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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 最近掲載ペースが遅めですが、それでも付き合って下さっている方
どうもありがとうございます(ペコリ)
 やっとどの場面を出していくか決まったのでエピローグ行かせて頂きます~。

 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                             10
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 克哉サイド エピローグ1


 ―あの一件から半年余りの時が過ぎて、季節はいつの間にか春になろうとしていた

 佐伯克哉は、毎月…御堂孝典の月命日が来ると、見晴らしが良く…遠方に
海が望める丘に設えられた墓へ欠かさずお参りに来ていた。
 其処に辿りつくと同時に、克哉は周辺を丁寧に掃き…墓石を綺麗に
布で拭いてから花を添え…線香に火を付けていく。
 黒光りする見事な墓石に、玉石が敷き詰めらられ…隅にはツツジや椿の
花が植えられている。
 その敷地内を見事なぐらいに綺麗に掃除していくと…佐伯克哉は
汗を拭って一息突いていった。

―まったく…君も飽きずに良く…毎月、ここを訪れるな…

 その瞬間、自分の傍らに…御堂の気配を感じた。
 振り返っていくと…其処には彼の魂が存在している気配を
感じていった。

―えぇ、だって…貴方の墓ですから…やっぱり出来るだけ
気を配ったり…綺麗に保ちたいですから…

 克哉は微笑みながら、心の中でそう答えていくと…相手が呆れたように
溜息を吐いていったのが感じれた。
 実際に幽霊である御堂が呼吸をしている訳ではないが、霊体と言えど
元は人間である。
 感情表現や仕草の類は、生前と変わる処は殆どない。
 彼を視覚という形で克哉は常に据えられる訳ではないが…一つの肉体を
共有する同士として、今の克哉は御堂の声をほぼ確実に聞きとることは
可能になっていた。
 皐月の、気持の良い風が周囲に軽やかに吹きぬけていく。

―まったく、君はお人好し過ぎるな。ここに来れば…せっかくの休日の
半分が潰れてしまうのは判っているだろう。ここにあるのはすでに
私の亡骸でしかない…。魂は今は、君と共にある。
 それなのに…どうして、墓参りをする事に君は拘るんだ…?

―逆ですよ、貴方とこうして…常に共に生きるようになったからこそ…
オレは貴方の身体が収められている場所を蔑ろにしたくないんですよ…

 そういって、克哉は墓の前で手を合わせていきながら黙祷を
捧げていく。
 その時の彼は…酷く清廉な気配を身に纏う。
 御堂は、克哉のこの姿を見る度に酷く神妙な感情をいつしか
抱くようになった。
 感慨深い表情を浮かべながら…彼は、自分の為に祈る青年を
どこか切ない眼差しで見つめていった。

(生前は…いつまでも死者に囚われたり…死者を供養する事など
真剣に考えたりしなかった…。むしろ、いつまでもそういうことに時間や
気を取られる事を良しとしていなかったな…私は…)

 合理主義であり、常に新しい仕事に追われている御堂にとって…
30年も生きていれば、世話になっている相手や取引先が亡くなる事に
直面した事は何度もあった。
 けれど…生きていた頃、彼はどんな相手の死も長くは引きずらなかった。
 本当に恩を受けた相手を亡くした時は涙を浮かべる時もあった。
 だが、彼は長くそれを引きずらなかったし…其処まで墓参りとか、法事の類を
重要になど思わなかった。
 しかし、自分がそれを捧げられる立場になって初めて、彼は墓参りや
祈りに…価値を見出すようになった。
 
 死者への黙祷は、相手への敬意であり想いでもある。
 毎月繰り返されるこの行動が…この半年の間に、佐伯克哉という
人間に対して抱いていた全ての憎しみを洗い流していった。
 同じ肉体を共有する形だからこそ、御堂と克哉の間には一切の誤魔化しは
効かない。
 克哉が彼を軽んじたり、欺こうとすれば御堂にはすぐに判ってしまう。
 だからこそ…真剣に彼がこちらを今でも愛し、想いやる気持ちから
この行為を繰り返していることが伝わってくるのだ。

(…本当に、あいつとは…別人のようだな…)

