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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                        10 
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―結局克哉の時間稼ぎ作戦は、失敗に終わった
 
 先程の「覚えていない」とか「知らない」と言った事で澤村を茫然自失状態に
した事は、言ってみれば偶然の産物に過ぎず、結果的にショックを与える事で
相手の体制を崩せただけに過ぎない。
 だが、克哉が意図的に時間稼ぎを試みた事で…澤村の方も徐々に心理的な
痛手から立ち直っていってしまった。
 一旦は克哉が、精神的な意味で優位に立つ事が出来たが…
締め切られたホテルの一室。
 其処に両手を後ろに纏められた状態で拘束されているという状況は…
克哉にとって圧倒的な不利な状態だった。
 色んな質問を投げかけて、相手から言葉を引き出して少しでも
時間を稼ごうとしていた。
 
―だが、そうすればするだけ…相手は余裕を取り戻して、次第に
酷薄な笑みを口元にたたえはじめていった
 
(どうしよう…せっかく、こっちが有利だったのに…形勢が
逆転してしまっている…!)
 
 克哉はその冷たい笑みを見て、身の危険を覚え始めていった。
 それは本能的な恐怖に近いものだった。
 さっきは衝撃の余りに相手の視線も覚束ないものであったが…次第に
ねっとりとした厭らしいものへと変わっていく。
 こういう眼差しにはイヤって程、身に覚えがあった。
 もう一人の自分と一緒にいる時は…眼鏡の目はいつだってこんな風に
欲情に満ちたものだったから。
 けれど…眼鏡に、こういう視線を向けられるのは自分はそんなに嫌で
なかった事を改めて実感させられた。
 
(こんな目を…あいつ以外に、されたくない…!)
 
 一昨日は、本多にも御堂にも似たような視線を注がれていった。
 けれど澤村に…克哉にとっては顔も知らない、何の面識も思い出もない
人間に性的な対象として見なされるのは正直、強烈な嫌悪感が
湧き上がって来た。
 この男の前から、可能であるなら一刻も早く逃げ出したかった。
 克哉は心底、今の両手が拘束されて自由を奪われている状況に
歯噛みをしたくなった。
 
「…そんな目で、オレを…見ないでください! 卑怯者…こちらの意識が
ない状態で連れ去って、手首を縛るなんて…充分、犯罪行為だって
自覚あるんですか…! もし、貴方がオレを犯したのなら…オレは、
警察に駆け込んで暴行されたという証明を立てさせて貰いますから…」
 
「何、だって…?」
 
 克哉の警察に駆け込む、という発言は元来…小心者である澤村の
動揺を招くのに成功した。
 そう…極めて屈辱的な事だが、もしこの男に犯された場合は御堂の時と違って、
泣き寝入りなどするつもりはなかった。
 御堂は例え薬の効力があったとしても、こちらを想ってくれていた。
 だがそういった想いも何もなく…悪意によってこちらを陵辱しようというのなら、
絶対に屈したくなかった。
 好きでもない…縁も縁も克哉にとっては存在しない相手に抱かれるなど、
冗談ではなかったから。
 脳裏に、もう一人の自分の顔が浮かび上がっていく。
 
(もう…あいつ以外に抱かれるなんて、ゴメンだ…! もしこの男に犯されると
いうのなら、絶対に戦ってやる…!泣き寝入りだけは、してやるもんか…!)
 
 もう一人の自分の事を、好きだという自覚を持ったからこそ…克哉はもう
安易に屈したりしないと心に誓っていた。
 この男がこちらを辱めるというのなら、決してこちらとて容赦は
するつもりがなかった。
 男に犯された、など…立派な大の男である自分が警察に駆け込むなど
想像するだけで恥ずかしくて死にそうだ。
 けれど相手がこちらの体内に精を放ったのなら、それは何よりも有力な証拠となる。
 自分は相手の事を知らなくても、もう一人の自分が知っているというのなら
聞き出して…草の根を分けてでも捜し当ててやると決意を込めて…
相手を睨みつけていった。
 その瞬間、二人の精神的な立ち位置が再び逆転していった。
 
