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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

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―太一の告白を断った翌日の夕方から、克哉の運命は大きく動き始めていた

 朝、目覚めると同時に太一と一緒に自宅で朝食を取りながら雑談してから
別れて、克哉は出社していった。
 先日に休んだ事については、本当に迷惑を掛けてすまないと第八課に
いる全員に謝罪してから通常の仕事に戻った。
 何故か本多は…一昨日はあんなにもこちらに熱烈に迫っていたにも関わらず
今日顔を合わせたら、腫れものを触るかのような対応になっていたのだけは
解せなかったが、昨日休んでしまった事で溜まった大量の業務をこなしている間、
何度もふとした瞬間に…こちらに想いを寄せてくれている御堂と本多に対して
どうしようかという事に考えを巡らせていた。
 そうして昼休みの時間を迎えていくと…本多と顔を合わせるよりも前に
逃げるように屋上に移動して、一人で物想いに耽っていた。
 本日の天気は快晴、目にも鮮やかな青空が広がっているというのに…
自分の心は暗澹たるものだった。
 今、こうして眺めていると…本当に良い天気なのに、今朝の天気予報では
夕方から大きく崩れると言っていた。
 とてもそうは感じられないな…とふと考えていきながら、空を眺めて…
克哉は自分の心の整理を始めていった。

(…やっぱり、二人に対してもキチンと顔を合わせて断りを入れるべきだよな…。
例えあの例の薬の力が大きいにしても…太一と同じように、あの二人も
真剣に想ってくれている…。それなのに、いつまでも曖昧に引き延ばして
いたら凄く失礼だし…残酷だと思うから…)

 昨日、太一に泣きながら謝った事で…克哉は腹を括る覚悟が出来ていった。
 真剣に想ってくれている相手の気持ちを断るのは、非常に胸が痛む事だ。
 けれど…それ以上に、いつまでも相手の気持ちを弄ぶような真似はしたくないと
いう感情が生まれて来ていた。

(…オレは、あいつが好きなんだ…。他の人間から見たら不毛な想いかも知れない…。
いつも一緒にいられるようなそんな関係は築く事が出来ないだろうし、あいつの方が
オレをどう想ってくれているかも判らない。けど…それでも好きなんだ…)

 もう自分の本心に気づいてしまったから。
 だからこれ以上、問題に対しても目を逸らす事が出来ない。
 なじられるかも知れない、泣かれるかも知れない、そして…下手をすればこれまで
築いて来た相手の関係を壊してしまう事になるかも知れない。
 その事を考えると少し怯んでしまいそうになるが…こんな曖昧な状況を続けて
しまう事の方が罪だと考える事にした。

(…今日、本多を呼び出して…まずは本多に対して、謝ろう…。それから…御堂さんに
顔を合わせて、言おう…。想ってくれているのは嬉しいけれど…オレには本当に
好きな相手がいますから…ごめんなさいって…)

 御堂に対しては一昨日に、あんなにも情熱的に抱かれてしまった部分があるから…
克哉の中にも大きく惑う部分があった。
 あの激しさを、熱さを覚えているからこそ…気を抜くと後ろ髪を引かれてしまうような
気分になってしまう。

―克哉、愛している…

 何度もせつなそうな声で、耳元でそう囁いてくれていた。
 その声に、ゾクっとして…けれど必死に頭を振っていく。

(…どうしよう、御堂さんにも…オレ、惹かれ始めている…。けど、駄目なんだ…。
二人とも、欲しいだなんて…そんな事を、考えちゃいけない。どちらか片方を
選ぶしかないんだ…。それなら、オレは…オレは…!)

 そうして、もう一人の自分の顔を必死に想い浮かべていった。
 けれどすぐに御堂の顔も浮かんで来てしまう。
 自分の中でせめぎ合う感情が、苦しかった。
 どちらも好きなのだと、罪深い思いがジワリと広がって…片方を諦めないと
いけないという理性が…克哉を大きく責め立てていた。

「好き、だよ…『俺』…大好き、だよ…」

 だから自分の想いに負けないように、勇気を振り絞っていった。
 そして…迷いを断ち切る為に、本多にメールを打つことに集中していった。
 
『今夜、本多に大切な話がある。夕食を一緒に食べてくれないか?』

 其れは余計な感情を一切交えない、簡潔な一文だった。
 散々迷いながら、どんな事を書けば良いか考えて…削除を繰り返していきながら
結局、そうやって纏めて…相手に向かって送信していった。
 だが、次の瞬間…フワリ、と甘い匂いが漂っていくのを感じていった。
 急速な眠気が、襲い掛かってくる。

(あれ…何だろう…。どうして、こんな…眠気、が…。満足に、立って
…いられない…。この、香りは…一体…?)

 克哉は、唐突に訪れる強烈な睡魔に…恐怖すら覚えていった。
 この香りはどこか…覚えがあるからだ。
 周囲の人間を惑わしたあの例の薬の匂いに、根底が似ている気がしたから。
 瞼が重くなって、開く事すら億劫になっていく。
 それでもどうにか目を開いて状況を把握しようと努めていくと…いきなり、
背後からはがい締めにされて…何か布みたいなものを押し当てられた。

「っ…!」

 叫ぼうとした、だが声がすでに出てくれなかった。
 何者かの気配を、体温を感じていく。
 うっすらと視界に…白い手袋が、目に入った。

(オレの背後にいるのは…誰、何だ…? これは…Mr.R? それとも…
他の誰か、なのか…? どうして、こんな処に…?)

 相手の着ている服の袖が、辛うじて視界に入ったけれど…其れは黒い服なのか、
または濃い色のスーツなのか…ぼやけてしまっている頭ではまともに
認識が出来ない。
 そうしている間にも…其れはまるで甘い毒のように克哉の自由を奪い、そして…
意識を堕としていった。

(助けて…『俺』…御堂、さん…!)

 そして、無意識の内に…心の中に強く存在している二人に向かって助けを
求めてしまう。
 うっすらと涙を流しながら、必死に身体を揺すって微々たる抵抗を試みて
いきながら…。
 克哉の意識はそうして完全に閉ざされていき。

―そして数時間後、彼は予想もしていない場所で目を覚ます事になったのだった―
 

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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
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―現実に長い時間、存在し続けるのは久しぶりだった

 だから眼鏡はどうやって過ごせば良いのか判らず…己を持て余して、
当てもなく街を彷徨い歩いていた。
 職がある訳でもなく、友人関係を持っている訳でもない。
 どちらも其れは…もう一人の自分のものであり、眼鏡自身のものでは
なかったから。
 だからとある駅前にあるスターバックスのオープンテラス席に座って、
ただ無為に時間を過ごしていた。

(俺という存在は一体何なんだ…?)

