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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※これは久しぶりに鬼畜眼鏡のキャラソングを聞いて
思いついた話です。
 ストーリーのその後の事をつい妄想して書いた話なんで
ご了承下さい。
 リハビリを兼ねた、軽いノリの話なんで宜しく。

お前に歌を      

 
―低く掠れた声で、もう一人の自分が歌っている

 その声に合わせて、自分のパートを歌いあげた時…何とも言えない
高揚を確かに克哉は覚えていた。
  声を出しながら、相手と息を合わせて一つの曲を歌い上げる。
 今までそんな経験した事なくて、戸惑いながらも…どうにかぶっつけ本番で
ありながら満足いくレベルで終える事が出来た時、確かに…自分の
胸は変な風にドキドキしていたように思う。

(何で、あいつの歌っている姿がこんなに…脳裏に焼き付いているんだよ…。
これじゃ、まるで…恋、しているみたいじゃないか…もう一人の俺に…)
 
  そんな自分の気持ちが信じられなくて、必死になってベッドの上で
頭を振り続けていく。
 けれど…グチャグチャしたこちらの思惑も、葛藤も全てを吹き飛ばしかねない
勢いで…もう一人の自分が腰を打ち付けて来た。
  相手の熱い塊が、こちらの前立腺を容赦なく刺激し続けていき…
体温が強引に上げられていく。

「ほら…口を開けよ、『オレ』…。お前の口の中も、存分に犯してやる…」

「はっ…あっ…やぁ…」

  快楽で意識が蕩けてくると、抵抗も返答も満足に出来なくなる。
 トロンとした目を浮かべていきながら…相手のなすがままになり、
唇を深く重ねられていきながら…深い場所を抉られ続けていく。

「ふっ…ううっ…んっ…」

  口の端からくぐもった声が漏れていく。
  気づけば足は大きく開かされ、繋がっている個所からは淫猥な音が
大きく響き続けていた。
  自分の身体を通して、音が奏でられていくのを感じていく。

「やだ…なんか、音が…いつもより、淫らに聞こえて…」

「何を嫌なんだ? さっきと同じだろうに…お前と俺が協力しあって…
音を作り出しているんじゃないか…?」

「そんな事…言うなよ…はっ…あっ…」

「こんなにイイ声で啼いている癖に、何を意地を張っているんだ…?
まるで歌っているかのように…俺の腕の下で啼いているじゃないか…」

「んんっ…あぁ…あっー!」

 確かに、高い声が喉の奥からひっきりなしに迸り続けていた。
 相手の刻むリズムに合わせて、奏でられるそれは…確かに克哉自身が
生みだしている音であり、メロディとも言いかえられるものだった。
  快感が溢れて、止まらなくなる。
  絶頂の瞬間が、恐ろしく勢いを持って迫ってくるのが感じられていった。

 「あっ…はっ…もう…イク…うぁ…!」
 
「ああ、イケよ…『オレ』…俺も、お前の中に…注ぎ込んでやるから…」
 
「あっ…ふっ…」
 
 相手の熱がこちらの中で弾けて、精が注がれる感覚を期待した瞬間…克哉の
全身が歓喜でブルリと震えた。
 どれだけ表面上嫌がっていても、抵抗しても…既に何度も教え込まれてしまった
快感に抗う術はない。
  相手の背中に必死になって縋りつき、強烈に襲いかかってくるであろう感覚に
克哉は必死になって備えていく。
 
「ふっ…ああっ…あー!」
 
 そして、一際甲高い声を上げていきながら…克哉は絶頂に達していった。
 
「…イイぞ、その調子で…俺のをもっと搾り取るんだ…」
 
「やっ…あっ…判ったよ、『俺』…」
 
 頭が朦朧とする中、コクンと頷いて…繋がっている個所に力を込めていくと…
残滓までも自分の内部に注ぎこまれていく感覚を味わっていった。
 
―さっき、オレは…お前と一緒に歌えて…嬉しかったんだな…
 
 ようやく、その本音にふと気づいていく。
 もう一人の自分の隣に立ち、一緒の歌を歌い…その声に合わせて歌っていく。
 それは相手と呼吸を合わせて、シンクロ出来たような気になっていて…
だから、それで拍手を貰って…接待が成功した時に本当に嬉しくて。
 
(けど、コイツがあまりにいつも通りの反応しかしなかったから…だから、
つい素直になれなかったんだよな…)
 
 荒い呼吸を整えていきながら、克哉は…自分の中の本音に気付いていく。
 
―ああ、オレは…一緒に上手く歌えた事の喜びを、お前と共感したかったんだな…
 
 その本心に気付くと同時に、意識がゆっくりと遠くなっていく感覚を克哉は
味わっていった。
 ただでさえ今夜は、夜遅くまで接待をしてて酷く疲れていた。
 そんな中で…こんなに強烈な快感が伴うセックスなんてしたら、身体が持つ
訳がなかった。
 
「おやすみ…『オレ』…」
 
 意識を手放す寸前、もう一人の自分が珍しくどこか優しい口調でそう言ったのが
聞こえてくる。
 同じ言葉を返そうと試みるが…それは叶う事なく、間もなく克哉の意識は
深い闇の中へと落ちていった。
 
 
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※これは久しぶりに鬼畜眼鏡のキャラソングを聞いて
思いついた話です。
 ストーリーのその後の事をつい妄想して書いた話なんで
ご了承下さい。
 リハビリを兼ねた、軽いノリの話なんで宜しく。

お前に歌を   

 相手の手で強引に絶頂を与えられて、克哉は荒い呼吸を
何度も繰り返していた。
 胸の中にグルグルと、様々な想いが渦巻いている。
 
 久しぶりに会えて嬉しいという気持ちと。
 気まぐれにしか顔を見せない事に対しての苛立ちと。
 こちらの気持ちなどお構いなしに行為に毎回及んでくる
傲慢さに対しての憤りと。
 先程、自分と一緒に歌った時に見せた…色んな顔や
掠れた低い声などが頭の中に浮かんで…訳が判らなくなる。

(何で、オレの頭の中…こんなにグチャグチャなんだろう…。
どうして、コイツが絡んでくると…ペースが乱されてしまうんだろう…)

「どうした? 久しぶりに俺に弄られて…そんなに良かったか?」

「…どうして、お前は…いつだって、そういう物言いしか
しないんだよ! もう少しぐらい…優しくしてくれたって良い…だろ?」

「ほほう? お前は俺に優しくして貰いたいのか…?」

「…そうだよ! 悪いかよ…!」

 普段、本音を滅多に口にしない…人との衝突を避ける傾向にある
克哉にしては珍しく、声を荒げて言い返していった。
 
「…お前に、もう一人の俺に…そんな風に優しくして貰いたいとか、
愛して貰いたいとか、そんな風に思っちゃ…いけないのかよ!」

 少し泣きそうな顔をして、克哉は普段言えない本音を口に出していく。

(ああ、そういえばさっき…ちょっとお酒を飲んだな。一応、宴会だった
訳だし…オレ、酔っているのかな…。何か頭がグルグルして、感情が
溢れて…抑えられなくなってる…)

