鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
忘却の彼方に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
31 32 33 34 35 36 37 38
―本多との意識のシンクロが途切れると、克哉は涙を静かに流していた
其れは、あの優しい男ともう二度と会えない悲しさと。
彼が目覚めた事を知った喜びが入り混じった涙だった。
(さよなら…本多。大好き、だったよ…)
克哉は、忘却の彼方に確かに再生の道を歩む事が出来た。
自分の事を忘れても、という本多の労わりの気持ちがあったからこそ…
今こうして、一人の足で立てる自分に戻る事が出来た。
永遠に絶える事のない波の音が、耳に届いていく。
少しずつ荘厳な朝日が姿を消し、光に満ちた世界が目の前に広がっていく。
「綺麗、だ…」
涙が、優しさが…克哉に、この光景を美しいと素直に感じる心を
取り戻してくれた。
人は心が疲れきっていたり、罪悪に縛られている時は…その負の感情に囚われて
美しいものを率直に感じる感受性を失ってしまう。
日常の中に潜む、朝日や夕暮れ…自然の中に存在している美を
こうして感じ取れる事こそが、心が健康である証なんだ。
ポタ、ポタ…と目から涙が止まってくれなかったけれど…その度に
硬くひび割れてしまっていた自分の心が、柔らかさを取り戻していくようだった。
―世界は、こんなにも優しくて綺麗だったんだ…
本多が倒れてから、世界はずっと灰色とドス黒い色に覆われているように
ずっと感じられた。
生きている事が、息をしている事すら苦しくて仕方なかった。
その胸のつっかえが、ようやく消えてくれた。
もう会えないという寂しさのせいで、胸の中にぽっかりと空洞が空いてしまって
いるのも確かだが…それ以上に、本多が目覚めてくれた事に対しての喜びが
克哉を満たしていく。
「本多…本当に、良かった…。お前が目覚めてくれたなら…それで、良い…。
会えなくても、それでも…元気でさえ、いてくれたら…」
もう、今の克哉にはそれだけで充分だった。
その時…自分の傍らに、今…もう一人の自分がいてくれない事に
寂しさを覚えてしまった。
「あれ…? Mr.Rは…?」
そして、いつの間にか黒衣の男の姿もまた消えてしまっている事に
気づいて…克哉は怪訝そうな顔を浮かべていった。
寄せては返す波の音だけが周囲に響き渡っていく。
その中で…太陽がもっとも、生命力を感じさせるぐらい眩く輝く瞬間を
克哉は、目の当たりにしていった。
鮮烈で、網膜すら焼きつくすような力強い輝きが…自分の心を照らしだして
活力すら与えてくれるようだった。
「…朝日がこんなに綺麗に感じられた事って何年ぶりかな…」
本当にそれくらい、長い間克哉は…自然の光景に目を奪われる経験など
皆無だった。
それと同時に自分の足で今…しっかりと確かに立っている事を自覚する。
もう一人の自分がいない事に対して、寂しさは確かにある。
けれど彼に依存していたあの世界の中では…こんな風に、しっかりと立っているのだと
感じる事はなかった。
「ゆりかごのような、世界か…。確かにそうだね…。オレは、本多とお前が紡いでくれた
世界で癒され…こうして立ち直る事が出来たけれど。お前がずっと傍らにいて…
優しくしてくれるままだったら、きっとズルズルと甘え過ぎていただろうな…」
そしてようやく、本多が目覚めたという希望を知った事で…何故、もう一人の
自分がまずはこの世界での生活の基盤を「一人で」作っていけという
その意図をうっすらと理解していった。
きっと、彼がいたら甘えてしまうから。
一人で気持ちの上で自立する事が出来ないまま、いつまでも依存して…
しっかりする事が出来ないから…だから彼は、必ず迎えに行くと約束だけして
一旦、姿を消したのではないかと…素直に、そう感じられた。
「必ず、会えるんだよね…信じて、良いんだよね…」
自分の胸にそっと手を当てて、己の中にいるもう一人の自分に静かに
問いかけていく。
―ああ、信じろ。必ず…迎えに来る
そう、胸の内側から確かな声が聞こえた気がした。
「…うん、信じるよ…」
その声を聞いて…克哉は確信していく。
今は、実体を持って存在していないだけで…彼の意識は、存在は確かに
自分の心の中に在る事を。
そして己の内側から、彼は克哉を支えてくれている事を…見ている事を
感じ取っていく。
今は、抱き合ったりキスしたりそういう事は出来ないだけだ。
胸の中に力強いものを、確かに感じていく。
―俺は、お前の中にいる…見守っていてやる…だから、心配するな…
「…うん…」
もう一人の自分の声が、聞こえる。
自分の分身、そしてもっとも最愛なる存在。
彼が見守ってくれているなら、この胸の内にいる事を感じられるなら
きっとまた実体を持って会える日が来るまでしっかりと生きていける。
「…一日も早く、お前がちゃんと身体を持って迎えに来てくれる日が
来るように頑張るから…見守っててくれな…『俺』…」
―ああ、楽しみにしていてやる…
いつも通りの、不遜な言い回しだった。
それが彼らしくて、克哉はつい微笑んでいってしまう。
この新しい世界が、どこまでが今までいた世界と同じで…何処が違うのか
まだ判らなくて、新天地に対して漠然とした不安はあったけれど。
まずは、自分の足で立って生きる事から始めてみようと思った。
―そして克哉は日がすっかり昇り終えたのを確認すると、その場から
一歩を踏み出して歩み始めていく
砂浜に、克哉の足跡が力強く残されていく。
一日も早く…もう一人の自分と過ごせる日が来るように、克哉は
前を見据えていきながら…これから、自分が生きていくにはどうしたら
良いのかを必死に考え始めて、模索し始めていったのだった―
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。