 そんな哲学的な事を考え始めている自分がいた。
 一日を、無為に消耗する事しか出来ない身が歯がゆかった。
 自分に与えられた十日という時間は、あの男はどうして与えたのだろう。
 存在し続けるという事に慣れていないせいで、彼はとにかく戸惑いを
覚えながら…在り続けていった。
 すでに陽の落ちるのは早くなっているせいで…午後五時を回れば
日が大きく傾き始めていた。
 ふと空を眺めていくと…様々な色合いが折り重なって、空に美しい
夕暮れの景色が浮かび始めていった。

「逢魔ヶ時…か…」

 朝と夜の境、夕暮れの時間帯には古来から魔と逢いやすい時間帯と
されていた。
 だからこそそういった言葉が生まれた訳だが、そんな事をふと
考えて呟いた瞬間、いつの間にか自分の傍らには黒衣の男が立っていた。

「っ…!」

 まるで一瞬で自分の傍らに現れたような気がして、眼鏡は言葉を
失っていく。
 だが…目の前の男は、そんな様子をただ愉快そうに眺めるだけだった。
 そして気づけば、自分達以外の周りの人間の時間が止まっているような
そんな奇妙な空間が生まれていく。
 此処で自分達が何を話しても、行動しても周りの人間が気づく事がない…
不思議な空気を、あっという間にMr.Rは生みだしていったのだった。

「…こんにちは、いや…もう日が暮れるからこんばんはでしょうか。
残り後九日になりましたが…本日という一日を有意義に過ごされたでしょうか…?」

「ちっ…見れば判るだろう。今日という一日は無為に終わっている…。わざわざ
イヤミを言いに来たのか…?」

「おやおや…貴方様はどうして私が十日間という時間を貴方に与えたのか、
どうして昨日澤村様と出会うように仕向けたのか…その意図を全く理解されて
いないようですね…。こうしている間にも、ゆっくりと佐伯克哉さんに悪意の手が
伸ばされて来ているのに…。しかも貴方の軽率な行動がその速度を急速に
早めていってしまったのに…」

「…っ! 何だと、どういう意味だ…!」

「…言った通りの意味ですよ。今…佐伯克哉さんに危機が迫って
来ています…。貴方がこうして無駄に一日を過ごしていた間にも…
克哉さんは悪意に飲み込まれてしまいそうになっている…。
元々、佐伯克哉という人物に対して強烈な劣等感と嫉妬心を抱いていた
澤村様は…一昨日の夜の、御堂様と克哉さんの情事を偶然撮影した
事で…これまで抱いていた感情を昇華する行動に出ていたのに…
貴方はそれを止める処か、加速する行動を昨晩された訳ですからね…。
果てさて、どうされている事でしょうか…」

「…貴様っ! あの二人の事は…お前が糸を引いたようなものだろうが…。
あいつに男を惑わす香りを纏わせたのも、澤村をその場面に誘導したのも…
どうせ全て、お前が絡んでいるんだろうが…!」

「えぇ、その通りですよ…。多少、予想外の事が起こっておりますが…
今回の一連の出来事は全て、私が裏で糸を引かせて貰っております…」

「…ほう、随分と素直に認めるんだな…」

 あまりに平然と笑いながら答えられてしまったので…眼鏡はむしろ
拍子抜けしていった。
 だが…男の纏う不気味な空気は一層濃密さを増していく。

「…えぇ、貴方達二人があまりに不器用な恋愛をなさっているみたいですからね…。
じれったくなって、少し突かせて貰ったんですよ…。私はどのような結果になっても
構わないと思っております…。私はその翻弄する様をも愉しんでおりますから…。
貴方達二人は…私の退屈を埋めて下さる最高の素材ですからね…。
ですから、今回のシナリオもこっそりと私の方で用意させて貰った訳です…。
これだけ多くの人間が介入している中で…どのような結末が貴方達二人に
用意されているか…其れを眺めていきたいと思いましたからね…」

「…貴様、まるで人を実験動物か何かのように言うんだな…。良い根性を
しているじゃないか…」

「えぇ、否定はしませんよ…。私が今、お二人をもてあそんでいる立場なのは
事実ですからね…」

 そうしてMr.Rは瞳を細めて眼鏡を見遣っていった。
 其れに負けじと…彼の方も、自分たちをもてあそんでいる男を鋭い眼差しで
見つめていった。

(あいつに一体何が起こっているんだ…?)

 正直、怒鳴り散らしたい衝動に…不快だから早く立ち去れと言いたい気分
だったが…最初の方に言われた、克哉に悪意の手が迫っているという言葉が
引っかかったのでどうにか抑えていく。
 恐らくその行動を取ってしまったら、手遅れになる予感がしたから…大きく
乱され続ある自分の感情をどうにか抑えていきながら、眼鏡は一先ず…Rから
詳しい情報をもう少し引き出していく事に専念していったのだった―


※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

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―澤村を感情的に殴りつけた後、眼鏡は結局適当に入った
ホテルにて一夜を過ごす事になった

 彼が眠っている間に様々な人間の想いが錯綜していた訳だが…
この時点ではまだ何も知らず、彼は朝日を浴びながら意識を
覚醒していった。

「朝か…」

 小さく呟きながら、彼は目を覚ましていく。
 変な感じだった、ずっと長い事こうして身体を伴って朝を迎えた
事などなかったから。
 たまに姿を現わせば、もう一人の自分を抱くぐらいしかやって来なかったし…
克哉が快楽のあまりに意識を手放してしまえば、それから少し経った頃には
自分は彼の中に還っていたからだ。

(普通の人間にとっては当たり前の朝を迎えるという行為が…俺にとっては
相当に久しぶりの事になる訳か…)

 そんな事をふと考えて自嘲的に微笑みながら、身体を起こしていった。
 出来るだけ安い宿を探したが、Rから渡された資金の十万円の内…5千円を
ただ素泊まりするだけでなくなってしまうのは痛い。
 ついでに言うと10時にはチェックアウトをしないといけないというのも
厳しかった。
 
(あのまま本多の家に泊れていればその辺はタダだった上に朝食ぐらいは
ついてきただろうに…。何故、俺はあんな真似をしてしまったんだ…?)