 さっきの自分と一緒に歌ってくれた、もう一人の自分の姿が…
何度も何度も、思い浮かんでいく。
 頭の中でその映像がリピートされる度に、何となく胸が落ち着かなく
なるような気分を味わう羽目になった。

(認めたくない…こいつの事を、さっき…凄くカッコイイとか思って
しまったなんて…そんなの、信じたくない…)

 何度も、こうやって身体を強引に重ねられている内に…自分は
おかしくなってしまったのだろうか?
 相手の手で強引に快感を与えられて、本心を暴かれて…無理やり
犯される。
 
「…どうした? 何故俺から目をそらすんだ…?」

「べ、別に良いだろう…そんな事は、どうだって…!」

 眼鏡の手が、克哉の顎にそっと延ばされていく。
 たったそれだけの刺激に胸がドキドキして、止まらなくなってしまい
そうだった。
 相手の顔が一気に寄せられて、澄み切ったアイスブルーの瞳が
こちらを射るように見据えてくる。

「そんな目で…見ないでくれよ、『俺』…」

 その双眸に見つめられるだけで、ゾクゾクして…冷静でなんて
いられなくなりそうだった。
 背筋から妙な痺れが競り上がってきて、ゾワゾワするような
もどかしさが身体の奥に湧き上がってくる。
 もう一人の自分が、体重を掛けて圧し掛かってくる。
 強引に足を開かれ、その間に身体を割り込ませてくると…期待と、
恐怖が同時に湧き上がってくる。
 無理やり、服を全部剥がれて…瞳の呪縛に囚われてしまっている克哉には
すでに抗う術など存在しない。

「いいや、お前の全てを見ていてやろう…。俺に貫かれて浅ましく腰を
自ら振る様も…快感を貪欲に貪ろうとする姿も…全部、俺が
見届けてやろう…」

「あっ…はぁ!」

 その言葉に、ゾクリと感じた途端…相手のペニスがこちらの身体の
中に強引に押し込まれていって、克哉は息を詰めていった。
 息が詰まるぐらいに熱い塊が、こちらを蹂躙し…満たしてくるのを
感じて、克哉は悲鳴を迸らせていく。

―その瞬間、克哉の中に…先程のもう一人の自分が歌っていた
時の姿が、鮮明に思い出されていったのだった―

※これは久しぶりに鬼畜眼鏡のキャラソングを聞いて
思いついた話です。
 ストーリーのその後の事をつい妄想して書いた話なんで
ご了承下さい。
 リハビリを兼ねた、軽いノリの話なんで宜しく。

お前に歌を 


 佐伯克哉は目覚めたら、気づいたらパーティールームを思わせる部屋に
連れ込まれていた。
 そしてもう一人の自分と対峙して、混乱している内に噛みつくようなキスを
されて面喰っていった。
 蹂躙されるように、熱い舌がこちらの舌を絡め取っていっている間は…
こちらの言葉は全て吸い取られてしまっていた。
 ようやく解放された頃には…克哉の顔は真っ赤に上気して、呼吸も
荒いものへなっていた。

「…お前は、俺が目の前にいるのに…余計な事ばかり考えているのか?
ククっ…大した余裕だな…」

「…バ、オレの何処に余裕なんてあるんだよ! それに…目覚めたら、全く
見知らぬ場所にいて…混乱しないでいられる訳がないだろ! ちょっとはオレの
立場になって考えろよ…!」

「…そんな無駄な事をして、何になる?」

「…グッ、それを無駄な事ってお前は切り捨てるのかよ…はあっ…」

 あまりにきっぱりともう一人の自分にこっちの訴えを切り捨てられて
しまったので克哉はガックリと肩を落としていく。
 だが…その隙を狙ったかのように…もう一人の自分の両手がこちらの
両肩に回されてぎょっとなる。

「わわっ…!」

「暴れるな。大人しくしていろ…」

 こちらがもがくよりも先に相手に抑え込まれて、強引にベッドシーツの上に
身体が縫い付けられていくような体勢にされていく。
 相手の顔が間近に存在して、こちらの顔を覗きこんでくると…嫌でも
意識をせざるえなかった。

「こ、こら…何するんだよ! 俺ってば…」

「何を今更純情ぶっている…。何度も俺に抱かれて、毎回のように快感に
もだえて俺の下で啼いている癖に…判らないのか?」

「うっ…! ど、どうしてお前はそう…いやらしい言い回しをするんだよ!
聞いているこっちの方が恥ずかしくなるだろ!」

 もう一人の自分はいつだってそうだ。
 克哉の気持ちなどお構いなしに、強引に自分のペースに持ちこんでくる。
 その自信満々の態度が非常に腹立たしくて、ムカムカしてくるのに…なのに、
この傍若無人な相手を、拒みきれない自分もまた確かに存在していた。
 相手の身体の下で暴れて、其処から逃れようと足掻いてみると…気づかない内に
克哉のシャツのボタンは外されて、胸の突起を執拗に弄られまくっていた。

「やっ…こら、止めろってば…『俺』…」

「断る、俺は…お前を啼かせてやりたくて仕方ない気分だからな…」

「や、やだって言っているだろ…止めろ、ってば…あっ…!」

 両手で胸の突起を攻め立てられていく度に、ジィンとした甘美な痺れが
全身に広がっていくのを感じていった。
 その度に身体が嫌でもビクビクと震えてしまい…どうしようもなくなっていく。

「やっ…あっ…! やだ、其処…弄るな、くっ…!」

「何をそんなに嫌がる理由があるんだ…? お前がどうしようもなくいやらしくて
淫らな身体をしている事なんて…俺にはとっくに判っている事だろう…?」

「違う…お前が、こっちの意思…なんて、お構いなしに…快感を
強引に引きずりだすんじゃない、か…ああっ…!」

「…ふん、ちょっと胸を弄られただけで…こんなに下半身を硬くしている奴が…
何を言っているんだ…?」

「あっ…やだ、其処…触らないで、くれよ…頼む、から…!」

 いつの間にかもう一人の自分の指先が、こちらの陰茎に絡んで
先端部分を執拗に弄り上げているのを見て…克哉は止めてくれるように
懇願していった。
 だがその願いは聞き遂げられる事なく…先走りを塗りこめるようにしながら
クチュクチュと音を立てて快楽を引きずり出されていく。
 全身を駆け巡る快感のせいで、満足に身体に力が入らない。

「やっ…やだぁ…ああっ…あっ―!」

 そして、頭を必死に何度も振りかぶりながら…克哉は強引に、もう一人の
自分の手によって絶頂に導かれていったのだった―
 
 ※ 久しぶりに鬼畜眼鏡の小説を書くので
リハビリ的に短めで、軽い感じの話を書かせて頂きます。
 
 キャラソングCDを久しぶりに聞いて…何か書いてみたく
なった話なんで宜しくです。



 佐伯克哉は困惑していた。
 此処に来るまでの記憶が、ぼやけて殆ど思い出せなかった。
 何となく身体はだるくて、思考がまともに働いてくれていなかった。

(此処は…一体、どこなんだ…?)