「…何だよ、その反抗的な目は…。君は自分の立場というものを判って
いないんじゃないかな…? 手を縛られていて自由の利かない身で…
何が出来るっていうんだ?」
 
「…貴方に、気持ちの上で屈さない…。負けないぐらいの事は出来る…。
こんな卑怯な真似をして優越に浸っている相手に屈したくはありませんから…!」
 
「何を…! 君は僕を卑怯者と言う訳か…! ああ、その通りだよ。僕は
君と決別する以前からずっと卑怯者とそしられるような事を続けて来た。
だって愉快じゃないか!影で人を操って人を騙したり、多くの人間を自分の
思い通りに動かすのは快感じゃないか! だから卑怯者と言われたってそれは
僕にとっては誉め言葉なんだよ、克哉君! 正直に清く正しく生きて、
一体何の特になるというんだい…?」
 
 男はまるで、大声で哄笑していきながら…卑怯者と呼ばれた事に対して
誇りでも抱いているかのような反応を示していった。
 だが克哉のアイスブルーの瞳には、其れは虚勢に過ぎないという
事実を見抜いていく。
 
(この人は…開き直っている。これは…本心からの、言葉じゃない。虚勢を、
張っているように感じられるのは気のせいなのか…?)
 
 猛烈な違和感を覚えた瞬間、克哉の脳裏に一つの光景が思い浮かんでいった。
 桜が舞う光景の中、泣いている少年の姿。
 克哉はずっと何度か夢に見ていながら…其れが誰なのか思い出せないままだった。
 夢の中に現れる彼の表情や、顔はいつだってはっきりと見れなくて…
名前も思い出せないままだった。
 
(どうして、彼の顔が…あの少年の事が、思い浮かぶんだ…? もしかして…?)
 
 そして克哉は口に、思わず出してしまっていた。
 
「…貴方は、もしかして卒業式の日に…泣いていた、人…ですか…? 
凄く苦しそうな顔をしながら、オレに対して…何か、を言っていた…?」
 
「っ…!! そうだよ! 其れが俺だよ克哉君! 何でよりにもよって…
そんな場面を、君は真っ先に思い出すんだ! ちくしょう!」
 
 其れは、相手の逆鱗に等しい過去だった。
 澤村にとって最大の優越感を感じた瞬間であり、胸の痛みを最も
覚えた苦い記憶を…口上に出されて、カっと目を見開いていった。
 あの日に、佐伯克哉と決別をした。
 其れから十数年の月日、顔を合わせる事もないまま…月日を重ねていった。
 一時の勝利の味と共に、拭いきれない後悔を孕んでいる日だったから。
 
「えっ…?」
 
 克哉は、一瞬信じられないものを見たような気になった。
 相手の目が潤んでいるように見えたからだ。
 極めてアンバランスな不安定な眼差しで、こちらをキツく見つめて来ていたが
…その双眸からは今にも涙が溢れそうになっていた。
 
「泣いて、いるんですか…?」
 
「違う! これしきの事で泣くものか! いい加減に黙れ!」
 
 そうして澤村はヤケ気味に…克哉に勢い余って、強烈な効果を持つ
媚薬を飲ませていく。
 此れは最初の公園での盗撮のチャンスを告げるメールが、澤村の
PCに送信された翌日に…いつの間にか彼の自宅に置かれていた品だった。
 甘い蟲或的な香りがする赤い液体は、相手を意のままに操る事が
出来るぐらいに強烈な媚薬だという説明書きが添えられていた。
 其れを使って克哉を乱して…凌辱してやろうと準備して来た訳だが、
ついに澤村は其れが入った小瓶を口に押し当てて、無理やり嚥下させていった。
 
(これ以上、彼にペースを乱されてなるものか…! 此れを飲めば
意のままに操れるぐらいに乱れると手紙に書いてあった…! 其れで
予定通り、御堂部長を葛藤させて交渉を有利に運べば良いんだ…! 
それで良いんだ!)
 
 逆上した澤村は、そうして歪んだ笑みを浮かべていきながら…嫌がる
克哉を押さえつけていった。
 克哉は己の身体が、異常に熱くなっていくのに恐怖すら覚えていく。
 
「この、薬は…一体…うあっ…身体が、熱い…!」
 
「はは、強烈な媚薬だよ…理性も、何もかもが吹き飛ぶぐらい効果の
高い物らしいよ…。さあ、それを飲んでいつまで正気を保っていられるかな…
克哉君…?」
 
「そん、な…あ、はあっ…」
 
 猛烈な速度で身体の奥から妖しい熱が浮かび上がっていく。
 少しでも逃そうと、必死になって身体をよじっていくが無駄な抵抗だった。
 そして克哉は、媚薬によってまともに考える事すら儘ならない状況に
追いやられて…唇から血が滲むぐらい強く、歯を立てて噛み締めていったのだった―
 
 
 
 
 
 
 




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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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