 そうして気持ちが落ち着いて来たからこそ、昨晩の自分の短絡的な
行動の数々を思い返して…我ながら呆れたくなった。
 あんな行動を取っても得るものなど何もない。
 それなのにどうして自分は…愚かしいとも言える事をやってしまった
のだろうか。
 本多がもう一人の自分に、前の日に迫っていたのを思い出した途端に…
感情のタガが外れて、暴走してしまっていた。

―許せない。お前ごときがあいつに触れるなど…! あいつは、俺のものだ…!

 心の中に湧き上がった純粋とも言える激しい感情。
 其れを振り返って思い出すと…否定したくなって小さく首を振っていった。

(俺は一体…どうしてしまったんだ…? 本多にしてしまった行為など
正気の沙汰とも思えない。だが…あの時は、どうしても抑える事が出来なかった…)

 睡眠は、頭の中を整理して…心も鎮める効能がある。
 落ち着いたからこそ、昨晩の己の愚行に溜息を吐きたくなった。
 全くもって自分らしくない行動だった。
 しかし…どうしてそうなってしまったのか、どの動機を胸に手を当てて探って
いくと…眼鏡にとっては否定したくなる真実にぶち当たっていく。

(…くっ、どうして俺が…もう一人のオレごときにここまで振り回される…?)

 本多にした行動によって、彼の本音は其処に大きく反映されている。
 御堂でも、本多でも、太一でも…他の人間がもう一人の自分に言い寄ったり…
その身体に触れる事がどうしても許せなかった。
 焦がすような独占欲が、胸の中に湧き上がって…彼を翻弄していった。
 認めたくなかった、自尊心がどうしても許せなかった。
 
―あいつにいつの間にか本気になってしまっているなんて…認めたくない…!

 そう強く否定をしようとした次の瞬間、昨日…昼間に抱いた時に見た
克哉の顔を思い浮かべていく。
 必死になってこちらに縋りついてくるその姿に、自分に罰を与えてほしいと
懇願する姿に…会えて嬉しいのだと全身で伝えて来た姿が鮮明に思い出されて…
急速に、会いたいと願う気持ちが芽生えていった。

(なあ…お前は一体、どうしているんだ…?)

 ふともう一人の自分の事が気になっていった。
 まさか昨晩、自分がいない間に太一が忍びこんで来て…そのまま、太一からの
告白を断ったとは言え…寄り添いながら一夜を過ごしているなど全く知らない
眼鏡は…克哉がどうしているのか、非常に気になっていた。
 だが時計の針を見れば午前七時を回っている。
 そして今日は…平日の朝だ。
 このホテルから、克哉の自宅に移動すれば恐らく午前八時を回っていく。
 そして克哉はそれより少し前には家を出てしまっている筈だ。

(かなりの可能性で入れ違いになるな…)

 そう考えて、結局チェックアウト寸前まで此処にいる事に決めていった。
 会社まで行くのは、流石にNGだという事は判っている。
 佐伯克哉が出社している時に自分が顔を出して…同時に存在している
処を見られたらどうなるか、それぐらいは流石に判るからだ。

「…このままあいつが出勤してしまったら、夕方までは顔を合わす事が
出来なくなるな…。それまでの間、何をしていようか…」

 働いている訳ではないから、相手の身体が空くまでこちらは身を
遊ばす事になってしまう。
 そんな事を考えて、ふと気づいていった。
 以前の自分は、相手を慮ってそれまでどうしようと何て考えた事など
なかった事に。
 会いたい時に顔を出していたし…自由気ままに生きていた筈なのに、
いつの間に自分はこんな風になってしまったのだろうか。

「…全く、あいつに知らない間に毒されてしまっているみたいだな…俺は…」

 そう自嘲的に呟きながら、脳裏に克哉の顔を思い浮かべていく。
 …彼の中に真っ先に思い浮かぶもう一人の自分の顔は、いつも切なくて…
どこか儚い笑みを浮かべている顔ばかりで。

(そういえば俺は…あいつの心からの笑顔を見た事などなかったな…)

 ふと、そんな事実に気づいて…何気なく思った。
 もう一人の自分が、心から喜んでいるそんな顔を見てみたいと…以前の
彼であったら、決して抱く事がなかった望みを…静かに想い浮かべていったのだった―
 

 我が家に出入りするようになった野良猫の一家、その後。
 今年の6月の終わりから顔を出すようになり三カ月ぐらい
三匹でずっとうちにご飯を貰いに来る状況が続いていたんですが
10月に入ったら、大きく状況が変わりました。

 恐らく通常に比べて、随分と長く子育てを母親猫がしていた訳だけど…
子供たちの大きさが自分と同じぐらいになったら、流石にもう面倒みなくて
良いと思ったらしく、母親猫は子猫達から距離を置くようになりました。
 んで子猫達は生後間もない頃からうちに餌を貰っているせいか、
ここを自分達の家と思うようになったらしく、二匹で寄り添って食堂の
椅子で良く眠るようになりました。

…そして子猫達は気づけば母に名前がつけられ、アメリカンショートヘアっぽい
外見している子がチビ、茶色のトラ縞に折れ曲がった鍵みたいなシッポをしているのが
アカちゃんと名付けられて、最近じゃ好奇心いっぱいにうちの中を探索するように
なってきました。
 ちなみに二匹がうちの食堂の奥の椅子で寄り添って眠っている写真です。



 上にいる灰色っぽいのがチビで、下にいるのがアカちゃん。
 この二匹は仲が良くしょっちゅうこの部屋でじゃれあいやっております。
 こっちの顔を見ると餌を強請ってくるしね。
 一応多少は慣れて来たのか近くに寄っても逃げなくなってきたけど
抱っこしたり撫でたりするとスーと逃げていく感じ。
 せめて抱っこぐらいは出来るようになりたいですが…まあ、すでに
半分ぐらいはうちの子になっております。

 ちなみにたまにこっちの足にすり寄って来てシッポを振り振りする
仕草とか見ていると妙に和みます。
 ちくしょう、可愛いじゃないか…と思いながら現在面倒を見ている
感じでございます、はい。
 


