂を破ったのは、Mr.Rでした。
 
「やれやれ…せっかく私が大がかりな仕掛けと様々な思惑を散りばめたと
いうのに…結局、一流の舞台ではなく、三文芝居のような結果が出来上がった
だけですね…。まったく、佐伯克哉という存在は常に私の予想と思惑を裏切り続ける
存在だというのがよ~く判りましたよ…今回の件でね…」
 
 呆れたように呟く黒衣の男の瞳は、冷たく…そして冷ややかだった。
 まるで自分の言うことを聞かない玩具など、興味が失せたという感じの
態度だった。
 
「貴方、という人は…」
 
「けど、それなりには楽しめましたよ。けれど…もう、貴方は完成してしまった
ようですね。これ以上私が何をしようと、今の貴方という存在はもう大きく変容
することもあの方を同時に内包する事もない。無限の可能性を秘めていた人間から、
実につまらない一人の人間が生まれただけですね…」
 
 そういって男は踵を返していく。
 もう…亡霊となった御堂孝典にも、完全に人格が固定されてしまった
佐伯克哉にも関心など持てないというように。
 その氷のような冷たさに、二人は何も言えなくなる。
 下手に反論したり、憤りをぶつけたりなどしたらタダでは済みそうに
ないぐらいに…Rは不愉快そうなオーラを立ち昇らせていたからだ。
 そしてコツコツ、と硬い床の上に足音を立てていきながら…完全に
黒衣の男の姿は、扉の向こうに消えていった。
 御堂は立ちつくしたまま茫然と…消え入りそうな声で呟いていく。
 
―私は一体…どうすれば、良いんだ…?
 
 彼らしくない、困惑しきった声だった。
 無理もない、彼の中には眼鏡を掛けた佐伯克哉への憎しみだけで
満たされていたのだから。
 けれど彼の本音を知って、御堂はこれ以上…憎めなくなってしまった。
 こうして御堂を亡霊という存在に変えてしまうぐらい強い怒りを、憎悪が
自分の中に渦巻いていた筈だった。
 なのに…その感情が無くなったら、自分の中で芯が抜けてしまった
ようになってしまったのだろう。
 この人がこんな風に弱っている姿を、今まで克哉は見たことがなかった。
 
―どちらの佐伯克哉にとっても、御堂孝典という存在は自分には
手に届かない、遥か高みに存在していた人だったから
 
 他者に厳しい代わりに、自分に対してはもっと厳しくて。
 若くして部長職に昇り詰めるに有能で。
 別世界のように感じている存在だった。
 なのに…もう一人の自分を憎み、そしてその憎しみが昇華されて
どうすれば良いのか惑っている姿は、凄く人間臭く感じてしまった。
  生々しい感情が、この人の中にも存在しているのだと…失礼かも
しれないが、克哉は知ることが出来て身近に感じられてしまった。
 
「御堂、さん…」
 
 この人が憎悪して、心を通わせたのは結局もう一人の自分の方で。
 克哉が残ったとしても何にもならないだろう。
 けれど…それでも、この人に対して何かしたかった。
 その想いが…予想もつかない結果を、もたらしていった。
 触れられないと判り切っていながら、克哉は御堂に向かって指先を
伸ばしていく。
 
「っ!!」
 
「なっ…」
 
 その瞬間、信じられないことが起こった。
 御堂の肩の部分と…克哉の指が、重なり合った。
 しかしそれは克哉の身体に、御堂が接している部位だけまるで溶けて
一体になってしまったような現象だった。
 
「もしかして…?」
 
 目の前の光景に、疑いの感情を持ちながらも自分の仮説が正しいことを
証明するようにグイっとさらに御堂に触れていく。
 …そして、御堂に触れた部位は間違いなく…溶け込んでしまっていた。
 
―これは、一体…何なんだ…? 何に触れようとも、何をしようとも今の私は
すり抜ける筈なのに…これでは、まるで…私の身体に触れている時のようだ…
 
「えっ…それ、は…どういう…意味、ですか…?」
 
 克哉は相手の言葉を聞いて、呆けたような表情を浮かべていく。
 だが先に体制を立て直したのは、今度は御堂の方だった。
 グイと間合いを詰めて、自ら克哉の方に体当たりしてくる。
 瞬間…何かが、自分の中に溶け込んでいくような奇妙な感覚を覚えていった。
 