 頭の中に、まるで濃厚な霧でも掛かっているような感覚だった。
 周囲を見回しても…まるで見覚えがなかった。
 果たしてどういった経緯で、此処まで自分がやってきたのか…それに
繋がる記憶が全く思い出せない。 

 ―気づいたら、大きなパーティールームのような部屋のソファの上に
克哉は横たわっていたのだ。

「…うぅ、ここは一体…何か、カラオケとかの…多人数のパーティールームの
ような感じだけど…何か、カラオケの機械とかあるし…」

 しかし、何となく違和感を覚えるのは…カラオケルームにしては、調度品の
類がちょっと豪勢な物である事だ。
 赤いベルベッドのような肌触りの良い生地が敷かれたソファに…複雑な
紋様が端っこや柱の部分に施された机などは、普通はカラオケルームに
置かれていないだろう。
 それが…部屋の隅に置かれた大きなモニターとカラオケの機械と
酷くミスマッチな印象を与えていて…克哉は困惑した。

「…ようやく目覚めたか、待ちわびたぞ…『オレ』…」

「へっ…? ああっ! どうしてお前が此処にいるんだよ!」

「…随分な言い草だな。実に平和そうに寝ていたお前を…自然に目覚めるまで
気長に待っていてやったというのにな…」

「えっ…そうなんだ…って、だから…どうしてオレの前に…お前がいるんだよ」

「…お前は、覚えていないのか…?」

「…ゴメン、何か…此処に来るまでの直前の記憶が…何か、良く…
覚えてないんだ…」

 相手の、覚えていないのか…という問いの時…一瞬、眼鏡を掛けた方の
自分が何となく寂しそうな顔をしたので…克哉は言葉に詰まっていった。
 それに対して少し、後ろめたさのようなものを覚えたので…素直に謝っていく。

「…なら、教えてやろう。お前は…接待カラオケを俺と一緒に披露した後…
ここにやって来た。どうせなら…ただホテルに連れ込んだり、いつものように
お前の自宅でヤルよりも…たまには場所を変えた方が気分がより
盛り上がると思ったからな。あの男に…この場所を準備されて、此処に
招いてやったんだ。一緒にお前と歌ってやった御褒美を…たっぷりと
堪能させて貰う為にな…」

「えっ…?」

 その言葉を聞いた瞬間、克哉の脳裏に急速に直前の出来ごとが
再生されていく。
 そうだ、接待の為に自分はカラオケに向かって…其処で、もう一人の
自分とデュエットをして…それで…。

「ああああああっ!」

 そして、よりにもよって酒の席とは言えど…会社の関係者の前で、もう一人の
自分と二人で並んで歌ってしまった事を思い出して、克哉は叫んでしまった。

「何だ…その反応は。お前と俺とで一緒に歌って…非常に盛り上がったし、
接待も成功した。それで何でそんな風に叫ぶんだ?」

「だ、だって…会社の…権田部長の前で…お前と二人で並んで歌っている
処を見られたんだぞ…! 追及されたら、一体どうするんだよ!」

「何だ、そんな事か…。お前は覚えていないだろうが…そんなの、
気にしなければ良い。どうせあれだけ酒を飲んでベロベロになっていた
連中の事だ。お前が二人いたって事も…自分が酔っていたから見た
幻覚程度に処理するだろう。気にするな」

「…気にするな! って言われたって…そんなの無理だろ! …ああ、明日から
一体どうしたら良いんだろう! どんな顔をして会社に行ったら…!」

「…お前の頭には、明日の事しかないのか…?」

「えっ…あっ…うわっ、何だ…」

 こっちが頭を抱えて嘆いていると、もう一人の自分の顔が
唐突にグイっと近づいて来た。
 その事に泡食って目を見開いていくと…まるで不意打ちのように…
唇に噛みつくようなキスをされていったのだった―




 
変わらない筈なのに、何かが歪んでいる世界。
 一人の筈の彼らが、当たり前のように二人で生きている世界。
 片方は必ず、部屋の中にいなければならない。
 一人しか、外に出る事は出来ない。
 そういうルールの存在する世界で眼鏡と克哉は…?
 切ない要素を含んだ話になります。
 それを了承の上でお読みください。 

 還る場所へ   


―今の克哉は、言ってみれば知らない間に強制的に籠の鳥に
させられているようなものだった

 もうどれぐらい前の話だったのか、具体的な日数はすでに
思い出せなくなっている。
 外に一歩も出る事が出来なくて。
 問答無用に、気まぐれにやってくる自分と同じ顔をした男に
無理やり身体を貫かれる日々。
 だから…初めて相手と顔を合わせた時に言っていた発言を
吟味する余裕すら、今までなかった。

(十年前から、って一体どういう意味なんだよ…?)

 克哉には、相手の発言の意味が全く判らない。
 今より十年前と言えば…克哉は高校生ぐらいの頃の
話である。
 そんな昔に、彼と出会った記憶などこちらの方には
一切存在しなかった。
 寝た振りをしてやり過ごそうと思ったがさっきの発言が気になって
つい身体を起こしていってしまう。
 慌てて部屋の外に消えた相手の姿を追い駆けていくと…意を
決して、廊下で克哉は尋ねていった。

「…なあ、さっきの…発言は、どういう意味なんだ…?」

「…やはり、寝た振りをしていたのか。…どうもこうもない、言葉の通り…
俺は十年前から、この部屋とお前の事を知っている。…それにむしろ
知りたいんだが、どうしてお前はあの頃から一切何も変わっていない?
俺の方はこの十年で、年を取ったのに…お前は年を取った形跡すらない。
その理由を、俺は逆にお前に聞きたいんだが…?」

「…ちょっと待てよ。オレは…十年間もこの部屋に住んでいない。
せいぜい、お前と出会った頃…数か月程度だよ。幾らなんでも…
十年も、こんな部屋に閉じ込められてなんか…いない筈だ…」

 けれどその一言を発した瞬間、彼の顔が大きく歪むのを
見て…チクリと胸が大きく痛んでいった。
 相手の言葉には違和感しか覚えない。
 確かに目覚めた時点から、克哉の記憶はあやふやな状態だった。
 この部屋に来る以前の事は、殆ど覚えていないに等しかったからだ。

(…どうして、そんな顔をするんだよ…! 仕方ないだろ、オレの方には
全く覚えなんてないんだから…! 覚えていないものを、正直に覚えて
ないと言って…そんな悲しそうにされなきゃいけないんだよ…!)