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―本多との意識のシンクロが途切れると、克哉は涙を静かに流していた
其れは、あの優しい男ともう二度と会えない悲しさと。
彼が目覚めた事を知った喜びが入り混じった涙だった。
(さよなら…本多。大好き、だったよ…)
克哉は、忘却の彼方に確かに再生の道を歩む事が出来た。
自分の事を忘れても、という本多の労わりの気持ちがあったからこそ…
今こうして、一人の足で立てる自分に戻る事が出来た。
永遠に絶える事のない波の音が、耳に届いていく。
少しずつ荘厳な朝日が姿を消し、光に満ちた世界が目の前に広がっていく。
「綺麗、だ…」
涙が、優しさが…克哉に、この光景を美しいと素直に感じる心を
取り戻してくれた。
人は心が疲れきっていたり、罪悪に縛られている時は…その負の感情に囚われて
美しいものを率直に感じる感受性を失ってしまう。
日常の中に潜む、朝日や夕暮れ…自然の中に存在している美を
こうして感じ取れる事こそが、心が健康である証なんだ。
ポタ、ポタ…と目から涙が止まってくれなかったけれど…その度に
硬くひび割れてしまっていた自分の心が、柔らかさを取り戻していくようだった。
―世界は、こんなにも優しくて綺麗だったんだ…
本多が倒れてから、世界はずっと灰色とドス黒い色に覆われているように
ずっと感じられた。
生きている事が、息をしている事すら苦しくて仕方なかった。
その胸のつっかえが、ようやく消えてくれた。
もう会えないという寂しさのせいで、胸の中にぽっかりと空洞が空いてしまって
いるのも確かだが…それ以上に、本多が目覚めてくれた事に対しての喜びが
克哉を満たしていく。
「本多…本当に、良かった…。お前が目覚めてくれたなら…それで、良い…。
会えなくても、それでも…元気でさえ、いてくれたら…」
もう、今の克哉にはそれだけで充分だった。
その時…自分の傍らに、今…もう一人の自分がいてくれない事に
寂しさを覚えてしまった。
「あれ…? Mr.Rは…?」
そして、いつの間にか黒衣の男の姿もまた消えてしまっている事に
気づいて…克哉は怪訝そうな顔を浮かべていった。
寄せては返す波の音だけが周囲に響き渡っていく。
その中で…太陽がもっとも、生命力を感じさせるぐらい眩く輝く瞬間を
克哉は、目の当たりにしていった。
鮮烈で、網膜すら焼きつくすような力強い輝きが…自分の心を照らしだして
活力すら与えてくれるようだった。
「…朝日がこんなに綺麗に感じられた事って何年ぶりかな…」
本当にそれくらい、長い間克哉は…自然の光景に目を奪われる経験など
皆無だった。
それと同時に自分の足で今…しっかりと確かに立っている事を自覚する。
もう一人の自分がいない事に対して、寂しさは確かにある。
けれど彼に依存していたあの世界の中では…こんな風に、しっかりと立っているのだと
感じる事はなかった。
「ゆりかごのような、世界か…。確かにそうだね…。オレは、本多とお前が紡いでくれた
世界で癒され…こうして立ち直る事が出来たけれど。お前がずっと傍らにいて…
優しくしてくれるままだったら、きっとズルズルと甘え過ぎていただろうな…」
そしてようやく、本多が目覚めたという希望を知った事で…何故、もう一人の
自分がまずはこの世界での生活の基盤を「一人で」作っていけという
その意図をうっすらと理解していった。
きっと、彼がいたら甘えてしまうから。
一人で気持ちの上で自立する事が出来ないまま、いつまでも依存して…
しっかりする事が出来ないから…だから彼は、必ず迎えに行くと約束だけして
一旦、姿を消したのではないかと…素直に、そう感じられた。
「必ず、会えるんだよね…信じて、良いんだよね…」
自分の胸にそっと手を当てて、己の中にいるもう一人の自分に静かに
問いかけていく。
―ああ、信じろ。必ず…迎えに来る
そう、胸の内側から確かな声が聞こえた気がした。
「…うん、信じるよ…」
その声を聞いて…克哉は確信していく。
今は、実体を持って存在していないだけで…彼の意識は、存在は確かに
自分の心の中に在る事を。
そして己の内側から、彼は克哉を支えてくれている事を…見ている事を
感じ取っていく。
今は、抱き合ったりキスしたりそういう事は出来ないだけだ。
胸の中に力強いものを、確かに感じていく。
―俺は、お前の中にいる…見守っていてやる…だから、心配するな…
「…うん…」
もう一人の自分の声が、聞こえる。
自分の分身、そしてもっとも最愛なる存在。
彼が見守ってくれているなら、この胸の内にいる事を感じられるなら
きっとまた実体を持って会える日が来るまでしっかりと生きていける。
「…一日も早く、お前がちゃんと身体を持って迎えに来てくれる日が
来るように頑張るから…見守っててくれな…『俺』…」
―ああ、楽しみにしていてやる…
いつも通りの、不遜な言い回しだった。
それが彼らしくて、克哉はつい微笑んでいってしまう。
この新しい世界が、どこまでが今までいた世界と同じで…何処が違うのか
まだ判らなくて、新天地に対して漠然とした不安はあったけれど。
まずは、自分の足で立って生きる事から始めてみようと思った。
―そして克哉は日がすっかり昇り終えたのを確認すると、その場から
一歩を踏み出して歩み始めていく
砂浜に、克哉の足跡が力強く残されていく。
一日も早く…もう一人の自分と過ごせる日が来るように、克哉は
前を見据えていきながら…これから、自分が生きていくにはどうしたら
良いのかを必死に考え始めて、模索し始めていったのだった―
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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