※7月25日からの新連載です。
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―御堂は大いに、葛藤していた

 昨晩、克哉と顔を合わせた時から芽生えた唐突な想いと…
先程、謎の人物から脅迫された事実に彼の思考は大きく
占められてしまっていた。
  電話の向こうでほくそ笑んでいた人物は、昨晩の克哉との
公園の情事を切り出していき…其れを撮影したと言って来た。

―貴方のような社会的地位がある人物が、こんな事をしたと判明して
例えばインターネットとかにその画像が流失とかしたら、MGNは
大打撃を食らいますよね…

 電話の相手は、ヘリウムガスでも使用していたのか非常に
高い声をしていた。
 そのせいかとても人間の声の響きとは思えない不自然な声音で
そう言われる様は…どこか現実離れしていた部分があった。

―詳細は、明日送られてくる書類の中に記してあります。この画像を
流失とかさせたくなかったらどうすればいいのか…詳しく言わなくても
判りますよねぇ?

 凄くイヤらしい口調でそう念を押していくと、電話は唐突に切れていった。
 克哉の事だけでいっぱいだった頭の中は、今度はその謎の脅迫者に
対しての疑問で埋められていった。

(どうして昨晩の情事を撮影なんて出来たんだ…?)

 まず、御堂は混乱しながらもその点に対して最大の疑問を
感じていった。
 そう…普通に考えれば有り得ない事だった。
 御堂が克哉への想いを自覚したのは、嵐のような激しい感情を抱いたのは
『街中で偶然に彼の顔を見た直後』だからだ。
 其れまで佐伯克哉という人間が、御堂の心の中を大きく占めていたかと
いうと答えは否、だった。
 むしろ昨晩は…御堂自身が、突然芽生えたその激しい想いに戸惑いを
覚えているぐらいだったのだ。

(そう…私が彼を欲しくなったのは。想うようになったのは…『昨日』からだ。
それなのにどうして…第三者が、撮影なんて出来る…?)

 そう、以前から彼を想っていたというのなら後をつけていたと言う事で
撮影出来るかも知れない。
 だが…『昨日』芽生えて、そして衝動のままに克哉を何度も公園で
激しく抱いてしまった。
 何故、其れを誰かが撮影など出来るというのだろうか?
 御堂は、Mr.Rの存在を知らない。
 あの謎多き男なら…人の思惑を、そして行動をさりげなく読んで幾重にも
策謀の糸を張り巡らせる事ぐらい決して難しい事ではない。
 けれど…御堂は彼の存在を知る由はなかった。
 だからこそ何者かの悪意を感じたが、その正体が誰であるかまでは
思い至る事が叶わなかった。

「まさか…彼の存在、そのものが私を陥れる為の罠…だったというのか…?」

 其れは、確証はない。
 けれど…可能性の一つとして確かに存在しているのも事実だった。
 昨日の佐伯克哉の身体から立ち昇っていた蟲惑的な香りが、御堂の心を
大きく乱して…捕えていった。
 だが…今まで、彼の身体からあのような匂いを感じた事が過去に一度
だってあっただろうか?
 あの香りを鼻腔に感じてから、自分がおかしくなったという事実はあった。
 急速に佐伯克哉という存在に、心を惹かれていった。
 だが其れで彼を衝動のままに犯した翌日の夜に…何者かに脅迫されて
しまったというのは、明確な悪意を感じた。

―まるで、御堂が其処で彼を犯してしまう事を知っている…其れを
教えた第三者がいるかのように…

 その事を考えた時、御堂の心の中に克哉に対して疑う気持ちが
芽生えていった。
 まさか、と否定したい気持ちの方が勝ったが…その疑問は彼の中に
大きな黒い染みを作りだしていった。

(克哉…君は、私を陥れる為に…昨晩、あの匂いを纏って姿を
現したのか…? あの男と、君はどんな繋がりを持っているんだ…?
教えてくれ、君は一体…何なんだ…? 訳が判らない…!)

 そして耐えられず、感情的にドン! と大きく机を叩いて…その憤りを
散らしていった。
 一人で考えれば考えるだけ、悪い方に思考が流れていくのが
耐えられなかった。
 
「私は…君を、好きになっただけ…なのに…! どうして、こんな風に
君を疑わないといけないんだ…! こんな真似、したくないのに…!
どうして他の男に抱かれていた! 何故こんなに電話をしているのに…
メールを送っているのに…君は何の反応もしてくれないんだ!
こんなにも私の心を大きく惑わす! ほんの僅かでも良い…何か
答えて、くれ…!」

 想う人間から、何の反応もないのは何よりも辛い事だ。
 自分だけが、一人相撲を取っているような気分になるから。
 御堂とて衝動的に相手を抱いた事で、不安だった。
 だからこそ貪るように相手を激しく抱いてしまった。
 少しでも克哉の中に己を刻みつけたかったから。
 なのに、今は…相手の反応がないままのせいで、悪い思考回路が
消えてくれない。
 
(君が私を陥れる為に…不思議な匂いを纏って誘惑しただなんて…
そんなの信じたくない…。考えたくない。なのに…君から何の反応も
ないせいで…そんな風に疑い始めている。克哉、君は何故…私に
何一つ返してくれないんだ…?)

 たった一通のメールでも、どれだけ短いものでも…克哉から
返信があれば御堂はここまで極度の不安に陥る事はなかっただろう。
 けれどあれだけ激しく求めたのに、抱いたのに克哉から何の反応がない
事実は急速に御堂の心に大きな闇を作り上げていく。
 其れは疑心暗鬼という名の、暗くて切ない感情だった。

「克哉、どうして…君を、信じたいのに…! 何で私に何の反応を
返してくれないんだ…! 何も…!」

 そして、滅多に泣かない筈の男は…悔し涙を一筋だけ流していく。
 知らない間に、彼は盤上に立たされて…黒衣の男の手によって操られ…
大きく翻弄させられていく。

―彼はまだ、その悪意の主の正体に気づく事もないまま…静かに操られ、
そして…苦悩をさせられ、一人で苦しみ続けていたのだった―
 
 

※7月25日からの新連載です。
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 少しずつ克哉の表情から迷いが消えていく。
 もう一人の自分への想いを、確かなものにしていったからだ。
 御堂に強引に抱かれた時点では、迷いがあった。
 本当にもう一人の自分を好きでいて良いのか、そういう気持ちがあったからこそ
その手を振り切る事が出来なかった。
 
(けど、今なら判る…。さっきの、あいつとの時間は嘘じゃないって。オレの都合の
良い夢なんかじゃなかったんだって…だから、もう迷っちゃいけないんだ…。
あんな風にオレの元にどんな形でも来てくれたのに、オレがフラフラし続けて
いたら…あいつにもう顔向け出来なくなってしまうのだから…!)
 