 相手の瞳には、明らかに大きな落胆と悲しみの色が
宿っていて…途端に罪悪感が湧き上がっていく。
 それに胸が痛くなって、克哉はつい叫んでしまった。

「仕方ないだろ…! 数カ月前にこの部屋で目覚める以前の事を…
オレは、忘れてしまっていたんだから! 自分が何をやっていたのか…
どんな風に過ごして生きてきたのか、それすらも…覚えていないんだ!
十年も前の事なんて、判る訳がないだろ!」

「…なん、だと…? 何も、覚えていない…?」

 感情的になった克哉の発言に、相手は信じられない、というような
顔を浮かべていた。

「…うん、オレは…何も思い出せないんだ…。どうして、こんな風に
部屋から一歩も出れない状態になったのか。ここに来る事になった
経緯がどんなものだったのかも、全く判らないんだよ…」

「それは、本当…なのか…?」

「うん…」

 克哉が言葉を紡ぐ度に、本当の事を口にする度に…相手の瞳が
悲しそうになっていくのが、切なかった。
 けれど事実を言わないで誤魔化しても何にもならない事を
克哉も本能的に察していく。
 ギュっと唇を噛みしめて胸の痛みに耐えていくと…いきなり相手は
狂ったように笑い始めていった。
 其れは哄笑、とも言える自虐的なものを含んだ…痛々しい笑い方
でもあった。
 自分自身の愚かさを笑っているような、こっちの滑稽さを嘲笑って
いるような…そんな感じの、見ていて気持ちがモヤモヤしてくるような…
嫌な、笑いだった。

「ははははははっ…! そうか、そうだったのか…! この十年など
全く意味などなかったんだな…! お前をどれだけ探しても、会いたいと
思っていた気持ちなど…無駄な事だったんだな…!」

「探して、いた…? オレに、会いたいと思って…いた…?」

 その単語が、克哉の胸に大きな波紋を広げていく事になった。
 相手に、無理やり強姦されているだけだと思っていた。
 こちらの意思など、お構いなしに欲望だけを吐き出していく…そんな
セックスをされているだけだと今まで受け止めていた。
 けれど今の一言で、克哉の心境は大きく変わりつつあった。

(十年も、オレを…探して、いた…?)

 けれど克哉の方にはそんな記憶など一切存在しない。
 それに十年も経過していたら、こちらだって流石に年をとる。
 相手の年を取っていないんだ? という発言も意味不明で…
何がどうなっているのか、克哉はともかく混乱するしかなかった。
 こちらが困惑の表情を浮かべていくと、相手の目に徐々に凶暴な
光が宿っていく。
 それが何か…狂気めいたものを感じていって、克哉は無意識の
内に後ずさって…身を強張らせていく。

「ひっ…!」

「…どうした? 何でそんなに…怖そうな顔をしているんだ…?」

「…だって、お前の目が…怖い、から…?」

「ほう? 俺の目がか…? 当たり前だ…今、俺は怒っているんだからな…?」

「っ…!」

 淡々とした口調の中に、相手の怒りが如実に伝わってくる。
 とっさに克哉は踵を返して逃げようとしたが…強引に相手に腕を
捕まえられて、壁に強引に押し付けられていく。

「いたっ…!」

 そして、首筋に強く噛みつかれて歯型をくっきりと残されて
いってしまう。
 そうして竦んでいる間に…克哉は再び、壁際に追い詰められていく
格好になっていったのだった―

 
 
変わらない筈なのに、何かが歪んでいる世界。
 一人の筈の彼らが、当たり前のように二人で生きている世界。
 片方は必ず、部屋の中にいなければならない。
 一人しか、外に出る事は出来ない。
 そういうルールの存在する世界で眼鏡と克哉は…?
 切ない要素を含んだ話になります。
 それを了承の上でお読みください。 

 還る場所へ   

 克哉が目覚めたのは、粗末なベッドの上だった。
 身体中がギシギシと痛む。
 覚醒するとすぐに、先程乱暴に貫かれた記憶が蘇り、
苦い思いが広がっていく。

(あいつは、どうしてオレを…こんな風に酷く扱うんだ…?)

 自分と全く同じ顔をして、銀縁眼鏡を掛けている男。
 長い金髪をなびかせている黒衣の謎めいた男。
 この部屋に来るのは…その二人だけだった。
 そして克哉をこんな風に、無理やり抱くのは自分と同じ顔をした
男だけだった。
 こんな暮らしが、いつから始まったのかさえ今の克哉にとっては
判らない。
 自分は何処から来て、どういう人生を送って来たのかさえも
曖昧だった。
 けれど鏡に映った自分を見る度に、毎回覚える違和感がある。

―自分は果して、こんな姿をしていただろうか?

 自分の記憶の中にある年と、肉体の年齢が一致していない気がした。
 まだ…自分は高校生ぐらいではなかったか?
 何故か、そんな風に思う事があった。
 十年ぐらい、年月を飛び越えてしまっているような気がして…
其れが余計に、克哉の不安を大きく煽っていく。

(還りたい…)

 何故か、胸の中に広がるのはその想いだった。
 克哉が還るべき場所は…何処かにある筈だった。
 けれどそれに繋がるヒントがどこにあるかは全く判らない。
 探しに行きたくても、部屋の外に出る事は叶わなかった。
 一人きりで残されて、無為に時間を過ごしている間…正直、
気が狂いそうになる。
 気持ちが不安だと、ベッドで寝ていても寒さを強烈に感じていく。
 布団にくるまっていても、そう感じるという事は…余程、先程のベランダでの
行為で身体が冷えてしまったのだろうか?

「…起きているか?」

 唐突に、部屋の扉の方から声が聞こえて来た。
 その声を聞くだけで心臓がバクバク言い始める。
 とっさに、その問いかけに返事が出来なかった。
 もし…こちらが起きているのに気づいたら、またあんな風に
乱暴に抱かれてしまうのだろうか…と言う恐怖があったから。
 克哉の中で、自分と同じ顔をした男性に対しては…そんな
印象しかなかった。

『どうして、お前は何も覚えていない! 何故!』

 その一言が、今も克哉の脳裏に突き刺さっている。
 そうだ…随分前に、この部屋で目覚めた時…一番最初に
目覚めて顔を合わせたのは彼だった。
 そういえば、最初はとても優しい顔をしていた気がする。
 目覚めたばかりの記憶で、それはとても曖昧なものだったけれど。
 けれどこちらが起きて、幾つかの問いかけに対して
首を横に振った途端に…その表情は大きく歪み始めて、そして…。

―この歪な関係が始まったのだった

 その事をふと思い出して、胸がギュっと縮むような気がした。
 タヌキ寝入りを決め込んで、相手からの問いかけには口を閉ざして
答えない事にした。
 さっきのセックスだけで、すでに身体は悲鳴を上げていたから。
 続けて、あんな風に酷く抱かれれば…暫く身体を起こす事すら
困難になる気がしたので、ともかく寝ている振りを続けていった。

 ガチャン…

 ドアの開く微かな音が聞こえて、相手が部屋に入ってくる気配を
感じていく。
 その間、ドクンドクンと緊張で鼓動が荒くなっているのが判った。

(早く、出ていってくれ…)

 そう克哉が祈っていくが、それも虚しく…相手は、ベッドの方まで
歩み寄って傍らに腰を掛けていった。
 こちらの顔を覗きこんでいるような気がして、余計に目を開ける事は
出来そうになかった。
 状況を確認しようと、薄目を開けていくが…それだけで妙に
ドキドキしてくる。
 そうしている間に、相手の方がそっとこちらに手を伸ばして来た。

「っ…!」

 一瞬、声を出しかけたがどうにか喉の奥に飲み込んでいく。
 そして…眼鏡は一言、こう呟いた。

「…この部屋は、間違いない筈なのに…どうして、お前は俺を…
覚えていないんだ…? 十年間、ずっと…探し続けて、いたのに…」

(えっ…?)