 二重人格だの、憑依だの…そんな単語が、まさか自分の人生の中に
絡んでくるなど生きていた頃はまったく考えたことがなかった。
 御堂は今でも、眼鏡を掛けた方の佐伯克哉を時々思い出す。
 彼に対しての怒りは、まだ燻り続けている。どこかで…最後に顔を合した時の
激情に引きずられた時の感情は整理がついていない。
 けれど…同じ佐伯克哉でありながら、今の克哉と…眼鏡を掛けた彼とは
いつしか完全に区別して考えるようになった。
 例え肉体は同じでも、宿っている魂は異なるのだと。
 されど、自分を想ってくれているその気持ちだけは…どちらの彼であっても
本当のものだったと今は理解していた。

―これは自分の為だけに捧げられる祈り

 そう、死者を心から悼む行為には意味がある。
 …本当に自分の死に対して涙を流してくれる者。
 亡くなった後も心を砕き、想いやってくれる家族や克哉の存在が
あったからこそ…憎しみはいつしか晴れ、自分は本来あるべき心の
在り方を取り戻していった。
 一部の隙も見せないぐらいに真剣に…自分の墓の前で黙祷を
捧げてくれている姿を見ると…胸が苦しくなってくるようだ。
 そして、御堂は…この瞬間いつも克哉が涙ぐんでいることに
気づいている。
 だから…終わると同時に、そっと背後から包み込むように
抱きしめていく。

「あっ…」

 その瞬間、克哉は…こちらの気配に気づいたように小さく声を
漏らしていく。
 御堂からはこの瞬間、克哉の身体から温かな空気を感じて。
 克哉の方は、実体はなくても…御堂を、大気を通じて存在を
感じとっていく。
 切なくも、心が温まる一時。
 彼が墓参りをする度に…どうして自分が生きていた時に
巡り合えなかったのかと思う反面…この時間を重ねる度に、確実に
眼鏡を掛けていない佐伯克哉との間に絆のようなものが生まれてくる。

「御堂、さん…其処に、いるんですね…」

―あぁ…私は、ここにいる…

 今の御堂にとって、この世界に留まれている拠り所は…彼の肉体だ。
 完全に憑依している間は、御堂が彼の肉体を使えるし。
 こうして…幽体の状態で、大気に溶け込んだり…周囲を見回したり
通じ合っているものなら微かに存在を知覚して貰うことも出来る。
 穏やかで静謐な時間。
 そうしてお互いに無言のまま…そっと目を閉じて過ごしていく。

―黙祷は終わったのか…克哉…?

―はい、終わりました。そろそろ…帰りましょうか…御堂さん…

―あぁ、そうすることにしよう…

 そうして、御堂が歩き始めていくと…克哉は、ゆっくりと彼の方に
向かって手を伸ばしていった。
 実際に手を握り合える訳ではない。けれど…御堂の気配を感じる方へと
指先を差し出していく。
 まるで恋人のように、けれど…生身を持って触れ合えることはない。
 けれどその度に克哉は…あの二日間の間に、何度か御堂に触れあったり
口づけたりした体験を鮮明に再生していく。
 それだけで頬が熱くなり…顔が真っ赤になった。

―まったく君は本当に…可愛らしい反応をするな…

 ふと、御堂の声が鮮明に聞こえていった。
 フワリと優しく微笑まれた気配がして…一瞬だけ、端正な御堂の面立ちを
はっきりと思いだしていく。

―からかわないで下さい…恥ずかしくなります、から…

 最初の頃は、自分たちの関係はぎこちなかった。
 けれど同じ物を見て、同じ体験を…同一の肉体を拠点として共有していく内に
この半年間で、最大の理解者となった。
 お互いの温もりを感じあうことは出来ない。
 けれど…肉体という壁がないからこそ、心も近く感じ合えるし…何もかも
共有することが出来る。
 道が続いていく。これから何度も、自分たちはこの風景を眺めるだろう。