 それは人の顔色ばかりを伺っていた頃の克哉には決して出来ない
事だっただろう。
 これから本多に対しても、御堂に対しても頭を下げていかないと考えると
気が滅入りそうだったけれど…今はまず、目の前にいる太一と向き合っていった。
 無言のまま、火花が散るような勢いで両者の眼差しがぶつかりあっていく。
 太一の方とて、簡単に克哉をあきらめるつもりはないのだと…その鮮烈な
視線から伺える。
 けれど…泣きながらでも、みっともない顔を晒す事になっても克哉もまた一歩も
譲らない気配を見せていた。
 
「克哉さん、好きだよ…。貴方に受け入れて貰えないんだったらもう二度と
恋なんてしない…! それくらいの勢いで好きなんだ…!それでも、ダメなのかよ…!」
 
 太一が最後の攻撃に踏み切っていく。
 言ってみれば其れはある種の背水の陣に等しいものであった。
 それぐらいの真剣さで、太一は決してこちらを諦めてなるものかと
食いついて来ていた。
 しかし克哉は土下座の体制から緩やかに顔を上げていき、どこか達観
したような表情で首を横に振っていった。
 
「…ダメだよ太一。これからの人生、長いんだから…もう二度と恋をしない
なんて言っちゃダメだよ。本当に好きな人が出来た時の喜びは…何物にも
変えられないものなんだから…」
 
「それならどうして、俺の事を拒絶するんだよ克哉さん! 俺がこんなに
好きだって言っているのにどうして…!俺、マジなのに! 克哉さん以外、
他の人間なんていらないって思えるくらいなのに…!」
 
 太一の感情が高ぶっていけばいくだけ、逆に克哉は頭が冷えて
いくような思いがした。
 目からは静かに涙が零れ続けている。
 しかし泣くという行為は、感情を整理して冷静に処理をさせていく冷却水の
ような役割がある。
 さっきまでは克哉も激しく泣きながら、太一と応対していった。
 けれどそれでは決して、太一には通じないと…判って貰えないと悟った
克哉は淡々とした口調で、今度は呟いていった。
 
「…うん、太一の気持ちは良く判るよ。けどね…オレも同じなんだよ…。
決して譲りたくない気持ちがあるからこそ、そいつ以外目に入らない状態
だからこそ…オレはね、太一の想いを受け入れる訳にいかないんだ…。
ねえ、良く考えてみて。太一は今…オレの事をそんなに好きでいてくれている。
けれど…もし、他の誰かが太一を想って付き合ってほしいって言われたら、
受け入れられるかな? 其れが今のオレの心境だっていうのをどうか…
判って欲しいんだ…」
 
「っ…!」
 
 その一言に太一の顔がハっと跳ね上がっていった。
 冷や水を頭からぶっかけられたような反応になって、青年は言葉を失っていく。
 今の克哉の言葉で、どうしてこんなにも相手が頑なにならざるを得ないか…
ようやく心中を悟る事が出来たからだった。

(今、他の人間に想いを寄せられてしまったら…俺は、断るしかない。
こんなにも克哉さんを好きなのに、受け入れる事なんて出来ないから。
嗚呼、そうか…克哉さんがこんなに言っても受け入れてくれないのは、
好きな人をこの人は…今の俺と同じぐらいか、それ以上の強さで
思っているから、なんだ…)

 それに気付いた時、太一は目の前が真っ暗になるような気さえしていった。
 残酷すぎる悟らせ方だった。
 けれどようやく…自分の気持ちだけでなく、相手の想いにも気を回す
事が出来るようになった。
 人は好きになると自分の気持ちだけで精一杯になってしまう。
 其れが恋愛の怖い一面でもある。
 自分の想いが強すぎれば強すぎるだけ周りが見えなくなってしまう。
 そして相手の想いを、つい蔑ろにしてしまう愚も犯してしまうのだ。
 途端に…さっきまでの自分が恥ずかしくなっていった。
 太一もまた克哉に想いを受け入れて貰えなかった事で…落胆を覚えて
いたが…それでも、想いをぶつける事しか考えられなかった時に
比べれば徐々に冷静さを取り戻しつつあった。

「ねえ、克哉さん…一つ聞いて良いかな?」

「…うん、良いよ」

「克哉さんは…そいつの事、メチャクチャ好きでしょうがないの…?」

「うん、そうだよ。そいつが得られるなら…何もいらないってぐらい…
今は、大好きだよ…」

 小さな子供に淡々と言い聞かせるような優しい声音で、ごく自然に
克哉はそう返していく。
 其れを聞いて…太一は、また一つ涙を零していった。
 けれどそのすぐ後に、顔をクシャクシャにしながら…笑っていく。

「はは、酷いな…克哉さん。そんな風に言われたら…俺、引きさがるしか
なくなっちゃうじゃんか…。マジで、残酷だね…」

 だが、太一の口調からもどこか笑みが混ざり始めていく。
 もう笑うしかなかった。
 潔いくらい、きっぱりと相手に断られてしまった訳なんだから。
 けれど同時に、深く感謝もしていた。
 克哉はどんな形であれ、振られてしまったとはいえ…こちらの想いに
真正面から向き合ってくれた訳だから。
 これが曖昧に濁されてしまったり、思わせぶりな態度を取られてしまった
方がきっと太一の傷は深くなってしまっただろう。
 言ってみれば指にトゲが刺さった時の対処に似ているかも知れない。
 内側にこもった恋愛感情は、どれだけ押し込めようとしても自分の中から
突き破って表に現れてしまう。
 其れを対処しないでいれば延々と疼くような痛みからは逃れられない。
 心に刺さったトゲを、痛みから解放されるには思い切ってメスを入れて
原因を取り除くしかないのだ。
 その時はドバっと血が溢れて傷を負っても…迷いなくスパっとやられた方が
短時間で傷も癒えるし…いつまでもその痛みに苦しめられる事がない。
 克哉のその対応は、そんな感じだな…と何となく思った。