 その一言は、予想もしていないものだった。
 同時に猛烈な違和感を覚えていく。
 そうだ、初めて目覚めた日…自分は、彼に…『俺を覚えているか?』と
問いかけられたのだ。
 けれど、全く見覚えがなかったから首を横に振るしかなかった。
 其れが…彼の態度が豹変した理由ではなかったのか?

(これは一体、どういう事なんだ…?)

 克哉の胸の中に、猛烈な疑念が広がっていく。
 そして暫く…寝ている演技を続けていくと、相手の方も諦めて
向こうの部屋へと消えていった。
 そして、彼の呟いた一言は…後に、大きな波紋となり…予想もつかない
展開を、間もなく引き起こす結果となったのだった―
 


 
※この話はラブプラスを遊んでいて、眼鏡キャラとかでこういうの
やったら面白そうだな…という妄想から生まれています。
 基本、完全にギャグでアホな話なので流せる方だけ宜しくお願いします。
(一話掲載時とはタイトル変更しました)
 
 ラブ眼鏡+   2      

 克哉が屋上に出ていくと、其処には眩いばかりの都会の街の
光景が広がっていた。

(ああ、良い天気だなぁ…。空はこんなに青いのに、どうしてオレの心は
こんなにも曇っているんだろう…)

 モヤモヤした思いが胸を満たしていると、天気が良いというそれだけの
事にすら何か切ないものを感じてしまう自分は重症だと思った。
 今日は幸いにも、屋上には自分以外の人影は存在しない。
 初夏の頃を迎えて、すっかり昼頃には此処は暑くて過ごしにくく
なっているのが大きな原因かも知れなかった。
 しかし、どんな理由があるとはいえ…今、自分以外の人間が
いない事は克哉にとっては救いだった。

(…どうかこのまま、他の人間が来ませんように…)

 そう祈りながら屋上の扉を閉じていき、給水塔の影になる場所に
座ってゲーム機を開いていった。

『…昼休みに入って随分経つと言うのに遅かったじゃないか…「オレ」…』

「ん、ゴメン…ちょっと本多に捕まっていたんだ…」

『…本多か、確かにあいつに誘われるとうざいな。とりあえず飯を食え。
それぐらいの時間は待ってやるぞ』

「ん、うん…ありがとう…」

 ゲーム機の中に存在しているもう一人の自分は相変わらず偉そうな感じで。
 それを見て少しイラつく自分と、ほっとする部分が同時に存在していた。
 カバンの中から駅前のコンビニエンスストアで購入したサンドイッチとおにぎり、
野菜ジュースなどを取り出していくとそれを食べ始めていく。
 ゲーム機を開いていきながら、こうして一人で昼食を食べている光景は
きっと他の人から見たら奇異に映るに違いない。

『飯は旨いか?』

「え、あ…うん。このサンドイッチセット、ちょっと喫茶店ロイドに出てくるエッグサンドの
味に似てて…食べててほっとするからね。そういえばお前って何も食べないでいて
大丈夫なのか?」

 ふと、ゲーム機に表示されている相手がいつ食事の類を食べているのか
気になったのでそんな質問が口をついていく。

『いや、お前の昼休みになる前にキチンと食べているから問題するな。
一応入浴とか着替えの類も此処は整っている環境だしな』

「そ、そうなんだ…」

 相槌を適当に打っていくが、克哉の中で余計にこのゲーム機の
向こうのもう一人の自分がいる空間に対しての疑問が広がっていく。
 一体どうなっているのか物凄く興味はあるが、何となく怖い回答が
返ってくるような気がして…ゴクンと息を飲んでいきながら言葉も
同時に飲み込んでいく。
 けれど、もう一人の自分とこうやって一緒にご飯を食べながら過ごすなんて
悠長な事をするのは初めての経験で。
 戸惑いと困惑が時間が経過する度にゆっくりと薄らいでいくtと…
克哉の胸の中にはじんわりと嬉しさがこみ上げて来ていた。

(それを口に出して伝えたらきっと「俺」は皮肉めいた口調で何か
言うに違いないけどな…。ま、良いか…何か嬉しいし…)

 今までは会いたくても、会えなかった。
 連絡を取る手段すら皆無の状態だった。
 それに比べればゲーム機を通してとはいえ…相手とコミュニケーションを
取る手段が存在しているだけ有り難いのだと、やっと思えるようになり…
ぼんやりとそんな事を考えている内に昼食を食べ終えていく。
 野菜ジュースを飲み干していった瞬間、克哉は無意識のうちに唾を
飲み込んでいった。

(そろそろかな…ゆっくりと食べて間を持たせていたけど…食べ終わると
やっぱり意識せざる得ない…)

 食べ終えた品の包装やゴミの類を小さなビニール袋に入れて纏めて、
自分のカバンの中に後で捨てる為に一旦収めていくと…眼鏡は
低い声で語りかけてきた。
 さっきまでの彼の声とは明らかに大きくトーンが異なっているその口調に
克哉は尾てい骨の辺りに寒気にも似た疼きが走っていくのを感じていく。

「やっと食べ終わったか…。なら、そろそろお愉しみの時間だな。
昼休み終了程度までは付き合って貰うぞ」

「う、うん…判った…」

 知らず、声が上ずっていくのを感じる。
 同時に胸の鼓動が乱れていくのを実感していった。
 今朝、一通り説明された内容が頭の中で再生されていく。

―俺をソノ気にさせれば…

 その言葉が蘇って、カッと身体が熱くなっていくのを感じる。

(逢いたい…お前と…。こんなゲーム機越しじゃなくて、ちゃんと生身の
身体を伴って一緒に時を過ごしたい…)

 そんな、赤裸々な自分の欲求を克哉は自覚しつつ…緊張した面持ちで、
右手にタッチペンを持ち…ゲーム機を持って構えて画面を覗きこんで
いったのだった―
 

 ※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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―本多との意識のシンクロが途切れると、克哉は涙を静かに流していた

 其れは、あの優しい男ともう二度と会えない悲しさと。
 彼が目覚めた事を知った喜びが入り混じった涙だった。
 
(さよなら…本多。大好き、だったよ…)

 克哉は、忘却の彼方に確かに再生の道を歩む事が出来た。
 自分の事を忘れても、という本多の労わりの気持ちがあったからこそ…
今こうして、一人の足で立てる自分に戻る事が出来た。
 永遠に絶える事のない波の音が、耳に届いていく。
 少しずつ荘厳な朝日が姿を消し、光に満ちた世界が目の前に広がっていく。
 
