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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                        10 
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克哉から全く覚えていないと、予想もしていなかった衝撃的な一言を
言われて…澤村は動揺しまくっていた。
彼にとってそれは正に青天の霹靂とも言える程だった。
克哉は両手を拘束された状態でベッドに転がされていて…それに対して、
澤村は両手が自由ですぐ傍から相手を見下ろしていた。
だが、立場的に圧倒的に優勢であっても…心理的な意味では、克哉の
一言のせいで逆転してしまった。
さっき克哉が意識を失っている間にMGNの御堂部長を此処に来るように
澤村は呼び出していた。
そして克哉を…こちらが優位に取引が出来るような状態に整えておく予定だった。
だが今の澤村はそんな自分が立てた策略の事など、見事に頭から
吹き飛んでしまっていた。
 
―克哉君が僕を忘れた。克哉君が僕を忘れてしまった。しかも全く思い出せないって
本気で言っている。一体僕はどうしたら良いんだ?ウワァァァ…!
 
…という感じの内容が彼の頭の中ではエンドレスで繰り返され続けていたのだった。
彼だって一回や二回顔を合わせた程度の間柄の人間に忘れられたのだったら
流石にここまでショックを受ける事はなかっただろう。
だが澤村と克哉は幼なじみであり親友同士だった筈なのだ。
確かに小学校の卒業式の日以降は袂を分かって顔を合わせる
事はなかった。
けれどそれ以前は…誰よりも佐伯克哉という人間と一緒の時間を過ごして
きたのだと断言出来る。
…だからこそ彼の有能さに、自分が出来ない事を易々とこなしてしまうその
器用さに嫉妬を覚えて…いつしか陰で彼を貶める行為をしてしまった訳だが…。
 
「で、デタラメを言うのはいい加減にしたらどうなんだ! 君が…君が…僕を
忘れる訳がないんだから! 子供の頃はいつも一緒にいたし…僕らはウンと
小さい頃からずっと傍にいたんだ! そんな僕を…君が忘れるなんて事は
記憶喪失にでもならない限り、絶対に有り得る訳がない!」
 
「…あのう、力説している所…申し訳ないんですが…その、オレ…実は
中学に入学する以前の事ってあんまりはっきり思い出せなくて…。もしかしたら
貴方はオレの小学校時代の知り合いなんでしょうか…? 名前を伺っても
構わないでしょうか…?」
 
  克哉は真剣に困惑を隠せない表情でそう問い掛けていった。
とても拉致された者と…これから克哉をダシにして脅迫行為をしようと
する人間との会話とは思えなくなって来たが…両者とも真剣に
向き合い始めていった。
当初の澤村の予定では…御堂に部屋番号を伝えていない状態でこのホテル
まで呼び出し…その状態で克哉を散々ナブってその喘ぎ声を聞かせて…近くに
いながら助ける事が出来ないもどかしさを与え続けて…相手から冷静な
判断力を奪い、交渉を優位に持っていく筋書きだった。
御堂が克哉にあれだけ執着をしているなら…この手で確実にこちらにとって
都合の良いように話を持っていく自信があった。
ついでに言うと…決別してから十数年の月日が流れていても澤村にとって
佐伯克哉という存在は特別な意味を持っていた。
…昨日、こちらを一方的に殴り付けて来た恨みと痛みは容易に忘れる事
など出来はしなかった。
しかし此処に来て自分の事を全く覚えていないと…しかも本気で
言われてしまって澤村は密かにパニック状態に陥っていた。
…嫉妬も憎しみも劣等感も…結局は佐伯克哉という人間をそれだけ
意識をしているという事実の裏返しみたいなものなのだ。
 