(スッパリ、克哉さんにやられてしまったな…けど、これぐらいきっぱりと
言われた方が…諦めがつけられるわ…)

 そう思ったら、ガクっと身体中の力が抜けていくような気がした。
 そして…克哉がいる方と反対側にゴロン、と転がっていく。
 自分の足先だけが相手の身体の一部に触れているようなそんな体制で…
一つだけ、我儘を言っていった。

「…判った、克哉さん。凄くきっついけど…この気持ちは諦めるよ。けど…
今は立ち上がれないから、少しだけこうして此処で休んでいって良いかな…?」

「うん、良いよ。この体制のままで良いなら…少し休んでいって」

 抱きあってしまったら、きっと変な気持ちになってしまう。
 けれど…少しだけでも良いから、克哉に甘えたかった。
 もうちょっとだけで良いから一緒に過ごしたかったから太一はそう我儘を言い…
間接的に克哉の温もりを感じていく。
 そうすると克哉は身体をズラしていって、背中合わせに太一の横に
寝そべっていった。
 お互いに顔は見ない、向き合わない体制で…体温だけが伝わってくる。
 これは太一にとってはある種の拷問に近かったが、同時に克哉の労わりも
感じられてまた苦笑したくなった。

(貴方は本当に優しくて…残酷だね克哉さん。けど…ありがとう…)

 そうして太一は克哉の体温を背中に感じていきながら、静かにむせび
泣いていく。
 泣いている顔を決して見られないように嗚咽を殺していきながら…自分の
恋を諦める為に、感情にケリをつける為に…シーツを強く掴んでいきながら
彼は涙を暫く流し続けて…二人の間に、どこかせつないような…優しい
時間が流れていったのだった―

※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                       10 
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 かつての自分は、人の顔色ばかり伺って生きていた。
 誰も傷つけたくなかったから。
 相手に失望されたくなかったから、嫌われたくなかったから。
 だからいつだって当たり障りのない事を言って生きていた。
 曖昧に濁して、決定的な言葉を吐かないようにしていた。
 そんな風に長年生きて来た克哉にとって、太一に対してきっぱりと
想いを受け入れる事は出来ないと断りの言葉を吐くのは…本当の事を
言うと相当に勇気がいる事だった。
 真っ暗な自分の部屋の中、ようやく闇に目が慣れて来たおかげで
相手の輪郭と微かな表情だけはどうにか伺う事が出来る。
 きっと、太一は…泣きそうな顔を浮かべているのだろう。
 そう考えると…酷く胸が痛むが、それでも頭を横に振って流されないように
堪えていった。

(…太一を傷つけてしまうのは辛いけれど…これ以上、オレは
過ちを重ねたくないんだ…!)

 すでに自分は、想いを自覚してから御堂に抱かれてしまった。
 其れが奇妙な薬を強制的に与えられてしまった効能のせいだと
言っても…死ぬ気で抵抗しなかった事、御堂を受け入れてしまった
事は自分の弱さであり…罪でもあった。
 御堂の事だって、嫌いではない。
 本多だって親友と思っているし…太一も大切な友人だ。
 ここ数日に想いを寄せて来た全員が、克哉にとって重要な位置に
存在している人間ばかりだった。
 そんな彼らを傷つける言葉を吐くなんて…本当言えば、相当に
精神的にきついし、相手の辛そうな顔を見れば決心が鈍りそうに
さえなってくる。

(けど、けど…それで相手を傷つけたくないからと言って…他の
人間に抱かれてしまう真似を繰り返したら、オレはあいつに好きという
資格すらなくなってしまうから…)

 もう一人の自分の事だ、好きだ。
 その想いを自覚してから…其れは克哉の中で日々、強くなっているから。
 こんなに誰かを好きになった事、彼の方から求めたのはもしかしたら
生まれて初めてだったかも知れない。
 彼に、何よりも嫌われたくなかった、失望されたくなかった。
 曖昧な態度で濁す事で、流されてしまう事で…もう一人の自分に嫌われて
呆れられてしまう事が今の克哉にとって一番怖い事だった。
 其れにもう…間違いを繰り返したくなかったから。

「…だから、御免な太一…。オレ、好きな人がいるから…太一の気持ちは
嬉しいけれど…受け入れる事は出来ないよ…」

 そして、もう一度…今度はベッドの上で土下座をしていきながら太一に
向かってそう告げていった。
 正直、照明の下だったら全裸に近い格好でそんな真似をするのは
恥ずかしくて死にそうだったに違いないけれど…今は電灯が消されて
いるのが幸いした。
 太一もこちらが裸である事は薄々気づいているだろうけれど…
闇に乗じて、そのままで応対していく。

「…そっか。けど…俺、この気持ちを何処に持っていけば良いんだろう…。
こんなに、克哉さんの事を好きで仕方ないのに…!」

 太一が、必死の声で叫んでいく。
 彼なりに好きな相手の気持ちを汲み取ろうと頑張っていた。
 理解して…身を引こうとしていた。
 なのに…まだ、感情がついていかないのだろう。
 例え薬の効果によって引き出された想いとはいえ、その感情までが
嘘ではないのだ。
 今…彼が自覚しているのは、潜在的に秘められた想い。
 其れはキッカケがないままだったら太一の中で沈められて…
胸の中でこっそりと片隅で息づいていて陽の目を見る事はなかっただろう。
 けれど…今は、自覚してしまった。
 その芽生えたばかりの想いを、摘み取るのは辛い事だっただろう。
 克哉とてその悲痛な声を聞いて、鈍る気持ちが生まれていく。

(けど…ここで、流されちゃ駄目だ…! 駄目なんだ…!)

 人を傷つけても、貫きたい想いがあるならば…それに準じるしかないのだ。
 そうでなければ相手に好きだと言う資格すら失う気がするから。
 恋人になりたい、とおこがましくも思っているなら…相手にとって特別な
存在になりたいのなら…他の人間の想いを断って、貞節を守るように
務める事は、必要な条件に入っていると思うから…。

(大好きだよ、『俺』…! だから本当に御免、太一…。オレは傷つける
事になっても…この想いを貫きたいんだ…!)