「綺麗、だ…」

 涙が、優しさが…克哉に、この光景を美しいと素直に感じる心を
取り戻してくれた。
 人は心が疲れきっていたり、罪悪に縛られている時は…その負の感情に囚われて
美しいものを率直に感じる感受性を失ってしまう。
 日常の中に潜む、朝日や夕暮れ…自然の中に存在している美を
こうして感じ取れる事こそが、心が健康である証なんだ。
 ポタ、ポタ…と目から涙が止まってくれなかったけれど…その度に
硬くひび割れてしまっていた自分の心が、柔らかさを取り戻していくようだった。

―世界は、こんなにも優しくて綺麗だったんだ…

 本多が倒れてから、世界はずっと灰色とドス黒い色に覆われているように
ずっと感じられた。
 生きている事が、息をしている事すら苦しくて仕方なかった。
 その胸のつっかえが、ようやく消えてくれた。
 もう会えないという寂しさのせいで、胸の中にぽっかりと空洞が空いてしまって
いるのも確かだが…それ以上に、本多が目覚めてくれた事に対しての喜びが
克哉を満たしていく。
 
「本多…本当に、良かった…。お前が目覚めてくれたなら…それで、良い…。
会えなくても、それでも…元気でさえ、いてくれたら…」

 もう、今の克哉にはそれだけで充分だった。
 その時…自分の傍らに、今…もう一人の自分がいてくれない事に
寂しさを覚えてしまった。

「あれ…? Mr.Rは…?」

 そして、いつの間にか黒衣の男の姿もまた消えてしまっている事に
気づいて…克哉は怪訝そうな顔を浮かべていった。
 寄せては返す波の音だけが周囲に響き渡っていく。
 その中で…太陽がもっとも、生命力を感じさせるぐらい眩く輝く瞬間を
克哉は、目の当たりにしていった。
 鮮烈で、網膜すら焼きつくすような力強い輝きが…自分の心を照らしだして
活力すら与えてくれるようだった。

「…朝日がこんなに綺麗に感じられた事って何年ぶりかな…」

 本当にそれくらい、長い間克哉は…自然の光景に目を奪われる経験など
皆無だった。
 それと同時に自分の足で今…しっかりと確かに立っている事を自覚する。
 もう一人の自分がいない事に対して、寂しさは確かにある。
 けれど彼に依存していたあの世界の中では…こんな風に、しっかりと立っているのだと
感じる事はなかった。
 
「ゆりかごのような、世界か…。確かにそうだね…。オレは、本多とお前が紡いでくれた
世界で癒され…こうして立ち直る事が出来たけれど。お前がずっと傍らにいて…
優しくしてくれるままだったら、きっとズルズルと甘え過ぎていただろうな…」

 そしてようやく、本多が目覚めたという希望を知った事で…何故、もう一人の
自分がまずはこの世界での生活の基盤を「一人で」作っていけという
その意図をうっすらと理解していった。
 きっと、彼がいたら甘えてしまうから。
 一人で気持ちの上で自立する事が出来ないまま、いつまでも依存して…
しっかりする事が出来ないから…だから彼は、必ず迎えに行くと約束だけして
一旦、姿を消したのではないかと…素直に、そう感じられた。

「必ず、会えるんだよね…信じて、良いんだよね…」

 自分の胸にそっと手を当てて、己の中にいるもう一人の自分に静かに
問いかけていく。

―ああ、信じろ。必ず…迎えに来る

 そう、胸の内側から確かな声が聞こえた気がした。
 
「…うん、信じるよ…」

 その声を聞いて…克哉は確信していく。
 今は、実体を持って存在していないだけで…彼の意識は、存在は確かに
自分の心の中に在る事を。
 そして己の内側から、彼は克哉を支えてくれている事を…見ている事を
感じ取っていく。
 今は、抱き合ったりキスしたりそういう事は出来ないだけだ。
 胸の中に力強いものを、確かに感じていく。

―俺は、お前の中にいる…見守っていてやる…だから、心配するな…

「…うん…」

 もう一人の自分の声が、聞こえる。
 自分の分身、そしてもっとも最愛なる存在。
 彼が見守ってくれているなら、この胸の内にいる事を感じられるなら
きっとまた実体を持って会える日が来るまでしっかりと生きていける。
 
「…一日も早く、お前がちゃんと身体を持って迎えに来てくれる日が
来るように頑張るから…見守っててくれな…『俺』…」

―ああ、楽しみにしていてやる…

 いつも通りの、不遜な言い回しだった。
 それが彼らしくて、克哉はつい微笑んでいってしまう。
 この新しい世界が、どこまでが今までいた世界と同じで…何処が違うのか
まだ判らなくて、新天地に対して漠然とした不安はあったけれど。
 まずは、自分の足で立って生きる事から始めてみようと思った。
 
―そして克哉は日がすっかり昇り終えたのを確認すると、その場から
一歩を踏み出して歩み始めていく

 砂浜に、克哉の足跡が力強く残されていく。
 一日も早く…もう一人の自分と過ごせる日が来るように、克哉は
前を見据えていきながら…これから、自分が生きていくにはどうしたら
良いのかを必死に考え始めて、模索し始めていったのだった―
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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―あの不思議な世界は、本多と克哉の意識が重なって生まれていた場所だった

 だから…すでに世界を隔ててしまっていても、僅かにまだ繋がっている
リンクを辿る形で…克哉の意識は、本多の精神と繋がり…そういう形で
彼の目覚めを体験し、知る形となった。
 長く暗いトンネルから抜けて、ようやく光を見たような気分だった。
 身体全体が鉛のように重く、指先一本動かす事すら億劫だった。
 克哉には何も干渉する事は許されない。
 本多の目を通して、かつていた世界にて…彼の目覚めた直後の場面を、
そしてその心中を伺い知る事になっていた。

「うっ…」

 本多の唇から、微かなうめき声が漏れていく。
 自分の身体じゃないような、猛烈な違和感を覚えつつも…どうにか瞼を
開けていくと、其処には誰かが傍にいた。
 部屋の電灯は、消されている。
 漆黒の闇に覆われている夜の病室…視界が満足に効かないままで
指先をどうにか伸ばして、上に上げていくと悲鳴が聞こえた。

「…本多! お前…もしかして目覚めたのか?」

 二年間、寝たきりになっていた本多が指先を挙げた事を暗闇の中、
微かに浮かんでいたシルエットで察したらしい。
 慌てて誰かが、部屋の電灯を点けていくと…一瞬、蛍光灯の光で
目が焼かれるかと思うぐらい眩しく感じた。
 瞼を閉じて、その状態で光に目が慣れるまで静かに待っていく。
 そしてゆっくりと瞳を開けていけば…其処には松浦宏明が立っていた。