「…やはり、な。どうやら…私は、君の身体を使えるようだ…」
 
 そして、奇妙な現象が起こった。
 紛れもなく克哉の声なのに、御堂の言葉が口から紡がれていく。
 そう、克哉自身は自覚がなかった。
 何があっても御堂を救いたいと願う気持ち、助けたいと願う気持ち。
 その為に自らすら投げ出しても良いという感情を抱いた為に…克哉には
御堂の魂に対しての抵抗がなくなってしまっていた。
 俗にいう憑依という行動だ。
 幽霊になるということは五感の感覚も、未来も何かを為すことも何も
出来なくなってしまう。
 けれど…唯一、出来るようになることがこの他者の身体を乗っ取るという
行動なのだ。
 さっきまでは別世界のものとは言え…御堂自身の肉体があった。
 だから他人の身体を奪おうなどと考えた事はなかったし試すこともなかった。
 けれどこの克哉の肉体は…さっきまで宿っていた、他の世界の御堂の
肉体よりも遥かに馴染んで、自由に使えた。
 
「やはりな…君の身体の方が、向こうの世界の私のものよりも自由に使える…。
一体これは、どうしてだ…?」
 
『それは多分、オレが全ての事情に通じているからだと思います…。ええっと
上手く言えないんですけど…オレ自身は、貴方の命を奪ってしまった事に
対して償えるというのなら…この身体を貴方に明け渡してしまっても構わないと
すら思っています。…そういう気持ちが、もしかしたら…この現象を引き起こして
しまっているのかも知れませんね…』
 
 克哉の身体の中に収まっている状態だから、今度は克哉の声が
頭の中にテレパシーのように響いていく。
 その一言を聞いて…御堂は、克哉からの強い情を覚えていった。
 嘘偽りがない、いや…同じ身体を共有している状態だからこそ…一切の
誤魔化しが効かない克哉からの真実の想いが溢れてくる。
 温かくて優しい…本気で自分を案じている気持ちが…彼の身体に
魂が包み込まれている状態だからこそ、ダイレクトに伝わってくる。
 その瞬間、どれだけ死が寒くて冷たいものなのかを御堂は思い知った。
 そして生きている間は蔑ろにしていた、人の温かさや優しさがどれだけ
愛おしく感じられるものなのかを思い知っていく。
 
―克哉の身体は温かかった。魂が包み込まれて守られていると
強く実感が出来るぐらいに…
 
 それが御堂の、荒んでいた心を癒していく。
 たった今、もう一人の佐伯克哉と別離して空虚になり掛けた心を
埋めていってくれる。
 当然、それだけで全ての傷が癒える訳ではない。
 けれど…冷たすぎる世界に突き落とされた身だからこそ…自分の魂を
丸ごと受容して、己の身に受け入れた克哉の存在に癒されていく。
 
「…本当に、君は…私がこの身体を使って生きる事を望んでも…
構わないというのか…?」
 
『はい、構いません。貴方の為に出来ることがあるのでしたら…
それは、オレの幸せですから…』
 
 そうして、自分の脳裏で克哉が儚く笑ったのを感じ取っていった。
 だから御堂は問いかけずにはいられなかった。
 
「それは…どうしてだ? ただ償いの為だけに、君は私に…其処までするのか…?」
 
『…償いだけじゃ、ないです。…もう一人の俺が、貴方を愛したように…きっと、
オレも知らない内に…貴方に惹かれて、愛すように…なっていたんでしょうね…』
 
 そうして、泣きそうな笑みを浮かべながら彼がそう答えていったのを感じ取っていった。
 同じ身体を使っているからこそ、一切の嘘偽りが存在出来ない距離で…
今、二人は語り合っている。
 それで御堂孝典は、克哉が…もう一人の彼に向っていっていた言葉の一つを
思い出していく。
 
―どちらの世界の御堂さんだろうと、『御堂孝典』という…佐伯克哉という
人間が心から愛した存在である事は変わらないんだ! と…
 
 なら、同じことが言える筈だ。
 一見すると正反対にしか見えない眼鏡を掛けた佐伯克哉と、掛けない方の彼。
 けれど…やはり、どちらも佐伯克哉なのだ。
 自分が最後に心を通わせた方も、こうして我が身にこちらの魂を受け入れて
自分の人生を明け渡そうとする愚かな選択をしようとする彼も…紛れもなく
今、自分が惹かれ始めている…『佐伯克哉』なのだ。
 その事実を、御堂は受け入れ始めていく。
 あれ程生々しかった憎悪は、簡単には消えてはくれない。まだ自分の心の
中で燻り続けている。
 けれど其れは事件が起こった当初に比べれば随分と小さなものに変わり
つつあった。
 