 克哉は知らず、泣いていた。
 太一を傷つけてしまった事に対しての胸の痛みが感極まってしまったから。
 けれど瞳を潤ませていきながら…決して相手からは目をそらさなかった。
 断るにしても全力で相手に向き合う事が礼儀だと思ったから。

「克哉さん…克哉さん、凄い…好きなのに…。こんなに、人を好きになったの
俺は初めてだったのに…其れでも、駄目なんだ…?」

「うん、御免…。オレも、譲れない想いだから…」

 太一とて、すぐに諦められる訳ではない。
 出来るだけ粘るだろうし、情にも訴えかけてどうにか克哉の気持ちを変えようと
してくるだろう。

(…正念場はこれからだ。太一に…諦めて貰わないといけない。それが出来なければ
あいつを好きだという資格すらないから…!)

 そして胸が痛んでシクシク痛んでいても、ギュっと唇を噛んでいきながら…
太一と真っすぐ向かい合っていく。
 その時の克哉の顔には…しっかりとした強い意思が確かに宿っていたのだった―



 遅れましたが、イベントに参加された&一般で行かれた方々
お疲れ様でした。
 そしてうちのサークルに足を向けて下さった方、どうもありがとう
ございました。
 今回のイベント、香坂本当にダメダメ人間っぷりを晒して
おりましたが…それでも本買ってくれた方、どうもでした。

 新刊製作がマジでギリギリだった為に当日に会場に入ったのは
午前11時40分過ぎておりました。
 イベント始まっているっつーの…。
 売り子やってくれた友人のKちゃん、マジでお手数掛けました。
 本当にその節は幾ら感謝しても足りません。
 そしてシールラリー参加と申し込んでいたのに、当日バタバタして
シール忘れた件…。用意しておいて忘れてくるなよ自分って
心底ツッコミたかったです。
 この二点で本当に人に今回は迷惑掛けまくっておりましたわ…。
 うう、同じような事はもう起こさないように致します(反省)

 それはさておき、今回は目の前がHさんのサークルだったり、
普段会えない遠方の件に住んでいる管理人さんとかも参加されて
いたので…声を掛けさせて頂きましたが、こちらを構って下さって
ありがとうございます。
 何ていうか真剣にオッチョコチョイというか、どっかヌケているっつーか
そんな人間なんですが…お付き合い頂き感謝です。
 しかしお菓子配ろうとしたら箱を爆発させてお菓子ばらまく羽目に
なるってどれだけ慌てんぼうなんだよ自分…(汗)
 
 イベント後は私と、Kちゃんと…お隣のサークルさんだったAさんを
ナンパさせて貰って三人でアフターを過ごしました。
 とりあえず会場から歩いて秋葉原のパセラまで行ったら、メチャクチャ
大盛況でして…三時間半待ちって状況になり。
 Kちゃんがそれならお茶の水のパセラの方に行きましょうって言ったので
三人で徒歩でそちらまで向かっていきました。
 一応、Kちゃんは東京都民かつ、自転車で都内を走り回っている子なので
道とかはかなり詳しいので殆どお任せモードでついていく残り二人。
 お茶の水のパセラについたら、ハニートーストがドン! とショーケースに
飾られているのを見て、香坂食べたくなって三人でハニートーストを
つっつきました。美味しかったです(嬉)

 それでAさんがあんまり歌を歌う人じゃなかったので…カラオケは
時々気が向いたら歌うみたいな空気になって、その時にふと…それだったら
見ていて面白いクリップが流れる曲を選ぼうとやって…SOW劇クリップの
『歌詞くんシリーズ』の浜崎あゆみの曲を一曲選んで流しました。

 一同大爆笑!

 全員が腹筋が痛くなるまで笑う素敵事態になり…暫くそれで
話に花を咲きました。
 鬼畜眼鏡でも、王レベの話でもなく…この日一番盛り上がったのが
この歌詞くんについての話でした。
 しかもKちゃんがノってしまって、眼鏡に歌詞くんのコスプレを
させるし…。
 この歌詞くんっていうのは曲に合わせてあやしい白い全身タイツを
した人物の身体のどっかに歌詞が書かれていて、すんげーあやしい
動きをしながら物語が展開するって奴なんですが…。
 何年振りかに見たら私も涙出して笑う派目になりました。
 破壊力凄すぎだよこれ…。
 ちなみにジョイサウンドのサイトで調べたら全部で8作あるそうです。
 今度、こっそり他のまだ見ていない5作も調べてみようともくろみ中です。

 カラオケの後は三人でファミレスに入って九時半ぐらいまで色々と
語り合いながら過ごしておりました。
 アフターに付き合ってくれたお二人、マジでありがとうございました!
 最後に本当に今回、新刊がギリギリになってしまったけれど…それでも後で
顔を出して購入して下さった人達も、感謝します。
 では、今回のイベントレポは簡単ですがこれにて…(脱走)
 

 ※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

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―目覚めれば何故か太一がいて、いつの間にか組み敷かれている
状況に克哉は半ばパニックに陥っていた

 思わず動揺して本音が漏れてしまったのも、目の前の状況が
全く想定外の事だったからだ。
 先程まで見ていたもう一人の自分に抱かれていたのだって…
何となく覚えのある腰のだるさと中に残されているものから
現実だった事を察して、混乱仕掛けているというのに…自室への
太一の乱入で、余計に其れに拍手が掛かっていった。

(な、何でこんな事になっているんだ~! 何で太一がオレの部屋に
いつの間に上がりこんでいるんだよ~! 想いを自覚して以来…
本当にとんでもない事が起こりっ放しだ…!)

 本多に迫られ、御堂に犯されて。
 そして太一にまで部屋に夜這いに来られてしまったら…自分の
周りにいる人間に三人とも迫られてしまった事になる。
 その事実にどうしたら良いか、必死になって考えていくが…
荒々しくこちらの身体を愛撫されて、快楽を引きだされていく事で
思考の纏まりが奪われていってしまった。

「やっ…! 太一、お願いだから…やめて、くれ…あっ!」

「…嫌だ! 俺の想いがどれだけ強いか…克哉さんに
思い知らせてあげるよ…! 絶対に、許せない…貴方が他の
男にすでに触れられていたなんて…そんな事実はね…!」

「そ、そんな…あうっ…!」

 克哉は、裸のままでベッドに横たわって布団に包まった状態で
眠り続けていた。
 一糸纏わぬ姿だったせいで、こうやって襲われてしまったら
防御する為のものが何もない。
 太一の手が胸元に這われて、少し乱暴に薄い胸板を揉みしだくように
して突起を刺激していく。
 たったそれだけの刺激で胸の突起は赤く充血して…腰に何とも言い難い
疼きを齎していった。

(そんな処…もう一人の『俺』に抱かれるまでは感じる場所だって…
意識した事さえ、なかった筈なのに…!)