「…嘘だ、そんな…まさか…君が僕を忘れるだなんて…そんなの、嘘だ…」
 
「…いいえ、ご免なさい…。本当にオレは貴方を誰だか知らないし…思い出す事も
出来ないんです…。だから名前を、どうか…教えて下さい…」

 澤村はついに我慢出来なくなって項垂れていった。
 どんな形であっても彼にとって今でも佐伯克哉という存在は大きな位置を
占めている存在だった。
 確かに間違った事を子供時代の自分はしてしまっていた事を薄々とは気づいている。
 けれど胸の奥に存在していた感情には…好意や憧憬といったプラスのものも
含まれていたのもまた事実だったのだ。
 
(この目は…本気で言っている。な、なら…昨日、僕を勢いよく殴った克哉君は
一体何だったんだ…? 彼の方はちゃんと僕を覚えている風だった…。
なのにどうしてたった一日で、克哉君はこんなに変わってしまっているんだ…?)

 昨日の夜に遭遇した方の眼鏡を掛けた克哉の事を思い出して…強烈な
違和感を覚えていった。
 眼鏡を掛けた方は、自分に対してこんな目を決して向けなかった。
 ちゃんとこちらの事を覚えている風だった。
 なのにどうして…今、目の前にいる顔は真剣な顔をしていきながら澤村のこと
など知らないと訴えかけてくるのだろうか。

「判らない…判らないよ…! 昨日、君に遭遇した時は…僕はちゃんとこっちのことを
覚えている風だったじゃないか! なのにたった一日でどうして…そんな風に忘れられるんだ!
僕は…僕は一日だって、君のことを完全に忘れる事なんて出来なかったのに!」

「えっ…今、何て…?」

 澤村の口から予想もしていなかった言葉が漏れて、克哉は言葉を失っていく。
 昨日の克哉は体調を崩して…一歩だって外に出ていない筈だ。
 それなら彼と遭遇する訳じゃない。
 なのに彼が紛れもなく「佐伯克哉」と顔を合わせているのなら可能性は一つしかない。
 …この目の前の男性は、もう一人の自分の方と会っているという事実だ。

(もしかしてこの人は…『俺』の方の知り合いなのか…?)

 澤村の発言から、ついにその考えに至っていった。
 相手が動揺しているのを見て、そして両手を縛られているこの状況をどうにか
打破しようと克哉は必死になって考え始めていった。

(この状況をひっくり返すには…どうしたら良い? 今はこの人は動揺しているから
これ以上のチョッカイを出されないで済んでいる訳だけど…この人が、本気で迫って
来たりこっちに危害を及ぼすような事をしてきたら…オレには抵抗する術すらない…!)

 一昨日の夜の本多と御堂を、そして昨日の夜の太一のことが脳裏に
浮かび上がっていった。
 この男性のことはどうやっても思い出せない。
 けれど瞳の奥に…先日の彼らと同じような情熱的なものを確かに感じられた。
 今は混乱しているから手を出されないで済んでいる。
 だがこの状態がいつまで保たれるかは全く未知数なのだ。
 下手をすれば相手が体制を立て直した次の瞬間には組み敷かれてしまうかも
知れない危惧感を克哉は覚えていった。
 こうして手を縛られてしまっている以上、ただ時間を引き延ばしても意味は
ないのかも知れない。
 誰かが助けに来てくれるか、相手の気持ちを根本的にでも変えない限りは…
現状は決して改善しないだろう。

(誰も助けに来てくれないかも知れない…! オレ一人の手で切り抜けなきゃ
いけないのかも知れない…! 無駄な足掻きかも知れないけれど…オレは
本当に、もう一人の俺のことが好きなら…安易にもう、他の人間に抱かれたり
凌辱される訳にはいかないんだ…!)

 そうしてキっと鋭く相手を見遣っていきながら…克哉は相手と向き直っていく。
 張りつめたような重苦しく、ねっとりとした空気が二人の間から立ち昇っていった。
 少しでも気を抜いて相手に踏み込まれれば、手首を拘束されている克哉には
抵抗する術がなくなる。
 その緊張感を痛烈に感じていきながら…克哉は必死の形相で相手に
向き直っていったのだった―



 
 
 
 



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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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