「本多…まさか、本当に…目覚めて、くれた…の、か…?」

「ああ、そうだ…。一体、どれくらい…寝ちまっていたのか、正直…
判らないんだがな…」

「二年、だ…。二年も…お前は、眠って…いたんだ、ぞ…ぅ…」

「宏明…?」

 みるみる内に、松浦の瞳が涙で滲んでいく。
 ようやく、待ち望んでいた目覚めの時を迎えて…胸の奥に秘めていた感情が
堰を切ったように溢れていった。

「良かった…本当に、お前が…目覚めてくれて、良かった…!」

「………そっか、俺は…二年も、眠ったまま、だったのか…。
なあ、お前…どうして、俺がこんなに長い間眠るようになったのか…
その原因を、知っているのか…?」

「えっ…?」

 心から、そう実感して松浦が言葉を紡いでいく。
 佐伯克哉に嫉妬をして、彼を強制的に排除しようとした事によって…自分に
とって大切な人間を刺して、二年も昏睡状態に陥らせてしまった。
 その罪の意識が…ようやく、本多の目覚めを持って少し軽くなった気がした。
 だが、彼が呟いた言葉に松浦は怪訝そうな言葉を漏らしていく。

「…わりぃ、何か…良く、思い出せねぇんだよ…。俺に何があったのかも…
どうして、二年も眠る事になったのか、そのキッカケがイマイチ思い出せない…。
何か、知っているんだったら…教えて、くれないか…?」

「っ! …その話、本当…なのか…? お前は、あの日の事を…
忘れて…しまっているのか…?」

「…お前、何があったか知っているのか…?」

 本多は、真剣な目をしながら松浦に問いかけていった。
 きっと、外から見たら…本多は本気で言っているように見えるだろう。
 だが…彼の精神にシンクロしている克哉は、それが本来腹芸など出来ない
本多の精一杯の演技であり、ハッタリである事を感じ取っていった。
 しかし本多が問いかけた瞬間、松浦は苦悶の表情を浮かべていった。
 他ならぬ犯人である松浦に、事実をありのままに話す勇気などいきなり
持てる訳がない。
 しかし考え抜いた末で…相手は、こう返してきたのだった。

「…すまない。俺は…詳細は良く、知らない…。ただ、お前が公園で刺されて
病院に搬送されたという話だけを知っているだけだ…」

 それが、松浦にとって答えられるギリギリのラインだった。
 雨の降りしきる公園で本多を刺したあの日の事を忘れてくれているのなら…
むしろその方が松浦にとっては望んでいた事だったから。
 怯えたような、縋るような顔を向けていきながら…松浦は小刻みに
肩を震わせていた。

「…そっか…。俺は…それで、眠っちまったんだな…」

「ああ、そうだ…」

 そして、暫く沈黙が二人の間に落ちていった。
 本多は少しの間、口を閉ざして考えていってから言葉を紡いでいく。

「…なあ、正直…二年も眠っちまって…俺は、どうして良いのか…判らないんだ…。
イマイチ、意識を失う前の記憶も曖昧だしな…。けど、お前さえ良ければ…少し
力を貸して貰えないか…? どんな出来ごとが俺が眠っている間にあったのかとか
教えて貰えるとすっげぇ助かるんだけど、良いか…?」

「と、当然だ…。それくらいなら…幾らでもしてやる!」

 松浦は、本多の言葉に即答していった。
 それこそ、彼が何よりも望んでいた事だったから。
 本多が自分を許してくれるかどうか判らなかった。
 けど…許されるなら、償いとして精一杯の事をしたい気持ちが強くあったから。
 だから力強くそう答えていくと、本多は…小さく笑って答えていった。

「ああ、頼むよ…。正直、俺は細かい事とか良く判らないから…しっかりしている
宏明に手助けして貰えると…すげぇ、有り難いからな…」

「…あぁ、お前がそういう煩雑とした事が苦手な性分だって判っている。そういう
フォローは慣れているから…心配するな」

「ん、サンキュ…」

 そして本多は笑みを浮かべていくと…松浦は、堰を切ったように涙を
溢れさせていった。
 其れは安堵と、喜びの入り混じったものだった。
 
「本当に…本当に…お前が、起きてくれて…良かった…!」

 そして松浦は、そう言葉を漏らしていった。
 変わらぬ態度で本多が接してくれている事に、感謝してそう漏らしていった。

(そう、俺は忘れる…。あの日の出来ごとを忘れて…一からやり直すんだ。
克哉が…俺の事を忘れて、新しい一歩を踏み出したように…俺も、「あの日の
出来事」は何もなかった事にして、生きていくんだ…。じゃなきゃ…宏明は
きっと、罪の意識を抱えたまま生きる事になっちまうからな…)

 松浦のその言葉を聞いた瞬間、本多のその強い思いを克哉は感じ取っていった。
 そう…忘れた、というのはウソだった。
 本多は二年前のあの日の事も、克哉がすでに別の世界で生きる事になって
いる事実も全て把握していた。
 けれど…友人を少しでも楽にする為に、精一杯の嘘をついていったのだ。
 人は…一日の間に起こった事の97%は意識して記憶を留めるように
しなければ自然に忘れていくという。
 忘れる、という事が出来るから人は立ち直る事が出来るし…やり直し、
再起の道を歩むことが可能になるのだ。
 お互いを縛り、苦しみだけを与える記憶なら意識して忘れるようにして
しまえば良い。
 始めからなかった事にしてしまえば、お互いに楽になれる。
 そう判断したからこそ…松浦を案じて、本多はそうする事にしたのだ。
 
―其れを感じ取って、克哉はただ…本多という男の器の大きさに…
尊敬すら覚えていった

 そして本多と松浦の間に沈黙が落ちていった。
 それはとても優しい空気が流れている時間だった。
 ゆるやかに克哉のリンクが解けて、意識が再び遠くなっていく。
 一時の、夢から醒めていく最中…最後に、克哉は強い思いの声を
聞いていった。

『克哉…どうか、幸せにな…。俺は、もう会えないけれど…こっちで
精一杯やっていくから。どうか…お前も、新しい道を歩んでくれ…』

 其れが、最後に聞いた本多の声。
 リンクが途切れて遠くなっていく自分に宛てて言っているような
言葉だった。
 
 そして、克哉の意識は徐々に現実に引き戻されていった。

―彼が、新たに生きる世界の方にと…
  
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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―潮騒の音を聞きながら目覚めると、さっきまで確かにしっかりと繋がれて
いた筈の手が、なくなっているのに気づいた

 克哉は目覚めると、何処かの海岸にいた。
 見覚えの全くない場所だった。
 どうして自分がこんな処にいるのか、最初は全く判らなかった。

「ここ、は…一体…? 其れに、オレは…?」

 さっきまで、過去の出来事を回想する形で垣間見ていた。
 そしてその直前までは確かに夢の世界にいた事はぼんやりと
覚えている。

(此処は、もう…現実なのか…?)