 唇をキュっと噛みしめていきながら、克哉は与えられた感覚に
必死に抗うように腰をしきりに捩り始めていった。
 だが…寝起きで頭の中がまだ霞みかかった状態であるせいか
その抵抗もどこか弱々しいものだった。

「太一…お願い、だから…止めて! ああっ…! 駄目…だ、駄目…!」

「そんなに駄目だなんて言わないでくれよ…! 俺は克哉さんが好きなんだ!
今…抱きたくて、抱きたくてしょうがない状態なんだ! お願いだから…
其れを判ってよ! 克哉さん…!」

 耳元で、熱っぽい吐息を吹き込んでいかれながら…必死の形相で
そう訴えかけられていく。
 克哉は一瞬、その想いに流されそうになってしまう。
 ふと顔を見上げれば、其処に真摯な眼差しを浮かべながらこっちを
見つめて来ている太一の顔があったから…。
 御堂に結局、抵抗しきれなかったように…もしかしたら、太一にも
流されて身体を許してしまったかも知れない。
 太一の手が克哉のペニスに静かに伸びていく。
 けれど必死になってその手を押し止めて…相手を真剣に
見つめ返していった。

「…太一の気持ちは、充分過ぎるくらいにもう…伝わっているよ。
けど、オレ…好きな人がいるから…! 太一の事…友達としては
凄く大好き、だよ…! けど、どれだけ大事な友達であっても…
オレは、もう…そいつ以外に、抱かれたく…ないんだ!」

 其れは、御堂に嵐のように激しく襲いかかられた時には
言えなかった拒絶の言葉だった。
 あの時点では…克哉は、もう一人の自分への想いを口にして良いのか
憚られてしまっていたから。
 自分自身に、恋しているなんておかしいと思ったから…だから
どうしても御堂に抱かれてしまった時点では、そういって拒む
事が出来なかった。

―けど、さっきまでのあの時間が現実であったなら…。もう他の
人間に身体など許したくなかったのだ。それで友情に亀裂が入って
しまっても…何でも、もう一人の自分の事を好きなのは…もう
紛れもない事実なのだから…

 その言葉を発した時、太一は絶望したような表情を浮かべていった。
 自分の想いを、本人に否定されれば…誰だって苦しくなる。
 好きな人に気持ちを伝える行為は、必ずどこかで相手と上手く行って欲しいと
いう願いを抱くものだ。
 どれだけ低い確率であっても…奇跡が起こって、想い人と両思いに
なって欲しい…。
 そう願って、勇気を振り絞って人は告白するものなのだ。
 その苦しそうに歪む顔を見て…克哉は胸の痛みを覚えていく。
 今はこの部屋が真っ暗で、少し助かったかも知れない。
 闇に慣れて来たおかげで多少目が慣れた状態だからこそ少し離れた
距離の様子や密着している相手の表情を見るぐらいの事は出来て
いるが…これが、せめて明るい光の下でなくて良かったと心底思った。

(オレの言葉は…太一を傷つけてしまったかも知れない…。
けれど、これで良いんだ…! あいつを好きだと思うならば…誰を
傷つける事になっても筋を通すべきなんだ…! あいつを好きと言いながら
安易に他の人間に身体を許してしまったら、その想いを疑われて
しまっても仕方ない事なんだから…!)

 ジクジクと、胸の痛みを覚えていきながらも…今度こそ土壇場で
克哉はその真実に気づいていく。
 息が詰まるような…重苦しい時間が、睨みあいが暫く続いていった。
 けれど真剣な想いをこちらにぶつけてくれている太一からせめて
目をそらさないように…逃げ出さないように、克哉もまた真摯な眼差しを
浮かべていきながら…夜の闇の中で、相手に向き合っていったのだった―

 


 とりあえず現在の製作状況は切羽詰まっておりますが、
一応完成の目途みたいなものは立ちつつあります。
 つか、ここまで来たら意地でも出します!!(ムン) と
自分に言い聞かせて作業しております~。

 10月10日の当日の販売品について。
 以下の通りになります。

 当日新刊  『始まりの扉 続編  小さな祈り』

 内容はサイトに以前連載した御克前提で、秋紀が若干絡んでくる
お話のその後になります。
 御堂と克哉はラブラブですが、一応本編は御堂と眼鏡の方が
どうにかお互いに歩み寄ろうと頑張っている部分と、御克のラブラブな
部分がメインになります。
 後、この話後の設定だと…眼鏡とノマが精神で繋がっている為に、
御堂に歩み寄ろうとしている眼鏡に対してノマがいっぱい突っ込んだりする描写が
沢山ありますので宜しく。

 秋紀編はちょっと切ないですが…恋が散っても何かが残るような
そういう印象の話になります。
 18禁要素よりも、今回はメンタル面の描写が多い内容となります。
 ご了承下さいませ。
 


 オフ本
 
 INNOCENT Blue 克克新婚本1(おまけ本有)  1000円
 LUNA SOLEIL  克克新婚本2           1000円
 幻花繚乱 御克ルート前提の澤村本(シリアス)   500円
 胡蝶の夢  克克泣き系シリアス            500円
 
 コピー本

 聖痕  眼鏡×御堂 シリアス&18禁        300円
 SIREN -呼び声― 克克 切ない&シリアス  200円
 愛の言葉    御堂×克哉   甘ラブ       300円

 以上の八種類が当日、机の上に置かれている販売品となります。
 一応頼まれればスケブもやります(頼んで来た人は友人知人以外ではほぼ
皆無なんだけど…)
 絵描き道具の類も持っていきますので気軽にどうぞ~。

 後、一応…御堂×克哉&眼鏡編の方の冒頭部分を折りたたんで掲載
しておきますので良ければどうぞ~。
 
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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