「…君みたいな、理解出来ない存在は初めてだ…。どうして、どちらの
佐伯克哉も…こんなにも、私の心を惑わせ…おかしくさせるんだ…?」
 
 克哉の身体に収まったまま、御堂は力なく呟いていく。
 こんな形で、相手を許してしまう日がこんなにも早く来るなんて…
信じたくなかった。
 けれど、憎しみを溶かす数少ない方法は…その相手に直接ぶつけること、自覚を
する事。そして愛を持って労わられること、そして時間の経過だけなのだ。
 自分らしくないぐらいに感情をむき出しにして、本音でぶつかりあって…そして
もう一人の克哉に受容されたからこそ、御堂の心は憎しみという深い霧が
晴れ始めていった。
 
『ごめん、なさい…』
 
「謝るな…それで、もう一度問う。本当に…君は私がこの先、君の身体を
使ってこの先の人生を生きる事になっても…その際、君の人生というものが
なくなってしまっても構わないと、それぐらいの覚悟で言っているんだな…?」
 
『………はい、そうです』
 
 その一言を聞いた瞬間、御堂は意を決していった。
 そしてこれ以上、佐伯克哉に対しての憎しみを抱くのは止めようと…
そう思った。
 自分の人生を捧げる覚悟で、自らの身体までも明け渡そうとするぐらいに
こちらの死を悔いている相手に対して…どうして、これ以上恨めるものかと思った。
 
「…君という存在は、愚かだな…」
 
『そう、ですね…』
 
「だが、私はそういう愚かさは…どうやら、嫌いではないらしい…」
 
『えっ…?』
 
 克哉が驚いた声を漏らしていく。
 だが、御堂は苦笑しながら呟いていった。
 心の中はグチャグチャで、あまりに色んな事がたった二日の間に起こり続けて
混乱してまとまってくれなかった。
 自分は肉体を失い、人生も…これから先の未来も全て閉ざされた。
 なのに…もう、彼を憎むことも報復しようと思うドロドロした想いを抱き続けること
自体がもう馬鹿らしくなってきたのだ。
 当然、全ては消えた訳ではない。けれど今の御堂は深い闇の中に鮮烈な
一条の光が差し込んで照らし出してくれたようなそんな心境になっていたのだ。
 
「…君の身体を、使わせて貰おう…。私には、まだやりたい事や成したいことがある。
当然、他人の人生を通じてになるから…不便さや不自由さは感じるだろう。だが、
君が構わないというのなら、この身体を遠慮なく使わせて貰おう。
 それで、構わないな…?」
 
 それは口調的には実に冷たいものだった。
 だが、同じ肉体を共有している状態だからこそ…今の御堂は、少しは温かい
感情を自分に持っている状態で、この提案を受けてくれたのだというのがしっかりと
感じ取れていく。
 それは半身を失ったばかりの克哉にとっては、最大の救いとなった。
 だから彼は嬉しそうに…涙を浮かべながら、頷いていった。
 
『はい…オレの身体で良ければ、幾らでも使って下さい…』
 
 これから先、自分の人生がなくなってしまっても…それでも自分が
最も惹かれて、焦がれた人にこの身体を捧げて役に立つというのならば
それで構わないと思った。
 償いの気持ち以上に、克哉はこの人のためにやれることがあったことに
喜びを覚えていたから。
 例え自分という存在がそれで消えてしまうことになってもそれでも…
愛する人の為に、何か出来るならば…十分な幸せではないだろうか?
 だから克哉は頷いて、承諾していく。
 
―その瞬間、彼らは…被害者と加害者としてではなく、一つの身体を共有して
生きていく存在同士へと、関係は変化したのだった―
 
 
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[03/16 ほのぼな]
[02/25 みかん]
[11/11 らんか]
[08/09 mgn]
[08/09 mgn]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

 当ブログサイトへのリンク方法


URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/

リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ * [PR]