 これが夢の続きなのか…それとも現実なのか、克哉にはとっさに
判断がつかなかった。
 周囲を見回していくと、厳かと形容出来るぐらいに力強く輝いている
朝日が目に飛び込んできた。
 眩いばかりの光が、こちらの網膜すら焼きつくしてしまいそうな
錯覚すら覚える。
 不思議なものだ、長い夜が明けて朝を迎えると人は無条件に…
希望のようなものを感じ取ってしまう。
 もう一人の自分の姿が見えなくて不安なのに…その朝日を眺めている
間だけは、何となく克哉は力強いものを感じ取っていった。

「お目覚めですか…克哉さん…?」

「…Mr.R! 此処は一体何処何ですか! それに…『俺』は…!
もう一人の俺は、何処にいるんですか!」

 どれだけ胡散臭くても、見知った顔を見た途端に…克哉は若干
取り乱しながらもう一人の自分の事を尋ねていく。
 しかし黒衣の男は諭すような口調で、残酷なまでの事実を告げていった。

「…もう一人の克哉さんは、暫くは貴方の傍には戻らないでしょう…。
この新しく始める世界では、最初は自分が傍にいない方が…貴方が
早く自分の足で立てるようになるだろうと…そういう判断を下しました」

「えっ…? そんな、まさか…嘘、だろ…?」

 その事実は、克哉を強く打ちのめした。
 夢の終わりに…もう一人の自分の手か、本多とやり直すかという
残酷な決断を迫られて、克哉は彼を選んだ。
 辛くても苦しくても…彼がずっと傍にいてくれるならこれからも
やっていけると思ったから。
 その甘い期待が早くも裏切られてしまって…克哉は途方に暮れた顔を
浮かべていった。

「…そんな顔をなさらないで下さい。これは…あの人なりの、貴方を想って
選んだ事なのですから…」

「嘘だ! 本当に想っているのなら…どうして傍にいてくれないんだ!
夢から覚めたら一人だなんて…そんな残酷な事、どうして出来るんだよ!」

「…ほら、すでにその発言だけで…今の貴方がどれだけあの人に依存しているか。
甘え切ってしまっているか判るでしょう…? 私は植物人間状態になった本多様を
目覚めさせて…貴方に、やり直す為のゆりかごのような世界すら与えました。
それなのに何の痛みもなく現実に戻ってやっていけると…そんな甘い事を
考えていらしたんですか…?」

「っ…!」

 一瞬、Rが酷薄とも形容出来るような冷たい笑みを浮かべた。
 途端に克哉の背筋に冷たいものが伝っていく。
 その瞬間…克哉は思い出した。
 この得体の知れない男性は…時に、克哉は破滅させかねないような
甘い罠を這って待ち構えている事がある事実を。

「…ここは、貴方の為に用意した新しい世界です。この世界に存在していた
佐伯克哉は、とある理由で失踪しております。…ですから色々と住民票や
銀行の通帳の凍結を解除したり面倒な手続きをする必要はありますが…
その辺を片付ければ、貴方にとっては住みやすい世界だと思いますよ。
貴方のアパートはすでにありませんが…荷物は実家の方に引き取られて
いますから必要なものは取りにいけば良いですし。暫くは其処を生活の
拠点にすれば再起の道は歩いていけるでしょう…」

「この世界のオレが…失踪している? どうして…?」

「…そんな瑣末な事はどうでも宜しいでしょう…? 此処は、本多様と二度と
会えなくても新しい一歩を踏み出す決意をした貴方の為に用意した世界。
この世界に、本多様は存在しますが…其れは、貴方の恋人であった本多様ではなく…
あくまで親友という立場を貫かれて、恋人関係になるに至らなかった…
そういう間柄です。…簡単に言えば、此処は貴方が目覚める前までいた世界とは
同一であり…微妙に異なる世界。SF的な単語で言えばパラレルワールドと
言われるものですよ。時間軸も、人間関係も微妙な誤差があります。
…ですが、貴方が知っている人間はほぼ同じように存在しています。
ただ、姿を消す前の佐伯克哉さんは…ここでは誰とも絆を結ぶ事が
出来なかった。それだけの話です…」

「………」

 充分、荒唐無稽としか言いようのない事実をベラベラしゃべられて
克哉は話についていく事が出来なかった。
 他の人間に話されたのなら、到底信じる事など出来ない内容だ。
 だがこの男性が絡む以上は…決して不可能な事ではないと、すぐに
思い直す事にした。
 ついさっきまで自分がいた世界そのものだって…現実的に考えれば
有り得ない筈の場所だったのだから。
 Rが絡む事は、現実から離れた事が怒っても何の不思議ではない。
 深く溜息を吐きながらその歴然とした事実をどうにか受け入れて…
克哉は言葉を紡いでいった。

「…状況は、大体判りました。けど…どうして『俺』はいないんですか…?」

「貴方は暫く、実家を拠点にしてやっていかないといけない状況です。
ここで貴方達二人が生きていけるだけの十分なお金と、住居を用意するのは
そんなに難しい事ではありませんが…あの人は、貴方が自分の足で暫く
生きていかれる事を…精神的に、自立する事を望まれましたから…。
もう一人の貴方からの伝言です。『お前がこの世界で、自分と一緒に暮らせる
だけの基盤を築いたら必ず迎えに行く。それまで浮気せずに待っていろ』と
言う事です…」

「そ、んな…けど、それは…あいつらしい、話だな…」

「ええ、そうですね。いつまでも甘やかしていたら…人間は前に
進めませんからね…」

 克哉は、潮騒の音を聞きながら…もう一人の自分からの伝言を
聞いて静かに考え始めた。
 確かに、今の自分は…彼に依存しきっている。
 最初、彼の姿が見えなかっただけで取り乱してしまったぐらいだ。
 正直…本多と決別して、その直後にもう一人の自分が傍にいてくれない事に
強烈な不安を覚えている。
 けれど、必ず迎えに行くという言葉に…辛うじて希望を持っていった。

(オレが…一人で、ちゃんとやっていけるようになったら…また、
一緒にいられるようになるんだよな…。信じても、良いんだよな…?)

 ギュっと拳を握りしめていきながら、克哉は覚悟を決めていく。
 弱り切った時、誰かが傍にいて支えて貰う事は…人は誰だって弱くなる時期が
あるのだから必要な事だ。
 けれどいつまでもその人物に甘えてしまっては、自分の足で立つ事が
出来なくなる。
 何となく其れを憂いて…もう一人の自分は、一旦離れる事を選択したような
気がした。

「…オレが、この世界でちゃんと生きていければ…必ず、会えるんですよね…」

「ええ、それは保証致します」

「なら…オレは、やります。…絶対に、あいつと一緒に生きていきたいから…!」

 そして、克哉はやっと…自分の足で立つ覚悟を固めていった。

「…良い顔をなさっていますね…。なら、そんな貴方の為に…一つ、お見せしたい
光景があります…」

「えっ…?」

 そして、砂浜を踏みしめて…Mr.Rがこちらに歩み寄ってくる。
 瞬間、黒い革手袋で覆われた手が…克哉の額にそっと伸ばされていくと
同時に意識が遠くなった。

―これは、本多様が目覚めたばかりの頃の場面です…。もう、貴方が決して
見る事も確認することも出来ない遠い世界での出来ごとですが…最後に、
これを貴方に見せてさしあげましょう…

 そう、夢うつつに聞いていきながら…克哉は、もう決して見られない筈だった
本多が目覚める場面を…見る事となったのだった。
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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