 御堂孝典という人間の亡骸がこの地に収められている限り…
佐伯克哉にとって、ここは特別な意味を持つ。
 彼の家族に、正式に認めて貰える訳ではない。
 御堂の魂が、彼の身体を介してこの世界に存在している事実を
告げられる訳ではない。
 けれど、彼の死を今も悼んでいる。偲んでいる存在がいるのだと…
そう伝えるように彼は月命日に、都合がつく日はここに訪れ…
献花と黙祷を捧げていく。
 だからこれからも…自分たちは何度も、移ろいゆく季節と共に
この周辺の景色を眺めながら、こうして共に帰路についていくのを
繰り返していく事だろう。
 心に温かなものが満ちていく。
 そして微かに存在を知覚出来る御堂が、こちらを振り向いたような
そんな気がすると…克哉は静かに目を伏せていく。

―そして、静かに口づけを交わしていく

 実際に触覚として感じている訳ではない。
 けれど唇に何かが掠めていったような感覚をふわりと
遠まわしに感じていく。
 そして…自分の身体の中に、御堂の魂が入り込んでくる。
 まるで己の一部であるかのように…違和感なく、彼の魂を
その身に感じて…克哉は温かい笑みを浮かべていく。

―ありがとう

 その感謝の気持ちだけが、静かに伝わってくる。
 あまり多くを語らない人だから、簡潔にまとめられてしまっているけれど…
御堂の声が聞こえて、克哉はジィンと胸が熱くなっていく。
 出来るなら、貴方の身体があった時に恋に落ちたかった。
 熱い抱擁を、口づけを交わしてみたかった。
 ここに来るたびに…御堂と、心が通じ合う度にその願いが頭をよぎって
時に泣きたくなる時もあるけれど、今の克哉は以前のように空虚ではない。
 この身は、自分のものであり…御堂のものでもある。
 彼が世界に関わる為に必要な器なのだと。
 だからやっと、克哉は自分を大切にしなければと思うようになった。

 かつての彼は、自分などどうでも良いと思っていた。
 この世に存在していても何にもならず、人を傷つけるばかりで助けることすら
出来ない。
 そんな自分に絶望に似た諦めすら覚えていた。
 けれど今は違った。
 誰かの為に祈ること、愛すること。そして必要とされて相手に何か出来ることがあることは…
人を強くして、心を満たしていく。

「御堂さん…大好き、です…」

 そう告げて、克哉は微笑んでいく。
 誰にも祝福されない不毛の恋かも知れない。
 その人が亡くなった後に、恋に落ちて…こういう形で共に生きていくことに
なった事など人に話しても決して理解されないし…頭がおかしくなったと
思われるのがオチだろう。
 それでも構わなかった。
 例えこの世界に、克哉にだけしか見えなくても…御堂は確かに、こうして
自分の傍にいてくれるのだから。

―私、もだ…

 そして、いつの頃からか…御堂もまたこうして返してくれるようになった。
 お互いの中に、向こう側の世界へと隔てられたもう一人の克哉の存在が
よぎってチクリ、と胸が痛むこともある。
 けれど…彼とは、自分たちは世界を隔てられた以上二度と会えない。
 ならそれは過ぎ去りし過去と同じもの。
 それならば、今…こうして傍にいる存在だけを見つめて…誰にも
理解されなくても想いを交わし合えば良い。

―そして克哉は、御堂から赤面するような一言を告げられていく

 伝わってきた瞬間、克哉の顔は真紅に染まって俯いていく。
 だが決して嫌な気持ちではない。
 特に今日は週末の夜だ。遅くなっても全然問題ない。
 だから拒む理由はないのだが…けれど、やはりまだ…自分と御堂との
愛し合い方に戸惑いと違和感を覚えているのも事実だった。

―良いな、克哉…
 
 意志の確認ではなく、すでに確定事項のような口調で御堂が
告げていく。
 恥ずかしいし…半ば混乱していく。
 まだ二回しか経験していないから…怖くもあった。
 けれど…求められるのは、嬉しいから。
 だから克哉は悩んで暫く黙った末に…小さく告げていった。

『はい…貴方が、望むのでしたら…』

 そう答えた瞬間、我身に受け入れている御堂が…実に愉しそうに
笑ったような気がしたのだった―
 

 

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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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